説明

制御放出顆粒

本発明は、制御放出顆粒技術、このような顆粒の製造方法、及び害虫駆除の際に顆粒を使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御放出顆粒技術、このような顆粒の製造方法、及び害虫駆除の際に顆粒を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
害虫、及び作物の成長を阻害する雑草から作物を守ることは、農業における絶えることのない問題である。これらの問題と闘うことを助けるために、合成化学分野の研究者は、このような害虫及び雑草の駆除に効果的な広範囲の種々様々な化学薬品及び化学製剤を製造している。多くのタイプの化学的な農薬が文献中に開示されており、また数多くが商業的に使用されている。商業的な農薬、及び今なお開発中であるいくつかの農薬が、“The Pesticide Manual”、第13版、British Crop Protection Council発行(2003年)に記載されている。
【0003】
農薬を施用するために使用できる数多くの種々異なる製剤タイプがあるが、特定の農薬、園芸、及びその他の害虫駆除用途において、多量の水中で混和するように構成され(例えばタンク混合物)、そして最終的に、処理しようとする現場上に噴霧される湿潤性粉末又は水分散性顆粒(又は実際には液体製剤)とは異なり、農薬を、乾燥した拡散性又は散布性顆粒として調製することがしばしば望ましい。
【0004】
このような乾燥拡散性顆粒は、広い栽培植生面積における望ましくない植生を排除する能力、及び手又は機械手段による施用のし易さの理由から、重要な商業製品である。例えば、ゴルフコース、公園、芝生、庭、森林のような地帯において選択的除草剤を供給するための実用的且つ労働節約的な対処法は、回転式散布機を介して顆粒除草剤製品を散布施用することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような顆粒製剤の場合、標的となる害虫種又は雑草種を駆除し、しかも作物種には最小限の損傷しか招かない程度に十分な農薬を施用するように、農薬の量のバランスを取ることが重要である。従って、本発明の目的は、作物種に与える損傷を最小限にする制御放出農薬顆粒を提供することである。
【0006】
農薬分野において、特に顆粒肥料製品のために、制御放出技術が既に広く用いられている。多くの既存の制御放出顆粒技術は、顆粒キャリヤの外側に被覆を施すことに基づく。農薬の放出に適した別の制御放出顆粒技術を開発する必要がある。さらに、特定の活性成分及び所望の放出特性に合わせて放出速度を調整できる技術も必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、固形基材、農薬及び油を含む制御放出顆粒であって、農薬及び油が顆粒全体にわたって分配されている、制御放出顆粒を提供する。
【発明の効果】
【0008】
作物種に対する損傷が軽減されるのに加えて、本発明の制御放出顆粒はさらに、環境内の農薬スパイク濃度を低減し、残留活性を延長し、また施用量を少なくし、そして農薬の施用回数を減らすといった更なる利点を提供する。さらに、本発明は、生物学的効力を低下させることなしに、改善された作物安全性を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
顆粒の放出速度は、使用される油の量及びタイプの両方によって制御される。油が疎水性であればあるほど、顆粒の崩壊速度は遅くなり、また農薬の放出速度も遅くなる。同様に、疎水性油の量が多ければ多いほど、やはり崩壊速度、ひいては放出速度は少量の油よりも遅くなる。
【0010】
本発明において使用するのに適した油の一例としては、C2〜C22アルキルエステル(例えばオレイン酸メチル)、トリグリセリド(例えば植物油、大豆油、及びトウモロコシ油)、パラフィン及びワックス(例えばSunspray(登録商標)及びその他の鉱物油)、芳香族油(例えば両方ともExxon Mobil Chemicalsから入手可能なAromatic 100及びAromatic 200)、乳酸エステル(例えば乳酸ブチル及び乳酸2−エチル−ヘキシル)、並びに二塩基性エステル及びジメチルアミドが挙げられる。なお上述の油のうち、パラフィン、ワックス、及び長鎖アルキルエステル(例えばC8〜C22)が、疎水性が高く、また顆粒からメソトリオンをより低速で放出させやすいと考えられる。好適には、本発明の顆粒において使用される油は、パラフィン又は鉱物油である。より高親水性の油、例えば乳酸エステル及びより短鎖のアルキルエステル(例えばC2〜C7)は、より高速の放出顆粒をもたらしやすい。好適には、本発明の顆粒において使用される油はC4〜C18アルキルエステルである。より好適には、油はオレイン酸メチルである。上に挙げたもののような油の混合物を本発明において使用してもよい。例えば、農薬の初期高速放出をもたらし、続いて数週間にわたって持続する農薬の低速放出を可能にする顆粒を生成するために、疎水性油と親水性油とを混合することが望ましい場合がある。
【0011】
油の選択は、顆粒の所望の放出特性(例えば高速放出又は低速放出)、及び放出されるべき農薬の物理特性(例えば水溶性又は油溶性)に応じて行われる。当業者であれば、その顆粒の特定の要件に適するように油又は油混合物を容易に選択することができる。油の代わりに、又は油に加えて、他の疎水性材料、例えば疎水性シリカを使用してもよい。
【0012】
好適には、油は約5重量%〜約30重量%の濃度で顆粒中に存在する。より好適には、油は約10重量%〜約20重量%の濃度で存在する。より好適には、油は約12重量%〜約18重量%の濃度で存在する。最も好適には、油は約15.8重量%で存在する。もちろん、油の量を増大させると、顆粒の崩壊速度、ひいてはメソトリオンの放出速度が遅くなる傾向がある。従って当業者は、好適な油、及び必要とする放出速度のための油濃度を選ぶことができる。
【0013】
農薬及び油は、顆粒の外側に被覆されるのではなく、顆粒全体にわたって分配されている。これを目的として、農薬及び油は、顆粒化前に顆粒成分と均質に混合される。農薬は油中に溶解されてよく、或いは、エマルジョン又は懸濁液として存在してもよい。
【0014】
本発明は任意の好適な農薬と一緒に使用することができる。例えば、本発明は、1種又は2種以上の除草剤、殺虫剤、殺菌剤、成長調節剤、殺ダニ剤、及び殺藻剤と一緒に使用することができる。
【0015】
本発明において使用するのに適した除草剤の一例としては、下記のうちの1種又は2種以上が挙げられる:スルホニル尿素、例えばトリフロキシスルフロン、ニコスルフロン、メトスルフロン、アミドスルフロン、スルホスルフロン、及びトリアスルフロン;トリアジン、例えばシマジン及びアトラジン;ジニトロアニリン、例えばプロジアミン、ペンジメタリン、及びオリザリン;トリアゾリノン、例えばスルフェントラゾン、チエンカルバゾン、及びカルフェントラゾン;ピリジン、例えばジチオピル及びトリクロピル;尿素、例えばジウロン及びフェヌロン;ジフェニルエーテル、例えばフォルメサフェン及びオキシフルオロフェン;クロロアセトアミド、例えばアセトクロル及びs−メトラクロール;シクロヘキサンジオンオキシム、例えばクレトジム;イソキサゾール;例えばイソキサフルトール;トリケトン、例えばメソトリオン、テンボトリオン、トプラメゾン、式:
【化1】

の化合物、及びスルコトリオン;ビピリジリウム、例えばジクワット及びパラコート;グリシン、例えばグリホセート;ホスフィン酸、例えばグルフォシネート;及び安息香酸、例えばジカンバ。
【0016】
特に好ましい除草剤は、メソトリオン、及び式Iの化合物を含む。メソトリオン(2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオン)は、選択的除草剤の重要なクラス、トリケトンの一員であり、そしてカロテノイド生合成に影響を及ぼすことにより働く。酸の形態において、その構造は、
【化2】

として表すことができる。
【0017】
酸形態に加えて、メソトリオンはまた、塩及び金属キレート、例えば銅キレートを形成する。これらの金属キレートは、特に米国特許第5,912,207号明細書に開示されている(この開示内容を本明細書で援用する)。ここでは金属キレートが、非キレート化メソトリオンと比較として、或る環境において、思いがけなく優れた安定性を有することが示されている。
【0018】
本明細書中に使用される「メソトリオン」という名称は、メソトリオンの塩及びキレート形態、並びに酸形態を含み、また幾何異性体を生じさせ得る任意のエノール互変異性体をも含む。さらに、或る事例において、種々の置換基及び/又はキレート形態は、光学異性及び/又は立体異性に関与することができる。全てのこのような互変異性形態、ラセミ混合物、及び異性体が、本発明の範囲に含まれる。
【0019】
メソトリオンの好適な塩は、農業又は園芸用途において塩を形成するための技術において周知であり許容されているカチオン又はアニオンの塩を含む。このような塩は、例えば、アミン、アルカリ金属塩基、アルカリ土類金属塩基、及び第四アンモニウム塩基を使用して形成することができる。
【0020】
メソトリオンを含む2−(置換型ベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオン化合物の金属キレートが、特に米国特許第5,912,207号明細書に記載されている。ある実施態様において、メソトリオンの好適な金属キレートは一般構造:
【化3】

(Mは二価又は三価金属イオンを表す)
を有している。
【0021】
好適には、二価又は三価金属イオンはCu2+、Co2+、Zn2+、Ni2+、Ca2+、Al3+、Ti3+、又はFe3+イオンであってよい。より好適には、金属イオンは二価遷移金属イオン、例えばCu2+、Ni2+、Zn2+、及びCo2+であってよい。より好適には、金属イオンはCu2+、及びZn2+、そして最も好適にはCu2+であってよい。
【0022】
本発明において使用するための除草剤である、メソトリオンの金属キレートは、上記の米国特許明細書に記載された方法によって、又は化学文献において利用又は記載された周知の方法を適用して改変することにより、調製することができる。具体的には、二価又は三価金属イオン源となる任意の適切な塩を使用することにより、本発明に従ってジオン化合物の金属キレートを形成することができる。特に好適な塩は、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩、及び酢酸塩を含む。
【0023】
本発明の顆粒は、除草に有効な量の除草剤を含有する。本明細書中に使用される「除草剤」という用語は、植物の成長を抑制又は緩和する化合物を意味する。「除草に有効な量」は、植物の成長に対する抑制効果又は緩和効果をもたらすことができるこのような化合物又はこのような化合物の組み合わせの量を示す。抑制効果又は緩和効果は、自然の発育からの全ての逸脱、例えば:死滅、遅延、葉枯れ、白化、矮化などを含む。例えば、死滅させられない植物は、しばしば発育阻害され、そして花成と非競合的に妨害される。「植物」という用語は、種子、苗、若木、根、塊茎、茎、柄、葉、及び果実を含む植物の全ての物理的部分を示す。
【0024】
本発明において使用するのに適した殺虫剤の一例としては、下記のうちの1種又は2種以上が挙げられる:アバメクチン、シアノイミン、アセトアミプリド、チオジカルブ、ニトロメチレン、ニテンピラム、クロチアニジン、ジノテフラン、フィプロニル、ルフェヌロン、ピリプフォキシフェン、チアクロプリド、フルキソフェニム、イミダクロプリド、チアメトキサム、クロルアントラニリプロール、ベータ・シフルトリン、ラムダ・シハロトリン、フェノキシカルブ、ジアフェンチウロン、ピメトロジン、ジアジノン、ジスルフォトン、プロフェノフォス、フラチオカルブ、シロマジン、シペルメトリン、タウ−フルバリネート、テフルトリン、スピノサド、エトフェンプロクス、カルボスルファン、プロパフォス、ペルメトリン、ベンスルタプ、ベンフラカルブ、リナキシピル及びバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringsiensis)生成物。特に好ましい好適な農薬は、アバメクチン、チオジカルブ、シアノイミン、アセトアミプリド、ニトロメチレン、ニテンピラム、クロチアニジン、ジノテフラン、フィプロニル、チアクロプリド、イミダクロプリド、チアメトキサム、クロルアントラニリプロール、ベータ・シフルトリン、ラムダ・シハロトリン、及びテフルトリンを含む。具体的には、チアメトキサムが挙げられる。
【0025】
本発明の顆粒は、殺虫に有効な量の殺虫剤を含有する。「殺虫に有効な量」という用語は、昆虫を駆除又は阻害することができるこのような化合物又はこのような化合物の組み合わせの量を示す。駆除効果又は緩和効果は、摂食の阻害、成長遅延、繁殖の防止、麻痺、及び死滅などを含む。
【0026】
本発明において使用するのに適した殺菌剤の一例としては、下記のうちの1種又は2種以上が挙げられる:アゾキシストロビン、ビテルタノール、カルボキシン、Cu2O、シモキサニル、シプロコナゾール、シプロジニル、ジクロロフルアミド、ジフェノコナゾール、ジニコナゾール、エポキシコナゾール、フェンピクロニル、フルジオキソニル、フルオキサストロビン、フルキコナゾール、フルシラゾール、フルシラゾール、フルトリアフォル、フララキスル、グアザチン、ヘキサコナゾール、ヒメキサゾール、イマザリル、イミベンコナゾール、イプコナゾール、クレソキシム−メチル、マンコゼブ、メタラキシル、メフェノキサム、メトコナゾール、ミクロブタニル、オキサジキシル、ペフラゾエート、ペンコナゾール、ペンシクロン、プロクロラズ、プロピコナゾール、ピロキロン、(±)−cis−1−(4−クロロフェニル)−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)シクロヘプタノール、スピロキサミン、テブコナゾール、チアベンダゾール、トリフルアミド、トリアゾキシド、トリアジメフォン、トリアジメノール、トリフロキシストロビン、トリフルミゾール、トリチコナゾール、ユニコナゾール、イソプロチオロン、カルプロパミド、チフルズアミド、チアジニル、プロベナゾール、ジクロシメト、フラメトピル、及びオリサストロビン。特に好適な殺菌剤は、アゾキシストロビン、プロピコナゾール、ジフェノコナゾール、フルジオキソニル、チアベンダゾール、テブコナゾール、メタラキシル、メフェノキサム、ミクロブタニル、フルオキサストロビン、トリタキソナゾール、及びトリフロキシストロビンを含む。具体的には、アゾキシストロビン、フルジオキソニル、及びメフェノキサムが挙げられる。
【0027】
本発明の顆粒は、殺菌に有効な量の殺菌剤を含有する。「殺菌に有効な量」という用語は、菌類の成長を防止、阻止、又は駆除することができるこのような化合物又はこのような化合物の組み合わせの量を示す。
【0028】
本発明はまた、ここで農薬と考えられる他の活性成分、例えば植物成長調節剤及び植物活性剤の使用を含む。好適な植物成長調節剤は、パクロブトラゾール及びトリネキサパク−エチルを含む。好適な植物活性剤は、アシベンゾラーS−メチルを含む。
【0029】
好ましくは、農薬は、メソトリオン、式Iの化合物、チアメトキサム、プロピコナゾール、メフェノキサム、フルジオキソニル、アゾキシストロビン、パクロブトラゾール、及びアシベンゾラーS−メチルから成るリストから選択される。好適には、農薬はメソトリオンである。好適には、農薬は式Iの化学物である。好適には、農薬はチアメトキサムである。好適には、農薬はメフェノキサムである。好適には、農薬はフルジオキソニルである。
【0030】
好適には、農薬は約0.05〜約2.0重量%(wt%)の濃度で顆粒内に存在する。より好適には、農薬は約0.12〜約1.0重量%の濃度で存在する。最も好適には、農薬は約0.12〜約0.4重量%の濃度で存在する。
【0031】
固形基材を調製するために使用することができる不活性材料と一例としては、乾燥粘土、炭酸カルシウム、煉瓦、軽石、パイロフィライト、カオリン、ドロマイト、プラスター、木粉、粉砕トウモロコシ軸、粉砕ラッカセイ殻、糖類、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、マグネシア、雲母、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン、氷晶石、バーミキュライト焼成石灰、石膏、パーライト、珪藻土、ベントナイト粘土、硫酸カルシウム、及びこれらの混合物が挙げられる。本発明の徐放性農薬組成物を調製するのに適した不活性材料の例が、米国特許第5,041,410号;同第5,219,818号;同第5,229,348号;同第6,231,660号;同第6,375,969号;同第6,416,775号及び同第6,613,138号の各明細書に見いだされる。本発明の典型的な制御放出顆粒において、不活性材料は、顆粒の大部分を形成してよい。好適には、不活性材料は最大約90重量%の濃度で存在してよい。しかしながら、顆粒に更なる材料が添加されるのに伴って、不活性材料の量はこれに応じて減少する。具体的には、本発明の顆粒がさらに(下記のような)肥料を含むときには、不活性材料の含有率は著しく、例えば約20重量%まで低減されてよい。
【0032】
好適には、固形基材は粘土から形成され、そして最も好適にはカオリン粘土から形成される。
【0033】
本発明の顆粒はさらに肥料を含んでよい。本明細書中に使用される「肥料」という用語は、植物栄養素又は植物ミネラル、例えば一次(N−P−K)又は二次(Ca−Mg−S)多量栄養素、及び/又は微量栄養素(B、Cu、Fe、塩化物、Mn、Mo及びZn)を植生に供給することができる任意の物質として定義されてる。
【0034】
本発明の制御放出顆粒内に使用することができる好適な肥料として、水溶性材料及び水不溶性材料、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、リン酸カルシウム及びこれらの水和物(例えば三重過リン酸石灰(triple super phosphate)の形態)、塩化カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、尿素、メチレン尿素、植生に微量栄養素、例えば銅、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、ホウ素、モリブデン、マンガン、鉄及びニッケルを提供することができる化合物、硫酸マグネシウム、鉄キレート、硫酸マンガン、硫酸ニッケル、硫酸亜鉛、硫酸銅、厩肥、有機肥料、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
尿素及びメチル尿素に加えて、好適な尿素系肥料含有顆粒基材内に使用することができる他のタイプの生物学的に利用可能な窒素化合物は、式NH2CONH(CH2NHCONH2nH(nは整数1〜10である)によって表されるメチレン尿素オリゴマー又はメチレン尿素オリゴマーの混合物を含む。このようなメチレン尿素オリゴマーは、メチレンジ尿素(NH2CONHCH2NHCONH2)、ジメチレントリ尿素(NH2CONHCH2NHCONHCH2NHCONH2)、トリメチレンテトラ尿素及びテトラメチレンペンタ尿素を含む。メチレン尿素オリゴマーの或る好適な混合物が、Nu-Gro Technologies(カナダ国)製のNutralene(登録商標)、Homestead Corporation製のMethex-40、及びNitroform(登録商標)のように商業的に入手可能である。
【0036】
好適には、本発明の顆粒において使用するための肥料は、尿素と、硝酸カリウムと、三重過リン酸石灰との混合物である。本発明のある実施態様において、肥料はさらに硫酸アンモニウムを含む。当業者ならば、その目的に最も適した、種々異なる肥料の量を選択することができる。すなわち、特定の用途に典型的なN−P−Kのレベル及び比が当業者に良く知られている。典型的には、肥料の混合物は、より高い窒素濃度を有することになる(例えば33−3−3又は29−3−4のN−P−K)。しかし、このような比率は、例えば新たに発芽した植物上に使用されるべき肥料において調節することができ、この場合、N−P−K比は例えば10−10−10であってよい。
【0037】
本発明の顆粒は、当業者に知られている種々の任意の成分を含有することもできる。例えば、助剤、例えばバインダー、アジュバント、再湿潤剤、崩壊助剤、脱ダスト剤、安定剤、界面活性剤、色素及び同様の任意の成分を含むことにより、安全に取り扱われ、しかも処理の必要のある区域に正確に施用するのに便利な制御放出顆粒を提供することができる。さらに、他の農薬(例えば除草剤、殺虫剤、殺菌剤、又は成長調節剤)が顆粒基材上又は顆粒基材内部に存在することもできる。
【0038】
好適な顆粒は事実上いかなる所望の形状であってもよく、例えば球体、円筒、楕円、ロッド、円錐、円板、針の形状、及び不規則な形状であってよい。理想的には、顆粒はほぼ球体であり、また平滑な表面を有しており、このような表面はバルク形態の顆粒に所望の流動特性をもたらすに役立つ。
【0039】
顆粒は典型的には、約0.1〜約30mm、具体的には約0.25〜約20mm、そしてより具体的には約0.5〜約15mmの粒子サイズを有するが、この範囲以外のサイズを用いることもできる。
【0040】
本発明はまた、本発明の制御放出顆粒の製造方法であって:
a) 油中の農薬のエマルジョンを形成し;
b) 顆粒化する条件下で微粉末形態の固形基材にこのエマルジョンを添加し;
c) 結果として生じた顆粒を乾燥させる
ことを含む、制御放出顆粒の製造方法を提供する。
【0041】
本発明はまた、本発明の制御放出顆粒の別の製造方法であって:
a) 固形基材に固形農薬を添加し;
b) 顆粒化する条件下で、いかなる農薬も含有しない油中水エマルジョンを添加し;
c) 結果として生じた顆粒を乾燥させる
ことを含む、制御放出顆粒の製造方法を提供する。
【0042】
本発明の制御放出顆粒を調製する際には、いくつかの問題点に直面し、これらを克服しなければならなかった。メソトリオンの顆粒を調製するための典型的な顆粒化法は、例えば、固形基材材料(微粉末の形態)に添加された水性メソトリオン・ミルベースを使用することを伴う。一旦湿分が特定のレベルに達すると、顆粒の形成が始まる。制御放出顆粒を調製する際に、単に油をメソトリオン・ミルベースとは別個に添加するだけでは、このことは、顆粒化がうまく進まず、結果として、所望の特性を有する顆粒が得られなくなることを意味した。すなわち、油を最初に添加した場合には、メソトリオンの前に顆粒化が発生し、その結果、顆粒全体にわたるメソトリオンの分布が不均一になり、メソトリオンを最初に添加した場合には、反対のことが生じ、そして顆粒全体を通して油は均一に分配されなかった。この問題を克服する上で、本発明の制御放出顆粒は、水性メソトリオン・ミルベースからではなく、メソトリオン・ミルベースと油とから形成されたエマルジョンから調製できることが判った。このようなエマルジョンを使用すると、顆粒化時に、油及びメソトリオンの両方が、顆粒全体にわたって均一に分配される。他の農薬を使用して本発明の顆粒を形成するときに、その農薬の物理特性に応じて、エマルジョンを形成する代わりに、油中に農薬を溶解又は懸濁させることが可能である。
【0043】
本発明において使用するのに好適な農薬ミルベースは、国際公開第2005/055714号パンフレット(この開示内容を本明細書で援用する)に記載された方法に記載された方法によって、又は化学文献中に使用又は記載された周知の方法を応用・適合することによって調製することができる。例えば、水、酢酸、非イオン性界面活性剤(例えばトリスチリルフェノール−ポリグリコールエーテル)及び農薬を一緒に混合する。次いで水酸化銅を添加する。消泡剤(例えばポリジメチルシロキサン)を、任意の増粘剤(例えばキサンタン・ガム)及び/又はアジュバント(例えば硝酸アンモニウム)と一緒に使用し、そして均一になるまでこのミルベースを混合する。好適には、ミルベースは農薬、トリスチリルフェノール−ポリグリコールエーテル、酢酸、水酸化銅、ポリジメチルシロキサン、硝酸アンモニウム及び水を含む。
【0044】
もちろん、当業者には明らかなように、農薬ミルベース−油エマルジョンを形成するために、ミルベース及び油に加えて界面活性剤が必要となることがある。加えて当業者ならば、顆粒化を向上させるために必要な条件は明らかであり、また効率的な顆粒化プロセスを達成するために、混合速度、固形原料及び固形原料中のフィルター/バインダーの組成物への液体の添加速度を変化させることができる。
【0045】
本発明の農薬−エマルジョンを形成する際に幅広い範囲の界面活性剤が有利に採用される。界面活性剤はアニオン性、カチオン性、非イオン性又はポリマー性の特徴を有していてよい。好適なアニオン性、非イオン性及びカチオン性界面活性剤の例が、米国特許第6,063,732号明細書の第5欄第1行〜第6欄第2行に挙げられている。上記内容を本明細書で援用する。
【0046】
さらに、特に“Mc Cutcheon's Detergents and Emulsifiers Annual” MC Publishing Corp., Ridgewood N. J., 1981、Satche, H., “Tensid-Taschenbuch”, Carl Hanser Verlag, Munich Nienna, 1981、並びにM.and J. Ash, “Encyclopedia of Surfactants”, Vol I-III, Chemical Publishing Co., New York, 1980-81に記載されている、製剤技術において習慣的に採用される界面活性剤も、本発明による顆粒の調製に適している。
【0047】
典型的な界面活性剤は、硫酸アルキル、例えば硫酸ラウリルジエタノールアンモニウム;アルキルアリール硫酸塩、例えばドデシルベンゼン硫酸カルシウム;アルキルフェノール−アルキレンオキシド付加生成物、例えばノニルフェノール−C18エトキシレート;アルコール−アルキレンオキシド付加生成物、例えばトリデシルアルコール−C16エトキシレート;石鹸、例えばステアリン酸ナトリウム;アルキルナフタレン硫酸塩、例えばジブチルナフタレン硫酸ナトリウム;スルホコハク酸のジアルキルエステル、例えばジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム;ソルビトールエステル、例えばオレイン酸ソルビトール;第四アミン、例えば塩化ラウリルトリメチルアンモニウム;脂肪酸のポリエチレングリコールエステル、例えばステアリン酸ポリエチレングリコール;エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー;及びモノ及びジアルキルリン酸エステルの塩を含む。好適には、界面活性剤は、リン酸エステル、より好適にはアルキルポリエトキシエタノールのリン酸エステル、例えばStepfac(登録商標)8180である。
【0048】
顆粒化した後、新しく形成された顆粒に、これらが乾燥する前に、乾燥剤及び/又は流動助剤を添加することができる。好適な乾燥剤及び/又は流動助剤の一例としては、シリカ、例えばHiSil 233及び他の乾燥剤、例えばタルカム粉末などが挙げられる。好適に、乾燥剤及び/又は流動助剤はHiSil 233である。
【0049】
除草剤とともに調製する場合には、本発明の制御放出顆粒は、数多くの農学的に重要な雑草、例えば単子葉植物雑草、例えばAgrostis spp.、Digitaria spp.(例えばD. ischaemum、D. sanguinalis))、Avena spp.、Setaria spp.、Lolium spp.、Echinochloa spp.、Scirpus spp.、Monochoria spp.、Sagittaria spp.、Bromus spp.、Alopecurus spp.、Sorgum halepense spp.、Rottboellia spp.、Cyperus spp.(例えばCyperus esculentus)、及び双子葉植物雑草、例えばStellaria spp.、Nasturtium spp.、Sinapis spp.、Solanum spp.、Phaseolus spp.、Taraxacum spp.(例えばTaraxacum officinale)、Trifolium spp.(例えばTrifolium repens)、Abutilon spp.、Sida spp.、Xanthium spp.、Amaranthus spp.、Chenopodium spp.、Ipomoea spp.、Chrysanthemum spp.、Galium spp.、Viola spp.、及びVeronica spp.に対して使用することができる。
【0050】
本発明の制御放出顆粒によって制御されてよい雑草の中からは、大型及び平滑型のメヒシバ、タンポポ、シロツメクサ、ムラサキツメクサ、ハコベ、ホトケノザ、コーン・スピードウェル、カタバミ、ニンブルウィード、ベントグラス、ヘラオオバコ、広葉たばこ、ドラーウィード(ペニーワート)、FLパースレー、ラムズクオーター、タデ、ブタクサ、野生スミレ、アカザ、ペニーワート、及びヘッジウィードを挙げられる。好適には、駆除されてよい雑草は、ドラーウィード、ペニーワート、及びカタバミである。
【0051】
本発明の目的上、「雑草」という用語は、望ましくない作物種、例えば自生作物を含む。例えば、ゴルフコース上のような芝草作物との関連では、パッティンググリーン芝のコヌカグサは、これが種々様々な草が栽培されているフェアウェイ区域で見いだされた場合には、「自生」と考えることができる。下に挙げた他の草も同様に、不都合な場所に見いだされたときには雑草と考えることができる。
【0052】
「現場」(locus)は、土壌、種子、及び苗、並びに既成の植生を含むものとする。
【0053】
本発明の利点は、有用植物:例えばフィールドコーン、ポップコーン、及びスウィートコーンを含むトウモロコシ(コーン);綿、稲、オーツ麦、ジャガイモ、甜菜、プランテーション作物(例えばバナナ、果樹、ゴムの木、養樹園)、ブドウの木、アスパラガス、ブッシュベリー(例えばブルーベリー)、ケーンベリー、クランベリー、亜麻、グレインソルガム、オクラ、ペパーミント、ダイオウ、スペアミント、及びサトウキビの成長中の作物における雑草を死滅させるために制御放出顆粒を施用するときに大抵見られる。
【0054】
「作物」は、種々の芝草、例えば寒冷期用芝草及び温暖期用芝草をも含むものとする。
【0055】
寒冷期用芝草は例えば、ブルーグラス(Poa L.)、例えばケンタッキー・ブルーグラス(Poa pratensis L.)、ラフ・ブルーグラス(Poa trivialis L.)、カナダ・ブルーグラス(Poa compressa L.)、及び一年生ブルーグラス(Poa annua L.);ベントグラス(Agrostis L.)、例えばクリーピング・ベントグラス(Agrostis palustris Huds.)、コロニアル・ベントグラス(Agrostis tenius Sibth.)、ベルベット・ベントグラス(Agrostis canina L.)、及びレッドトップ(Agrostis alba L.);フェスク(Festuca L.)、例えばトール・フェスク(Festuca arundinacea Schreb.)、メドー・フェスク(Festuca elatior L.)、及びファイン・フェスク、例えばクリーピング・レッド・フェスク(Festuca rubra L.)、チューイングス・フェスク(Festuca rubra var. commutata Gaud.)、シープ・フェスク(Festuca ovina L.)、及びハード・フェスク(Festuca longifolia);及びライグラス(Lolium L.)、例えば多年生ライグラス(Lolium perenne L.)、一年生(イタリアン)ライグラス(Lolium multiflorum L.)を含む。
【0056】
温暖期用芝草は、ハイブリッド及び一般のバミューダグラスを含むバミューダグラス(Cynodon L. C. Rich);ゾイシアグラス(Zoysia Willd.)、セントオーガスティングラス(イヌシバ(Stenotaphrum secundatum) (Walt.) Kuntze);及びセンチピードグラス(Eremochloa ophiuroids (Munro.) Hack.)を含む。
【0057】
さらに、「作物」は、育種又は遺伝子工学の常用の方法の結果として、害虫に対して耐性にされている作物、また除草剤又は除草剤クラス(及び好適には、本発明の除草剤)を含む農薬に対して耐性にされている作物を含むものとする。除草剤に対する耐性は、常用の作物品種と比較して、特定の除草剤による損傷されやすさが低減されることを意味する。HPPD阻害剤、例えばメソトリオン、EPSPS阻害剤、例えばグリホセート、又はグルホシネートに対して耐性になるように、作物を改質又は育種することができる。なお、トウモロコシはメソトリオンに対して内在的に耐性である。
【0058】
殺虫剤ととともに調製する場合には、本発明の制御放出顆粒は、数多くの農学的に重要な害虫、例えばゴキブリ属(Blatta spp.)、トノサマバッタ属(Locusta spp.)、チャバネゴキブリ属(Blattella spp.)、ヤガ属(Agrotis spp.)、コナガ属の種(Plutella spp.)、トリコプルシア属の種(Trichoplusia spp.)、アワノメイガ属の種(Ostrinia spp.)、スズメガ属の種(Manduca spp.)、ハナゾウムシ属(Anthonomus spp.)、ディアブロチカ属(Diabrotica spp.)、オチオリンクス属の種(Otiorhynchus spp.)、コガネムシ属の種(Scarabeidae spp.)、ゴミムシダマシ属の種(Tenebrio spp.)、フランクリニエラ属の種(Frankliniella spp.)、スリプス属の種(Thrips spp.)、トコジラミ属の種(Cimex spp.)、ジスデルクス属(Dysdercus spp.)、オイキスツス属(Euchistus spp.)、サシガメ属(Triatoma spp.)、ワタアブラムシ属(Aphis spp.)、ベミシア属の種(Bemisia spp.)、コッカス属の種(Coccus spp.)、レカニム属の種(Lecanium spp.)、コブアブラムシ属(Myzus spp.)、ツマグロヨコバイ属(Nephotettix spp.)、キジラミ属(Psylla spp.)、トリアロイロデス属の種(Trialeurodes spp.)、プラノコッカス属(Planococcus spp.)、シュードコッカス属の種(Pseudococcus spp.)、スズメバチ属(Vespa spp.)、ジプリオン属(Diprion spp.)、アエデス属(Aedes spp.)、オビキンバエ属の種(Chyrsomyia spp.)、ショウジョウバエ属の種(Drosophila spp.)、グロシナ属(Glossina spp.)、イエバエ属(Musca spp.)、クロキンバエ属(Phorbia spp.)、ガガンボ属(Tipula spp.)、サイアラ属の種(Sciarra spp.)、セイヨウシミ属の種(Lepisma spp.)、ブラジシア属の種(Bradysia spp.)、コリスチャ属の種(Corythuscha spp.)、ガルガフィア属の種(Gargaphia spp.)、ステファニチス属の種(Stephanitis spp.)、ポリファゴタルソネムス属の種(Polyhagotarsonemus spp.)、フィトネムス属の種(Phytonemus spp.)、パルビナリア属の種(Pulvinaria spp.)、ジアスピス属の種(Diaspis spp.)、ファルセノェカニウム属の種(Pharthenolecanium spp.)、ウナスピス属の種(Unaspis spp.)、ポピリア属(Popillia spp.)、コレウチス属の種(Choreutis spp.)、フィオルニア属の種(Fiornia spp.)、ロウムシ属の種(Ceroplastes spp.)、ナウパクタス属の種(Naupactus spp.)、及びスカテラ属の種(Scatella spp.)に対して使用することができる。
【0059】
殺菌剤ととともに調製する場合には、本発明の制御放出顆粒は、数多くの農学的に重要な真菌病、例えばフサリウム属の種(Fusarium spp.) (F. オキシポラム(oxyporum))、セプトリア属の種(Septoria spp.)(S. トリチシ(tritici), S. ノドラム(nodorum), S. リコペルシア(lycopersica))、フィトフソラ属の種(Phytopthora spp.) (P. インフェスタンス(infestans))、アルテルナリア属の種(Alternaria spp.) (A. ソラニ(solani))、リゾクトニア属の種(Rhizoctonia spp.) (R. ソラニ(Solani))、レベイルラ属の種(Leveillula spp.) (L. タウリカ(taurica))、フォマ属の種(Phoma spp.) (P. デストラクティバ(destructiva))、フルビア属の種(Fulvia spp) (F. フィルバ(filva))、ボツリチス属の種((Botrytis spp.) (B. シネラ(cinera))、ステムフィリウム属の種(Stemphylium spp.) (S. ソラニ(solani))、コレトリチュム属の種(Colletotrichum spp.) (C. ココデス(coccodes)及びC. グラミニコラ(graminicola))、ピレンコシャエタ属の種(Pyrencochaeta spp.) (P. リコペルシシ(lycopersici))、シュレロチニア属の種(Sclerotinia spp.) (S. スクレオチオラム(scleotiorum)及びS. ホモエオカルパ(homoeocarpa))、ジジメラ属の種(Didymella spp.) (D. ブリオニアエ(bryoniae))、グロエオデス属の種(Gloeodes spp.) (G. ポミゲナ(pomigena))、クラドスポリウム属の種(Cladosporium spp.) (C. ククメリナム(cucumerinum))、ピリキュラリア属の種(Pyricularia spp.) (P. オリザエ(oryzae))、プクシニア属の種(Puccinia spp.) (P. レコンジタ(recondita), P. ストリイフォルミス(striiformis), P. ホルデイ(hordei))、アスコチタ属の種(Ascochyta spp.)、モニリニア属の種(Monilinia spp.)、 スファエロセカ属の種(Sphaerotheca spp.) (S. フリジネア(fuliginea))、ポドスファエラ属の種(Podosphaera spp.) (P. ロイコトリカ(leucotricha))、エリシフェ(Erysiphe (E. グラミニス(graminis))、ウンシヌラ属の種(Uncinula spp.) (U. ネカトル(necator))、ウスチラゴ属の種(Ustilago spp.)、ベンツリア属の種(Venturia spp.) (V. イナエクアリス(inaequalis))、ギグナルジア属の種(Guignardia spp.)、ロイゾプス属の種(Rhizopus spp.)、トリコテシウム属の種(Trichothecium spp.)、ペニシリウム属の種(Penicillium spp.)、アスペルギルス属の種(Aspergillus spp.)、ピチウム属の種(Pythium spp.)、マイコスファレラ属の種(Mycosphaerella spp.) (M. フィジエンシス(fijiensis))、プラスモパラ属の種(Plasmopara spp.) (P. ビクチコラ(viticola))、ベルチシリウム属の種(Verticillium spp.)、セルコスポラ属の種(Cercospora spp.) (C. アラキジコラ(arachidicola))、ペロノスポラ属の種(Peronospora spp.) (P. タバシナ(tabacina))及びグロメレラ属の種(Glomerella spp.)に対して使用することができる。
【0060】
下記例は、説明を目的として示すものにすぎない。これらの例は、実施された試験全体の不可欠の代表として意図されるものではなく、本発明を限定するものでは決してない。当業者には明らかなように、農薬試験において、容易に制御できない多大な数の要因が、個々の試験の結果に影響を及ぼし、これらの結果を再現不能にするおそれがある。例えばこれらの結果は、環境要因、例えばとりわけ日光及び水の量、土壌のタイプ、土壌のpH、温度及び湿度に応じて変化することがある。また、除草剤の場合、植え付け深さ、個々の除草剤及び組み合わせ除草剤の施用速度、任意の解毒剤の施用速度、及び個々の除草剤の相互の比及び/又は個々の除草剤と解毒剤との比、並びに、被験作物又は雑草の性質が、試験結果に影響を与えることがある。結果は、作物品種内の作物間で変化する場合がある。
【0061】

例1−制御放出顆粒の調製
尿素(47.9重量%)、三重過リン酸石灰(5.8重量%)、及び硝酸カリウム(5.8重量%)をカオリン粘土(23.2重量%)と合体させた。[注:重量%は最終顆粒組成を意味するが、しかし乾燥プロセス中に除去された水を含む]。混合物をブレンダーに移し、そしてブレンドすることにより粗い粉末を形成した。この粗い粉末をFritsch Millに移し、そして著しく微細な粒子サイズまで微粉砕した。結果として得られた粉末をHobartミキサーに移し、そして液体成分{メソトリオン・ミルベース、0.4重量%又は1.4重量%(これにより、それぞれ顆粒中0.12重量%又は0.4重量%の最終濃度をもたらす);オレイン酸メチル(Agnique ME181)15.8重量%;界面活性剤(Stepfac(登録商標)8180)1.1重量%;及び水3.8重量%又は2.8重量%}を、混合中に添加した。好適な湿分レベルに達したときに顆粒化した。顆粒化後、HiSil 233を添加し、そして顆粒を乾燥させ篩にかけることにより、ダスト状微粒子及び大型顆粒を除去した。本発明の顆粒はこうして下記成分を含む。
【表1】

【0062】
加えて、対照顆粒も同様に調製したが、この対照顆粒は油を含有しなかった。
【0063】
例2−水中の放出速度の測定
制御放出メソトリオン顆粒を、例1に記載されているように調製した。対照として、メソトリオンの液体製剤をさらに、Turf Builder(登録商標)肥料顆粒上に噴霧した(すなわち油は存在しない)。
【0064】
各顆粒タイプに対して、40rpmで設定されたパドル攪拌機を含有するガラス容器内に、50gの試料を入れた。容器に500mlの脱イオン水を添加し、そしてタイマーをスタートさせた。規則的な時間間隔を置いて、2mlの試料溶液を取り出し、0.45ミクロン・フィルタを通して濾過することにより新しい瓶内に移した。容器に2mlの脱イオン水を添加することにより、一定の容積を維持した。1mlの濾過済試料溶液を1mlのアセトニトリルと混合させ、そしてHPLCバイアルに移した。各試料中に存在する活性成分の量を測定するために、HPLC分析を行った。結果を表2に示す。
【表2】

【0065】
このデータは、制御放出顆粒からのメソトリオンの放出相対速度が、対照顆粒の放出相対速度よりも遅いことを示している。例えば、1分後には、対照顆粒の場合0.004%であるのと比較して、制御放出顆粒の場合には0.002%のメソトリオンが検出された。30分後には、対照顆粒の場合0.015%であるのと比較して、制御放出顆粒の場合には0.006%のメソトリオンが検出された。120分後には、対照顆粒の場合0.027%であるのと比較して、制御放出顆粒の場合には0.007%のメソトリオンが検出された。
【0066】
例3−生物学的試験
本発明の制御放出顆粒(例1で製造)を、油を含有しない対照顆粒、及び顆粒を含有する商業的に入手可能なメソトリオンと比較した。イヌシバ(Stenotaphrum secundatum)品種Delmar(セントオーガスティングラス)及びギョウギシバ(Cynodon dactylon)(一般のバミューダグラス)の既成区画にシェーカー・ジャーを使用して手で顆粒を施用することにより、これらの草種に生じた損傷を評価した。雑草駆除アッセイのために、ドラーウィード(Hydrocotyle spp.)が自然の状態で存在しているイヌシバ(Stenotaphrum secundatum)品種Delmar、及びカタバミ(Oxalis spp.)が自然の状態で存在しているギョウギシバにも顆粒を施用し、そしてこれらの2種の雑草種から成る対照を評価した。草種及び雑草種対照に対する損傷を、処理後8日、14日、26日及び35日目に評価した。この試験は3部行った。
【0067】
表3A〜3Dは、この試験の結果を示している(平均値として示す)。ここでは、(1)は例1の制御放出顆粒であり、(2)は、例1の方法によって製造されているが、しかし油を欠いている顆粒であり、(3)は、N−P−K肥料(29−3−4)を含む商業的に利用可能なメソトリオン含有顆粒であり、(4)は、N−P−K肥料(29−3−4)を含む商業的に利用可能なアトラジン含有顆粒(Bonus(登録商標)S, Scotts Company)である。
【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

注:同一文字が後に付けられた平均値は、有意差を有さない(P=0.05、スチューデント−ニューマン−クールズ)
【0068】
例4−生物学的試験
イヌシバ(Stenotaphrum secundatum)品種Floratus(セントオーガスティングラス)及びギョウギシバ(Cynodon dactylon)品種Tifway(ハイブリッド・バミューダグラス)の既成区画に顆粒を施用するために、商業タイプの散布機を使用して上記試験を繰り返すことにより、これらの草種に生じた損傷を評価した。ドラーウィード(Hydrocotyle spp.)が自然の状態で存在しているイヌシバ(Stenotaphrum secundatum)品種Floratusにも顆粒を施用し、そしてドラーウィード(Hydrocotyle spp.)から成る対照を評価した。草種及び雑草種対照に対する損傷を、処理後11日及び35日目(DAT)に評価した。
【0069】
表4は、この試験の結果を示している(平均値として示す)。ここでは、(1)は例1の制御放出顆粒であり、(2)は、例1の方法によって製造されているが、しかし油を欠いている顆粒であり、(3)は、N−P−K肥料(29−3−4)を含む商業的に利用可能なメソトリオン含有顆粒であり、(4)は、N−P−K肥料(29−3−4)を含む商業的に利用可能なアトラジン含有顆粒(Bonus(登録商標)S, Scotts Company)である。
【表7】

【0070】
例5−生物学的試験
例3を繰り返し、これとともに、ギョウギシバ(Cynodon dactylon)品種Tifway(バミューダグラス)中に自然の状態で存在しているカタバミ(Oxalis spp.)の駆除に関して、更なるデータ点を記録した。データ点は処理から3日後及び31日後に収集した。
【0071】
表5A及び5Bは、この試験の結果を示している(平均値として示す)。ここでは、(1)は例1の制御放出顆粒であり、(2)は、例1の方法によって製造されているが、しかし油を欠いている顆粒であり、(3)は、N−P−K肥料(29−3−4)を含む商業的に利用可能なメソトリオン含有顆粒であり、(4)は、N−P−K肥料(29−3−4)を含む商業的に利用可能なアトラジン含有顆粒(Bonus(登録商標)S, Scotts Company)である。
【表8】

【表9】

【0072】
例6−制御放出顆粒の調製
尿素(47.9重量%)、三重過リン酸石灰(5.8重量%)、及び硝酸カリウム(5.8重量%)をカオリン粘土(23.2重量%)と合体させた。[注:重量%は最終顆粒組成を意味するが、しかし乾燥プロセス中に除去された水を含む]。混合物をブレンダーに移し、そしてブレンドすることにより粗い粉末を形成した。この粗い粉末を続いて、Fritsch Millを使用して粉末に微粉砕した。結果として得られた粉末をHobartミキサーに移した。混合しながら、式
【化4】

の化合物を(0.2重量%濃度を提供するための量で)、固形の形態で添加し、そして粉末全体にわたって均一に分布するようにしておいた。15.8重量%の油(オレイン酸メチル、Agnique ME 181)、1.1重量%の界面活性剤(Stepfac(登録商標) 8180)、及び3.8重量%の水を、混合しながら添加した。好適な湿分レベルに達したときに顆粒化した。顆粒化後、HiSil 233を添加し、そして顆粒を乾燥させ篩にかけることにより、ダスト状微粒子及び大型顆粒を除去した。
【0073】
例7−水中の放出速度の測定
例6において調製された顆粒からの式I化合物の放出速度を、表2に記載されているように評価した。結果を表6に示す。
【表10】

【0074】
このデータは、制御放出顆粒からの式I化合物の放出相対速度が、対照顆粒の放出相対速度よりも遅いことを示している。例えば、1分後には、対照顆粒の場合0.050%であるのと比較して、制御放出顆粒の場合には0.006%の式I化合物が検出された。30分後には、対照顆粒の場合0.082%であるのと比較して、制御放出顆粒の場合には0.015%の式I化合物が検出された。120分後には、対照顆粒の場合0.065%であるのと比較して、制御放出顆粒の場合には0.019%の式I化合物が検出された。
【0075】
例8−生物学的試験
例6で製造された本発明の制御放出顆粒を、油を含有しない対照顆粒と比較した。イヌシバ(Stenotaphrum secundatum)品種Delmar(セントオーガスティングラス)及びギョウギシバ(Cynodon dactylon)(一般のバミューダグラス)の既成区画に顆粒を施用することにより、これらの草種に生じた損傷を評価した。雑草駆除アッセイのために、シロツメクサ(Trifolium repens)が存在しているイヌシバ(Stenotaphrum secundatum)品種Delmarにも顆粒を施用し、そしてこの雑草種から成る対照を評価した。草種及び雑草種対照に対する損傷を、処理後7日、11日及び15日目に評価した。
【0076】
表7A及び7Bは、この試験の結果を示している(平均値として示す)。ここでは、(1)は例6の制御放出顆粒であり、(2)は、DG Lite顆粒上に式I化合物を噴霧することにより形成された顆粒であり、(3)は、式I化合物の液体製剤であり、そして(4)は未処理対照である。
【表11】

【表12】

【0077】
本発明を好ましい実施態様及び例を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、記載した実施態様だけに限定されるものではない。当業者に明らかなように、添付の特許請求の範囲によって定義され制限された本発明の思想及び範囲を逸脱することなしに、上記発明に変更及び改変を加えることができる。本明細書中に引用された全ての刊行物全体を、それぞれの個々の刊行物が引用されるように具体的且つ個別に指示されているのと同程度に、全ての目的において本明細書で援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形基材、農薬及び油を含む制御放出顆粒であって、該農薬及び油が、該顆粒全体にわたって分配されている、制御放出顆粒。
【請求項2】
該農薬が除草剤、殺虫剤、殺菌剤、又は成長調節剤である、請求項1に記載の制御放出顆粒。
【請求項3】
該農薬が、メソトリオン、チアメトキサム、プロピコナゾール、アゾキシストロビン、メフェノキサム、フルジオキソニル、及び式
【化1】

の化合物から成る群から選択される、請求項2に記載の制御放出顆粒。
【請求項4】
該農薬がメソトリオンである、請求項3に記載の制御放出顆粒。
【請求項5】
該メソトリオンが金属キレートの形態である、請求項4に記載の制御放出顆粒。
【請求項6】
該メソトリオンが銅キレートの形態である、請求項5に記載の制御放出顆粒。
【請求項7】
該農薬が式
【化2】

の化合物である、請求項3に記載の制御放出顆粒。
【請求項8】
該油がC4〜C18のアルキルエステルである、請求項1から7までのいずれか1項に記載の制御放出顆粒。
【請求項9】
該油がオレイン酸メチルである、請求項8に記載の制御放出顆粒。
【請求項10】
さらに肥料を含む、請求項1から9までのいずれか1項に記載の制御放出顆粒。
【請求項11】
該肥料が、尿素と、硝酸カリウムと、三重過リン酸石灰(triple super phosphate)との混合物である、請求項10に記載の制御放出顆粒。
【請求項12】
該肥料が硫酸アンモニウムである、請求項10に記載の制御放出顆粒。
【請求項13】
該固形基材が不活性材料である、請求項1から12までのいずれか1項に記載の制御放出顆粒。
【請求項14】
該固形基材がカオリン粘土である、請求項13に記載の制御放出顆粒。
【請求項15】
制御放出顆粒の製造方法であって:
a) 油中のメソトリオンのエマルジョンを形成すること;
b) 顆粒化する条件下で微粉末形態の固形基材に該エマルジョンを添加すること;
c) 結果として生じた顆粒を乾燥させること、
を含む、制御放出顆粒の製造方法。
【請求項16】
制御放出顆粒の製造方法であって:
a) 固形基材に固形農薬を添加すること;
b) 顆粒化する条件下で、いかなる農薬も含有しない油中水エマルジョンを添加すること;
c) 結果として生じた顆粒を乾燥させること、
を含む、制御放出顆粒の製造方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の方法に従って製造された制御放出顆粒。
【請求項18】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の制御放出除草剤含有顆粒を雑草の現場に施用することを含む、雑草の成長を抑制又は緩和する方法。
【請求項19】
該雑草が芝草内に存在する、請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2009−544720(P2009−544720A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521913(P2009−521913)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/073944
【国際公開番号】WO2008/014185
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】