説明

前脛骨筋の機能回復および補助用装置

【課題】取り扱いが容易で、歩行機能の回復および補助に使用してスムーズな歩行能力を獲得することができる前脛骨筋の機能回復および補助用装置を提供する。
【解決手段】足部11が挿入される足収容部材12および足収容部材12の後部側に設けられ脛部13に取付けられる脛収容部材14を備え下腿15に装着される短下肢装具16と、足収容部材12の先上部側および脛収容部材14の前上部側にそれぞれ両端部が連結され、伸縮することで足収容部材12のつま先側を踵側に対して傾動させる駆動手段17と、足収容部材12の底部18のつま先側および踵側にそれぞれ取付けられ、底部18に加わる圧力を検出する第1、第2の圧力センサー19、20と、第1、第2の圧力センサー19、20の検出値から歩行時の底部18の離地および接地の状態を判別し、歩行動作に合わせて駆動手段17を伸縮させる駆動制御手段21とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行機能の回復および補助に使用される前脛骨筋の機能回復および補助用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の短下肢装具(ankle foot orthosis、以下、AFOともいう)は、足を載せる足載置体と膨ら脛にあてがう膨ら脛添体とが一体成型されており、足載置体および膨ら脛添体にそれぞれ設けられた固定ベルトを用いてこのAFOを足に装着した場合、下肢と足底とが略直角に固定された状態になる。このため、遊脚期(歩行運動の一周期において、注目する側の足が床から離れている期間)に躓かないようにするためには、下腿全体を大きく持ち上げたり、外側に振り回す(分回し)歩行をしなければならず、スムーズな歩行ができないという問題がある。また、前脛骨筋力が残存していても、この前脛骨筋力を使用することがないため、機能回復を促すことにも寄与しないという問題も生じている。
そこで、圧縮スプリングの一端側を足載置体の踵部の後部位に、他端側を膨ら脛添体部に固定し、歩行時に足首の底屈動作(足先が垂れ下がる方向に曲げる動作)および背屈動作(足先が持ち上がる方向に曲げる動作)を可能にして、前脛骨筋力を補助する作用を有するAFOが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−103443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、前脛骨筋力を補助するのに見合う力が出るような圧縮スプリングを選定して使用しなければならないという問題があり、実際には、ばね定数が異なる圧縮スプリングを複数用意しておき、状況に合わせて交換することで、前脛骨筋力を補助するのに見合う力を発生させている。このため、AFOの使用および管理が煩雑になるという問題が生じている。
【0005】
本発明は係る事情に鑑みてなされたもので、取り扱いが容易で、歩行機能の回復および補助に使用してスムーズな歩行能力を獲得することができる前脛骨筋の機能回復および補助用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る前脛骨筋の機能回復および補助用装置は、足部が挿入される足収容部材および該足収容部材の後部側に傾動可能に設けられ脛部に取付けられる脛収容部材を備え、下腿に装着されて使用される短下肢装具と、
前記足収容部材の先上部側および前記脛収容部材の前上部側にそれぞれ両端部が連結され、伸縮することで前記足収容部材のつま先側を踵側に対して傾動させる駆動手段と、
前記足収容部材の底部のつま先側および踵側にそれぞれ取付けられ、該足収容部材の底部に加わる圧力を検出する第1、第2の圧力センサーと、
前記第1、第2の圧力センサーの検出値から歩行時の前記足収容部材の底部の離地および接地の状態を判別し、歩行動作に合わせて前記駆動手段を伸縮させる駆動制御手段とを有し、
前記短下肢装具が装着された下腿の歩行時における前脛骨筋の機能を補助する。
【0007】
本発明に係る前脛骨筋の機能回復および補助用装置において、前記駆動手段は、前記駆動制御手段からその内部に注入される流体の圧力に応じて膨縮しその長さが伸縮する人工筋肉であることが好ましい。
【0008】
本発明に係る前脛骨筋の機能回復および補助用装置において、前記流体は空気であって、前記駆動制御手段は空気圧縮機または圧縮空気ボンベを有する構成としてもよいし、また、携帯型圧縮空気ボンベを有する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0009】
請求項1〜4記載の前脛骨筋の機能回復および補助用装置においては、歩行時の足収容部材の離地および接地の状態を判別し、歩行動作に合わせて駆動手段を伸縮させて足収容部材のつま先側を踵側に対して傾動させることができ、足関節を強制的に動かすことでスムーズな歩行が可能になる。
また、足関節を強制的に動かすことで短下肢装具が装着された下腿の歩行時における前脛骨筋の機能を補助することができ、歩行機能の衰えた障害者や高齢者の歩行機能を回復させることが可能になる。
【0010】
特に、請求項2記載の前脛骨筋の機能回復および補助用装置においては、人工筋肉は、その収縮距離に自己限界があるため、制御系に不具合が発生しても、足関節の可動域を超えた運動の強制が行なわれず、短下肢装具が装着された下腿部の骨折や靱帯損傷を防止でき安全性を担保することができる。
【0011】
請求項3、4記載の前脛骨筋の機能回復および補助用装置においては、流体に空気を使用することにより、流体の入手および取り扱いが容易になる。
請求項4記載の前脛骨筋の機能回復および補助用装置においては、携帯型圧縮空気ボンベを用いるので、歩行時の自由度が向上し、歩行機能の回復が更に容易になる。そして、駆動制御手段全体を携帯化することで、歩行範囲に制約がなくなり、歩行機能の衰えた障害者や高齢者の実際の歩行を補助することも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る前脛骨筋の機能回復および補助用装置の説明図、図2は同前脛骨筋の機能回復および補助用装置の制御系統のブロック図、図3(A)〜(D)は同前脛骨筋の機能回復および補助用装置を用いた歩行動作を説明する模式図である。
【0013】
図1、図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る前脛骨筋の機能回復および補助用装置10は、人の足部11が挿入される足収容部材12および足収容部材12の後部側に傾動可能に設けられ脛部13に取付けられる脛収容部材14を備え、下腿15に装着されて使用される短下肢装具16と、足収容部材12の先上部側および脛収容部材14の前上部側に両端部がそれぞれ連結され、伸縮することで足収容部材12のつま先側を踵側に対して傾動させる駆動手段の一例である人工筋肉17と、足収容部材12の底部18のつま先側および踵側にそれぞれ取付けられ、足収容部材12の底部18に加わる圧力を検出する第1、第2の圧力センサー19、20と、第1、第2の圧力センサー19、20の検出値から歩行時の足収容部材12の底部18の離地および接地の状態を判別し、歩行動作に合わせて人工筋肉17を伸縮させる駆動制御手段21とを有している。以下、詳細に説明する。
【0014】
足収容部材12は、例えば、硬質または軟質のプラスチックで形成され、足部11の足底が載置される底部18と、底部18の両側に立設され足部11を両側から包む対となる足側壁部22と、底部18に載置された足部11の甲にあてがわれて足部11を底部18に固定する甲固定プラスチック(硬質または半硬質のプラスチックを使用するのがよい)23、柔軟性を有する甲固定ベルト24とを有している。なお、甲固定プラスチックを大きくして甲固定ベルトを省略してもよい。ここで、先側に設けられた甲固定プラスチック23は、その両端部がそれぞれ足側壁部22に固着され、甲固定プラスチック23より足首側に設けられた甲固定ベルト24は、甲固定ベルト24の一端部が一方の足側壁部22に固着され、他端部は他方の足側壁部22に着脱可能に取付けられている。
【0015】
また、例えば、硬質または軟質のプラスチックで形成された脛収容部材14は、脛部13の後側にあてがわれ下部側が分岐してそれぞれ対となる足側壁部22の後部側にピン部材25を介して傾動可能に取付けられる脛収容本体26と、脛収容本体26の上部に設けられ脛部13の前側にあてがわれ脛収容本体26を脛部13に取付ける脛固定プラスチック(硬質または半硬質のプラスチックを使用するのがよい)27とを有している。ここで、脛固定プラスチック27の一端部は脛収容本体26の一端側に固着され、脛固定プラスチック27の他端部は脛収容本体26の他端側に着脱可能に取付けられている。
【0016】
人工筋肉17は、内部に注入される流体の一例である空気の圧力に応じて膨縮しその長さが伸縮する特性を備えたエアーマッスルであり、例えば、シリコーンゴム等のゴム素材を用いて構成され両端部が閉じたチューブ形状を有するエアーマッスル本体28と、エアーマッスル本体28の両端部にそれぞれ固着されている終端部材29、30を有している。また、一方の終端部材29には、エアーマッスル本体28の内部に圧縮空気を注入する圧縮空気供給チューブ31と、取付け具32が設けられ、他方の終端部材30には取付け具33が設けられている。そして、取付け具33は足収容部材12の甲固定プラスチック23の上側に、取付け具32は脛収容部材14の脛固定プラスチック27の前側にそれぞれ固定されている。
【0017】
ここで、エアーマッスル本体28は、例えば、内管がゴムチューブ、外管がナイロンチューブで、更にその外側をメッシュスリーブで被覆しているので、エアーマッスル本体28内部に圧縮空気を注入して膨張させた際、メッシュスリーブが拡径して(更に正確には、メッシュの菱形形状が円周方向に広がって)エアーマッスル本体28の断面積が増加し長さは、例えば、25〜40%短くなる。これによって、人工筋肉17を収縮させることができる。そして、注入する圧縮空気の圧力を調整することで、エアーマッスル本体28の膨張量が変化して、人工筋肉17を伸縮することができる。その結果、人工筋肉17を縮ませると足収容部材12のつま先側を脛固定プラスチック27側に引き寄せることができ、つま先側を踵側に対して上方に傾動させることができる。また、人工筋肉17を伸ばすと足収容部材12のつま先側を脛固定プラスチック27側から重力の作用で引き離すことができ、つま先側を踵側に対して下方に傾動させることができる。
【0018】
第1、第2の圧力センサー19、20は、例えば、圧力検出部に圧電体を備えている。このため、足収容部材12のつま先側が接地し踵側が離地している場合、第1の圧力センサー19は圧縮状態を、第2の圧縮センサー20は無負荷状態を示し、足収容部材12のつま先側が離地し踵側が接地している場合、第1の圧力センサー19は無負荷状態を、第2の圧縮センサー20は圧縮状態を示す。更に、足収容部材12のつま先側および踵側が接地している場合、第1、第2の圧力センサー19、20はいずれも圧縮状態を示し、足収容部材12のつま先側および踵側が離地している場合、第1、第2の圧力センサー19、20はいずれも無負荷状態を示す。従って、第1、第2の圧力センサー19、20の検出値から歩行時の足収容部材12の離地および接地の状態を判別することができる。
【0019】
駆動制御手段21は、圧縮空気ボンベ34と、圧縮空気ボンベ34から供給される圧縮空気の流量を粗調整する粗流量調整バルブ35と、粗流量調整バルブ35で調整された圧縮空気の流量を更に微調整する微流量調整バルブ36と、流量調整された圧縮空気を取り出す1次側圧縮空気供給チューブ37とを有している。ここで、圧縮空気ボンベ34内の圧縮空気の圧力は、例えば、0.3〜0.9MPa、好ましくは0.4〜0.6MPaである。また、駆動制御手段21は、1次側圧縮空気供給チューブ37を介して圧縮空気ボンベ34から供給される圧縮空気の圧力を調整して、圧縮空気供給チューブ31を介して人工筋肉17のエアーマッスル本体28内部に供給する圧縮空気圧調節器38とを有している。
【0020】
更に、駆動制御手段21は、第1、第2の圧力センサー19、20の圧力センサー信号線39、40を介して入力される信号から圧力を求める圧力センサー計測部41と、圧力センサー計測部41で求めた第1、第2の圧力センサー19、20の検出値に基づいて圧縮空気圧調節器38を操作する出力信号を発生する圧縮空気圧制御器42とを有している。なお、符号43は、圧力センサー計測部41を稼動させる電源部(例えば、電池)である。
【0021】
ここで、圧縮空気圧調節器38は、圧縮空気をエアーマッスル本体28内部に流入させる空気流入弁、エアーマッスル本体28から余分の空気を放出させる空気放出弁、およびエアーマッスル本体28内の空気圧力を検知し圧縮空気圧制御器42からの出力信号に基づいて空気流入弁と空気放出弁を動作させる圧力調整器とを備えている。また、圧縮空気圧制御器42は、第1、第2の圧力センサー19、20の検出値から、短下肢装具16を装着した人の歩行時の足収容部材12の底部18、すなわち、つま先側と踵側のそれぞれの接地および離地の状態を判別し、歩行動作に合わせて人工筋肉17を伸縮させるための圧縮空気の圧力を決定して圧縮空気圧調節器38を操作する制御信号を出力する人工筋肉駆動機能を有している。そして、圧縮空気圧制御器42は、例えば、コンピュータに人工筋肉駆動機能を発現するプログラムを搭載することにより構成できる。
【0022】
なお、符号44、45は圧力センサー計測部41で求めた第1、第2の圧力センサー19、20の検出値を圧縮空気圧制御器42に伝送する圧力値信号線、符号46は圧縮空気圧制御器42の制御信号を圧縮空気圧調節器38に伝送する制御信号線、符号47は圧縮空気圧制御器42を駆動する電源部、符号48は圧力値信号線44、45で伝送された第1、第2の圧力センサー19、20の検出値をデジタル変換して圧縮空気圧制御器42に入力する入出力器である。
【0023】
続いて、本発明の一実施の形態に係る前脛骨筋の機能回復および補助用装置10の使用方法について説明する。
図1に示すように、足部11のつま先側を、短下肢装具16の甲固定プラスチック23と足収容部材12の底部18との間に挿入し、一端部が一方の足側壁部22に固着されている甲固定ベルト24の内面を足部11の甲にあてがいながらその他端部を他方の足側壁部22に取付けて、足部11を底部18に固定する。また、脛収容部材14の脛収容本体26を脛部13の後側に当接させ、一端部が脛収容本体26の一端側に固着されている脛固定プラスチック27の内面を脛部13の前側にあてがいながら脛固定プラスチック27の他端部を脛収容本体26の他端側に取付ける。これにより、短下肢装具16の下腿15への装着が完了する。
【0024】
次いで、取付け具32を介して一方の終端部材29が脛収容部材14の脛固定プラスチック27の前側に、取付け具33を介して他方の終端部材30が足収容部材12の甲固定プラスチック23の上側にそれぞれ固定されるエアーマッスル本体28を有する人工筋肉17に設けられた圧縮空気供給チューブ31を駆動制御手段21の圧縮空気圧調節器38に接続し、足収容部材12の底部18のつま先側および踵側にそれぞれ取付けられた第1、第2の圧力センサー19、20の圧力センサー信号線39、40を圧力センサー計測部41に接続する。また、圧力センサー計測部41と圧縮空気圧制御器42を圧力値信号線44、45で接続し、圧縮空気圧制御器42と圧縮空気圧調節器38を制御信号線46で接続する。以上により、前脛骨筋の機能回復および補助用装置10のセットアップが完了する。
【0025】
一般に、歩行時の足部の動作では、両足で体を支持している状態(両足支持状態)から一方の足を前方に踏み込んで歩行を開始する場合、先ず、足部のつま先側を離地状態にして踵側が接地する踵接地つま先離地期から、つま先側が接地して足部全体が接地する踵接地つま先接地期になる。これによって、一方の足で体を支持することができ、他方の足を前方に踏み出すことができる。続いて、他方の足で体が支えられた状態で、一方の足のつま先側を接地して踵側を離地する踵離地つま先接地期となり、次いで、つま先側も離地させて足部全体が離地状態となる遊脚期となる。そして、再び一方の足側が踵接地つま先離地期となり、これらの一連の動作、すなわち、踵接地つま先離地期、踵接地つま先接地期、踵離地つま先接地期、および遊脚期が順次繰り返されることにより、歩行が行なわれる。
【0026】
ここで、圧力センサー計測部41および圧縮空気圧制御器42を稼動させて、粗、微流量調整バルブ35、36を開けて圧縮空気ボンベ34から圧縮空気を1次側圧縮空気供給チューブ37より圧縮空気圧調節器38に供給しながら歩行を開始する場合、初期状態として、圧縮空気圧制御器42は人工筋肉17が弛緩状態になる圧縮空気圧(0またはある値)を設定し、その圧力値信号を圧縮空気圧調節器38に入力する。そして、圧縮空気圧調節器38はエアーマッスル本体28内の圧縮空気圧が0またはある値になるようにして、人工筋肉17を弛緩状態にする。次いで、圧力センサー計測部41で求めた第1、第2の圧力センサー19、20の検出値が圧縮空気圧制御器42に入力されると、圧縮空気圧制御器42では現在の足部11の状態が踵接地つま先離地期、踵接地つま先接地期、踵離地つま先接地期、および遊脚期のいずれの状態であるかを判断する。
【0027】
例えば、図3(A)に示すように、圧縮空気圧制御器42が第1、第2の圧力センサー19、20の各検出値から、一方の足部11の踵側が接地状態でつま先側が離地状態である踵接地つま先離地期であると判断すると、次に踵接地つま先接地期になると予想し、つま先側を接地して足部11全体が接地できるように、すなわち、人工筋肉17の弛緩状態が維持されるようにする。このため、圧縮空気圧制御器42は人工筋肉17が弛緩状態になる圧縮空気圧(例えば、0またはある値)を設定しその圧力値信号を圧縮空気圧調節器38に入力し、圧縮空気圧調節器38はエアーマッスル本体28内の圧縮空気圧が設定された値になるようにして、人工筋肉17を弛緩状態にする。これによって、足部11のつま先側を接地させることができ、足部全体が接地する踵接地つま先接地期となることができ、一方の足で体を支持しながら他方の足を前方に踏み出すことができる。
【0028】
図3(B)に示すように、圧縮空気圧制御器42が第1、第2の圧力センサー19、20の各検出値から、一方の足部11のつま先側および踵側が接地状態である踵接地つま先接地期であることを判断すると、次に踵離地つま先接地期になると予想し、つま先側を接地して踵側が離地できるように、すなわち、人工筋肉17の弛緩状態が維持されるようにする。このため、圧縮空気圧制御器42は人工筋肉17が弛緩状態になる圧縮空気圧(例えば、0またはある値)を設定しその圧力値信号を圧縮空気圧調節器38に入力し、圧縮空気圧調節器38はエアーマッスル本体28内の圧縮空気圧が設定された値になるようにして、人工筋肉17を弛緩状態にする。これによって、足部11のつま先側を接地させた状態で踵側を離地させることができ、踵離地つま先接地期となることができる。
【0029】
図3(C)に示すように、圧縮空気圧制御器42が第1、第2の圧力センサー19、20の各検出値から、一方の足部11の踵側が離地しつま先側が接地状態である踵離地つま先接地期であることを判断すると、次に遊脚期になると予想し、つま先側の離地動作が補助できるように、すなわち、人工筋肉17を緊張状態にしてその長さが設定された長さになるまで収縮させる。このため、圧縮空気圧制御器42は人工筋肉17が設定された長さに縮むのに必要な緊張状態を維持する圧縮空気圧を設定しその圧力値信号を圧縮空気圧調節器38に入力し、圧縮空気圧調節器38はエアーマッスル本体28内の圧縮空気圧が設定された値になるようにして、人工筋肉17を緊張状態にする。これによって、足部11のつま先側を離地させることができ、遊脚期となることができる。
【0030】
図3(D)に示すように、圧縮空気圧制御器42が第1、第2の圧力センサー19、20の各検出値から、一方の足部11全体が離地状態である遊脚期であることを判断すると、次に踵接地つま先離地期になると予想し、踵側が接地できるように、すなわち、人工筋肉17を弛緩状態にしてその長さが伸びるようにする。このため、圧縮空気圧制御器42は人工筋肉17が弛緩状態になる圧縮空気圧(例えば、0またはある値)を設定しその圧力値信号を圧縮空気圧調節器38に入力し、圧縮空気圧調節器38はエアーマッスル本体28内の圧縮空気圧が設定された値になるようにして、人工筋肉17を弛緩状態にする。これによって、足部11の踵側を接地させることができ、踵接地つま先離地期となることができる。
【0031】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、本実施の形態では圧縮空気ボンベを使用したが、空気圧縮機を使用してもよい。また、圧縮空気圧制御器の操作を、圧縮空気圧制御器の本体側から分離したリモートコントロールボックスからもできるようにしてもよい。これによって、短下肢装具の装着者自身が、状況に合わせて前脛骨筋の機能回復および補助用装置を操作することが可能になる。
【0032】
更に、携帯型圧縮空気ボンベを使用することもできる。携帯型圧縮空気ボンベを使用する場合、圧力センサー計測部および圧縮空気圧調整器を携帯可能なサイズに小型化するとともに、小型のワンボードマイコンまたはワンチップマイコンに人工筋肉駆動機能を発現するプログラムを搭載させて圧縮空気圧制御器を構成すると、短下肢装具の装着者が携帯型圧縮空気ボンベ、圧力センサー計測部、圧縮空気圧調整器、および圧縮空気圧制御器を携帯することが可能になり、前脛骨筋の機能回復および補助用装置を、歩行機能の衰えた障害者や高齢者が実際の歩行を補助する際に使用することも可能になる。
【0033】
本実施の形態では、駆動手段として圧縮空気圧の圧力に応じて膨縮しその長さが伸縮する人工筋肉を用いたが、他の流体の圧力に応じて作動する人工筋肉を使用することもできる。また、人工筋肉の代りにモータや流体シリンダーを駆動源として駆動機を使用して、足収容部材のつま先側を踵側に対して傾動させるようにすることもできる。更に、長下肢装具の下部側に本発明の前脛骨筋の機能回復および補助用装置を組み込んで使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施の形態に係る前脛骨筋の機能回復および補助用装置の説明図である。
【図2】同前脛骨筋の機能回復および補助用装置の制御系統のブロック図である。
【図3】(A)〜(D)は同前脛骨筋の機能回復および補助用装置を用いた歩行動作を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0035】
10:前脛骨筋の機能回復および補助用装置、11:足部、12:足収容部材、13:脛部、14:脛収容部材、15:下腿、16:短下肢装具、17:人工筋肉、18:底部、19:第1の圧力センサー、20:第2の圧力センサー、21:駆動制御手段、22:足側壁部、23:甲固定プラスチック、24:甲固定ベルト、25:ピン部材、26:脛収容本体、27:脛固定プラスチック、28:エアーマッスル本体、29、30:終端部材、31:圧縮空気供給チューブ、32、33:取付け具、34:圧縮空気ボンベ、35:粗流量調整バルブ、36:微流量調整バルブ、37:1次側圧縮空気供給チューブ、38:圧縮空気圧調節器、39、40:圧力センサー信号線、41:圧力センサー計測部、42:圧縮空気圧制御器、43:電源部、44、45:圧力値信号線、46:制御信号線、47:電源部、48:入出力器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足部が挿入される足収容部材および該足収容部材の後部側に傾動可能に設けられ脛部に取付けられる脛収容部材を備え、下腿に装着されて使用される短下肢装具と、
前記足収容部材の先上部側および前記脛収容部材の前上部側にそれぞれ両端部が連結され、伸縮することで前記足収容部材のつま先側を踵側に対して傾動させる駆動手段と、
前記足収容部材の底部のつま先側および踵側にそれぞれ取付けられ、該足収容部材の底部に加わる圧力を検出する第1、第2の圧力センサーと、
前記第1、第2の圧力センサーの検出値から歩行時の前記足収容部材の底部の離地および接地の状態を判別し、歩行動作に合わせて前記駆動手段を伸縮させる駆動制御手段とを有し、
前記短下肢装具が装着された下腿の歩行時における前脛骨筋の機能を補助することを特徴とする前脛骨筋の機能回復および補助用装置。
【請求項2】
請求項1記載の前脛骨筋の機能回復および補助用装置において、前記駆動手段は、前記駆動制御手段からその内部に注入される流体の圧力に応じて膨縮しその長さが伸縮する人工筋肉であることを特徴とする前脛骨筋の機能回復および補助用装置。
【請求項3】
請求項2記載の前脛骨筋の機能回復および補助用装置において、前記流体は空気であって、前記駆動制御手段は空気圧縮機または圧縮空気ボンベを有していることを特徴とする前脛骨筋の機能回復および補助用装置。
【請求項4】
請求項2記載の前脛骨筋の機能回復および補助用装置において、前記流体は空気であって、前記駆動制御手段は携帯型圧縮空気ボンベを有していることを特徴とする前脛骨筋の機能回復および補助用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−132153(P2008−132153A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320478(P2006−320478)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(591140259)
【出願人】(506396755)
【Fターム(参考)】