刺激応答型生分解性高分子及びその製造方法
【課題】生物活性剤の送達を含む生物学的適用に有用な、環境パラメーターにおける小さな外部変化に反応して、物理的又は化学的特性が変化する刺激応答型生分解性高分子を提供する。
【解決手段】生分解性高分子骨格及び該生分解性高分子骨格にペンダントした刺激応答型ペンダント基を含む刺激応答型高分子であって、生分解性高分子骨格がポリ(アミノエステル)又はポリ(アミドアミン)(ここで、ポリ(アミドアミン)は任意に骨格にジスルフィド結合を含み得る。)を含む刺激応答型高分子。
【解決手段】生分解性高分子骨格及び該生分解性高分子骨格にペンダントした刺激応答型ペンダント基を含む刺激応答型高分子であって、生分解性高分子骨格がポリ(アミノエステル)又はポリ(アミドアミン)(ここで、ポリ(アミドアミン)は任意に骨格にジスルフィド結合を含み得る。)を含む刺激応答型高分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、生物活性剤の送達を含む生物学的適用に有用な刺激応答型生分解性高分子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
刺激応答性高分子は、例えば、pH、温度又は光などの環境パラメーターにおける小さな外部変化に反応して、物理的又は化学的特性が変化する高分子として規定される。刺激応答型高分子は、刺激感受性高分子、インテリジェントポリマー、スマートポリマー、又は環境敏感性高分子ともいう。
【0003】
刺激応答性高分子は、その医学的応用など、様々な生物学的応用におけるその可能性のために注目が高まっている。刺激応答性高分子は、架橋ヒドロゲル、可逆性ヒドロゲル、ミセル、修飾界面及び共役溶液など、様々な種類のポリマーアセンブリを形成するよう構成されている。治療学、再生医療、生分離技術における送達、もしくはセンサー又は作動装置として、これら高分子の応用が報告されており、当該分野における急速な進歩を示している(非特許文献1、2、特許文献1、2及び3を参照)。
【0004】
刺激に対する応答は、生物系における基本的な作用である。ある種の環境条件は、例えば、低pH及び高温など、身体内における特定箇所に見られる(非特許文献3を参照)。温度及びpHは、生物学的に関連する刺激と同様、比較的便利且つ効果的であることを考慮し、研究は、温度及びpH感受性高分子に焦点をおかれている。
【0005】
従って、pH及び/又は温度感受性高分子は、部位特異的な制御薬物放出を生じさせるために生物学的温度及びpHにおける変化を利用する「上手な」薬物送達システムを用意する際に使用され得る。
【0006】
pHにおける大きな差異は、異なる臓器、組織、及び細胞内コンパートメントにおいて広く存在する。例えば、pHは、胃腸管に沿い、胃内の酸性(pH2)から、腸内のより塩基性(pH5−8)まで変化する。同様に、特定の癌、炎症組織、及び傷害組織では、血液循環のpHにおいて、7.4以上の差異を示す。加えて、pHは、初期エンドソーム内でpH6.0−6.5の範囲から、後期エンドソーム内でpH5.0−6.0の範囲まで下がり、次いで細胞エンドサイトーシスの中でリソソーム内でpH4.5−5.0の範囲まで下がり、これにより様々な細胞コンパートメント内におけるプロトン濃度が大きく変化する。従って、身体内におけるpH変化は、刺激感受性高分子の応答を特定の組織又は細胞コンパートメントに向けられた時に指揮するのに利用され得る。非ウイルス遺伝子療法におけるポリカチオン、標的とする癌における酸性誘発薬物放出システム、及びエンドソーム送達(endosomolytic delivery)におけるポリアニオン及び両性ポリマーは、薬物送達において研究されるある種典型的なpH依存型ポリマーである(非特許文献4を参照)。
【0007】
温度は、調節が比較的容易であり、インビトロ及びインビボの双方に適用可能であることを考慮すると、環境応答性ポリマー系において最も幅広く使用される刺激である。ポリ−N−置換アクリルアミド(例えば、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)
ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)(PEO−PPO−PEO)のような両親媒性バランス系ポリマー、及び、ゼラチン並びにアガロース等のバイオポリマー及び人工ポリペチド(artificial polypetide)は、温度応答型高分子の、ある種代表的グループである(非特許文献5を参照)。
【0008】
PNIPAAmは、一般に研究される刺激応答型高分子である。この高分子は、約32℃の低臨界溶解温度(LCST)以下の水溶液に対して親水性且つ溶解性であり、LCSTを超えると疎水性且つ不溶性となる。しかしながら、PNIPAAmは、生分解性ではなく、故にインビボにおける適用に使用された場合に身体内で蓄積し得る。
【0009】
生物医学的応用に使用される高分子は、通常、生体適合性及び生分解性を必要とする。例えば、薬物送達においては、生体適合性ポリマーは比較的低毒性であり、生分解性ポリマーは、持続性薬物放出を増大し得、薬物の消失後における外科切除の必要性を低減し得る。従って、生体適合性且つ生分解性である刺激応答型ポリマーの更なる開発の必要性が存在する。
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0105001号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0169882号明細書
【特許文献3】国際公開第2004/072258号パンフレット
【非特許文献1】Jeong等、Trends.Biotechnol.、2002、20、305
【非特許文献2】Roy等、Chemistry&Biology、2003、10、1161
【非特許文献3】Qiu等、Adv.Drug.Deliv.Rev.、2001、53、321
【非特許文献4】Schmaljohann、D.Adv.Drug.Deliv.Rev.、2006、58、1655
【非特許文献5】Gil等、Prog.Polym.Sci.、2004、29、1173
【発明の開示】
【0010】
一形態において、生分解性高分子骨格及び該生分解性高分子骨格にペンダントした刺激応答型ペンダント基を含む刺激応答型高分子であって、該生分解性高分子骨格は、ポリ(アミノエステル)又はポリ(アミドアミン)を含み、該ポリ(アミドアミン)は任意に骨格にジスルフィド結合を含む、刺激応答型高分子が提供される。
【0011】
ある態様において、刺激応答型高分子の生分解性高分子骨格には、刺激応答型ペンダント基がペンダントする前に、少なくとも1つの第2級アミン結合及び少なくとも1つの第3級アミン結合が含まれ、最終的な刺激応答型高分子は、少なくとも1つの第2級アミン結合及び少なくとも1つの第3級アミン結合を含み得る。
【0012】
特定の態様において、刺激応答型高分子は、
式I:
【化1】
【0013】
により表されるユニット、及び、
式II:
【化2】
【0014】
により表されるユニット、
から各々独立に選択される1又は2以上のユニットを含み、
任意に、式III:
【化3】
【0015】
式IV:
【化4】
【0016】
式V:
【化5】
【0017】
式VI:
【化6】
【0018】
及び式VII:
【化7】
【0019】
から各々独立に選択される1又は2以上のユニットを含む。
【0020】
式中、
zは、O又はNHであり、
R1、R3及びR8は、各々独立に、水素、ヒドロキシル、ハライド、チオヒドロキシル又はヒドロカルビルであり、
R2は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレンであり、
R5は、
(i)N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレン;もしくは、
(ii)−R6−M−R7−
(式中、R6は、−N(R4)−と結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、
Mは、CH又はNであり、
R7は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−28アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルキニレンである。)であり、
R4は、
(i)ヒドロカルビル、もしくは、
(ii)R5が−R6−M−R7−である時、R4もまたMと結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、かつ、R4、M、R6、及び、R4及びR6が結合した窒素原子は、飽和又は不飽和の4員〜12員の複素環を形成しており、
R9は、
(i)N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレン;もしくは、
(ii)−R11−M−R12−
(式中、R11は、−N(R10)−と結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、
Mは、CH又はNであり、
R12は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−28アルキル;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルケニル;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルキニルである。)であり、
R10は、
(i)ヒドロカルビル、もしくは
(ii)R9が−R11−M−R12−である時、R10もまたMと結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、かつ、R10、M、R11、及び、R9及びR11が結合した窒素原子は、飽和又は不飽和の4員〜12員の複素環を形成している;
但し、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9及びR10は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、又はカルボニル基と共役結合したC=C二重結合を有し得ない。
【0021】
刺激応答型高分子は、pH、光、温度、又はイオン強度に対して応答性であり得る。
刺激応答型ペンダント基は、式X:
【化8】
【0022】
(式中、R8、R9及びR10は、上記に規定した通りである。)
の構造を有し得る。
【0023】
ある態様において、刺激応答基は、反応N−イソプロピルアクリルアミド、N,N’−ジエチルアクリルアミド、2−カルボキシイソプロピルアミド、N−(L)−(1−ヒドロキシメチル)プロピルメタクリルアミド、又はN−アクリロキシル−N’−アルキルピペラジンであり得る。
【0024】
刺激応答型高分子は、さらに疎水性ペンダント基を含み得、該疎水性ペンダント基は、ある態様において、
式XII:
【化9】
【0025】
式XIII:
【化10】
【0026】
又は、式XIV:
【化11】
【0027】
(式中、
xは、O又はNHであり、
R17は、置換された又は非置換のC3−30アルキル、置換された又は非置換のC4−30アルケニル、置換された又は非置換のC4−30アルキニル、置換された又は非置換のC3−8シクロアルキル、置換された又は非置換のC6−18アリールであり、いずれもN、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含み得る。)
の構造を有する。
【0028】
疎水性ペンダント基は、反応4−tert−ブチルシクロへキシルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ジアセトンアクリルアミド、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−(イソブトキシメチル)アクリルアミド、コレステリルクロロホルメート、ナノノイルクロリド、ウンデカノイルクロリド、ラウロイルクロリド、4−ヘプチルベンゾイルクロリド、ミリストイルクロリド、1−ブロモ−2−シクロヘキシルエタン、1−ブロモオクタン、1−アダマンチルブロモメチルケトン、2−ブロモ−2’,5’−ジメチオキシアセトフェノン、1−ブロモ−3,7−ジメチルオクタン、1−ブロモドデカン、1−ブロモオクタン、1−ブロモデカン、1−ブロモオクタデカン、2−(6−ブロモヘキシルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン、1−ヨードアダマンタン、1−ヨードヘキサン、1−ヨードオクタン、1−ヨードデカン、1−ヨードドデカン、又は1−ヨードオクタデカンを含み得る。
【0029】
他の形態において、本明細書に記載の刺激応答型高分子及び架橋基を含む組成物が提供される。
高分子は、式XI:
【化12】
【0030】
(式中、
xは、O又はNHであり、
R13及びR15は、各々独立に、水素、ヒドロキシル、ハライド、チオヒドロキシル、又はヒドロカルビルであり、
R14は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレンである。)
の構造を有する架橋基により架橋され得る。
【0031】
特定の態様において、架橋結合基は、架橋1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,2−エタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2,5−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリ(エチルグリコール)ジアクリレート、エチレンジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート;1,4−ビス(アクリロイル)ピペラジン、N,N’−ビス(アクリロイル)シスタミン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド;1,3−ジブロモ−2−プロパノール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、1,5−ジブロモペンタン、1,6−ジブロモへキサン、1,5−ジヨードペンタン、1,8−ジブロモオクタン、1,6−ジヨードへキサン、又は1,8−ジヨードオクタンを含み得る。
【0032】
他の形態において、本発明により、本明細書に記載の刺激応答型高分子を製造する方法もまた提供される。当該方法は、ポリ(アミノエステル)又はポリ(アミドアミン)を含む生分解性高分子を反応させ、高分子骨格にペンダントした刺激応答型ペンダント基を有する高分子を形成することを含み、ここで、前記ポリ(アミドアミン)は任意に高分子骨格にジスルフィド結合を有する。
【0033】
ある態様において、生分解性高分子は、少なくとも1つの第二級アミン結合及び少なくとも1つの第三級アミン結合を骨格に有する。
【0034】
前記生分解性高分子ユニットと刺激応答型分子ユニットの比率は、約10:1〜約1:4であり得る。
【0035】
本発明の方法は、さらに、高分子骨格にペンダントした刺激応答型ペンダント基を有する生分解性高分子を、架橋分子を用いて架橋することを含み得る。この架橋分子は、ジアクリレート、ジアクリルアミド、又はジブロモ、又はジヨード試薬を含み得る。
【0036】
生分解性高分子ユニットと架橋分子ユニットの比率は、約20:1〜約1:2であり得る。
【0037】
本発明の方法は、さらに、高分子骨格にペンダントした刺激応答型ペンダント基を有する生分解性高分子を、疎水性分子と反応させ、高分子骨格に疎水性ペンダント基をペンダントさせることを含み得る。
【0038】
生分解性高分子ユニットと疎水性分子ユニットの比率は、約20:1〜約1:4であり得る。
【0039】
さらに他の形態において、本明細書に記載の刺激応答型生分解性高分子、又は本明細書記載の組成物、及び生物活性剤を含有する組成物が提供される。この組成物は、ミセル又はヒドロゲルを形成し得る。
【0040】
この生物活性剤は、小分子、有機金属化合物、核酸、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド金属、同位体標識した化合物、薬物、ワクチン、又は免疫薬を含み得る。
【0041】
本発明の他の形態及び特徴は、本発明の特定の態様に係る以下の説明を図面と併せて再検討することにより当業者に明確になるであろう。
【0042】
詳細な説明
本発明は、刺激応答型高分子に関するものである。これら高分子には、生分解性高分子骨格にペンダントした刺激応答型ペンダント基を含む高分子が含まれる。
【0043】
生分解性高分子骨格には、ポリ(アミノエステル)又は、例えば、ジスルフィド結合を有するポリ(アミドアミン)のようなポリ(アミドアミン)が含まれる。
【0044】
ポリ(アミノエステル)は、そのpH感受性、生分解性及び生体適合性のために、薬物ベクターやDAN送達としての使用を含む、生物医学的応用における優れたバイオマテリアル候補である。ジスルフィド結合を有するポリ(アミドアミン)は、安定した刺激応答型高分子の形成、取扱い、及び送達を可能とするが、チオール含有化合物(例えば、グルタチオン)の存在下において生分解性である。さらに、ポリ(アミノエステル)、ポリ(アミドアミン)、及びかかる高分子由来の刺激応答型高分子は、単純且つ効率的な合成方法を用いて容易に製造することができる。
【0045】
このように、本高分子は、生体適合性且つ生分解性であり、刺激応答型ペンダント基により特定の刺激に応答して化学的又は物理的変化を受ける。次いで、刺激応答型高分子は、特定の架橋基又は追加の疎水性ペンダント基を洗濯することにより、ヒドロゲル及びミセルなど、様々な構造に形成され得る。
【0046】
「生分解性」なる用語は、所定の物質が細胞又は有機的組織体内に見出されるような、化学的又は酵素分解機構などによる、自然条件下において破壊又は分解されることができることを意味する。
【0047】
一形態において、生分解性高分子骨格及び刺激応答型ペンダント基を含む刺激応答型高分子が提供される。
【0048】
刺激応答型ペンダント基がペンダントする前の生分解性高分子骨格は、少なくとも、第二級アミンの窒素における反応を介してのペンダント基のペンダントに使用され得る第二級アミン結合を含む。したがって、誘導体化されて刺激応答型になる前の高分子骨格は、骨格に少なくとも一つの第二級アミン結合を有し得、当該第二級アミン結合は、刺激応答型ペンダント基などの適切なペンダント基、又は架橋基との反応に使用され得る。
【0049】
刺激応答型高分子は、刺激応答型ペンダント基及び他のペンダント基、又は架橋基が結合した後でも、その高分子骨格中に少なくとも1つのアミン結合を含み得る。
刺激応答型高分子の高分子骨格は、直鎖状又は分岐鎖状であり得、高分岐も含む。
【0050】
本発明の骨格は、刺激応答型ペンダント基がペンダントする前に、その骨格中に少なくとも1つの第二級アミン結合と少なくとも1つの第三級アミン結合を有するポリ(アミド)アミンを含み得、該ポリ(アミド)アミンは、ジスルフィド結合を含み得る。
【0051】
また、本発明の骨格は、刺激応答型ペンダント基がペンダントする前に、その骨格中に少なくとも1つの第二級アミン結合と少なくとも1つの第三級アミン結合を有するポリ(アミノエステル)を含み得る。
【0052】
好適なポリ(アミノエステル)及びその製造方法が、参照により本明細書に取り込まれる米国特許出願公開第2004/0260115号明細書に記載されている。したがって、ある態様において、該骨格には、ペンダント基による誘導体化の前に、その高分子骨格中に少なくとも1つの第二級アミン結合と少なくとも1つの第三級アミン結合を有する高分子骨格を有するポリ(アミノエステル)化合物が含まれる。
【0053】
他の態様において、ポリ(アミノエステル)骨格には、その高分子骨格中に少なくとも1つの第二級アミン結合と少なくとも1つの第三級アミン結合を有し、ペンダント基による誘導体化の前に末端第一級アミノ基を有しない高分子骨格を有するポリ(アミノエステル)化合物が含まれる。
【0054】
特定の態様において、刺激応答型高分子は、直鎖状ユニットを含む高分子であり得、各々独立に、式I:
【化13】
【0055】
の直鎖状ユニット、及び式II:
【化14】
【0056】
の直鎖状ユニットから選択される。
【0057】
また、刺激応答型高分子は、任意に式III:
【化15】
【0058】
から選択される1又は2以上のユニットを含み得る。
【0059】
さらに、高分子内のすべての構造単位に、必ずしも刺激応答型基が結合しているとは限らず、式IV:
【化16】
【0060】
式V:
【化17】
【0061】
式VI:
【化18】
【0062】
及び式VII:
【化19】
【0063】
から各々独立に選択される1又は2以上のユニットを任意に含み得る。
【0064】
上記式中、
zは、O又はNHである。
R1、R3及びR8は、各々独立に、水素、ヒドロキシル、ハライド、チオヒドロキシル又はヒドロカルビルである。
【0065】
R2は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレンである。
【0066】
R5は、
(i)N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレン;もしくは、
(ii)−R6−M−R7−
(式中、R6は、−N(R4)−と結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、
Mは、CH又はNであり、
R7は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−28アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルキニレンである。)である。
【0067】
R4は、
(i)ヒドロカルビル、もしくは、
(ii)R5が−R6−M−R7−である時、R4もまたMと結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、かつ、R4、M、R6、及び、R4及びR6が結合した窒素原子は、飽和又は不飽和の4員〜12員の複素環を形成している。
【0068】
R9は、
(i)N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレン;もしくは、
(ii)−R11−M−R12−
(式中、R11は、−N(R10)−と結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、
Mは、CH又はNであり、
R12は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−28アルキル;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルケニル;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルキニルである。)である。
【0069】
R10は、
(i)ヒドロカルビル、もしくは
(ii)R9が−R11−M−R12−である時、R10もまたMと結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、かつ、R10、M、R11、及び、R9及びR11が結合した窒素原子は、飽和又は不飽和の4員〜12員の複素環を形成している。
【0070】
但し、上記式において、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9及びR10は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、又はカルボニル基と共役結合したC=C二重結合を有し得ない。
【0071】
このように、上記構造式において、少なくとも1又は2以上のR2、R4又はR5が、ジスルフィド基を含む時、特に骨格がポリ(アミドアミン)を含む場合には、高分子骨格はジスルフィド結合を含み得る。
【0072】
本発明の特定の形態において、高分子骨格は、上述した式Iの直鎖状ユニット及び式IIの直鎖状ユニットから独立に選択される1〜2000の直鎖状ユニットを含み得、任意に式III〜VIIの1又は2以上のユニットを含む。
【0073】
ある形態において、刺激応答型高分子の形成に使用される高分子骨格は、
高分子骨格がポリ(アミノエステル)であり、高分子骨格内の直鎖状ユニットの含有率が20%〜45%であり、R2がエチレンであるとき、−N(R4)−R5−NH−は、1−(2−アミノエチル)ピペラジニレン、N−エチルエチレンジ−アミニレン、N−メチル−1,3−プロパンジアミニレン、ピペラジニレン、又は4−(アミノメチル)ピペリジニレンではなく、更に、高分子骨格内の直鎖状ユニットの含有率が20%〜45%であり、R2が−(CH2CH2O)nCH2CH2であり、nが5、7又は13であるとき、−N(R4)−R5−NH−は、1−(2−アミノエチル)ピペラジニレン、N−エチルエチレンジアミニル−エン、N−メチル−1,3−プロパンジアミニレン、又は4−(アミノメチル)−ピペリジニレンではない。
【0074】
本開示において、「ヒドロカルビル」なる用語は、1又は2以上のヘテロ原子を含み得る炭化水素基を意味し、限定するものではないが、分岐及び非分岐アルキル、分岐及び非分岐アルケニル、分岐及び非分岐アルキニル、アリール、アルコキシル、カルバモイル、カルボキシルエステル、カルボニルジオキシル、アミド、アルキルチオエーテル、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、シアノ、ウレイド、置換アルカノイル基、環式、環式芳香族、複素環式、及び芳香族複素環基が挙げられ、各々は、分岐及び非分岐アルキル、分岐及び非分岐アルケニル、分岐及び非分岐アルキニル、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、アリール、ウレイド、複素環、芳香族複素環、環式、芳香族環式、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、シアノ、アミド、カルバモイル、カルボン酸、エステル、カルボニル、カルボニルジオキシル、アルキルチオエーテル、及びチオール基からなる群から選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。このように、本開示において、「ヒドロカルビル」なる用語には、ヘテロ原子を介して化合物に結合した炭化水素基(例えば、アルコキシラジカル)が含まれる。
【0075】
したがって、R1、R3、R4、R8及びR10がヒドロカルビルである場合の、これら基の好適な値には、置換された又は非置換のC1−30アルキル、置換された又は非置換のC2−30アルケニル、置換された又は非置換のC2−30アルキニル、置換された又は非置換のC3−8シクロアルキル、置換された又は非置換のC6−18アリールが含まれ、いずれもN、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含み得る。
【0076】
本開示において、刺激応答型高分子における「ユニット」なる用語は、1、2又は3個の共有結合を介して高分子骨格に共有結合した高分子の構造単位をいう。高分子骨格を延長し、特定構造を有するユニットは他の特定構造を有するユニット間で不規則に散りばめられ得るが、高分子に沿って繰り返される単位を表す。当該用語は、式I〜VIIのいずれか一つの構造を有するユニットを含む、高分子中のすべての可能な単位をカバーする総称として用いられる。所定のユニットは、同じ高分子鎖中の、もしくは異なる高分子鎖中の他のユニットと架橋的に共有結合し得こと、さらに、かかる架橋的結合は、高分子骨格を延長するユニット間での骨格共有結合の上記記載に含まれることを意図していないことが理解されよう。
【0077】
本開示において、「直鎖状ユニット」なる用語は、二つの共有結合を介して高分子骨格に共有結合し、それにより実質的に直鎖状の高分子骨格を延長する高分子の構造単位をいう。本発明の直鎖状ユニットは、式I〜VIにより規定される構造を有し得る。
【0078】
本開示において、「分鎖状ユニット」なる用語は、三つの共有結合を介して高分子骨格に共有結合し、それにより高分子骨格を分岐させている高分子の構造単位をいう。本発明の分岐鎖ユニットは式VIIにより規定される構造を有し得る。
【0079】
本開示において、「末端ユニット」なる用語は、高分子鎖の終端又は末端において現れるポリ(アミノエステル)の構造単位をいう。上述したポリ(アミノエステル)は、2又は3以上の末端ユニットを含み得る。本ポリ(アミノエステル)における末端ユニットは、以下の式VIII又は式IXによる構造を有し得る。
【化20】
【0080】
式中、R4及びR5は、式I〜VIIにおける規定と同義である。
【0081】
図1は、ビス(アクリレート)エステルと第二級及び第一級アミノ基を有するジアミンとを反応させポリ(アミノエステル)骨格を形成することにより製造される直鎖状ポリ(アミノエステル)において現れ得る本刺激応答型高分子と結合種の2態様を表す。構造ユニットは、一つの第三級アミン及び一つの第二級アミン結合を介して高分子骨格において結合されている。表示された態様において、末端ユニットは、未反応アミノ基として、元の第二級アミノ基、又は元の第一級アミノ基のいずれかを有することに留意すべきである。
【0082】
高分子骨格は、高分子の終部に末端キャッピングユニットを更に含み得る。好適な末端キャッピング剤には、モルホリン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、及び1−メチル−4−メチルアミノピペリジン、及びベンジル−1−ピペラジンカルボキシレートが含まれる。
【0083】
本明細書において言及したように、「刺激応答型」又は「刺激応答」なる用語は、特定pH、温度、光(特定波長の光を含む)又はイオン強度などの外的刺激に応答して物理的又は化学的特性において変化を受けるペンダント基、化合物又は高分子の特徴を表現又は言及したものである。例えば、化合物の疎水性度または親水性度は、外的刺激の利用に応答して変化し得、化合物の溶解度に変化をもたらし得る。特定のペンダント基、化合物又は高分子は、単一の刺激又は2以上の刺激に対して応答性となり得、異なる刺激に対し、物理的又は化学的特性において異なる応答、変化を示し得る。
【0084】
しがたって、「刺激応答型ペンダント基」は、高分子骨格上にグラフトした場合に、上述した刺激応答性を所有するペンダント基をいい、グラフトした高分子に刺激応答性を付与する。
【0085】
上記の通り、刺激は、pH、温度、光、イオン強度であり得、刺激応答型ペンダント基、化合物、又は高分子は、特定の刺激に曝された時に、物理的又は化学的変化を受け得る。
【0086】
刺激応答型ペンダント基は、いかなる刺激応答型のペンダント基であってもよい。ペンダント基は、刺激応答型、もしくは刺激応答型モノマーのオリゴマーであり得る。
【0087】
ある形態において、刺激応答型ペンダント基は、温度応答型ペンダント基である。ある形態において、刺激応答型ペンダント基は、カプロラクタム、エチレングリコール、又は酸化プロピレンを含む。
【0088】
他の形態において、刺激応答型ペンダント基は、N−置換アクリルアミド基を含む。
刺激応答型ペンダント基がN−置換アクリルアミド基である場合、N−置換アクリルアミド基の置換基は、高分子骨格の第二級アミノ基より求核性が低くなければならず、そのため、置換基は、N−置換アクリルアミド中のビニル基との反応のために骨格中の第二級アミン基を備えない。
【0089】
ある形態において、刺激応答型ペンダント基は、式Xを有し得る。
【化21】
【0090】
R8、R9及びR10は、式I〜VIIにおける規定と同義である。
【0091】
上述したように、刺激応答型ペンダント基は、高分子骨格中の第二級アミノ基との反応を介して生分解性高分子骨格にグラフトし得る。しかしながら、高分子骨格及びグラフト前のペンダント基中に存在する特定の官能基によっては、刺激応答型ペンダント基は、高分子中の第二級アミノ基以外の基を介してペンダントし得る。
【0092】
刺激応答型ペンダント基がグラフトする高分子骨格中の利用可能な部位の飽和は、以下に示すように、グラフト反応の条件を変えることにより変化し得る。したがって、刺激応答型高分子は、グラフトのために利用可能な部位に、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は、少なくとも100%においてグラフトした刺激応答型ペンダント基を含み得る。刺激応答型高分子は、約1%〜約99%のグラフト化刺激応答型ペンダント基を含み得、もしくは、約1%〜約100%グラフト化刺激応答型ペンダント基を含み得る。
【0093】
使用される特定のペンダント基次第では、高分子にグラフトするペンダント基が極度に少なく、刺激応答性の欠失がもたらされ得ることが理解されよう。刺激応答性とそのグラフト度の関係は、日常的に行われる実験室手法により容易に決定することができる。
【0094】
図2は、本刺激応答型高分子の特定形態における、ポリ(アミノエステル)ポリ(PEG258DA−AEPZ)にN−イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)をグラフトさせた産物の1HNMR分光法の結果を示し、得られたポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAmが、グラフト度46%のNIPAAm又はグラフト度100%のNIPAAmのいずれかを有することを示す。
【0095】
高分子の疎水性又は親水性は、高分子の刺激応答性を調節するために調整され得、これにより刺激応答性は、所定の使用に適している。刺激応答性は、高分子中の親水性及び親水性基の比率をシフトさせることにより変化し得る。例えば、生分解性高分子主鎖の親水性/疎水性特性、及びN−置換アクリルアミドペンダント基などの付加ペンダント基の性質及びグラフト度は、刺激応答性を調節するために調整され得る。
【0096】
加えて、温度応答性ではないが、親水性又は疎水性である追加のペンダント基を導入することにより、刺激応答型高分子の刺激応答性に影響を及ぼすことがある。
【0097】
刺激応答型ペンダント基が温度応答性基である態様において、高分子は、高分子溶液が溶解性から不溶性へ相転移する(例えば、臨界温度を超え水溶液に不溶性となる)臨界温度として規定される臨界溶解温度(LCST)がより低くなり得る。LCSTは、日常的に行われる実験室手法を用いて決定することができる。例えば、LCSTは、刺激応答型高分子水溶液の温度関数としての透過率特性のプロットにおける転移点として測定することができ、紫外分光計でモニターされる。ここで、転移点とは、透過率が一定の透過率値(例えば、LCST以下の温度において)から、増加又は減少により変化し始める点、あるいは、逆に、透過率が増加又は減少の透過率値から一定の透過率値へ変化し始める点をいうことが意図されている。例えば、図8を参照することができる。
【0098】
温度応答型高分子のLCSTは、所定の適用に好適なように調製され得る。例えば、LCSTは、高分子が身体内で使用される適用のための身体温度と室温との範囲内となるよう選択することができる。このように、高分子は、身体の外部の一構造と身体内の異構造とを有するよう設計することができる。
【0099】
例えば、グラフトするNIPAAmペンダント基の百分率が変化するポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAmは、異なるLCSTを示す。図6に示すように、高分子ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAmにおけるNIPAAmのグラフト度が100%の高分子と46%の高分子とでは、LCSTが各々33℃及び36℃となる。しかしながら、NIPAAmのグラフト度が15%においては、同じ高分子骨格においてLCSTの損失がみられる。対照的に、主高分子鎖の疎水性度がより高く、NIPAAmのグラフト度が15%であるポリ(BDA−AEPZ)−g−NIPAAmにおいては、LSCTがなお34.5℃に保たれていた。一方、主高分子鎖の親水性度がより高く、NIPAAmのグラフト度が100%であるポリ(PEG575DA−AEPZ)−g−NIPAAmにおいては、LSCTを示さなかった。
【0100】
高分子骨格中のアミノ基のプロトン化によっても主鎖の親水性は増加するので、高分子の親水性/疎水性バランスを調節するために高分子は調整され得、故に刺激応答性に影響を及ぼす。加えて、アミノ基のプロトン化から発生する正電荷は、知覚刺激への暴露が、例えばペンダント基の縮小などの高分子における構造変化に導く場合に、高分子が大粒子を形成する高分子凝集の広がりを抑制又は低減し得る。
【0101】
更なる例において、ポリ(BDA−AEPZ)−g−NIPAAm0.6は、図7に示すように、pH7、5及び3において、各々30.5℃、31.0℃、34.5℃のLCSTを有する。高分子のLCSTは、pH5における骨格アミノ基の部分プロトン化、並びにpH3におけるアミノ基の完全プロトン化の結果として親水性が増加するために、pHが減少するに従い増加する。更に、高分子の凝集の減少は、図7に示すように、pH7における36℃での透過率がわずか1%であるのに対し、pH5及び3における40℃での透過率が89%であるという事実により証明される。
【0102】
高分子は、従来、様々な組成物及び構造に形成され得、例えば、上手な薬物送達システムに使用される刺激応答型高分子において有用な形態であるヒドロゲルが含まれる。
【0103】
ヒドロゲルは、網目構造のある領域では水に膨潤し大量の水を保持し得、一方網目構造の他の領域では化学的又は物理的に連結しあっている三次元(3D)網目構造である。したがって、ヒドロゲルは水で膨潤している場合にもその構造を維持することができる。3D網目構造は、共有結合、水素結合、ファン・デル・ワールス相互作用、又は物理的エンタングルメントを介して架橋親水性高分子により形成され得る(Kamath等、Adv. Drug. Deliv. Rev., 1993, 11, 59)。
【0104】
刺激応答型高分子を用いて製造される刺激応答型ヒドロゲルは、身体に投与された場合における不良環境(例えば、胃中の酵素及び低pHの存在)から薬物又は生物活性剤を保護するために使用され得る。さらに、ヒドロゲルは、その応答の結果、部位特異的薬物放出により、適切な環境刺激に暴露するために使用され得る。
【0105】
刺激応答型ヒドロゲルは、人工筋肉の形成(Kajiwara等, Nature, 1992, 355, 208; Osada等, Nature, 1992, 355, 242)、化学バルブ(Osada等, Chem. Lett., 1985, 9, 1285)、酵素および細胞の固定化(Chen等, Biotechnol. Prog., 1998, 14, 473)、及び、バイオ分離における希薄溶液の濃縮(Park等, Biotechnol. Prog., 1992, 8, 521)など、様々な適用において開発されている。
【0106】
上述した刺激応答型高分子は、高分子骨格の架橋結合によりヒドロゲル構造に構築され、架橋高分子網目を形成し得る。このように、刺激応答型高分子は刺激応答型ヒドロゲルの形態であり得、高分子中の二つの部位を連結する架橋基を含む。ここで、二つの部位には、異なる高分子鎖における部位を含む。
【0107】
架橋基は、1又は2以上の高分子鎖上の2つの部位を、一の高分子骨格上の反応基を介して第二の高分子骨格上の反応基に連結するものであればいかなる架橋基であってもよい。架橋剤により連結される高分子骨格上の各特定反応基は、同じであってもよいし異なっていてもよい。すなわち、高分子骨格と反応する前の架橋基は、高分子上の相補的官能基(complementary functional group)との反応に利用可能な二つの官能基(典型的には、架橋分子の一方の端部)を有する二官能性分子である。刺激応答型ペンダント基への架橋基の結合は、得られるヒドロゲルの刺激応答性に影響を及ぼし得るが、架橋基は、ペンダント基(刺激応答型ペンダント基を含む。)の反応基を介して連結し得る。
【0108】
従来において高分子骨格は第二級アミノ官能基を含むため、架橋基は、1又は2以上の高分子鎖上の第二級アミノ基を介して結合し得る。刺激応答型高分子上のペンダント基のグラフト度が100%であり、ペンダント基が第二級アミノ基において結合している場合に、いずれの架橋基も高分子骨格上の異なる官能基を介して結合し得ることが理解されよう。
【0109】
ある形態において、架橋基は、架橋分子との反応前の各高分子鎖骨格中に存在する第二級アミノ基を介して二つの高分子鎖に結合する。ある形態において、架橋基は、反応ジアクリレート、ジアクリルアミド、もしくはジブロモ又はジヨード試薬である。図9は、典型的なヒドロゲルを示したものである。
【0110】
特定の形態において、架橋基は式XIの構造を有し得る。
【化22】
【0111】
上記式XIにおいて、xは、O又はNHである。
R13及びR15は、独立に、水素、ヒドロキシル、ハライド、チオヒドロキシル又はヒドロカルビルである。
【0112】
R14は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレンである。
【0113】
刺激応答型ヒドロゲルは、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は、少なくとも100%の架橋含有率において含み得、これらは加えられる架橋分子の量及び架橋結合に利用可能な部位の数により決定される。刺激応答型高分子は、約1%〜約99%、もしくは、約1%〜約100%架橋基を含み得る。
【0114】
本刺激応答型高分子は、ヒドロゲル構造への形成に好適であるのと同様に、水溶液中での高分子ミセル組成物への形成に好適な両親媒性分子として設計され得る。
【0115】
高分子ミセルは、水媒体中での高分子の疎水性部分の凝集による両親媒性高分子の凝集により形成され得、水を排除する内側疎水性コアと外側親水性表面を形成する。高分子ミセルは、疎水性コア中にゲスト分子をカプセル化して封入することができるため、生物活性剤の送達に有用である。
【0116】
両親媒性刺激応答型高分子は、架橋基の導入に関する上記と同様の方法で、本発明の刺激応答型高分子中に疎水基を導入することにより得ることができる。すなわち、疎水基は、高分子骨格中の官能基を介して高分子骨格に結合し得、該官能基には、利用可能な第二級アミノ基が含まれる。
【0117】
疎水基は、実際に疎水性であるいずれの疎水基であってもよく、高分子骨格上の相補的官能基と反応する疎水基の官能基を介して高分子骨格に結合する。すなわち、高分子骨格と反応する前の疎水基は、疎水性部分と高分子の相補的官能基との反応に利用可能な官能基を有する単官能分子である。
【0118】
高分子骨格は、従来において第二級アミノ官能基及び第三級アミノ官能基を含むため、疎水基は、高分子鎖上の第二級及び/又は第三級アミノ基を介して結合し得、あるいは、高分子鎖上の異なる官能基において結合し得る。刺激応答型高分子における刺激応答型ペンダント基のグラフト度が100%であり、ペンダント基が第二級アミノ基において結合する場合に、いずれの疎水性ペンダント基も高分子骨格上の異なる官能基を介して結合し得ることが理解されよう。
【0119】
ある形態において、疎水基は、疎水性ペンダント基分子との反応前に骨格中に存在する第二級アミノ基又は第三級アミノ基を介して高分子骨格に結合する。ある形態において、疎水基は、反応疎水性アクリレート、疎水性アクリルアミド、アシルクロリド、もしくはモノブロモ又はモノヨード試薬である。図10は、典型的な両親媒性刺激応答型ポリ(網のエステル)を示したものである。
【0120】
疎水基は、下記の式XII〜XIVに示される構造を有し得る。式XIIにおいて、x=Oがアクリレートであり、x=NHがアクリルアミドである。
【化23】
【0121】
式XII〜XIVにおいて、xは、O又はNHである。
R17は、疎水性ヒドロカルビル基である。R17は、合成疎水基であってもよいし、天然に存在する疎水基であってもよい。R17は、低毒性であり、生体適合性であるよう選択されるべきことは理解されよう。
【0122】
したがって、R17の好適な値には、置換された又は非置換のC3−30アルキル、置換された又は非置換のC4−30アルケニル、置換された又は非置換のC4−30アルキニル、置換された又は非置換のC3−8シクロアルキル、置換された又は非置換のC6−18アリールであり、いずれもN、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含み得る。
【0123】
本発明の両親媒性刺激応答型高分子は、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の疎水含有率において含み得る。刺激応答型高分子は、約1%〜約99%のグラフト化疎水性ペンダント基を含み得、もしくは、約1%〜約100%のグラフト化疎水性ペンダント基を含み得、もしくは、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%のグラフト化疎水性ペンダント基を含み得る。これらは疎水基の結合に利用可能な部位により決定される。
【0124】
上記刺激応答型高分子は、マイケル付加反応など、標準的な化学的手法により容易に製造することができる。本刺激応答型高分子のポリ(アミノエステル)骨格は、ポリ(アミノエステル)の場合には、ビス(アクリレートエステル)モノマーのジアミンモノマーへのマイケル付加、ポリ(アミドアミン)の場合には、ビスアクリルアミドモノマーのジアミンモノマーへのマイケル付加を介して製造することができ、ジアミンモノマーは、一つの第一級アミノ基と一つの第二級アミノ基を有する。刺激応答型ペンダント基が付加する前のポリ(アミノエステル)骨格の好適な製造方法は、参照により本明細書に取り込まれる米国特許出願公開第2004/0260115に記載されている。
【0125】
直鎖状骨格が記載されている場合には、ビス(アクリレートエステル)又はビスアクリルアミド及びジアミンは、およそ等モル量において反応する。
【0126】
特定の形態において、生分解性高分子骨格は、式XVのビス(アクリレートエステル)又はビスアクリルアミドモノマーを用いて形成され得る。
【0127】
式XV:
【化24】
【0128】
式XVにおいて、zは、O又はNHである。R1及びR3は、各々独立に、水素、ヒドロキシル、ハライド、チオヒドロキシル又はヒドロカルビルであり、R2は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレンである。
【0129】
ビス(アクリレートエステル)又はビスアクリルアミドモノマーは、式XVIのジアミンモノマーと反応し得る。
【0130】
式XVI:
【化25】
【0131】
式XVIにおいて、R5は、
(i)N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレン;もしくは、
(ii)−R6−M−R7−
(式中、R6は、−N(R4)−と結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、
Mは、CH又はNであり、
R7は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−28アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルキニレンである。)である。
【0132】
式XVIにおいて、R4は、
(i)ヒドロカルビル、もしくは、
(ii)R5が−R6−M−R7−である時、R4もまたMと結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、かつ、R4、M、R6、及び、R4及びR6が結合した窒素原子は、飽和又は不飽和の4員〜12員の複素環を形成している。
【0133】
但し、式XV及び式XVIにおいて、R1、R2、R3、R4及びR5は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、又はカルボニル基と共役結合したC=C二重結合を有し得ない。ジアミンモノマー及びビス(アクリレートエステル)又はビスアクリルアミドモノマーにおけるR基は、ジアミンの第二級及び第三級アミノ基よりも求核性が低くなければならず、そのためR基は、ビス(アクリレートエステル)又はビスアクリルアミド中のビニル基と反応するアミノ基を備えない。
【0134】
本開示において、「ジアミンモノマー」なる用語は、一つの第二級アミノ基と一つの第一級アミノ基を有する化合物を意味するが、更に1又は2以上の第三級アミノ基を含む化合物を除外するものではない。したがって、本開示において使用する「ジアミンモノマー」なる用語には、一つの第二級アミノ基、一つの第一級アミノ基、および任意に1又は2以上の第三級アミノ基を有する化合物が含まれる。
【0135】
本発明のポリ(アミノエステル)を製造するために用いることができるビス(アクリレートエステル)モノマーには、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,2−エタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2,5−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリ(エチルグリコール)ジアクリレート、エチレンジアクリレート、及び1,3−プロパンジオールジアクリレートが含まれる。
【0136】
本発明のポリ(アミノアミド)を製造するために用いることができるビスアクリルアミドモノマーには、N,N’−ビス(アクリロイル)シスタミン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、1,4−ビス(アクリロイル)ピペラジン、及びN,N’−エチレンビス(アクリルアミド)が含まれる。
【0137】
本発明の生分解性高分子を製造するために用いることができるジアミンモノマーには、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、3−アミノピロリジン、N−エチルエチレンジアミ、N−メチル−1,3−プロパンジアミン、N−イソプロピルエチレンジアミン、N−ヘキシルエチレンジアミン、N−ブチルエチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、及びN,N−ジエチルジ−エチレントリアミンが含まれる。
【0138】
反応は、低温度では反応時間が長くはなるものの、幅広い範囲の温度及び圧力下において実施することができる。例えば、反応は、約−20℃〜約100℃、約−10℃〜約90℃、約0℃〜約80℃、約10℃〜約70℃、又は約20℃〜約50℃の温度において実施することができる。反応は、一定の期間、例えば、10時間〜10日間、18時間〜7日間、24時間〜96時間、又は24時間〜72時間、インキュベートされ得る。
【0139】
反応は、好ましくは、1種の溶媒又は複数種の溶媒混合物の存在下において実施される。本発明の方法において使用することができる溶媒には、限定するものではないが、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、クロロホルム、ジクロロメタン、メチルクロリド、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水、ヘキサン、トルエン、ベンゼン、四塩化炭素、グリム及びジエチルエーテルが含まれる。
【0140】
一形態において、生分解性高分子は、末端キャッピング剤と反応し得る。好適な末端キャッピング剤には、限定するものではないが、モルホリン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、及び1−メチル−4−メチルアミノピペリジン、及びベンジル−1−ピペラジンカルボキシレートが含まれる。
【0141】
生分解性高分子はそのまま使用してもよいし、更なる使用の前に精製してもよい。精製は、沈殿、結晶化、クロマトグラフィー、真空下での乾燥など、公知の技術を用いて行うことができる。例えば、本発明の生分解性高分子は、エーテルを用いて沈殿させ、次いで新しいエーテルで洗浄し、真空下で乾燥することによっても精製することができる。
【0142】
次いで、生分解性高分子骨格は、好適な刺激応答性分子との反応により、上述したように刺激応答型ペンダント基がその骨格上にグラフトする。したがって、刺激応答型ペンダント基は、生分解性高分子骨格上に官能基を介して結合する。
【0143】
ある形態において、刺激応答性分子はN−置換アクリルアミドであり得る。
刺激応答性分子は、式XVIIの構造を有し得る。
【0144】
式XVII:
【化26】
【0145】
上記において、R8は、水素、ヒドロキシル、ハライド、チオヒドロキシル又はヒドロカルビルである。
R9は、
(i)N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;もしくは、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレン;もしくは、
(ii)−R11−M−R12−
(式中、R11は、−N(R10)−と結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、
Mは、CH又はNであり、
R12は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−28アルキル;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルケニル;もしくは、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルキニルである。)である。
【0146】
R10は、
(i)ヒドロカルビル、もしくは
(ii)R9が−R11−M−R12−である時、R10もまたMと結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、かつ、R10、M、R11、及び、R9及びR11が結合した窒素原子は、飽和又は不飽和の4員〜12員の複素環を形成している。
【0147】
但し、上記式XVIIにおいて、R8、R9及びR10は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、又はカルボニル基と共役結合したC=C二重結合を有し得ない。
【0148】
従来より、いくつかのN−置換アクリルアミドモノマーが市販されている。本発明の刺激応答型高分子の製造において使用することができるN−置換アクリルアミドモノマーには、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N’−ジエチルアクリルアミド、2−カルボキシイソプロピルアミド、N−(L)−(1−ヒドロキシメチル)プロピルメタクリルアミド、及びN−アクリロキシル−N’−アルキルピペラジンが含まれる。
【0149】
生分解性高分子と刺激応答性分子の比は、約10:1〜約1:4、もしくは約5:1〜約1:2であり得る。
【0150】
グラフト反応は、刺激応答型ペンダント分子と生分解性高分子との間で反応し得る相補的官能基間での好適な反応条件下において実施される。
【0151】
グラフト反応は、低温度では反応時間が長くはなるものの、幅広い範囲の温度及び圧力下において実施することができる。例えば、反応は、約−20℃〜約150℃の温度において実施することができる。
【0152】
好ましくは、生分解性高分子のグラフト反応は、好適な溶媒の存在下において実施され、溶媒は、特定の生分解性高分子及び刺激応答型ペンダント基分子に基づき選択される。
【0153】
ポリ(アミノエステル)を用いたグラフト反応において、使用し得る溶媒には、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、クロロホルム、ジクロロメタン、塩化メチル、テトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン、及び四塩化炭素が含まれる。
【0154】
ポリ(アミドアミン)のグラフト反応は、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール及び水などの溶媒を用いて実施される。
【0155】
生分解性高分子にグラフトする刺激応答型ペンダント基のグラフト度は、使用する刺激応答性分子の種類や、反応中に存在するそれらの関係量を変えることにより、変更することができる。例えば、刺激応答型モノマーが過剰に存在すると、生分解性高分子中の刺激応答型ペンダント基のグラフト度が増加する傾向にある。更に、生分解性高分子中の第二級アミノ基の低立体障害、反応温度の高温化、反応時間の拡大、及び好適な溶媒の選択は、グラフト反応を促進し、生分解性高分子中の刺激応答型ペンダント基のグラフト度を増大し得る。
【0156】
上述したように、刺激応答型生分解性高分子は、架橋剤を使用し刺激応答型高分子を架橋結合させることによりヒドロゲルに形成することができ、架橋剤には、ジアクリレート、ジアクリルアミド、ジブロモ又はジヨード化合物などの架橋分子が含まれる。
【0157】
上述したように、ヒドロゲルを形成するために、刺激応答型生分解性高分子を好適な架橋分子と反応させることにより、架橋分子をポリ(アミノエステル)骨格と該骨格上の官能基を介して反応させ得る。このように、架橋基は、架橋分子と生分解性高分子骨格上の相補的官能基間の反応を介して結合する。
【0158】
架橋反応は、標準的な化学的手法を用いて実施することができ、当該方法は、架橋分子及び生分解性高分子骨格中の特定官能基に依存し得る。例えば、ジアクリレート又はジアクリルアミドは、マイケル付加により、高分子骨格中の第二級アミノ基と反応し得る。あるいは、骨格中の第二級アミノ基は、ジブロモ又はジヨード試薬を用いてアルキル化され得る。
【0159】
したがって、架橋分子は、式XVIII又はXIXの構造を有し得る。
式XVIII又はXIX:
【化27】
【0160】
xは、O又はNHである。
yは、Br又はIである。
R13及びR15は、独立に、水素、ヒドロキシル、ハライド、チオヒドロキシル又はヒドロカルビルである。
【0161】
従来より、刺激応答型高分子と反応する架橋分子として使用することができるジアクリレートが市販されており、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,2−エタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2,5−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリ(エチルグリコール)ジアクリレート、エチレンジアクリレート、及び1,3−プロパンジオールジアクリレートが挙げられる。
【0162】
同様に、刺激応答型高分子と反応する架橋分子として使用することができるジアクリルアミドが市販されており、1,4−ビス(アクリロイル)ピペラジン、N,N’−ビス(アクリロイル)シスタミン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、及びN,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミドが挙げられる。
【0163】
刺激応答型高分子と反応する架橋分子として使用することができるジブロモ及びジヨード試薬も市販されており、1,3−ジブロモ−2−プロパノール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、1,5−ジブロモペンタン、1,6−ジブロモへキサン、1,5−ジヨードペンタン、1,8−ジブロモオクタン、1,6−ジヨードへキサン、及び1,8−ジヨードオクタンが挙げられる。
【0164】
刺激応答型高分子と架橋分子の比は、約20:1〜約1:2、もしくは約10:1〜1:1であり得る。
【0165】
架橋反応は、架橋分子と生分解性高分子との間で反応し得る相補的官能基間における好適な反応条件下において実施される。
【0166】
刺激応答型生分解性高分子は、また、高分子ミセルを形成するために両親媒性に変性され得る。本発明の両親媒性刺激応答型高分子は、生分解性高分子骨格への疎水基の導入により製造され得る。
【0167】
疎水基の導入方法には、生分解性高分子骨格中の第二級アミンへの疎水性アクリレート又はアクリルアミドのマイケル付加、高分子骨格中の第二級アミンのアクリルクロリドとの求核置換反応、及び、モノブロモ又はモノヨード試薬を用いての生分解性高分子骨格中の第二級及び第三級アミンのアルキル化又は四級化反応が含まれる。
【0168】
疎水性アクリレート又はアクリルアミドは、下記の式XXに示される構造を有し得、式XXにおいてx=Oがアクリレートであり、x=NHがアクリルアミドである。アシルクロリドは、式XXIに示される構造を有し得、モノブロモ又はモノヨード試薬は、式XXIIに示される構造を有し得る。
【化28】
【0169】
式XX、XXI及びXIIにおいて、xは、O又はNHである。
R17は、疎水性ヒドロカルビル基である。R17は、合成疎水基であってもよいし、天然に存在する疎水基であってもよい。R17は、低毒性であり、生体適合性であるよう選択されるべきことは理解されよう。
【0170】
したがって、R17の好適な値には、置換された又は非置換のC3−30アルキル、置換された又は非置換のC4−30アルケニル、置換された又は非置換のC4−30アルキニル、置換された又は非置換のC3−8シクロアルキル、置換された又は非置換のC6−18アリールであり、いずれもN、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含み得る。
【0171】
従来より、本両親媒性刺激応答型ポリ(アミノエステル)における疎水性ペンダント基として使用することができるアクリレートが市販されており、4−tert−ブチルシクロヘキシルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、及びラウリルアクリレートが挙げられる。
【0172】
使用することができるアクリルアミドが市販されており、ジアセトンアクリルアミド、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド、及びN−(イソブトキシメチル)アクリルアミドが挙げられる。
【0173】
使用することができるアシルクロリドが市販されており、コレステリルクロロホルメート、ナノノイルクロリド、ウンデカノイルクロリド、ラウロイルクロリド、4−ヘプチルベンゾイルクロリド、及びミリストイルクロリドが挙げられる。
【0174】
使用することができるモノブロモ及びモノヨード試薬が市販されており、1−ブロモ−2−シクロヘキシルエタン、1−ブロモオクタン、1−アダマンチルブロモメチルケトン、2−ブロモ−2’,5’−ジメチオキシアセトフェノン、1−ブロモ−3,7−ジメチルオクタン、1−ブロモドデカン、1−ブロモオクタン、1−ブロモデカン、1−ブロモオクタデカン、2−(6−ブロモヘキシルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン、1−ヨードアダマンタン、1−ヨードヘキサン、1−ヨードオクタン、1−ヨードデカン、1−ヨードドデカン、又は1−ヨードオクタデカンが挙げられる。
【0175】
刺激応答型高分子と疎水性分子の比は、約20:1〜約1:4、もしくは約10:1〜約1:1であり得る。
【0176】
グラフト反応は、疎水性分子と生分解性高分子との間で反応し得る相補的官能基間における好適な反応条件下において実施される。
【0177】
本発明の刺激応答型高分子は、例えば水溶液に高溶解性であり得る。更に、本発明の刺激応答型高分子は、エステル結合の加水分解により水溶液中で容易に分解し得、高生分解性になっている。上述した刺激応答型高分子は、生体適合性となるよう設計され得る。すなわち、ポリ(アミノエステル)又はポリ(アミドアミン)主鎖は、低細胞毒性であり、刺激応答型ペンダント基及び存在し得る架橋基又は疎水性ペンダント基の適切な選択により、刺激応答型ポリ(アミノエステル)又はポリ(アミドアミン)は非毒性の副生成物に分解し得る。
【0178】
生分解性及び生体適合性のために、生分解性高分子は、薬物、タンパク質及びDNAなどの生物活性剤を細胞へ送達する優れたベクターとして、また、再生医療における優れた骨格として有用である。例えば、刺激応答性高分子を用いて形成されるヒドロゲルは、再生医療の適用において、組織増殖のための骨格又はサポートとして使用され得る。
【0179】
生物活性剤を送達するために、刺激応答型生分解性高分子は、送達される特定試薬と接触し複合体を形成する。
【0180】
生物活性剤が親水性、もしくは親水性領域を有する場合には、静電気又は水素結合相互反応を介して刺激応答型高分子の荷電又は親水性領域と結びつき得る。核酸及びタンパク質などの生物活性剤は、細胞又は有機的組織体への送達のために刺激応答型高分子に共有結合し得る。
【0181】
生物活性剤が疎水性、もしくは疎水性領域を有する場合には、刺激応答性試薬を用いて形成される高分子ミセルの内側コア内にカプセル化され封入される。ミセルは、水溶液中に、カプセル化により封入される生物活性剤と共に両親媒性刺激応答型生分解性高分子を分散させることにより形成され得る。両親媒性高分子は、自己アセンブルしてミセルを形成し、疎水性生物活性剤を分散内に含む場合には、内側コア内に疎水性生物活性剤を包含し得る。
【0182】
ミセルは、刺激応答型高分子から形成され得るので、生物活性剤と共に非膨張状態において対象まで送達されることができ、対象まで送達されると、高分子の膨張を引き起こす刺激に曝され得、このようにして、対象である身体内の適切な部位における生物活性剤の放出を促進する。
【0183】
あるいは、生物活性剤は、架橋刺激応答型生分解性高分子から形成されるヒドロゲル内に包含され得る。生物活性剤は、ヒドロゲル内に包含され、対象である身体まで送達される。送達された後、ヒドロゲルは、例えばヒドロゲルを膨張させることによりヒドロゲルから生物活性剤の放出を引き起こす刺激に曝され得る。
【0184】
刺激応答型生分解性高分子を用いて送達され得る生物活性剤は、治療薬、診断用薬又は予防薬であり得る。試薬は、例えば、小分子、有機金属化合物、核酸、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド金属、同位体で標識された化学化合物、薬物、ワクチン、免疫薬などであってよい。試薬は、単一体又は化合物、もしくは独立体と化合物の組み合わせとして記載され得る。
【0185】
一形態において、生物活性剤は、臨床的に有用な薬物など、薬剤活性を有する化合物である。好適な薬物には、限定するものではないが、抗生物質製剤、抗ウイルス薬、麻酔薬、ステロイド薬、抗炎症薬、抗腫瘍薬、抗原性薬剤、ワクチン、抗体、充血除去剤、降圧剤、鎮静剤、避妊薬、黄体ホルモン薬、抗コリン剤、鎮痛剤、抗うつ剤、抗精神病薬、利尿薬、心血管作用薬、血管作用薬、非ステロイド性抗炎症薬、又は栄養剤が含まれる。
【0186】
送達される生物活性剤は、診断又はスクリーニングにおいて使用される試薬であってもよい。刺激応答型ポリ(アミノエステル)によりインビボにおいて送達され得る診断用薬には、気体、金属、ポジトロン放出断層撮影(PET)、コンピューター断層撮影(CAT)、X線、蛍光透視、磁気共鳴影像法(MRI)において使用される市販の造影剤(imaging agent)、並びに造影剤(contrast agent)が含まれる。MRIにおいて造影剤として使用するのに好適な物質例としては、ガドリニウムキレート、並びに、鉄、マグネシウム、マンガン、銅、及びクロム、もしくはこれらのキレートが挙げられる。CAT及びX線画像に有用な物質例としては、ヨード系物質が挙げられる。
【0187】
本発明の生分解性高分子により送達され得る予防薬には、限定するものではないが、抗生物質、栄養剤及びワクチンが含まれる。ワクチンは、分離したタンパク質又はペプチド、不活性生物及びウイルス、失活生物及びウイルス、遺伝子組み換え生物又はウイルス、及び細胞抽出物を含有し得る。
【0188】
一形態において、刺激応答型生分解性高分子により送達される生物活性剤は、ポリヌクレオチドである。ポリヌクレオチドは、いずれの核酸であってもよく、限定するものではないが、RNA及びDNAを含む。ポリヌクレオチドは、いかなるサイズ及び配列であってもよく、単鎖であっても二本鎖であってもよい。ポリヌクレオチドは、例えば、1000以上の塩基対長であってもよく、さらに10000超の塩基対長であってもよい。多くの場合において、ポリヌクレオチドは使用前に精製され得、実質的に不純物質がない。すなわち、ポリヌクレオチドは、好ましくは純度が約50%超であり、より好ましくは純度が約75%超であり、特に好ましくは純度が約95%超である。ポリヌクレオチドは、当該分野で公知のいずれの手段によっても得ることができる。特に、ポリヌクレオチドは、組換え技術を用いて設計することができる。あるいは、もしくは更に、ポリヌクレオチドは、自然源から得ることができ、事実上一般的に見出される汚染成分から精製され得る。もしくは、ポリヌクレオチドは、実験室で化学的に合成することができる。例えば、ポリヌクレオチドは、標準固相化学を用いて合成される。ポリヌクレオチドは、例えばポリヌクレオチドの安定性を高めるために、化学的又は生物学的手法により変成されえる。ポリヌクレオチドの変性方法としては、メチル化、リン酸化反応、末端キャッピングなどが挙げられる。ポリヌクレオチドの誘導体もまた、本発明において使用することができる。これらの誘導体には、ポリヌクレオチドの塩基、糖、および/またはリン酸塩結合が含まれる。
【0189】
一形態において、生分解性高分子薬物複合体は、ポリヌクレオチド又はその塩と本発明の生分解性高分子との接触を介して形成される。この目的のために、生分解性高分子は、好ましくは負の電荷を帯びたポリヌクレオチドと静電気的に相互作用するために少なくとも部分的にプロトン化される。生分解性高分子は、例えば、生分解性高分子中に存在する少なくとも第二級アミンをプロトン化するのに好適なpHの水溶液中にポリ(アミノエステル)又はポリ(アミドアミン)を可溶化させることにより可溶化され得る。生分解性高分子−ポリヌクレオチド複合体は、細胞にポリヌクレオチドを送達するために後に使用され得るナノ粒子を形成し得る。生分解性高分子−ポリヌクレオチド複合体は、送達及び取り込み工程の間における分解を少なくとも部分的に抑制するためにポリヌクレオチドを保護するために使用され得る。ポリヌクレオチドの骨格の電荷を中和することにより、中性の又はわずかに正に帯電した生分解性高分子−ポリヌクレオチド複合体は疎水性細胞膜をより容易に通過し得る。
【0190】
様々な形態において、本発明の生分解性高分子−薬物複合体は、様々な病気を予防又は治療するために医薬組成物又は薬剤中に治療的に使用され得る。本発明は、薬物療法に相当する方法を提供し、該方法では、刺激応答型生分解性高分子−生物活性剤複合体の薬用量が、薬学的に許容し得る製剤において、例えばそれを必要とする患者又は対象に投与される。したがって、本発明はまた、刺激応答型生分解性高分子と複合化された生物活性化合物、及び薬学的に許容し得る賦形剤又は担体を含有する医薬組成物を提供する。該医薬組成物は、生理的に許容し得るpHにおいて水溶液に溶解性であり得る。
【0191】
目的とする投与方法によって、医薬組成物の形態は、固体、半固体、又は液体の投薬形態であり得、例えば、タブレット、坐薬、錠剤、カプセル、粉末、液体、懸濁液、ローション、クリーム、ゲル等であり、正確な用量の単一投与に好適な単位用量におけるものであることが好ましい。上記で指摘したように、組成物は、薬学的に許容可能な単体との組合せにおいて選択される有効量の薬物を含み得、更に、他の薬剤、医薬品、単体、補助剤、希釈剤等を含み得る。
【0192】
インビボにおける投与は、非経口的投与により行われ得、例えば、標的細胞を有する細胞又は臓器を供給する血管を介しての局所かん流を含む静脈注射により行われる。投与の他の手段としては、エアロゾルの吸入、皮下注射、腹腔内投与、筋肉注射、例えば後に対象に移植される臓器への移植のために調製された骨髄細胞中への直接的なトランスフェクションが挙げられる。更に、投与方法としては、特に複合体がカプセル化されている場合の経口投与、又は、特に複合体が坐薬形態である場合の直腸投与が挙げられる。
【0193】
「治療的な有効量」とは、必要な用量及び期間において、所望の治療効果を達成するための有効な量をいう。特定の薬剤の治療的な有効量は、いずれも、病状、年齢、性別、個人の体重、及び、個人において所望される反応を引き出すための化合物の性能などの要素により変化し得る。用法・用量は、最適の治療反応を提供するために調整され得る。治療的な有効量はまた、治療的に有益な効果が化合物の有毒又は有害な影響を上回る。「予防的な有効量」とは、必要な用量及び期間において、病気の発現又は進行速度を抑制又は妨げるような所望の予防効果を達成するための有効な量をいう。予防的な有効量は、治療的な有効量に関して上記した通りに決定され得る。特定の対象のために、特定の用法・用量が、個人の必要性及び組成物の投与を施す、又は管理する当業者による専門家としての判断に従い、長い時間をかけて調整され得る。
【0194】
本発明において使用される薬学的に許容し得る担体又は賦形剤には、生理的に適合するいかなるすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌薬、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。一形態において、担体は、非経口的投与において好適である。あるいは、担体は、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉投与、舌下投与又は経口投与に好適であり得る。薬学的に許容し得る担体には、無菌注射溶液又は分散物の即時調整のための無菌水溶液又は分散物及び無菌パウダーが含まれる。このような薬学的に許容し得る担体又は賦形剤の薬学的な活性物質のための使用は、当該分野において周知である。従来よりの薬学的に許容可能な担体及び賦形剤が活性化合物と不適合である場合を除き、本発明の医薬組成物におけるその使用は意図されている。補助的な活性化合物もまた、組成物中に含有され得る。
【0195】
医薬組成物は、典型的に、製造及び貯蔵条件下において無菌且つ安定していなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、凍結乾燥粉末、吹き付け乾燥粉末、又は高い薬物濃度に好適な他の秩序構造として処方され得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの好適な混合物を含む溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散物の場合には所望される粒子サイズの維持、界面活性剤の使用により、維持することができる。多くの場合、組成物中に等張剤を含めることが好ましく、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、又は塩化ナトリウムが挙げられる。注射組成物の長期に及ぶ吸収は、該組成物中に、例えばモノステアレート塩およびゼラチンのような吸収を遅らせる薬物を含有させることによりもたらされ得る。さらに、ポリ(アミノエステル)−薬物複合体は、徐放製剤、例えば、持続放出高分子を含有する組成物において投与され得る。活性化合物は、インプラント及びマイクロカプセル化された送達システムを含む放出制御調製物などのように、化合物を急速な放出から保護する担体と共に調製され得る。この目的のために、生分解性、生体適合性高分子が使用され得、限定するものではないが、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸、及びポリ乳酸、ポリグリコール酸コポリマー(PLG)が含まれる。かかる製剤の製造方法の多くが特許され、あるいは当該分野において当業者に一般的に知られている。
【0196】
無菌注射溶液は、ポリ(アミノエステル)−、又はポリ(アミドアミン)−薬物複合体を、上記に列挙した成分の1種又は組み合わせと共に適切な溶媒中に所望される量において含めることにより製造され得る。概して、分散物は、基本的な分散媒、及び上記に列挙した成分から選択される所望される他の成分を含む無菌のビヒクル中に、活性成分を含めることにより調製される。無菌注射溶液の調製のための無菌粉末において、好ましい調製方法は、活性成分及び、更に付加的な所望成分の粉末を、予め除菌したそれらの溶液から真空乾燥、凍結乾燥及び吹き付け乾燥により得る方法である。本発明の他の側面により、生分解性高分子−薬物複合体は、生分解性高分子−薬物複合体の溶解度を高める1又は2以上の付加的化合物と共に調製され得る。
【0197】
本発明の他の側面により、刺激応答型生分解性高分子−生物活性剤複合体を含有する医薬組成物が、様々な病気の予防及び/又は治療などの治療上の使用のための生分解性高分子−薬物複合体の使用上の取扱注意書を更に備える容器又は商業包装中に提供され得る。
【0198】
したがって、本発明は、更に、刺激応答型生分解性高分子−生物活性剤複合体、又は上記組成物と、関連疾患の予防及び/又は治療のための取扱注意書を含む商業包装、及び/又は包装又は容器を提供する。
【0199】
本開示において使用される「含む」又は「含んでいる」なる用語は、限定されない意味を表す。したがって、特定要素又は特徴を、他の特定要素又は特徴を除外することなく、包含していることを表す。
本発明を、以下の非限定的実施例により更に説明する。
【実施例】
【0200】
材料及び試薬:
1−(2−アミノエチル)ピペラジン(AEPZ)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(Mn=258)、N−イソプロピルアクリル−アミド(NIPAAm)、1,6−ジヨードへキサン(DIH)、及びコレステリルクロロホルメート(CEC)をアルドリッチ(米国ウィスコンシン州ミルウォーキー)から購入し、更に精製することなく使用した。
溶媒を含む他のすべての材料は、入荷したまま、すなわち、更に精製することなく使用した。
【0201】
一般的性質:
溶媒としてCDCl3及びD2Oを用い、Bruker DRX−400スペクトロメーターにおいて1H−NMR研究を行った。ポリ(エチレンオキシド)標準に対し0.5ml/分の流速において、溶離剤として0.5M酢酸/0.5M酢酸ナトリウムを用い、連続した二つのカラム(Waters ULTRAHYDROGEL(登録商標)250、200)と、Waters410屈折率検出器を有するWaters2690装置において、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を使用した。室温で、Shimazu2501PC スペクトロメーターにおいて、紫外・可視光スペクトルを得た。参考試料は、純粋な脱イオン水又は1x PBSバッファーであった。光源としてキセノンランプを有するPerkin−Elmer LS 50Bフォトルミネッセンススペクトロメーターにおいて蛍光測定を実施した。
【0202】
実施例1:直鎖状ポリ(アミノエステル)ポリ(PEG258DA−AEPZ)の合成及び特性
AEPZ(11.6mmol)を、室温においてジメチルスルホキシド(DMSO)25mLに溶解した。PEG258DA(11.6mmol)を、攪拌しながら溶液に滴下して加え、次いで5mLのDMSOを加えた。混合物を、室温で約48時間攪拌した。0.2gのN−メチルピペラジン(NMP)を加え、端部ビニル基をシールするために2時間攪拌し続けた。強く攪拌しながら200mLのジエチルエーテルを用いて反応物から生成物を沈殿させた。高分子を収集し、クロロホルム溶液からジエチルエーテルへの再沈殿により精製し、真空下、50℃において24時間乾燥した。
【0203】
4.71の広い分子量分布インデックスを有する9900g/molの平均分子量の水溶性ポリ(アミノエステル)を得た。
【0204】
実施例2:刺激応答型高分子ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAmの合成及び特性
100mLの丸底フラスコ中の、30mLのDMSOに対するポリ(PEG258DA−AEPZ)(11.6mmol)の溶液中に、NIPAAm(23.2又は17.4mmol)を加えた。反応物を、1週間、80℃でアルゴン保護下においた。その後、溶液を500mLのジエチルエーテル中に沈殿させ、高分子を収集し、クロロホルム溶液(10mL)から80mLのヘキサンと20mLのトルエンを含有する混合溶液中への50℃での再沈殿により精製し、真空下、50℃において24時間乾燥した。
【0205】
反応物は、NIPPmの異なるグラフト度を生じた。図2に示すように、特長的な相対ピークの比からグラフト度を決定するために、1H−NMRスペクトロスコピーを行った。図2に見られるように、NIPAAmのイソプロピル基に帰属する2種類の水素があり、各々、4.0ppm(1H, CH(CH3)2)及び1.1ppm(6H, CH(CH3)2)の位置にピークがある。また、ポリ(アミノエステル)の一つのエステルの特徴的なピークが4.2ppm(4H, COOCH2CH2-)に見られる。
【0206】
したがって、NIPAAmのグラフト度は、式1により決定され得る。
GDNIPAA=2I1.1/3I4.2*100%, 又は 4I4.0/I4.2*100% 式1
図2A及び2Bに示されるように、NIPAAmとポリ(PEG258DA−AEPZ)を、モル比が2:1及び1.5:1において、1週間80℃にて反応させた後のNIPAAmのグラフト度は、各々、約100%と46%であった。
【0207】
得られたポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAmについて、分解性を試験した。図3は、水溶液中のポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46の1H−NMRスペクトルを示す。エステル基の加水分解時に、ピークは、約4.2ppmから約3.6ppmへ、エステル基に隣接するα炭素に付加したプロトンに帰した。したがって、加水分解度は、二つのピークの強度比、I3.6/(I3.6 +I4.2)における変化によりモニターされ得る。これと比較し、直鎖状ポリ(PEG258DA−AEPZ)及びポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm1.0についても分解性について試験した。3つの高分子の全加水分解プロファイルを図4に示す。高分子はすべて、NIPAAmのグラフト度とは独立して同様の加水分解プロファイルを示し、これはNIPAAmとポリ(PEG258DA−AEPZ)の親水度が同程度であるためかもしれない。
【0208】
実施例3:刺激応答型刺激分解性高分子ポリ(BAC/MBA−AEPZ)−g−NIPAAmの合成及び特性
まず、骨格中の第二級アミンを含む直鎖状ポリ(BAC/MBA−AEPZ)を製造した。N,N−ビス(アクリロイル)シスタミン(BAC、1.915mmol)及びN,N−メチレンビスアクリルアミド(MBA、1.915mmol)を、8mLのメタノールと2mLの純水の混合溶媒中に室温で溶解した。AEPZ(3.83mmol)を攪拌しながら溶液に滴下して加え、次いで、2mLのメタノールを加えた。混合物を50℃において約48時間攪拌した。0.1gのN−メチルピペラジン(NMP)を加え、端部ビニル基をシールするために2時間攪拌し続けた。生成物を、強く攪拌しながら冷却アセトン100mLを用いて反応物から沈殿させた。高分子を収集し、メタノール溶液から冷却アセトンへの再沈殿により精製し、次いで真空下、50℃において24時間乾燥した。
【0209】
25mLの丸底フラスコ中の、10mLのメタノール及び2mLの純水の混合溶媒に対するポリ(BAC/MBA−AEPZ)(3.83mmol)の溶液中に、NIPAAm(7.66mmol)を加えた。反応物を、6日間、50℃でアルゴン保護下においた。その後、溶液を100mLの冷却アセトン中に沈殿させ、高分子を収集し、メタノール溶液(10mL)から冷却アセトンへの再沈殿により精製し、真空下、50℃において24時間乾燥した。
【0210】
反応物は、NIPPmの異なるグラフト度を生じた。図5に示すように、特長的な相対ピークの比からグラフト度を決定するために、1H−NMRスペクトロスコピーを行った。図5に見られるように、NIPAAmのイソプロピル基に帰属する2種類の水素があり、各々、3.8ppm(1H, CH(CH3)2)及び1.1ppm(6H, CH(CH3)2)の位置にピークがあり、また、4.4ppm(2H, CONHCH2NHCO)及び3.4ppm(4H, CONHCH2CH2S-)にあるピークに示されるように、MBA及びBACの繰返し単位における二つのアミドの特徴的なピークがある。
【0211】
したがって、BACとMBAのモル比がn:mである場合におけるNIPAAmのグラフト度は、式2により決定され得る。
GDNIPAAm = (n/(n+m))*(2*I1.1)/(3*I3.4) 式2
図5に示されるように、2倍モルNIPAAmとポリ(BAC/MBA−AEPZ)が、6日間50℃にて反応させた後のNIPAAmのグラフト度は、約70%であった。
【0212】
実施例4:刺激応答型高分子のLCST分析
ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm、ポリ(BDA−AEPZ)−g−NIPAAm、及びポリ(BAC/MBA−AEPZ)−g−NIPAAm(1w/v%)の溶液を、1x PBSバッファー(pH=7.4)、0.1MのNaAC/HACバッファー(pH5)及びクエン酸/水酸化ナトリウム溶液/塩化ナトリウムバッファー(pH3)中で調製した。可視光(λ=500nm)の透過率は、25〜45℃の溶液温度の関数として記録された。各実験のスタート時において、分光光度計は、純粋PBSバッファー溶液で測定された。透過率−温度のプロットが得られると、LCSTは、曲線の初期区切り点で判断された。
【0213】
図6に示されるように、NIPAAmのグラフト度100%及び46%は、ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAmのLCSTを、各々、33℃及び36℃にするが、NIPAAmのグラフト度15%においては、LCSTが欠失している。図7に示されるように、ポリ(BDA−AEPZ)−g−NIPAAm0.6は、pH7、5、3において各々30.5、31.0、34.5℃のLCSTを有する。図8に示されるように、ポリ(BAC0.5/MBA0.5−AEPZ)−g−NIPAAm0.7、ポリ(BAC0.4/MBA0.6−AEPZ)−g−NIPAAm0.76、及びポリ(BAC0.33/MBA0.67−AEPZ)−g−NIPAAm0.8は、pH7において、各々34.5、42.0、52.5℃のLCSTを有する。
【0214】
実施例5:刺激応答型ヒドロゲルの製造
0.17gの1,6−ジヨードヘキサン(DIH)を、トルエン10mL中の0.5gのポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm1.0溶液に加えた。混合物をアルゴン保護下において還流した。二日後、架橋したヒドロゲルポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm−c−DIHを得た。残渣DIHを除去するためにトルエンで3回洗浄し、真空下において50℃で24時間乾燥した。
【0215】
実施例6:両親媒性刺激応答型高分子の合成
0.5gのポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46を10mLの無水CHCl3に溶解した。0.5gのコレステリルクロロホルメート(CEC)及び0.18mLのトリエチレンアミン(TEA)を溶液に加え、アルゴン下において2日間室温にて攪拌した。反応後、溶液を、100mLのジエチルエーテル中に強く攪拌しながら沈殿させた。高分子を収集し、クロロホルム溶液からジエチルエーテルへの再沈殿により精製し、次いで真空下で50℃において乾燥した。
【0216】
図11は、ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm−CECの1H−NMRスペクトロスコピーであり、0.6ppm(シグナルg)、4.5ppm(シグナルe)、5.4ppm(シグナルf)におけるCECの特徴的ピークを示す。ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm−CECにおけるCECのグラフト度は、式3に示されるように特徴的な相対ピークの比から決定された。
【0217】
GDCEC = 4I5.4/I4.2*100% 式3
したがって、CECのグラフト度は、図11に基づき48%において計算された、
実施例7:ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46−CEC0.48の臨界ミセル濃度(CMC)の決定
ピレン溶液のアリコート(10μg/mLアセトン中)を4mLのスクリュー瓶に加え、アセトンを蒸発させた。次いで、0.1〜200mLのポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46−CEC0.48溶液の4mLを、ピレン残基を含む瓶に加え、これによりすべての溶液は、0.1μg/mLを超えるピレン濃度を有する。LS50Bルミネッセンススペクトロメーター(Perkin Elmer、米国)を用いて蛍光スペクトルを得る前に、溶液を室温で一晩おいて平衡にさせた。
【0218】
励起スペクトル(300〜360nm)を395nmの発光波長で記録した。励起及び発光バンド幅は3nmとした。励起スペクトルの338nmと333nmにおけるピーク強度の比(I338/I333)は、高分子濃度の関数として分析した。そのCMC値は、図12に示すように、変曲における曲線の接線と、低濃度における点を通る水平接線との交点から3.1mg/Lとなった。
【0219】
実施例8:ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46−CEC0.48のLCST分析
ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46−CEC0.48の溶液(1w/v%)を、1x PBSバッファー中でpH7.4において調製した。可視光(λ=500nm)の透過率は、30〜45℃の溶液温度の関数として記録された。各実験のスタート時において、分光光度計は、純粋PBSバッファー溶液で測定された。透過率−温度のプロットが得られると、LCSTは、曲線の初期区切り点で判断された。
【0220】
図13に示されるように、ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46−CEC0.48においても、ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46と同様に、36.5℃のLCSTを示す。しかしながら、LCSTを超える透過率は、両親媒性ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46−CEC0.48のために急激には減少せず、これは高分子粒子の急速な凝集を阻止する水溶液中のミセルの形成に起因する。
【0221】
当業者であれば理解できるように、本開示に記載の具体的な形態に対する種々の変更が可能である。本発明では、そのようなすべての変更が特許請求の範囲に規定される本発明の範囲内に包含されることを意図している。
【0222】
本発明の単なる一例として、図面において本発明の形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0223】
【図1】図1は、ジアミンモノマーをビス(アクリレートエステル)と反応させ、熱応答性基をグラフトすることにより形成し得る本発明の刺激応答型高分子の二つの可能な構造の略図である。
【図2】図2は、N−アミノエチルピペリジン(AEPZ)及びポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(Mn=258)(PEG258DA)を反応させ、次いで直鎖状ポリ(PEG258DA−AEPZ)をN−イソプロピルアクリルアミドと反応させることにより形成されるポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAmの拡大した1H−NMRスペクトルである。Aは、グラフト度100%のNIPAAmであり、Bは、グラフト度46%のNIPAAmである。
【図3】図3は、Aについて2時間、Bについて70時間、水中に保持した後におけるポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46の1H−NMRスペクトルを示す。
【図4】図4は、水中における高分子の加水分解プロファイルである。
【0224】
a)ポリ(PEG258DA−APEZ)、
b)ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46、
c)ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm1.0。
【図5】図5は、N−アミノエチルピペリジン(AEPZ)と、N,N−ビス(アクリロイル)シスタミン(BAC)及びN,N−メチレンビスアクリルアミド(MBA)の混合物とを、AEPZ:BAC:MBAの2:1:1のモル比率において反応させ、次いで直鎖状ポリ(BAC/MBA−AEPZ)をN−イソプロピルアクリルアミドと反応させることにより形成される、NIPAAmの70%グラフト度のポリ(BAC0.5/MBA0.5−AEPZ)−g−NIPAAmの拡大した1H−NMRスペクトルである。
【図6】図6は、ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAmの1%(w/v)水溶液の透過率である。
【0225】
a)NIPPAmのグラフト率:15%、
b)NIPPAmのグラフト率:46%、
c)NIPPAmのグラフト率:100%。
【図7】図7は、N−アミノエチルピペリジン(AEPZ)と1,4−ブタンジオールジアクリレート(BDA)とを反応させ、次いで直鎖状ポリ(BDA−AEPZ)をN−イソプロピルアクリルアミドと異なるpH条件において反応させて形成される、ポリ(BDA−AEPZ)−g−NIPAAm0.6の1%(w/v)水溶液の透過率である。
【0226】
a)pH7、
b)pH5、
c)pH3。
【図8】図8は、a)ポリ(BAC0.5/MBA0.5−AEPZ)−g−NIPAAm0.7、b)ポリ(BAC0.4/MBA0.6−AEPZ)−g−NIPAAm0.76、c)ポリ(BAC0.33/MBA0.67−AEPZ)−g−NIPAAm0.8、の1%(w/v)水溶液の透過率である。
【図9】図9は、熱/pH応答型高分子を、ジアクリレート、ジアクリルアミド及びジブロモ又はジヨード試薬と架橋させることにより形成され得る刺激応答型生分解性ヒドロゲルの三つの可能な構造の略図である。
【図10】図10は、アクリレート及びアクリルアミドを用いたポリ(アミノエステル)骨格中の第二級アミンのマイケル付加、ポリ(アミノエステル)骨格中の第二級アミン及びアシルクロリドのアシル化反応、及びポリ(アミノエステル)骨格中の第二級及び第三級アミンとモノブロモ又はモノヨード試薬のアルキル化又は四級化反応を介し、疎水性基を刺激応答型高分子に導入することにより形成され得る両親媒性刺激応答型高分子の三つの可能な構造の略図である。
【図11】図11は、クロロギ酸コレステリルを用いた第二級アミンのアシル化反応により形成されるポリ(PEG258−AEPZ)−g−NIPAAm0.46−CEC0.48の拡大した1H−NMRスペクトルである。
【図12】図12は、ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46−CEC0.48濃度の関数としてのピレン励起スペクトルからのI338/I333のプロットである。
【図13】図13は、a)ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46−g−CEC0.48の1%(w/v)水溶液中に形成されたミセル水溶液の透過率の温度依存性、及びb)ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46−g−CEC0.48の0.05%(w/v)水溶液中に形成されたミセルのRhにおける温度及びpH効果、を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、生物活性剤の送達を含む生物学的適用に有用な刺激応答型生分解性高分子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
刺激応答性高分子は、例えば、pH、温度又は光などの環境パラメーターにおける小さな外部変化に反応して、物理的又は化学的特性が変化する高分子として規定される。刺激応答型高分子は、刺激感受性高分子、インテリジェントポリマー、スマートポリマー、又は環境敏感性高分子ともいう。
【0003】
刺激応答性高分子は、その医学的応用など、様々な生物学的応用におけるその可能性のために注目が高まっている。刺激応答性高分子は、架橋ヒドロゲル、可逆性ヒドロゲル、ミセル、修飾界面及び共役溶液など、様々な種類のポリマーアセンブリを形成するよう構成されている。治療学、再生医療、生分離技術における送達、もしくはセンサー又は作動装置として、これら高分子の応用が報告されており、当該分野における急速な進歩を示している(非特許文献1、2、特許文献1、2及び3を参照)。
【0004】
刺激に対する応答は、生物系における基本的な作用である。ある種の環境条件は、例えば、低pH及び高温など、身体内における特定箇所に見られる(非特許文献3を参照)。温度及びpHは、生物学的に関連する刺激と同様、比較的便利且つ効果的であることを考慮し、研究は、温度及びpH感受性高分子に焦点をおかれている。
【0005】
従って、pH及び/又は温度感受性高分子は、部位特異的な制御薬物放出を生じさせるために生物学的温度及びpHにおける変化を利用する「上手な」薬物送達システムを用意する際に使用され得る。
【0006】
pHにおける大きな差異は、異なる臓器、組織、及び細胞内コンパートメントにおいて広く存在する。例えば、pHは、胃腸管に沿い、胃内の酸性(pH2)から、腸内のより塩基性(pH5−8)まで変化する。同様に、特定の癌、炎症組織、及び傷害組織では、血液循環のpHにおいて、7.4以上の差異を示す。加えて、pHは、初期エンドソーム内でpH6.0−6.5の範囲から、後期エンドソーム内でpH5.0−6.0の範囲まで下がり、次いで細胞エンドサイトーシスの中でリソソーム内でpH4.5−5.0の範囲まで下がり、これにより様々な細胞コンパートメント内におけるプロトン濃度が大きく変化する。従って、身体内におけるpH変化は、刺激感受性高分子の応答を特定の組織又は細胞コンパートメントに向けられた時に指揮するのに利用され得る。非ウイルス遺伝子療法におけるポリカチオン、標的とする癌における酸性誘発薬物放出システム、及びエンドソーム送達(endosomolytic delivery)におけるポリアニオン及び両性ポリマーは、薬物送達において研究されるある種典型的なpH依存型ポリマーである(非特許文献4を参照)。
【0007】
温度は、調節が比較的容易であり、インビトロ及びインビボの双方に適用可能であることを考慮すると、環境応答性ポリマー系において最も幅広く使用される刺激である。ポリ−N−置換アクリルアミド(例えば、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)
ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)(PEO−PPO−PEO)のような両親媒性バランス系ポリマー、及び、ゼラチン並びにアガロース等のバイオポリマー及び人工ポリペチド(artificial polypetide)は、温度応答型高分子の、ある種代表的グループである(非特許文献5を参照)。
【0008】
PNIPAAmは、一般に研究される刺激応答型高分子である。この高分子は、約32℃の低臨界溶解温度(LCST)以下の水溶液に対して親水性且つ溶解性であり、LCSTを超えると疎水性且つ不溶性となる。しかしながら、PNIPAAmは、生分解性ではなく、故にインビボにおける適用に使用された場合に身体内で蓄積し得る。
【0009】
生物医学的応用に使用される高分子は、通常、生体適合性及び生分解性を必要とする。例えば、薬物送達においては、生体適合性ポリマーは比較的低毒性であり、生分解性ポリマーは、持続性薬物放出を増大し得、薬物の消失後における外科切除の必要性を低減し得る。従って、生体適合性且つ生分解性である刺激応答型ポリマーの更なる開発の必要性が存在する。
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0105001号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0169882号明細書
【特許文献3】国際公開第2004/072258号パンフレット
【非特許文献1】Jeong等、Trends.Biotechnol.、2002、20、305
【非特許文献2】Roy等、Chemistry&Biology、2003、10、1161
【非特許文献3】Qiu等、Adv.Drug.Deliv.Rev.、2001、53、321
【非特許文献4】Schmaljohann、D.Adv.Drug.Deliv.Rev.、2006、58、1655
【非特許文献5】Gil等、Prog.Polym.Sci.、2004、29、1173
【発明の開示】
【0010】
一形態において、生分解性高分子骨格及び該生分解性高分子骨格にペンダントした刺激応答型ペンダント基を含む刺激応答型高分子であって、該生分解性高分子骨格は、ポリ(アミノエステル)又はポリ(アミドアミン)を含み、該ポリ(アミドアミン)は任意に骨格にジスルフィド結合を含む、刺激応答型高分子が提供される。
【0011】
ある態様において、刺激応答型高分子の生分解性高分子骨格には、刺激応答型ペンダント基がペンダントする前に、少なくとも1つの第2級アミン結合及び少なくとも1つの第3級アミン結合が含まれ、最終的な刺激応答型高分子は、少なくとも1つの第2級アミン結合及び少なくとも1つの第3級アミン結合を含み得る。
【0012】
特定の態様において、刺激応答型高分子は、
式I:
【化1】
【0013】
により表されるユニット、及び、
式II:
【化2】
【0014】
により表されるユニット、
から各々独立に選択される1又は2以上のユニットを含み、
任意に、式III:
【化3】
【0015】
式IV:
【化4】
【0016】
式V:
【化5】
【0017】
式VI:
【化6】
【0018】
及び式VII:
【化7】
【0019】
から各々独立に選択される1又は2以上のユニットを含む。
【0020】
式中、
zは、O又はNHであり、
R1、R3及びR8は、各々独立に、水素、ヒドロキシル、ハライド、チオヒドロキシル又はヒドロカルビルであり、
R2は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレンであり、
R5は、
(i)N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレン;もしくは、
(ii)−R6−M−R7−
(式中、R6は、−N(R4)−と結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、
Mは、CH又はNであり、
R7は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−28アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルキニレンである。)であり、
R4は、
(i)ヒドロカルビル、もしくは、
(ii)R5が−R6−M−R7−である時、R4もまたMと結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、かつ、R4、M、R6、及び、R4及びR6が結合した窒素原子は、飽和又は不飽和の4員〜12員の複素環を形成しており、
R9は、
(i)N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレン;もしくは、
(ii)−R11−M−R12−
(式中、R11は、−N(R10)−と結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、
Mは、CH又はNであり、
R12は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−28アルキル;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルケニル;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルキニルである。)であり、
R10は、
(i)ヒドロカルビル、もしくは
(ii)R9が−R11−M−R12−である時、R10もまたMと結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、かつ、R10、M、R11、及び、R9及びR11が結合した窒素原子は、飽和又は不飽和の4員〜12員の複素環を形成している;
但し、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9及びR10は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、又はカルボニル基と共役結合したC=C二重結合を有し得ない。
【0021】
刺激応答型高分子は、pH、光、温度、又はイオン強度に対して応答性であり得る。
刺激応答型ペンダント基は、式X:
【化8】
【0022】
(式中、R8、R9及びR10は、上記に規定した通りである。)
の構造を有し得る。
【0023】
ある態様において、刺激応答基は、反応N−イソプロピルアクリルアミド、N,N’−ジエチルアクリルアミド、2−カルボキシイソプロピルアミド、N−(L)−(1−ヒドロキシメチル)プロピルメタクリルアミド、又はN−アクリロキシル−N’−アルキルピペラジンであり得る。
【0024】
刺激応答型高分子は、さらに疎水性ペンダント基を含み得、該疎水性ペンダント基は、ある態様において、
式XII:
【化9】
【0025】
式XIII:
【化10】
【0026】
又は、式XIV:
【化11】
【0027】
(式中、
xは、O又はNHであり、
R17は、置換された又は非置換のC3−30アルキル、置換された又は非置換のC4−30アルケニル、置換された又は非置換のC4−30アルキニル、置換された又は非置換のC3−8シクロアルキル、置換された又は非置換のC6−18アリールであり、いずれもN、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含み得る。)
の構造を有する。
【0028】
疎水性ペンダント基は、反応4−tert−ブチルシクロへキシルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ジアセトンアクリルアミド、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−(イソブトキシメチル)アクリルアミド、コレステリルクロロホルメート、ナノノイルクロリド、ウンデカノイルクロリド、ラウロイルクロリド、4−ヘプチルベンゾイルクロリド、ミリストイルクロリド、1−ブロモ−2−シクロヘキシルエタン、1−ブロモオクタン、1−アダマンチルブロモメチルケトン、2−ブロモ−2’,5’−ジメチオキシアセトフェノン、1−ブロモ−3,7−ジメチルオクタン、1−ブロモドデカン、1−ブロモオクタン、1−ブロモデカン、1−ブロモオクタデカン、2−(6−ブロモヘキシルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン、1−ヨードアダマンタン、1−ヨードヘキサン、1−ヨードオクタン、1−ヨードデカン、1−ヨードドデカン、又は1−ヨードオクタデカンを含み得る。
【0029】
他の形態において、本明細書に記載の刺激応答型高分子及び架橋基を含む組成物が提供される。
高分子は、式XI:
【化12】
【0030】
(式中、
xは、O又はNHであり、
R13及びR15は、各々独立に、水素、ヒドロキシル、ハライド、チオヒドロキシル、又はヒドロカルビルであり、
R14は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレンである。)
の構造を有する架橋基により架橋され得る。
【0031】
特定の態様において、架橋結合基は、架橋1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,2−エタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2,5−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリ(エチルグリコール)ジアクリレート、エチレンジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート;1,4−ビス(アクリロイル)ピペラジン、N,N’−ビス(アクリロイル)シスタミン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド;1,3−ジブロモ−2−プロパノール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、1,5−ジブロモペンタン、1,6−ジブロモへキサン、1,5−ジヨードペンタン、1,8−ジブロモオクタン、1,6−ジヨードへキサン、又は1,8−ジヨードオクタンを含み得る。
【0032】
他の形態において、本発明により、本明細書に記載の刺激応答型高分子を製造する方法もまた提供される。当該方法は、ポリ(アミノエステル)又はポリ(アミドアミン)を含む生分解性高分子を反応させ、高分子骨格にペンダントした刺激応答型ペンダント基を有する高分子を形成することを含み、ここで、前記ポリ(アミドアミン)は任意に高分子骨格にジスルフィド結合を有する。
【0033】
ある態様において、生分解性高分子は、少なくとも1つの第二級アミン結合及び少なくとも1つの第三級アミン結合を骨格に有する。
【0034】
前記生分解性高分子ユニットと刺激応答型分子ユニットの比率は、約10:1〜約1:4であり得る。
【0035】
本発明の方法は、さらに、高分子骨格にペンダントした刺激応答型ペンダント基を有する生分解性高分子を、架橋分子を用いて架橋することを含み得る。この架橋分子は、ジアクリレート、ジアクリルアミド、又はジブロモ、又はジヨード試薬を含み得る。
【0036】
生分解性高分子ユニットと架橋分子ユニットの比率は、約20:1〜約1:2であり得る。
【0037】
本発明の方法は、さらに、高分子骨格にペンダントした刺激応答型ペンダント基を有する生分解性高分子を、疎水性分子と反応させ、高分子骨格に疎水性ペンダント基をペンダントさせることを含み得る。
【0038】
生分解性高分子ユニットと疎水性分子ユニットの比率は、約20:1〜約1:4であり得る。
【0039】
さらに他の形態において、本明細書に記載の刺激応答型生分解性高分子、又は本明細書記載の組成物、及び生物活性剤を含有する組成物が提供される。この組成物は、ミセル又はヒドロゲルを形成し得る。
【0040】
この生物活性剤は、小分子、有機金属化合物、核酸、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド金属、同位体標識した化合物、薬物、ワクチン、又は免疫薬を含み得る。
【0041】
本発明の他の形態及び特徴は、本発明の特定の態様に係る以下の説明を図面と併せて再検討することにより当業者に明確になるであろう。
【0042】
詳細な説明
本発明は、刺激応答型高分子に関するものである。これら高分子には、生分解性高分子骨格にペンダントした刺激応答型ペンダント基を含む高分子が含まれる。
【0043】
生分解性高分子骨格には、ポリ(アミノエステル)又は、例えば、ジスルフィド結合を有するポリ(アミドアミン)のようなポリ(アミドアミン)が含まれる。
【0044】
ポリ(アミノエステル)は、そのpH感受性、生分解性及び生体適合性のために、薬物ベクターやDAN送達としての使用を含む、生物医学的応用における優れたバイオマテリアル候補である。ジスルフィド結合を有するポリ(アミドアミン)は、安定した刺激応答型高分子の形成、取扱い、及び送達を可能とするが、チオール含有化合物(例えば、グルタチオン)の存在下において生分解性である。さらに、ポリ(アミノエステル)、ポリ(アミドアミン)、及びかかる高分子由来の刺激応答型高分子は、単純且つ効率的な合成方法を用いて容易に製造することができる。
【0045】
このように、本高分子は、生体適合性且つ生分解性であり、刺激応答型ペンダント基により特定の刺激に応答して化学的又は物理的変化を受ける。次いで、刺激応答型高分子は、特定の架橋基又は追加の疎水性ペンダント基を洗濯することにより、ヒドロゲル及びミセルなど、様々な構造に形成され得る。
【0046】
「生分解性」なる用語は、所定の物質が細胞又は有機的組織体内に見出されるような、化学的又は酵素分解機構などによる、自然条件下において破壊又は分解されることができることを意味する。
【0047】
一形態において、生分解性高分子骨格及び刺激応答型ペンダント基を含む刺激応答型高分子が提供される。
【0048】
刺激応答型ペンダント基がペンダントする前の生分解性高分子骨格は、少なくとも、第二級アミンの窒素における反応を介してのペンダント基のペンダントに使用され得る第二級アミン結合を含む。したがって、誘導体化されて刺激応答型になる前の高分子骨格は、骨格に少なくとも一つの第二級アミン結合を有し得、当該第二級アミン結合は、刺激応答型ペンダント基などの適切なペンダント基、又は架橋基との反応に使用され得る。
【0049】
刺激応答型高分子は、刺激応答型ペンダント基及び他のペンダント基、又は架橋基が結合した後でも、その高分子骨格中に少なくとも1つのアミン結合を含み得る。
刺激応答型高分子の高分子骨格は、直鎖状又は分岐鎖状であり得、高分岐も含む。
【0050】
本発明の骨格は、刺激応答型ペンダント基がペンダントする前に、その骨格中に少なくとも1つの第二級アミン結合と少なくとも1つの第三級アミン結合を有するポリ(アミド)アミンを含み得、該ポリ(アミド)アミンは、ジスルフィド結合を含み得る。
【0051】
また、本発明の骨格は、刺激応答型ペンダント基がペンダントする前に、その骨格中に少なくとも1つの第二級アミン結合と少なくとも1つの第三級アミン結合を有するポリ(アミノエステル)を含み得る。
【0052】
好適なポリ(アミノエステル)及びその製造方法が、参照により本明細書に取り込まれる米国特許出願公開第2004/0260115号明細書に記載されている。したがって、ある態様において、該骨格には、ペンダント基による誘導体化の前に、その高分子骨格中に少なくとも1つの第二級アミン結合と少なくとも1つの第三級アミン結合を有する高分子骨格を有するポリ(アミノエステル)化合物が含まれる。
【0053】
他の態様において、ポリ(アミノエステル)骨格には、その高分子骨格中に少なくとも1つの第二級アミン結合と少なくとも1つの第三級アミン結合を有し、ペンダント基による誘導体化の前に末端第一級アミノ基を有しない高分子骨格を有するポリ(アミノエステル)化合物が含まれる。
【0054】
特定の態様において、刺激応答型高分子は、直鎖状ユニットを含む高分子であり得、各々独立に、式I:
【化13】
【0055】
の直鎖状ユニット、及び式II:
【化14】
【0056】
の直鎖状ユニットから選択される。
【0057】
また、刺激応答型高分子は、任意に式III:
【化15】
【0058】
から選択される1又は2以上のユニットを含み得る。
【0059】
さらに、高分子内のすべての構造単位に、必ずしも刺激応答型基が結合しているとは限らず、式IV:
【化16】
【0060】
式V:
【化17】
【0061】
式VI:
【化18】
【0062】
及び式VII:
【化19】
【0063】
から各々独立に選択される1又は2以上のユニットを任意に含み得る。
【0064】
上記式中、
zは、O又はNHである。
R1、R3及びR8は、各々独立に、水素、ヒドロキシル、ハライド、チオヒドロキシル又はヒドロカルビルである。
【0065】
R2は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレンである。
【0066】
R5は、
(i)N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレン;もしくは、
(ii)−R6−M−R7−
(式中、R6は、−N(R4)−と結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、
Mは、CH又はNであり、
R7は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−28アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルキニレンである。)である。
【0067】
R4は、
(i)ヒドロカルビル、もしくは、
(ii)R5が−R6−M−R7−である時、R4もまたMと結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、かつ、R4、M、R6、及び、R4及びR6が結合した窒素原子は、飽和又は不飽和の4員〜12員の複素環を形成している。
【0068】
R9は、
(i)N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレン;もしくは、
(ii)−R11−M−R12−
(式中、R11は、−N(R10)−と結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、
Mは、CH又はNであり、
R12は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−28アルキル;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルケニル;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルキニルである。)である。
【0069】
R10は、
(i)ヒドロカルビル、もしくは
(ii)R9が−R11−M−R12−である時、R10もまたMと結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、かつ、R10、M、R11、及び、R9及びR11が結合した窒素原子は、飽和又は不飽和の4員〜12員の複素環を形成している。
【0070】
但し、上記式において、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9及びR10は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、又はカルボニル基と共役結合したC=C二重結合を有し得ない。
【0071】
このように、上記構造式において、少なくとも1又は2以上のR2、R4又はR5が、ジスルフィド基を含む時、特に骨格がポリ(アミドアミン)を含む場合には、高分子骨格はジスルフィド結合を含み得る。
【0072】
本発明の特定の形態において、高分子骨格は、上述した式Iの直鎖状ユニット及び式IIの直鎖状ユニットから独立に選択される1〜2000の直鎖状ユニットを含み得、任意に式III〜VIIの1又は2以上のユニットを含む。
【0073】
ある形態において、刺激応答型高分子の形成に使用される高分子骨格は、
高分子骨格がポリ(アミノエステル)であり、高分子骨格内の直鎖状ユニットの含有率が20%〜45%であり、R2がエチレンであるとき、−N(R4)−R5−NH−は、1−(2−アミノエチル)ピペラジニレン、N−エチルエチレンジ−アミニレン、N−メチル−1,3−プロパンジアミニレン、ピペラジニレン、又は4−(アミノメチル)ピペリジニレンではなく、更に、高分子骨格内の直鎖状ユニットの含有率が20%〜45%であり、R2が−(CH2CH2O)nCH2CH2であり、nが5、7又は13であるとき、−N(R4)−R5−NH−は、1−(2−アミノエチル)ピペラジニレン、N−エチルエチレンジアミニル−エン、N−メチル−1,3−プロパンジアミニレン、又は4−(アミノメチル)−ピペリジニレンではない。
【0074】
本開示において、「ヒドロカルビル」なる用語は、1又は2以上のヘテロ原子を含み得る炭化水素基を意味し、限定するものではないが、分岐及び非分岐アルキル、分岐及び非分岐アルケニル、分岐及び非分岐アルキニル、アリール、アルコキシル、カルバモイル、カルボキシルエステル、カルボニルジオキシル、アミド、アルキルチオエーテル、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、シアノ、ウレイド、置換アルカノイル基、環式、環式芳香族、複素環式、及び芳香族複素環基が挙げられ、各々は、分岐及び非分岐アルキル、分岐及び非分岐アルケニル、分岐及び非分岐アルキニル、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、アリール、ウレイド、複素環、芳香族複素環、環式、芳香族環式、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、シアノ、アミド、カルバモイル、カルボン酸、エステル、カルボニル、カルボニルジオキシル、アルキルチオエーテル、及びチオール基からなる群から選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。このように、本開示において、「ヒドロカルビル」なる用語には、ヘテロ原子を介して化合物に結合した炭化水素基(例えば、アルコキシラジカル)が含まれる。
【0075】
したがって、R1、R3、R4、R8及びR10がヒドロカルビルである場合の、これら基の好適な値には、置換された又は非置換のC1−30アルキル、置換された又は非置換のC2−30アルケニル、置換された又は非置換のC2−30アルキニル、置換された又は非置換のC3−8シクロアルキル、置換された又は非置換のC6−18アリールが含まれ、いずれもN、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含み得る。
【0076】
本開示において、刺激応答型高分子における「ユニット」なる用語は、1、2又は3個の共有結合を介して高分子骨格に共有結合した高分子の構造単位をいう。高分子骨格を延長し、特定構造を有するユニットは他の特定構造を有するユニット間で不規則に散りばめられ得るが、高分子に沿って繰り返される単位を表す。当該用語は、式I〜VIIのいずれか一つの構造を有するユニットを含む、高分子中のすべての可能な単位をカバーする総称として用いられる。所定のユニットは、同じ高分子鎖中の、もしくは異なる高分子鎖中の他のユニットと架橋的に共有結合し得こと、さらに、かかる架橋的結合は、高分子骨格を延長するユニット間での骨格共有結合の上記記載に含まれることを意図していないことが理解されよう。
【0077】
本開示において、「直鎖状ユニット」なる用語は、二つの共有結合を介して高分子骨格に共有結合し、それにより実質的に直鎖状の高分子骨格を延長する高分子の構造単位をいう。本発明の直鎖状ユニットは、式I〜VIにより規定される構造を有し得る。
【0078】
本開示において、「分鎖状ユニット」なる用語は、三つの共有結合を介して高分子骨格に共有結合し、それにより高分子骨格を分岐させている高分子の構造単位をいう。本発明の分岐鎖ユニットは式VIIにより規定される構造を有し得る。
【0079】
本開示において、「末端ユニット」なる用語は、高分子鎖の終端又は末端において現れるポリ(アミノエステル)の構造単位をいう。上述したポリ(アミノエステル)は、2又は3以上の末端ユニットを含み得る。本ポリ(アミノエステル)における末端ユニットは、以下の式VIII又は式IXによる構造を有し得る。
【化20】
【0080】
式中、R4及びR5は、式I〜VIIにおける規定と同義である。
【0081】
図1は、ビス(アクリレート)エステルと第二級及び第一級アミノ基を有するジアミンとを反応させポリ(アミノエステル)骨格を形成することにより製造される直鎖状ポリ(アミノエステル)において現れ得る本刺激応答型高分子と結合種の2態様を表す。構造ユニットは、一つの第三級アミン及び一つの第二級アミン結合を介して高分子骨格において結合されている。表示された態様において、末端ユニットは、未反応アミノ基として、元の第二級アミノ基、又は元の第一級アミノ基のいずれかを有することに留意すべきである。
【0082】
高分子骨格は、高分子の終部に末端キャッピングユニットを更に含み得る。好適な末端キャッピング剤には、モルホリン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、及び1−メチル−4−メチルアミノピペリジン、及びベンジル−1−ピペラジンカルボキシレートが含まれる。
【0083】
本明細書において言及したように、「刺激応答型」又は「刺激応答」なる用語は、特定pH、温度、光(特定波長の光を含む)又はイオン強度などの外的刺激に応答して物理的又は化学的特性において変化を受けるペンダント基、化合物又は高分子の特徴を表現又は言及したものである。例えば、化合物の疎水性度または親水性度は、外的刺激の利用に応答して変化し得、化合物の溶解度に変化をもたらし得る。特定のペンダント基、化合物又は高分子は、単一の刺激又は2以上の刺激に対して応答性となり得、異なる刺激に対し、物理的又は化学的特性において異なる応答、変化を示し得る。
【0084】
しがたって、「刺激応答型ペンダント基」は、高分子骨格上にグラフトした場合に、上述した刺激応答性を所有するペンダント基をいい、グラフトした高分子に刺激応答性を付与する。
【0085】
上記の通り、刺激は、pH、温度、光、イオン強度であり得、刺激応答型ペンダント基、化合物、又は高分子は、特定の刺激に曝された時に、物理的又は化学的変化を受け得る。
【0086】
刺激応答型ペンダント基は、いかなる刺激応答型のペンダント基であってもよい。ペンダント基は、刺激応答型、もしくは刺激応答型モノマーのオリゴマーであり得る。
【0087】
ある形態において、刺激応答型ペンダント基は、温度応答型ペンダント基である。ある形態において、刺激応答型ペンダント基は、カプロラクタム、エチレングリコール、又は酸化プロピレンを含む。
【0088】
他の形態において、刺激応答型ペンダント基は、N−置換アクリルアミド基を含む。
刺激応答型ペンダント基がN−置換アクリルアミド基である場合、N−置換アクリルアミド基の置換基は、高分子骨格の第二級アミノ基より求核性が低くなければならず、そのため、置換基は、N−置換アクリルアミド中のビニル基との反応のために骨格中の第二級アミン基を備えない。
【0089】
ある形態において、刺激応答型ペンダント基は、式Xを有し得る。
【化21】
【0090】
R8、R9及びR10は、式I〜VIIにおける規定と同義である。
【0091】
上述したように、刺激応答型ペンダント基は、高分子骨格中の第二級アミノ基との反応を介して生分解性高分子骨格にグラフトし得る。しかしながら、高分子骨格及びグラフト前のペンダント基中に存在する特定の官能基によっては、刺激応答型ペンダント基は、高分子中の第二級アミノ基以外の基を介してペンダントし得る。
【0092】
刺激応答型ペンダント基がグラフトする高分子骨格中の利用可能な部位の飽和は、以下に示すように、グラフト反応の条件を変えることにより変化し得る。したがって、刺激応答型高分子は、グラフトのために利用可能な部位に、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は、少なくとも100%においてグラフトした刺激応答型ペンダント基を含み得る。刺激応答型高分子は、約1%〜約99%のグラフト化刺激応答型ペンダント基を含み得、もしくは、約1%〜約100%グラフト化刺激応答型ペンダント基を含み得る。
【0093】
使用される特定のペンダント基次第では、高分子にグラフトするペンダント基が極度に少なく、刺激応答性の欠失がもたらされ得ることが理解されよう。刺激応答性とそのグラフト度の関係は、日常的に行われる実験室手法により容易に決定することができる。
【0094】
図2は、本刺激応答型高分子の特定形態における、ポリ(アミノエステル)ポリ(PEG258DA−AEPZ)にN−イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)をグラフトさせた産物の1HNMR分光法の結果を示し、得られたポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAmが、グラフト度46%のNIPAAm又はグラフト度100%のNIPAAmのいずれかを有することを示す。
【0095】
高分子の疎水性又は親水性は、高分子の刺激応答性を調節するために調整され得、これにより刺激応答性は、所定の使用に適している。刺激応答性は、高分子中の親水性及び親水性基の比率をシフトさせることにより変化し得る。例えば、生分解性高分子主鎖の親水性/疎水性特性、及びN−置換アクリルアミドペンダント基などの付加ペンダント基の性質及びグラフト度は、刺激応答性を調節するために調整され得る。
【0096】
加えて、温度応答性ではないが、親水性又は疎水性である追加のペンダント基を導入することにより、刺激応答型高分子の刺激応答性に影響を及ぼすことがある。
【0097】
刺激応答型ペンダント基が温度応答性基である態様において、高分子は、高分子溶液が溶解性から不溶性へ相転移する(例えば、臨界温度を超え水溶液に不溶性となる)臨界温度として規定される臨界溶解温度(LCST)がより低くなり得る。LCSTは、日常的に行われる実験室手法を用いて決定することができる。例えば、LCSTは、刺激応答型高分子水溶液の温度関数としての透過率特性のプロットにおける転移点として測定することができ、紫外分光計でモニターされる。ここで、転移点とは、透過率が一定の透過率値(例えば、LCST以下の温度において)から、増加又は減少により変化し始める点、あるいは、逆に、透過率が増加又は減少の透過率値から一定の透過率値へ変化し始める点をいうことが意図されている。例えば、図8を参照することができる。
【0098】
温度応答型高分子のLCSTは、所定の適用に好適なように調製され得る。例えば、LCSTは、高分子が身体内で使用される適用のための身体温度と室温との範囲内となるよう選択することができる。このように、高分子は、身体の外部の一構造と身体内の異構造とを有するよう設計することができる。
【0099】
例えば、グラフトするNIPAAmペンダント基の百分率が変化するポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAmは、異なるLCSTを示す。図6に示すように、高分子ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAmにおけるNIPAAmのグラフト度が100%の高分子と46%の高分子とでは、LCSTが各々33℃及び36℃となる。しかしながら、NIPAAmのグラフト度が15%においては、同じ高分子骨格においてLCSTの損失がみられる。対照的に、主高分子鎖の疎水性度がより高く、NIPAAmのグラフト度が15%であるポリ(BDA−AEPZ)−g−NIPAAmにおいては、LSCTがなお34.5℃に保たれていた。一方、主高分子鎖の親水性度がより高く、NIPAAmのグラフト度が100%であるポリ(PEG575DA−AEPZ)−g−NIPAAmにおいては、LSCTを示さなかった。
【0100】
高分子骨格中のアミノ基のプロトン化によっても主鎖の親水性は増加するので、高分子の親水性/疎水性バランスを調節するために高分子は調整され得、故に刺激応答性に影響を及ぼす。加えて、アミノ基のプロトン化から発生する正電荷は、知覚刺激への暴露が、例えばペンダント基の縮小などの高分子における構造変化に導く場合に、高分子が大粒子を形成する高分子凝集の広がりを抑制又は低減し得る。
【0101】
更なる例において、ポリ(BDA−AEPZ)−g−NIPAAm0.6は、図7に示すように、pH7、5及び3において、各々30.5℃、31.0℃、34.5℃のLCSTを有する。高分子のLCSTは、pH5における骨格アミノ基の部分プロトン化、並びにpH3におけるアミノ基の完全プロトン化の結果として親水性が増加するために、pHが減少するに従い増加する。更に、高分子の凝集の減少は、図7に示すように、pH7における36℃での透過率がわずか1%であるのに対し、pH5及び3における40℃での透過率が89%であるという事実により証明される。
【0102】
高分子は、従来、様々な組成物及び構造に形成され得、例えば、上手な薬物送達システムに使用される刺激応答型高分子において有用な形態であるヒドロゲルが含まれる。
【0103】
ヒドロゲルは、網目構造のある領域では水に膨潤し大量の水を保持し得、一方網目構造の他の領域では化学的又は物理的に連結しあっている三次元(3D)網目構造である。したがって、ヒドロゲルは水で膨潤している場合にもその構造を維持することができる。3D網目構造は、共有結合、水素結合、ファン・デル・ワールス相互作用、又は物理的エンタングルメントを介して架橋親水性高分子により形成され得る(Kamath等、Adv. Drug. Deliv. Rev., 1993, 11, 59)。
【0104】
刺激応答型高分子を用いて製造される刺激応答型ヒドロゲルは、身体に投与された場合における不良環境(例えば、胃中の酵素及び低pHの存在)から薬物又は生物活性剤を保護するために使用され得る。さらに、ヒドロゲルは、その応答の結果、部位特異的薬物放出により、適切な環境刺激に暴露するために使用され得る。
【0105】
刺激応答型ヒドロゲルは、人工筋肉の形成(Kajiwara等, Nature, 1992, 355, 208; Osada等, Nature, 1992, 355, 242)、化学バルブ(Osada等, Chem. Lett., 1985, 9, 1285)、酵素および細胞の固定化(Chen等, Biotechnol. Prog., 1998, 14, 473)、及び、バイオ分離における希薄溶液の濃縮(Park等, Biotechnol. Prog., 1992, 8, 521)など、様々な適用において開発されている。
【0106】
上述した刺激応答型高分子は、高分子骨格の架橋結合によりヒドロゲル構造に構築され、架橋高分子網目を形成し得る。このように、刺激応答型高分子は刺激応答型ヒドロゲルの形態であり得、高分子中の二つの部位を連結する架橋基を含む。ここで、二つの部位には、異なる高分子鎖における部位を含む。
【0107】
架橋基は、1又は2以上の高分子鎖上の2つの部位を、一の高分子骨格上の反応基を介して第二の高分子骨格上の反応基に連結するものであればいかなる架橋基であってもよい。架橋剤により連結される高分子骨格上の各特定反応基は、同じであってもよいし異なっていてもよい。すなわち、高分子骨格と反応する前の架橋基は、高分子上の相補的官能基(complementary functional group)との反応に利用可能な二つの官能基(典型的には、架橋分子の一方の端部)を有する二官能性分子である。刺激応答型ペンダント基への架橋基の結合は、得られるヒドロゲルの刺激応答性に影響を及ぼし得るが、架橋基は、ペンダント基(刺激応答型ペンダント基を含む。)の反応基を介して連結し得る。
【0108】
従来において高分子骨格は第二級アミノ官能基を含むため、架橋基は、1又は2以上の高分子鎖上の第二級アミノ基を介して結合し得る。刺激応答型高分子上のペンダント基のグラフト度が100%であり、ペンダント基が第二級アミノ基において結合している場合に、いずれの架橋基も高分子骨格上の異なる官能基を介して結合し得ることが理解されよう。
【0109】
ある形態において、架橋基は、架橋分子との反応前の各高分子鎖骨格中に存在する第二級アミノ基を介して二つの高分子鎖に結合する。ある形態において、架橋基は、反応ジアクリレート、ジアクリルアミド、もしくはジブロモ又はジヨード試薬である。図9は、典型的なヒドロゲルを示したものである。
【0110】
特定の形態において、架橋基は式XIの構造を有し得る。
【化22】
【0111】
上記式XIにおいて、xは、O又はNHである。
R13及びR15は、独立に、水素、ヒドロキシル、ハライド、チオヒドロキシル又はヒドロカルビルである。
【0112】
R14は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレンである。
【0113】
刺激応答型ヒドロゲルは、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は、少なくとも100%の架橋含有率において含み得、これらは加えられる架橋分子の量及び架橋結合に利用可能な部位の数により決定される。刺激応答型高分子は、約1%〜約99%、もしくは、約1%〜約100%架橋基を含み得る。
【0114】
本刺激応答型高分子は、ヒドロゲル構造への形成に好適であるのと同様に、水溶液中での高分子ミセル組成物への形成に好適な両親媒性分子として設計され得る。
【0115】
高分子ミセルは、水媒体中での高分子の疎水性部分の凝集による両親媒性高分子の凝集により形成され得、水を排除する内側疎水性コアと外側親水性表面を形成する。高分子ミセルは、疎水性コア中にゲスト分子をカプセル化して封入することができるため、生物活性剤の送達に有用である。
【0116】
両親媒性刺激応答型高分子は、架橋基の導入に関する上記と同様の方法で、本発明の刺激応答型高分子中に疎水基を導入することにより得ることができる。すなわち、疎水基は、高分子骨格中の官能基を介して高分子骨格に結合し得、該官能基には、利用可能な第二級アミノ基が含まれる。
【0117】
疎水基は、実際に疎水性であるいずれの疎水基であってもよく、高分子骨格上の相補的官能基と反応する疎水基の官能基を介して高分子骨格に結合する。すなわち、高分子骨格と反応する前の疎水基は、疎水性部分と高分子の相補的官能基との反応に利用可能な官能基を有する単官能分子である。
【0118】
高分子骨格は、従来において第二級アミノ官能基及び第三級アミノ官能基を含むため、疎水基は、高分子鎖上の第二級及び/又は第三級アミノ基を介して結合し得、あるいは、高分子鎖上の異なる官能基において結合し得る。刺激応答型高分子における刺激応答型ペンダント基のグラフト度が100%であり、ペンダント基が第二級アミノ基において結合する場合に、いずれの疎水性ペンダント基も高分子骨格上の異なる官能基を介して結合し得ることが理解されよう。
【0119】
ある形態において、疎水基は、疎水性ペンダント基分子との反応前に骨格中に存在する第二級アミノ基又は第三級アミノ基を介して高分子骨格に結合する。ある形態において、疎水基は、反応疎水性アクリレート、疎水性アクリルアミド、アシルクロリド、もしくはモノブロモ又はモノヨード試薬である。図10は、典型的な両親媒性刺激応答型ポリ(網のエステル)を示したものである。
【0120】
疎水基は、下記の式XII〜XIVに示される構造を有し得る。式XIIにおいて、x=Oがアクリレートであり、x=NHがアクリルアミドである。
【化23】
【0121】
式XII〜XIVにおいて、xは、O又はNHである。
R17は、疎水性ヒドロカルビル基である。R17は、合成疎水基であってもよいし、天然に存在する疎水基であってもよい。R17は、低毒性であり、生体適合性であるよう選択されるべきことは理解されよう。
【0122】
したがって、R17の好適な値には、置換された又は非置換のC3−30アルキル、置換された又は非置換のC4−30アルケニル、置換された又は非置換のC4−30アルキニル、置換された又は非置換のC3−8シクロアルキル、置換された又は非置換のC6−18アリールであり、いずれもN、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含み得る。
【0123】
本発明の両親媒性刺激応答型高分子は、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の疎水含有率において含み得る。刺激応答型高分子は、約1%〜約99%のグラフト化疎水性ペンダント基を含み得、もしくは、約1%〜約100%のグラフト化疎水性ペンダント基を含み得、もしくは、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%のグラフト化疎水性ペンダント基を含み得る。これらは疎水基の結合に利用可能な部位により決定される。
【0124】
上記刺激応答型高分子は、マイケル付加反応など、標準的な化学的手法により容易に製造することができる。本刺激応答型高分子のポリ(アミノエステル)骨格は、ポリ(アミノエステル)の場合には、ビス(アクリレートエステル)モノマーのジアミンモノマーへのマイケル付加、ポリ(アミドアミン)の場合には、ビスアクリルアミドモノマーのジアミンモノマーへのマイケル付加を介して製造することができ、ジアミンモノマーは、一つの第一級アミノ基と一つの第二級アミノ基を有する。刺激応答型ペンダント基が付加する前のポリ(アミノエステル)骨格の好適な製造方法は、参照により本明細書に取り込まれる米国特許出願公開第2004/0260115に記載されている。
【0125】
直鎖状骨格が記載されている場合には、ビス(アクリレートエステル)又はビスアクリルアミド及びジアミンは、およそ等モル量において反応する。
【0126】
特定の形態において、生分解性高分子骨格は、式XVのビス(アクリレートエステル)又はビスアクリルアミドモノマーを用いて形成され得る。
【0127】
式XV:
【化24】
【0128】
式XVにおいて、zは、O又はNHである。R1及びR3は、各々独立に、水素、ヒドロキシル、ハライド、チオヒドロキシル又はヒドロカルビルであり、R2は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレンである。
【0129】
ビス(アクリレートエステル)又はビスアクリルアミドモノマーは、式XVIのジアミンモノマーと反応し得る。
【0130】
式XVI:
【化25】
【0131】
式XVIにおいて、R5は、
(i)N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレン;もしくは、
(ii)−R6−M−R7−
(式中、R6は、−N(R4)−と結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、
Mは、CH又はNであり、
R7は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−28アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルキニレンである。)である。
【0132】
式XVIにおいて、R4は、
(i)ヒドロカルビル、もしくは、
(ii)R5が−R6−M−R7−である時、R4もまたMと結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、かつ、R4、M、R6、及び、R4及びR6が結合した窒素原子は、飽和又は不飽和の4員〜12員の複素環を形成している。
【0133】
但し、式XV及び式XVIにおいて、R1、R2、R3、R4及びR5は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、又はカルボニル基と共役結合したC=C二重結合を有し得ない。ジアミンモノマー及びビス(アクリレートエステル)又はビスアクリルアミドモノマーにおけるR基は、ジアミンの第二級及び第三級アミノ基よりも求核性が低くなければならず、そのためR基は、ビス(アクリレートエステル)又はビスアクリルアミド中のビニル基と反応するアミノ基を備えない。
【0134】
本開示において、「ジアミンモノマー」なる用語は、一つの第二級アミノ基と一つの第一級アミノ基を有する化合物を意味するが、更に1又は2以上の第三級アミノ基を含む化合物を除外するものではない。したがって、本開示において使用する「ジアミンモノマー」なる用語には、一つの第二級アミノ基、一つの第一級アミノ基、および任意に1又は2以上の第三級アミノ基を有する化合物が含まれる。
【0135】
本発明のポリ(アミノエステル)を製造するために用いることができるビス(アクリレートエステル)モノマーには、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,2−エタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2,5−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリ(エチルグリコール)ジアクリレート、エチレンジアクリレート、及び1,3−プロパンジオールジアクリレートが含まれる。
【0136】
本発明のポリ(アミノアミド)を製造するために用いることができるビスアクリルアミドモノマーには、N,N’−ビス(アクリロイル)シスタミン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、1,4−ビス(アクリロイル)ピペラジン、及びN,N’−エチレンビス(アクリルアミド)が含まれる。
【0137】
本発明の生分解性高分子を製造するために用いることができるジアミンモノマーには、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、3−アミノピロリジン、N−エチルエチレンジアミ、N−メチル−1,3−プロパンジアミン、N−イソプロピルエチレンジアミン、N−ヘキシルエチレンジアミン、N−ブチルエチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、及びN,N−ジエチルジ−エチレントリアミンが含まれる。
【0138】
反応は、低温度では反応時間が長くはなるものの、幅広い範囲の温度及び圧力下において実施することができる。例えば、反応は、約−20℃〜約100℃、約−10℃〜約90℃、約0℃〜約80℃、約10℃〜約70℃、又は約20℃〜約50℃の温度において実施することができる。反応は、一定の期間、例えば、10時間〜10日間、18時間〜7日間、24時間〜96時間、又は24時間〜72時間、インキュベートされ得る。
【0139】
反応は、好ましくは、1種の溶媒又は複数種の溶媒混合物の存在下において実施される。本発明の方法において使用することができる溶媒には、限定するものではないが、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、クロロホルム、ジクロロメタン、メチルクロリド、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水、ヘキサン、トルエン、ベンゼン、四塩化炭素、グリム及びジエチルエーテルが含まれる。
【0140】
一形態において、生分解性高分子は、末端キャッピング剤と反応し得る。好適な末端キャッピング剤には、限定するものではないが、モルホリン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、及び1−メチル−4−メチルアミノピペリジン、及びベンジル−1−ピペラジンカルボキシレートが含まれる。
【0141】
生分解性高分子はそのまま使用してもよいし、更なる使用の前に精製してもよい。精製は、沈殿、結晶化、クロマトグラフィー、真空下での乾燥など、公知の技術を用いて行うことができる。例えば、本発明の生分解性高分子は、エーテルを用いて沈殿させ、次いで新しいエーテルで洗浄し、真空下で乾燥することによっても精製することができる。
【0142】
次いで、生分解性高分子骨格は、好適な刺激応答性分子との反応により、上述したように刺激応答型ペンダント基がその骨格上にグラフトする。したがって、刺激応答型ペンダント基は、生分解性高分子骨格上に官能基を介して結合する。
【0143】
ある形態において、刺激応答性分子はN−置換アクリルアミドであり得る。
刺激応答性分子は、式XVIIの構造を有し得る。
【0144】
式XVII:
【化26】
【0145】
上記において、R8は、水素、ヒドロキシル、ハライド、チオヒドロキシル又はヒドロカルビルである。
R9は、
(i)N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;もしくは、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレン;もしくは、
(ii)−R11−M−R12−
(式中、R11は、−N(R10)−と結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、
Mは、CH又はNであり、
R12は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−28アルキル;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルケニル;もしくは、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルキニルである。)である。
【0146】
R10は、
(i)ヒドロカルビル、もしくは
(ii)R9が−R11−M−R12−である時、R10もまたMと結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、かつ、R10、M、R11、及び、R9及びR11が結合した窒素原子は、飽和又は不飽和の4員〜12員の複素環を形成している。
【0147】
但し、上記式XVIIにおいて、R8、R9及びR10は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、又はカルボニル基と共役結合したC=C二重結合を有し得ない。
【0148】
従来より、いくつかのN−置換アクリルアミドモノマーが市販されている。本発明の刺激応答型高分子の製造において使用することができるN−置換アクリルアミドモノマーには、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N’−ジエチルアクリルアミド、2−カルボキシイソプロピルアミド、N−(L)−(1−ヒドロキシメチル)プロピルメタクリルアミド、及びN−アクリロキシル−N’−アルキルピペラジンが含まれる。
【0149】
生分解性高分子と刺激応答性分子の比は、約10:1〜約1:4、もしくは約5:1〜約1:2であり得る。
【0150】
グラフト反応は、刺激応答型ペンダント分子と生分解性高分子との間で反応し得る相補的官能基間での好適な反応条件下において実施される。
【0151】
グラフト反応は、低温度では反応時間が長くはなるものの、幅広い範囲の温度及び圧力下において実施することができる。例えば、反応は、約−20℃〜約150℃の温度において実施することができる。
【0152】
好ましくは、生分解性高分子のグラフト反応は、好適な溶媒の存在下において実施され、溶媒は、特定の生分解性高分子及び刺激応答型ペンダント基分子に基づき選択される。
【0153】
ポリ(アミノエステル)を用いたグラフト反応において、使用し得る溶媒には、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、クロロホルム、ジクロロメタン、塩化メチル、テトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン、及び四塩化炭素が含まれる。
【0154】
ポリ(アミドアミン)のグラフト反応は、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール及び水などの溶媒を用いて実施される。
【0155】
生分解性高分子にグラフトする刺激応答型ペンダント基のグラフト度は、使用する刺激応答性分子の種類や、反応中に存在するそれらの関係量を変えることにより、変更することができる。例えば、刺激応答型モノマーが過剰に存在すると、生分解性高分子中の刺激応答型ペンダント基のグラフト度が増加する傾向にある。更に、生分解性高分子中の第二級アミノ基の低立体障害、反応温度の高温化、反応時間の拡大、及び好適な溶媒の選択は、グラフト反応を促進し、生分解性高分子中の刺激応答型ペンダント基のグラフト度を増大し得る。
【0156】
上述したように、刺激応答型生分解性高分子は、架橋剤を使用し刺激応答型高分子を架橋結合させることによりヒドロゲルに形成することができ、架橋剤には、ジアクリレート、ジアクリルアミド、ジブロモ又はジヨード化合物などの架橋分子が含まれる。
【0157】
上述したように、ヒドロゲルを形成するために、刺激応答型生分解性高分子を好適な架橋分子と反応させることにより、架橋分子をポリ(アミノエステル)骨格と該骨格上の官能基を介して反応させ得る。このように、架橋基は、架橋分子と生分解性高分子骨格上の相補的官能基間の反応を介して結合する。
【0158】
架橋反応は、標準的な化学的手法を用いて実施することができ、当該方法は、架橋分子及び生分解性高分子骨格中の特定官能基に依存し得る。例えば、ジアクリレート又はジアクリルアミドは、マイケル付加により、高分子骨格中の第二級アミノ基と反応し得る。あるいは、骨格中の第二級アミノ基は、ジブロモ又はジヨード試薬を用いてアルキル化され得る。
【0159】
したがって、架橋分子は、式XVIII又はXIXの構造を有し得る。
式XVIII又はXIX:
【化27】
【0160】
xは、O又はNHである。
yは、Br又はIである。
R13及びR15は、独立に、水素、ヒドロキシル、ハライド、チオヒドロキシル又はヒドロカルビルである。
【0161】
従来より、刺激応答型高分子と反応する架橋分子として使用することができるジアクリレートが市販されており、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,2−エタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2,5−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリ(エチルグリコール)ジアクリレート、エチレンジアクリレート、及び1,3−プロパンジオールジアクリレートが挙げられる。
【0162】
同様に、刺激応答型高分子と反応する架橋分子として使用することができるジアクリルアミドが市販されており、1,4−ビス(アクリロイル)ピペラジン、N,N’−ビス(アクリロイル)シスタミン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、及びN,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミドが挙げられる。
【0163】
刺激応答型高分子と反応する架橋分子として使用することができるジブロモ及びジヨード試薬も市販されており、1,3−ジブロモ−2−プロパノール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、1,5−ジブロモペンタン、1,6−ジブロモへキサン、1,5−ジヨードペンタン、1,8−ジブロモオクタン、1,6−ジヨードへキサン、及び1,8−ジヨードオクタンが挙げられる。
【0164】
刺激応答型高分子と架橋分子の比は、約20:1〜約1:2、もしくは約10:1〜1:1であり得る。
【0165】
架橋反応は、架橋分子と生分解性高分子との間で反応し得る相補的官能基間における好適な反応条件下において実施される。
【0166】
刺激応答型生分解性高分子は、また、高分子ミセルを形成するために両親媒性に変性され得る。本発明の両親媒性刺激応答型高分子は、生分解性高分子骨格への疎水基の導入により製造され得る。
【0167】
疎水基の導入方法には、生分解性高分子骨格中の第二級アミンへの疎水性アクリレート又はアクリルアミドのマイケル付加、高分子骨格中の第二級アミンのアクリルクロリドとの求核置換反応、及び、モノブロモ又はモノヨード試薬を用いての生分解性高分子骨格中の第二級及び第三級アミンのアルキル化又は四級化反応が含まれる。
【0168】
疎水性アクリレート又はアクリルアミドは、下記の式XXに示される構造を有し得、式XXにおいてx=Oがアクリレートであり、x=NHがアクリルアミドである。アシルクロリドは、式XXIに示される構造を有し得、モノブロモ又はモノヨード試薬は、式XXIIに示される構造を有し得る。
【化28】
【0169】
式XX、XXI及びXIIにおいて、xは、O又はNHである。
R17は、疎水性ヒドロカルビル基である。R17は、合成疎水基であってもよいし、天然に存在する疎水基であってもよい。R17は、低毒性であり、生体適合性であるよう選択されるべきことは理解されよう。
【0170】
したがって、R17の好適な値には、置換された又は非置換のC3−30アルキル、置換された又は非置換のC4−30アルケニル、置換された又は非置換のC4−30アルキニル、置換された又は非置換のC3−8シクロアルキル、置換された又は非置換のC6−18アリールであり、いずれもN、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含み得る。
【0171】
従来より、本両親媒性刺激応答型ポリ(アミノエステル)における疎水性ペンダント基として使用することができるアクリレートが市販されており、4−tert−ブチルシクロヘキシルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、及びラウリルアクリレートが挙げられる。
【0172】
使用することができるアクリルアミドが市販されており、ジアセトンアクリルアミド、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド、及びN−(イソブトキシメチル)アクリルアミドが挙げられる。
【0173】
使用することができるアシルクロリドが市販されており、コレステリルクロロホルメート、ナノノイルクロリド、ウンデカノイルクロリド、ラウロイルクロリド、4−ヘプチルベンゾイルクロリド、及びミリストイルクロリドが挙げられる。
【0174】
使用することができるモノブロモ及びモノヨード試薬が市販されており、1−ブロモ−2−シクロヘキシルエタン、1−ブロモオクタン、1−アダマンチルブロモメチルケトン、2−ブロモ−2’,5’−ジメチオキシアセトフェノン、1−ブロモ−3,7−ジメチルオクタン、1−ブロモドデカン、1−ブロモオクタン、1−ブロモデカン、1−ブロモオクタデカン、2−(6−ブロモヘキシルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン、1−ヨードアダマンタン、1−ヨードヘキサン、1−ヨードオクタン、1−ヨードデカン、1−ヨードドデカン、又は1−ヨードオクタデカンが挙げられる。
【0175】
刺激応答型高分子と疎水性分子の比は、約20:1〜約1:4、もしくは約10:1〜約1:1であり得る。
【0176】
グラフト反応は、疎水性分子と生分解性高分子との間で反応し得る相補的官能基間における好適な反応条件下において実施される。
【0177】
本発明の刺激応答型高分子は、例えば水溶液に高溶解性であり得る。更に、本発明の刺激応答型高分子は、エステル結合の加水分解により水溶液中で容易に分解し得、高生分解性になっている。上述した刺激応答型高分子は、生体適合性となるよう設計され得る。すなわち、ポリ(アミノエステル)又はポリ(アミドアミン)主鎖は、低細胞毒性であり、刺激応答型ペンダント基及び存在し得る架橋基又は疎水性ペンダント基の適切な選択により、刺激応答型ポリ(アミノエステル)又はポリ(アミドアミン)は非毒性の副生成物に分解し得る。
【0178】
生分解性及び生体適合性のために、生分解性高分子は、薬物、タンパク質及びDNAなどの生物活性剤を細胞へ送達する優れたベクターとして、また、再生医療における優れた骨格として有用である。例えば、刺激応答性高分子を用いて形成されるヒドロゲルは、再生医療の適用において、組織増殖のための骨格又はサポートとして使用され得る。
【0179】
生物活性剤を送達するために、刺激応答型生分解性高分子は、送達される特定試薬と接触し複合体を形成する。
【0180】
生物活性剤が親水性、もしくは親水性領域を有する場合には、静電気又は水素結合相互反応を介して刺激応答型高分子の荷電又は親水性領域と結びつき得る。核酸及びタンパク質などの生物活性剤は、細胞又は有機的組織体への送達のために刺激応答型高分子に共有結合し得る。
【0181】
生物活性剤が疎水性、もしくは疎水性領域を有する場合には、刺激応答性試薬を用いて形成される高分子ミセルの内側コア内にカプセル化され封入される。ミセルは、水溶液中に、カプセル化により封入される生物活性剤と共に両親媒性刺激応答型生分解性高分子を分散させることにより形成され得る。両親媒性高分子は、自己アセンブルしてミセルを形成し、疎水性生物活性剤を分散内に含む場合には、内側コア内に疎水性生物活性剤を包含し得る。
【0182】
ミセルは、刺激応答型高分子から形成され得るので、生物活性剤と共に非膨張状態において対象まで送達されることができ、対象まで送達されると、高分子の膨張を引き起こす刺激に曝され得、このようにして、対象である身体内の適切な部位における生物活性剤の放出を促進する。
【0183】
あるいは、生物活性剤は、架橋刺激応答型生分解性高分子から形成されるヒドロゲル内に包含され得る。生物活性剤は、ヒドロゲル内に包含され、対象である身体まで送達される。送達された後、ヒドロゲルは、例えばヒドロゲルを膨張させることによりヒドロゲルから生物活性剤の放出を引き起こす刺激に曝され得る。
【0184】
刺激応答型生分解性高分子を用いて送達され得る生物活性剤は、治療薬、診断用薬又は予防薬であり得る。試薬は、例えば、小分子、有機金属化合物、核酸、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド金属、同位体で標識された化学化合物、薬物、ワクチン、免疫薬などであってよい。試薬は、単一体又は化合物、もしくは独立体と化合物の組み合わせとして記載され得る。
【0185】
一形態において、生物活性剤は、臨床的に有用な薬物など、薬剤活性を有する化合物である。好適な薬物には、限定するものではないが、抗生物質製剤、抗ウイルス薬、麻酔薬、ステロイド薬、抗炎症薬、抗腫瘍薬、抗原性薬剤、ワクチン、抗体、充血除去剤、降圧剤、鎮静剤、避妊薬、黄体ホルモン薬、抗コリン剤、鎮痛剤、抗うつ剤、抗精神病薬、利尿薬、心血管作用薬、血管作用薬、非ステロイド性抗炎症薬、又は栄養剤が含まれる。
【0186】
送達される生物活性剤は、診断又はスクリーニングにおいて使用される試薬であってもよい。刺激応答型ポリ(アミノエステル)によりインビボにおいて送達され得る診断用薬には、気体、金属、ポジトロン放出断層撮影(PET)、コンピューター断層撮影(CAT)、X線、蛍光透視、磁気共鳴影像法(MRI)において使用される市販の造影剤(imaging agent)、並びに造影剤(contrast agent)が含まれる。MRIにおいて造影剤として使用するのに好適な物質例としては、ガドリニウムキレート、並びに、鉄、マグネシウム、マンガン、銅、及びクロム、もしくはこれらのキレートが挙げられる。CAT及びX線画像に有用な物質例としては、ヨード系物質が挙げられる。
【0187】
本発明の生分解性高分子により送達され得る予防薬には、限定するものではないが、抗生物質、栄養剤及びワクチンが含まれる。ワクチンは、分離したタンパク質又はペプチド、不活性生物及びウイルス、失活生物及びウイルス、遺伝子組み換え生物又はウイルス、及び細胞抽出物を含有し得る。
【0188】
一形態において、刺激応答型生分解性高分子により送達される生物活性剤は、ポリヌクレオチドである。ポリヌクレオチドは、いずれの核酸であってもよく、限定するものではないが、RNA及びDNAを含む。ポリヌクレオチドは、いかなるサイズ及び配列であってもよく、単鎖であっても二本鎖であってもよい。ポリヌクレオチドは、例えば、1000以上の塩基対長であってもよく、さらに10000超の塩基対長であってもよい。多くの場合において、ポリヌクレオチドは使用前に精製され得、実質的に不純物質がない。すなわち、ポリヌクレオチドは、好ましくは純度が約50%超であり、より好ましくは純度が約75%超であり、特に好ましくは純度が約95%超である。ポリヌクレオチドは、当該分野で公知のいずれの手段によっても得ることができる。特に、ポリヌクレオチドは、組換え技術を用いて設計することができる。あるいは、もしくは更に、ポリヌクレオチドは、自然源から得ることができ、事実上一般的に見出される汚染成分から精製され得る。もしくは、ポリヌクレオチドは、実験室で化学的に合成することができる。例えば、ポリヌクレオチドは、標準固相化学を用いて合成される。ポリヌクレオチドは、例えばポリヌクレオチドの安定性を高めるために、化学的又は生物学的手法により変成されえる。ポリヌクレオチドの変性方法としては、メチル化、リン酸化反応、末端キャッピングなどが挙げられる。ポリヌクレオチドの誘導体もまた、本発明において使用することができる。これらの誘導体には、ポリヌクレオチドの塩基、糖、および/またはリン酸塩結合が含まれる。
【0189】
一形態において、生分解性高分子薬物複合体は、ポリヌクレオチド又はその塩と本発明の生分解性高分子との接触を介して形成される。この目的のために、生分解性高分子は、好ましくは負の電荷を帯びたポリヌクレオチドと静電気的に相互作用するために少なくとも部分的にプロトン化される。生分解性高分子は、例えば、生分解性高分子中に存在する少なくとも第二級アミンをプロトン化するのに好適なpHの水溶液中にポリ(アミノエステル)又はポリ(アミドアミン)を可溶化させることにより可溶化され得る。生分解性高分子−ポリヌクレオチド複合体は、細胞にポリヌクレオチドを送達するために後に使用され得るナノ粒子を形成し得る。生分解性高分子−ポリヌクレオチド複合体は、送達及び取り込み工程の間における分解を少なくとも部分的に抑制するためにポリヌクレオチドを保護するために使用され得る。ポリヌクレオチドの骨格の電荷を中和することにより、中性の又はわずかに正に帯電した生分解性高分子−ポリヌクレオチド複合体は疎水性細胞膜をより容易に通過し得る。
【0190】
様々な形態において、本発明の生分解性高分子−薬物複合体は、様々な病気を予防又は治療するために医薬組成物又は薬剤中に治療的に使用され得る。本発明は、薬物療法に相当する方法を提供し、該方法では、刺激応答型生分解性高分子−生物活性剤複合体の薬用量が、薬学的に許容し得る製剤において、例えばそれを必要とする患者又は対象に投与される。したがって、本発明はまた、刺激応答型生分解性高分子と複合化された生物活性化合物、及び薬学的に許容し得る賦形剤又は担体を含有する医薬組成物を提供する。該医薬組成物は、生理的に許容し得るpHにおいて水溶液に溶解性であり得る。
【0191】
目的とする投与方法によって、医薬組成物の形態は、固体、半固体、又は液体の投薬形態であり得、例えば、タブレット、坐薬、錠剤、カプセル、粉末、液体、懸濁液、ローション、クリーム、ゲル等であり、正確な用量の単一投与に好適な単位用量におけるものであることが好ましい。上記で指摘したように、組成物は、薬学的に許容可能な単体との組合せにおいて選択される有効量の薬物を含み得、更に、他の薬剤、医薬品、単体、補助剤、希釈剤等を含み得る。
【0192】
インビボにおける投与は、非経口的投与により行われ得、例えば、標的細胞を有する細胞又は臓器を供給する血管を介しての局所かん流を含む静脈注射により行われる。投与の他の手段としては、エアロゾルの吸入、皮下注射、腹腔内投与、筋肉注射、例えば後に対象に移植される臓器への移植のために調製された骨髄細胞中への直接的なトランスフェクションが挙げられる。更に、投与方法としては、特に複合体がカプセル化されている場合の経口投与、又は、特に複合体が坐薬形態である場合の直腸投与が挙げられる。
【0193】
「治療的な有効量」とは、必要な用量及び期間において、所望の治療効果を達成するための有効な量をいう。特定の薬剤の治療的な有効量は、いずれも、病状、年齢、性別、個人の体重、及び、個人において所望される反応を引き出すための化合物の性能などの要素により変化し得る。用法・用量は、最適の治療反応を提供するために調整され得る。治療的な有効量はまた、治療的に有益な効果が化合物の有毒又は有害な影響を上回る。「予防的な有効量」とは、必要な用量及び期間において、病気の発現又は進行速度を抑制又は妨げるような所望の予防効果を達成するための有効な量をいう。予防的な有効量は、治療的な有効量に関して上記した通りに決定され得る。特定の対象のために、特定の用法・用量が、個人の必要性及び組成物の投与を施す、又は管理する当業者による専門家としての判断に従い、長い時間をかけて調整され得る。
【0194】
本発明において使用される薬学的に許容し得る担体又は賦形剤には、生理的に適合するいかなるすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌薬、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。一形態において、担体は、非経口的投与において好適である。あるいは、担体は、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉投与、舌下投与又は経口投与に好適であり得る。薬学的に許容し得る担体には、無菌注射溶液又は分散物の即時調整のための無菌水溶液又は分散物及び無菌パウダーが含まれる。このような薬学的に許容し得る担体又は賦形剤の薬学的な活性物質のための使用は、当該分野において周知である。従来よりの薬学的に許容可能な担体及び賦形剤が活性化合物と不適合である場合を除き、本発明の医薬組成物におけるその使用は意図されている。補助的な活性化合物もまた、組成物中に含有され得る。
【0195】
医薬組成物は、典型的に、製造及び貯蔵条件下において無菌且つ安定していなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、凍結乾燥粉末、吹き付け乾燥粉末、又は高い薬物濃度に好適な他の秩序構造として処方され得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの好適な混合物を含む溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散物の場合には所望される粒子サイズの維持、界面活性剤の使用により、維持することができる。多くの場合、組成物中に等張剤を含めることが好ましく、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、又は塩化ナトリウムが挙げられる。注射組成物の長期に及ぶ吸収は、該組成物中に、例えばモノステアレート塩およびゼラチンのような吸収を遅らせる薬物を含有させることによりもたらされ得る。さらに、ポリ(アミノエステル)−薬物複合体は、徐放製剤、例えば、持続放出高分子を含有する組成物において投与され得る。活性化合物は、インプラント及びマイクロカプセル化された送達システムを含む放出制御調製物などのように、化合物を急速な放出から保護する担体と共に調製され得る。この目的のために、生分解性、生体適合性高分子が使用され得、限定するものではないが、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸、及びポリ乳酸、ポリグリコール酸コポリマー(PLG)が含まれる。かかる製剤の製造方法の多くが特許され、あるいは当該分野において当業者に一般的に知られている。
【0196】
無菌注射溶液は、ポリ(アミノエステル)−、又はポリ(アミドアミン)−薬物複合体を、上記に列挙した成分の1種又は組み合わせと共に適切な溶媒中に所望される量において含めることにより製造され得る。概して、分散物は、基本的な分散媒、及び上記に列挙した成分から選択される所望される他の成分を含む無菌のビヒクル中に、活性成分を含めることにより調製される。無菌注射溶液の調製のための無菌粉末において、好ましい調製方法は、活性成分及び、更に付加的な所望成分の粉末を、予め除菌したそれらの溶液から真空乾燥、凍結乾燥及び吹き付け乾燥により得る方法である。本発明の他の側面により、生分解性高分子−薬物複合体は、生分解性高分子−薬物複合体の溶解度を高める1又は2以上の付加的化合物と共に調製され得る。
【0197】
本発明の他の側面により、刺激応答型生分解性高分子−生物活性剤複合体を含有する医薬組成物が、様々な病気の予防及び/又は治療などの治療上の使用のための生分解性高分子−薬物複合体の使用上の取扱注意書を更に備える容器又は商業包装中に提供され得る。
【0198】
したがって、本発明は、更に、刺激応答型生分解性高分子−生物活性剤複合体、又は上記組成物と、関連疾患の予防及び/又は治療のための取扱注意書を含む商業包装、及び/又は包装又は容器を提供する。
【0199】
本開示において使用される「含む」又は「含んでいる」なる用語は、限定されない意味を表す。したがって、特定要素又は特徴を、他の特定要素又は特徴を除外することなく、包含していることを表す。
本発明を、以下の非限定的実施例により更に説明する。
【実施例】
【0200】
材料及び試薬:
1−(2−アミノエチル)ピペラジン(AEPZ)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(Mn=258)、N−イソプロピルアクリル−アミド(NIPAAm)、1,6−ジヨードへキサン(DIH)、及びコレステリルクロロホルメート(CEC)をアルドリッチ(米国ウィスコンシン州ミルウォーキー)から購入し、更に精製することなく使用した。
溶媒を含む他のすべての材料は、入荷したまま、すなわち、更に精製することなく使用した。
【0201】
一般的性質:
溶媒としてCDCl3及びD2Oを用い、Bruker DRX−400スペクトロメーターにおいて1H−NMR研究を行った。ポリ(エチレンオキシド)標準に対し0.5ml/分の流速において、溶離剤として0.5M酢酸/0.5M酢酸ナトリウムを用い、連続した二つのカラム(Waters ULTRAHYDROGEL(登録商標)250、200)と、Waters410屈折率検出器を有するWaters2690装置において、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を使用した。室温で、Shimazu2501PC スペクトロメーターにおいて、紫外・可視光スペクトルを得た。参考試料は、純粋な脱イオン水又は1x PBSバッファーであった。光源としてキセノンランプを有するPerkin−Elmer LS 50Bフォトルミネッセンススペクトロメーターにおいて蛍光測定を実施した。
【0202】
実施例1:直鎖状ポリ(アミノエステル)ポリ(PEG258DA−AEPZ)の合成及び特性
AEPZ(11.6mmol)を、室温においてジメチルスルホキシド(DMSO)25mLに溶解した。PEG258DA(11.6mmol)を、攪拌しながら溶液に滴下して加え、次いで5mLのDMSOを加えた。混合物を、室温で約48時間攪拌した。0.2gのN−メチルピペラジン(NMP)を加え、端部ビニル基をシールするために2時間攪拌し続けた。強く攪拌しながら200mLのジエチルエーテルを用いて反応物から生成物を沈殿させた。高分子を収集し、クロロホルム溶液からジエチルエーテルへの再沈殿により精製し、真空下、50℃において24時間乾燥した。
【0203】
4.71の広い分子量分布インデックスを有する9900g/molの平均分子量の水溶性ポリ(アミノエステル)を得た。
【0204】
実施例2:刺激応答型高分子ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAmの合成及び特性
100mLの丸底フラスコ中の、30mLのDMSOに対するポリ(PEG258DA−AEPZ)(11.6mmol)の溶液中に、NIPAAm(23.2又は17.4mmol)を加えた。反応物を、1週間、80℃でアルゴン保護下においた。その後、溶液を500mLのジエチルエーテル中に沈殿させ、高分子を収集し、クロロホルム溶液(10mL)から80mLのヘキサンと20mLのトルエンを含有する混合溶液中への50℃での再沈殿により精製し、真空下、50℃において24時間乾燥した。
【0205】
反応物は、NIPPmの異なるグラフト度を生じた。図2に示すように、特長的な相対ピークの比からグラフト度を決定するために、1H−NMRスペクトロスコピーを行った。図2に見られるように、NIPAAmのイソプロピル基に帰属する2種類の水素があり、各々、4.0ppm(1H, CH(CH3)2)及び1.1ppm(6H, CH(CH3)2)の位置にピークがある。また、ポリ(アミノエステル)の一つのエステルの特徴的なピークが4.2ppm(4H, COOCH2CH2-)に見られる。
【0206】
したがって、NIPAAmのグラフト度は、式1により決定され得る。
GDNIPAA=2I1.1/3I4.2*100%, 又は 4I4.0/I4.2*100% 式1
図2A及び2Bに示されるように、NIPAAmとポリ(PEG258DA−AEPZ)を、モル比が2:1及び1.5:1において、1週間80℃にて反応させた後のNIPAAmのグラフト度は、各々、約100%と46%であった。
【0207】
得られたポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAmについて、分解性を試験した。図3は、水溶液中のポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46の1H−NMRスペクトルを示す。エステル基の加水分解時に、ピークは、約4.2ppmから約3.6ppmへ、エステル基に隣接するα炭素に付加したプロトンに帰した。したがって、加水分解度は、二つのピークの強度比、I3.6/(I3.6 +I4.2)における変化によりモニターされ得る。これと比較し、直鎖状ポリ(PEG258DA−AEPZ)及びポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm1.0についても分解性について試験した。3つの高分子の全加水分解プロファイルを図4に示す。高分子はすべて、NIPAAmのグラフト度とは独立して同様の加水分解プロファイルを示し、これはNIPAAmとポリ(PEG258DA−AEPZ)の親水度が同程度であるためかもしれない。
【0208】
実施例3:刺激応答型刺激分解性高分子ポリ(BAC/MBA−AEPZ)−g−NIPAAmの合成及び特性
まず、骨格中の第二級アミンを含む直鎖状ポリ(BAC/MBA−AEPZ)を製造した。N,N−ビス(アクリロイル)シスタミン(BAC、1.915mmol)及びN,N−メチレンビスアクリルアミド(MBA、1.915mmol)を、8mLのメタノールと2mLの純水の混合溶媒中に室温で溶解した。AEPZ(3.83mmol)を攪拌しながら溶液に滴下して加え、次いで、2mLのメタノールを加えた。混合物を50℃において約48時間攪拌した。0.1gのN−メチルピペラジン(NMP)を加え、端部ビニル基をシールするために2時間攪拌し続けた。生成物を、強く攪拌しながら冷却アセトン100mLを用いて反応物から沈殿させた。高分子を収集し、メタノール溶液から冷却アセトンへの再沈殿により精製し、次いで真空下、50℃において24時間乾燥した。
【0209】
25mLの丸底フラスコ中の、10mLのメタノール及び2mLの純水の混合溶媒に対するポリ(BAC/MBA−AEPZ)(3.83mmol)の溶液中に、NIPAAm(7.66mmol)を加えた。反応物を、6日間、50℃でアルゴン保護下においた。その後、溶液を100mLの冷却アセトン中に沈殿させ、高分子を収集し、メタノール溶液(10mL)から冷却アセトンへの再沈殿により精製し、真空下、50℃において24時間乾燥した。
【0210】
反応物は、NIPPmの異なるグラフト度を生じた。図5に示すように、特長的な相対ピークの比からグラフト度を決定するために、1H−NMRスペクトロスコピーを行った。図5に見られるように、NIPAAmのイソプロピル基に帰属する2種類の水素があり、各々、3.8ppm(1H, CH(CH3)2)及び1.1ppm(6H, CH(CH3)2)の位置にピークがあり、また、4.4ppm(2H, CONHCH2NHCO)及び3.4ppm(4H, CONHCH2CH2S-)にあるピークに示されるように、MBA及びBACの繰返し単位における二つのアミドの特徴的なピークがある。
【0211】
したがって、BACとMBAのモル比がn:mである場合におけるNIPAAmのグラフト度は、式2により決定され得る。
GDNIPAAm = (n/(n+m))*(2*I1.1)/(3*I3.4) 式2
図5に示されるように、2倍モルNIPAAmとポリ(BAC/MBA−AEPZ)が、6日間50℃にて反応させた後のNIPAAmのグラフト度は、約70%であった。
【0212】
実施例4:刺激応答型高分子のLCST分析
ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm、ポリ(BDA−AEPZ)−g−NIPAAm、及びポリ(BAC/MBA−AEPZ)−g−NIPAAm(1w/v%)の溶液を、1x PBSバッファー(pH=7.4)、0.1MのNaAC/HACバッファー(pH5)及びクエン酸/水酸化ナトリウム溶液/塩化ナトリウムバッファー(pH3)中で調製した。可視光(λ=500nm)の透過率は、25〜45℃の溶液温度の関数として記録された。各実験のスタート時において、分光光度計は、純粋PBSバッファー溶液で測定された。透過率−温度のプロットが得られると、LCSTは、曲線の初期区切り点で判断された。
【0213】
図6に示されるように、NIPAAmのグラフト度100%及び46%は、ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAmのLCSTを、各々、33℃及び36℃にするが、NIPAAmのグラフト度15%においては、LCSTが欠失している。図7に示されるように、ポリ(BDA−AEPZ)−g−NIPAAm0.6は、pH7、5、3において各々30.5、31.0、34.5℃のLCSTを有する。図8に示されるように、ポリ(BAC0.5/MBA0.5−AEPZ)−g−NIPAAm0.7、ポリ(BAC0.4/MBA0.6−AEPZ)−g−NIPAAm0.76、及びポリ(BAC0.33/MBA0.67−AEPZ)−g−NIPAAm0.8は、pH7において、各々34.5、42.0、52.5℃のLCSTを有する。
【0214】
実施例5:刺激応答型ヒドロゲルの製造
0.17gの1,6−ジヨードヘキサン(DIH)を、トルエン10mL中の0.5gのポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm1.0溶液に加えた。混合物をアルゴン保護下において還流した。二日後、架橋したヒドロゲルポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm−c−DIHを得た。残渣DIHを除去するためにトルエンで3回洗浄し、真空下において50℃で24時間乾燥した。
【0215】
実施例6:両親媒性刺激応答型高分子の合成
0.5gのポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46を10mLの無水CHCl3に溶解した。0.5gのコレステリルクロロホルメート(CEC)及び0.18mLのトリエチレンアミン(TEA)を溶液に加え、アルゴン下において2日間室温にて攪拌した。反応後、溶液を、100mLのジエチルエーテル中に強く攪拌しながら沈殿させた。高分子を収集し、クロロホルム溶液からジエチルエーテルへの再沈殿により精製し、次いで真空下で50℃において乾燥した。
【0216】
図11は、ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm−CECの1H−NMRスペクトロスコピーであり、0.6ppm(シグナルg)、4.5ppm(シグナルe)、5.4ppm(シグナルf)におけるCECの特徴的ピークを示す。ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm−CECにおけるCECのグラフト度は、式3に示されるように特徴的な相対ピークの比から決定された。
【0217】
GDCEC = 4I5.4/I4.2*100% 式3
したがって、CECのグラフト度は、図11に基づき48%において計算された、
実施例7:ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46−CEC0.48の臨界ミセル濃度(CMC)の決定
ピレン溶液のアリコート(10μg/mLアセトン中)を4mLのスクリュー瓶に加え、アセトンを蒸発させた。次いで、0.1〜200mLのポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46−CEC0.48溶液の4mLを、ピレン残基を含む瓶に加え、これによりすべての溶液は、0.1μg/mLを超えるピレン濃度を有する。LS50Bルミネッセンススペクトロメーター(Perkin Elmer、米国)を用いて蛍光スペクトルを得る前に、溶液を室温で一晩おいて平衡にさせた。
【0218】
励起スペクトル(300〜360nm)を395nmの発光波長で記録した。励起及び発光バンド幅は3nmとした。励起スペクトルの338nmと333nmにおけるピーク強度の比(I338/I333)は、高分子濃度の関数として分析した。そのCMC値は、図12に示すように、変曲における曲線の接線と、低濃度における点を通る水平接線との交点から3.1mg/Lとなった。
【0219】
実施例8:ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46−CEC0.48のLCST分析
ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46−CEC0.48の溶液(1w/v%)を、1x PBSバッファー中でpH7.4において調製した。可視光(λ=500nm)の透過率は、30〜45℃の溶液温度の関数として記録された。各実験のスタート時において、分光光度計は、純粋PBSバッファー溶液で測定された。透過率−温度のプロットが得られると、LCSTは、曲線の初期区切り点で判断された。
【0220】
図13に示されるように、ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46−CEC0.48においても、ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46と同様に、36.5℃のLCSTを示す。しかしながら、LCSTを超える透過率は、両親媒性ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46−CEC0.48のために急激には減少せず、これは高分子粒子の急速な凝集を阻止する水溶液中のミセルの形成に起因する。
【0221】
当業者であれば理解できるように、本開示に記載の具体的な形態に対する種々の変更が可能である。本発明では、そのようなすべての変更が特許請求の範囲に規定される本発明の範囲内に包含されることを意図している。
【0222】
本発明の単なる一例として、図面において本発明の形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0223】
【図1】図1は、ジアミンモノマーをビス(アクリレートエステル)と反応させ、熱応答性基をグラフトすることにより形成し得る本発明の刺激応答型高分子の二つの可能な構造の略図である。
【図2】図2は、N−アミノエチルピペリジン(AEPZ)及びポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(Mn=258)(PEG258DA)を反応させ、次いで直鎖状ポリ(PEG258DA−AEPZ)をN−イソプロピルアクリルアミドと反応させることにより形成されるポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAmの拡大した1H−NMRスペクトルである。Aは、グラフト度100%のNIPAAmであり、Bは、グラフト度46%のNIPAAmである。
【図3】図3は、Aについて2時間、Bについて70時間、水中に保持した後におけるポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46の1H−NMRスペクトルを示す。
【図4】図4は、水中における高分子の加水分解プロファイルである。
【0224】
a)ポリ(PEG258DA−APEZ)、
b)ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46、
c)ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm1.0。
【図5】図5は、N−アミノエチルピペリジン(AEPZ)と、N,N−ビス(アクリロイル)シスタミン(BAC)及びN,N−メチレンビスアクリルアミド(MBA)の混合物とを、AEPZ:BAC:MBAの2:1:1のモル比率において反応させ、次いで直鎖状ポリ(BAC/MBA−AEPZ)をN−イソプロピルアクリルアミドと反応させることにより形成される、NIPAAmの70%グラフト度のポリ(BAC0.5/MBA0.5−AEPZ)−g−NIPAAmの拡大した1H−NMRスペクトルである。
【図6】図6は、ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAmの1%(w/v)水溶液の透過率である。
【0225】
a)NIPPAmのグラフト率:15%、
b)NIPPAmのグラフト率:46%、
c)NIPPAmのグラフト率:100%。
【図7】図7は、N−アミノエチルピペリジン(AEPZ)と1,4−ブタンジオールジアクリレート(BDA)とを反応させ、次いで直鎖状ポリ(BDA−AEPZ)をN−イソプロピルアクリルアミドと異なるpH条件において反応させて形成される、ポリ(BDA−AEPZ)−g−NIPAAm0.6の1%(w/v)水溶液の透過率である。
【0226】
a)pH7、
b)pH5、
c)pH3。
【図8】図8は、a)ポリ(BAC0.5/MBA0.5−AEPZ)−g−NIPAAm0.7、b)ポリ(BAC0.4/MBA0.6−AEPZ)−g−NIPAAm0.76、c)ポリ(BAC0.33/MBA0.67−AEPZ)−g−NIPAAm0.8、の1%(w/v)水溶液の透過率である。
【図9】図9は、熱/pH応答型高分子を、ジアクリレート、ジアクリルアミド及びジブロモ又はジヨード試薬と架橋させることにより形成され得る刺激応答型生分解性ヒドロゲルの三つの可能な構造の略図である。
【図10】図10は、アクリレート及びアクリルアミドを用いたポリ(アミノエステル)骨格中の第二級アミンのマイケル付加、ポリ(アミノエステル)骨格中の第二級アミン及びアシルクロリドのアシル化反応、及びポリ(アミノエステル)骨格中の第二級及び第三級アミンとモノブロモ又はモノヨード試薬のアルキル化又は四級化反応を介し、疎水性基を刺激応答型高分子に導入することにより形成され得る両親媒性刺激応答型高分子の三つの可能な構造の略図である。
【図11】図11は、クロロギ酸コレステリルを用いた第二級アミンのアシル化反応により形成されるポリ(PEG258−AEPZ)−g−NIPAAm0.46−CEC0.48の拡大した1H−NMRスペクトルである。
【図12】図12は、ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46−CEC0.48濃度の関数としてのピレン励起スペクトルからのI338/I333のプロットである。
【図13】図13は、a)ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46−g−CEC0.48の1%(w/v)水溶液中に形成されたミセル水溶液の透過率の温度依存性、及びb)ポリ(PEG258DA−AEPZ)−g−NIPAAm0.46−g−CEC0.48の0.05%(w/v)水溶液中に形成されたミセルのRhにおける温度及びpH効果、を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性高分子骨格及び該生分解性高分子骨格にペンダントした刺激応答型ペンダント基を含む刺激応答型高分子であって、該生分解性高分子骨格は、ポリ(アミノエステル)又はポリ(アミドアミン)を含み、該ポリ(アミドアミン)は任意に骨格にジスルフィド結合を含む、刺激応答型高分子。
【請求項2】
前記生分解性高分子骨格が、前記刺激応答型ペンダント基のペンダント前に、少なくとも1つの第2級アミン結合及び少なくとも1つの第3級アミン結合を含む、請求項1に記載の刺激応答型高分子。
【請求項3】
前記生分解性高分子骨格が、少なくとも1つの第2級アミン結合及び少なくとも1つの第3級アミン結合を含む、請求項1に記載の刺激応答型高分子。
【請求項4】
式I:
【化1】
により表されるユニット、及び、
式II:
【化2】
により表されるユニット、
から各々独立に選択される1又は2以上のユニットを含み、
任意に、式III:
【化3】
式IV:
【化4】
式V:
【化5】
式VI:
【化6】
及び式VII:
【化7】
から各々独立に選択される1又は2以上のユニットを含む
(式中、
zは、O又はNHであり、
R1、R3及びR8は、各々独立に、水素、ヒドロキシル、ハライド、チオヒドロキシル又はヒドロカルビルであり、
R2は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレンであり、
R5は、
(i)N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレン;もしくは、
(ii)−R6−M−R7−
(式中、R6は、−N(R4)−と結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、
Mは、CH又はNであり、
R7は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−28アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルキニレンである。)であり、
R4は、
(i)ヒドロカルビル、もしくは、
(ii)R5が−R6−M−R7−である時、R4もまたMと結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、かつ、R4、M、R6、及び、R4及びR6が結合した窒素原子は、飽和又は不飽和の4員〜12員の複素環を形成しており、
R9は、
(i)N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレン;もしくは、
(ii)−R11−M−R12−
(式中、R11は、−N(R10)−と結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、
Mは、CH又はNであり、
R12は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−28アルキル;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルケニル;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルキニルである。)であり、
R10は、
(i)ヒドロカルビル、もしくは
(ii)R9が−R11−M−R12−である時、R10もまたMと結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、かつ、R10、M、R11、及び、R9及びR11が結合した窒素原子は、飽和又は不飽和の4員〜12員の複素環を形成している;
但し、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9及びR10は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、又はカルボニル基と共役結合したC=C二重結合を有し得ない。)、
請求項1に記載の刺激応答型高分子。
【請求項5】
刺激応答型高分子が、pH、光、温度、又はイオン強度に対して応答性である、請求項1に記載の刺激応答型高分子。
【請求項6】
刺激応答型ペンダント基が、式X:
【化8】
(式中、
R8は、水素、ヒドロキシル、ハライド、チオヒドロキシル又はヒドロカルビルであり、
R9は、
(i)N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;もしくは、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレン;もしくは、
(ii)−R11−M−R12−
(式中、R11は、
−N(R10)−と結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、
Mは、CH又はNであり、
R12は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−28アルキル;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルケニル;もしくは、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルキニルである。)であり、
R10は、
(i)ヒドロカルビル、もしくは
(ii)R9が−R11−M−R12−である時、R10もまたMと結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、かつ、R10、M、R11、及び、R9及びR11が結合した窒素原子は、飽和又は不飽和の4員〜12員の複素環を形成している;
但し、R8、R9及びR10は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、又はカルボニル基と共役結合したC=C二重結合を有し得ない。)
の構造を有する、請求項1に記載の刺激応答型高分子。
【請求項7】
刺激応答基が、反応N−イソプロピルアクリルアミド、N,N’−ジエチルアクリルアミド、2−カルボキシイソプロピルアミド、N−(L)−(1−ヒドロキシメチル)プロピルメタクリルアミド、又はN−アクリロキシル−N’−アルキルピペラジンである、請求項5に記載の刺激応答型高分子。
【請求項8】
さらに疎水性ペンダント基を含む、請求項1に記載の刺激応答型高分子。
【請求項9】
疎水性ペンダント基が、式XII:
【化9】
式XIII:
【化10】
又は式XIV:
【化11】
(式中、
xは、O又はNHであり、
R17は、置換された又は非置換のC3−30アルキル、置換された又は非置換のC4−30アルケニル、置換された又は非置換のC4−30アルキニル、置換された又は非置換のC3−8シクロアルキル、置換された又は非置換のC6−18アリールであり、いずれもN、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含み得る。)
の構造を有する、請求項8に記載の刺激応答型高分子。
【請求項10】
疎水性ペンダント基が、反応4−tert−ブチルシクロへキシルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ジアセトンアクリルアミド、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−(イソブトキシメチル)アクリルアミド、コレステリルクロロホルメート、ナノノイルクロリド、ウンデカノイルクロリド、ラウロイルクロリド、4−ヘプチルベンゾイルクロリド、ミリストイルクロリド、1−ブロモ−2−シクロヘキシルエタン、1−ブロモオクタン、1−アダマンチルブロモメチルケトン、2−ブロモ−2’,5’−ジメチオキシアセトフェノン、1−ブロモ−3,7−ジメチルオクタン、1−ブロモドデカン、1−ブロモオクタン、1−ブロモデカン、1−ブロモオクタデカン、2−(6−ブロモヘキシルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン、1−ヨードアダマンタン、1−ヨードヘキサン、1−ヨードオクタン、1−ヨードデカン、1−ヨードドデカン、又は1−ヨードオクタデカンを含む、請求項8に記載の刺激応答型高分子。
【請求項11】
請求項1に記載の刺激応答型高分子及び架橋基を含む組成物。
【請求項12】
前記高分子が、式XI:
【化12】
(式中、
xは、O又はNHであり、
R13及びR15は、各々独立に、水素、ヒドロキシル、ハライド、チオヒドロキシル、又はヒドロカルビルであり、
R14は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレンである。)
の構造を有する架橋基により架橋されている、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記架橋基が、架橋1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,2−エタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2,5−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリ(エチルグリコール)ジアクリレート、エチレンジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,4−ビス(アクリロイル)ピペラジン、N,N’−ビス(アクリロイル)シスタミン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、1,3−ジブロモ−2−プロパノール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、1,5−ジブロモペンタン、1,6−ジブロモへキサン、1,5−ジヨードペンタン、1,8−ジブロモオクタン、1,6−ジヨードへキサン、又は1,8−ジヨードオクタンを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
ポリ(アミノエステル)又はポリ(アミドアミン)を含む生分解性高分子を反応させ、高分子骨格にペンダントした刺激応答型ペンダント基を有する高分子を形成することを含む、請求項1に記載の刺激応答型高分子を製造する方法であって、前記ポリ(アミドアミン)は任意に高分子骨格にジスルフィド結合を有する方法。
【請求項15】
前記生分解性高分子は、少なくとも1つの第二級アミン結合及び少なくとも1つの第三級アミン結合を骨格に有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記生分解性高分子ユニットと刺激応答型分子ユニットの比率が、約10:1〜約1:4である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
さらに、高分子骨格にペンダントした刺激応答型ペンダント基を有する生分解性高分子を、架橋分子を用いて架橋することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
架橋分子が、ジアクリレート、ジアクリルアミド、又はジブロモもしくはジヨード試薬を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
生分解性高分子ユニットと架橋分子ユニットの比率が、約20:1〜約1:2である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
さらに、高分子骨格にペンダントした刺激応答型ペンダント基を有する生分解性高分子を、疎水性分子と反応させ、高分子骨格に疎水性ペンダント基をペンダントさせることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
生分解性高分子ユニットと疎水性分子ユニットの比率が、約20:1〜約1:4である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の刺激応答型生分解性高分子、又は請求項11に記載の組成物、及び生物活性剤を含有する組成物。
【請求項23】
生物活性剤が、小分子、有機金属化合物、核酸、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド金属、同位体標識した化合物、薬物、ワクチン、又は免疫薬を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
組成物がミセルを形成している、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
組成物がヒドロゲルを形成している、請求項22に記載の組成物。
【請求項1】
生分解性高分子骨格及び該生分解性高分子骨格にペンダントした刺激応答型ペンダント基を含む刺激応答型高分子であって、該生分解性高分子骨格は、ポリ(アミノエステル)又はポリ(アミドアミン)を含み、該ポリ(アミドアミン)は任意に骨格にジスルフィド結合を含む、刺激応答型高分子。
【請求項2】
前記生分解性高分子骨格が、前記刺激応答型ペンダント基のペンダント前に、少なくとも1つの第2級アミン結合及び少なくとも1つの第3級アミン結合を含む、請求項1に記載の刺激応答型高分子。
【請求項3】
前記生分解性高分子骨格が、少なくとも1つの第2級アミン結合及び少なくとも1つの第3級アミン結合を含む、請求項1に記載の刺激応答型高分子。
【請求項4】
式I:
【化1】
により表されるユニット、及び、
式II:
【化2】
により表されるユニット、
から各々独立に選択される1又は2以上のユニットを含み、
任意に、式III:
【化3】
式IV:
【化4】
式V:
【化5】
式VI:
【化6】
及び式VII:
【化7】
から各々独立に選択される1又は2以上のユニットを含む
(式中、
zは、O又はNHであり、
R1、R3及びR8は、各々独立に、水素、ヒドロキシル、ハライド、チオヒドロキシル又はヒドロカルビルであり、
R2は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレンであり、
R5は、
(i)N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレン;もしくは、
(ii)−R6−M−R7−
(式中、R6は、−N(R4)−と結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、
Mは、CH又はNであり、
R7は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−28アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルキニレンである。)であり、
R4は、
(i)ヒドロカルビル、もしくは、
(ii)R5が−R6−M−R7−である時、R4もまたMと結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、かつ、R4、M、R6、及び、R4及びR6が結合した窒素原子は、飽和又は不飽和の4員〜12員の複素環を形成しており、
R9は、
(i)N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレン;もしくは、
(ii)−R11−M−R12−
(式中、R11は、−N(R10)−と結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、
Mは、CH又はNであり、
R12は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−28アルキル;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルケニル;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルキニルである。)であり、
R10は、
(i)ヒドロカルビル、もしくは
(ii)R9が−R11−M−R12−である時、R10もまたMと結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、かつ、R10、M、R11、及び、R9及びR11が結合した窒素原子は、飽和又は不飽和の4員〜12員の複素環を形成している;
但し、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9及びR10は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、又はカルボニル基と共役結合したC=C二重結合を有し得ない。)、
請求項1に記載の刺激応答型高分子。
【請求項5】
刺激応答型高分子が、pH、光、温度、又はイオン強度に対して応答性である、請求項1に記載の刺激応答型高分子。
【請求項6】
刺激応答型ペンダント基が、式X:
【化8】
(式中、
R8は、水素、ヒドロキシル、ハライド、チオヒドロキシル又はヒドロカルビルであり、
R9は、
(i)N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;もしくは、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレン;もしくは、
(ii)−R11−M−R12−
(式中、R11は、
−N(R10)−と結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、
Mは、CH又はNであり、
R12は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−28アルキル;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルケニル;もしくは、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−28アルキニルである。)であり、
R10は、
(i)ヒドロカルビル、もしくは
(ii)R9が−R11−M−R12−である時、R10もまたMと結合し、かつ、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−6アルキレン、または、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−6アルケニレンであり、かつ、R10、M、R11、及び、R9及びR11が結合した窒素原子は、飽和又は不飽和の4員〜12員の複素環を形成している;
但し、R8、R9及びR10は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、又はカルボニル基と共役結合したC=C二重結合を有し得ない。)
の構造を有する、請求項1に記載の刺激応答型高分子。
【請求項7】
刺激応答基が、反応N−イソプロピルアクリルアミド、N,N’−ジエチルアクリルアミド、2−カルボキシイソプロピルアミド、N−(L)−(1−ヒドロキシメチル)プロピルメタクリルアミド、又はN−アクリロキシル−N’−アルキルピペラジンである、請求項5に記載の刺激応答型高分子。
【請求項8】
さらに疎水性ペンダント基を含む、請求項1に記載の刺激応答型高分子。
【請求項9】
疎水性ペンダント基が、式XII:
【化9】
式XIII:
【化10】
又は式XIV:
【化11】
(式中、
xは、O又はNHであり、
R17は、置換された又は非置換のC3−30アルキル、置換された又は非置換のC4−30アルケニル、置換された又は非置換のC4−30アルキニル、置換された又は非置換のC3−8シクロアルキル、置換された又は非置換のC6−18アリールであり、いずれもN、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含み得る。)
の構造を有する、請求項8に記載の刺激応答型高分子。
【請求項10】
疎水性ペンダント基が、反応4−tert−ブチルシクロへキシルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ジアセトンアクリルアミド、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−(イソブトキシメチル)アクリルアミド、コレステリルクロロホルメート、ナノノイルクロリド、ウンデカノイルクロリド、ラウロイルクロリド、4−ヘプチルベンゾイルクロリド、ミリストイルクロリド、1−ブロモ−2−シクロヘキシルエタン、1−ブロモオクタン、1−アダマンチルブロモメチルケトン、2−ブロモ−2’,5’−ジメチオキシアセトフェノン、1−ブロモ−3,7−ジメチルオクタン、1−ブロモドデカン、1−ブロモオクタン、1−ブロモデカン、1−ブロモオクタデカン、2−(6−ブロモヘキシルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン、1−ヨードアダマンタン、1−ヨードヘキサン、1−ヨードオクタン、1−ヨードデカン、1−ヨードドデカン、又は1−ヨードオクタデカンを含む、請求項8に記載の刺激応答型高分子。
【請求項11】
請求項1に記載の刺激応答型高分子及び架橋基を含む組成物。
【請求項12】
前記高分子が、式XI:
【化12】
(式中、
xは、O又はNHであり、
R13及びR15は、各々独立に、水素、ヒドロキシル、ハライド、チオヒドロキシル、又はヒドロカルビルであり、
R14は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC1−30アルキレン;N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルケニレン;又は、N、O及びSからなる群から選択される1又は2以上のヘテロ原子を任意に含む、置換された又は非置換のC2−30アルキニレンである。)
の構造を有する架橋基により架橋されている、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記架橋基が、架橋1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,2−エタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2,5−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリ(エチルグリコール)ジアクリレート、エチレンジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,4−ビス(アクリロイル)ピペラジン、N,N’−ビス(アクリロイル)シスタミン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、1,3−ジブロモ−2−プロパノール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、1,5−ジブロモペンタン、1,6−ジブロモへキサン、1,5−ジヨードペンタン、1,8−ジブロモオクタン、1,6−ジヨードへキサン、又は1,8−ジヨードオクタンを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
ポリ(アミノエステル)又はポリ(アミドアミン)を含む生分解性高分子を反応させ、高分子骨格にペンダントした刺激応答型ペンダント基を有する高分子を形成することを含む、請求項1に記載の刺激応答型高分子を製造する方法であって、前記ポリ(アミドアミン)は任意に高分子骨格にジスルフィド結合を有する方法。
【請求項15】
前記生分解性高分子は、少なくとも1つの第二級アミン結合及び少なくとも1つの第三級アミン結合を骨格に有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記生分解性高分子ユニットと刺激応答型分子ユニットの比率が、約10:1〜約1:4である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
さらに、高分子骨格にペンダントした刺激応答型ペンダント基を有する生分解性高分子を、架橋分子を用いて架橋することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
架橋分子が、ジアクリレート、ジアクリルアミド、又はジブロモもしくはジヨード試薬を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
生分解性高分子ユニットと架橋分子ユニットの比率が、約20:1〜約1:2である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
さらに、高分子骨格にペンダントした刺激応答型ペンダント基を有する生分解性高分子を、疎水性分子と反応させ、高分子骨格に疎水性ペンダント基をペンダントさせることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
生分解性高分子ユニットと疎水性分子ユニットの比率が、約20:1〜約1:4である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の刺激応答型生分解性高分子、又は請求項11に記載の組成物、及び生物活性剤を含有する組成物。
【請求項23】
生物活性剤が、小分子、有機金属化合物、核酸、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド金属、同位体標識した化合物、薬物、ワクチン、又は免疫薬を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
組成物がミセルを形成している、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
組成物がヒドロゲルを形成している、請求項22に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−132825(P2009−132825A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−310911(P2007−310911)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2007年6月 http://www.bioeng.nus.edu.sg/stu/file/fyp−proj−lst−0708.pdfを通じて発表
【出願人】(504056510)エイジェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ (12)
【氏名又は名称原語表記】AGENCY FOR SCIENCE,TECHNOLOGY AND RESEARCH
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310911(P2007−310911)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2007年6月 http://www.bioeng.nus.edu.sg/stu/file/fyp−proj−lst−0708.pdfを通じて発表
【出願人】(504056510)エイジェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ (12)
【氏名又は名称原語表記】AGENCY FOR SCIENCE,TECHNOLOGY AND RESEARCH
【Fターム(参考)】
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