説明

制御装置

【課題】非常点滅灯の消灯を適切に制御でき、交通流の改善を図れる制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置1は、ハザードランプ50が点灯しているときに、自車両Mの前方を走行する先行車両の状態に関する先行車両情報を取得する先行車両情報取得部30と、先行車両情報取得部30によって取得された先行車両情報に基づいて、自車両Mの速度の変化を予測する速度予測部20と、速度予測部20によって予測された自車両Mの速度の変化に基づいて、ハザードランプ50の消灯のタイミングを判断する消灯判断部21とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常点滅灯の消灯を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に設けられる非常点滅灯(ハザードランプ)は、高速道路などにおいて渋滞に進入する際、後続車両に注意を促すために点灯されることがある。このような非常点滅灯の使用に関して、従来から非常点滅灯の点灯及び消灯を制御する装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の装置では、先行車両の走行状態や後続車両の走行状態を取得して、この周辺車両の状態に基づいて、自車両のハザードの点灯及び消灯を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−145385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、渋滞の末尾における非常点滅灯の点灯は、後続車両に速度の低下を促して衝突事故などを回避する点では有効である一方、過度な減速を誘発して渋滞を悪化させるおそれがある。特に、渋滞が解消しつつあり、速度が回復している場合において、非常点滅灯による後続車両の減速は、新たな渋滞発生の原因となり得る。渋滞の末尾における交通流を更に良好なものとするためには、非常点滅灯の消灯に関して更に改善する必要がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、非常点滅灯の消灯を適切に制御でき、交通流の改善を図れる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る制御装置は、非常点滅灯の消灯を制御する制御装置であって、非常点滅灯が点灯しているときに、自車両の前方を走行する先行車両の状態に関する先行車両情報を取得する先行車両情報取得手段と、先行車両情報取得手段によって取得された先行車両情報に基づいて、自車両の速度の変化を予測する速度予測手段と、速度予測手段によって予測された自車両の速度の変化に基づいて、非常点滅灯の消灯のタイミングを判断する消灯判断手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この制御装置では、先行車両の状態を示す先行車両情報に基づいて自車両の速度の変化を予測し、予測された自車両の速度の変化に基づいて、非常点滅灯の消灯のタイミングを判断している。このように、先行車両の先行車両情報から自車両の速度が予測されるため、先行車両において速度が回復した場合には、これに応じて自車両の速度の変化も予測される。そのため、自車両の速度が回復する適切なタイミングで早めに非常点滅灯を消灯させることができるので、後続車両の不要な減速を抑制することができる。その結果、交通流の改善を図れる。
【0008】
消灯判断手段は、自車両の速度の変化に基づいて当該自車両の速度が安定した所定の走行状態に移行すると判断した場合に、非常点滅灯を消灯すると判断することが好ましい。このように、自車両の走行が安定する所定の走行状態に移行したときを消灯のタイミングに設定することにより、非常点滅灯の消灯のタイミングをより適切なものとすることができる。
【0009】
自車両の後方を走行する後続車両の状態に関する後続車両情報を取得する後続車両情報取得手段を更に備え、消灯判断手段は、後続車両情報取得手段によって取得された後続車両情報に基づいて、非常点滅灯の消灯の要否を判断することが好ましい。例えば、後続車両が存在しない場合には、非常点滅灯の点灯・消灯が交通流へ与える影響が少ないため、消灯を行う必要がない。したがって、後続車両情報に基づいて消灯の要否を判断することにより、不要な処理を削減できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、非常点滅灯の消灯を適切に制御でき、交通流の改善を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る制御装置を示すブロック図である。
【図2】ITSECUにおける速度伝播予測演算処理を説明するための図である。
【図3】制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る制御装置を示すブロック図である。図1に示す制御装置1は、自動車などの車両(以下、自車両)に搭載され、自車両M(図2参照)の交通流に基づいてハザードランプ50の消灯を制御する。
【0014】
図1に示すように、制御装置1は、ITSECU(IntelligentTransport Systems Electronic Control Unit)2を備えている。ITSECU2には、ITS情報受信機3と、後方レーダー4と、ハザードランプ制御部5と、情報提供装置6とが接続されている。ハザードランプ制御部5には、ハザードランプ(非常点滅灯)50が接続されている。ITSECU2は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read OnlyMemory]、RAM[Random Access Memory]などからなる電子制御ユニットである。
【0015】
ITS情報受信機3は、自車両Mと周辺の他車両との無線による車車間通信、及び/又は自車両Mと周辺道路に設置された通信機(例えば、ビーコン)との無線による車路間通信を行う通信機である。
【0016】
ITS情報受信機3は、先行車両情報取得部(先行車両情報取得手段)30を有している。先行車両情報取得部30は、自車両Mの前方(例えば、200m程度)を走行する先行車両から、先行車両の状態に関する先行車両情報を取得する。先行車両情報は、先行車両の位置を示す位置情報及び先行車両の速度を示す速度情報を少なくとも含んでいる。また、先行車両情報には、先行車両との相対速度及び相対加速度、先行車両との車間距離の時間変化に関する情報を含んでいてもよい。先行車両情報取得部30は、取得した先行車両情報をITSECU2に出力する。
【0017】
後方レーダー4は、レーザ光を自車両Mの後方に照射してこの反射光を検出することにより、自車両Mの後続車両に関する情報を取得するレーザレーダー装置である。後方レーダー4は、自車両Mの後続車両の状態に関する後続車両情報を取得する後続車両情報取得部(後続車両情報取得手段)40を有している。
【0018】
後続車両情報取得部40は、検出された反射光を解析することにより、後続車両との相対関係に関する情報を取得する。後続車両との相対関係に関する情報とは、例えば、後続車両の車速及び加速度、後続車両との相対速度及び相対加速度、後続車両との相対距離、後続車両との車間距離の時間変化などに関する情報である。後続車両情報取得部40は、取得した後続車両情報をITSECU2に出力する。
【0019】
ITSECU2は、速度予測部(速度予測手段)20と、消灯判断部(消灯判断手段)21とを有している。速度予測部20は、先行車両情報取得部30によって取得された先行車両情報に基づいて、自車両Mの走行速度の変化を予測する。具体的には、速度予測部20は、ITS情報受信機3から出力された先行車両情報を受け取ると、この先行車両情報に基づいて、速度伝播予測演算処理を行う。速度伝播予測演算処理について、図2を参照して説明する。
【0020】
速度伝播予測演算処理は、自車両Mの先行車両(例えば、車両F1とする)の挙動から車両F1の直後の後続車両(例えば、車両F2とする)の挙動への速度伝播を予測し、自車両Mの直前に位置する車両F3についての当該予測結果に基づいて、例えば車両F3の直後に位置する自車両Mの挙動(例えば、車両F3について予測された挙動に追随した発進や、停止や、後進や、加速や、減速など)を決定する演算を行なう処理である。この速度伝播とは、より詳しくは、車両F1の挙動変化を認識した車両F2のドライバへの、時間的に少し遅れて挙動が伝播する現象とその伝播速度のことである。この速度伝播の現象は、従来、以下の数式で表現されている。
【数1】

【0021】
ここで、上記式は、現在時刻をtとすると、時刻t+Tにおける追従車加速度が時刻tでの相対速度に比例することを示している。T及びαは、直前の車両との関係から決定されるパラーメータである。速度予測部20は、上記速度伝播予測演算処理によって、車両F1と自車両Mとの間に存在すると予測される車両の台数に応じて自車両Mの速度変化を予測する。速度予測部20は、速度に関する速度情報を消灯判断部21に出力する。
【0022】
消灯判断部21は、速度予測部20によって予測された自車両Mの走行速度に基づいて、ハザードランプ50の消灯のタイミングを判断する。消灯判断部21は、速度予測部20から出力された速度情報を受け取ると、この速度情報に基づいて、自車両Mが所定の走行状態、つまり安定した速度での走行にまもなく移行するか否かを判断する。具体的には、消灯判断部21は、速度情報に基づいて、例えば自車両Mが渋滞状態を脱出する否かを判断する。
【0023】
ここで言う渋滞状態とは、例えば35km/h程度での加減速が周期的に続く状況である。なお、渋滞状態は、道路種別によって異なっており、例えば高速道路では、40km/h以下で1kmの車列の延長が15分以上継続したとき、若しくは、時速20km/h〜30km/h以下のとき、一般道では、おおむね20km/h以下のときなどと定義されており、状況に応じて適宜設定される。
【0024】
消灯判断部21は、渋滞を脱出する状態に自車両Mがまもなく移行する、つまり自車両Mが等速での走行となると判断した場合には、後方レーダー4から出力された後続車両情報を受け取る。なお、ここで言う「まもなく」とは、任意に設定される時間であるが、例えば5秒程度であることが好ましい。この場合、交通流の改善に効果的である。
【0025】
消灯判断部21は、自車両Mがまもなく安定した速度での走行に移行すると判断した場合、後続車両情報に基づいて、ハザードランプ50を消灯の要否を判断する。より詳細には、消灯判断部21は、後続車両R4が存在する場合、後続車両R4との相対関係に基づいて、後続車両R4が自車両Mのハザードランプ50の点灯・消灯を確認でき、安全に追従走行できる所定の距離内に存在するか否かを判断する。つまり、後続車両R4が急ブレーキなどをかけずに追従できる距離内に存在するか否かを判断する。
【0026】
消灯判断部21は、後続車両R4が自車両Mのハザードランプ50の点灯・消灯を確認でき、安全に追従走行できる距離内に存在すると相対関係から判断した場合には、ハザードランプ50の消灯が必要である(消灯してもよい)と判断し、ハザードランプ50の消灯を指示する消灯信号をハザードランプ制御部5及び情報提供装置6に出力する。なお、消灯判断部21は、後方レーダー4から後続車両情報が出力されていない場合、つまり後続車両が存在しない場合には、ハザードランプ50の消灯は不要と判断する。
【0027】
ハザードランプ制御部5は、ハザードランプ50の点灯・消灯を制御するECUである。ハザードランプ制御部5は、ITSECU2から出力された消灯信号を受け取ると、ハザードランプ50を消灯する。なお、ハザードランプ制御部5は、図示しないハザードランプスイッチと接続されており、ハザードランプスイッチの操作に応じてハザードランプ50の点灯・消灯を制御する。
【0028】
情報提供装置6は、ハザードランプ50が消灯することを運転者に報知する装置である。情報提供装置6は、消灯判断部21から出力された消灯信号を受け取ると、運転者にハザードランプ50が消灯することを報知する。情報提供装置6は、ナビゲーションシステムなどのモニターやメータディスプレイにハザードランプ50が消灯する旨を表示するものであってもよいし、スピーカーやブザーから音声によってハザードランプ50が消灯する旨を通知するものであってもよい。
【0029】
続いて、制御装置1の動作について、図2及び図3を参照しながら説明する。図3は、制御装置の動作を示すフローチャートである。
【0030】
図3に示すように、自車両Mが渋滞に進入するときに、ハザードランプスイッチが操作されてハザードランプ50が点灯される(ステップS1)。そして、ハザードランプ50が点灯されると、例えば先行車両F1の先行車両情報がITS情報受信機3の先行車両情報取得部30によって取得される(ステップS2)。
【0031】
続いて、ITSECU2の速度予測部20によって先行車両情報に基づいて自車両Mの速度変化が予測される。具体的には、速度予測部20の速度伝播予測演算処理により、自車両Mの先行車両である車両F1の挙動から、車両F1の直後の後続車両である車両F2の挙動への速度伝播が予測され、車両F2についての当該予測結果に基づいて、車両F2の直後に位置する車両F3の挙動が決定される。同様に、決定された車両F3の挙動から、車両F3の直後の後続車両である自車両Mの挙動、つまり速度変化が予測される。
【0032】
ITSECU2の消灯判断部21では、この速度変化に基づき、自車両Mが安定した速度での走行に移行するか否かが判断される(ステップS3)。自車両Mが安定した速度に移行すると判断された場合には、ステップS4に進む。一方、自車両Mが安定した速度に移行すると判断されなかった場合には、処理が終了する。
【0033】
ステップS4では、後方レーダー4の後続車両情報取得部40によって後続車両との相対関係を示す後続車両情情報が取得される。そして、ITSECU2の消灯判断部21によって、後続車両情報に基づいて、後続車両R4が自車両Mのハザードランプ50の点灯・消灯を確認でき、安全に追従走行できる距離内に存在するか否かが判断される(ステップS5)。安全に追従走行できる距離内に存在すると判断された場合には、ハザードランプ制御部5によってハザードランプ50が消灯される(ステップS6)。一方、安全に追従走行できる距離内に存在すると判断されなかった場合には、処理が終了する。すなわち、ハザードランプ50の消灯が行われない。
【0034】
以上説明したように、制御装置1は、先行車両情報に基づいて自車両Mの速度変化を予測し、自車両Mが安定した速度での走行に移行すると共に、後続車両との相対関係に基づいて、後続車両が自車両Mのハザードランプ50の点灯・消灯を確認でき、安全に追従走行できる所定の距離内に存在すると判断した場合に、ハザードランプ50を消灯する。このように、先行車両の先行車両情報から自車両Mの速度が予測されるため、先行車両において速度が回復した場合には、これに応じて自車両Mの速度の変化も予測される。そのため、自車両Mの速度が回復する適切なタイミングで早めにハザードランプ50を消灯させることができるので、後続車両の不要な減速を抑制することができる。その結果、交通流の改善を図れる。
【0035】
また、制御装置1では、ハザードランプ50の消灯の要否を判断している。すなわち、後続車両が存在しない場合、後続車両が至近距離に存在する場合、または、後続車両が自車両Mのハザードランプ50を確認できない距離に存在している場合には、非常点滅灯の点灯・消灯が交通流へ与える影響が少ないため消灯しない。したがって、後続車両情報に基づいて消灯の要否を判断することにより、不要な処理を削減できる。
【0036】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、後方レーダー4の後続車両情報取得部40によって後続車両情報を取得しているが、後続車両情報取得部40は、ITS情報受信機3に備えられていてもよい。すなわち、後続車両情報が車車間通信によって取得されてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、ITSECU2において、速度予測部20と消灯判断部21とを機能的に二つに分けているが、速度予測部20及び消灯判断部21はシステム制御部として備えられていてもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、制御装置1が情報提供装置6を備える構成としているが、情報提供装置6を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…制御装置、2…ITSECU、3…ITS情報受信機、4…後方レーダー、20…速度予測部(速度予測手段)、21…消灯判断部(消灯判断手段)、30…先行車両情報取得部(先行車両情報取得手段)、40…後続車両情報取得部(後続車両情報取得手段)、M…自車両。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非常点滅灯の消灯を制御する制御装置であって、
前記非常点滅灯が点灯しているときに、自車両の前方を走行する先行車両の状態に関する先行車両情報を取得する先行車両情報取得手段と、
前記先行車両情報取得手段によって取得された前記先行車両情報に基づいて、前記自車両の速度の変化を予測する速度予測手段と、
前記速度予測手段によって予測された前記自車両の速度の変化に基づいて、前記非常点滅灯の消灯のタイミングを判断する消灯判断手段と、
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記消灯判断手段は、前記自車両の速度の変化に基づいて当該自車両の速度が安定した所定の走行状態に移行すると判断した場合に、前記非常点滅灯を消灯すると判断する請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記自車両の後方を走行する後続車両の状態に関する後続車両情報を取得する後続車両情報取得手段を更に備え、
前記消灯判断手段は、前記後続車両情報取得手段によって取得された前記後続車両情報に基づいて、前記非常点滅灯の消灯の要否を判断する請求項1又は2記載の制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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