説明

制御装置、保護装置および保護方法

【課題】不揮発性RAMのROM領域に対する意図しないデータの書き込みを防止すると共に、ROM領域におけるデータを必要に応じて更新できるようにすること。
【解決手段】許可信号が入力されている間、ROM領域12へのデータの書き込みが許可されるため、このタイミングで実際にROM領域12への書き込みを発生させることにより、CPU20による処理に際して読み出すべきプログラムなどを必要に応じて更新できる。そして、許可信号の入力が終了した際に、それが意図的に入力したものであったのか否かに拘わらず、レジスタ32に格納されているアドレス情報を初期値に更新する。これにより、ノイズの影響でレジスタ32のアドレス情報が書き換えられた場合であっても、これを初期値に戻すことができるため、以降、ROM領域12への意図しないデータの書き込みが行われてしまうことを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性RAMと、CPUと、これらの間に介在する保護部と、を備えた制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不揮発性RAMの記憶領域をROM領域とRAM領域とに使い分けるべく、この不揮発性RAMとCPUとの間に、ROM領域として規定された記憶領域への書き込みを禁止する保護部(バス制御)を介在させることが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この構成では、保護部に設けられたレジスタにROM領域を特定可能なアドレス情報を格納しておき、このアドレス情報に基づいて、ROM領域へのデータの書き込みというアクセスの発生を検出し、そのような書き込みを禁止できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−114497号公報(例えば図3,図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した構成では、CPUによる処理に際して読み出すべきプログラムなどのデータをROM領域に格納して用いることになるが、この種のデータは、必要に応じて更新できるようにしておくことが望ましく、このためには、例えば、外部からの信号入力期間中にのみ、ROM領域へのデータの書き込みが許可されるようにすることが考えられる。
【0006】
ただ、このような信号入力を許容することは、ノイズなどによる意図しない信号の入力も発生しやすくなることを意味し、この信号如何によってはアドレス情報が書き換えられてしまう。アドレス情報が書き換えられることは、例えば、ROM領域の一部が誤ってRAM領域に属するものとされてしまった場合に、意図しないROM領域へのデータの書き込みが行われやすくなるため、望ましいことではない。
【0007】
つまり、上述した構成では、ROM領域に格納されたデータの更新という点での利便性を高めようとすると、意図しないROM領域へのデータの書き込みが行われやすくなってしまうという課題があった。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ROM領域におけるデータを必要に応じて更新できるようにすると共に、不揮発性RAMのROM領域に対する意図しないデータの書き込みを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため第1の構成(請求項1)は、データの読み出しのみを行うためのROM領域、および、データの読み書き両方を行うためのRAM領域を含む複数の記憶領域が規定されている不揮発性RAMと、前記不揮発性RAMに対して、前記ROM領域へのデータの書き込みを含む複数種類のアクセスを行うことができるCPUと、前記CPUと前記不揮発性RAMとの間に介在する保護部と、を備えた制御装置(例えば、マイクロコンピュータ等)である。
【0010】
そして、前記保護部は、前記不揮発性RAMの記憶領域のうち、前記ROM領域および前記RAM領域それぞれのアドレス範囲を特定可能なアドレス情報を格納するレジスタと、前記CPUからのアクセスとして、前記ROM領域へのデータの書き込みが発生した場合に、該アクセスによる前記ROM領域へのデータの書き込みを、当該保護部の外部から所定の許可信号が入力されている間のみ許可するアクセス許可手段と、前記許可信号の入力が開始された以降、該入力が終了した際に、前記レジスタに格納されているアドレス情報を、初期値として定められたアクセス情報に更新する初期化手段と、を備えている。さらに、データバスと命令バスの調停を行う手段を備えていてもよい。
【0011】
このような構成に係る制御装置では、許可信号が入力されている間、ROM領域へのデータの書き込みが許可されるため、このタイミングで実際にROM領域への書き込みを発生させれば、CPUによる処理に際して読み出すべきプログラムなどを必要に応じて更新することができる。
【0012】
ここで、許可信号の入力を許容することは、ノイズなどにより意図しない信号が許可信号かのように発生しやすくなることを意味し、この信号如何によってはレジスタのアドレス情報が書き換えられてしまう。ここで、アドレス情報が書き換えられ、例えば、ROM領域における一部のアドレス範囲が誤ってRAM領域に属するものとされてしまうと、以降、意図しないROM領域へのデータの書き込みが行われやすくなるため、望ましいことではない。
【0013】
ところが、上記構成では、許可信号の入力が終了した際に、それが意図的に入力したものであったのか、ノイズの影響によるものであったのかに拘わらず、レジスタに格納されているアドレス情報を初期値に更新している。これにより、仮にノイズの影響でアドレス情報が書き換えられていたとしても、これを初期値に戻すことができるため、以降、ROM領域への意図しないデータの書き込みが行われてしまうことを防止することができる。
【0014】
こうして、上記構成であれば、ROM領域におけるデータを必要に応じて更新できるようにすると共に、不揮発性RAMのROM領域に対する意図しないデータの書き込みを防止することができる。
【0015】
この構成において、保護部におけるレジスタには、制御装置または保護部が起動した以降、初期値となるアドレス情報をレジスタに格納しておくとよい。このための構成としては、例えば、以下に示す第2の構成(請求項2)のようにすることが考えられる。
【0016】
第2の構成において、前記不揮発性RAMは、あらかじめ前記アドレス情報を格納している。また、前記保護部において、前記初期化手段は、前記制御装置または当該保護部が起動した際に、前記不揮発性RAMに格納された前記アドレス情報を初期値として前記レジスタに格納し、また、前記許可信号の入力が終了した際に、前記不揮発性RAMに格納された前記アドレス情報を前記レジスタへと格納し直すことにより、初期値として定められたアクセス情報に更新する。
【0017】
この構成であれば、制御装置または保護部が起動した際に、保護部のレジスタに初期値となるアドレス情報を格納しておくことができる。
ここでは、初期値となるアドレス情報をあらかじめ不揮発性RAMに格納しているが、ある程度高い信頼性のもとでアドレス情報の記憶状態を維持できるのであれば、不揮発性RAMに限らず、保護部からアクセス可能な他のメモリにアドレス情報を格納しておくこととしてもよい。
【0018】
また、上記各構成において、許可信号の入力が開始されたこと、および、入力が終了したことを判定するための具体的な構成については特に限定されないが、例えば、以下に示す第3の構成(請求項3)のようにすることが考えられる。
【0019】
第3の構成では、前記保護部において、前記許可信号の入力が開始された際の信号レベルの変化を示す開始エッジ、および、該入力が終了した際の信号レベルの変化を示す終了エッジそれぞれを検出するエッジ検出手段、が備えられている。そして、前記アクセス許可手段は、前記CPUからのアクセスとして、前記ROM領域へのデータの書き込みが発生した場合に、該アクセスによる前記ROM領域へのデータの書き込みを、前記エッジ検出手段により開始エッジが検出されてから前記終了エッジが検出されるまでの間のみ許可する。
【0020】
この構成であれば、許可信号の入力開始時に発生する開始エッジ、および、入力終了時に際に発生する終了エッジに基づいて、許可信号の入力が開始されたこと、および、入力が終了したことを判定することができる。
【0021】
この構成における「開始エッジ」とは、許可信号の入力が開始された場合における信号レベルの変化であり、「終了エッジ」とは、許可信号の入力が終了した場合における信号レベルの変化である。
【0022】
なお、この構成では、開始エッジおよび終了エッジに基づいて判定を行っているが、許可信号の信号レベルにより判定を行うように構成してもよい。
また、この構成におけるエッジの判定は、許可信号をデジタル処理による遅延回路により遅延させた状態で行うように構成してもよい。
【0023】
また、この構成において、許可信号の開始エッジおよび終了エッジを検出するための具体的な構成としては、例えば、以下に示す第4の構成(請求項4)のようにすることが考えられる。
【0024】
第4の構成は、前記保護部において、当該保護部の外部から入力された前記許可信号を流通させる流通経路、が備えられている。そして、前記エッジ検出手段は、前記流通経路を流通する信号について前記開始エッジおよび前記終了エッジそれぞれを検出する。
【0025】
この構成であれば、流通経路を流通する信号に基づいて、許可信号の開始エッジおよび終了エッジを検出することができる。
さらに、この構成においては、開始エッジおよび終了エッジの検出をより高精度に行えるようにすべく、以下に示す第5の構成(請求項5)のようにすることが考えられる。
【0026】
第5の構成は、前記保護部において、前記流通経路を流通する信号が前記許可信号として定められた範囲の信号レベルであれば、該信号レベルをHレベルおよびLレベルのいずれか一方に変換し、また、前記流通経路を流通する信号が前記許可信号として定められた範囲の信号レベルでなければ、該信号レベルをHレベルおよびLレベルのいずれか他方に変換して出力するフィルタ回路、が備えられている。そして、前記エッジ検出手段は、前記フィルタ回路から出力された信号の信号レベルがHレベルおよびLレベルのいずれか一方に変化した際のエッジを前記開始エッジとして検出する一方、前記流通経路の信号レベルがHレベルおよびLレベルのいずれか他方に変化した際のエッジを前記終了エッジとして検出する。
【0027】
この構成であれば、開始エッジおよび終了エッジの検出に先立ち、流通経路を流通する信号の信号レベルを統一的なHレベルまたはLレベルに変換しているため、開始エッジおよび終了エッジの検出を、アナログ値で行う場合に比べて精度よく行えるようになる。
【0028】
この構成における信号レベルの変換は、例えば、以下に示す第6の構成(請求項6)により実現することが考えられる。
第6の構成は、前記保護部において、前記フィルタ回路は、前記流通経路の信号レベルと所定の基準レベルとを比較する比較器を有しており、該比較器が、前記流通経路の信号レベルが前記基準レベルよりも高い場合にHレベルおよびLレベルのいずれか一方を出力し、前記流通経路の信号レベルが前記基準レベルよりも低い場合にHレベルおよびLレベルのいずれか他方を出力する。
【0029】
この構成であれば、流通経路の信号レベルと所定の基準レベルとを比較した結果として、信号レベルをHレベルまたはLレベルに変換することができる。
なお、上述したように、流通経路を流通する信号の信号レベルを変換する構成においては、例えば、第7の構成(請求項7)のようにするとよい。
【0030】
第7の構成のうち、前記保護部において、前記アクセス許可手段は、前記許可信号と所定のクロック信号との論理積となる信号により、当該保護部の外部から所定の許可信号が入力されている期間であることを判定する。
【0031】
この構成であれば、流通経路を流通する信号の信号レベルをクロック信号に同期させた状態で、許可信号の入力が開始されてから終了するまでの期間を判定することができる。
また、上記課題を解決するため第8の構成(請求項8)は、データの読み出しのみを行うためのROM領域、および、データの読み書き両方を行うためのRAM領域を含む複数の記憶領域が規定されている不揮発性RAMと、前記不揮発性RAMに対して、前記ROM領域へのデータの書き込みを含む複数種類のアクセスを行うことができるCPUと、の間に介在する保護装置である。そして、前記不揮発性RAMの記憶領域のうち、前記ROM領域および前記RAM領域それぞれのアドレス範囲を特定可能なアドレス情報を格納するレジスタと、前記CPUからのアクセスとして、前記ROM領域へのデータの書き込みが発生した場合に、該アクセスによる前記ROM領域へのデータの書き込みを、当該保護部の外部から所定の許可信号が入力されている間のみ許可するアクセス許可手段と、前記許可信号の入力が開始された以降、該入力が終了した際に、前記レジスタに格納されているアドレス情報を、初期値として定められたアクセス情報に更新する初期化手段と、を備えている。
【0032】
この保護装置であれば、上述した各構成に係る制御装置の一部を構成できる。
この保護装置については、上述した第2〜第7の構成と同様に構成してもよい。
また、上記課題を解決するためには、データの読み出しのみを行うためのROM領域、および、データの読み書き両方を行うためのRAM領域を含む複数の記憶領域が規定されている不揮発性RAMと、前記不揮発性RAMに対して、前記ROM領域へのデータの書き込みを含む複数種類のアクセスを行うことができるCPUと、の間に介在し、前記不揮発性RAMの記憶領域のうち、前記ROM領域および前記RAM領域それぞれのアドレス範囲を特定可能なアドレス情報を格納するレジスタが備えられた保護装置に、前記CPUからのアクセスとして、前記ROM領域へのデータの書き込みが発生した場合に、該アクセスによる前記ROM領域へのデータの書き込みを、当該保護部の外部から所定の許可信号が入力されている間のみ許可するアクセス許可手順と、前記許可信号の入力が開始された以降、該入力が終了した際に、前記レジスタに格納されているアドレス情報を、初期値として定められたアクセス情報に更新する初期化手順と、を実行させる、という不揮発性RAMの保護方法(請求項9)とすることも考えられる。
【0033】
この方法を上述した保護部または保護装置に実行させることにより、上記各構成と同様の作用、効果を得ることができる。
この方法は、各手順をコンピュータシステムに実行させるためのプログラムとすることもでき、このプログラムを実行するコンピュータシステムは、上記各構成と同様の作用、効果を得ることができる。
【0034】
なお、このプログラムは、コンピュータシステムによる処理に適した命令の順番付けられた列からなるものであって、各種記録媒体や通信回線を介して制御装置、保護装置や、これを利用するユーザ等に提供されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】制御装置の全体構成を示すブロック図
【図2】保護部の構成を示すブロック図
【図3】フィルタ回路の具体例を示す回路図およびタイミングチャート
【図4】別の実施形態におけるフィルタ回路の具体例を示す回路図およびタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(1)全体構成
制御装置1は、図1に示すように、複数の記憶領域が規定されている不揮発性RAM10と、不揮発性RAM10に対して複数種類のアクセスを行うことができるCPU20と、CPU20と不揮発性RAM10との間に介在する保護部30と、を備えている。
【0037】
不揮発性RAM10は、データの読み出しのみを行うためのROM領域12、データの読み書き両方を行うためのRAM領域14、および、アドレス情報を格納するアドレス領域16を含む複数の記憶領域が規定されている。このアドレス情報とは、ROM領域12およびRAM領域14それぞれのアドレス範囲を特定可能な情報であり、本実施形態では、各領域のアドレス範囲そのものを規定している。
【0038】
CPU20は、不揮発性RAM10に対し、ROM領域12からのデータの読み出し、ROM領域12へのデータの書き込み、RAM領域14からのデータの読み出し、および、RAM領域14へのデータの書き込み、などを含む複数種類のアクセスを選択的に実行する。
【0039】
保護部30は、CPU20からのアクセスに基づくCPU20と不揮発性RAM10とのやりとりを中継、調停するものであり、図2に示すように、アドレス情報を格納するためのレジスタ32、保護部30の外部から入力される許可信号を流通させる流通経路34、流通経路34中に挿入されたフィルタ回路36、保護部30全体を制御する制御部38などを備えている。
【0040】
これらのうち、フィルタ回路36は、流通経路34を流通する信号が許可信号として定められた範囲の信号レベルであれば、その信号レベルをHレベルおよびLレベルのいずれか一方に変換し、許可信号として定められた範囲の信号レベルでなければ、その信号レベルをHレベルおよびLレベルのいずれか他方に変換して制御部38へ出力する。なお、本実施形態において、許可信号は、専用端子39を介して保護部30外部から入力されるものであるが、バス経由で制御装置1外部から入力されたもの(この場合、制御部38経由で入力される;図2の破線矢印参照)であってもよい。
【0041】
具体的な構成としては、図3(a)に示すように、許可信号とクロック信号(CLK)との論理積(HレベルまたはLレベル)で表される信号を生成する論理積回路110、論理積回路110の出力で動作して電源信号を接地まで導通させるオープンコレクタのスイッチング素子120、電源信号の信号レベルを電源信号より低い基準レベルと比較する比較器130、などで構成されている。なお、比較器130は、入力のレベル変動に応じてヒステリシスを持たせた構成としてもよい。
【0042】
このフィルタ回路36では、許可信号が入力されていなければ、スイッチング素子120が動作しないため、電源信号が比較器130に入力されて、電源信号と基準レベルとが比較される。上述したとおり、基準レベルは電源信号よりも信号レベルが低いため、比較器130の出力はHレベルとなる(図3(b)t0〜t1,t2〜t3,t4〜t5)。
【0043】
一方、許可信号が入力されると、スイッチング素子120が動作するため、電源信号が接地まで導通され、電源信号が比較器130に入力されなくなる、つまり比較器130における一方の入力がLレベルとなる。この場合、比較器130の出力はLレベルとなる(図3(b)t1〜t2,t3〜t4,t5〜t6)。
【0044】
また、制御部38は、CPU20からのアクセスに基づくCPU20と不揮発性RAM10とのやりとりを中継する回路であり、更に、CPU20からのアクセスとして、ROM領域12へのデータの書き込みが発生した場合には、許可信号が入力されている間のみ、そのアクセスによるROM領域12への書き込みを許可するように構成されている。
【0045】
具体的には、流通経路34における信号を監視しつつ、CPU20からのアクセスに係るアクセス先のチェックを行い、その信号レベルおよびアクセス先の組合せにより、「許可信号が入力されている間における書き込みの許可」を実現している。
【0046】
前者の「流通経路34における信号の監視」は、フィルタ回路36(比較器130)からの出力をチェックすることで行っており、この出力に、許可信号の入力が開始された場合のレベル変更を伴うエッジ(開始エッジ)が発生したら、許可信号の入力が開始されたと判定し、以降、その状態が継続していれば、許可信号が入力されていると判定する。このように、制御部38は、フィルタ回路36からの出力に基づいて、許可信号の信号レベルが変化した際のエッジを間接的に検出している。
【0047】
後者の「アクセス先のチェック」は、CPU20からのアクセスに係るアクセス先と、レジスタ32に格納されたアドレス情報で示されるアドレス範囲と、を比較することで行っており、アクセス先とアドレス情報で示されるアドレス範囲とが少なくとも一部重なっている場合に、CPU20からのアクセスが、ROM領域12へのデータの書き込みであると判定する。なお、レジスタ32のアドレス情報は、制御装置1または保護部30の起動時に、制御部38が、不揮発性RAM10のアドレス領域から読み出して初期値として格納する。
【0048】
また、制御部38は、許可信号が入力された以降、その入力が終了した際に、不揮発性RAM10に格納されたアドレス情報をレジスタ32へと格納し直すことにより、このアドレス情報を初期値として定められたアクセス情報に更新する。
【0049】
このような構成の制御装置1では、保護部30外部から許可信号が入力されていなければ、保護部30からの出力信号がHレベルとなり(図3(b)t0〜t1,t2〜t3,t4〜t5)、こうしてHレベルとなっている間、ROM領域12への書き込みが発生したとしても、その書き込みが禁止される。
【0050】
一方、保護部30外部から許可信号が入力されると、それが意図的なものであるのか、ノイズの影響によるものであるのかに拘わらず、保護部30からの出力信号がLレベルとなり(同図t1〜t2,t3〜t4,t5〜t6)、こうしてLレベルとなっている間、ROM領域12への書き込みが発生したとしても、その書き込みが許可される。そして、許可信号の入力が終了すると、レジスタ32に格納されているアドレス情報が、不揮発性RAM10に格納されたアドレス情報に更新される(同図t2,t4,t6)。
(2)作用,効果
本実施形態における制御装置1では、許可信号が入力されている間、ROM領域12へのデータの書き込みが許可されるため(図3(b)t1〜t2,t3〜t4,t5〜t6)、このタイミングで実際にROM領域への書き込みを発生させれば、CPU20による処理に際して読み出すべきプログラムなどを必要に応じて更新することができる。
【0051】
ここで、許可信号の入力を許容することは、ノイズなどにより意図しない信号が許可信号かのように発生しやすくなることを意味し、この信号如何によってはレジスタ32のアドレス情報が書き換えられてしまう。ここで、アドレス情報が書き換えられ、例えば、ROM領域12における一部のアドレス範囲が誤ってRAM領域14に属するものとされてしまうと、以降、意図しないROM領域12へのデータの書き込みが行われやすくなるため、望ましいことではない。
【0052】
ところが、上記実施形態では、許可信号の入力が終了した際に、それが意図的に入力したものであったのか、ノイズの影響によるものであったのかに拘わらず、レジスタ32に格納されているアドレス情報を初期値に更新している(同図t2,t4,t6)。これにより、仮にノイズの影響でアドレス情報が書き換えられていたとしても、これを初期値に戻すことができるため、以降、ROM領域12への意図しないデータの書き込みが行われてしまうことを防止することができる。
【0053】
こうして、上記実施形態であれば、ROM領域12におけるデータを必要に応じて更新できるようにすると共に、不揮発性RAM10のROM領域12に対する意図しないデータの書き込みを防止することができる。
【0054】
また、上記実施形態においては、制御装置1または保護部30が起動した以降、事前にアドレス情報をレジスタ32に格納しておくことができる。
また、上記実施形態においては、許可信号の入力開始時に発生する開始エッジ、および、入力終了時に発生する終了エッジに基づき、許可信号の入力が開始されたこと、および、入力が終了したことを判定することができる。
【0055】
また、上記実施形態においては、流通経路34を流通する信号により、許可信号の開始エッジおよび終了エッジを間接的に検出することができる。
また、上記実施形態では、流通経路34にフィルタ回路36を挿入することにより、開始エッジおよび終了エッジの検出に先立ち、流通経路34を流通する信号の信号レベルを統一的なHレベルまたはLレベルに変換することができる。これにより、開始エッジおよび終了エッジの検出を、アナログ値で行う場合に比べて精度よく行えるようになる。
【0056】
より具体的には、比較器130により、流通経路34の信号レベルと所定の基準レベルとを比較した結果として、流通経路34を流通する信号の信号レベルを変換することができる。
(3)変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0057】
例えば、上記実施形態においては、初期値となるアドレス情報をあらかじめ不揮発性RAM10に格納している構成を例示ししたが、ある程度高い信頼性のもとでアドレス情報の記憶状態を維持できるのであれば、不揮発性RAM10に限らず、保護部30からアクセス可能な他のメモリにアドレス情報を格納しておくこととしてもよい。
【0058】
また、フィルタ回路36は、例えば、図4(a)に示すように、ADコンバータ(ADC)210およびデジタルフィルタ220などで構成し、図4(b)に示すように、デジタル処理で許可信号を遅延させた状態で信号レベルのエッジ検出が行われるように構成してもよい。
(4)本発明との対応関係
以上説明した実施形態において、制御部38が本発明におけるアクセス許可手段、初期化手段、エッジ検出手段である。
【符号の説明】
【0059】
1…制御装置、10…不揮発性RAM、12…ROM領域、14…RAM領域、16…アドレス領域、20…CPU、30…保護部、32…レジスタ、34…流通経路、36…フィルタ回路、38…制御部、110…論理積回路、120…スイッチング素子、130…比較器、210…ADコンバータ、220…デジタルフィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データの読み出しのみを行うためのROM領域、および、データの読み書き両方を行うためのRAM領域を含む複数の記憶領域が規定されている不揮発性RAMと、
前記不揮発性RAMに対して、前記ROM領域へのデータの書き込みを含む複数種類のアクセスを行うことができるCPUと、
前記CPUと前記不揮発性RAMとの間に介在する保護部と、
を備えた制御装置であって、
前記保護部は、
前記不揮発性RAMの記憶領域のうち、前記ROM領域および前記RAM領域それぞれのアドレス範囲を特定可能なアドレス情報を格納するレジスタと、
前記CPUからのアクセスとして、前記ROM領域へのデータの書き込みが発生した場合に、該アクセスによる前記ROM領域へのデータの書き込みを、当該保護部の外部から所定の許可信号が入力されている間のみ許可するアクセス許可手段と、
前記許可信号の入力が開始された以降、該入力が終了した際に、前記レジスタに格納されているアドレス情報を、初期値として定められたアクセス情報に更新する初期化手段と、を備えている
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記不揮発性RAMは、
あらかじめ前記アドレス情報を格納しており、
前記保護部において、
前記初期化手段は、前記制御装置または当該保護部が起動した際に、前記不揮発性RAMに格納された前記アドレス情報を初期値として前記レジスタに格納し、また、前記許可信号の入力が終了した際に、前記不揮発性RAMに格納された前記アドレス情報を前記レジスタへと格納し直すことにより、初期値として定められたアクセス情報に更新する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記保護部において、
前記許可信号の入力が開始された際の信号レベルの変化を示す開始エッジ、および、該入力が終了した際の信号レベルの変化を示す終了エッジそれぞれを検出するエッジ検出手段、が備えられ、
前記アクセス許可手段は、前記CPUからのアクセスとして、前記ROM領域へのデータの書き込みが発生した場合に、該アクセスによる前記ROM領域へのデータの書き込みを、前記エッジ検出手段により開始エッジが検出されてから前記終了エッジが検出されるまでの間のみ許可する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記保護部において、
当該保護部の外部から入力された前記許可信号を流通させる流通経路、が備えられ、
前記エッジ検出手段は、前記流通経路を流通する信号について前記開始エッジおよび前記終了エッジそれぞれを検出する
ことを特徴とする請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記保護部において、
前記流通経路を流通する信号が前記許可信号として定められた範囲の信号レベルであれば、該信号レベルをHレベルおよびLレベルのいずれか一方に変換し、また、前記流通経路を流通する信号が前記許可信号として定められた範囲の信号レベルでなければ、該信号レベルをHレベルおよびLレベルのいずれか他方に変換して出力するフィルタ回路、が備えられ、
前記エッジ検出手段は、前記フィルタ回路から出力された信号の信号レベルがHレベルおよびLレベルのいずれか一方に変化した際のエッジを前記開始エッジとして検出する一方、前記流通経路の信号レベルがHレベルおよびLレベルのいずれか他方に変化した際のエッジを前記終了エッジとして検出する
ことを特徴とする請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記保護部において、
前記フィルタ回路は、前記流通経路の信号レベルと所定の基準レベルとを比較する比較器を有しており、該比較器が、前記流通経路の信号レベルが前記基準レベルよりも高い場合にHレベルおよびLレベルのいずれか一方を出力し、前記流通経路の信号レベルが前記基準レベルよりも低い場合にHレベルおよびLレベルのいずれか他方を出力する
ことを特徴とする請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記保護部において、
前記アクセス許可手段は、前記許可信号と所定のクロック信号との論理積となる信号により、当該保護部の外部から所定の許可信号が入力されている期間であることを判定する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の制御装置。
【請求項8】
データの読み出しのみを行うためのROM領域、および、データの読み書き両方を行うためのRAM領域を含む複数の記憶領域が規定されている不揮発性RAMと、前記不揮発性RAMに対して、前記ROM領域へのデータの書き込みを含む複数種類のアクセスを行うことができるCPUと、の間に介在する保護装置であって、
前記不揮発性RAMの記憶領域のうち、前記ROM領域および前記RAM領域それぞれのアドレス範囲を特定可能なアドレス情報を格納するレジスタと、
前記CPUからのアクセスとして、前記ROM領域へのデータの書き込みが発生した場合に、該アクセスによる前記ROM領域へのデータの書き込みを、当該保護部の外部から所定の許可信号が入力されている間のみ許可するアクセス許可手段と、
前記許可信号の入力が開始された以降、該入力が終了した際に、前記レジスタに格納されているアドレス情報を、初期値として定められたアクセス情報に更新する初期化手段と、を備えている
ことを特徴とする保護装置。
【請求項9】
データの読み出しのみを行うためのROM領域、および、データの読み書き両方を行うためのRAM領域を含む複数の記憶領域が規定されている不揮発性RAMと、前記不揮発性RAMに対して、前記ROM領域へのデータの書き込みを含む複数種類のアクセスを行うことができるCPUと、の間に介在し、前記不揮発性RAMの記憶領域のうち、前記ROM領域および前記RAM領域それぞれのアドレス範囲を特定可能なアドレス情報を格納するレジスタが備えられた保護装置に、
前記CPUからのアクセスとして、前記ROM領域へのデータの書き込みが発生した場合に、該アクセスによる前記ROM領域へのデータの書き込みを、当該保護部の外部から所定の許可信号が入力されている間のみ許可するアクセス許可手順と、
前記許可信号の入力が開始された以降、該入力が終了した際に、前記レジスタに格納されているアドレス情報を、初期値として定められたアクセス情報に更新する初期化手順と、
を実行させることを特徴とする不揮発性RAMの保護方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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