説明

制御装置、表示装置及び表示装置の制御方法

【課題】複数回の電圧印加により画像を書き換える表示装置において、先の書換動作に依存せずに書換動作を開始できる領域を増やす。
【解決手段】制御装置は、VRAMから画像データを取得し(Sa2)、これを各画素に表示される予定の表示状態を示す予定データと比較し、両者が一致するか否かを判断する(Sa3)。制御装置は、画像データと予定データとが一致しないとき、書換動作が必要な画素があると判断する。制御装置は、書換動作が必要な画素に対して、残回数が0でないか否かを判断することによって、先の書換動作が行われているか否かを判断する(Sa6)。制御装置は、このような動作を画素毎に行うことで、各画素の書換動作を他の画素の状態に依存せずに開始させることを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数回の電圧印加により画像を所望の表示状態に書き換えるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気泳動表示装置等の表示装置には、複数フレームを用いて1回の書き換えを行うものがある。このような書き換えは、表示素子が表示状態(すなわち階調)の変化に比較的時間を要する場合などに行われる。このような書き換えを行う場合、表示素子は、1回の書き換えが終了しなければ(すなわち、複数フレーム分の時間が経過しなければ)、次の書き換えを開始することができない。
【0003】
特許文献1には、電気泳動表示装置等の表示装置において、パイプライン処理によって画像を部分的な領域毎に書き換えるための技術が記載されている。このようにすれば、書き換えが行われていない領域については、他の領域の書き換えに依存することなく書き換えを開始することができるため、画像全体を書き換える場合に比べ、書き換えに要する時間を短縮できる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−251615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術の場合、複数の領域を並列的に書き換えるためには、領域の数だけパイプラインが必要である。換言すれば、特許文献1に記載された技術において、並列的に書き換えることができる領域の数は、パイプラインの数によって制限される。また、特許文献1に記載された技術においては、書き換え対象のある領域と他の領域とが重なる場合には、当該ある領域の書き換えが終了してからでなければ、当該他の領域の書き換えを開始することができない。
本発明の目的の一つは、複数回の電圧印加により画像を書き換える表示装置において、先の書換動作に依存せずに書換動作を開始できる領域を増やすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、駆動電圧を複数回印加する書換動作により、複数の画素の表示状態を第1の表示状態から第2の表示状態に変化させる表示装置の駆動を制御する制御装置であって、前記書換動作を行うか否かを画素毎に判断する判断部と、前記判断部により書換動作を行うと判断された画素に対して、各回の駆動電圧が前記第1の表示状態及び前記第2の表示状態に応じて決定されるパターンで駆動電圧を複数回印加する書換動作を開始させる制御部とを備え、前記制御部は、前記判断部により書換動作を行うと判断された画素に対して先の書換動作が行われていない場合には、書換動作を開始させ、当該画素に対して先の書換動作が行われている場合には、当該先の書換動作が終了してから次の書換動作を開始させることを特徴とする制御装置を提供する。
この制御装置によれば、ある画素の書換動作の開始を他の画素の書換動作の状態に依存することなく制御することが可能である。
【0007】
好ましい態様において、この制御装置は、1回の前記書換動作において駆動電圧を印加する回数が前記第1の表示状態と前記第2の表示状態の少なくとも一方に応じて異なる。
この態様によれば、先の書換動作を早く終了させ、次の書換動作を早く開始させることが可能である。
【0008】
別の好ましい態様において、この制御装置は、1回の前記書換動作において駆動電圧を印加した回数を特定するためのデータを画素毎に記録する第1の記録部を備え、前記制御部は、前記第1の記録部により記録されたデータにより特定される回数が予定された回数に達したか否かによって、前記先の書換動作が行われているか否かを判断する。
この態様によれば、駆動電圧を必要な回数印加した画素から次の書換動作を開始することが可能である。
【0009】
さらに別の好ましい態様において、前記判断部は、書換動作を行うと判断した画素に対して先の書換動作が行われている場合に、当該先の書換動作が終了してから再度判断を行い、前記制御部は、前記判断部による再度の判断により書換動作を行わないと判断された場合には、書換動作を行わせない。
この態様によれば、不要な書換動作を行わないように省略することが可能である。
【0010】
さらに別の好ましい態様において、この制御装置は、各画素に表示されるべき表示状態を示す画像データを前記複数の画素単位で記憶する第1の記憶領域から、前記画像データを読み出して取得する取得部と、書換動作が終了したときに各画素に表示される予定の表示状態を示す予定データを各画素単位で記録する第2の記録部とを備え、前記判断部は、前記取得部が取得した画像データにより示される表示状態と前記予定データにより示される表示状態とが一致しない画素を、書換動作を行う画素であると判断する。
この態様によれば、書換動作を行う画素を容易に特定することが可能である。
【0011】
さらに別の好ましい態様において、前記第2の記録部は、前記制御部により書換動作を開始する画素について、前記画像データが新たな予定データになるように前記予定データを書き換える。
この態様によれば、書換動作が終了した後に書換動作を行う必要がない画素を書換動作を行う画素であると判断されないようにすることが可能である。
【0012】
また、本発明は、かかる制御装置と、前記複数の画素を有し、前記制御装置による制御に応じて書換動作を行う表示部とを備える表示装置を提供する。
この表示装置によれば、駆動電圧を必要な回数印加した画素から次の書換動作を開始することが可能であり、ユーザーの見た目の表示速度を向上させることが可能である。
【0013】
好ましい態様において、この表示装置は、前記画素がメモリー性を有する表示素子を含んで構成される。
この態様によれば、書換動作を行う必要がない画素の表示状態の維持に要する電力を抑制することが可能である。
【0014】
さらに、本発明は、駆動電圧を複数回印加する書換動作により、複数の画素の表示状態を第1の表示状態から第2の表示状態に変化させる表示装置の駆動を制御する手段による制御方法であって、前記書換動作を行うか否かを画素毎に判断する判断ステップと、前記判断ステップにおいて書換動作を行うと判断された画素に対して、各回の駆動電圧が前記第1の表示状態及び前記第2の表示状態に応じて決定されるパターンで駆動電圧を複数回印加する書換動作を開始させる制御ステップとを有し、前記制御ステップにおいて、前記判断ステップにおいて書換動作を行うと判断された画素に対して先の書換動作が行われていない場合には、書換動作を開始させ、当該画素に対して先の書換動作が行われている場合には、当該先の書換動作が終了してから次の書換動作を開始させることを特徴とする。
この制御方法によれば、駆動電圧を必要な回数印加した画素から次の書換動作を開始することが可能であり、ユーザーの見た目の表示速度を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】表示装置の主要な構成を示すブロック図
【図2】ROMに記憶される波形テーブルを例示する図
【図3】波形テーブルによって実現される階調変化を例示する模式図
【図4】表示部の回路構成を示す図
【図5】画素の等価回路を示す図
【図6】表示パネルの構成を示す部分断面図
【図7】コントローラーの機能的構成を示す機能ブロック図
【図8】コントローラーが実行する処理を示すフローチャート
【図9】準備処理を示すフローチャート
【図10】本発明に係る表示装置が適用される電子機器を例示する図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態である表示装置の主要な構成を示すブロック図である。図1に示すように、表示装置100は、CPU(Central Processing Unit)110と、表示部120と、コントローラー130と、ROM(Read Only Memory)140と、RAM(Random Access Memory)150とを備える。また、RAM150は、VRAM(Video RAM)151を含む。なお、ここでは図示しないが、表示装置100は、画像データを記憶する手段(いわゆるメモリーカード等)やユーザーの操作を受け付ける手段(キー、タッチスクリーン等)を備えてもよいし、これらの手段からデータを取得する手段(インターフェース)を備えてもよい。
【0017】
CPU110は、表示装置100の動作を制御する手段である。CPU110は、あらかじめ記憶されたプログラムを実行することにより、データの読み出しや書き込みを行う。CPU110は、VRAM151に対して、画像データを順次書き込む機能を有する。ここにおいて、画像データとは、各画素の表示状態を示す画面単位のデータである。画像データは、各画素に表示されるべき表示状態を示すが、そのときどきの実際の表示状態とは必ずしも一致しない。
【0018】
表示部120は、複数の画素により画像を表示する手段である。表示部120は、本実施形態においては、電気泳動方式の表示手段であり、表示素子に電気泳動素子を用いるものである。ここにおいて、電気泳動素子とは、メモリー性(記憶性)を有する表示素子をいうものである。また、メモリー性とは、電圧の印加によって所定の表示状態になると、電圧が印加されなくなってもその表示状態を維持しようとする性質をいうものであり、双安定性ともいう。電気泳動素子の表示状態には、ある2種類の表示状態と、その中間調の表示状態とがある。ここでいう2種類の表示状態は、典型的には、光の反射率の差が比較的大きい組み合わせであるが、その色が視覚的又は機械的に区別可能な組み合わせであれば、特に限定されるものではない。本実施形態においては、反射率が最大の表示状態を「白」、反射率が最小の表示状態を「黒」とする。よって、中間調の表示状態は、グレー(灰色)である。また、本実施形態においては、電源の投入直後など、画像をまだ何も書き込んでいない状態を白とする。
【0019】
コントローラー130は、表示部120の駆動を制御する手段である。コントローラー130は、本発明に係る制御装置の一例に相当するものである。コントローラー130は、ROM140又はRAM150に記憶されたデータを用いて、表示素子に所定の駆動電圧を印加する動作(以下「書換動作」という。)を表示部120に行わせる。本実施形態の書換動作は、駆動電圧が複数回印加されることで行われる。すなわち、1回の書換動作は、複数回の電圧印加によって実現される。なお、駆動電圧を印加する回数やそのパターンは、目標とする画素の表示状態に応じて異なる。
【0020】
ROM140及びRAM150は、データを記憶する手段である。ROM140は、印加される駆動電圧のパターンを示す波形テーブルを複数記憶している。ここにおいて、波形(はけい)とは、画素の階調の時間的な変化を指すものであるが、波のように起伏があるものに限定されるわけではない。なお、ROM140は、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable ROM)のように、読み出し専用ではなく書き換え可能な記憶手段であってもよいし、ROM以外の記憶手段(RAM等)でも代用可能である。
【0021】
図2は、ROM140に記憶される波形テーブルを例示する図である。本実施形態の波形テーブルは、インデックスと駆動電圧値とを対応付けたデータ群である。インデックスは、1回の書換動作中に駆動電圧を印加した回数(以下「印加回数」という。)を特定するためのデータであり、波形テーブルから書換動作中の各回の駆動電圧を特定するためのデータでもある。本実施形態のインデックスは、波形テーブルにより特定される1回の書換動作に必要な印加回数の総数から、そのときの印加回数を減じた数である。なお、1回の書換動作に必要な印加回数は、書き換え前の画素の階調と書き換え後の画素の階調の少なくとも一方に応じて異なる。また、駆動電圧値は、駆動電圧を示すデータである。本実施形態の駆動電圧値は、Vb、Vw及びVnの3種類である。駆動電圧値Vbは、画素の表示状態が黒に近づくような電圧値であり、駆動電圧値Vwは、画素の表示状態が白に近づくような電圧値である。また、駆動電圧値Vnは、画素に電位差が生じないような電圧値である。なお、1回の書換動作に必要な印加回数は、1回の書換動作に必要なフレーム数と等しい。
【0022】
図2に例示する波形テーブルは、階調数が4の場合のものである。ここにおいて、画素の階調値は、画素の反射濃度を正規化した値で示し、0%で黒、100%で白を表すものとする。よって、階調値が33%の画素は、黒寄りのグレー(ダークグレー)であり、階調値が67%の画素は、白寄りのグレー(ライトグレー)である。図2の波形テーブルによって実現される階調は、これらの4階調(黒、ダークグレー、ライトグレー、白)である。
【0023】
例えば、図2に示す波形テーブルT1は、画素の階調を0%の状態から33%の状態に遷移させるためのものであり、書換動作の1回目と2回目に駆動電圧値Vwを印加し、3回目に駆動電圧値Vnを印加して書換動作を終えるためのものである。以下においては、画素の初期状態の階調値を「初期値」といい、書換動作後の階調値を「目標値」という。例えば、波形テーブルT1は、階調値の初期値が0%であり、目標値が33%である波形テーブルである。波形テーブルのそれぞれには、初期値と目標値があらかじめ対応付けられている。
【0024】
なお、1回の書換動作に必要な印加回数(すなわちインデックスの最大値)は、図示したものに限定されない。例えば、階調変化が比較的緩やかな表示素子を用いる場合の波形テーブルは、1回の書換動作がより長時間になるように、印加回数を増やしたものであってもよい。また、1回の書換動作に必要な印加回数を増やすことで、階調数をより多くすることも可能である。
【0025】
図3は、波形テーブルに従った電圧印加によって実現される階調変化を例示する模式図である。なお、図3においては、説明の便宜上、1回の書換動作当たりの印加回数を21回とし、また、階調変化を直線的に示している。しかし、実際の階調変化は、表示素子の印加電圧に対する応答性などによって異なり、一部又は全体が曲線的になる場合もある。また、階調が黒から白に変化するのに要する時間と白から黒に変化するのに要する時間とは、必ずしも同じではない。波形テーブルを用いれば、図示したものに限らず、さまざまな波形を実現することが可能である。
【0026】
図3に示す例は、書換動作前の階調値が33%(ダークグレー)である場合において、画素の階調値を67%(ライトグレー)に変化させるときの階調変化の波形の一例である。この場合、コントローラー130は、画素の階調が一旦黒になるように電圧を印加させてから、白になるように電圧を印加させ、さらに、再度暗くなるように電圧を印加させることによって、ライトグレーという階調を実現している。なお、このような階調変化は、1フレーム当たりの時間(以下「フレーム期間」という。)が十分に短ければ、ユーザーの目にはほとんど知覚されない。
【0027】
電気泳動素子等の表示素子は、一定方向の電圧を一定時間印加することによって、所望の表示状態にすることが可能である。しかし、電圧を一方向に印加しただけでは、表示素子の特性によっては、階調の再現性が十分でなく、所望の表示状態にすることができなかったり、あるいは、いわゆる残像が表示されたりする場合がある。コントローラー130は、波形テーブルを用いることにより、駆動電圧の値やその方向をフレーム期間毎に切り替えることを可能にし、さまざまな態様の波形を実現するとともに、残像の低減や階調の再現性の向上を可能にする。また、波形テーブルを適当に定めることにより、表示素子に印加される電圧が正負の一方向に偏らないようにすることも可能である。
【0028】
RAM150は、予定データ、テーブルID及び残回数を記憶する。予定データは、書換動作が終了したときに各画素に表示される予定の表示状態を示すデータである。予定データは、画素単位で書き換えられるデータである。すなわち、ある画素の予定データは、当該画素に書換動作が行われていなければ、書き換え可能な状態にある。テーブルIDは、各画素の書換動作に用いる波形テーブルを特定するためのデータである。テーブルIDは、波形テーブルのそれぞれについて、あらかじめ割り当てられている。残回数は、テーブルIDが示す波形テーブルにより特定される1回の書換動作に必要な印加回数の総数から、そのときの印加回数を減じた数であり、各画素について記憶される。本実施形態の残回数は、コントローラー130がテーブルIDにより特定される波形テーブルから最後に読み出した駆動電圧値のインデックスから「1」を減じた値に等しい。残回数は、これが「0」であれば、対応する画素の書換動作が終了している(あるいは、書換動作を行う必要がない)ことを意味している。
【0029】
VRAM151は、フレームバッファーとして機能し、CPU110から供給された画像データを順次記憶する。画像データは、予定データと異なり、画面単位、すなわち駆動の対象である複数の画素全体の単位で一括して書き換えられる。VRAM151は、CPU110とコントローラー130の双方がアクセス可能な記憶領域である。より詳細には、VRAM151は、CPU110が書き込み可能であり、コントローラー130が読み出し可能な記憶領域である。なお、VRAM151は、RAM150の記憶領域の一部であってもよいが、RAM150とは物理的に別体の記憶手段であってもよい。VRAM151は、本発明に係る第1の記憶領域の一例に相当するものである。
【0030】
図4は、表示部120の回路構成を示す図である。表示部120は、図4に示すように、走査線駆動回路121と、データ線駆動回路122と、表示パネル123とを備える。コントローラー130は、走査線駆動回路121及びデータ線駆動回路122を制御することにより、表示部120の駆動を制御する。コントローラー130による制御は、画素30の駆動タイミングの制御を含む。
【0031】
走査線駆動回路121は、走査線Y1、Y2、…、Ymを選択し、選択した一の走査線に走査信号を供給する。データ線駆動回路122は、データ線X1、X2、…、Xnにデータ信号を供給する。データ信号は、例えば、共通電位Vcomに対して+15V、−15V、0V(すなわち共通電位Vcomと等電位)の3種類の電位のいずれかとなるような信号である。これらの電位は、波形テーブルの駆動電圧値に対応しており、+15VがVb、−15VがVw、0VがVnにそれぞれ対応する。なお、走査線及びデータ線の数、すなわち、m及びnの値は、特に限定されない。
【0032】
表示パネル123は、データ線X1〜Xn及び走査線Y1〜Ymの交差に対応するようにマトリクス状に配列された複数の画素30を有する。複数の画素30は、いずれも共通電位線124に電気的に接続されており、図示せぬ給電回路から共通電位Vcomが印加されている。なお、図においてはデータ線X1〜Xnと走査線Y1〜Ymとが直交するように記載されているが、画素30の配置が直交している必要は必ずしもない。
【0033】
図5は、画素30の等価回路を示す図である。画素30は、図5に示すように、トランジスター31と、保持容量32と、画素電極33と、電気泳動層34と、対向電極35とを備える。トランジスター31は、スイッチング素子として機能する素子であり、例えば、N型の薄膜トランジスターである。トランジスター31は、ゲート電極が走査線Yi(i=1〜m)、ソース電極がデータ線Xj(j=1〜n)、ドレイン電極が保持容量32及び画素電極33に、それぞれ電気的に接続されている。トランジスター31は、走査信号に応じたタイミングで、データ信号を保持容量32及び画素電極33に供給する。
【0034】
保持容量32は、誘電体膜を介して対向する1対の電極を有し、一方の電極がトランジスター31に電気的に接続され、他方の電極がグランドに電気的に接続されている。保持容量32は、電気泳動層34に対して並列に接続されており、トランジスター31から供給されたデータ信号を一定の期間保持することができる。
【0035】
画素電極33は、各々の画素30に対応して設けられた電極であり、対向電極35は、各々の画素30に共通に設けられた電極である。対向電極35の電位は、共通電位線124に接続されて共通電位Vcomに保たれる一方、画素電極33の電位は、データ信号に応じて変化する。電気泳動層34は、電気泳動粒子を封入した複数のマイクロカプセルを有する層であり、画素電極33と対向電極35の電位差(すなわち駆動電圧)に応じて状態を変化させる。
【0036】
図6は、表示パネル123の構成を示す部分断面図である。表示パネル123は、図6に示すように、対向基板41と、対向電極35と、電気泳動層34と、接着層42と、画素電極33と、素子基板43とを含んで構成される。すなわち、表示パネル123は、電気泳動層34を1対の基板(対向基板41及び素子基板43)によって挟持した構成である。なお、表示パネル123は、プラスチック等の可撓性を有する材料によって基板等を構成し、ある程度折り曲げられるようになっていてもよいが、ガラス基板を用いてもよい。
【0037】
対向基板41は、一方の面に対向電極35が設けられた透明な基板である。対向電極35は、インジウム・スズ酸化物(ITO)等により構成された透明な導電膜である。ユーザーは、対向基板41側(図中の上方)から表示パネル123を視認することにより、電気泳動層34の色、すなわち表示状態を知覚することができる。
【0038】
電気泳動層34は、複数のマイクロカプセル341と、バインダー342とを含む。マイクロカプセル341は、表示状態に応じて選択された着色粒子(電気泳動粒子とも呼ぶ。本実施形態においては、白色粒子と黒色粒子)と分散媒とを封入した球状のカプセルであり、電気泳動素子の一例である。着色粒子は、帯電された状態でマイクロカプセル341に封入されており、駆動電圧によって生じる電界に応じてカプセル内を移動可能である。本実施形態では、電気泳動粒子として、正電荷を有する黒色粒子と、負電荷を有する白色粒子とを用いている。もちろん、負電荷を有する黒色粒子と、正電荷を有する白色粒子とを用いることもできる。バインダー342は、樹脂などにより構成され、マイクロカプセル341を動かないように保持する。接着層42は、電気泳動層34を素子基板43側に接着するための層である。
【0039】
画素電極33は、走査線Yjとデータ線Xiの交差に対応してマトリクス状に設けられた電極であり、その位置は、画素30の配列に対応している。素子基板43は、画素電極33に加え、画素30を構成する回路素子を実装した基板である。素子基板43は、図示を省略するが、上述したトランジスター31、保持容量32、走査線Yj、データ線Xiなどが実装されている。
【0040】
表示装置100のハードウェア構成は、以上のとおりである。この構成のもと、CPU110は、表示装置100の全体の動作を制御する。また、コントローラー130は、CPU110の動作に応じて、ROM140、RAM150及びVRAM151にアクセスしてデータの書き込み(すなわち記録)と読み出し(すなわち取得)を行うとともに、表示部120に表示される画像を書き換える。なお、CPU110によるVRAM151への画像データの書き込みは、コントローラー130による動作とは独立に行われる。よって、CPU110は、コントローラー130の動作状態の如何によらず、VRAM151の画像データを書き換えることが可能である。
【0041】
図7は、コントローラー130の機能的構成を示す機能ブロック図である。コントローラー130は、機能的には、図7に示す書換判断部131、駆動制御部132、記録部133及び取得部134に分類される。また、駆動制御部132は、さらに、動作判断部135に相当する機能を有する。
【0042】
書換判断部131は、書換動作を行うか否かを判断する。書換判断部131は、この判断を画素毎に実行する。コントローラー130は、書換動作を行うか否かを画素毎に判断することによって、書換動作を画素毎に独立に行うことを可能にしている。すなわち、コントローラー130は、このような判断によって、ある画素の書換動作を他の画素の書換動作に依存せずに行うことができる。書換判断部131は、本発明に係る判断部の一例に相当するものである。
【0043】
駆動制御部132は、走査線駆動回路121及びデータ線駆動回路122を制御し、走査信号及びデータ信号を所定のタイミングで発生させることにより、書換動作の開始及び終了を制御する。駆動制御部132は、書換判断部131により書換動作を行うと判断された画素に対して書換動作が行われるように、走査線駆動回路121及びデータ線駆動回路122を制御する。駆動制御部132は、RAM150に記録されたテーブルIDに基づいて特定される波形テーブルを用いて、各画素に所定のパターンで駆動電圧を印加する。駆動制御部132は、本発明に係る制御部の一例に相当するものである。
【0044】
動作判断部135は、書換判断部131により書換動作を行うと判断された画素に対して、書換動作が既に行われているか否かを判断する。ここにおいて、既に行われている書換動作とは、書換判断部131によって行うと判断された書換動作とは異なるものであり、当該書換動作以前にこの判断が行われた書換動作をいうものである。以下においては、このような書換動作のことを、「(書換判断部131によって行うと判断された書換動作に対する)先の書換動作」という。動作判断部135は、要するに、書換判断部131により書換動作を行うと判断された画素が先の書換動作を実行している途中の状態にあるか否かを判断する手段である。
【0045】
駆動制御部132は、書換判断部131により書換動作を行うと判断された各画素に対して、先の書換動作が行われていない場合には、書換動作を開始させ、先の書換動作が行われている場合には、当該先の書換動作が終了してから次の書換動作を開始させるように制御する。駆動制御部132は、このような制御を行うことで、先の書換動作が終了していない画素に行われる次の書換動作を先送りすることが可能である。また、駆動制御部132は、このような先送りを画素単位で行うことを可能にすることで、ある画素に対して行われる書換動作を他の画素(例えば、隣り合う画素)の動作状態に依存して待機する必要がなくなる。
【0046】
記録部133は、書換動作の進行に応じて、RAM150にデータを記録する。記録部133は、予定データ、テーブルID及び残回数をRAM150に記録する。記録部133は、各画素の書換動作を開始する毎に、予定データをVRAM151に記憶された画像データのうちの当該画素に対応するデータで書き換えることによって、新たな予定データを記録する。また、記録部133は、書換動作の開始時に各画素に適用する波形テーブルのテーブルIDを記録する。さらに、記録部133は、各画素の書換動作の開始時に各画素の残回数を記録し、駆動電圧を印加する毎に、その残回数を「1」ずつ減少させる(デクリメント)。
【0047】
取得部134は、書換動作の進行に応じて、ROM140、RAM150及びVRAM151からデータを取得する。取得部134は、書換動作に適用する波形テーブルの駆動電圧値をROM140から取得し、画像データをVRAM151から取得する。また、取得部134は、必要に応じて、予定データ、テーブルID及び残回数をRAM150から取得する。
【0048】
図8は、かかる構成を有するコントローラー130が実行する処理を示すフローチャートである。図8に示すように、コントローラー130は、CPU110によってVRAM151の画像データが書き換えられているか否かを判断する(ステップSa1)。この判断は、例えば、コントローラー130がVRAM151を直接参照することによって実現される。コントローラー130は、VRAM151に記憶されている画像データが前回取得した画像データと異なる場合(あるいは、電源の投入直後等の画像データを最初に取得する場合)、画像データが書き換えられていると判断する。なお、コントローラー130は、ステップSa1の判断を行わずに、VRAM151から画像データを毎回取得してもよい。
【0049】
コントローラー130は、画像データが書き換えられていると判断すると、VRAM151から新たな画像データを取得する(ステップSa2)。そして、コントローラー130は、RAM150から予定データを読み出し、取得した画像データに予定データと一致しない画素があるか否かを判断する(ステップSa3)。すなわち、コントローラー130は、各画素の階調値が画像データと予定データとで一致するか否かを判断する。画像データの階調値と予定データの階調値とがすべて一致するということは、新たな書換動作を行う必要がないということである(ただし、実行中の書換動作があれば、書換動作自体は行われる。)。したがって、ステップSa3の判断は、新たな書換動作を行う必要があるか否かの判断に相当するといえる。この判断は、例えば、画像データと予定データの対応する画素の階調値どうしの排他的論理和を求める論理演算によって実現可能である。なお、コントローラー130は、画像データが書き換えられていないと判断した場合、ステップSa2及びSa3の処理をスキップ(省略)する。
【0050】
画像データの階調値と予定データの階調値とが一致しない画素がある場合、コントローラー130は、かかる画素を書き換えるための処理を実行する。一方、画像データの階調値と予定データの階調値とがすべて一致する場合、コントローラー130は、書換動作を行うことなく、ステップSa1以降の処理を実行する。この場合、コントローラー130は、VRAM151に新たな画像データが書き込まれるまでは、書換動作を行わずに、ステップSa1〜Sa3の処理を繰り返し実行する。
【0051】
ステップSa4以降の処理は、駆動対象(すなわち書換対象)の走査線を所定の順序(Yiのiの昇順)で選択し、駆動対象の画素を所定の順序(Xjのjの昇順)で駆動するものである。ここにおいて、駆動対象の走査線(又は画素)は、走査線(又は画素)の全部であってもよいし、一部であってもよい。すなわち、コントローラー130は、表示部120の画素全体ではなく、一部の画素のみを部分的に駆動することが可能である。
【0052】
ステップSa4の処理は、駆動対象の走査線を順次選択していくループ処理である。ここにおいて、コントローラー130は、駆動対象の走査線を1つずつ選択し終わるまで、ループ処理を繰り返す。すなわち、このループ処理の終了条件は、駆動対象の走査線のうち未選択のものがなくなることである。また、ステップSa5の処理は、ステップSa4において選択された走査線上の各画素について実行するループ処理である。つまり、コントローラー130は、処理対象の画素を順次変えながら、ステップSa6以降の処理を繰り返す。なお、以下においては、処理対象の画素のことを「注目画素」という。
【0053】
ステップSa6において、コントローラー130は、注目画素についてRAM150に記録した残回数が「0」より大きいか否かを判断する。この判断は、注目画素に書換動作が行われているか否かの判断に相当する。残回数は、書換動作が行われている途中であれば、常に、「0」より大きい。一方、書換動作は残回数が「0」になると終了するため、残回数が「0」である状態は、先に開始された書換動作が終了している状態(あるいは、書換動作が1回も行われていない状態)に相当する。よって、新たな書換動作を開始する場合には、残回数の値が「0」になっている。
【0054】
残回数が「0」である場合、すなわち、新たな書換動作を開始することができる場合、コントローラー130は、注目画素の階調値がVRAM151の画像データとRAM150の予定データとで一致しないか否かを判断する(ステップSa7)。この判断は、画像データと予定データの比較が複数の画素単位(すなわち画面単位)ではなく個々の画素単位である点において、ステップSa3の判断と相違する。コントローラー130は、これらの階調値が一致する場合には、注目画素に対して書換動作を行わない。一方、コントローラー130は、これらの階調値が一致しない場合には、書換動作を開始するための処理(以下「準備処理」という。)を実行する(ステップSa8)。
【0055】
図9は、準備処理を示すフローチャートである。この準備処理は、書換動作を開始する前に1回実行され、書換動作の実行中(すなわち、残回数が「0」でない場合)には実行されない処理である。準備処理は、換言すれば、書換動作の実行に必要なデータを記録するための処理である。
【0056】
準備処理において、コントローラー130は、まず、注目画素に対して用いる波形テーブルを特定する(ステップSb1)。コントローラー130は、VRAM151に記憶された画像データとRAM150に記憶された予定データとを参照することによって、波形テーブルを特定することが可能である。具体的には、注目画素の予定データの階調値を初期値とし、画像データの階調値を目標値とする波形テーブルが、注目画素に対して用いる波形テーブルとなる。あるいは、まだ注目画素に書き込みが1回も行われていない場合であれば、階調値の初期値は100%(すなわち白)である。
【0057】
コントローラー130は、このようにして波形テーブルを特定すると、特定した波形テーブルのテーブルIDを特定し、RAM150に記録する(ステップSb2)。なお、コントローラー130は、ある画素に対応するテーブルIDと他の画素に対応するテーブルIDとを区別できる態様でこれを記憶する。次に、コントローラー130は、特定した波形テーブルのインデックスの最大値をRAM150に記録し、これを残回数とする(ステップSb3)。さらに、コントローラー130は、注目画素の予定データを注目画素の画像データによって書き換える(ステップSb4)。つまり、コントローラー130は、画像データが新たな予定データになるように、注目画素の予定データを記録(上書き)する。ステップSb4の処理は、予定データを次の書換動作のときに階調値の初期値として用いることができるようにするための処理でもある。
【0058】
なお、準備処理の各ステップの実行順序は、変更可能である。例えば、ステップSb2の処理とステップSb3の処理は、その実行順序を逆にしてもよい。また、ステップSb4の処理は、ステップSb1の処理の前に実行されてもよい。ただし、ステップSb2及びSb3の処理は、波形テーブルが特定された後でなければ実行できないものである。
【0059】
準備処理が終了すると、コントローラー130は、注目画素の駆動に用いる駆動電圧値を取得する(ステップSa9)。コントローラー130は、準備処理において記録されたテーブルIDと残回数とを読み出すことによって、必要な波形テーブルとそのインデックスを特定し、特定したインデックスに対応する駆動電圧値を取得する。そして、コントローラー130は、表示部120に対して、取得した駆動電圧値によって注目画素を駆動するよう指示する(ステップSa11)。その後、コントローラー130は、RAM150に記憶された残回数をデクリメントし(ステップSa12)、注目画素に対する処理を終了する。
【0060】
書換動作における1回目の駆動電圧の印加は、以上のように行われる。一方、同じ書換動作における2回目以降の駆動電圧の印加は、以下のように行われる。なお、駆動電圧の印加が2回目以降であると判断されるのは、ステップSa6において残回数が「0」より大きいと判断される場合である。
【0061】
ステップSa6において、残回数が「0」より大きいと判断された場合、コントローラー130は、ステップSa9の場合と同様の要領によって、注目画素の駆動に用いる駆動電圧値を取得する(ステップSa10)。例えば、ある書換動作における2回目の駆動電圧値を取得する場合、コントローラー130は、準備処理において記録されたテーブルIDと、最初の残回数から1回だけデクリメントされた残回数とを読み出すことによって、対応する駆動電圧値を取得することができる。その後、コントローラー130は、表示部120に対して、取得した駆動電圧値によって注目画素を駆動するよう指示し(ステップSa11)、RAM150に記憶された残回数を再度デクリメントして(ステップSa12)、処理を終了する。
【0062】
なお、注目画素に駆動電圧の印加が繰り返され(すなわち、残回数がデクリメントされ)、印加回数が予定された回数に達した場合(すなわち、残回数が「0」となった場合)には、その後に行われるステップSa6の判断において「YES」と判断されるようになる。そこで、コントローラー130は、注目画素の画像データと予定データの相違を再び判断する(ステップSa7)。このとき、VRAM151の画像データが書換動作の開始時から書き換えられていなければ、ステップSa7の判断は「NO」となる。なぜならば、準備処理のステップSb4において、予定データを画像データで書き換えているからである。一方、VRAM151の画像データが書換動作の開始時から書き換えられている場合、ステップSa7の判断は「YES」となる。この場合、コントローラー130は、再び準備処理を実行し、新たな書込動作を開始することが可能である。
【0063】
以上のとおり、本実施形態の表示装置100によれば、書換動作を行うか否かを画素毎に判断し、画素単位で書換動作の開始及び終了を制御することができるため、他の画素の動作状態の影響を受けることなく書換動作の開始することが可能である。よって、表示装置100は、(複数の画素によって構成される)部分的な領域毎に書き換えを行う場合に比べ、実行中の書換動作(すなわち先の書換動作)に依存せずに書換動作を開始できる領域を増やすことが可能である。
【0064】
また、表示装置100によれば、書換動作の途中でVRAM151の画像データが書き換えられた場合であっても、残回数が「0」になるまでは、画像データの書き換えが書換動作に影響を与えることがない。すなわち、コントローラー130は、注目画素の書換動作が終了するまでは、VRAM151の画像データの書き換えを考慮せずに動作し、書換動作が終了してから、次の書換動作を行うか否かを判断する。このようにすると、書換動作の途中で画像データの書き換えが複数回行われた場合に、途中(最後以外)の注目画素の書き換えを実際の表示に反映させないようにすることが可能であり、注目画素を所望の表示状態にすることをより高速化することを期待できる。この効果は、1回の書換動作当たりの印加回数が多くなるほど顕著になる。同様に、例えば、ある書換動作による注目画素の目標値と、画像データの複数回の書き換え後の当該画素の目標値とが一致した場合には、当該書換動作より後の書換動作を行わないように省略することも可能である。
【0065】
さらに、表示装置100は、CPU110を動作させる側からみると、画素毎の書換動作の管理等を行う必要がなく、表示させたい画像データをVRAM151に書き込むだけでよいという特徴を有している。かかる特徴により、CPU110によって動作するアプリケーションの開発者は、各画素の表示状態や書換動作の状態を考慮する必要がないアプリケーションを制作することが可能となる。
【0066】
[変形例]
本発明は、以下に例示するさまざまな形態でも実施可能である。なお、以下に示す変形例又は適用例は、必要に応じて、各々を適宜組み合わせてもよいものである。
【0067】
(変形例1)
駆動電圧のパターンを示すデータは、いわゆるテーブルの形式のものに限定されない。駆動電圧のパターンを示すデータは、例えば、プログラミングにおけるポインタや配列の概念を用いて記述されてもよい。また、駆動電圧のパターンを示すデータは、駆動電圧値と残回数とを1対1の関係で対応付けたものでなくてもよい。例えば、図2の波形テーブルT1に相当するデータは、駆動電圧値「Vw」を「1」回印加した後に、駆動電圧値「Vn」を「1」回印加する、というように、駆動電圧値とそれを印加すべき回数とを記述したものであってもよい。
【0068】
(変形例2)
駆動電圧のパターンを特定するためのデータは、かかるパターンを識別するためのIDである必要はない。例えば、上述した実施形態において、駆動電圧のパターンが階調の初期値と目標値の組み合わせによって一意的に特定される場合であれば、コントローラー130は、テーブルIDに代えて各画素の階調の初期値を準備処理において記録すればよい。このようにすれば、記録した初期値と予定データ(すなわち、目標値)とによって、必要な波形テーブルを特定することが可能である。
【0069】
なお、波形テーブルは、階調の初期値や目標値が異なるものの間で共用することも可能である。例えば、図2に示す波形テーブルT2と波形テーブルT6とは、その実質的な内容は同一である。このような波形テーブルを共用できるようにすると、波形テーブルの記憶に要する記憶領域を少なくすることが可能である。
【0070】
(変形例3)
ある書換動作における駆動電圧のパターンは、画素の階調の初期値と目標値だけでなく、他の要素も考慮して決定することが可能である。例えば、表示素子の応答性が温度によって異なる場合であって、表示素子が温度を計測するセンサを備える場合にあっては、駆動電圧のパターンは、画素の階調の初期値、目標値及び温度によって決定されてもよい。あるいは、ある画素のある書換動作における駆動電圧のパターンを決める場合に、当該書換動作に対する先の書換動作における階調の初期値(あるいは駆動電圧のパターン)を考慮することも可能である。
【0071】
(変形例4)
本発明において、1回の書換動作における印加回数は、階調の初期値又は目標値(あるいは両方)に応じて可変であってもよいが、階調によらず一定であってもよい。1回の書換動作における印加回数を一定とした場合、コントローラー130は、残回数の記録(ステップSb3)などを行うことなく、書き換え対象の画素に一定回数の電圧印加を行うようにすればよい。
【0072】
(変形例5)
本発明において実現可能な階調数は、特に限定されない。例えば、1回の書換動作における印加回数を増やせば、上述した実施形態(4階調)よりも大きな階調数を実現することが可能である。また、本発明は、中間調を含まない2階調の表示にも適用可能である。
【0073】
(変形例6)
上述した実施形態において、残回数に相当するデータは、1回の書換動作において駆動電圧を印加した回数を特定することができるデータであればよい。例えば、コントローラー130は、残回数に代えて、そのときどきの印加回数をRAM150に記録してもよい。この場合、コントローラー130は、1回の書換動作に必要な印加回数の総数から、RAM150に記録した印加回数を減じる演算を行うことによって、残回数を求めることが可能である。このとき、コントローラー130は、ステップSa12において、デクリメントに代えてインクリメント(印加回数の加算)を行えばよい。
【0074】
(変形例7)
表示パネル123の構成は図6に示すものに限られない。例えば、電気泳動層は、多数のマイクロカプセルを含む構成に限られず、隔壁によって仕切られた空間に分散媒と電気泳動粒子が含まれる構成であってもよい。また、上記実施形態では、電気泳動粒子として、一方が正電荷、他方が負電荷を有する白黒2種類の電気泳動粒子を用いて白黒の表示を行う場合を想定しているが、白黒の表示のみならず、濃度の差による赤白や青黒など、2方向の濃度変化による表示に適用できる。
また、本発明に係る表示素子は、電気泳動素子に限定されない。本発明に係る表示素子としては、例えば、コレステリック液晶、エレクトロクロミック物質、電子粉流体などを用いた表示素子が用いられ得る。
【0075】
(変形例8)
上述した実施形態は、表示装置100による表示をCPU110とコントローラー130の協働によって実現する例である。しかし、本発明は、かかる協働によらずに、単一の構成要素(例えば、CPU単体)によって実現することも可能である。このような場合、本発明は、本発明に係る制御装置をCPU等のコンピューターに実現させるためのプログラムや、かかるプログラムを記録した記録媒体としても提供され得る。
【0076】
[適用例]
本発明は、表示装置を備えるさまざまな電子機器に適用可能である。本発明は、メモリー性を有する表示素子を用いる場合であれば、低消費電力であることが要求される電子機器(例えば、携帯する電子機器、小型の電子機器など)での利用に特に好適である。また、本発明は、画面の部分的な書き換えを多用する用途に対しても好適である。
【0077】
図10は、本発明に係る表示装置が適用される電子機器を例示する図である。図10(a)は、いわゆる電子書籍等の文書を閲覧するためのリーダーの外観を示す図である。図10(a)において、リーダー1100は、筐体1101と、ユーザーの操作を受け付ける操作部1102と、本発明を適用した表示部1103とを備える。なお、リーダー1100は、筐体1101及び表示部1103を曲げたり撓めたりすることのできる材料で構成することによって、いわゆるフレキシブルディスプレイとすることも可能である。
【0078】
また、リーダー1100は、表示部1103にタッチスクリーンを設けることにより、ユーザーによる操作を表示部1103において受け付けることが可能となる。このような構成とした場合、リーダー1100は、タッチスクリーンにより操作を受け付けた領域に対応する画素を駆動して階調を変化させることによって、手書きの文字や線を表示させることも可能である。
【0079】
図10(b)は、携帯電話機の外観を示す図である。図10(b)において、携帯電話機1200は、筐体1201と、キーパッド等の操作部1202と、本発明を適用した表示部1203とを備える。なお、携帯電話機1200が表示領域を複数有する場合には、その一方(例えば、サブディスプレイ)に本発明に係る表示装置を適用し、他方(例えば、メインディスプレイ)に他の表示装置を適用してもよい。
【0080】
なお、本発明は、ほかにも、パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant)、スマートフォン等の無線通信端末、電子辞書、デジタル式の時計などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
100…表示装置、110…CPU、120…表示部、130…コントローラー、131…書換判断部、132…駆動制御部、133…記録部、134…取得部、135…動作判断部、140…ROM、150…RAM、151…VRAM、T1〜T12…波形テーブル、30…画素、1100…リーダー、1200…携帯電話機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動電圧を複数回印加する書換動作により、複数の画素の表示状態を第1の表示状態から第2の表示状態に変化させる表示装置の駆動を制御する制御装置であって、
前記書換動作を行うか否かを画素毎に判断する判断部と、
前記判断部により書換動作を行うと判断された画素に対して、各回の駆動電圧が前記第1の表示状態及び前記第2の表示状態に応じて決定されるパターンで駆動電圧を複数回印加する書換動作を開始させる制御部とを備え、
前記制御部は、前記判断部により書換動作を行うと判断された画素に対して先の書換動作が行われていない場合には、書換動作を開始させ、当該画素に対して先の書換動作が行われている場合には、当該先の書換動作が終了してから次の書換動作を開始させる
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
1回の前記書換動作において駆動電圧を印加する回数が前記第1の表示状態と前記第2の表示状態の少なくとも一方に応じて異なることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
1回の前記書換動作において駆動電圧を印加した回数を特定するためのデータを画素毎に記録する第1の記録部を備え、
前記制御部は、前記第1の記録部により記録されたデータにより特定される回数が予定された回数に達したか否かによって、前記先の書換動作が行われているか否かを判断する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記判断部は、書換動作を行うと判断した画素に対して先の書換動作が行われている場合に、当該先の書換動作が終了してから再度判断を行い、
前記制御部は、前記判断部による再度の判断により書換動作を行わないと判断された場合には、書換動作を行わせない
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の制御装置。
【請求項5】
各画素に表示されるべき表示状態を示す画像データを前記複数の画素単位で記憶する第1の記憶領域から、前記画像データを読み出して取得する取得部と、
書換動作が終了したときに各画素に表示される予定の表示状態を示す予定データを各画素単位で記録する第2の記録部とを備え、
前記判断部は、前記取得部が取得した画像データにより示される表示状態と前記予定データにより示される表示状態とが一致しない画素を、書換動作を行う画素であると判断する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の制御装置。
【請求項6】
前記第2の記録部は、前記制御部により書換動作を開始する画素について、前記画像データが新たな予定データになるように前記予定データを書き換える
ことを特徴とする請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の制御装置と、
前記複数の画素を有し、前記制御装置による制御に応じて書換動作を行う表示部と
を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項8】
前記画素がメモリー性を有する表示素子を含んで構成されることを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
駆動電圧を複数回印加する書換動作により、複数の画素の表示状態を第1の表示状態から第2の表示状態に変化させる表示装置の駆動を制御する手段による制御方法であって、
前記書換動作を行うか否かを画素毎に判断する判断ステップと、
前記判断ステップにおいて書換動作を行うと判断された画素に対して、各回の駆動電圧が前記第1の表示状態及び前記第2の表示状態に応じて決定されるパターンで駆動電圧を複数回印加する書換動作を開始させる制御ステップとを有し、
前記制御ステップにおいて、前記判断ステップにおいて書換動作を行うと判断された画素に対して先の書換動作が行われていない場合には、書換動作を開始させ、当該画素に対して先の書換動作が行われている場合には、当該先の書換動作が終了してから次の書換動作を開始させる
ことを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−42873(P2012−42873A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186338(P2010−186338)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】