説明

前立腺癌のバイオマーカー及びそれを使用する方法

前立腺癌の早期予測、疾患悪性度分類、標的の特定/バリデーション及び薬物の有効性のモニタリングのためのバイオマーカーとして有用な一連の生化学的及び/又は遺伝的因子を特定し、評価する方法を提供する。また、前立腺癌のバイオマーカーとしての一連の小分子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、これにより参照としてすべての内容が本明細書に組み込まれる2006年9月19日に出願された米国特許仮出願第60/845,600号の恩恵を主張する。
【0002】
本発明は、一部は国立衛生研究所からの補助金番号U01CA111275−01のもとに政府の支援を得てなされた。米国政府は、本発明における一定の権利を有することができる。
【0003】
本発明は、一般的に前立腺癌のバイオマーカー及び同じバイオマーカーに基づく方法に関する。
【背景技術】
【0004】
前立腺癌は、男性の癌に関連する死亡の主な原因であり、65歳を超える男性の9人のうちの1人が罹患する。米国癌学会は、今年、200000人を超えるアメリカ人男性が前立腺癌と診断され、30000人以上が死亡すると推定している。限局性前立腺癌については有効な外科療法及び放射線療法が存在するが、転移性前立腺癌は、依然として本質的に治癒できず、転移性疾患を有すると診断されたほとんどの男性が数カ月から数年の期間で死亡する。
【0005】
前立腺癌は、直腸診(DRE)により、又は受入れることができないほどに高い偽陽性率を有する前立腺特異抗原(PSA)のレベルの測定により、検出される。前立腺癌の診断は、生検によってのみ確認することができる。根治的前立腺切除術、放射線及び無治療経過観察は、限局性前立腺癌に対して一般的に有効であるが、どのアプローチを使用するかを判断することはしばしば困難である。無痛性腫瘍と侵襲性がより大きい腫瘍とを識別することはできないので、現在の療法は、非常に保守的なアプローチを採っている。
【0006】
撮像X線コンピュータ断層スキャン及びさらなる生検は、前立腺癌が転移したかどうかを判断する助けとなり得るが、早期を鑑別することはできない。限局性で早期の無痛状態から侵襲性の状態への、また、最終的に転移状態への前立腺癌の進行を理解することにより、この疾患の適切な臨床的管理が可能になると思われる。さらに、早期の無痛性前立腺癌は、侵襲形に進行することがあれば、進行しないこともある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様において、本発明は、被検者からの生物学的試料を分析して、試料中の、表1、2、4、5、6、7、9、10、13、15、18、22及び/又は24から選択される前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定すること、及び被検者が前立腺癌を有するかどうかを診断するために、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを1種又は複数のバイオマーカーの前立腺癌陽性及び/又は前立腺癌陰性基準レベルと比較することとを含む、被検者が前立腺癌を有するかどうかを診断する方法を提供する。
【0008】
他の態様において、本発明はまた、被検者からの生物学的試料を分析して、試料中の、表1、2、4、5、6、7、9、10、13、15、18、20、22、24及び/又は26から選択される前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定すること、及び被検者に前立腺癌を発現する素因があるかどうかを判断するために、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを1種又は複数のバイオマーカーの前立腺癌陽性及び/又は前立腺癌陰性基準レベルと比較することとを含む、被検者が前立腺癌を発現する素因があるかどうかを判断する方法を提供する。
【0009】
他の態様において、本発明は、被検者から第1の時点に得た第1の生物学的試料を分析して、試料中の、表1、2、3、4、5、6、7、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26から選択される、前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定すること、被検者から第2の時点に得た第2の生物学的試料を分析して、1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定すること、及び被検者における前立腺癌の進行/退縮をモニターするために、第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを第2の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルと比較することとを含む、被検者における前立腺癌の進行/退縮をモニターする方法を提供する。
【0010】
他の態様において、本発明は、前立腺癌を有し、現在又は以前に組成物の投与を受けている被検者からの生物学的試料を分析して、表1、2、4、5、6、7、9、10、13、15、18、20、22、24及び/又は26から選択される前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定すること、及び試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、(a)組成物を投与する前に被検者から得た被検者からの予め採取した生物学的試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル、(b)1種又は複数のバイオマーカーの前立腺癌陽性基準レベル、及び/又は(c)1種又は複数のバイオマーカーの前立腺癌陰性基準レベルと比較することとを含む、前立腺癌の治療用の組成物の有効性を評価する方法を提供する。
【0011】
他の態様において、本発明は、被検者から第1の時点に得た被検者の第1の生物学的試料を分析して、表1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26から選択される前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定することと、被検者に組成物を投与することと、被検者から組成物の投与後の第2の時点に得た被検者の第2の生物学的試料を分析して、1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定することと、前立腺癌の治療用の組成物の有効性を評価するために、第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを第2の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルと比較することとを含む、前立腺癌の治療における組成物の有効性を評価する方法を提供する。
【0012】
他の態様において、本発明は、前立腺癌を有し、現在又は以前に第1の組成物の投与を受けている第1の被検者からの第1の生物学的試料を分析して、表1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26から選択される1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定すること、前立腺癌を有し、現在又は以前に第2の組成物の投与を受けている第2の被検者からの第2の生物学的試料を分析して、1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定すること、及び前立腺癌を治療する第1及び第2の組成物の相対的有効性を評価するために、第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを第2の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルと比較することとを含む、前立腺癌を治療するための2種以上の組成物の相対的有効性を評価する方法を提供する。
【0013】
他の態様において、本発明は、1個又は複数の細胞を組成物と接触させることと、1個又は複数の細胞の少なくとも一部或いは細胞に関連する生物学的試料を分析して、表1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26から選択される前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定すること、及び1種又は複数のバイオマーカーのレベルをバイオマーカーの予め決定した標準レベルと比較して、組成物が1種又は複数のバイオマーカーのレベルを調節したかどうかを判断することとを含む、前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカーを調節する活性について組成物をスクリーニングする方法を提供する。
【0014】
さらなる態様において、本発明は、表1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26から選択される前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカーに関連する1種又は複数の生化学的経路を特定すること、及び特定された1種又は複数の生化学的経路の少なくとも1種に影響を及ぼし、前立腺癌の潜在的薬物標的であるタンパク質を特定することとを含む、前立腺癌の潜在的薬物標的を特定する方法を提供する。
【0015】
他の態様において、本発明は、前立腺癌において減少する表1、2、4、5、6、7、9、10、13、15、18、20、22、24及び/又は26から選択される1種又は複数のバイオマーカーの有効な量を被検者に投与することを含む、前立腺癌を有する被検者を治療する方法を提供する。
【0016】
他の態様において、本発明は、被検者からの生物学的試料を分析して、試料中の、表3、8、11、20及び/又は26から選択される低悪性度前立腺癌及び/又は高悪性度前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定すること、及び被検者が低悪性度前立腺癌を有するか又は高悪性度前立腺癌を有するかを判断するために、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、高悪性度前立腺癌と識別する低悪性度前立腺癌陽性基準レベル及び/又は低悪性度前立腺癌と識別する高悪性度前立腺癌陽性基準レベルと比較することとを含む、前立腺癌を有する被検者における低悪性度前立腺癌と高悪性度前立腺癌とを識別する方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】正常(N)、限局性癌腫瘍(T)及び転移性腫瘍(M)組織型を識別するための代謝物の1例の重要度プロットを示す図である。
【図2】正常前立腺組織(N)及び限局性前立腺癌腫瘍組織(T)を識別するための代謝物の1例の重要度プロットを示す図である。
【図3】尿試料を用いて非癌組織(対照)とより低悪性度の前立腺癌組織(PCA)を識別するための代謝物の1例の重要度プロットを示す図である。
【図4】尿試料から、より低悪性度の前立腺癌組織とより高悪性度の前立腺癌組織を識別するための代謝物の1例の重要度プロットを示す図である。
【図5】血漿試料を用いて、非癌組織(対照)とより低悪性度の前立腺癌組織(PCA)を識別するための代謝物の1例の重要度プロットを示す図である。
【図6】血漿試料を用いて、より低悪性度の前立腺癌組織とより高悪性度の前立腺癌組織を識別するための代謝物の1例の重要度プロットを示す図である。
【図7】より低悪性度の前立腺癌及びより高悪性度の前立腺癌を有する被検者を識別するための代謝物の1例の重要度プロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、前立腺癌のバイオマーカー、前立腺癌を診断する方法、低悪性度前立腺癌と高悪性度前立腺癌とを識別する方法、前立腺癌の素因を決定する方法、前立腺癌の進行/退縮をモニタリングする方法、前立腺癌を治療するための組成物の有効性を評価する方法、前立腺癌のバイオマーカーを調節する活性について組成物をスクリーニングする方法、前立腺癌を治療する方法、並びに前立腺癌のバイオマーカーに基づく他の方法に関する。しかし、本発明をさらに詳細に述べる前に、以下の用語を最初に定義する。
【0019】
「バイオマーカー」は、第2の表現型を有する(例えば、疾患を有さない)被検者又は被検者の群からの生物学的試料と比較して第1の表現型を有する(例えば、疾患を有する)被検者又は被検者の群からの生物学的試料中に差別的に(すなわち、増加又は減少した状態で)存在する化合物、好ましくは代謝物を意味する。バイオマーカーは、あらゆるレベルで差別的に存在していてよいが、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%又はそれ以上高いレベルで一般的に存在するか、或いは少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%(すなわち、存在しない)低いレベルで一般的に存在する。バイオマーカーは、統計的に有意であるレベル(すなわち、WelchのT−検定又はWilcoxonの順位和−検定を用いて判定したとき0.05未満のp値及び/又は0.10未満のq値)で差別的に存在することが好ましい。
【0020】
1種又は複数のバイオマーカーの「レベル」は、試料中のバイオマーカーの絶対又は相対量又は濃度を意味する。
【0021】
「試料」又は「生物学的試料」は、被検者から単離された生物学的物質を意味する。生物学的試料は、所望のバイオマーカーを検出するのに適する生物学的物質を含んでいてよく、被検者からの細胞性及び/又は非細胞性物質を含んでいてよい。試料は、例えば、前立腺組織、血液、血漿、尿又は脳脊髄液(CSF)などの適切な生物学的組織又は液から単離することができる。
【0022】
「被検者」は、あらゆる動物を意味するが、好ましくは、例えば、ヒト、サル、マウス又はウサギなどの哺乳動物である。
【0023】
バイオマーカーの「基準レベル」は、特定の疾患状態、表現型又はその欠如、並びに疾患状態、表現型又はその欠如の組合せを示すバイオマーカーのレベルを意味する。バイオマーカーの「陽性」基準レベルは、特定の疾患状態又は表現型を示すレベルを意味する。バイオマーカーの「陰性」基準レベルは、特定の疾患状態又は表現型の欠如を示すレベルを意味する。例えば、バイオマーカーの「前立腺癌陽性基準レベル」は、被検者における前立腺癌の陽性診断を示すバイオマーカーのレベルを意味し、バイオマーカーの「前立腺癌陰性基準レベル」は、被検者における前立腺癌の陰性診断を示すバイオマーカーのレベルを意味する。バイオマーカーの「基準レベル」は、バイオマーカーの絶対又は相対量又は濃度、バイオマーカーの存在又は非存在、バイオマーカーの量又は濃度の範囲、バイオマーカーの最小及び/又は最大量又は濃度、バイオマーカーの平均量又は濃度、及び/又はバイオマーカーの量又は濃度の中央値であってよく、また、さらに、バイオマーカーの組合せの「基準レベル」は、2種以上のバイオマーカーの量又は濃度の互いに対する比であってもよい。特定の疾患状態、表現型又はその欠如に関するバイオマーカーの適切な陽性及び陰性基準レベルは、1例又は複数の適切な被検者における望ましいバイオマーカーのレベルを測定することによって決定することができ、そのような基準レベルは、被検者の特定の集団に対して調整することができる(例えば、特定の年齢の被検者からの試料中のバイオマーカーのレベルと特定の年齢群における特定の疾患状態、表現型又はその欠如の基準レベルとの比較を行うことができるように、基準レベルを年齢に適合させることができる)。そのような基準レベルは、バイオマーカーのレベルが用いられる個々の手法によって異なる場合には、生物学的試料中のバイオマーカーのレベルを測定するのに用いられる個々の手法(例えば、LC−MS、GC−MS等)に対しても調整することができる。
【0024】
「非バイオマーカー化合物」は、第2の表現型を有する(例えば、第1の疾患を有さない)被検者又は被検者の群からの生物学的試料と比較して第1の表現型を有する(例えば、第1の疾患を有する)被検者又は被検者の群からの生物学的試料中に差別的に存在しない化合物を意味する。しかし、そのような非バイオマーカー化合物は、第1の表現型(例えば、第1の疾患を有する)又は第2の表現型(例えば、第1の疾患を有さない)と比較して第3の表現型を有する(例えば、第2の疾患を有する)被検者又は被検者の群からの生物学的試料中のバイオマーカーであってもよい。
【0025】
「代謝物」又は「小分子」は、細胞内に存在する有機及び無機分子を意味する。この用語は、大タンパク質(例えば、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000又は10000以上の分子量を有するタンパク質)、大核酸(例えば、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000又は10000以上の分子量を有する核酸)或いは大多糖(例えば、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000又は10000以上の分子量を有する多糖)などの大巨大分子を含まない。細胞の小分子は、さらに代謝させることができる、又は巨大分子と呼ばれる大分子を生成させるのに用いることができる中間体のプールを形成する、細胞質中又はミトコンドリアなどの他の細胞小器官中の溶液中に一般的に遊離で認められる。「小分子」という用語は、シグナリング分子及び食物由来のエネルギーを使用可能な形に変換する化学反応における中間体を含む。小分子の例として、糖、脂肪酸、アミノ酸、ヌクレオチド、細胞過程において生成する中間体、及び細胞内に認められる他の小分子などが挙げられる。
【0026】
「代謝プロファイル」又は「小分子プロファイル」は、標的細胞内、組織内、臓器内、生物体内又はその小部分(例えば、細胞コンパートメント)内の小分子の完全又は部分的目録(inventory)を意味する。目録は、存在する小分子の量及び/又は種類を含んでいてよい。「小分子プロファイル」は、単一の手法又は複数の異なる手法を用いて測定することができる。
【0027】
「メタボローム」は、所定の生物体に存在するすべての小分子を意味する。
【0028】
「前立腺癌」は、癌が男性生殖系内の腺である前立腺に発生している疾患を意味する。「低悪性度」又は「より低悪性度」の前立腺癌は、転移の可能性が低い悪性腫瘍を含む非転移性前立腺癌(すなわち、攻撃性がより低いとみなされる前立腺癌)を意味する。「高悪性度」又は「より高悪性度」の前立腺癌は、転移の可能性が高い悪性腫瘍を含む被検者において転移した前立腺癌(すなわち、攻撃性とみなされる前立腺癌)を意味する。
【0029】
I.バイオマーカー
本明細書に記載する前立腺癌バイオマーカーは、代謝プロファイリング法を用いて発見した。そのような代謝プロファイリング法は、下に示す実施例、並びにこれにより参照としてすべての内容が本明細書に組み込まれる米国特許第7,005,255号並びに米国特許出願第11/357,732号、第10/695,265号(公開番号第2005/0014132号)、第11/301,077号(公開番号第2006/0134676号)、第11/301,078号(公開番号第2006/0134677号)、第11/301,079号(公開番号第2006/0134678号)及び第11/405,033号により詳細に記載されている。
【0030】
一般的に、代謝プロファイルは、前立腺癌と診断されたヒト被検者並びにヒト被検者の1つ又は複数の他の群(例えば、前立腺癌と診断されなかった健常対照被検者)並びにより低悪性度の前立腺癌と診断されたヒト被検者及び転移性/高悪性度前立腺癌と診断されたヒト被検者からの生物学的試料について測定した。前立腺癌を有する被検者からの生物学的試料の代謝プロファイルを被検者の1つ又は複数の他の群からの生物学的試料の代謝プロファイルと比較した。他の群(例えば、前立腺癌と診断されなかった健常対照被検者)と比較して前立腺癌を有する被検者からの試料の代謝プロファイルに統計的に有意であるレベルで差別的に存在する分子を含む、差別的に存在する分子を、それらの群を識別するバイオマーカーと特定した。さらに、高悪性度前立腺癌と比較して低悪性度前立腺癌を有する被検者からの試料の代謝プロファイルに統計的に有意であるレベルで差別的に存在する分子を含む、差別的に存在する分子も、それらの群を識別するバイオマーカーと特定した。
【0031】
バイオマーカーについては本明細書においてより詳細に述べる。発見されたバイオマーカーは、以下の群に対応する。
前立腺癌を有する被検者を前立腺癌と診断されなかった対照被検者と識別するためのバイオマーカー(表1、2、4、5、6、7、9、10、15、18、22、24を参照);
低悪性度前立腺癌を有する被検者を前立腺癌と診断されなかった対照被検者と識別するためのバイオマーカー(表1、6、9、22を参照);
転移性/高悪性度前立腺癌を有する被検者を前立腺癌と診断されなかった対照被検者と識別するためのバイオマーカー(表2、7、10、24を参照);
転移性/高悪性度前立腺癌を有する被検者を低悪性度前立腺癌を有する被検者と識別するためのバイオマーカー(表3、8、11、20、26を参照)。
【0032】
バイオマーカー化合物のいくつかの同一性はこの時点では知られていないが、「非命名」化合物はそのような同定を可能にするように分析技術により十分に特徴づけられたので、そのような同一性は、被検者からの生物学的試料中のバイオマーカーの同定に必要でない。そのようなすべての「非命名」化合物の分析による確認を実施例に示す。そのような「非命名」バイオマーカーは、本明細書では「代謝物」という名称と続く特定の代謝物番号を用いて示す。
【0033】
IIA.前立腺癌の診断
前立腺癌のバイオマーカーの同定は、前立腺癌の1つ又は複数の症状を示している被検者における前立腺癌の診断を可能にする(又はその診断の助けとなり得る)。被検者が前立腺癌を有するかどうかを診断する(又は診断の助けとなる)方法は、(1)被検者からの生物学的試料を分析して試料中の前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定することと、(2)被検者が前立腺癌を有するかどうかを診断する(又はその診断の助けとする)ために、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを1種又は複数のバイオマーカーの前立腺癌陽性及び/又は前立腺癌陰性基準レベルと比較することを含む。用いる1種又は複数のバイオマーカーは、表1、2、4、5、6、7、9、10、13、15、18、22及び/又は24並びにその組合せから選択される。そのような方法を前立腺癌の診断の助けとするために用いる場合、該方法の結果並びに被検者が前立腺癌を有するかどうかの臨床的判断に有用な他の方法(又はその結果)を用いることができる。
【0034】
試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定するために、適切な方法を用いて生物学的試料を分析することができる。適切な方法としては、クロマトグラフィー(例えば、HPLC、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー)、質量分析(例えば、MS、MS−MS)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、抗体結合、他の免疫化学的手法及びその組合せが挙げられる。さらに、1種又は複数のバイオマーカーのレベルは、例えば、測定することが望ましいバイオマーカーのレベルと相関する化合物(又は複数の化合物)のレベルを測定するアッセイ法を用いることによって、間接的に測定することができる。
【0035】
表1、2、4、5、6、7、9、10、13、15、18、22及び/又は24の1種又は複数のバイオマーカーのレベルは、被検者が前立腺癌を有するかどうかを診断する方法及び診断の助けとなる方法において測定することができる。例えば、表1、2、4、5、6、7、9、10、13、15、18、22及び/又は24或いはそのいずれか一部におけるすべてのバイオマーカーの組合せを含む、1種のバイオマーカー、2種以上のバイオマーカー、3種以上のバイオマーカー、4種以上のバイオマーカー、5種以上のバイオマーカー、6種以上のバイオマーカー、7種以上のバイオマーカー、8種以上のバイオマーカー、9種以上のバイオマーカー、10種以上のバイオマーカーのレベルを測定し、そのような方法に用いることができる。バイオマーカーの組合せのレベルの測定は、前立腺癌の診断及び前立腺癌の診断の助けにおける感度及び特異性をより大きくすることを可能にし、前立腺癌と、前立腺癌と類似又は一部重複するバイオマーカーを有する可能性がある他の前立腺障害(例えば、良性前立腺肥大(BPH)、前立腺炎等)又は他の癌とのより十分な識別を可能にする(前立腺癌を有さない被検者と比較して)。例えば、生物学的試料中の特定のバイオマーカー(及び非バイオマーカー化合物)のレベルの比は、前立腺癌の診断及び前立腺癌の診断の助けとなるものの感度及び特異性をより大きくすることを可能にし、前立腺癌と、前立腺癌と類似又は一部重複するバイオマーカーを有する可能性がある他の癌又は前立腺の他の障害とのより十分な識別を可能にする(前立腺癌を有さない被検者と比較して)。
【0036】
特定の種類の試料(例えば、前立腺組織試料、尿試料又は血漿試料)中の前立腺癌の診断(又は前立腺癌の診断の助け)に対して特異的である1種又は複数のバイオマーカーも用いることができる。例えば、生物学的試料が前立腺組織である場合、表1、2、13及び/又は15に示す1種又は複数のバイオマーカーを用いて被検者が前立腺癌を有するかどうかを診断するのに(又は診断の助けとするのに)用いることができる。生物学的試料が血漿である場合、表4、6、7、22及び/又は24に示す1種又は複数のバイオマーカーを用いて被検者が前立腺癌を有するかどうかを診断するのに(又は診断の助けとするのに)用いることができる。生物学的試料が尿である場合、表5、9、10及び/又は18に示す1種又は複数のバイオマーカーを用いて被検者が前立腺癌を有するかどうかを診断するのに(又は診断の助けとするのに)用いることができる。
【0037】
試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定した後に、被検者が前立腺癌を有するかどうかを診断する助けとするために、又は診断するために、該レベルを前立腺癌陽性及び/又は前立腺癌陰性基準レベルと比較する。前立腺癌陽性基準レベルに適合する試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(例えば、基準レベルと同じ、基準レベルと実質的に同じ、基準レベルの最小値及び/又は最大値を上回りかつ/又は下回る、かつ/又は基準レベルの範囲内であるレベル)は、被検者における前立腺癌の診断を示す。前立腺癌陰性基準レベルに適合する試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(例えば、基準レベルと同じ、基準レベルと実質的に同じ、基準レベルの最小値及び/又は最大値を上回りかつ/又は下回る、かつ/又は基準レベルの範囲内であるレベル)は、被検者における前立腺癌なしの診断を示す。さらに、前立腺癌陰性基準レベルと比較して試料中に差別的に存在する1種又は複数のバイオマーカーのレベル(特に統計的に有意であるレベル)は、被検者における前立腺癌の診断を示す。前立腺癌陽性基準レベルと比較して試料中に差別的に存在する1種又は複数のバイオマーカーのレベル(特に統計的に有意であるレベル)は、被検者における前立腺癌なしの診断を示す。
【0038】
1種又は複数のバイオマーカーのレベルは、生物学的試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルと前立腺癌陽性及び/又は前立腺癌陰性基準レベルとの単純比較(例えば、手作業での比較)を含む、様々な手法を用いて前立腺癌陽性及び/又は前立腺癌陰性基準レベルと比較することができる。生物学的試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルはまた、1つ又は複数の統計解析(例えば、t−検定、WelchのT−検定、Wilcoxonの順位和−検定、ランダムフォレスト)を用いて前立腺癌陽性及び/又は前立腺癌陰性基準レベルと比較することができる。
【0039】
さらに、生物学的試料は、1つ又は複数の非バイオマーカー化合物のレベルを測定するために分析することができる。そのような非バイオマーカー化合物のレベルは、前立腺癌と、前立腺癌と類似又は一部重複するバイオマーカーを有する可能性がある他の前立腺障害との識別も可能にする(前立腺癌を有さない被検者と比較して)。例えば、前立腺癌を有する被検者及び前立腺癌を有さない被検者の生物学的試料中に存在する既知の非バイオマーカー化合物は、前立腺障害を有する被検者の生物学的試料が非バイオマーカー化合物を含まない場合には、他の前立腺障害の診断と比較して前立腺癌の診断を確認するためにモニターすることができると思われる。
【0040】
被検者が前立腺癌を有するかどうかを診断する(又は診断の助けとする)方法は、被検者が低悪性度前立腺癌及び/又は高悪性度前立腺癌を有するかどうかを診断する(又は診断の助けとする)ためにも具体的に実施することができる。そのような方法は、(1)被検者からの生物学的試料を分析して、試料中の低悪性度前立腺癌(及び/又は高悪性度前立腺癌)の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定することと、(2)被検者が低悪性度前立腺癌(又は高悪性度前立腺癌)を有するかどうかを診断する(又はその診断の助けとする)ために、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを低悪性度前立腺癌陽性及び/低悪性度前立腺癌陰性基準レベル(又は高悪性度前立腺癌陽性及び/高悪性度前立腺癌陰性基準レベル)と比較することを含む。低悪性度前立腺癌に特異的なバイオマーカーを表1、6、9、22に示し、高悪性度前立腺癌に特異的なバイオマーカーを表2、7、10、24に示す。
【0041】
IIB.低悪性度前立腺癌と高悪性度前立腺癌とを識別する方法
低悪性度前立腺癌と高悪性度前立腺癌とを識別するバイオマーカーの特定により、患者における低悪性度前立腺癌と高悪性度前立腺癌とを識別することが可能となる。前立腺癌を有する被検者における低悪性度前立腺癌と高悪性度前立腺癌とを識別する方法は、(1)被検者からの生物学的試料を分析して、高悪性度前立腺癌と識別する低悪性度前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカー及び/又は低悪性度前立腺癌と識別する高悪性度前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカーの試料中のレベルを測定することと、(2)被検者が低悪性度癌を有するか又は高悪性度癌を有するかを判断するために、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、高悪性度前立腺癌と識別する低悪性度前立腺癌陽性基準レベル及び/又は低悪性度前立腺癌と識別する高悪性度前立腺癌陽性基準レベルと比較することとを含む。用いる1種又は複数のバイオマーカーは、表3、8、11、20及び/又は26並びにその組合せから選択される。
【0042】
試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定するために、適切な方法を用いて生物学的試料を分析することができる。適切な方法としては、クロマトグラフィー(例えば、HPLC、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー)、質量分析(例えば、MS、MS−MS)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、抗体結合、他の免疫化学的手法及びその組合せが挙げられる。さらに、1種又は複数のバイオマーカーのレベルは、例えば、測定することが望ましいバイオマーカーのレベルと相関する化合物(又は複数の化合物)のレベルを測定するアッセイ法を用いることによって、間接的に測定することができる。
【0043】
表3、8、11、20及び/又は26の1種又は複数のバイオマーカーのレベルは、被検者が前立腺癌を有するかどうかを診断する方法及び診断の助けとなる方法において測定することができる。例えば、表3、8、11、20及び/又は26或いはそのいずれか一部におけるすべてのバイオマーカーの組合せを含む、1種のバイオマーカー、2種以上のバイオマーカー、3種以上のバイオマーカー、4種以上のバイオマーカー、5種以上のバイオマーカー、6種以上のバイオマーカー、7種以上のバイオマーカー、8種以上のバイオマーカー、9種以上のバイオマーカー、10種以上のバイオマーカーのレベルを測定し、そのような方法に用いることができる。バイオマーカーの組合せのレベルの測定は、低悪性度前立腺癌と高悪性度前立腺癌との識別の感度及び特異性をより大きくすることを可能にする。
【0044】
特定の種類の試料(例えば、前立腺組織試料、尿試料又は血漿試料)中の低悪性度前立腺癌と高悪性度前立腺癌との識別に特異的である1種又は複数のバイオマーカーも用いることもできる。例えば、生物学的試料が前立腺組織である場合、表3に示す1種又は複数のバイオマーカーを用いることができる。生物学的試料が血漿である場合、表8又は26に示す1種又は複数のバイオマーカーを用いることができる。生物学的試料が尿である場合、表11又は20に示す1種又は複数のバイオマーカーを用いることができる。
【0045】
試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定した後に、被検者が低悪性度を有するか又は高悪性度前立腺癌を有するかどうかを判断するために、該レベルを、1種又は複数のバイオマーカーの高悪性度前立腺癌陰性と識別する低悪性度前立腺癌陽性基準レベル及び/又は低悪性度前立腺癌と識別する高悪性度前立腺癌陽性基準レベルと比較する。高悪性度前立腺癌と識別する低悪性度前立腺癌陽性基準レベルに適合する試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(例えば、基準レベルと同じ、基準レベルと実質的に同じ、基準レベルの最小値及び/又は最大値を上回りかつ/又は下回る、かつ/又は基準レベルの範囲内であるレベル)は、被検者における低悪性度前立腺癌を示す。低悪性度前立腺癌と識別する高悪性度前立腺癌陽性基準レベルに適合する試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(例えば、基準レベルと同じ、基準レベルと実質的に同じ、基準レベルの最小値及び/又は最大値を上回りかつ/又は下回る、かつ/又は基準レベルの範囲内であるレベル)は、被検者における高悪性度前立腺癌を示す。1種又は複数のバイオマーカーのレベルが高悪性度前立腺癌と識別する低悪性度前立腺癌陽性基準レベルとの類似性がより大きい(又は高悪性度前立腺癌陽性基準レベルとの類似性がより小さい)場合、結果は被検者における低悪性度前立腺癌を示す。1種又は複数のバイオマーカーのレベルが低悪性度前立腺癌と識別する高悪性度前立腺癌陽性基準レベルとの類似性がより大きい(又は低悪性度前立腺癌陽性基準レベルとの類似性がより小さい)場合、結果は被検者における高悪性度前立腺癌を示す。
【0046】
1種又は複数のバイオマーカーのレベルは、生物学的試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルと低悪性度前立腺癌陽性及び/又は高悪性度前立腺癌陽性基準レベルとの単純比較(例えば、手作業での比較)を含む、様々な手法を用いて高悪性度前立腺癌と識別する低悪性度前立腺癌陽性基準レベル及び/又は低悪性度前立腺癌と識別する高悪性度前立腺癌陽性基準レベルと比較することができる。生物学的試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルはまた、1つ又は複数の統計解析(例えば、t−検定、WelchのT−検定、Wilcoxonの順位和−検定、ランダムフォレスト)を用いて高悪性度前立腺癌と識別する低悪性度前立腺癌陽性基準レベル及び/又は低悪性度前立腺癌と識別する高悪性度前立腺癌陽性基準レベルと比較することができる。
【0047】
さらに、生物学的試料は、1つ又は複数の非バイオマーカー化合物のレベルを測定するために分析することができる。そのような非バイオマーカー化合物のレベルによっても、低悪性度前立腺癌と高悪性度前立腺癌との識別が可能である。
【0048】
III.前立腺癌の素因を判断する方法
前立腺癌のバイオマーカーの特定は、前立腺癌の症状を有さない被検者に前立腺癌を発現する素因があるかどうかの判断も可能にする。前立腺癌の症状を有さない被検者が前立腺癌を発現する素因があるかどうかを判断する方法は、(1)被検者からの生物学的試料を分析して、試料中の表1、2、4、5、6、7、9、10、13、15、18、22及び/又は24に示す1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定することと、(2)被検者に前立腺癌を発現する素因があるかどうかを判断するために、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを1種又は複数のバイオマーカーの前立腺癌陽性及び/又は前立腺癌陰性基準レベルと比較することとを含む。該方法の結果は、被検者に前立腺癌を発現する素因があるかどうかの臨床的判断に有用な他の方法(又はその結果)とともに用いることができる。
【0049】
前立腺癌を診断する(又はその診断の助けとなる)方法に関連して上述したように、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定するために、適切な方法を用いて生物学的試料を分析することができる。
【0050】
上述の前立腺癌を診断する(又はその診断の助けとなる)方法と同様に、表1、2、4、5、6、7、9、10、13、15、18、22及び/又は24或いはそのいずれか一部におけるすべてのバイオマーカーの組合せを含む、1種のバイオマーカー、2種以上のバイオマーカー、3種以上のバイオマーカー、4種以上のバイオマーカー、5種以上のバイオマーカー、6種以上のバイオマーカー、7種以上のバイオマーカー、8種以上のバイオマーカー、9種以上のバイオマーカー、10種以上のバイオマーカーのレベルを測定し、前立腺癌の症状を有さない被検者に前立腺癌を発現する素因があるかどうかを判断する方法に用いることができる。
【0051】
試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定した後に、被検者に前立腺癌を発現する素因があるかどうかを予測するために、該レベルを前立腺癌陽性及び/又は前立腺癌陰性基準レベルと比較する。前立腺癌陽性基準レベルに適合する試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(例えば、基準レベルと同じ、基準レベルと実質的に同じ、基準レベルの最小値及び/又は最大値を上回りかつ/又は下回る、かつ/又は基準レベルの範囲内であるレベル)は、被検者に前立腺癌を発現する素因があることを示す。前立腺癌陰性基準レベルに適合する試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(例えば、基準レベルと同じ、基準レベルと実質的に同じ、基準レベルの最小値及び/又は最大値を上回りかつ/又は下回る、かつ/又は基準レベルの範囲内であるレベル)は、被検者に前立腺癌を発現する素因がないことを示す。前立腺癌陰性基準レベルと比較して試料中に差別的に存在する1種又は複数のバイオマーカーのレベル(特に統計的に有意であるレベル)は、被検者に前立腺癌を発現する素因があることを示す。前立腺癌陽性基準レベルと比較して試料中に差別的に存在する1種又は複数のバイオマーカーのレベル(特に統計的に有意であるレベル)は、被検者に前立腺癌を発現する素因がないことを示す。
【0052】
さらに、前立腺癌を有さない被検者に前立腺癌を発現する素因があるか否かを評価することに特異的な基準レベルを決定することも可能であると思われる。例えば、前立腺癌を発現することに関する被検者におけるリスクの異なる程度(例えば、低、中、高)を評価するためのバイオマーカーの基準レベルを決定することが可能であると思われる。そのような基準レベルは、被検者からの生物学的試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルとの比較に用いることができると思われる。
【0053】
上述の方法と同様に、1種又は複数のバイオマーカーのレベルは、単純比較、1種又は複数の統計解析及びその組合せを含む、様々な手法を用いて前立腺癌陽性及び/又は前立腺癌陰性基準レベルと比較することができる。
【0054】
被検者が前立腺癌を有するかどうかを診断する(又は診断の助けとなる)方法と同様に、前立腺癌の症状を有さない被検者に前立腺癌を発現する素因があるかどうかを判断する方法は、生物学的試料を分析して1つ又は複数の非バイオマーカー化合物のレベルを測定することをさらに含む。
【0055】
前立腺癌の症状を有さない被検者に前立腺癌を発現する素因があるかどうかを判断する方法は、前立腺癌の症状を有さない被検者に低悪性度前立腺癌及び/又は高悪性度前立腺癌を発現する素因があるかどうかを判断するために具体的に実施することもできる。低悪性度前立腺癌に特異的なバイオマーカーを表1、6、9及び22に示し、高悪性度前立腺癌に特異的なバイオマーカーを表2、7、10及び24に示す。
【0056】
さらに、低悪性度前立腺癌を有する被検者に高悪性度前立腺癌を発現する素因があるかどうかを判断する方法は、表3、8、11、20及び26から選択される1種又は複数のバイオマーカーを用いて実施することができる。
【0057】
IV.前立腺癌の進行/退縮をモニタリングする方法
前立腺癌のバイオマーカーの特定により、被検者における前立腺癌の進行/退縮をモニタリングすることも可能になる。被検者における前立腺癌の進行/退縮をモニタリングする方法は、(1)被検者から第1の時点に得た第1の生物学的試料を分析して、表1、2、3、4、5、6、7、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26から選択される前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定することと、(2)被検者から第2の時点に得た第2の生物学的試料を分析して、1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定することと、(3)被検者における前立腺癌の進行/退縮をモニターするために、第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを第2の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルと比較することとを含む。
【0058】
時間の経過に伴う1種又は複数のバイオマーカーのレベルの変化(もしあれば)は、被検者における前立腺癌の進行又は退縮を示す可能性がある。被検者における前立腺癌の経過を明らかにするために、第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル、第2の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル、及び/又は第1及び第2の試料中のバイオマーカーのレベルの比較の結果を、前立腺癌陽性、前立腺癌陰性、低悪性度前立腺癌陽性、低悪性度前立腺癌陰性、高悪性度前立腺癌陽性、及び/又は高悪性度前立腺癌陰性基準レベル並びに高悪性度前立腺癌と識別する低悪性度前立腺癌陽性基準レベル及び/又は低悪性度前立腺癌と識別する高悪性度前立腺癌陽性基準レベルと比較することができる。比較により、(例えば、第1の試料と比較して第2の試料中の)1種又は複数のバイオマーカーのレベルが時間の経過とともに増加又は減少して前立腺癌陽性基準レベルにより類似した状態(又は前立腺癌陰性基準レベルにより類似しない状態)に、高悪性度前立腺癌基準レベルにより類似した状態に、或いは、被検者が最初に低悪性度前立腺癌を有するときに、低悪性度前立腺癌と識別する高悪性度前立腺癌陽性基準レベルになることが示される場合、これらの結果は、前立腺癌の進行を示す。比較により、1種又は複数のバイオマーカーのレベルが時間の経過とともに増加又は減少して前立腺癌陰性基準レベルにより類似した状態(又は前立腺癌陽性基準レベルにより類似しない状態)に、或いは、被検者が最初に高悪性度前立腺癌を有するときに、低悪性度前立腺癌基準レベル及び/又は高悪性度前立腺癌と識別する低悪性度前立腺癌陽性基準レベルになることが示される場合、これらの結果は、前立腺癌の退縮を示す。
【0059】
本明細書で述べた他の方法と同様に、被検者における前立腺癌の進行/退縮をモニタリングする方法において行う比較は、単純比較、1つ又は複数の統計解析及びその組合せを含む、様々な手法を用いて行うことができる。
【0060】
該方法の結果は、被検者における前立腺癌の進行/退縮の臨床的モニタリングに有用な他の方法(又はその結果)とともに用いることができる。
【0061】
前立腺癌を診断する(又はその診断の助けとなる)方法に関連して上述したように、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定するために、適切な方法を用いて生物学的試料を分析することができる。さらに、表1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26或いはそのいずれか一部のバイオマーカーのすべての組合せを含む、1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定し、被検者における前立腺癌の進行/退縮のモニタリングの方法に用いることができる。
【0062】
そのような方法は、前立腺癌を有する被検者における前立腺癌の経過をモニターするために実施することができ、或いは前立腺癌の素因のレベルをモニターするために前立腺癌を有さない被検者(例えば、前立腺癌を発現する素因があると疑われている被検者)に用いることができると思われる。
【0063】
V.前立腺癌の治療用の組成物の有効性を評価する方法
前立腺癌のバイオマーカーの特定により、前立腺癌の治療用の組成物の有効性の評価並びに前立腺癌の治療用の2種以上の組成物の相対的有効性の評価も可能になる。そのような評価は、例えば、有効性試験並びに前立腺癌の治療用の組成物の先導的選択に用いることができる。
【0064】
前立腺癌の治療用の組成物の有効性を評価する方法は、(1)前立腺癌を有し、現在又は以前に組成物の投与を受けている被検者からの生物学的試料を分析して、表1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26から選択される1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定することと、(2)試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、(a)組成物を投与する前に被検者から得た被検者からの予め採取した生物学的試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル、(b)1種又は複数のバイオマーカーの前立腺癌陽性基準レベル(低悪性度前立腺癌陽性及び/又は高悪性度前立腺癌陽性基準レベルを含む)、(c)1種又は複数のバイオマーカーの前立腺癌陰性基準レベル(低悪性度前立腺癌陰性及び/又は高悪性度前立腺癌陰性基準レベルを含む)、(d)高悪性度前立腺癌と識別する低悪性度前立腺癌陽性基準レベル、及び/又は(e)低悪性度前立腺癌と識別する高悪性度前立腺癌陽性基準レベルと比較することとを含む。比較の結果は、前立腺癌の治療用の組成物の有効性を示す。
【0065】
したがって、前立腺癌の治療用の組成物の有効性を明らかにするために、生物学的試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、(1)前立腺癌陽性基準レベル、(2)前立腺癌陰性基準レベル、(3)組成物の投与の前の被検者における1種又は複数のバイオマーカーの以前のレベル、(4)高悪性度前立腺癌と識別する低悪性度前立腺癌陽性基準レベル、及び/又は(5)低悪性度前立腺癌と識別する高悪性度前立腺癌陽性基準レベルと比較する。
【0066】
生物学的試料(前立腺癌を有し、現在又は以前に組成物の投与を受けている被検者からの)中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを前立腺癌陽性基準レベル及び/又は前立腺癌陰性基準レベルと比較するとき、前立腺癌陰性基準レベルに適合する試料中のレベル(例えば、基準レベルと同じ、基準レベルと実質的に同じ、基準レベルの最小値及び/又は最大値を上回りかつ/又は下回る、かつ/又は基準レベルの範囲内であるレベル)は、組成物が前立腺癌を治療する有効性を有することを示す。前立腺癌陽性基準レベルに適合する試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(例えば、基準レベルと同じ、基準レベルと実質的に同じ、基準レベルの最小値及び/又は最大値を上回りかつ/又は下回る、かつ/又は基準レベルの範囲内であるレベル)は、組成物が前立腺癌を治療する有効性を有さないことを示す。該比較は、1種又は複数のバイオマーカーのレベルに基づく前立腺癌を治療する有効性の程度も示す可能性がある。
【0067】
生物学的試料(高悪性度前立腺癌を有し、現在又は以前に組成物の投与を受けている被検者からの)中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを高悪性度前立腺癌と識別する低悪性度前立腺癌陽性基準レベル及び/又は低悪性度前立腺癌と識別する高悪性度前立腺癌陽性基準レベルと比較するとき、高悪性度前立腺癌と識別する低悪性度前立腺癌陽性基準レベルに適合する試料中のレベル(例えば、基準レベルと同じ、基準レベルと実質的に同じ、基準レベルの最小値及び/又は最大値を上回りかつ/又は下回る、かつ/又は基準レベルの範囲内であるレベル)は、組成物が前立腺癌を治療する有効性を有することを示す。低悪性度前立腺癌と識別する高悪性度前立腺癌陽性基準レベルに適合する試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(例えば、基準レベルと同じ、基準レベルと実質的に同じ、基準レベルの最小値及び/又は最大値を上回りかつ/又は下回る、かつ/又は基準レベルの範囲内であるレベル)は、組成物が前立腺癌を治療する有効性を有さないことを示す。
【0068】
生物学的試料(前立腺癌を有し、現在又は以前に組成物の投与を受けている被検者からの)中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを組成物の投与前に被検者から予め採取した生物学的試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルと比較するとき、1種又は複数のバイオマーカーのレベルの変化は、前立腺癌の治療用の組成物の有効性を示す。すなわち、比較により、1種又は複数のバイオマーカーのレベルが組成物の投与後に増加又は減少して前立腺癌陰性基準レベルにより類似した状態(又は前立腺癌陽性基準レベルにより類似しない状態)になったか、或いは、被検者が最初に高悪性度前立腺癌を有しているとき、レベルが増加又は減少して高悪性度前立腺癌と識別する低悪性度前立腺癌陽性基準レベルにより類似した状態(又は低悪性度前立腺癌と識別する高悪性度前立腺癌陽性基準レベルにより類似しない状態)になったことが示される場合、これらの結果は、組成物が前立腺癌を治療する有効性を有することを示す。比較により、1種又は複数のバイオマーカーのレベルが組成物の投与後に増加又は減少して前立腺癌陰性基準レベルにより類似した状態(又は前立腺癌陽性基準レベルにより類似しない状態)にならなかったか、或いは、被検者が最初に高悪性度前立腺癌を有しているとき、レベルが増加又は減少して高悪性度前立腺癌と識別する低悪性度前立腺癌陽性基準レベルにより類似した状態(又は低悪性度前立腺癌と識別する高悪性度前立腺癌陽性基準レベルにより類似しない状態)にならなかったことが示される場合、これらの結果は、組成物が前立腺癌を治療する有効性を有さないことを示す。該比較は、投与後の1種又は複数のバイオマーカーのレベルの認められた変化の量に基づく前立腺癌を治療する有効性の程度も示す可能性がある。そのような比較を特徴づける助けとするために、1種又は複数のバイオマーカーのレベルの変化、投与前の1種又は複数のバイオマーカーのレベル及び/又は現在又は以前に組成物の投与を受けている被検者における1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、前立腺癌陽性基準レベル(低悪性度及び高悪性度前立腺癌陽性基準レベルを含む)、前立腺癌陰性基準レベル(低悪性度及び高悪性度前立腺癌陰性基準レベルを含む)、高悪性度前立腺癌と識別する低悪性度前立腺癌陽性基準レベル及び/又は低悪性度前立腺癌と識別する高悪性度前立腺癌陽性基準レベルと比較することができる。
【0069】
前立腺癌の治療における組成物の有効性を評価する他の方法は、(1)被検者から第1の時点に得た被検者の第1の生物学的試料を分析して、表1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26から選択される1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定することと、(2)被検者に組成物を投与することと、(3)被検者から組成物の投与後の第2の時点に得た被検者の第2の生物学的試料を分析して、1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定することと、(4)前立腺癌を治療するための組成物の有効性を評価するために、第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを第2の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルと比較することとを含む。上で示したように、試料の比較により、1種又は複数のバイオマーカーのレベルが組成物の投与後に増加又は減少して前立腺癌陰性基準レベルにより類似した状態(又は前立腺癌陽性基準レベルにより類似しない状態)になったか、或いは、被検者が最初に高悪性度前立腺癌を有しているとき、レベルが増加又は減少して高悪性度前立腺癌と識別する低悪性度前立腺癌陽性基準レベルにより類似した状態(又は低悪性度前立腺癌と識別する高悪性度前立腺癌陽性基準レベルにより類似しない状態)になったことが示される場合、これらの結果は、組成物が前立腺癌を治療する有効性を有することを示す。比較により、1種又は複数のバイオマーカーのレベルが組成物の投与後に増加又は減少して前立腺癌陰性基準レベルにより類似した状態(又は前立腺癌陽性基準レベルにより類似しない状態)にならなかったか、或いは、被検者が最初に高悪性度前立腺癌を有しているとき、レベルが増加又は減少して高悪性度前立腺癌と識別する低悪性度前立腺癌陽性基準レベルにより類似した状態(又は低悪性度前立腺癌と識別する高悪性度前立腺癌陽性基準レベルにより類似しない状態)にならなかったことが示される場合、これらの結果は、組成物が前立腺癌を治療する有効性を有さないことを示す。該比較は、上述のように組成物の投与後の1種又は複数のバイオマーカーのレベルの認められた変化の量に基づく前立腺癌を治療する有効性の程度も示す可能性がある。
【0070】
前立腺癌を治療する2種以上の組成物の相対的有効性を評価する方法は、(1)前立腺癌を有し、現在又は以前に第1の組成物の投与を受けている第1の被検者からの第1の生物学的試料を分析して、表1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26から選択される1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定することと、(2)前立腺癌を有し、現在又は以前に第2の組成物の投与を受けている第2の被検者からの第2の生物学的試料を分析して、1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定することと、(3)前立腺癌を治療する第1及び第2の組成物の相対的有効性を評価するために、第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを第2の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルと比較することとを含む。結果は、2種の組成物の相対的有効性を示すものであり、また、相対的有効性を明らかにする助けとするために、結果(或いは第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル及び/又は第2の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル)を、前立腺癌陽性基準レベル(低悪性度及び高悪性度前立腺癌陽性基準レベルを含む)、前立腺癌陰性基準レベル(低悪性度及び高悪性度前立腺癌陰性基準レベルを含む)、高悪性度前立腺癌と識別する低悪性度前立腺癌陽性基準レベル及び/又は低悪性度前立腺癌と識別する高悪性度前立腺癌陽性基準レベルと比較することができる。
【0071】
有効性を評価する方法のそれぞれは、1例又は複数例の被検者或いは被検者の1群又は複数の群において実施することができる(例えば、第1の群に第1の組成物を投与し、第2の群に第2の組成物を投与する)。
【0072】
本明細書で述べた他の方法と同様に、前立腺癌の治療用の組成物の有効性(又は相対的有効性)を評価する方法において行う比較は、単純比較、1つ又は複数の統計解析及びその組合せを含む、様々な手法を用いて行うことができる。試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定するために、適切な方法を用いて生物学的試料を分析することができる。さらに、表1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26或いはそのいずれか一部におけるすべてのバイオマーカーの組合せを含む、1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定し、前立腺癌の治療用の組成物の有効性(又は相対的有効性)を評価する方法に用いることができる。
【0073】
最後に、前立腺癌を治療する1つ又は複数の組成物の有効性(又は相対的有効性)を評価する方法は、生物学的試料を分析して、1つ又は複数の非バイオマーカー化合物のレベルを測定することをさらに含んでいてもよい。次いで、非バイオマーカー化合物を、前立腺癌を有する(又は有さない)被検者の非バイオマーカー化合物の基準レベルと比較してもよい。
【0074】
VI.前立腺癌に関連するバイオマーカーを調節する活性について組成物をスクリーニングする方法
前立腺癌のバイオマーカーの特定により、前立腺癌の治療に有用であると思われる、前立腺癌に関連するバイオマーカーを調節する活性について化合物をスクリーニングすることも可能となる。前立腺癌の治療に有用な組成物をスクリーニングする方法は、表1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26における1種又は複数のバイオマーカーのレベルを調節する活性について試験組成物をアッセイすることを含む。そのようなスクリーニングアッセイは、in vitro及び/又はin vivoで行うことができ、例えば、細胞培養アッセイ、器官培養アッセイ及びin vivoアッセイ(例えば、動物モデルを対象とするアッセイ)などの試験組成物の存在下でのそのようなバイオマーカーの調節をアッセイするのに有用な当技術分野で知られているあらゆる形であってよい。
【0075】
1つの実施形態において、前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカーを調節する活性について組成物をスクリーニングする方法は、(1)1個又は複数の細胞を組成物と接触させることと、(2)1個又は複数の細胞の少なくとも一部又は細胞に関連する生物学的試料を分析して、表1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26から選択される前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定することと、(3)組成物が1種又は複数のバイオマーカーのレベルを調節したかどうかを判断するために、1種又は複数のバイオマーカーのレベルを1種又は複数のバイオマーカーの予め定めた標準レベルと比較することとを含む。上述のように、細胞は、組成物とin vitro及び/又はin vivoで接触させることができる。1種又は複数のバイオマーカーの予め定めた標準レベルは、組成物の非存在下での1つ又は複数の細胞における1種又は複数のバイオマーカーのレベルであってもよい。1種又は複数のバイオマーカーの予め定めた標準レベルは、組成物と接触させなかった対照細胞中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルであってもよい。
【0076】
さらに、該方法は、1個又は複数の細胞の少なくとも一部又は細胞に関連する生物学的試料を分析して、前立腺癌の1つ又は複数の非バイオマーカー化合物のレベルを測定することをさらに含む。次いで、非バイオマーカー化合物のレベルを1つ又は複数の非バイオマーカー化合物の予め定めた標準レベルと比較することができる。
【0077】
1種又は複数のバイオマーカーのレベル(又は非バイオマーカー化合物のレベル)を測定するために、適切な分析方法を用いて1個又は複数の細胞の少なくとも一部又は細胞に関連する生物学的試料を分析することができる。適切な方法としては、クロマトグラフィー(例えば、HPLC、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー)、質量分析(例えば、MS、MS−MS)、ELISA、抗体結合、他の免疫化学的手法及びその組合せが挙げられる。さらに、1種又は複数のバイオマーカーのレベル(又は非バイオマーカー化合物のレベル)は、例えば、測定することが望ましいバイオマーカーのレベルと相関する化合物(又は複数の化合物)のレベルを測定するアッセイ法を用いることによって、間接的に測定することができる。
【0078】
VII.潜在的薬物標的を特定する方法
前立腺癌のバイオマーカーの特定により、前立腺癌の潜在的薬物標的を特定することも可能になる。前立腺癌の潜在的薬物標的を特定する方法は、(1)表1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26から選択される前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカーに関連する1種又は複数の生化学的経路を特定することと、(2)特定された1種又は複数の生化学的経路の少なくとも1種に影響を及ぼし、前立腺癌の潜在的薬物標的であるタンパク質(例えば、酵素)を特定することとを含む。
【0079】
前立腺癌の潜在的薬物標的を特定する他の方法は、(1)表1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26から選択される前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカー並びに前立腺癌の1つ又は複数の非バイオマーカー化合物に関連する1種又は複数の生化学的経路を特定することと、(2)特定された1種又は複数の生化学的経路の少なくとも1種に影響を及ぼし、前立腺癌の潜在的薬物標的であるタンパク質を特定することとを含む。
【0080】
1種又は複数のバイオマーカー(又は非バイオマーカー化合物)に関連する1種又は複数の生化学的経路(例えば、生合成及び/又は代謝(異化)経路)を特定する。生化学的経路が特定された後に、経路の少なくとも1つに影響を及ぼす1つ又は複数のタンパク質を特定する。好ましくは、複数の経路に影響を及ぼすそれらのタンパク質を特定する。
【0081】
1つの代謝物(例えば、経路中間体)の蓄積は、代謝物の「ブロック」下流の存在を示している可能性があり、ブロックは、下流代謝物(例えば、生合成経路の生成物)の低/非存在レベルをもたらす可能性がある。同様な態様で、代謝物の非存在は、不活性若しくは非機能酵素に起因する、又は生成物を生成させるための基質を必要とする生化学的中間体の非利用可能性に起因する代謝物の上流の経路における「ブロック」の存在を示している可能性がある。或いは、代謝物のレベルの増加は、次に他の関連経路の変化につながる代謝物の過剰生成及び/又は蓄積をもたらし、経路を介しての正常なフラックスの調節不全をもたらす異常なタンパク質を生成させる遺伝的突然変異を示している可能性がある。さらに、生化学的中間代謝物の蓄積は、有毒であるか、又は関連経路の必要な中間体の生成に障害をもたらす可能性がある。経路間の関係は現在のところ不明であり、このデータによってそのような関係が明らかになる可能性がある。
【0082】
例えば、データは、窒素の排泄、アミノ酸代謝、エネルギー代謝、酸化ストレス、プリン代謝及び胆汁酸代謝に関わる生化学的経路における代謝物が前立腺癌被検者において濃縮されていることを示している。さらに、ポリアミンレベルは癌被検者においてより高く、これは、オルニチンデカルボキシラーゼ酵素のレベル及び/又は活性が増加していることを示している。ポリアミンは有糸分裂剤として作用可能であり、フリーラジカルによるダメージと関連付けられてきたことが知られている。これらの知見は、ポリアミンの生成(又は異常なバイオマーカー)をもたらす経路が薬物の発見に有用な多くの潜在的標的を提供することを示している。
【0083】
潜在的薬物標的として特定されたタンパク質は、次に、遺伝子治療用組成物を含む、前立腺癌の治療用の潜在的候補である組成物を特定するのに用いることができる。
【0084】
VIII.前立腺癌を治療する方法
前立腺癌のバイオマーカーの特定により、前立腺癌の治療も可能になる。例えば、前立腺癌を有する被検者を治療するために、前立腺癌を有さない健康な被検者と比較して前立腺癌において低くなっている、有効な量の1つ又は複数の前立腺癌バイオマーカーを被検者に投与することができる。投与することができるバイオマーカーは、前立腺癌において減少している表1、2、4、5、6、7、9、10、13、15、18、20、22、24及び/又は26における1つ又は複数のバイオマーカーを含む。いくつかの実施形態において、投与するバイオマーカーは、前立腺癌において減少しており、0.10未満のp値を有する表1、2、4、5、6、7、9、10、13、15、18、20、22、24及び/又は26に示す1種又は複数のバイオマーカーである。他の実施形態において、投与するバイオマーカーは、前立腺癌において少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%(すなわち、存在しない)減少している表1、2及び/又は3に示す1種又は複数のバイオマーカーである。
【0085】
IX.他の種類の前立腺癌に対して前立腺癌バイオマーカーを用いる方法
本明細書に記載した重大な(major)前立腺癌のバイオマーカーの一部は、例えば、肺癌又は腎臓癌などの他の種類の癌のバイオマーカーであってもよいと考えられる。したがって、前立腺癌バイオマーカーの少なくとも一部は、他の種類の癌に対する本明細書に記載した方法に用いることができると考えられる。すなわち、前立腺癌に関して本明細書に記載した方法は、あらゆる種類の癌を診断するため(又はその診断の助けとするため)、あらゆる種類の癌の進行/退縮をモニタリングする方法、あらゆる種類の癌の治療用の組成物の有効性を評価する方法、あらゆる種類の癌に関連するバイオマーカーを調節する活性について組成物をスクリーニングする方法、あらゆる種類の癌の潜在的薬物標的を特定する方法及びあらゆる種類の癌を治療する方法に用いることもできる。そのような方法は、前立腺癌に関して本明細書に記載したように実施することができよう。
【0086】
X.他の前立腺障害に対して前立腺癌バイオマーカーを用いる方法
本明細書に記載した前立腺癌のバイオマーカーの一部は、一般的に前立腺障害(例えば、前立腺炎、良性前立腺肥大(BHP))のバイオマーカーであってもよいと考えられる。したがって、前立腺癌バイオマーカーの少なくとも一部は、一般的に前立腺障害について本明細書に記載した方法に用いることができると考えられる。すなわち、前立腺癌に関して本明細書に記載した方法は、前立腺障害を診断するため(又はその診断の助けとするため)、前立腺障害の進行/退縮をモニタリングする方法、前立腺障害の治療用の組成物の有効性を評価する方法、前立腺障害に関連するバイオマーカーを調節する活性について組成物をスクリーニングする方法、前立腺障害の潜在的薬物標的を特定する方法及び前立腺障害を治療する方法に用いることもできる。そのような方法は、前立腺癌に関して本明細書に記載したように実施することができよう。
【0087】
XI.他の方法
本明細書において述べたバイオマーカーを用いる他の方法も考えることができる。例えば、米国特許第7,005,255号及び米国特許出願第10/695,265号に記載されている方法は、本明細書に開示した1つ又は複数のバイオマーカーを含む小分子プロファイルを用いて実施することができる。
【0088】
本明細書に示すあらゆる方法において、用いるバイオマーカーは、0.05未満のp値を有する表1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26のバイオマーカー及び/又は0.10未満のq値を有する表1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26のバイオマーカーから選択することができる。本明細書に示すあらゆる方法において用いるバイオマーカーはまた、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%(すなわち、存在しない)前立腺癌において減少している(対照と比較して)又は寛解において減少している(対照又は前立腺癌と比較して)表1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26のバイオマーカー及び/又は少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%又はそれ以上前立腺癌において増加している(対照又は寛解と比較して)又は寛解において増加している(対照又は前立腺癌と比較して)表1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26のバイオマーカーから選択することができる。
【実施例】
【0089】
本発明は、非限定的であることを意図する以下の実例によりさらに説明することとする。
【0090】
I.一般的方法
A.前立腺癌の代謝プロファイルの特定
各試料を分析して数百種の代謝物の濃度を測定した。GC−MS(ガスクロマトグラフィー質量分析)及びLC−MS(液体クロマトグラフィー質量分析)などの分析法を用いて代謝物を分析した。複数の分割量を同時に、並行して分析し、適切な品質管理(QC)後に、各分析により得られた情報を再び合わせた。すべての試料を、最終的に数百の化学種に等しい数千の特性により特徴づけた。用いた手法は、新規かつ化学的に非命名の化合物を同定することができた。
【0091】
B.統計解析
データをT−検定を用いて解析して、定義可能な集団間(例えば、前立腺癌と対照、低悪性度前立腺癌と高悪性度前立腺癌)の識別に有用な定義可能な集団又は亜集団中に異なるレベル(例えば、対照生物学的試料と比較又は前立腺癌からの寛解状態にある患者と比較した前立腺癌生物学的試料のバイオマーカー)で存在する分子(既知の命名代謝物又は非命名代謝物)を特定した。定義可能な集団又は亜集団中の他の分子(既知の命名代謝物又は非命名代謝物)も特定された。
【0092】
データをランダムフォレスト解析も用いて解析した。ランダムフォレストは、新たなデータセットにおける個別値を既存の群にどれほどよく分類することができるかの推定を与える。ランダムフォレスト解析は、実験ユニット及び化合物の連続サンプリングに基づき分類樹の組を作る。次いで、各所見をすべての分類樹からの多数決に基づいて分類する。統計では、分類樹が変数(この場合には変数は代謝物又は化合物である)の組合せに基づいて所見を群に分類する。樹を作るのに用いられるアルゴリズムに多くの変形形態が存在する。樹アルゴリズムは、2群間の最大の分離をもたらす代謝物(化合物)を検索する。これがノードを生じさせる。次いで、各ノードにおいて、最良の分離をもたらす代謝物を用い、以下同様にする。ノードを改善することができない場合、当ノードで停止し、当ノードにおける所見を過半数の群と分類する。
【0093】
ランダムフォレストは、多数(例えば、数千)の樹に基づいて分類する。化合物のサブセット及び所見のサブセットを用いて、各樹を作る。樹を作るのに用いた所見をインバッグ(in−bag)試料と呼び、残りの試料をアウトオブバッグ(out−of−bag)試料と呼ぶ。分類樹をインバッグ試料から作り、この樹からアウトオブバッグを予測する。所見の最終分類を得るために、所見がアウトオブバッグ試料であった時に基づいて各群の「投票」をカウントする。例えば、所見1が2000の樹により「対照」と分類されたが、3000の樹により「疾患」と分類されたと想定する。「過半数での勝ち」を基準として用いると、この試料は「疾患」と分類される。
【0094】
ランダムフォレストの結果を混同対照表にまとめる。行は真の分類に対応し、列はランダムフォレストによる分類に対応する。したがって、対角要素が正しい分類を示す。2群では偶然により50%の誤りが発生し、3群では偶然により66.67%の誤りが発生する等々であろう。「アウトオブバッグ」(OOB)過誤率は、ランダムフォレストモデルを用いて新たな所見をどれほど正確に予測することができるかの推定を与える(例えば、試料が罹患被検者からのものか、又は対照被検者からのものか)。
【0095】
変数が最終分類においてより「重要」であることを確認することも興味深い。「重要度プロット」は、それらの重要度により順位づけられた上位の化合物を示す。重要度を順位づける異なる基準が存在するが、一般的な概念は、重要な変数を除くことは重要性がより低い変数より正確さのより大きい低下を引き起こすということである。
【0096】
C.バイオマーカーの特定
統計的に有意と特定されたものを含む、分析(例えば、GC−MS、LC−MS、MS−MS)で特定された種々のピークを質量分析に基づく化学的同定法に供した。
【0097】
(実施例1)(組織)
(1)ヒト被検者の異なる群からの組織試料を分析して、試料中の代謝物のレベルを測定し、(2)結果を統計的に解析して、2群に差別的に存在した代謝物を決定することにより、バイオマーカーが発見された。
【0098】
分析に用いた組織試料は、癌細胞を含まない前立腺組織の切片から得られた癌を含まなかった16の対照組織(すなわち、癌性前立腺からのもので、癌細胞を含まないと判断された)、限局性前立腺癌腫瘍(すなわち、より低悪性度の前立腺癌)からの12の前立腺組織試料及び遠位転移性前立腺癌腫瘍(すなわち、高悪性度の前立腺癌)からの14の前立腺組織試料であった。代謝物のレベルを測定した後に、データを一変量T−検定(すなわち、WelchのT−検定)を用いて解析した。
【0099】
T−検定を用いて2つの集団の間(すなわち、より低悪性度前立腺癌対対照、転移性/高悪性度前立腺癌対対照、転移性/高悪性度前立腺癌対より低悪性度前立腺癌)の代謝物の平均レベルの差を検討した。
【0100】
バイオマーカー
下の表1に示すように、より低悪性度の限局性前立腺癌腫瘍及び癌細胞がないと判断された対照前立腺組織(すなわち、患者から除去された癌性前立腺からの癌細胞を含まない前立腺組織の切片)からの組織試料の間に差別的に存在したバイオマーカーが発見された。表2に転移性前立腺癌(すなわち、高悪性度前立腺癌)を有する被検者からの前立腺腫瘍試料からの組織と対照前立腺組織との間に差別的に存在したことが発見されたバイオマーカーを示す。表3に転移性前立腺癌(すなわち、高悪性度前立腺癌)を有する被検者からの前立腺腫瘍試料からの組織試料とより低悪性度の限局性前立腺癌腫瘍からの組織試料との間に差別的に存在したことが発見されたバイオマーカーを示す。
【0101】
表1〜3に、列挙した各バイオマーカーについてのデータの統計解析で決定されたp値及びq値、並びに対照平均レベルと比較したより低悪性度前立腺癌(PCA)平均レベル(表1)、対照平均レベルと比較した高悪性度前立腺癌平均レベル(表2)及びより低悪性度前立腺癌平均レベルと比較した高悪性度前立腺癌平均レベル(表3)の差のパーセントの表示を含める。表で用いた「同重体」という用語は、分析に用いた分析プラットフォームで互いに識別することができなかった化合物(すなわち、ほぼ同時に溶出し、類似(かつ時には正確に同じ)クアントイオンを有し、したがって、識別することができない同重体の化合物)を示す。ライブラリーは、化合物を同定するために用いた化学ライブラリーを示す。数50はGCライブラリーを意味し、数61はLCライブラリーを意味する。
【0102】
表1.対照被検者と比較したより低悪性度前立腺癌を有する被検者からの前立腺癌バイオマーカー
【表1−1】


【表1−2】


【表1−3】


【表1−4】


【表1−5】


【表1−6】


【表1−7】


【表1−8】


【表1−9】


【表1−10】


【表1−11】


【表1−12】


【表1−13】

【0103】
表2.対照被検者と比較した転移性高悪性度前立腺癌を有する被検者からの前立腺癌バイオマーカー
【表2−1】


【表2−2】


【表2−3】


【表2−4】


【表2−5】


【表2−6】


【表2−7】


【表2−8】


【表2−9】


【表2−10】


【表2−11】


【表2−12】


【表2−13】

【0104】
表3.より低悪性度前立腺癌を有する被検者と比較した転移性高悪性度前立腺癌を有する被検者からの前立腺癌バイオマーカー
【表3−1】


【表3−2】


【表3−3】


【表3−4】


【表3−5】


【表3−6】


【表3−7】


【表3−8】


【表3−9】


【表3−10】


【表3−11】


【表3−12】


【表3−13】

【0105】
(実施例2)癌対非癌
バイオマーカーは、(1)ヒト被検者の異なる群からの血漿及び/又は尿試料を分析して、試料中の代謝物のレベルを測定し、(2)結果を統計的に解析して、2群に差別的に存在していた代謝物を決定することによって発見した。
【0106】
分析に用いた血漿及び/又は尿試料は、前立腺癌の陰性生検を有する53例の対照被検者及び前立腺癌を有する48例の被検者からのものであった。代謝物のレベルを測定した後、データを一変量T−検定(すなわち、WelchのT−検定)を用いて解析した。
【0107】
T−検定を用いて、2つの集団(すなわち、前立腺癌対対照血漿、前立腺癌対対照尿)の間の代謝物の平均レベルの差を判定した。
【0108】
バイオマーカー
下の表4に示すように、前立腺癌を有する被検者及び陰性生検を有する対照被検者(すなわち、前立腺癌と診断されなかった)からの血漿試料の間に差別的に存在していたバイオマーカーが発見された。表5に前立腺癌を有する被検者及び対照被検者(すなわち、前立腺癌と診断されなかった)からの尿試料の間に差別的に存在していたバイオマーカーを示す。
【0109】
表4及び5に、バイオマーカーに関するデータの統計解析で求めたp値及びq値、並びに対照平均レベルと比較したより低悪性度の前立腺癌平均レベル(表4)及び対照平均レベルと比較した転移性/高悪性度前立腺癌平均レベル(表5)の差のパーセントの表示を含める。表で用いた「同重体」という用語は、分析に用いた分析プラットフォームで互いに識別することができなかった化合物(すなわち、ほぼ同時に溶出し、類似(かつ時には正確に同じ)クアントイオンを有し、したがって、識別することができない同重体の化合物)を示す。ライブラリーは、化合物を同定するために用いた化学ライブラリーを示す。数50はGCライブラリーを意味し、数35はLCライブラリーを意味する。
【0110】
表4.対照被検者からの血漿と比較した前立腺癌を有する被検者からの血漿からの前立腺癌バイオマーカー
【表4−1】


【表4−2】


【表4−3】


【表4−4】


【表4−5】


【表4−6】


【表4−7】


【表4−8】


【表4−9】


【表4−10】


【表4−11】


【表4−12】

【0111】
表5.対照被検者からの尿と比較した前立腺癌を有する被検者からの尿からの前立腺癌バイオマーカー
【表5−1】


【表5−2】


【表5−3】


【表5−4】


【表5−5】


【表5−6】


【表5−7】


【表5−8】


【表5−9】


【表5−10】


【表5−11】

【0112】
(実施例3)血漿を用いて被検者におけるより低悪性度の前立腺癌をより高悪性度/転移性前立腺癌と識別する
バイオマーカーは、(1)ヒト被検者の異なる群からの血漿試料を分析して、試料中の代謝物のレベルを測定し、(2)結果を統計的に解析して、2群に差別的に存在していた代謝物を決定することによって発見した。
【0113】
分析に用いた血漿試料は、前立腺癌に関する陰性生検を有する53例の対照被検者、より低悪性度の前立腺癌(すなわち、グリーソンスコアメジャー(Gleason Score major)=3)を有する43例の被検者、侵襲性でより高悪性度の前立腺癌(すなわち、グリーソンスコアメジャー=4+)を有する15例の被検者からのものであった。代謝物のレベルを測定した後、データを一変量T−検定(すなわち、WelchのT−検定)を用いて解析した。
【0114】
T−検定を用いて、2つの集団(すなわち、より低悪性度前立腺癌対対照、転移性/高悪性度前立腺癌対対照、転移性/高悪性度前立腺癌対より低悪性度前立腺癌)の間の代謝物の平均レベルの差を判定した。
【0115】
バイオマーカー
下の表6に示すように、より低悪性度前立腺癌を有する被検者からの血漿試料と陰性前立腺生検を有する対照被検者(すなわち、前立腺癌と診断されなかった)からの血漿試料の間に差別的に存在していたバイオマーカーが発見された。表7に転移性/高悪性度前立腺癌を有する被検者からの血漿試料と陰性生検を有する対照被検者(すなわち、前立腺癌と診断されなかった)からの血漿試料の間に差別的に存在していたことが発見されたバイオマーカーを示す。表8に転移性/高悪性度前立腺癌を有する被検者からの血漿試料とより低悪性度前立腺癌を有する被検者からの血漿試料との間に差別的に存在していたことが発見されたバイオマーカーを示す。
【0116】
表6〜8に、列挙した各バイオマーカーについて、バイオマーカーに関するデータの統計解析で求めたp値及びq値、並びに対照平均レベルと比較したより低悪性度前立腺癌平均レベル(表6)、対照平均レベルと比較した転移性/高悪性度前立腺癌平均レベル(表7)、及びより低悪性度前立腺癌平均レベルと比較した転移性/高悪性度前立腺癌平均レベル(表8)の差のパーセントの表示を含める。表で用いた「同重体」という用語は、分析に用いた分析プラットフォームで互いに識別することができなかった化合物(すなわち、ほぼ同時に溶出し、類似(かつ時には正確に同じ)クアントイオンを有し、したがって、識別することができない同重体の化合物)を示す。ライブラリーは、化合物を同定するために用いた化学ライブラリーを示す。数50はGCライブラリーを意味し、数35はLCライブラリーを意味する。
【0117】
バイオマーカーは、(1)ヒト被検者の異なる群からの血漿試料を分析して、試料中の代謝物のレベルを測定し、(2)結果を統計的に解析して、2群に差別的に存在していた代謝物を決定することによって発見した。
【0118】
分析に用いた血漿試料は、前立腺癌に関する陰性生検を有する53例の対照被検者、より低悪性度の前立腺癌(すなわち、グリーソンスコアメジャー=3)を有する43例の被検者、侵襲性でより高悪性度の前立腺癌(すなわち、グリーソンスコアメジャー=4+)を有する15例の被検者からのものであった。代謝物のレベルを測定した後、データを一変量T−検定(すなわち、WelchのT−検定)を用いて解析した。
【0119】
T−検定を用いて、2つの集団(すなわち、より低悪性度前立腺癌対対照、転移性/高悪性度前立腺癌対対照、転移性/高悪性度前立腺癌対より低悪性度前立腺癌)の間の代謝物の平均レベルの差を判定した。
【0120】
表6.非癌とより低悪性度PCAを識別するための血漿代謝物バイオマーカー
【表6−1】


【表6−2】


【表6−3】


【表6−4】


【表6−5】


【表6−6】


【表6−7】


【表6−8】


【表6−9】


【表6−10】

【0121】
表7.非癌とより高悪性度PCAを識別するための血漿代謝物バイオマーカー
【表7−1】


【表7−2】


【表7−3】


【表7−4】


【表7−5】


【表7−6】


【表7−7】


【表7−8】


【表7−9】


【表7−10】


【表7−11】

【0122】
表8.より低悪性度PCAをより高悪性度PCAから識別するための血漿代謝物バイオマーカー
【表8−1】


【表8−2】


【表8−3】


【表8−4】


【表8−5】


【表8−6】


【表8−7】


【表8−8】


【表8−9】


【表8−10】


【表8−11】

【0123】
(実施例4)より低悪性度をより高悪性度と識別する、尿
バイオマーカーは、(1)ヒト被検者の異なる群からの尿試料を分析して、試料中の代謝物のレベルを測定し、(2)結果を統計的に解析して、2群に差別的に存在していた代謝物を決定することによって発見した。
【0124】
分析に用いた尿試料は、前立腺癌に関する陰性生検を有する53例の対照被検者、より低悪性度の前立腺癌(すなわち、グリーソンスコアメジャー=3)を有する43例の被検者、侵襲性の高悪性度の前立腺癌(すなわち、グリーソンスコアメジャー=4+)を有する15例の被検者からのものであった。代謝物のレベルを測定した後、データを一変量T−検定(すなわち、WelchのT−検定)を用いて解析した。
【0125】
T−検定を用いて、2つの集団(すなわち、より低悪性度前立腺癌対対照、転移性/高悪性度前立腺癌対対照、転移性/高悪性度前立腺癌対より低悪性度前立腺癌)の間の代謝物の平均レベルの差を判定した。
【0126】
バイオマーカー
下の表9に示すように、より低悪性度前立腺癌を有する被検者からの尿試料と陰性前立腺生検を有する対照被検者(すなわち、前立腺癌と診断されなかった)からの尿試料の間に差別的に存在していたバイオマーカーが発見された。表10に転移性/高悪性度前立腺癌を有する被検者からの尿試料と陰性生検前立腺を有する対照被検者(すなわち、前立腺癌と診断されなかった)からの尿試料の間に差別的に存在していたことが発見されたバイオマーカーを示す。表11に転移性/高悪性度前立腺癌を有する被検者からの尿試料とより低悪性度前立腺癌を有する被検者からの尿試料との間に差別的に存在していたことが発見されたバイオマーカーを示す。
【0127】
表9〜11に、列挙した各バイオマーカーについて、バイオマーカーに関するデータの統計解析で求めたp値及びq値、並びに対照平均レベルと比較したより低悪性度前立腺癌平均レベル(表9)、対照平均レベルと比較した転移性/高悪性度前立腺癌平均レベル(表10)、及びより低悪性度前立腺癌平均レベルと比較した転移性/高悪性度前立腺癌平均レベル(表11)の差のパーセントの表示を含める。表で用いた「同重体」という用語は、分析に用いた分析プラットフォームで互いに識別することができなかった化合物(すなわち、ほぼ同時に溶出し、類似(かつ時には正確に同じ)クアントイオンを有し、したがって、識別することができない同重体の化合物)を示す。ライブラリーは、化合物を同定するために用いた化学ライブラリーを示す。数50はGCライブラリーを意味し、数35はLCライブラリーを意味する。
【0128】
バイオマーカーは、(1)ヒト被検者の異なる群からの尿試料を分析して、試料中の代謝物のレベルを測定し、(2)結果を統計的に解析して、2群に差別的に存在していた代謝物を決定することによって発見した。
【0129】
分析に用いた尿試料は、前立腺癌に関する陰性生検を有する53例の対照被検者、より低悪性度の前立腺癌(すなわち、グリーソンスコアメジャー=3)を有する43例の被検者、侵襲性でより高悪性度の前立腺癌(すなわち、グリーソンスコアメジャー=4+)を有する15例の被検者からのものであった。代謝物のレベルを測定した後、データを一変量T−検定(すなわち、WelchのT−検定)を用いて解析した。
【0130】
T−検定を用いて、2つの集団(すなわち、より低悪性度前立腺癌対対照、転移性/高悪性度前立腺癌対対照、転移性/高悪性度前立腺癌対より低悪性度前立腺癌)の間の代謝物の平均レベルの差を判定した。
【0131】
表9.非癌とより低悪性度PCAを識別するための尿代謝物バイオマーカー
【表9−1】


【表9−2】


【表9−3】


【表9−4】


【表9−5】


【表9−6】


【表9−7】


【表9−8】


【表9−9】


【表9−10】


【表9−11】

【0132】
表10.非癌とより高悪性度PCAを識別するための尿代謝物バイオマーカー
【表10−1】


【表10−2】


【表10−3】


【表10−4】


【表10−5】


【表10−6】


【表10−7】


【表10−8】


【表10−9】


【表10−10】


【表10−11】

【0133】
表11.より低悪性度PCAをより高悪性度PCAと識別するための尿代謝物バイオマーカー
【表11−1】


【表11−2】


【表11−3】


【表11−4】


【表11−5】


【表11−6】


【表11−7】


【表11−8】


【表11−9】


【表11−10】


【表11−11】

【0134】
(実施例5)組織試料の分類のためのランダムフォレスト解析
組織試料に関する実施例1で得られたデータを用いて、ランダムフォレストモデルを構築した。ランダムフォレスト解析は、組織試料を正常(N)、限局性(すなわち、低悪性度)癌腫瘍(T)又は転移性腫瘍(M)と分類するために実施例1において組織試料から得られたデータについて行った。最初の解析は、3つの組織型の90.5%正しい分類をもたらした。転移性腫瘍は時間の100%正しく分類されたが、正常組織及び限局性癌腫瘍はそれぞれ87%及び83%正しく分類された(表12)。
【0135】
表12.転移性(M)、正常前立腺(N)及び限局性前立腺癌腫瘍(T)組織型に関する混同対照表
【表12】

【0136】
9.5%のOOB誤差率に基づいて、構築したランダムフォレストモデルは、被検者からの試料中のバイオマーカーのレベルの解析により約90.5%の正確度で被検者が転移性腫瘍(M)、限局性腫瘍(T)又は正常組織(N)を有するかどうかを予測するのに用いることができた。
【0137】
重要度プロットを図1に示す。この分類のための重要な代謝物を表13に示す。
【0138】
表13.N、T、M組織を識別するのに最も重要なバイオマーカー代謝物
【表13】

【0139】
この解析に基づいて、1つの試料は外れ値を示すものであると思われた。限局性前立腺腫瘍組織と報告された試料T3は、外れ値を示すものであると思われた。3つの組織型のすべてを比較するランダムフォレストにより、ランダムフォレストにおける樹の80%がT3を「N」すなわち正常と分類したが、17%はそれを「T」と正しく分類し、3%のみがそれを「M」すなわち転移性と分類した。この結果は、該試料が正常及び癌性組織の混合であること、又は該試料が癌の初期にあることを示している。
【0140】
ランダムフォレスト解析はまた、前立腺からの組織について、それらを正常前立腺(N)又は限局性前立腺癌腫瘍(T)と分類するために行った。この解析は、2つの組織型の86%正しい分類をもたらした。正常組織及び限局性前立腺癌腫瘍は、それぞれ87%及び83%正しく分類された(表14)。
【0141】
表14.正常組織(N)と限局性前立腺癌腫瘍(T)とを比較した混同対照表
【表14】

【0142】
14%のOOB誤差率に基づいて、構築したランダムフォレストモデルは、被検者からの試料中のバイオマーカーのレベルの解析により、約86%の正確度で被検者が正常組織(N)又は限局性腫瘍(T)を有するかどうかを予測するのに用いることができた。
【0143】
この分類のための重要な代謝物を表15に示し、重要度プロットを図2に示す。
【0144】
表15.正常前立腺組織(N)と癌性前立腺腫瘍組織(T)を識別するのに最も重要なバイオマーカー代謝物
【表15】

【0145】
転移性腫瘍は前立腺から遠位の部位から得られたので、我々は、これらの組織が、転移のため又は腫瘍の位置のため、正常及び癌性前立腺組織と識別されたかどうかを検討した。これをアッセイするために、ランダムフォレストを用いて、肝臓からの転移性腫瘍組織試料を肝臓以外の転移性腫瘍組織と比較した。この解析からの混同対照表を表16に示すが、結果は本質的に偶然の成り行きであり、腫瘍の肝臓及び肝臓以外の起源は識別できないように思われる。したがって、転移性腫瘍組織の分類は、転移に関する代謝物バイオマーカーに基づくものであり、転移性腫瘍の起源組織に基づくものでない。
【0146】
表16.肝臓からの転移性腫瘍と肝臓以外の組織からの転移性腫瘍とを比較した混同対照表
【表16】

【0147】
43%のOOB誤差率に基づいて、構築したランダムフォレストモデルは、被検者からの肝臓組織試料中のバイオマーカーのレベルの解析により、約57%の正確度で、被検者が肝臓以外の組織と比較して、肝臓からの転移性腫瘍を有するかどうかを予測するのに用いることができたが、過誤率は、本質的に偶然の成り行きであり、腫瘍組織の起源(すなわち、肝臓又は肝臓以外)はこれらのバイオマーカーにより予測されないことを示していると思われる。
【0148】
(実施例6)対照被検者、低悪性度PCAを有する被検者及び高悪性度PCAを有する被検者からの尿試料の分類のためのランダムフォレスト解析
実施例4における尿試料から得られたデータについて、それらを非癌(対照)又は前立腺癌と分類するために、ランダムフォレスト解析を行った。対照試料は、0のグリーソンスコア(メジャー)を有する被検者又は≧4のグリーソンスコア(メジャー)を有する前立腺癌(PCA)被検者から得られた尿であった。解析は、尿試料型の63%正しい分類をもたらした。対照被検者は時間の62%正しく分類され、一方、前立腺癌(PCA)を有する被検者は時間の64%正しく分類された(表17)。
【0149】
表17.尿における対照対PCAの混同対照表
【表17】

【0150】
37%のOOB誤差率に基づいて、構築したランダムフォレストモデルは、被検者からの尿中のバイオマーカーのレベルの解析により約63%の正確度で、被検者が癌を有さないことと比較して、前立腺癌(PCA)を有するかどうかを予測するのに用いることができた。
【0151】
重要度プロットを図3に示す。この分類のための重要な代謝物を表18に示す。
【0152】
表18.対照をPCAと識別するのに最も重要な尿バイオマーカー代謝物
【表18】

【0153】
ランダムフォレスト解析はまた、尿試料から実施例4において特定されたバイオマーカーについて、それらをより低悪性度前立腺癌(グリーソンスコアメジャー3)又はより高悪性度前立腺癌(グリーソンスコアメジャー≧4)と分類するために行った。この解析において、2つの癌悪性度の61%正しい分類がもたらされた。より低悪性度及びより高悪性度前立腺癌は、それぞれ58%及び71%正しく分類された(表19)。
【0154】
表19.より低悪性度前立腺癌及びより高悪性度前立腺癌を有する被検者からの尿を比較した混同対照表
【表19】

【0155】
39%のOOB誤差率に基づいて、構築したランダムフォレストモデルは、被検者からの尿中のバイオマーカーのレベルの解析により約61%の正確度で、被検者がより低悪性度前立腺癌又はより高悪性度前立腺癌を有するかどうかを予測するのに用いることができた。
【0156】
重要度プロットを図4に示す。この分類のための重要な代謝物を表20に示す。
【0157】
表20.より低悪性度前立腺癌及びより高悪性度前立腺癌を有する被検者を識別するための最も重要な尿バイオマーカー代謝物
【表20】

【0158】
(実施例7)対照被検者、より低悪性度PCAを有する被検者及びより高悪性度PCAを有する被検者からの血漿試料の分類のためのランダムフォレスト解析
血漿試料から実施例3において得られたデータについて、それらを非癌(対照)又は前立腺癌と分類するために、ランダムフォレスト解析を行った。対照試料は、0のグリーソンスコア(メジャー)を有する被検者又はグリーソンスコア(メジャー)3を有する前立腺癌(PCA)被検者から得られた血漿であった。解析は、血漿試料型の65%正しい分類をもたらした。対照被検者は時間の68%正しく分類され、一方、前立腺癌(PCA)を有する被検者は時間の60%正しく分類された(表21)。
【0159】
表21.血漿における対照対より低悪性度PCAの混同対照表
【表21】

【0160】
35%のOOB誤差率に基づいて、構築したランダムフォレストモデルは、被検者からの血漿中のバイオマーカーのレベルの解析により約65%の正確度で、被検者がより低悪性度前立腺癌を有するか前立腺癌を有しないかどうかを予測するのに用いることができた。
【0161】
重要度プロットを図5に示す。この分類のための重要な代謝物を表22に示す。
【0162】
表22.対照をより低悪性度PCAと識別するのに最も重要な血漿バイオマーカー代謝物
【表22】

【0163】
ランダムフォレスト解析はまた、実施例3における血漿試料からのバイオマーカーについて、それらを対照(グリーソンスコアメジャー0)又はより高悪性度前立腺癌(グリーソンスコアメジャー≧4、PCA)と分類するために行った。この解析において、血漿試料型の73%正しい分類がもたらされた。対照及びより高悪性度前立腺癌は、それぞれ58%及び71%正しく分類された(表23)。
【0164】
表23.前立腺癌を有さない、及びより高悪性度前立腺癌(高PCA)を有する被検者からの血漿を比較した混同対照表
【表23】

【0165】
27%のOOB誤差率に基づいて、構築したランダムフォレストモデルは、被検者からの血漿中のバイオマーカーのレベルの解析により約63%の正確度で、被検者がより高悪性度前立腺癌を有するか、又は前立腺癌を有さないのかを予測するのに用いることができた。
【0166】
重要度プロットを図6に示す。この分類のための重要なバイオマーカー代謝物を表24に示す。
【0167】
表24.前立腺癌を有さない被検者とより高悪性度前立腺癌を有する被検者を識別するための最も重要な血漿バイオマーカー代謝物
【表24】

【0168】
ランダムフォレスト解析はまた、血漿試料からのバイオマーカーについて、それらをより低悪性度前立腺癌(グリーソンスコアメジャー3)又はより高悪性度前立腺癌(グリーソンスコアメジャー≧4)と分類するために行った。この解析において、2つの癌悪性度の67%正しい分類がもたらされた。より低悪性度及びより高悪性度前立腺癌は、それぞれ65%及び71%正しく分類された(表25)。
【0169】
表25.より低悪性度前立腺癌及びより高悪性度前立腺癌を有する被検者からの血漿を比較した混同対照表
【表25】

【0170】
33%のOOB誤差率に基づいて、構築したランダムフォレストモデルは、被検者からの血漿中のバイオマーカーのレベルの解析により約67%の正確度で、被検者がより低悪性度前立腺癌又はより高悪性度前立腺癌を有するかどうかを予測するのに用いることができた。
【0171】
重要度プロットを図7に示す。この分類のための重要な代謝物を表26に示す。
【0172】
表26.より低悪性度前立腺癌及びより高悪性度前立腺癌を有する被検者を識別するための最も重要な血漿バイオマーカー代謝物
【表26】

【0173】
(実施例8)非命名バイオマーカー化合物の分析特性
下の表27に、上の表1〜26に示した同重体及び非命名代謝物のそれぞれの分析特性を示す。表には、列挙した各同重体及び代謝物について、上述の分析方法を用いて得た保持時間(RT)、保持指標(RI)、質量、クアント(quant)質量及び極性を含める。「質量」は、化合物の定量に用いた親イオンのC12同位体の質量を意味する。「quant質量」の値は、定量に用いた分析方法の表示を示す。「Y」はGC−MSを示し、「1」はLC−MSを示す。「極性」は、定量イオンの極性が正(+)又は負(−)であることを示す。
【0174】
表27.同重体及び非命名代謝物の分析特性
【表27−1】


【表27−2】


【表27−3】


【表27−4】


【表27−5】


【表27−6】


【表27−7】


【表27−8】


【表27−9】


【表27−10】


【表27−11】


【表27−12】


【表27−13】


【表27−14】


【表27−15】

【0175】
本発明は詳細に、かつその特定の実施形態に関して説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の変更及び修正を行うことができることが同業者に明らかになるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者からの生物学的試料を分析して、試料中の、表1、2、4、5、6、7、9、10、13、15、18、22及び/又は24から選択される前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定すること、及び
被検者が前立腺癌を有するかどうかを診断するために、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを1種又は複数のバイオマーカーの前立腺癌陽性及び/又は前立腺癌陰性基準レベルと比較することと
を含む、被検者が前立腺癌を有するかどうかを診断する方法。
【請求項2】
1種又は複数のバイオマーカーが、0.05未満のp値を有する表1、2、4、5、6、7、9、10、13、15、18、22及び/又は24のバイオマーカー及び/又は0.10未満のq値を有する表1、2、4、5、6、7、9、10、13、15、18、22及び/又は24のバイオマーカーから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生物学的試料を分析して、表1、2、4、5、6、7、9、10、13、15、18、22及び/又は24から選択される2種以上のバイオマーカーのレベルを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
生物学的試料を分析して、表1、2、4、5、6、7、9、10、13、15、18、22及び/又は24から選択される3種以上のバイオマーカーのレベルを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
生物学的試料を分析して、表1、2、4、5、6、7、9、10、13、15、18、22及び/又は24から選択される4種以上のバイオマーカーのレベルを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
生物学的試料を分析して、表1、2、4、5、6、7、9、10、13、15、18、22及び/又は24から選択される5種以上のバイオマーカーのレベルを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
生物学的試料を分析して、表1、2、4、5、6、7、9、10、13、15、18、22及び/又は24から選択される10種以上のバイオマーカーのレベルを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
生物学的試料を分析して、表1、2、4、5、6、7、9、10、13、15、18、22及び/又は24から選択される15種以上のバイオマーカーのレベルを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
生物学的試料が前立腺組織であり、1種又は複数のバイオマーカーが表1及び/又は2から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
生物学的試料が血漿であり、1種又は複数のバイオマーカーが表4、6、7、22、24及び/又は26から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
生物学的試料が尿であり、1種又は複数のバイオマーカーが表5、9、10及び/又は18から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
試料を質量分析、ELISA及び抗体結合からなる群から選択される1種又は複数の手法を用いて分析する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
被検者からの生物学的試料を分析して、試料中の、表1、2、4、5、6、7、9、10、13、15、18、20、22及び/又は24から選択される前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定すること、及び
被検者に前立腺癌を発現する素因があるかどうかを判断するために、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを1種又は複数のバイオマーカーの前立腺癌陽性及び/又は前立腺癌陰性基準レベルと比較することと
を含む、被検者が前立腺癌を発現する素因があるかどうかを判断する方法。
【請求項14】
被検者から第1の時点に得た第1の生物学的試料を分析して、表1、2、3、4、5、6、7、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26から選択される前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定することと、
被検者から第2の時点に得た第2の生物学的試料を分析して、1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定すること、及び
被検者における前立腺癌の進行/退縮をモニターするために、第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを第2の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルと比較することと
を含む、被検者における前立腺癌の進行/退縮をモニターする方法。
【請求項15】
第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル、第2の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル、及び/又は第1及び第2の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルの比較の結果を1種又は複数のバイオマーカーの前立腺癌陽性及び/又は前立腺癌陰性基準レベルと比較することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前立腺癌を有し、現在又は以前に組成物の投与を受けている被検者からの生物学的試料を分析して、表1、2、4、5、6、7、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26から選択される前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定すること、及び
試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、(a)組成物を投与する前に被検者から得た被検者からの予め採取した生物学的試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル、(b)1種又は複数のバイオマーカーの前立腺癌陽性基準レベル、及び/又は(c)1種又は複数のバイオマーカーの前立腺癌陰性基準レベルと比較することと
を含む、前立腺癌の治療用の組成物の有効性を評価する方法。
【請求項17】
被検者から第1の時点に得た被検者の第1の生物学的試料を分析して、表1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26から選択される前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定することと、
被検者に組成物を投与することと、
被検者から組成物の投与後の第2の時点に得た被検者の第2の生物学的試料を分析して、1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定することと、
前立腺癌の治療用の組成物の有効性を評価するために、第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを第2の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルと比較することと
を含む、前立腺癌の治療における組成物の有効性を評価する方法。
【請求項18】
前立腺癌を有し、現在又は以前に第1の組成物の投与を受けている第1の被検者からの第1の生物学的試料を分析して、表1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26から選択される1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定すること、
前立腺癌を有し、現在又は以前に第2の組成物の投与を受けている第2の被検者からの第2の生物学的試料を分析して、1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定すること、及び
前立腺癌を治療する第1及び第2の組成物の相対的有効性を評価するために、第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを第2の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルと比較することと
を含む、前立腺癌を治療するための2種以上の組成物の相対的有効性を評価する方法。
【請求項19】
1個又は複数の細胞を組成物と接触させること、
1個又は複数の細胞の少なくとも一部或いは細胞に関連する生物学的試料を分析して、表1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26から選択される前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定すること、及び
1種又は複数のバイオマーカーのレベルをバイオマーカーの予め決定した標準レベルと比較して、組成物が1種又は複数のバイオマーカーを調節したかどうかを判断することと
を含む、前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを調節する活性について組成物をスクリーニングする方法。
【請求項20】
バイオマーカーの予め定めた標準レベルが、組成物の非存在下での1種又は複数の細胞中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
バイオマーカーの予め定めた標準レベルが、組成物と接触させなかった1種又は複数の対照細胞中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
in vivoで実施する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
in vitroで実施する、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
表1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、15、18、20、22、24及び/又は26から選択される前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカーに関連する1種又は複数の生化学的経路を特定すること、及び
特定された1種又は複数の生化学的経路のうちの少なくとも1種に影響を及ぼし、前立腺癌の潜在的薬物標的であるタンパク質を特定することと
を含む、前立腺癌の潜在的薬物標的を特定する方法。
【請求項25】
前立腺癌において減少する表1、2、4、5、6、7、9、10、13、15、18、22及び/又は24から選択される1種又は複数のバイオマーカーの有効な量を被検者に投与することを含む、前立腺癌を有する被検者を治療する方法。
【請求項26】
被検者からの生物学的試料を分析して、試料中の、表3、8、11、20及び/又は26から選択される低悪性度前立腺癌及び/又は高悪性度前立腺癌の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを測定すること、及び
被検者が低悪性度前立腺癌を有するか又は高悪性度前立腺癌を有するかを判断するために、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、高悪性度前立腺癌と識別する低悪性度前立腺癌陽性基準レベル及び/又は低悪性度前立腺癌と識別する高悪性度前立腺癌陽性基準レベルと比較することと
を含む、前立腺癌を有する被検者において低悪性度前立腺癌と高悪性度前立腺癌とを識別する方法。
【請求項27】
生物学的試料が前立腺組織であり、1種又は複数のバイオマーカーが表3から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
生物学的試料が血漿であり、1種又は複数のバイオマーカーが表8及び/又は26から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
生物学的試料が尿であり、1種又は複数のバイオマーカーが表11及び/又は20から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
1種又は複数のバイオマーカーが、0.05未満のp値を有する表3、8、11、20及び/又は26のバイオマーカー及び/又は0.10未満のq値を有する表3、8、11、20及び/又は26のバイオマーカーから選択される、請求項26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−504527(P2010−504527A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529349(P2009−529349)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/078805
【国際公開番号】WO2008/036691
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(508038677)メタボロン インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】METABOLON INC.
【住所又は居所原語表記】800 Capitola Drive, Suite 1, Durham, NC 27612 (US)
【Fターム(参考)】