説明

制震構造、制震構造の形成方法

【課題】施工が容易であるとともに、制震ブレースによる制震性能の効率を最大限に発揮できる制震構造等を提供する。
【解決手段】オイルダンパーをブレース材の一方の端部に設けた一対の制震ブレースをX字状に交差して配置し制震構造1を構成する。一方の制震ブレース10−1の中間部では、第1ブレース材13−1aと第2ブレース材13−1bの間に、側面に開口部26を有する貫通箱20が設けられ、他方の制震ブレース10−2が、貫通箱20の開口部26を、貫通箱20に固定されずに貫通して配置される。貫通箱20の開口部26は、制震ブレース10−1のオイルダンパーが伸縮した際に、交差方向側板25−a1、25−b1(25−a2、25−b2)が、制震ブレース10−2のブレース材13−2に接触しないように定める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制震構造およびその形成方法に関する。より詳しくは、制震ブレースを用いた制震構造およびその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地震等の振動に対して構造物の破壊を防ぐ方法の一つとして、耐力壁においてX字状に耐震用のブレース材を組み込むものがある。ブレース材は水平力を受けた時、一方が引張力を受け、もう一方が圧縮力を受ける。
【0003】
特許文献1には、住宅等の耐力壁として、耐震用ブレース材をX字状に配置する際に、一方のブレース材を他方のブレース材の中央部に設けたターンバックルに通して軸心を同一として配置することが記載されている。
【0004】
一方、オイルダンパー等の粘性型ダンパーなどの制震装置をブレース材に取り付けた制震ブレースを用いる方法もある。制震ブレースは制震装置とブレース材を直列に結合して構成され、引張りや圧縮の変形を受けたとき、それによる伸びや縮みのほとんどが制震装置本体部で生じる。制震ブレースを用いることにより、地震等による揺れを減衰させることができる。このような制震特性の向上を図り、住宅用の構造に制震ブレースを用いた例が、特許文献2に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−197553号公報
【特許文献2】特開2006−207144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように耐震ブレースをX字状に配置する場合、地震時等に、最初に座屈する圧縮側のブレース材はターンバックルに拘束されて面内で変形し座屈するが、他方のブレース材が引張側となり伸びて塑性変形した後に圧縮側となって座屈すると、この過程で構造物の軸組が元の位置に戻った際、ブレース材の部材長は塑性変形した分だけ長くなっているので、このブレース材が面外にはらみだす可能性がある。ブレース材のはらみだしは、構造物の損傷の原因となりうるので好ましくない。
【0007】
一方、前述のような制震ブレースを構造物に効率的に設けることにより、構造物の制震特性を高めることができる。制震ブレースでは制震装置により振動を減衰させるので、座屈に伴うブレース材の面外へのはらみだし等も起こりにくくなる。
特に大規模な構造物では、構造躯体との取合いが難しく制震ブレースの設置場所が限られることが多いので、前述のX字状の耐震用ブレース材のように、軸心を同一平面状に配置する制震ブレースをX字状に設けると、1箇所により多くの制震ブレースを配置でき非常に効率的に構造物の耐震性能が高められる。
【0008】
しかしながら、上記のような制震ブレースでは、制震装置は通常、ブレース材の端部にあり、制震ブレースの中央部(制震装置+ブレース材の全長の中央位置)は、制震装置本体の伸び縮みの変形によって元の中央位置から移動する。前記のように所定の面内に制震ブレースをX字状に設けることを考えた場合、圧縮側も引張側も中央部が移動するので、制震ブレースをX字状に設けるには、交差部にて制震ブレースの移動を許容する構成を採るか、制震ブレースの中央部が移動しない仕組みとしたうえで交差部を繋ぐことになる。
【0009】
特許文献2の図6、7には、中央部を挟んで両側に粘弾性ダンパーを設けた制震ブレースをX字状に配置した構成が記載されている。この際、一方の制震ブレースの中央部に孔を設けて他方の制震ブレースを挿通して交差させ、この交差部で両制震ブレースをピンにて連結している。なお、この場合では、制震ブレースの両側の粘弾性ダンパーは均等に変形するものとし制震ブレースの中央部が移動しないようにすることが必要になる。
【0010】
しかしながら、前述したように、特に大規模建物に制震ブレースを適用する場合ではその設置場所が限られてくるので、規格モジュールパターンの住宅用とは違って、制震装置の外形やブレース材の断面を大きくし制震ブレース1箇所あたりの制震性能向上効果を高めることが必要である。したがって、制震ブレースは大規模なものになり、制震ブレースをX字状に連結したものを一体として製作して建設場所まで輸送することは困難である。
【0011】
一方、交差部にて両制震ブレースを連結せずに移動を許容する構成を採った場合、特許文献2のように、一方の制震ブレースに孔を設けて他方の制震ブレースを交差させる場合には、両制震ブレースの断面の大きさを異なるものとする必要がある。交差させる側の制震ブレースの断面を必要な強度を満たすものとする場合、孔を開ける側の制震ブレースの断面形状は、必要以上に大きくすることになり不経済であるという問題がある。
また制震ブレースをX字状に配置したものを製作する場合には、前記と同じく輸送の困難さの問題がある。
【0012】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、施工が容易であるとともに、制震ブレースによる制震性能の効率を最大限に発揮できる制震構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達するための第1の発明は、制震装置をブレース材の端部に設けた一対の制震ブレースがX字状に交差して配置され、一方の制震ブレースのブレース材は、第1ブレース材と第2ブレース材の間に側面に開口部を有する貫通箱を設けた構成を有し、他方の制震ブレースが、前記貫通箱の開口部を、前記貫通箱に固定されずに貫通していることを特徴とする制震構造である。
【0014】
前記貫通箱は、取り外し可能な蓋を有することが望ましい。
あるいは、前記一方の制震ブレースの第1ブレース材、および第2ブレース材が、該ブレース材を前記貫通箱に取り付けるための接合部を貫通箱側の端部に有することが望ましい。
【0015】
また、前記貫通箱の開口部が、前記一方の制震ブレースの制震装置の伸縮により前記他方の制震ブレースが前記貫通箱に接触しないように定められることが望ましい。
【0016】
第2の発明は、制震装置をブレース材の端部に設けた一対の制震ブレースがX字状に交差して配置された制震構造の形成方法であって、一方の制震ブレースのブレース材は、第1ブレース材と第2ブレース材の間に側面に開口部を有する貫通箱を設けた構成を有し、前記一方の制震ブレースの前記貫通箱に設けられた蓋を取り外して、他方の制震ブレースを、前記貫通箱に固定せずに貫通させて配置した後、前記蓋を前記貫通箱に取り付けることを特徴とする制震構造の形成方法である。
【0017】
第3の発明は、制震装置をブレース材の端部に設けた一対の制震ブレースがX字状に交差して配置された制震構造の形成方法であって、一方の制震ブレースのブレース材を構成する第1のブレース材と第2のブレース材を、予め他方の制震ブレースを開口部に挿通させておいた貫通箱の両側に接合することを特徴とする制震構造の形成方法である。
【0018】
第2、3の発明の制震構造の施工方法では、前記貫通箱の開口部が、前記一方の制震ブレースの制震装置の伸縮により前記他方の制震ブレースが前記貫通箱に接触しないように定められることが望ましい。
【0019】
本発明により、ブレース材に孔を設けたりすることなく、同程度の大きさで同程度の性能を有する制震ブレースを軸心を同一平面上としてX字状に配置し、互いの中間部が拘束されずに自由に移動できるようになるので、制震ブレースによる制震性能の効率を最大限に発揮させることが容易となり、ブレース材の面外へのはらみだしも避けることができる。また、貫通箱の開口部を、一方の制震ブレースの制震装置の伸縮により他方の制震ブレースが貫通箱に接触しないように定めることで、制震装置の伸縮時に制震ブレースが貫通箱に接触して意図しない力が加えられることがない。
【0020】
また、それぞれの制震ブレースは、1本ものとして工場で製作でき、建設現場に運搬した後、現場で交差させるように取り付けできるので、運搬、施工が容易である。さらに、貫通箱に取り外し可能な蓋を設けた場合には、現場での接合箇所も少なく施工はより容易になり、竣工後の保守点検や交換も行いやすくなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、施工が容易であるとともに、制震ブレースによる制震性能の効率を最大限に発揮できる制震構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】制震構造1を示す図
【図2】貫通箱20について示す図
【図3】制震構造1の形成方法を示す図
【図4】制震構造1の形成方法の別の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0024】
[第1の実施形態]
まず、図1〜3を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0025】
図1に示すように、本実施形態の制震構造1は、オイルダンパー11をブレース材13に組み込んだ一対の制震ブレース10(10−1、10−2)を、X字状に交差させ構造物100に取り付けたものである。
制震ブレース10は、取付部15、オイルダンパー11本体、ブレース材13、取付部15の順に直列に連結して構成される。
【0026】
取付部15は、制震ブレース10を構造物100に取り付けるためのもので、制震ブレース10の両端の取付部15を、構造物100に取り付けたプレート30にそれぞれボルト接合等することにより、制震ブレース10が構造物100に取り付けられる。なお、制震ブレース10は、ピン接合により構造物100に取り付けられる。
【0027】
オイルダンパー11は、制震ブレース10の端部に取り付けて制震装置として用いられ、最大荷重を制限するリリーフ弁を有するものである。なお、制震装置としては、オイルダンパー11に限ることはなく、その他の粘性型のダンパーなどに代えてよい。
【0028】
ブレース材13は円形や矩形等の断面を有する鋼製の筒体である。ブレース材13は、オイルダンパー11の最大荷重以上の力を受けることがないので、この最大荷重時にも塑性化や座屈が起きない弾性限以下で挙動するような構造および材料を選定することができる。
【0029】
そして、本実施形態では、制震ブレース10をX字状に構造物に取り付けるため、一方の制震ブレース10−1のブレース材13−1を、第1ブレース材13−1aと第2ブレース材13−1bとで構成し、これらを直列に結合する蓋付の貫通箱20を設ける。このようにして制震ブレース10−1の中間部に貫通箱20を設け、該貫通箱20に他方の制震ブレース10−2のブレース材13−2を貫通させて交差させる。
貫通箱20もオイルダンパー11の最大荷重以上の力を受けることがないので、この最大荷重時にも局部的な塑性化や局部座屈が起きない弾性限以下で挙動し、制震ブレース10−1としての全体的座屈も生じさせないような構造および材料を選定することができる。従って、構造性能における問題は生じない。
【0030】
図2はこの貫通箱20を示す図であり、図2(a)は貫通箱20を側方から見た図、図2(b)は図2(a)の線A−Aによる断面図、図2(c)は図2(a)の線B−Bによる断面図である。
【0031】
図に示すように、貫通箱20は、底板21、軸方向側板23(23a、23b)、交差方向側板25(25−a1、25−b1、25−a2、25−b2)、および蓋27等により構成される箱状の部材である。
【0032】
底板21には、軸方向側板23a、23bと交差方向側板25−a1、25−b1、25−a2、25−b2が、底板21の垂直方向に取り付けられる。
【0033】
軸方向側板23a、23bは、底板21の制震ブレース10−1の軸方向(図2(a)の横方向)の両側辺に取り付けられる板状部材であり、それぞれ、第1ブレース材13−1a、第2ブレース材13−1bと接合される。
【0034】
交差方向側板25−a1、25−b1、25−a2、25−b2は、制震ブレース10−1に対し他方の制震ブレース10−2が交差する方向(交差方向、図2(a)の縦方向)の底板21の両側辺に取り付けられるコ字状の板状部材である。
【0035】
図2(b)に示すように、交差方向側板25−a1、25−b1は、底板21の交差方向の一方の側辺の両端部にそれぞれ取り付けられる。
交差方向側板25−a1、25−b1は、コ字の底辺部を底板21に取り付けると共に、交差方向側板25−a1については縦辺部を軸方向側板23aに取り付け、交差方向側板25−b1については縦辺部を軸方向側板23bに取り付けることにより、一対の交差方向側板25−a1、25−b1のコ字の凹み部分が対向するように配置する。
底板21の交差方向の他方の側辺の両端部にも、同様にして一対の交差方向側板25−a2、25−b2を取り付ける。
【0036】
また、交差方向に隣り合う交差方向側板25−a1、25−a2、および軸方向側板23aには、底板21と平行する受け板28aが設けられる。同様に、交差方向側板25−b1、25−b2、および軸方向側板23bにも受け板28bが設けられる。
【0037】
受け板28a、28bには、受け板28a、28bを架け渡すように蓋27が取り付けられる。受け板28a、28bと、蓋27とは、ボルト29等を用いて緊結して固定する。ボルト29等を取り外して緊結を解除すれば、蓋27を取り外すことができる。
【0038】
制震ブレース10−2のブレース材13−2は、交差方向側板25−a1、25−b1(25−a2、25−b2)の間に形成された開口部26を通って、貫通箱20を貫通するように配置される。このとき、制震ブレース10−2のブレース材13−2は、貫通箱20に固定されないものとしておく。
なお、交差方向側板25−a1、25−b1の形状および取付位置は、制震ブレース10−1のオイルダンパー11が伸縮した際に、交差方向側板25−a1、25−b1が、開口部26を貫通するブレース材13−2に接触しないように定める。この限りにおいて、交差方向側板25−a1、25−b1の形状および位置は、上記したものに限ることはない。交差方向側板25−a2、25−b2についても同様である。
【0039】
これにより、制震ブレース10−1、制震ブレース10−2は、その軸心を同一平面状に配置してX字状に構成される。その上、制震ブレース10−1、制震ブレース10−2は互いに固定されることはないので、オイルダンパー11が伸縮しても互いの中間部は拘束されずに自由に移動できる。
【0040】
次に、図3を用いて、制震構造1の形成方法について説明する。
【0041】
まず、図1等で説明した制震ブレース10−1、10−2をそれぞれ工場にて製作し、別体として建設現場まで搬送する。
【0042】
次に、図3(a)に示すように、制震ブレース10−1の蓋27を取り外して、貫通箱20の交差方向側板25−a1、25−b1(25−a2、25−b2)の間に制震ブレース10−2のブレース材13−2を配置しつつ、制震ブレース10−1、10−2を構造体100に取り付ける。
【0043】
その後、貫通箱20の蓋27を取り付け、図3(b)に示すように制震ブレース10−2が制震ブレース10−1の貫通箱20の開口部26を貫通した状態とする。
なお、蓋27を取り付ける際は、受け板28a、28bに設けられた孔281と、蓋27に設けられた孔271の位置を合わせてボルト29等を用いて緊結する。
【0044】
以上のようにして、制震ブレース10−1、10−2による制震構造1を形成し構造体100に取り付けることができる。
なお、貫通箱20の蓋27は、このようなものに限らず、運搬時等、制震ブレース10の構造体100への取り付けまでは取扱いの簡単な仮設のもので仮止めしておき、制震ブレース10の構造体100への取り付け後に上記のような蓋27を貫通箱20に固定してもよい。また、蓋27はボルト29等で貫通箱20に取り外し可能に取り付けるので、現場での接合箇所も少なく施工が容易であり、竣工後の保守点検や交換も行いやすくなるが、加えて、施工性のさらなる向上のために蓋27を丁番あるいはスライドで開閉可能にしてもよい。
【0045】
以上説明した本実施形態の制震構造1により、ブレース材の断面が同程度の大きさで同程度の性能を有する制震ブレース10を、軸心を同一平面上としてX字状に配置し、互いの中間部が拘束されずに自由に移動できるようになるので、制震ブレース10による制震性能の効率を最大限に発揮させることが容易になり、ブレース材の面外へのはらみだしも避けることができる。また、貫通箱20の開口部26を、一方の制震ブレース10−1のオイルダンパー11の伸縮により他方の制震ブレース10−2のブレース材13−2が貫通箱20に接触しないように定めるので、オイルダンパー11の伸縮時に制震ブレース10−2に意図しない力が加えられることがない。
また、それぞれの制震ブレース10は、1本ものとして工場で製作でき、別体として建設現場に運搬した後、現場で交差させるように取り付けできるので、運搬、施工が容易である。
【0046】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について図4を用いて説明する。第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、第1の実施形態では、貫通箱20の蓋27を取り外して制震ブレース10−2を貫通箱20に配置することで、制震ブレース10−1と制震ブレース10−2を交差させたのに対し、第2の実施形態では、制震ブレース10−2に予め挿通した貫通箱20に、制震ブレース10−1を構成する第1ブレース材13−1aと第2ブレース材13−1bを直列に取り付けて、制震ブレース10−1と制震ブレース10−2とが交差した状態とする点である。
【0047】
即ち、図4(a)に示すように、制震ブレース10−2については、貫通箱20を挿通した状態で製作し、貫通箱20を制震ブレース10−2に仮固定しつつ建設現場まで搬送する。
なお、本実施形態では蓋27は貫通箱20に固定され、取り外し等を行う必要がないので、第1の実施形態のような蓋27の孔271、あるいは貫通箱20の受け板28a、28bは省略できる。
【0048】
一方、制震ブレース10−1については、一端にオイルダンパー11および取付部15(図1を参照)を設け、他端に接合用のフランジ18aを取り付けた第1ブレース材13−1aと、一端に取付部15(図1を参照)を設け、他端に接合用のフランジ18bを取り付けた第2ブレース材13−1bとを別々に製作し、これらを建設現場まで搬送する。
【0049】
そして、制震ブレース10−2を構造体100に取り付けるとともに、上記の第1、第2ブレース材13−1a、13−1bの両端を、図1に示すように構造体100と貫通箱20に取り付けて固定する。図4(b)は第1、第2ブレース材13−1a、13−1bを貫通箱20に取り付けた状態を示すものである。
【0050】
図4(a)、図4(b)に示すように、第1ブレース材13−1a(第2ブレース材13−1b)は、端部のフランジ18a(18b)を貫通箱20の軸方向側板23a(23b)に取り付ける。フランジ18a(18b)および貫通箱20の軸方向側板23a(23b)には、このための孔181、231がそれぞれ設けられており、取り付け時には、この孔181、231の位置を合わせてボルト19等を用いて緊結して固定する。
本実施形態では、以上のようにして制震ブレース10−1、10−2による制震構造1が形成されて構造体100に取り付けられ、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る制震構造等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記の実施形態では既存の構造物100に制震ブレース10を取り付け制震構造1を形成する例を示したが、制震構造1は新規に構築する構造物に組み込まれるものであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1………制震構造
10(10−1、10−2)………制震ブレース
11………オイルダンパー
13(13−1、13−2)………ブレース材
13−1a………第1ブレース材
13−1b………第2ブレース材
15………取付部
20………貫通箱
26………開口部
100………構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制震装置をブレース材の端部に設けた一対の制震ブレースがX字状に交差して配置され、
一方の制震ブレースのブレース材は、第1ブレース材と第2ブレース材の間に側面に開口部を有する貫通箱を設けた構成を有し、
他方の制震ブレースが、前記貫通箱の開口部を、前記貫通箱に固定されずに貫通していることを特徴とする制震構造。
【請求項2】
前記貫通箱は、取り外し可能な蓋を有することを特徴とする請求項1記載の制震構造。
【請求項3】
前記一方の制震ブレースの第1ブレース材、および第2ブレース材が、該ブレース材を前記貫通箱に取り付けるための接合部を貫通箱側の端部に有することを特徴とする請求項1記載の制震構造。
【請求項4】
前記貫通箱の開口部が、前記一方の制震ブレースの制震装置の伸縮により前記他方の制震ブレースが前記貫通箱に接触しないように定められることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の制震構造。
【請求項5】
制震装置をブレース材の端部に設けた一対の制震ブレースがX字状に交差して配置された制震構造の形成方法であって、
一方の制震ブレースのブレース材は、第1ブレース材と第2ブレース材の間に側面に開口部を有する貫通箱を設けた構成を有し、
前記一方の制震ブレースの前記貫通箱に設けられた蓋を取り外して、他方の制震ブレースを、前記貫通箱に固定せずに貫通させて配置した後、前記蓋を前記貫通箱に取り付けることを特徴とする制震構造の形成方法。
【請求項6】
制震装置をブレース材の端部に設けた一対の制震ブレースがX字状に交差して配置された制震構造の形成方法であって、
一方の制震ブレースのブレース材を構成する第1のブレース材と第2のブレース材を、予め他方の制震ブレースを開口部に挿通させておいた貫通箱の両側に接合することを特徴とする制震構造の形成方法。
【請求項7】
前記貫通箱の開口部が、前記一方の制震ブレースの制震装置の伸縮により前記他方の制震ブレースが前記貫通箱に接触しないように定められることを特徴とする請求項5または請求項6のいずれかに記載の制震構造の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−28986(P2013−28986A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166735(P2011−166735)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】