説明

制振ダンパ及び構造物

【課題】建物の制振構造に使用する制振ダンパにおいて、構造材の間に連結するのに適した構造及び制振に適した減衰力特性を得る。
【解決手段】油液及びガスを封入したシリンダ2内にピストンロッド3が連結されたピストン4を摺動可能に挿入する。シリンダ2とピストンロッド3との間をシールするオイルシール7にグリス溜め28を設ける。ピストンロッド3の伸び側のストロークに対して、ディスクバルブ14が逆止弁として機能して減衰力を発生せず、縮み側のストロークに対して、ディスクバルブ14がその開度に応じて大きな減衰力を発生する。これにより、オイルシール7の負担を軽減し、また、構造材への取付部に作用する引張り荷重を軽減する。グリス溜め28によってオイルシール7にグリスを供給することにより、作動頻度が低い場合でも、ピストンロッド3を円滑にストロークさせて安定した減衰力特性を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の構造材に装着して振動を抑制する制振ダンパ及びこれを装着した構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されているように、木造住宅等の耐震補強を行なう場合、建物の構造材である枠体を構成する縦材と横材との間をダンパで結合し、地震等による枠体の変形に対して、ダンパの減衰力を作用させて振動エネルギーを吸収するようにした制振構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−144362公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の制振構造に使用されるダンパは、地震等による建物の揺れに対して作動するものであるため、一般的に車両のサスペンション装置に装着される油圧ダンパに比して、作動頻度が非常に低く、また、作動時には、小ストローク、あるいは、低速ストロークに対して、大きな減衰力を迅速に立ち上げる減衰力特性が要求される。
【0005】
本発明は、このような要求から、建物の制振構造に使用するのに適した特性及び構造を有する制振ダンパを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明に係る制振ダンパは、油液及びガスが互いに接触する状態で封入されたシリンダと、該シリンダ内に挿入されたピストンと、該ピストンに連結されて前記シリンダの上端側から外部に突出するピストンロッドと、前記シリンダの上端部に設けられて前記ピストンロッドとの間をシールするシール手段と、該シール手段にグリスを供給するグリス溜めと、前記ピストンに設けられ、前記ピストンロッドの伸び側よりも縮み側のストロークに対して大きな減衰力を発生させる減衰力発生機構とを備え、
建物の構造材の間に前記シリンダの上端側を上側に向けて直立又は傾斜させて取付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る制振ダンパによれば、建物の制振構造に適した特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る制振ダンパの縦断面図である。
【図2】図1のピストン部を拡大して示す縦断面図である。
【図3】図1に示す制振ダンパの変形例のオイルシール部を拡大して示す縦断面図である。
【図4】図1の制振ダンパが装着された建物の枠体を示す正面図である。
【図5】図1の制振ダンパが建物の枠体に装着された状態を示す縦断面図である。
【図6】図1の制振ダンパの減衰力特性を示す図表である。
【図7】図1の制振ダンパの減衰力特性を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る制振ダンパ1は、シリンダ2の上部からピストンロッド3が突出した正立型の単筒式液圧緩衝器である。この単筒式液圧緩衝器は、取付長がおおよそ350mm(ロッドを最大に延ばした状態で500mm)、太さは直径40mm程度の寸法である。有底円筒状のシリンダ2内には、ピストン4が摺動可能に挿入され、ピストン4によってシリンダ2内がシリンダ上室2Aとシリンダ下室2Bとの2室に仕切られている。ピストン4には、ピストンロッド3の一端部がナット5によって連結され、ピストンロッド3の他端側は、シリンダ上室2Aを通り、シリンダ2の開口部に取付けられたロッドガイド6及びオイルシール7を貫通して外部に突出している。シリンダ2内には、一定量の油液及びガスが互いに接触した状態で封入され、シリンダ上室2Aの上部がガス室2Cとなっている。なお、ガスとしては、不活性の窒素等を使用してもよいが、利便性の観点から空気(大気)が望ましい。また、ガスの圧力は、長期間使用されるものであるので、組立時に大気圧で封入する(組立時のピストン位置により組立後の圧力は異なるが、大気圧前後となる)ことが望ましい。また、油液は、本実施形態にあっては、鉱油系のオイルで粘性が10から15mm2/sを用いている。
【0010】
図2に示すように、ピストン4は、円筒状のリテーナガイド8と共に、ピストンロッド3の一端の小径部3Aが挿入され、小径部3Aの先端部にナット5がネジ込まれてピストンロッド3に結合している。ピストン4には、円周方向に沿って配置された複数のピストン油路9が軸方向に沿って貫通され、これらのピストン油路9によってシリンダ上下室2A、2B間が連通されている。ピストン4のシリンダ下室2B側の端面の外周部には、複数のピストン油路9の開口を取囲むように環状のシート部10が突出している。
【0011】
リテーナガイド8の外周部には、環状のリテーナ11が軸方向に沿って摺動可能に案内されている。リテーナ11には、円周方向に沿って配置された複数の油路12が軸方向に沿って貫通されている。リテーナ11のピストン4側の端面の油路12の開口の内周側には、環状のシート部13が突出している。そして、ピストン4のシート部10とリテーナ11のシート部13との間に、減衰力発生機構である複数積層されたディスクバルブ14が介装されている。
【0012】
リテーナ11及びディスクバルブ14は、内周部がリテーナガイド8によって案内され、外周部がガイド部材15に案内されて、軸方向に移動可能となっており、リテーナガイド8のナット5側の端部に形成されたフランジ部8Aに当接するガイド部材15と、リテーナ11との間に介装されたバネ16(コイルバネ)によって、リテーナ11及びディスクバルブ14がピストン4側に押圧されている。これにより、ディスクバルブ14の外周部がピストン4のシート部10に着座し、内周部がリテーナ11のシート部13に着座して、ピストン油路9を閉じている。
【0013】
ディスクバルブ14は、ピストン油路9のシリンダ上室2A側からシリンダ下室2B側への油液の流れに対しては、バネ16が撓むことによりリテーナ11と共に移動し、ピストン4のシート部10からリフトして開弁し、また、シリンダ下室2B側からシリンダ上室2A側への油液の流れに対しては、その圧力によって外周部がピストン4のシート部10に押付けられ、内周側が撓んでリテーナ11のシート部13からリフトして開弁し、リリーフ弁としての機能を果たす。
【0014】
これにより、ディスクバルブ14は、シリンダ上室2A側からシリンダ下室2B側への油液の流通のみを許容する逆止弁として機能すると共に、シリンダ下室2B側からシリンダ上室2A側への油液の流れに対しては、その開度、すなわち、シート部13からのリフト量に応じて流通抵抗を付与する減衰弁として機能する。また、ディスクバルブ14の内最もピストン側のディスクには、外周側に切欠が設けられ、ピストン油路9の油液の流れを常時許容するオリフィス通路14Aが形成されている。これにより、減衰力発生機構であるディスクバルブ14は、ピストンロッド3の伸び側よりも縮み側のストロークに対して大きな減衰力を発生させることになる。
【0015】
ピストン4には、シリンダ2の内壁との摺動部をシールする4フッ化エチレン樹脂のピストンリング17、18が設けられ、また、リテーナ11には、リテーナガイド8との摺動部をシールするOリング19が設けられており、ディスクバルブ14の閉弁時に、これらの摺動部からの油液の漏れを最小限に抑えている。
また、ピストンリング18の内周にも極力漏れを防ぐため、Oリング18Aが設けられている。なお、リテーナ11とリテーナガイド8との間隔を小さくできれば、Oリング19を省略することも可能である。しかし、望ましくは、摺動部であって、シリンダ上室2Aとシリンダ下室2Bとの間をシールする部分には、クリアランスでシールするのではなく、すべてシールリングを設けたほうがよい。
【0016】
ロッドガイド6及びオイルシール7は、シリンダ2の開口部に挿入され、シリンダ2の側壁をかしめてカシメ部20、21を形成することによって固定されている。オイルシール7は、リング状のリテーナ22の表面にゴム等の弾性体からなるシール部材を固着したシール手段であり、ピストンロッド3との摺動部には、シリンダ2の内側及び外側に、それぞれ内側リップ24及び外側リップ25が突出されてる。内側リップ24及び外側リップ25の背部(外周部)には、それぞれバネ部材26、27が装着されている。そして、ピストンロッド3、内側リップ24及び外側リップ25の間にグリス溜め28となる空間が形成され、このグリス溜め28にグリスが封入されている。
【0017】
シリンダ2の底部及びピストンロッド3の先端部には、それぞれピン穴を有する取付部29、30が取付けられている。
【0018】
次に、制振ダンパ1の使用態様について、図4及び図5を参照して説明する。
図4及び図5に示すように、制振ダンパ1は、木造住宅等の建物の構造材である縦材31(木造軸組みでは柱)と横材32(木造軸組みでは上梁、下梁)とで構成された枠体33に装着される。制振ダンパ1は、略直交する縦材31と横材32との結合部の付近に、縦材31及び横材32に対して、略45°の角度で傾斜させ、ピストンロッド3が上側となり、シリンダ2が下側となるように取付けられる。制振ダンパ1の縦材31及び横材32との結合は、縦材31及び横材32にネジ止め等の公知の取付手段によって取付けられたブラケット34に取付部29、30をピン35によって回動可能に軸着することによって行なう。
なお、ツーバイフォーの場合は、縦材31は、間柱(スタッド)であってもよい。
なお、本発明が提供されて好適な構造物は、木造や軽量鉄骨を用いた3階建て以下の低層住宅である。
【0019】
なお、制振ダンパ1の構造材への取付角度は、上述の略45°が望ましいが、取付条件に応じて、直立又は傾斜していればよく、水平でなければよい。傾斜させる場合の最大の傾斜角は、取付け状態でピストンロッド3が最大に伸びた場合であっても、ピストン4が油中にあればよい。
【0020】
また、図5に示すように、制振ダンパ1は、枠体33に取付けられた状態において、ピストンロッド3の伸び側及び縮み側のストロークがそれぞれ30mm程度である場合、ピストンロッド3の最大伸長時において、シリンダ上室2A内の油液の液面のピストン4の上端面からの高さHが、H=50mm以上とすると、ピストン速度0.1m/s程度ではエアレーション(シリンダ中のガスと油液が混ざり合い、ある程度以上混ざり合うと減衰力が著しく低下する現象)による減衰力の低下の影響が少なく理想的である。
【0021】
次に制振ダンパ1の作動について説明する。
地震等による建物の揺れによって枠体33が歪むと、縦材31と横材32との間に結合された制振ダンパ1のピストンロッド3がストロークする。このとき、ピストンロッド3の伸び側のストローク(伸び行程)に対しては、ディスクバルブ14が逆止弁として、ピストン油路9のシリンダ上室2A側からシリンダ下室2B側への油液の流れを許容する。したがって、制振ダンパ1は、ピストンロッド3の伸び側のストロークに対しては、殆ど減衰力を発生しない。
【0022】
一方、ピストンロッド3の縮み側のストローク(縮み行程)に対しては、ディスクバルブ14が減衰弁として機能し、低速領域(図7においては、0.06m/s以下のピストン速度)では、オリフィス通路14Aの流路面積に基づきオリフィス特性の減衰力を発生し、高速領域(図7においては、0.06m/s以上のピストン速度)は、ディスクバルブ14のリテーナ11のシート部13からのリフト量に応じてバルブ特性(ピストン速度に対して1次で変化する)の減衰力を発生する。ここで、本実施形態のバルブ特性は、横軸に略平行に近い特性で、リリーフ弁として機能している。これにより、縦材31と横材32との変位に対して必要かつ大きすぎない減衰力を付与し、枠体33の振動を制振する。
【0023】
このとき、ピストンロッド3の伸び側のストロークに対して減衰力を発生しないので、縦材31及び横材32との結合部のブラケット34に、引張り荷重が殆ど作用しないので、一般的に引張り荷重に対する耐性が低い結合部の破損を抑制することができる。また、シリンダ上室2A側の圧力の上昇が小さく、上部には、ガスがあるので、オイルシール7から油液が漏れにくく、オイルシール7の負担を軽減することができる。
【0024】
また、ピストンロッド3の縮み側のストロークによって加圧されるシリンダ下室2Bには、油液に満たされており、フリーピストン等の圧力を吸収する手段を有していない。さらに、シリンダ上室2Aのみにしか接続されておらず、ベースバルブ介してリザーバとも接続さていない。これにより、縮み側のストロークに対しては、全ての油液がオリフィス通路14A及びディスクバルブ14を流通するので、オリフィス通路14Aの流路面積及びディスクバルブ14の剛性により減衰力を決めることができ、減衰力を大きくしても安定した減衰力特性を得ることができる。
【0025】
更に、ピストン4に設けたピストンリング17、18及びリテーナ11に設けたOリング19により、摺動部の油液の漏れを最小限にしているので、ピストンロッド3の縮み側のストロークに対して、減衰力を迅速に立ち上げることができ、低速ストローク及び小ストロークに対して充分な減衰力を発生させることができる。
【0026】
制振ダンパ1の伸び側及び縮み側の減衰力特性(ピストン速度に対する減衰力)を図6及び図7に示す。
【0027】
制振ダンパ1は、枠体33に取付けられた状態において、ピストンロッド3の伸び側及び縮み側のストロークがそれぞれ30mm程度である場合、ピストンロッド3の最大伸長時において、シリンダ上室2A内の油液の液面のピストン4の上端面からの高さHが、H=50mm以上になるようにすることにより、ピストンロッド3のストロークによって、シリンダ上室2A内のガスが油液中に混入するのを効果的に抑制することができ、エアレーションによって減衰力特性が不安定になるのを抑制することができる。
【0028】
ここで、縦材31及び横材32に対して、略45°の角度で傾斜させて制御ダンパ1を取り付ける構造にあっては、ストロークが小さいのでピストン速度も遅い。そこで、このような取付け方法に用いられるダンパとしては、理想的には、低速域(例えば0.05m/s前後)から大きな減衰力を発生することが望ましいが、そのまま、ピストン速度に応じて減衰力が増加すると、高速域(例えば0.1m/s)での減衰力があまりに高くなりすぎ取付部分の柱が損傷する畏れがある。
【0029】
よって、0.05m/sという低速の領域で、5000N以上でないと、十分な減衰効果が得られず、0.1m/s以上の高速域では、30000N以下であることが木造建築にあっては望ましい。なお、取付け部の剛性を鉄板等で強化すれば、高速域の減衰力をさらに高くしてもよい。
本実施形態にあっては、0.025m/sで5000N以上、0.05m/sで10000N以上であり、0.15m/sという高速領域では、20000N以下という理想的な減衰力特性を得ている。
これに対し、伸び側の減衰力は、全てのピストン速度領域(0.15m/s以下)で、略100N以下である。これは、0.1m/sで50倍以上の減衰力の差があり、実質的に伸び側では減衰力は出ていない。
【0030】
なお、通常の自動車用のダンパ(ショックアブソーバ)は、0.1m/sが低速領域であり、この領域での減衰力は300N前後であり、0.9m/sという高速領域でも、減衰力は1000N程度である。
このように、自動車等のダンパと、大きさ等は差が無いが、使用ピストン速度が0.2m/s以下であり、発生減衰力が10000前後と、自動車用ダンパ極めて似ている外見であるものの特性は全く異なり、また、殆どストロークしない環境に長時間放置されるものであり、自動車用等のダンパとは、使用環境も全く異なる。
よって、まず、微低速でも減衰力を発生させるために、シリンダ下室2Bは、ガスやアキュムレータと接続されない油液のみの部屋とすることで、縮み側のストロークにおいては、ピストンの移動によりシリンダ下室2Bの容積が小さくなる分の油液全てがピストン部に流れる構造とすることで、微低速から減衰力を高くすることが可能となる。
【0031】
また、伸び側のストロークに対する減衰力を100N以下の小さい減衰力とすることで、伸びストロークにおいてシリンダ内の圧力が高くならず、さらに、シリンダ上部には常にガスがあり、殆どの状態でシールにオイルが接触しないので、長期間殆どストロークしない環境に放置された際であっても、オイル漏れの心配は無くなる。 なお、伸び側のストロークに対する減衰力は、オイル漏れや取付け部の剛性にとっては150N以下が望ましいが、500N程度まで高めてもよい。
【0032】
オイルシール7のグリス溜め28にグリスを封入したことにより、内側リップ24及び外側リップ25とピストンロッド3との固着を抑制することができ、作動頻度の低い条件においても、ピストンロッド3を円滑にストロークさせることができ、安定した減衰力特性を維持することができる。さらに、長期間放置されても、シールの劣化が抑えられ、突然の作動に対しても、摺動性が確保できる。仮に、シールとピストンロッドの間に長時間放置により、その両間に隙間が発生しても単に内部のガスと空気が置き換わるのみで、減衰性能への影響は大きくない。
【0033】
次に、上記実施形態の変形例について図3を参照して説明する。なお、上記実施形態に対して、同様の部分には同一の符号を付して、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0034】
図3に示す変形例では、ロッドガイド6とオイルシール7との間に、略円筒状のグリス保持部材36が設けられている。グリス保持部材36は、外周部がシリンダ2に嵌合され、内周部にピストンロッド3が摺動可能に挿入され、また、内周部には、オイルシール7の内側リップ24を収容する凹部であるグリス室37が形成されている。グリス室37には、グリスが充填されている。また、グリス保持部材36のピストンロッド3との摺動部には、Oリング38が設けられ、Oリング38によってシリンダ上室2Aとグリス室37と間をシールして、グリスの油液への混入を防止している。これにより、グリス室37からグリス溜め28にグリスを補充することができ、長期にわたってピストンロッド3の円滑なストロークを維持することができる。
【0035】
なお、上記実施形態では、ピストン4に設けられたバルブの構造は、縮み側でディスクバルブ14の内周が撓み、また、伸び側でリテーナ11が移動するものであるが、バルブ構造はこれに限らず、例えば、ピストンに伸び側通路と縮み側通路を設け、ピストンの上室側に縮み側通路を塞ぎ、内側をクランプされて外周側が撓む剛性の高いディスクバルブを設け、ピストンの下室側に伸び側通路を塞ぎ内側をクランプされて外周側が撓む剛性の低いディスクバルブを設ける構成としてもよい。
また、ピストンの下室側に設けるバルブは、ピストンから平行に移動可能なディスクバルブとし、コイルバネで押圧する構造とすることで、より減衰力を低くすることができる。
【0036】
但し、伸縮で異なるディスクバルブを設けた場合は、伸縮で減衰力の差が極めて大きいので、縮み行程で伸び側のディスクバルブが背圧を受けて割れる可能性があるので、剛性を上げるか、バックアップ構造等、何らかの対策が必要となるが、上記実施形態の構造では、剛性の低いディスクバルブが存在しないで、簡単な構造で、耐久性の高いダンパを提供することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 制振ダンパ、2 シリンダ、3 ピストンロッド、4 ピストン、7 オイルシール(シール手段)、14 ディスクバルブ(減衰力発生機構)、28 グリス溜め

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油液及びガスが互いに接触する状態で封入されたシリンダと、該シリンダ内に挿入されたピストンと、該ピストンに連結されて前記シリンダの上端側から外部に突出するピストンロッドと、前記シリンダの上端部に設けられて前記ピストンロッドとの間をシールするシール手段と、該シール手段にグリスを供給するグリス溜めと、前記ピストンに設けられ、前記ピストンロッドの伸び側よりも縮み側のストロークに対して大きな減衰力を発生させる減衰力発生機構とを備え、
建物の構造材の間に前記シリンダの上端側を上側に向けて直立又は傾斜させて取付けられることを特徴とする制振ダンパ。
【請求項2】
油液及びガスが互いに接触する状態で封入されたシリンダと、該シリンダ内に挿入されたピストンと、該ピストンに連結されて前記シリンダの上端側から外部に突出するピストンロッドと、前記シリンダの上端部に設けられて前記ピストンロッドとの間をシールするシール手段と、該シール手段にグリスを供給するグリス溜めと、前記ピストンに設けられ、前記ピストンロッドの縮み側のストロークに対してピストン速度0.05m/sで5000N以上の減衰力を発生し、伸び側のストロークに対してピストン速度0.1m/sで500N以下の減衰力を発生する減衰力発生機構とを備え、
建物の構造材の間に前記シリンダの上端を上側に向けて鉛直又は傾斜させて取付けられることを特徴とする制振ダンパ。
【請求項3】
減衰力発生機構は、縮み側のストロークに対してピストン速度0.15m/sで30000N以下の減衰力を発生することを特徴とする請求項2に記載の制振ダンパ。
【請求項4】
減衰力発生機構は、前記ピストンの下側の室側に設けられ縮み側のストロークに対して内周側がピストン側に撓み減衰力を発生すると共に、伸び側のストロークに対してピストンから離間して逆支弁として機能するディスクバルブからなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の制振ダンパ。
【請求項5】
摺動部であって、シリンダ上室2Aとシリンダ下室2Bとの間をシールする部分にはすべてシールリングを設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の制振ダンパ。
【請求項6】
前記ガスは、空気であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の制振ダンパ。
【請求項7】
油液及びガスが互いに接触する状態で封入されたシリンダと、該シリンダ内に挿入されたピストンと、該ピストンに連結されて前記シリンダの上端側から外部に突出するピストンロッドと、前記シリンダの上端部に設けられて前記ピストンロッドとの間をシールするシール手段と、該シール手段にグリスを供給するグリス溜めと、前記ピストンに設けられ、前記ピストンロッドの縮み側のストロークに対してピストン速度0.05m/sで5000N以上の減衰力を発生し、伸び側のストロークに対してピストン速度0.1m/sで500N以下の減衰力を発生する減衰力発生機構とを備えた制振ダンパを建物の柱と梁の角部に設けたことを特徴とする構造物。
【請求項8】
減衰力発生機構は、縮み側のストロークに対してピストン速度0.15m/sで30000N以下の減衰力を発生することを特徴とする請求項7に記載の構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−203164(P2010−203164A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50747(P2009−50747)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】