説明

制御システム及び制御方法

【課題】予め設定されている制御に加え、予測に基づく制御を含む知能的な制御を行なうことができる制御システム及び制御方法を提供する。
【解決手段】屋上緑化エリアGへの灌水のための電磁弁13,13を駆動制御対象とし、土中に埋められた湿度センサ14,14で測定される湿度によって開閉を制御するように設定してある開閉装置23に対し、エージェント装置3は、屋上緑化エリアGを含む周辺の気象情報を自律的に取得し、気象情報が天候悪化(降雨の可能性が高い)を示している場合は、電磁弁13,13を開放させないようにする制御値(開放可否を示す制御値)を示す信号を開閉装置23へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の制御装置を用いて各種駆動対象を制御する制御システムに関し、特に、ハードウェア的に予め設定されている駆動制御に対し、駆動の条件を自律的に取得して駆動対象を制御させるための制御値に反映させるソフトウェア的な処理を連動させ、予測に基づく制御を含む知能的な制御を可能とする制御システム及び制御方法を提供することにある。
【背景技術】
【0002】
近年では、特定の機能を持たせたPLC(Programmable Logic Controller)を用い、各種センサを用いて制御対象の状態、周辺環境の変化に応じた自動運転を実現するFA(Factory Automation)を始めとする制御システムが普及している。
【0003】
特許文献1には、工場のような環境に適さないパーソナルコンピュータによる制御の代替として、通信機能をPLCからなる制御機器に備えさせ、制御装置に通信を含む多様な制御を行なわせることができ、低コスト化を図ることができる技術が開示されている。
【特許文献1】特開2006−120091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、制御システムに求められる処理の複雑化、高度化に応じ、多数のステップを経ることにより得られる判断基準、それまでの制御履歴、測定値の記録等のデータベースを用いた学習処理により得られる判断基準等の複雑な処理に基づく知能的な制御が必要な場合、PLCによって予め設定されるシーケンス制御のみで制御を行なわせることは難しい。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、駆動対象に対して予め設定された制御を行なう制御装置に、ソフトウェアの動的な処理によって得られる駆動対象の条件に基づく制御値を生成し、生成した制御値に基づいて制御させる構成により、複雑な処理を含む知能的な制御を可能とする制御システム及び制御方法を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の他の目的は、駆動対象周辺の予測情報に基づき制御値を生成する構成により、予測に基づく知能的な制御を可能とする制御システムを提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、予め設定してある制御のみならず、柔軟な条件によって駆動対象の駆動の可否を制御することができ、より多様な状況に応じた知能的な制御を可能とする制御システムを提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、駆動対象の駆動状況及び駆動結果を取得し、且つ外部に通知することが可能な構成により、駆動条件としてフィードバックが可能となり、更に知能的な制御を可能とする制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係る制御システムは、駆動対象に対し、制御値に基づき所定の制御を行なうべく設定してある制御装置と、該制御装置に接続する手段を備え、前記制御装置へ制御値を生成して与えるようにしてある制御値生成装置とを含む制御システムであって、前記制御値生成装置は、前記駆動対象の駆動に対する条件情報を取得する手段と、取得した条件情報に基づいて前記制御値を生成する生成手段と、生成した制御値を前記制御装置へ送信する手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
第2発明に係る制御システムは、前記条件情報は前記駆動対象の周辺環境の予測情報であることを特徴とする。
【0011】
第3発明に係る制御システムは、前記制御値生成装置は、取得した条件情報に基づき、前記駆動対象の駆動の可否を判定する判定手段を備え、前記生成手段は前記判定手段による判定結果を示す制御値を生成するようにしてあり、前記制御装置は、前記所定の制御として、センサにおける測定値が所定値以下であるときに駆動対象を駆動せしめるごとく設定してある場合であっても、前記制御値生成装置から送信された制御値が駆動不可を示すときは、前記駆動対象を駆動させないようにしてあることを特徴とする。
【0012】
第4発明に係る制御システムは、前記制御値生成装置は、前記駆動対象の駆動状況及び駆動結果を含む駆動情報を取得する手段と、取得した前記駆動情報を外部へ通知する通知手段とを更に備えることを特徴とする。
【0013】
第5発明に係る制御方法は、駆動対象に対し、与えられた制御値に基づき所定の制御を行なうべく設定してある制御装置に、制御値を生成して与えることにより制御させる制御方法であって、前記駆動対象の駆動に対する条件情報を外部から自律的に取得し、取得した条件情報に基づいて制御値を生成することを特徴とする。
【0014】
本発明では、駆動対象に対して制御値に基づく所定の制御を行なう制御装置に、駆動対象の駆動についての条件情報に基づき生成された制御値が更に与えられる。
【0015】
本発明では、駆動対象の駆動に対する条件情報として、駆動対象が設置されている場所の周辺環境の予測情報が使用される。
【0016】
本発明では、駆動対象の駆動に対する条件情報に基づき、駆動対象の駆動の可否が判定され、駆動対象に対してセンサにおける測定値が所定値以下であるときは駆動対象を駆動させるように所定の制御が設定してある場合であっても、条件情報に基づき駆動が不可と判定されたときは駆動されない。
【0017】
本発明では更に、駆動対象の駆動状況及び駆動結果が取得されて外部へ通知される。
【発明の効果】
【0018】
本発明による場合、駆動対象に対してハードウェア的に予め設定された制御を行なう制御装置に、ソフトウェアの動的な処理によって得られる駆動対象の条件に基づく制御値が与えられる。これにより、ソフトウェア処理によって自律的に、駆動対象の駆動条件となり得る情報を取得して多様な条件に基づく制御値を生成することができ、予め設定されてある制御に加えた知能的な制御が可能となる。
【0019】
本発明による場合、駆動対象の現状における状況に基づく予め設定された制御のみならず、周辺環境の変化予測に基づいた駆動制御を行なうことができ、知能的な制御が可能となる。
【0020】
本発明による場合、予め設定してある制御のみならず、外部から取得した多様な条件情報に基づき柔軟に駆動対象の駆動の可否を制御することができ、駆動対象の駆動結果に基づく状況を検知するセンサの結果が駆動対象を駆動させる条件に適合しても、他の条件によっては駆動を禁止するような知能的な制御が可能となる。
【0021】
本発明による場合は更に、駆動対象の制御のみならずその駆動状況及び駆動結果を自律的に取得して外部へ通知することにより、駆動状況及び駆動結果を更に制御値に反映することができ、更なる知能的な制御が可能となる。また、ユーザ又はシステムの管理者が駆動対象の状況及び結果を把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。なお、以下に示す実施の形態では、本発明に係る制御システムを、屋上に作られた緑地の土中の湿度を基準として灌水の開始及び停止を制御する屋上緑化システムに適用した例について説明する。
【0023】
図1は、本実施の形態における屋上緑化システムの概要を示す模式図である。屋上緑化システムは、建物の屋上に造成された屋上緑化エリアG上に設置された灌水パイプ11,11と、灌水パイプ11,11とタンク12との間を開閉する電磁弁13,13と、屋上緑化エリアGの土中に埋められた湿度センサ14,14と、湿度センサ14,14における測定値を出力する出力器15,15とを含む。屋上緑化システムは更に、夫々PLC(Programmable Logic Controller)からなり、出力器15,15から出力される測定値を湿度を示す信号に変換する変換装置21と、後述のエージェント装置3との通信とPLC群間の通信とを中継するゲートウェイ装置22と、変換装置21及びゲートウェイ装置22から入力される信号に基づいて電磁弁13,13の開閉を制御する開閉装置23とを含む。また、屋上緑化システムは、開閉装置23における電磁弁13,13の開閉の判断条件となる気象予測情報を自律的に取得し、前記開閉装置23における制御値を生成するエージェント装置3と、エージェント装置3が取得する判断基準となる気象予測情報を収集する中央装置4とを含む。
【0024】
変換装置21、ゲートウェイ装置22及び開閉装置23は、建物の屋上又は屋内に設置され、PLC間を接続するネットワーク2に接続されており、各種信号を送受信して夫々の制御に用いるようにしてある。エージェント装置3は、建物の屋内に設置されており、ゲートウェイ装置22とエージェント装置3とは、ネットワーク2とは異なるプロトコルに基づく通信線によって接続されている。エージェント装置3は、ゲートウェイ装置22の機能によりネットワーク2上の各装置から出力される信号で表わされるデータを取得することが可能である。中央装置4は、屋上緑化エリアGが造成されている建物とは異なる場所に設置されており、他の建物に設置されている屋上緑化エリアGに対応するエージェント装置3にも対応している。中央装置4は、エージェント装置3とインターネット等の通信網Nを介して接続することが可能である。
【0025】
基本的には開閉装置23が、土中の湿度センサ14,14における測定値に対応する湿度の値が所定値以下であるか否かにより、電磁弁13,13の開閉を制御することによって自動灌水を実現する。しかしながら、本実施の形態における屋上緑化システムでは、湿度の値に加えて、エージェント装置3が中央装置4から取得する建物付近の気象予測情報をも基準として開閉が制御されるようにしてある。
【0026】
図2は、本実施の形態における屋上緑化システムに含まれる変換装置21、ゲートウェイ装置22及び開閉装置23の内部構成を示すブロック図である。変換装置21は、MPU(Micro Processing Unit)、CPU(Central Processing Unit)である制御部210と、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)である記憶部211と、ネットワーク2を介した通信を実現する通信部212と、出力器15,15から入力される測定値を受け付ける入力部213とを備えている。変換装置21の制御部210は、記憶部211に記憶されている所定のプログラムに基づき、入力部213を介して入力される測定値(電圧値)を湿度に対応する数値を示す信号に変換して通信部212を介して開閉装置23へ送信するように構成されている。
【0027】
ゲートウェイ装置22は、MPU、CPUである制御部220と、EEPROMである記憶部221と、エージェント装置3との通信を実現する第1通信部222と、ネットワーク2を介した通信を実現する第2通信部223とを備えている。ゲートウェイ装置22の制御部220は、記憶部221に記憶されている所定のプログラムに基づき、通信線を介したエージェント装置3とのTCP/IP(Transmission Control Protocol / Internet Protocol)による通信と、ネットワーク2間における通信とを中継する機能を有している。
【0028】
具体的には、ゲートウェイ装置22は、ネットワーク2に接続されている変換装置21、開閉装置23等の各PLCへの入力に対応するスイッチを夫々備えている。ゲートウェイ装置22は、TCP/IPによりエージェント装置3から送信される信号(データ)の種別に応じて、いずれかのスイッチに信号の内容を書き込む。これにより、スイッチに対応する各装置へ信号が入力されるように構成されている。例えば、エージェント装置3から送信される信号が開閉装置23の運転開始及び運転停止を指示する信号である場合、ゲートウェイ装置22により、開閉装置23へ運転開始及び運転停止の入力に対応するスイッチに、送信された信号が示す運転開始(1)又は運転停止(0)のいずれかが書き込まれ、対応する開閉装置23の運転開始及び運転停止が制御される。
【0029】
なお、エージェント装置3との通信は、TCP/IPによるとは限らず、RS−232(Recommended Standard 232)による信号の入力を受け付ける構成としてもよい。
【0030】
開閉装置23は、MPU、CPUである制御部230と、EEPROMである記憶部231と、ネットワーク2を介した通信を実現する通信部232と、電磁弁13,13への開閉を指示する指示信号を出力する出力部233とを備えている。開閉装置23の制御部230は、記憶部231に記憶されている所定のプログラムに基づき、通信部232を介して変換装置21から送信された信号に示されている数値が所定値以下であるか否か、及び、ゲートウェイ装置22及びネットワーク2を介してエージェント装置3から送信される信号に応じて電磁弁13,13の開閉を制御するように構成されている。エージェント装置3から送信される信号は、開閉装置23の運転開始及び運転停止を指示する運転開始信号及び運転停止信号と、気象予測情報に基づく電磁弁13,13の開放の待機又は実行を指示する待機指示信号とである。
【0031】
図3は、本実施の形態における屋上緑化システムに含まれるエージェント装置3及び中央装置4の内部構成を示すブロック図である。エージェント装置3は、パーソナルコンピュータ装置で構成されており、各構成部を制御するCPU30と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等であるメモリ31と、各種情報を記憶するハードディスク(以下HDという)32と、ゲートウェイ装置22及び中央装置4との間でTCP/IP通信を実現するネットワークカードである通信部33とを備えている。エージェント装置3のHD32には、パーソナルコンピュータ装置がエージェント装置3としての機能を実現するための制御プログラム3Pが記憶されている。エージェント装置3のCPU30は、HD32から制御プログラム3Pをメモリ31に読み出して実行することにより、中央装置4により収集される気象予測情報を取得する処理、開閉装置23の運転開始信号及び運転停止信号のゲートウェイ装置22への定期的な送信処理、及び、取得した気象予測情報に基づく電磁弁13,13の開放についての待機指示信号の生成処理を行なう。
【0032】
また、エージェント装置3のCPU30は、ゲートウェイ装置22を介して変換装置21から得られる湿度に対応する数値の取得、及び図示しない他のセンサ、PLCからなる装置から得られる屋上緑化エリアGの各種状況を示す数値の取得が可能である。エージェント装置3のCPU30は、取得した湿度に対応する数値の他、各種状況を示す数値を屋上緑化システムの運転結果として記録し、定期的に中央装置4へ送信する。なお、本実施の形態では、運転結果を記憶する形式は各数値をXML(eXtensible Markup Language)で記述する形式とする(後述のSOAPに対応)。また、取得した各種状況を示す数値に基づいて、屋上緑化システムの運転状況が異常であるか否かを判定する機能を有し、異常であると判定された場合には中央装置4へ異常を通知する。
【0033】
中央装置4は、サーバコンピュータ装置で構成されており、各構成部を制御するCPU40と、DRAM等であるメモリ41と、各種情報を記憶するHD42と、エージェント装置3と通信網Nを介した通信を実現する通信部44とを備えている。中央装置4のCPU40は、図示しない他のデータベースを備える装置から気象予測情報を取得し、HD42に予測情報データベース(DB;Data Base)43を記憶する。中央装置4のCPU40により、通信網Nを介してXML形式のデータの送受信を実現するSOAP(Simple Object Access Protocol)に基づくWebサービスプログラムが実行されている。これにより、エージェント装置3のCPU30は、中央装置4へSOAPに基づく気象予測情報の問い合わせ処理を行なうことにより、予測情報データベース43から屋上緑化エリアGが含まれる地域の気象予測情報を取得することが可能である。更に、中央装置4のCPU40によりSOAPに基づくWebサービスプログラムが実行されていることにより、エージェント装置3のCPU30は、屋上緑化システムの運転結果を中央装置4へ送信し、記憶部42に記憶させることが可能になる。
【0034】
また、中央装置4は、メールサーバ機能を備えて実行しており、エージェント装置3から異常の通知を受けた場合はそれに応じて自動的にメールを送信することが可能である。屋上緑化エリアG内の状況によっては、管理者、保守者が実際に屋上緑化エリアGを確認する必要がある場合があるが、このメールサーバ機能により、所定のデータの値が所定値以上である場合に、エージェント装置3から中央装置4への異常の通知に応じて、中央装置4から管理者又は保守者へ自動的にメールを送信することも可能となる。
【0035】
更に、中央装置4はWebサーバ機能により、エージェント装置3からSOAPに基づき送信された屋上緑化システムの運転結果を表示するためのWebページの自動作成、更新を行なうことが可能である。これにより、インターネット等の公衆通信網を介して屋上緑化システムにおける運転状況、更には、屋上緑化エリアGでの植物の成長記録等、屋上緑化による効果を開示、提供することが可能となる。
【0036】
なお、本実施の形態における中央装置4で実行されるWebサービスプログラムは、SOAPに基づくプログラムとしたが、SOAPに限らず通信網Nを介した情報の送受信が可能であればそのプロトコルは問われない。したがって、エージェント装置3及び中央装置4のHD32,42に記憶される各種情報が記憶される形式はXML形式とは限らない。
【0037】
このような構成の屋上緑化システムにおけるエージェント装置3のCPU30により実行される気象予測情報の取得処理について説明する。図4は、本実施の形態におけるエージェント装置3のCPU30により、気象予測情報が取得される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0038】
エージェント装置3のCPU30は、コンピュータ装置に備えられている時計機能から時刻を取得し、気象予測情報の取得タイミングであるか否かを判断する(ステップS11)。取得タイミングは例えば、午前0時、午前3時、午前6時と3時間毎とする。エージェント装置3のCPU30は、気象予測情報の取得タイミングでないと判断した場合(S11:NO)、処理をステップS11へ戻して取得タイミングであると判断するまで待機する。
【0039】
エージェント装置3のCPU30は、気象予測情報の取得タイミングであると判断した場合(S11:YES)、中央装置4へSOAPによる問い合わせにより、予測情報データベース43から気象予測情報を取得する(ステップS12)。なお、取得する気象予測情報は、現在から24時間以内の分の降水率、温度等を含む。エージェント装置3のCPU30は、取得した気象予測情報が天候悪化を示しているか否かにより、灌水処理を待機させるか又は実行させるかの判定を行ない、判定結果を生成する(ステップS13)。エージェント装置3のCPU30は、以前に生成した判定結果のデータを削除し(ステップS14)、ステップS13により生成した判定結果を記憶し(ステップS15)、処理をステップS11へ戻して次に気象予測情報を取得するタイミングが到来するまで待機する。
【0040】
図5は、本実施の形態におけるエージェント装置3のCPU30により、灌水処理の待機/実行についての判定の処理手順を示すフローチャートであり、図4のフローチャートの処理手順のステップS13の詳細な処理の内容を示している。エージェント装置3のCPU30は、取得した気象予測情報を読み出し(ステップS21)、天候が悪化するか否かを判断する(ステップS22)。具体的には、直近の気象予測情報から24時間以内の降水確率の平均値が所定値以上であるか否か、又は、所定時間以内の気象予測情報に降水確率が80%以上である気象予測情報が含まれているか否か等の判断基準により判断される。なお、気象予測情報に含まれる最高/最低温度等を判断基準に加え、気温が低下して凍結、降霜の可能性が高い場合には灌水を待機させる構成でもよい。
【0041】
エージェント装置3のCPU30は、天候が悪化しないと判断した場合(S22:NO)、灌水処理は「実行」と判定し(ステップS23)、処理を図4のフローチャートに示したステップS14へ戻す。また、エージェント装置3のCPU30は、天候が悪化すると判断した場合(S22:YES)、灌水処理は「待機」と判定し(ステップS24)、処理を図4のフローチャートに示したステップS14へ戻す。
【0042】
図4及び図5のフローチャートに示した処理手順により、灌水の「実行」/「待機」の判定結果として24時間後に至るまで3時間毎に、待機させるか又は実行するかが記憶される。本実施の形態において判定結果はXML形式により記述されて記憶される。例えば、<WeatherBool>のタグを付与し、判定結果の最新更新時間(直近の判定処理時刻)を<UpDate>タグにより記述し、判定結果を<value date="2007/04/29 09:00">0</value>、<value date="2007/04/29 12:00">0</value>のように記憶する。前述の例では、2007年4月29日の午前9時及び正午は、その後天候悪化が予測されるので灌水を待機(0)させることを示している。
【0043】
次に、エージェント装置3のCPU30によって取得された気象予測情報に基づく灌水の待機/実行についての判定結果に従い、エージェント装置3により、電磁弁13,13の開閉を制御するための運転開始信号、運転停止信号及び待機指示信号が送信される処理について説明する。図6は、本実施の形態におけるエージェント装置3のCPU30により、電磁弁の開閉制御のための信号が送信される処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0044】
エージェント装置3のCPU30は、コンピュータ装置に備えられている時計機能から時刻を取得し、灌水の開始タイミングであるか否かを判断する(ステップS31)。灌水の開始タイミングは例えば、気象予測情報の取得タイミングの30分後であり、午前0時半、午前3時半、午前6時半と3時間毎とする。エージェント装置3のCPU30は、灌水の開始タイミングでないと判断した場合(S31:NO)、処理をステップS31へ戻して開始タイミングであると判断するまで待機する。
【0045】
エージェント装置3のCPU30は、灌水の開始タイミングであると判断した場合(S31:YES)、直近の判定結果を読み出し(ステップS32)、判定結果に基づいてゲートウェイ装置22へ待機指示信号(待機:0/実行:1)を送信する(ステップS33)。次に、エージェント装置3のCPU30は、運転開始信号をゲートウェイ装置22へ送信し(ステップS34)、その後運転期間(例えば1分)が経過したか否かを判断する(ステップS35)。
【0046】
なお、このときゲートウェイ装置22を介して運転開始信号を受け付ける開閉装置23では、この運転開始信号の入力をトリガとして、入力されている湿度に対応する値が所定値以下であるか否か、及び、先に入力されている待機指示信号が待機を示しているか又は実行を示しているかの夫々の結果に基づいて、電磁弁13,13を開放させるか、遮断したままとするかの制御が実行されるように構成されている。
【0047】
エージェント装置3のCPU30は、運転期間が経過していないと判断した場合(S35:NO)、処理をステップS35へ戻して運転期間が経過したと判断するまで待機する。エージェント装置3のCPU30は、運転期間が経過したと判断した場合(S35:YES)、運転停止信号をゲートウェイ装置22へ送信し(ステップS36)、処理をステップS31へ戻して次の開始タイミングであると判断するまで待機する。
【0048】
また、このときゲートウェイ装置22を介して運転停止信号を受け付ける開閉装置23では、この運転停止信号の入力をトリガとして、電磁弁13,13を開放していたとしても遮断させるようにしてある。その後運転開始信号が入力されるまで、電磁弁13,13は開放されない。
【0049】
エージェント装置3のCPU30は、記憶部32から制御プログラム3Pを読み出して実行を開始してから図4(図5の処理含む)及び図6のフローチャートに示した処理を繰り返し継続し、屋上緑化システム全体を停止する場合(エージェント装置3の停止)にいずれの処理も終了させる。
【0050】
図7は、本実施の形態における開閉装置23において、入力される信号に応じて実行される開閉制御の例を示す説明図である。図7の説明図に示すように、開閉装置23では、変換装置21から入力される信号が示す湿度に対応する数値が所定値以下であるか否か(1:YES/0:NO)、及び、エージェント装置3から入力される待機指示信号が待機を示しているか否か(1:実行/0:待機)に基づき、そのANDをとることにより、電磁弁13,13を開放(1)するか遮断したまま(0)にするか否かを制御するようにしてある。
【0051】
図7の説明図に示すように、ゲートウェイ装置22を介して運転開始信号が入力されている時に、変換装置21から入力される信号が示す湿度に対応する数値が所定値以下であり(1:YES)、且つエージェント装置3から入力される待機指示信号が、天候は悪化しないので実行を指示する内容(1:実行)である場合のみ、灌水が実行されるように制御される。
【0052】
上述のような処理により、PLC群によるシーケンス制御に、パーソナル(サーバ)コンピュータ装置による処理により得られる、外部装置から取得してきた天気予報などの予測情報に基づく判定結果を反映させることができる。したがって、センサによって測定されるような現在値に基づいて予め定められた処理を行なうのみならず、パーソナルコンピュータ装置における、予測情報に基づく判断処理、学習による未来予測処理等の結果を反映させることが可能になる。このような複雑な処理を通信が可能なPLC群のみで行なうことも可能ではあるが、組み合わせ及び回路が複雑となる可能性がある。しかしながら、柔軟性が要求されるような処理をパーソナルコンピュータ装置に行なわせ、その処理の結果をPLC群によるシーケンス制御に組み合わせることにより、きめ細やかで知能的な制御が可能になる。
【0053】
さらに、本実施の形態における屋上緑化システムには、SOAPに基づくWebサーバ機能を備えた中央装置4が含められている。これにより、エージェント装置3のCPU30による知能的な制御のためのデータを収集するのみならず、エージェント装置3が集めた測定値等、屋上緑化エリアGの環境状況を遠隔から確認すること、及び複数のユーザへ開示すること等が可能となり、さらに、環境状況によっては管理者、保守者に自動的にメールが送信されて注意を促すなど、多様なサービスを実現することも可能になる。
【0054】
屋上緑化システムを建物の屋上に造成することにより、室外機における熱交換効率を良好に保つことができると共に、日照による屋上の温度上昇を抑えて建物全体の省エネルギーを実現できるという効果が期待できる。しかしながら、単に土中湿度が所定値以下となり土が乾燥してきた場合に灌水が実行される制御のみでは、短時間に降雨が予測されるにも拘らず灌水が行なわれて建物の屋上の水分が過剰になり、建物の漏水、劣化を助長させる一因となり得る。したがって、本発明に係る制御システムを適用して、上述のように適宜予測情報に基づく判断を加えることによって、より知能的な制御が可能になる点、優れた効果を奏する。
【0055】
また、本発明に係る制御システムは、屋上緑化システム以外にも勿論適用可能であり、同様の天候の予測情報に基づく判定結果を用いる場合であれば、空調システムの運転制御にも適用可能である。この場合、所定の時間である場合に運転を開始するようにしてあるタイマー制御に加え、温度、湿度等の予測に基づいて自動的に運転を制御し、例えば、暑い日となることが予測できる場合には始業、開館時刻よりも前に自動的に運転が開始されるが、比較的涼しい日には運転しないようにするなど、快適性を高めると同時にエネルギー消費を削減することができることも期待できる。その他、自動灌水が必要なゴルフ場などの緑地に本発明に係る制御システムを適用することも可能である。また、天候のみならず、外部から取得可能な予測情報を用いてもよい。
【0056】
なお、本実施の形態では、エージェント装置のCPUにおける判断基準は、気象予測情報に含まれる数値による二値的な判断によるものであった。しかしながら、本発明はこれに限らず、パーソナルコンピュータ装置における処理をより複雑な構成とすることは比較的容易であるので、例えば過去の湿度の数値データ及び未来の予測情報を含めた学習処理に基づく判定基準の結果をゲートウェイ装置22を介して開閉装置23に与え、開閉装置23で現状における測定値と、判定基準の結果とに基づく処理を行なわせるように構成してもよい。
【0057】
また、本実施の形態では図1及び図2に示したように、変換装置21は、入力部213により湿度センサ14,14から別々の通信線及び出力器15,15を介して入力される測定値を夫々受け付ける構成とした。しかしながら、本実施の形態における接続形態の他に例えば、湿度センサ14,14及び他のセンサを共に一の通信線に接続し、変換装置21における制御により各センサからの入力を区別させるように構成し、各センサにおける測定値を開閉装置23へ送信するようにしてもよい。このような構成とすることにより、制御システム、即ち本実施の形態における屋上緑化システム全体の省線化を実現することができる。また、この構成は電磁弁13,13と開閉装置23との関係にも適用可能であり、図1及び図2に示したように開閉装置23の出力部233が電磁弁13,13夫々に別々の通信線により接続される形態ではなく、一の通信線に電磁弁13,13及びその他の駆動対象(アクチュエータ)が接続され、開閉装置23における制御より夫々を区別させて夫々に対する駆動制御が可能となるように構成してもよい。更に、変換装置21及び開閉装置23を同一の装置により実現し、湿度センサ14,14を含む各センサからの入力と、電磁弁13,13を含む各駆動対象への出力とを夫々区別していずれも可能であるような構成でもよい。これにより、制御システム全体の省線化のみならず、システムに必要な装置の数の削減し、システム全体のコストダウンも可能になる。
【0058】
さらに、本実施の形態では、変換装置21、エージェント装置22及び開閉装置23は、記憶部211,221,231に記憶されているプログラム夫々に基づいて動作するPLCである構成としたが、本発明はこれに限らず、回路設計によって入力される信号に応じて予め定められた処理を行なうように構成されている装置でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施の形態における屋上緑化システムの概要を示す模式図である。
【図2】本実施の形態における屋上緑化システムに含まれる変換装置、ゲートウェイ装置及び開閉装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】本実施の形態における屋上緑化システムに含まれるエージェント装置及び中央装置の内部構成を示すブロック図である。
【図4】本実施の形態におけるエージェント装置のCPUにより、気象予測情報が取得される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】本実施の形態におけるエージェント装置のCPUにより、灌水処理の待機/実行についての判定の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】本実施の形態におけるエージェント装置のCPUにより、電磁弁の開閉制御のための信号が送信される処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】本実施の形態における開閉装置において、入力される信号に応じて実行される開閉制御の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0060】
13 電磁弁
14 湿度センサ
22 ゲートウェイ装置
23 開閉装置(制御装置)
3 エージェント装置(制御値生成装置)
30 CPU
3P 制御プログラム
4 中央装置
40 CPU
43 予測情報データベース(DB)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動対象に対し、制御値に基づき所定の制御を行なうべく設定してある制御装置と、該制御装置に接続する手段を備え、前記制御装置へ制御値を生成して与えるようにしてある制御値生成装置とを含む制御システムであって、
前記制御値生成装置は、
前記駆動対象の駆動に対する条件情報を取得する手段と、
取得した条件情報に基づいて前記制御値を生成する生成手段と、
生成した制御値を前記制御装置へ送信する手段と
を備えることを特徴とする制御システム。
【請求項2】
前記条件情報は前記駆動対象の周辺環境の予測情報であること
を特徴とする請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記制御値生成装置は、
取得した条件情報に基づき、前記駆動対象の駆動の可否を判定する判定手段を備え、
前記生成手段は前記判定手段による判定結果を示す制御値を生成するようにしてあり、
前記制御装置は、
前記所定の制御として、センサにおける測定値が所定値以下であるときに駆動対象を駆動せしめるごとく設定してある場合であっても、前記制御値生成装置から送信された制御値が駆動不可を示すときは、前記駆動対象を駆動させないようにしてあること
を特徴とする請求項1又は2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記制御値生成装置は、
前記駆動対象の駆動状況及び駆動結果を含む駆動情報を取得する手段と、
取得した前記駆動情報を外部へ通知する通知手段と
を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の制御システム。
【請求項5】
駆動対象に対し、与えられた制御値に基づき所定の制御を行なうべく設定してある制御装置に、制御値を生成して与えることにより制御させる制御方法であって、
前記駆動対象の駆動に対する条件情報を外部から自律的に取得し、
取得した条件情報に基づいて制御値を生成する
ことを特徴とする制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate