説明

制御装置及び音声出力装置及びシアターシステム、及び制御方法並びにプログラム

【課題】サラウンドシステムのトポロジーを変更した場合でも、自動的にリップシンク補正並びにタイムアライメントを行うことのできるシアターシステムを提案すること。
【解決手段】AVコントローラ2内部にあるトポロジー検出部19は、サラウンドシステムのトポロジーを検出し、トポロジー情報として音声/映像補正値メモリ18に記録を行い、映像信号遅延部13及び音声処理部14は、トポロジーが変更された際には、そのトポロジー情報に応じて映像信号及び音声信号の遅延量を調整することでリップシンク補正及びタイムアライメントを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、同期して出力すべき映像信号と音声信号の再生等を行う制御装置及び音声出力装置及びシアターシステム、及び制御方法並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
サラウンドシステムとは、2チャンネル(ステレオ音声)よりも多くのチャンネル数(マルチチャンネル)を有することで、聴取位置(リスニングポイント)で音像のディテールや音場の雰囲気をより忠実に再現することができる音響システムを指す。図17に5.1chサラウンドシステムの構成図を示す。5.1chサラウンドシステムは図17に示すように、フロントスピーカーL・R、センタスピーカーC、サラウンドスピーカーSL・SR、サブウーハーSWの6つのスピーカーから構成される。フロントスピーカーL・Rは、聴取位置(マイクロフォン1010がある破線で示した位置)の前方左右に配置される。また、センタスピーカーCは、聴取位置の前方中央に配置され、サラウンドスピーカーSL・SRは、聴取位置の後方左右に配置される。サブウーハーSWは低音効果を生み出すスピーカーである。各スピーカーが規定された音声を出力することで、ステレオよりも臨場感のある立体的な音響を再現することができる。サラウンドシステムのソース源となるソース機器1001としてはDVDオーディオやスーパーオーディオCD(SACD)、地上デジタルラジオなどがある。
【0003】
また、特許文献1や特許文献2に記載されるように、インターフェースにIEEE1394ネットワーク等を用いて、スピーカー同士がデイジーチェーン状もしくはツリー状のトポロジー(接続形態)で接続される構成例も存在する。このようなトポロジーでサラウンドシステムを構築することは、ケーブル接続における自由度の向上や、電力配線の削減など、配線をより簡便にできるメリットがある。
【0004】
サラウンドシステムは上述のように複数のスピーカーから構成される為、聴取位置と各スピーカーとの距離差や、部屋の形状、障害物の有無などによっては、聴取位置での再生音場が最適なものにならないケースが多い。その為、音声再生を行う前に、再生音場の補正を行うタイムアライメント機能を備えたものがある。
【0005】
一般的にタイムアライメント機能はAVコントローラに備えられる。タイムアライメントについて図17を用いて説明する。タイムアライメントを行う際AVコントローラ1002はまず、自機に接続されている各スピーカー(C、L、R、SL、SR)に音場補正用のテスト信号を順番に供給し、出力させる。そして各スピーカー(C、L、R、SL、SR)から出力された音声を、聴取位置に設置したマイクロフォン1010を用いて集音する。そしてマイクロフォン1010は、集音した音声信号をAVコントローラ1002にフィードバックする。以上の動作によりAVコントローラ1002は、自機から出力された音声信号が、各スピーカーから出力されて聴取位置(マイクロフォン1010)に伝搬するまでの時間を、スピーカーごとに把握することが出来る。それ故AVコントローラ1002は、各スピーカーから出力される音声が、聴取位置に同時に伝搬されるように、スピーカーごとに供給する音声信号の遅延量を調整する、所謂タイムアライメントを施すことができる。
【0006】
また近年ではサラウンドシステムと液晶テレビやプラズマテレビ等のテレビ受像機とを組み合わせたホームシアターシステムが普及してきている。こういった映像信号の高画質化に伴い、テレビ受像機における走査線数変換や高画質化処理等の処理負荷が増大し、音声信号処理よりも映像信号処理にかかる時間の方が大きくなってしまう為、映像と音声の同期が外れてしまうという問題があった。その為、近年のテレビ受像機は映像信号処理にかかる時間に応じて、テレビ受像機の内蔵スピーカーからの音声出力を遅延させる処理、いわゆるリップシンク補正機能がついている。
【0007】
ここで図18に示すような、ソース機器1001からの映像信号及び音声信号を、テレビ受像機1003とマルチチャンネルスピーカー(C、L、R、SL、SR、SW)とで再生するホームシアターシステムを構築した場合について考えてみる。この場合、テレビ受像機1003と外部スピーカー(C、L、R、SL、SR、SW)とは独立して動作する為、外部スピーカーはテレビ受像機1003内部で行われる映像信号処理にかかる時間を把握することはできない。その為、リップシンク補正を行うことができず、映像と音声の同期が外れてしまう。
【0008】
上記の問題を解決する先行技術として特許文献3が挙げられる。以下に特許文献3に記載されるホームシアターシステムのリップシンク補正について図18を用いて説明を行う。AVコントローラ1002はまず、自機に接続された外部スピーカー(C、L、R、SL、SR、SW)と、テレビ受像機1003内蔵スピーカー1011に対して補正用のテスト信号を供給し、順番に出力させる。そして各スピーカーが出力した音声を、聴取位置に設置したマイクロフォン1010を用いて集音する。以上の動作によりAVコントローラ1002は、スピーカーに供給したテスト信号が、スピーカーから出力され聴取位置(マイクロフォン1010の設置位置)に伝搬されるまでにかかる時間を、スピーカーごとに把握することが出来る。上述したようにテレビ受像機に内蔵される内臓スピーカー1011は、供給された音声信号を映像信号処理にかかる時間分だけ遅延させてから出力を行う。故にテレビ受像機内蔵スピーカー1011の出力タイミングに合わせて、外部スピーカー(C、L、R、SL、SR、SW)の出力タイミングを調整することで、リップシンク補正及びタイムアライメントを行うことができる。以後、上記した従来型のリップシンク補正及びタイムアライメントを、初期リップシンク補正と呼ぶ。
【特許文献1】特開2002−199487号公報
【特許文献2】特開2003−61186号公報
【特許文献3】特開2007−329633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上記特許文献1及び特許文献2に挙げられるような、デイジーチェーン接続やツリー接続で外部スピーカー同士を接続する場合には、以下に記載する問題点がある。
【0010】
図19は、外部スピーカー同士がデイジーチェーン接続されるホームシアターシステムの構成例を示したものである。図19に示すサラウンドシステムでは、外部スピーカー(C、L、R、SL、SR、SW)のネットワーク上でのトポロジーに応じて、AVコントローラー1002からの音声信号が、各スピーカーに伝搬されるまでにかかる時間(以後、音声伝送時間)は変化する。これについて図19(A)、(B)を例にして説明を行う。
【0011】
図19(A)に示すトポロジー(A)では、AVコントローラー1002が出力した音声信号が末端スピーカーであるサラウンドスピーカーSL・SRに伝搬するまでに、2つのスピーカーを経由する。一方、図19(B)に示すトポロジー(B)では、AVコントローラー1002が供給した音声信号が、末端スピーカーであるサブウーハーSWに伝搬するまでに、5つのスピーカーを経由する。つまりトポロジー(A)とトポロジー(B)とを比較した場合、末端スピーカーに音声信号が到達するまでにトポロジー(B)の方が3つ多くのスピーカーを経由していることになる。つまり、トポロジー(B)の方が末端スピーカーまでにかかる音声伝送時間は長いこととなる。
【0012】
ここでトポロジー(A)のサラウンドシステムにて上記特許文献3の手法を用いて、初期リップシンク補正(リップシンク補正並びにタイムアライメント)を行った場合を考える。そして初期リップシンク補正を行った後に、スピーカーの位置は変えずにトポロジーだけをトポロジー(A)からトポロジー(B)に変更したとする。すると上述もしたように、各スピーカーの音声伝送時間が変化する為、音声と映像、及び音声同士の同期が外れてしまう。上記の問題はスピーカーのチャンネル数が7.1ch、9.1chと増えていくほど顕著になる。また音声信号をデジタル変調して伝送し、且つノードを経由する毎にデジタル変復調を施すインターフェースを採用した場合にはより顕著になる。
【0013】
外部スピーカー同士がデイジーチェーン状もしくはツリー状で接続されるサラウンドシステムにおいて、部屋の模様替え等により、上記のようにスピーカーの位置は変えずにトポロジーを変更するケースは存在すると考えられる。例えば、図19に示したトポロジー(B)のホームシアターシステムで映像鑑賞を楽しんでいたが、聴取位置にソファーを置くこととなり、ケーブル2001が邪魔になった。その為、外部スピーカーの接続形態をトポロジー(A)に変更した等のケースである。
【0014】
このような場合、従来の技術では、ユーザがスピーカーのトポロジーを変更するたびに、聴取位置にマイクロフォンを設置し、各スピーカーからテスト信号を放音させる等の初期リップシンク補正を行わなければならず、非常に手間である。またユーザによっては、スピーカーの位置は変更しないことから、トポロジーの変更だけで音場は変化しないだろうと、誤った判断をしてしまう場合も考えられる。
【0015】
本発明は上記課題に鑑み、初期リップシンク補正後に音声出力装置のトポロジーを変更しても、音声出力装置への音声伝送時間を推定し、適切に補正することで、自動的にリップシンク補正及びタイムアライメントを行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成する為に、本発明は以下の構成を有する。複数の音声出力装置と映像表示装置とに接続され、前記映像表示装置に対して映像信号を出力し、前記音声出力装置に対して音声信号を出力する制御装置であって、前記音声出力装置との接続形態を検出する検出手段と、前記検出手段により検出した接続形態に基づいて、前記音声出力装置に出力する前記音声信号を遅延させる音声遅延手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、初期リップシンク補正後に音声出力装置のトポロジーを変更した場合でも、自動的にリップシンク補正並びにタイムアライメントを行うことができる。従って、ユーザが意識的に補正をする手間を省き、利便性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明が提案するホームシアターシステムの実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0019】
<実施形態1>
図1は本実施形態におけるホームシアターシステムの構成図である。図1のホームシアターシステムは、ソース機器1、AVコントローラー2、テレビ受像機3、そしてテレビ受像機3とは独立した複数の音声出力装置である外部スピーカー(C、L、R、SL、SR、SW)とから構成されている。このとき外部スピーカー(C、L、R、SL、SR、SW)は、図1のようにデイジーチェーン接続されている。またAVコントローラ2には音場補正用のマイクロフォン10を接続することができる。なお、デイジーチェーン接続は、機器を直列に接続する接続形態であり、そのトポロジーに着目すれば、分岐のないツリー接続とみなすことができる。
【0020】
ソース機器1は、DVDプレーヤーやホームサーバー等の映像音声再生装置である。ソース機器1から出力された映像及び音声信号は、AVコントローラー2を経由して、映像信号はテレビ受像機3に、音声信号は外部スピーカー(C、L、R、SL、SR、SW)にそれぞれ伝送される。AVコントローラー2は、音声信号と映像信号とをトータルに制御する映像音声制御装置であり、AVアンプなどがその代表例である。
【0021】
AVコントローラー2の構成について説明する。AVコントローラー2内部にあるI/F12は、ソース機器1から送信された映像及び音声信号を、映像信号と音声信号にそれぞれ分離する。ここでI/F12は、例えばHDMIなどのインターフェースである。
【0022】
I/F12から出力された映像信号は、映像信号遅延部13を通ってテレビ受像機3に出力される。一方I/F12から出力された音声信号は、音声処理部14にて遅延量の調整などの信号処理が行われた後に、I/F15を通って外部スピーカー(C、L、R、SL、SR、SW)に出力される。すなわち音声処理部14は、音声信号遅延手段の機能も有する。詳細についてはまた後述するが、ここで図1のホームシアターシステムにおけるリップシンク補正並びにタイムアライメントについて以下に簡単に説明を行う。
【0023】
まずAVコントローラー2内部のテスト信号生成部16は、補正用のテスト信号を生成し出力する。出力されたテスト信号は、音声処理部14を通って、外部スピーカー(C、L、R、SL、SR、SW)と、テレビ受像機3内蔵スピーカー11に順番に供給される。そして外部スピーカー(C、L、R、SL、SR、SW)とテレビ受像機3内蔵スピーカー11は、供給されたテスト信号を順番に再生していく。その再生音を聴取位置に設置されたマイクロフォン10を用いて集音し、音場解析部17に応答信号としてフィードバックする。音場解析部17は入力された応答信号を解析し、その解析結果を遅延時間情報として音声/映像補正値メモリ18に記憶する。音声処理部14は、音声/映像補正値メモリ18に記憶された遅延時間情報を読み込み、音声信号の遅延量を調整する。以上のように本実施形態では音声信号のフィードバック系を設けることで、リップシンク補正及びタイムアライメントを行う。以後、上述したリップシンク補正及びタイムアライメント処理を初期リップシンク補正と呼ぶこととする。
【0024】
またトポロジー検出部19はサラウンドシステムを構成するスピーカーのネットワーク上でのトポロジーを任意のタイミングで検出する。そして、トポロジー情報として任意のタイミングごとに、または接続形態に変化があったときに更新して音声/映像補正値メモリ18に記憶する。トポロジーの検出方法については図4、図5を用いて後述する。
【0025】
なお本実施形態ではテスト信号生成部16をAVコントローラー2内部に設けたが、この形態に限定するわけではない。例えば、AVコントローラー2外部に設けてもよいし、またテスト信号が記録されたDVDメディア等を用いて、ソース機器1から再生を行う方法を用いても良い。
【0026】
また本実施形態では5.1chサラウンドシステムとして説明を行っていくが、7.1chや9.1cなどマルチチャンネルであれば適用でき、チャンネル数については特に規定はしない。また本実施形態では、AVコントローラー2から外部スピーカーへの出力ポートとして2つ用意しているが、1以上チャンネル数未満のポート数を有すれば良いため特に限定はしない。
【0027】
<音声信号の伝搬>
次に本実施形態のサラウンドシステムにおける音声信号の伝搬方法について説明する。まずAVコントローラ2のI/F15について説明する。I/F15は図1のように変調部20と復調部21から構成される。変調部20は音声処理部14からの音声信号もしくは後述するトポロジー検出部19からのトポロジー診断信号を、所定の変調を施して外部スピーカー(C、L、R、SL、SR、SW)へ出力する。また復調部21は、後述する各スピーカーからのトポロジー通知信号を所定の復調を施してトポロジー検出部19に出力する。
【0028】
なお変調部20及び復調部21が施す変復調方式については特に規定しない。音声伝送が可能な変復調方式であれば、いかなる変復調方式を用いても構わない。また図1では、AVコントローラ2と外部スピーカー間、もしくは外部スピーカーと外部スピーカー間とは1本のケーブルで接続されているが、これに限定されるわけではなく、2本以上のケーブルを用いても良い。
【0029】
次に外部スピーカー(C、L、R、SL、SR、SW)の構成及び動作について説明する。図2は外部スピーカーの構成図である。外部スピーカー(C、L、R、SL、SR、SW)のインターフェース部であるI/F22は、変調部23及び変調部25、復調部24及び復調部26から構成されている。復調部24は、AVコントローラー2もしくは上流の外部スピーカーからの音声信号もしくはトポロジー診断信号を所定の復調を施し、音声信号は自CH抽出部28に、トポロジー診断信号はトポロジー通知部27に出力する。ここで音声信号は、図3に示すような1つのフレームに全CHのデータが含まれている構成になっているものとする。自CH抽出部28は、入力された音声信号から自CHの音声信号のみを抽出し、また入力された音声信号をそのまま変調部25へ出力する。そして変調部25は入力された音声信号に所定の変調を施し、下流の外部スピーカーへ出力する。自CH抽出部28で抽出された自CHの音声信号は、DAC30にてアナログ信号に変換し、そのアナログ信号をAMP31にて増幅され、スピーカー32にて音声として放音される。
【0030】
本実施形態では以上のように音声信号の伝搬を行うものとする。なお本実施形態において、各スピーカー内部の役割通知部33に当該装置固有の情報として自CHの役割を示すID(以後、役割ID情報)が事前に保持されているものとする。ここで役割とはC、L、R、SL、SR、SWのことを指す。自CH抽出部28及び後述するトポロジー通知部27は、例えばシステム起動時などに、役割通知部33に保管された役割ID情報を読み込むことによって、自CHの役割を把握する。
【0031】
<トポロジー検出>
次に図2のトポロジー通知部27の動作について説明する。トポロジー通知部27はトポロジー検出部19からのトポロジー診断信号を受けて、自機の役割ID情報及びネットワーク形態に関する情報を含ませた接続形態情報であるトポロジー通知信号を変調部23に、新規のトポロジー診断信号を変調部25に夫々出力する。トポロジー通知信号及びトポロジー診断信号の詳細については後述に具体的な例を挙げて説明する。トポロジー通知信号を受けた変調部23は、所定の変調を施し上流の外部スピーカーもしくはAVコントローラー2へ出力する。またトポロジー診断信号を受けた変調部25は、所定の変調を施し下流の外部スピーカーへ出力する。
【0032】
また復調部26は、下流の外部スピーカーからのトポロジー通信信号に復調を施し、トポロジー通知部27に出力する。トポロジー通知信号を受けたトポロジー通知部27は、そのトポロジー通知信号をそのまま変調部23に出力する。このとき下流の外部スピーカーからのトポロジー通知信号に自機のトポロジー通知信号も加えて出力しても良い。
【0033】
次にトポロジー検出の具体的な例について図4及び図5を用いて説明する。図4にトポロジー診断信号及びトポロジー通知信号の例を示す。トポロジー診断信号は図4に示すように3bitで構成されており、ここにはAVコントローラー2からの階層の段数を示すトポロジー情報(以後、段数情報とする)が含まれる。一方トポロジー通知信号は、6bitで構成されており、段数情報を含む3bitに、自CHの役割を示す役割ID情報3bitを加えた構成となっている。
【0034】
図5を用いて、図4のトポロジー診断信号及びトポロジー通知信号を用いたトポロジー検出方法を説明する。まずAVコントローラー2からトポロジー診断信号000を出力する。トポロジー診断信号000を受けたセンタスピーカーC及びサブウーハーSWは、段数情報に1を加算した001を、新規のトポロジー診断信号001として下流のフロントスピーカーL及びフロントスピーカーRに転送する。同様にトポロジー診断信号001を受けたフロントスピーカーL及びフロントスピーカーRは、段数アドレスに1を加算した010を、新規のトポロジー診断信号010としてサラウンドスピーカーSL及びサラウンドスピーカーSRに転送する。
【0035】
ここで各スピーカーには、事前に自CHの役割を示す3bitの役割ID情報がそれぞれ付加されているものとする。この役割ID情報は上述したように、外部スピーカー内部の役割通知部33にて保管されている。ここでは図5のように、センタスピーカーC、フロントスピーカーL、フロントスピーカーR、サラウンドスピーカーSL、サラウンドスピーカーSR、サブウーハーSWにはそれぞれ000、001、010、011、100、101の役割IDが設定されている。トポロジー診断信号を受けた外部スピーカーは、トポロジー診断信号に自チャネルの役割ID情報を付加したトポロジー通知信号を、上流の外部スピーカーもしくはAVコントローラー2に出力する。また下流の外部スピーカーからトポロジー通知信号はそのまま、もしくは自機のトポロジー通知信号を加えて上流の外部スピーカーもしくはAVコントローラー2に出力する。以上のように各スピーカーは、自CHの役割ID情報と自CHのトポロジー情報(段数情報)を含んだトポロジー通知信号をAVコントローラー2に伝えることができる。そして各外部スピーカーからのトポロジー通知信号を受信したAVコントローラ2のトポロジー検出部19は、サラウンドシステムを構成する外部スピーカー(C、L、R、SL、SR、SW)のネットワーク上でのトポロジーを把握することができる。音声/映像補正値メモリ18は、トポロジー検出部19が把握したトポロジー情報を任意のタイミングごとに、または接続形態に変化があった時に更新して記録する。
【0036】
なお、上述したトポロジー検出方法は一例であり別の手法を用いても良い。また、必要に応じてトポロジー診断信号及びトポロジー通知信号の構成を変更しても良い。
【0037】
<初期リップシンク補正方法>
次に本実施形態において、ホームシアターシステムを設置した時などにおける初期的なリップシンク補正及びタイムアライメントの方法について説明する。上述もしたが、この初期補正の手段を以後初期リップシンク補正と呼ぶ。
【0038】
まず初期リップシンク補正を行う場合、図1に示したように聴取位置にマイクロフォン10を設置する。マイクロフォン10はAVコントロール2の音場解析部17と接続されており、音場解析部17はマイクロフォン10が集音した音声信号をデジタル変換し、信号解析を行う。
【0039】
初期リップシンク補正を行う際、まずAVコントローラー2内部のテスト信号生成部16が補正用のテスト信号を生成し、音声処理部14に出力する。またこのときテスト信号生成部16は、テスト信号を出力したタイミングに関する時間情報(以後、出力タイミング情報)を音場解析部17に出力する。音声処理部14は、まずテスト信号をテレビ受像機3に供給する。テスト信号を受けたテレビ受像機3は、音声信号をテレビ受像機3内部にて映像信号処理にかかる時間分だけ遅延させてから内蔵スピーカー11から出力する。
【0040】
テレビ受像機3から出力された音声は、空間を伝搬してマイクロフォン10を用いて集音される。そしてマイクロフォン10より集音された音声信号は、応答信号として音場解析部17に出力される。応答信号を受けた音場解析部17は、応答信号が入力されたタイミングと上記テスト信号の出力タイミングとの時間差を比較する。そして、音声遅延時間(テレビ受像機3内蔵スピーカーまでの音声伝送時間+スピーカーから出力された音声がマイクロフォンに伝搬するまでの空間伝搬時間)を把握する。
【0041】
また同様にテスト信号を外部スピーカー(C、L、R、SL、SR、SW)に供給し、外部スピーカーから放音される音声を、マイクロフォン10が集音する。そしてその応答信号を音場解析部17が受けて解析することで、音声遅延時間(各外部スピーカーまでの音声伝送時間+スピーカーから出力された音声がマイクロフォンに伝搬するまでの空間伝搬時間)を把握する。
【0042】
音場解析部17は、上記動作により把握したテレビ受像機内蔵スピーカー11及び外部スピーカー(C、L、R、SL、SR、SW)の音声遅延時間に関する情報(以後、遅延時間情報)を、音声/映像補正メモリ18に書き込む。そして音声処理部14は、音声/映像補正メモリ18に書き込まれた遅延時間情報を基に、テレビ受像機内蔵スピーカー11の音声遅延時間に合わせる形で、外部スピーカーに音声信号を供給するまでの遅延量を調整する。その後テレビ受像機3の内蔵スピーカー11をミュートに制御する。
【0043】
以上のような補正を行うことにより本実施形態では、初期リップシンク補正(リップシンク補正及びタイムアライメント)を行う。
【0044】
なお本実施形態では、初期リップシンク補正方法として上記手法を用いたが、この手法に特定するものではなく、別の手法でリップシンク補正及びタイムアライメントを用いても構わない。
【0045】
<トポロジー変更に対応したリップシンク補正及びタイムアライメント>
次に上記初期リップシンク補正処理を行った後、サラウンドシステムを構成する外部スピーカーのトポロジーを変更した場合におけるリップシンク補正方法について説明する。ここでは具体的な例として、図6(A)に示すトポロジー(A)にて初期リップシンク補正を行った後に、図6(B)に示すトポロジー(B)に変更した場合について説明する。
【0046】
トポロジー(A)からトポロジー(B)にトポロジーを変更した場合、フロントスピーカーR及びサラウンドスピーカーSR、サブウーハーSWは、AVコントローラーからスピーカーを経由する段数が変化する。それ故、音声伝送時間も変化することとなる。
【0047】
図7はトポロジーの変更によって生じる外部スピーカー(C、L、R、SL、SR、SW)における音声伝送時間の変化を図示したものである。ここで図7に示す音声信号及び映像信号は、同期タイミングにて聴取位置に同時に伝搬されるべき信号であるものとする。
【0048】
トポロジーを変更する前、つまりトポロジー(A)の状態では、初期リップシンク補正を行っている為、図7(a)に示すように各音声信号と映像信号は、同期タイミングにて同時に聴取位置に伝搬されている。しかしこの状態でトポロジー(B)に変更した場合、音声情報が経由する外部スピーカーの数が増加する。そのため、図7(b)に示すようにサラウンドスピーカーSRではTd、フロントスピーカーRでは3Td、サブウーハーでは5Tdの遅れ(音声伝送時間のズレ)が生じる。ここでTdとは、音声信号が1つのスピーカーを経由する際に発生する遅延時間、つまり変復調処理にかかる時間である。なお、実際にはケーブルにおける遅延等も変化するが、変復調処理にかかる時間と比較して微小である為、本実施形態では無視する。
【0049】
上記のようにサラウンドシステムを構成する外部スピーカーのトポロジーを、トポロジー(A)からトポロジー(B)に変更した場合、サラウンドスピーカーSRにTdの遅れが生じる。その理由は、AVコントローラー2からサラウンドスピーカーSRの間にあるスピーカーの経由数(以後、経由段数)が1段増えたからである。同様にフロントスピーカーRは3段、サブウーハーSWは5段、トポロジー変更に伴って経由段数が増える為、図7(b)に示すように、それぞれに3Td、5Tdの遅れが生じる。
【0050】
以上のように、外部スピーカーのトポロジーの変更によって、各外部スピーカーにおける音声伝送時間にズレが生じてしまう。その為、映像と音声、及び音声同士の同期が外れてしまう。しかし、トポロジーの変化と音声信号が1つのスピーカーを経由する際の遅延時間:TdをAVコントローラ2が事前に把握し、音声処理部14にて音声信号の遅延量を適正に調整する。そのため、トポロジー変更に対応したリップシンク補正並びにタイムアライメントを行うことができる。以下にトポロジー変更に対応したリップシンク補正並びにタイムアライメントの方法について説明する。
【0051】
上述したように図1のトポロジー検出部19は外部スピーカーのトポロジーを任意のタイミングで検出する。ここでの任意のタイミングとは、システム起動時や音声再生開始時、もしくは音声再生中における任意の期間であり、トポロジーの変化を検出できるならば特に規定はしない。
【0052】
トポロジー検出部19は上述したように、任意のタイミングでトポロジー診断信号を各外部スピーカーに出力し、外部スピーカーからのトポロジー通知信号を受けることで、外部スピーカーのトポロジーを検出する。トポロジー検出部19が検出したトポロジー情報は任意のタイミングごと、もしくはトポロジーに変化があったときに音声/映像補正メモリ18に記憶される。これにより、接続形態記憶手段としての機能を有することとなる。
【0053】
音声処理部14は上述した遅延時間情報とトポロジー情報を基に、リップシンク補正及びタイムアライメント処理を行う。トポロジー検出部19は、外部スピーカーのトポロジーが変更した場合、トポロジー変更後のトポロジー情報を音声/映像補正値メモリ18に記憶する。音声/映像補正値メモリ18は記憶したトポロジー変更前と変更後のトポロジー情報の差分(以後、トポロジー変更情報)を算出し、トポロジー変更情報として記憶する。音声処理部14は、そのトポロジー変更情報に基づいて各スピーカーの音声伝送時間の変化を推測し、その推測値に基づいて音声信号の遅延量を調整する。以上の動作によって、トポロジー変更により生じた音声同士の同期のズレを補正する。また同時に映像信号遅延部13は、音声/映像補正メモリのトポロジー変更情報に基づいて、映像と音声の同期のズレが生じないよう映像信号の遅延量を調整する。以上のようにして、トポロジー変更後のリップシンク補正並びにタイムアライメントを行う。
【0054】
以下に図6のトポロジー(A)からトポロジー(B)に変更した場合を例に挙げて具体的な補正方法について説明する。図8は音声/映像補正メモリ18に保持されているトポロジー情報の具体例を示したものである。図8のテーブル1に保持される情報は、初期リップシンク補正を行った際のトポロジー(A)における各スピーカーの段数情報である。例えば、センタスピーカーCはAVコントローラ2と直に接続されている為、段数情報は0として保持される。またフロントスピーカーLはセンタスピーカーCを経由して接続されている為、段数情報は1と保持される。以上のようにテーブル1には、初期リップシンク補正を行った際の各スピーカーの段数情報が保持され、この情報は次回の初期リップシンク補正まで更新されることはない。
【0055】
一方、テーブル2に保持されるトポロジー情報は、現時点でのサラウンドシステムのトポロジーにおける各スピーカーの段数情報であり、この情報はトポロジー検出部19がトポロジー検出を行うごとに更新される。そしてテーブル3には、テーブル1とテーブル2に保持される段数情報の差分(トポロジー変更情報)が保持される。
【0056】
図8(I)はトポロジー変更前、つまりトポロジー(A)の音声/映像補正メモリ内部に保持されるトポロジー情報である。テーブル1には初期リップシンク補正を行ったトポロジー(A)における外部スピーカーの段数情報が登録される。またテーブル2にはテーブル1と同じトポロジー(A)の段数情報が登録される。またテーブル3にはトポロジー変更情報が保持される。現段階ではトポロジー変更を行っていない為、テーブル3にはすべて0が保持される。音声処理部14は任意のタイミングでテーブル3のトポロジー変更情報を読み込みこむ。図8(I)では、テーブル3に保持されている値はすべて0であるため、音声処理部14は、外部スピーカーのトポロジーは変更されていないものとみなし、これまでの補正値で音声信号の遅延量を調整する。
【0057】
そしてトポロジー(A)からトポロジー(B)にトポロジーを変更した場合、図8(II)のようトポロジー情報が更新される。図8(II)のテーブル1にはトポロジー(A)におけるトポロジー情報がそのまま保持されるが、テーブル2には変更後のトポロジー(B)におけるトポロジー情報が登録される。そしてテーブル3にはトポロジー(A)とトポロジー(B)との段数情報の差分が保持される。
【0058】
音声処理部14は、テーブル3に保持されている値に0以外のものが含まれる為、トポロジー変更が行われたのだと判定する。テーブル3を読み込むことにより音声処理部14は、現在のトポロジー(トポロジー(B))が初期リップシンクを行ったトポロジー(トポロジー(A))と比較する。その結果、サラウンドスピーカーSRは1段、フロントスピーカーRは3段、サブウーハーSWは5段、それぞれ経由段数が増加したのだとわかる。音声処理部14は、最も経由段数が増加した値、この例ではサブウーハーSWの5段を基準に補正を行う。
【0059】
音声処理部14は、全スピーカーへの音声伝送時間がサブウーハーSWに生じる音声伝送時間のズレ:5Tdと同様に遅延するように、外部スピーカーへ音声信号を供給する際の遅延量を調整する。図7(c)は補正後の音声及び映像のタイミングである。具体的には、センタスピーカーCは5Td、フロントスピーカーLは5Td、フロントスピーカーRは2Td、サラウンドスピーカーSLは5Td、サラウンドスピーカーSRは4Tdを遅延させて音声信号を送信する。上述した補正値を用いた補正動作により、図7(c)のように音声信号は同期タイミングで同期して聴取位置に伝搬される。またこのとき映像信号遅延部13も、図7(c)のように映像信号を5Tdだけ遅延するように調整し、映像表示を行う。
【0060】
以上のような補正を行うことで、本実施形態では初期リップシンク補正を行った後に外部スピーカーのトポロジーを変更した場合においても、自動的にリップシンク補正を行うことができる。
【0061】
次に上述した例とは逆に、図6のトポロジー(B)からトポロジー(A)に変更した場合について説明する。このときの音声及び映像の出力タイミングの様子を図7と同様の形式で図9に示す。また、音声/映像補正メモリに保持されるトポロジー情報を図8と同様の形式で図10に示す。
【0062】
図10(I)は、図8(I)と同様にトポロジー変更前、つまりトポロジー(B)の音声/映像補正メモリ内部に保持されるトポロジー情報である。テーブル1には初期リップシンク補正を行ったトポロジー(B)における外部スピーカーの段数情報が登録される。またテーブル2にはテーブル1と同じトポロジー(B)の段数情報が登録される。またテーブル3にはトポロジー変更情報が保持される。現段階ではトポロジー変更を行っていないので、テーブル3にはすべて0が保持される。音声処理部14は、テーブル3に保持されている値はすべて0であるため、外部スピーカーのトポロジーは変更されていないものとみなし、これまでの補正値で音声信号の遅延量の調整を行う。
【0063】
そしてトポロジー(B)からトポロジー(A)にトポロジーを変更した場合、図10(II)のようトポロジー情報が更新される。図10(II)のテーブル1にはトポロジー(B)におけるトポロジー情報がそのまま保持されるが、テーブル2には変更後のトポロジー(A)におけるトポロジー情報が登録される。そしてテーブル3にはトポロジー(B)とトポロジー(A)との段数情報の差分が保持される。
【0064】
音声処理部14は、テーブル3に保持されている値に0以外のものが含まれる為、トポロジー変更が行われたのだと判定する。音声処理部14はテーブル3を読み込み、現在のトポロジー(A)では初期リップシンクを行ったトポロジー(B)と比べ、サラウンドスピーカーSRは1段、フロントスピーカーRは3段、サブウーハーSWは5段、それぞれ経由段数が少なくなったことがわかる。そのため音声処理部14は、図9(c)に示すように、音声伝送時間の差分値だけを、差分の生じた各々のスピーカーを遅延させるように調整を行う。つまりサラウンドスピーカーSRはTd、フロントスピーカーRは3Td、サブウーハーSWは5Tdだけ出力を遅延させることにより、図9(c)に示すようにリップシンク補正並びにタイムアライメントを行うことが出来る。
【0065】
以上のように、初期リップシンク補正を行った後に、スピーカーのトポロジー変更を行ったとしても、ユーザが意識することなく自動的にリップシンク補正及びタイムアライメントを行うことができ、利便性を向上させることができる。
【0066】
<実施形態2>
実施形態1では、外部スピーカーがデイジーチェーン接続されたサラウンドシステムを用いてホームシアターシステムを構築した場合について説明を行った。本実施形態では外部スピーカーがツリー接続及び/もしくはデイジーチェーン接続されたサラウンドシステムを用いてホームシアターシステムを構築した場合について説明を行う。
【0067】
図11は本実施形態におけるホームシアターシステム構成図である。図11のホームシアターシステムは、図1と同様、ソース機器1、AVコントローラー2、テレビ受像機3、そしてテレビ受像機3とは独立した外部スピーカー(C、L、R、SL、SR、SW)とから構成されている。このとき外部スピーカー(C、L、R、SL、SR、SW)は、図11のようにツリー接続されている。またAVコントローラ2には音場補正用のマイクロフォン10を接続することができる。
【0068】
ここでソース機器1及びAVコントローラ2、テレビ受像機3は実施形態1と同様の構成を取っている為、詳細な動作については省略する。実施形態1と異なる点は、外部スピーカーが所有する出力ポートの数が、1から2に増えたことにより、外部スピーカーが出力先として接続できる他の外部スピーカーの数が増えた点にある。なお、本実施形態においては外部スピーカーの出力ポート数は2と限定しているが、2以上の出力ポートを所有しても良い。
【0069】
<音声信号の伝搬>
次に外部スピーカー(C、L、R、SL、SR、SW)の構成及び動作について説明する。図12は、本実施形態における外部スピーカー(C、L、R、SL、SR、SW)の構成図である。実施形態1で説明した外部スピーカーの構成(図2)と異なる点は、下流スピーカーに対して2つの出力ポートを所有している点である。
【0070】
変調部33及び復調部34以外のブロックの動作及び音声信号の伝搬方法については、実施形態1と同様である為、詳細な説明については省略する。変調部33は、トポロジー通知部27からの新規トポロジー診断信号及び自CH抽出部28からの音声信号を、所定の変調を施し、下流に接続された2つ(もしくは1つ)の外部スピーカーへ出力する。また復調部34は、下流に接続された2つ(もしくは1つ)の外部スピーカーからのトポロジー通知信号を受け、所定の復調を施し、トポロジー通知部27に出力する。
【0071】
<トポロジー検出>
次に本実施形態におけるトポロジー検出の具体的な例について図4及び図13を用いて説明する。トポロジー診断信号及びトポロジー通知信号は実施形態1と同様に図4に示す構成をとるものとする。
【0072】
図13を用いて、図4のトポロジー診断信号及びトポロジー通知信号を用いたトポロジー検出方法を説明する。まずAVコントローラ2は外部スピーカーにトポロジー診断信号000を出力する。トポロジー診断信号000を受けたフロントスピーカーLは、段数情報に1を加算した001を、新規のトポロジー診断信号001として下流の外部スピーカーであるセンタスピーカーC及びサラウンドスピーカーSLに出力する。同様にトポロジー診断信号000を受けたサブウーハーSWは、段数情報に1を加算した001を、新規のトポロジー診断信号001として下流の外部スピーカーであるフロントスピーカーR及びサラウンドスピーカーSRに出力する。
【0073】
また各スピーカーには自CHの役割を示す3bitの役割ID情報がそれぞれに付加されている。ここではセンタスピーカーC、フロントスピーカーL、フロントスピーカーR、サラウンドスピーカーSL、サラウンドスピーカーSRには、それぞれ000、001、010、011、100、101の役割ID情報が事前に設定されているものとする。トポロジー診断信号を受けた外部スピーカーは、トポロジー診断信号に自チャネルの役割ID情報を付加したトポロジー通知信号を、上流の外部スピーカーもしくはAVコントローラー2に出力する。また下流の外部スピーカーからのトポロジー通知信号はそのまま、もしくは自機のトポロジー通知信号を加えて上流の外部スピーカーもしくはAVコントローラー2に出力する。以上のように各外部スピーカーは、自CHの役割ID情報と自CHのトポロジー情報(段数情報)を含むトポロジー通知信号を、AVコントローラー2に伝えることができる。そして、各外部スピーカーからのトポロジー通知信号を受信したAVコントローラ2のトポロジー検出部19は、サラウンドシステムのトポロジーを把握することが出来る。
【0074】
<トポロジー変更後のリップシンク補正方法>
次に本実施形態のホームシアターシステムにおいて、初期リップシンク補正処理を行った後、サラウンドシステムのトポロジーを変更した場合のリップシンク補正方法について説明する。なお初期リップシンク補正方法については実施形態1と同様である為、説明については省略する。
【0075】
ここでは具体的な例として、図14(C)に示すトポロジー(C)にて初期リップシンク補正を行った後に、図14(D)に示すトポロジー(D)に変更した場合について説明する。トポロジー(C)からトポロジー(D)にトポロジーを変更した場合、センタスピーカーC及びフロントスピーカーL、サラウンドスピーカーSL、サラウンドスピーカーSR、サブウーハーSWは、AVコントローラー2からの経由段数が変化する。それ故、音声伝送時間も変化することとなる。
【0076】
図15はトポロジーの変更によって生じる外部スピーカー(C、L、R、SL、SR、SW)における音声伝送時間の変化を図示したものである。トポロジーを変更する前、つまりトポロジー(C)の状態では、初期リップシンク補正を行っている為、図15(a)に示すように、各音声データ及び映像データは、同期タイミングにて同時に聴取位置に伝搬される。しかしこの状態でトポロジー(D)に変更した場合、図15(b)に示すように、トポロジー変更前(トポロジー(C))における同期タイミングからずれが発生してしまう。ここでは、センタスピーカーCはTdの進み(音声伝送時間の差分、言い換えると、−Tdの遅れ)、及びフロントスピーカーL、サラウンドスピーカーSL、サラウンドスピーカーSRはTdの遅れ、サブウーハーは2Tdの遅れが生じてしまう。ここでTdとは、実施形態1と同様、音声信号が1つのスピーカーを経由する際に発生する遅延時間である。トポロジー検出部19は上述したように、任意のタイミングでトポロジー診断信号を各外部スピーカーに出力し、各スピーカーからのトポロジー通知信号を受けることで、外部スピーカーのトポロジーを検出する。トポロジー検出部19が検出したトポロジー情報は、音声/映像補正メモリ18に保管される。
【0077】
図16は音声/映像補正メモリ内部に保持されるトポロジー情報の具体的な例を示したものである。実施形態1と同様、テーブル1に保持される情報は、初期リップシンク補正を行った際のトポロジー(C)における各スピーカーの段数情報である。また、テーブル2に保持されるトポロジー情報は、現時点でのサラウンドシステムのトポロジーにおけるスピーカーの段数情報である。そしてテーブル3には、テーブル1とテーブル2に保持される段数情報の差分値(トポロジー変更情報)が保持される。
【0078】
図16(I)はトポロジー変更前、つまりトポロジー(C)の音声/映像補正メモリ内部に保持されるトポロジー情報である。テーブル1には初期リップシンク補正を行ったトポロジー(C)における外部スピーカーの段数情報が登録される。またテーブル2にはテーブル1と同じトポロジー(C)の段数情報が登録される。またテーブル3にはトポロジー変更情報が登録される。現段階ではトポロジー変更を行っていないので、テーブル3にはすべて0が保持される。
【0079】
音声処理部14は実施形態1と同様、任意のタイミングごとにテーブル3のトポロジー変更情報を読み込む。テーブル3に保持されている値はすべて0であるため、音声処理部14は、外部スピーカーのトポロジーは変更されていないものと見なし、これまでの補正値で音声信号の遅延量の調整する。
【0080】
そしてトポロジー(C)からトポロジー(B)にトポロジーを変更した場合、図16(II)のようにトポロジー情報が更新される。図16(II)のテーブル1にはトポロジー(C)におけるトポロジー情報がそのまま保持されるが、テーブル2には変更後のトポロジー(D)におけるトポロジー情報が登録される。そしてテーブル3には、トポロジー(C)とトポロジー(D)との段数情報の差分が保持される。
【0081】
音声処理部14はテーブル3に保持されている値に0以外のものが含まれている為、トポロジー変更が行われたのだと判定する。テーブル3を読み込むことにより音声処理部14は、現在のトポロジー(D)では初期リップシンクを行ったトポロジー(C)と比べて、経由段数が増加したのだとわかる。ここでは、センタスピーカーCは−1段、フロントスピーカーLは1段、サラウンドスピーカーLも1段、サラウンドスピーカーRも1段、サブウーハーSWは2段、経由段数が増加したのだとわかる。音声処理部14は、最も経由段数が増加した値、この例ではサブウーハーSWの2段を基準に補正を行う。
【0082】
音声処理部14は、全スピーカーの音声伝送時間がサブウーハーSWに生じる音声伝送時間のズレ:2Tdと同様に遅延するように、外部スピーカーへ音声信号を供給する際の遅延量を調整する。具体的には、センタスピーカーCは3Td、フロントスピーカーLはTd、フロントスピーカーRは2Td、サラウンドスピーカーSLはTd、サラウンドスピーカーSRはTdを遅延させて音声信号を送信する。また同時に映像信号遅延部13も、映像信号を2Tdだけ遅延させるよう調整し、映像表示を行う。以上のような動作により、図15(c)のように音声及び映像は聴取位置に同時に伝搬されるようになる。
【0083】
以上のように、初期リップシンク補正後にスピーカーのトポロジーを変更しても、音声遅延、映像遅延を適切に行って自動的にリップシンク補正及びタイムアライメントを行うことができる。これにより、ユーザが意識的に補正をする必要性が無くなり、利便性を向上させることができる。
【0084】
<備考>
なお本発明の目的は、前述の実施形態の機能を実現するプログラムを記録した記録媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータが記憶媒体に格納されたプログラムを読み出し実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読み出された実行可能なプログラム自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラム自体およびプログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0085】
例えば、音声処理部14、トポロジー検出部19の処理をソフトウェアにより実施することができる。
【0086】
また、本発明には、プログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた場合についても、本発明は適用される。その場合、書き込まれたプログラムの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される。
【0087】
また、発明の実施の形態は、本発明を中核として構成される装置又は方法を説明している。このため本実施形態には本発明の本質的部分を加えて付加的な構成要件も記載されている。すなわち発明の実施の形態において説明した装置又は方法の構成要件を備えることは、本発明を成立させるための十分条件ではあるものの、必要条件ではない。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明が適用可能な提案する実施形態1のホームシアターシステム全体に関するのブロック図の例である。
【図2】本発明が適用可能な提案する実施形態1のホームシアターシステムにおける外部スピーカーのブロック図の例である。
【図3】本発明が適用可能な提案するホームシアターシステムにおける音声信号のフレームのフレーム構成の例図である。
【図4】本発明が適用可能な提案するホームシアターシステムにおけるトポロジー診断信号及びトポロジー通知信号の構成の例図である。
【図5】本発明が適用可能な提案する実施形態1のホームシアターシステムにおけるトポロジー検出方法を説明する図である。
【図6】本発明が適用可能な提案する実施形態1のホームシアターシステムのトポロジー構成例を示す図である。
【図7】本発明が適用可能な提案する実施形態1のホームシアターシステムにおいてトポロジー(A)からトポロジー(B)に変更した場合による音声と映像の同期タイミングの変化を表す図である。
【図8】本発明が適用可能な提案する実施形態1のホームシアターシステムにおいてトポロジー(A)からトポロジー(B)に変更した場合に音声/映像補正値メモリに記憶されるトポロジー情報に関するテーブル図である。
【図9】本発明が適用可能な提案する実施形態1のホームシアターシステムにおいてトポロジー(B)からトポロジー(A)に変更した場合による音声と映像の同期タイミングの変化を表す図である。
【図10】本発明が適用可能な提案する実施形態1のホームシアターシステムにおいてトポロジー(B)からトポロジー(A)に変更した場合に音声/映像補正値メモリに記憶されるトポロジー情報に関するテーブル図である。
【図11】本発明が適用可能な提案する実施形態2のホームシアターシステム全体のに関するブロック図の例である。
【図12】本発明が適用可能な提案する実施形態2のホームシアターシステムにおける外部スピーカーのブロック図の例である。
【図13】本発明が適用可能な提案する実施形態2のホームシアターシステムにおけるトポロジー検出方法を説明する図の例である。
【図14】本発明が適用可能な提案する実施形態2のホームシアターシステムのトポロジー構成例を示す例図である。
【図15】本発明が適用可能な提案する実施形態2のホームシアターシステムにおいてトポロジー(C)からトポロジー(D)に変更した場合による音声と映像の同期タイミングの変化を表す図である。
【図16】本発明が適用可能な提案する実施形態2のホームシアターシステムにおいてトポロジー(C)からトポロジー(D)に変更した場合に音声/映像補正値メモリに記憶されるトポロジー情報に関するテーブル図である。
【図17】一般的な5.1CHサラウンドシステムのブロック図である。
【図18】一般的なホームシアターシステムのブロック図である。
【図19】外部スピーカーがデイジーチェーン接続されたホームシアターシステムのブロック図の例である。
【符号の説明】
【0089】
1 ソース機器
2 AVコントローラー
3 テレビ受像機
10 マイクロフォン
11 テレビ受像機内蔵スピーカー
12 I/F
13 映像信号遅延部
14 音声処理部
15 I/F
16 テスト信号生成部
17 音場解析部
18 音声/映像補正値メモリ
19 トポロジー検出部
20 変調部
21 復調部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の音声出力装置と映像表示装置とに接続され、前記映像表示装置に対して映像信号を出力し、前記音声出力装置に対して音声信号を出力する制御装置であって、
前記音声出力装置との接続形態を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出した接続形態に基づいて、前記音声出力装置に出力する前記音声信号を遅延させる音声遅延手段と
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記映像表示装置に出力する前記映像信号を遅延させる映像遅延手段をさらに有し、
前記映像遅延手段は、前記検出手段により検出した接続形態に基づいて、前記映像信号の遅延量を調整することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記検出手段が検出した接続形態の変化を更新する更新手段をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記音声遅延手段は、接続された各機器の出力手段による出力タイミングが、同期するように前記音声信号の遅延量を調整することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記検出手段は、接続された前記音声出力装置それぞれの前記接続形態における階層に関する情報を検出し、
前記音声遅延手段は、前記音声出力装置それぞれの階層に応じて音声信号を遅延させ、
前記映像遅延手段は、前記音声信号に同期するよう前記映像信号を遅延させることを特徴とする請求項2に記載の制御装置。
【請求項6】
前記検出手段は、接続された前記音声出力装置それぞれの役割に関する情報を更に検出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記映像表示装置による映像表示及び前記音声出力装置による音声出力が同期するよう前記映像表示及び前記音声出力を同期させる補正手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
制御装置及び他の音声出力装置と接続される音声出力装置であって、
前記制御装置または前記他の音声出力装置から接続形態に関する情報を受信する受信手段と、
前記受信手段にて受信した前記情報と当該音声出力装置の役割とネットワーク上での前記接続形態とに基づいて接続形態情報を生成する生成手段と、
前記生成手段にて生成した前記接続形態情報を前記制御装置へ送信する送信手段とを有し、
前記送信手段は、前記受信手段にて受信した前記接続形態の検出に関する情報に当該音声出力装置に固有な情報を付加して前記他の音声出力装置に転送することを特徴とする音声出力装置。
【請求項9】
複数の音声出力装置と映像表示装置とを有するシアターシステムであって、
前記音声出力装置との接続形態を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出した接続形態に基づいて、前記音声出力装置に出力する前記音声信号を遅延させる音声遅延手段とを有し、
前記音声出力装置は、前記制御装置または前記他の音声出力装置から前記接続形態の検出に関する情報を受信する受信手段と、
前記受信手段にて受信した前記情報と当該音声出力装置の役割と前記接続形態とに基づいて接続形態情報を生成する生成手段と、
前記生成手段にて生成した前記接続形態情報を前記制御装置へ送信する送信手段と
を有することを特徴とするシアターシステム。
【請求項10】
複数の音声出力装置と映像表示装置とが接続されるシステムにより実行される制御方法であって、
前記音声出力装置との接続形態を検出する検出工程と、
前記検出工程において検出された接続形態に基づいて、前記音声出力装置に出力する前記音声信号を遅延させる音声遅延工程と
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項11】
制御装置及び他の音声出力装置と接続される音声出力装置の制御方法であって、
前記制御装置または前記他の音声出力装置から接続形態に関する情報を受信する受信工程と、
前記受信工程にて受信した前記情報と当該音声出力装置の役割とネットワーク上での前記接続形態とに基づいて接続形態情報を生成する生成工程と、
前記生成工程にて生成した前記接続形態情報を前記制御装置へ送信する送信工程とを有し、
前記送信工程は、前記受信工程にて受信した前記接続形態の検出に関する情報に当該音声出力装置に固有な情報を付加して前記他の音声出力装置に転送することを特徴とする制御方法。
【請求項12】
コンピュータを、
音声出力装置の接続形態を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出した接続形態に基づいて、前記音声出力装置に出力する前記音声信号を遅延させる音声遅延手段と
して機能させるためのプログラム。
【請求項13】
音声出力装置を、
制御装置または他の音声出力装置から接続形態に関する情報を受信する受信手段と、
前記受信手段にて受信した前記情報と当該音声出力装置の役割と前記接続形態とに基づいて接続形態情報を生成する生成手段と、
前記生成手段にて生成した前記接続形態情報を前記制御装置へ送信し、前記受信手段にて受信した前記接続形態の検出に関する情報に当該音声出力装置に固有な情報を付加して前記他の音声出力装置に転送する送信手段と
して機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−166534(P2010−166534A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9363(P2009−9363)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】