説明

剥離シートとその製造方法

【課題】同一の組成の剥離層を使用していても、粘着剤に対して異なった剥離力を有する剥離シートを、提供することを目的とする。特に、軽剥離性のシリコーン剥離剤の剥離力を増加して、工業用粘着ラベル等の重剥離性が要求される用途に適した剥離シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも基材シートとその上に形成されたシリコーン組成物よりなる剥離層を有する剥離シートであって、剥離層の表面に凹凸を形成して粘着剤に対する剥離力を増加したことを特徴とする剥離シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離紙、粘着ラベル、粘着テープ等に使用される、剥離シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粘着剤、粘着テープに対する需要が多様化し、様々な用途に、様々な粘着剤、粘着テープが使用されている。現在、粘着ラベル、粘着テープの剥離面に使用されている剥離剤は、シリコーン樹脂系を代表とするシリコーンが主流である。一般に剥離力が非常に低いこと(軽剥離性)が特徴であって、例えば粘着ラベルの剥離シートに使用した場合に、容易に粘着ラベルを引きはがすことができる。
【0003】
しかし、粘着ラベル等の、粘着剤を塗布した物品が剥離シートから容易に剥離しない剥離剤が求められる重要な応用分野もある。例えば高速稼働する工業的な粘着ラベル貼付には、重剥離特性を持つ剥離剤が要求される。粘着ラベルが剥離紙から尚早に剥離するのを防止するためには、重剥離性のシリコーン剥離剤が望ましい。
【0004】
剥離層の通常の形成方法は、以下の通りである。剥離シートの基材(以下、基材シートと記載する)として、紙、プラスチックフィルムを使用し、剥離剤の原液として加熱硬化性、紫外線硬化性、電子線硬化性等の硬化性を有するシリコーン組成物の液状物を使用する。まず、基材シートと剥離剤との接着力の向上のためや剥離剤が基材シート中へ余分に染み込まないようにするために、必要に応じて、基材シートにプライマー処理等の前処理を行う。次ぎに、基材シートにシリコーン組成物の液状物を所定の厚さで塗布し、必要に応じて溶剤を揮発させ、次ぎに所定の方法で硬化させることによって、剥離シートが完成する。
【0005】
完成した剥離シートは、巻き取ってロール状とし、使用するまで保管することが多いが、連続した工程で裏面に粘着剤層を形成して巻き取り、粘着テープにすることもある。また、連続した工程で剥離シートの剥離面にラベル用の印刷を施したシートを重ね合わせて巻き取り、粘着ラベル用の原反ロールとすることもある。
【0006】
シリコーンの組成を変えることによって剥離力を調節することができる。例えば、剥離力調節添加物として、非官能性およびビニル官能性のシリコーン樹脂が使用する方法が知られている。ビニル官能性シリコーンとSiH官能性シリコーン架橋剤との、樹脂および/或いは液体混合物は、貴金属触媒の存在下で、公知のヒドロシリル化付加反応により硬化するが、シリコーン組成物の主成分に添加されるビニル官能性シリコーン樹脂の量を変化させることで、様々な水準の剥離力が得られる。
【0007】
例えば、特許文献1には、ビニル変性シリコーンを主体とするシリコーン剥離塗料中に、その剥離力を調節し得る熱付加過熱硬化性の剥離塗料組成物が開示されている。三官能性あるいは四官能性のシロキサン単位を含むエポキシ官能性シリコーン樹脂を添加することによって、剥離力を調節する方法が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、アルケニル官能性ポリオルガノシロキサンと、不相溶性の基0.1〜60モル%を有するSiH官能性オルガノシロキサンを包含する組成物の架橋により得られるシリコーン組成物において、アルケニル官能性ポリオルガノシロキサンを包含するシリコーンコーティング組成物との不相溶性の程度を調節する方法が開示されている。
【0009】
特許文献3には、シリコーン剥離コーティング用の剥離力調節剤として、フルオロシリコーン樹脂とアルケニル官能オルガノポリシロキサンの混合物を含む剥離力調節剤を用いて剥離力を調節する方法が開示されている。
【0010】
特許文献4には、パーフルオロアルキル基及び少なくとも3つのケイ素結合された水素原子を有するフルオロシリコーン化合物、並びに、少なくとも1つのアルケニル基を有するMQ樹脂からなる、剥離改質剤を配合した組成物を用いて剥離力を調節する方法が開示されている。
【0011】
さらに特許文献5には、紫外硬化性エポキシシリコーン剥離剤用の剥離力調節方法として、エポキシ官能性シリコーン樹脂とエポキシ末端液体ジメチルシリコーンとの或る独自の組み合わせにより、剥離力を調節する方法が開示されている。
【0012】
しかし、これら熱硬化または紫外線硬化によって剥離力を調節する方法によって作製された剥離組成物は、その組成を変更することによってしか剥離力の調整ができず、異なる剥離力の剥離シートが求められるときは、その都度、シリコーンの組成をかえたものを作製しなければならない。
【0013】
以下に特許文献を示す。
【特許文献1】特開平06−166820号公報
【特許文献2】特開平11−100551号公報
【特許文献3】特開平10−195388号公報
【特許文献4】特開平09−278893号公報
【特許文献5】特開平07−002976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、同一の組成の剥離層を使用していても、粘着剤に対して異なった剥離力を有する剥離シートを、提供することを目的とする。特に、軽剥離性のシリコーン剥離剤の剥離力を増加して、工業用粘着ラベル等の重剥離性が要求される用途に適した剥離シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題に取り組み鋭意検討した結果、シリコーン剥離層が同一組成物であっても、剥離層表面に凹凸を形成することによって剥離力が増加することを見出した。さらに、凹凸量と剥離力の間にほぼ直線的な比例関係があることを見いだした。すなわち、剥離層の材料を変更することなく、表面形状を制御することによって剥離力を制御することが可能であることを見いだし、本発明に到った。剥離力が増加する理由は、剥離層の表面が凹凸状になっているので表面積が増加し、粘着剤と接触する面積が増加するためであると考えられる。
【0016】
請求項1に係わる発明は、少なくとも基材シートとその上に形成されたシリコーン組成物よりなる剥離層を有する剥離シートであって、剥離層の表面に凹凸を形成して粘着剤に対する剥離力を増加したことを特徴とする剥離シートである。
【0017】
次に、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の剥離シートの製造方法であって、剥離層の表面に凹凸を形成する方法が、基材シートの上に塗布した剥離層形成用の液体を硬化させる間に、表面に凹凸を有する物体を剥離層用の液体と重ねて加圧することによって、物体の表面の凹凸形状を離型層の表面に転写する方法であることを特徴とする剥離シート
の製造方法である。
【0018】
次に、請求項3に係る発明は、表面に凹凸がある物体として表面に凹凸を有するシートを使用し、重ねて加圧する方法が、その凹凸を有するシートをその凹凸面と剥離層とが接するように挟みこんでロール状に巻き取り、巻き取り状態での圧力によって加圧する方法であることを特徴とする請求項2に記載の剥離シートの製造方法である。
【0019】
次に、請求項4に係わる発明は、表面に凹凸がある物体として一面に凹凸がある基材シートを使用し、重ねて加圧する方法が、剥離層形成用の液体を基材シートの他の面に塗布し、ロール状に巻き取り、巻き取り状態での圧力によって加圧する方法であることを特徴とする請求項2に記載の剥離シートの製造方法である。
【0020】
次に請求項5に係わる発明は、表面に凹凸がある物体として両面に凹凸がある基材シートを使用し、重ねて加圧する方法が、剥離層形成用の液体を基材シートの一面に塗布し、ロール状に巻き取り、巻き取り状態での圧力によって加圧する方法であることを特徴とする請求項2に記載の剥離シートの製造方法である。
【0021】
次に請求項6に係わる発明は、凹凸を有する物体が、表面に凹凸を形成した平板またはロールであることを特徴とする請求項2に記載の剥離シートの製造方法である。
【0022】
次に、請求項7に係わる発明は、表面に凹凸を有する物体の凹凸量を制御することによって、剥離層の表面の凹凸量を制御することを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の剥離シートの製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の発明の効果は、剥離層の表面に凹凸を形成することによって表面積が増加し、粘着剤との接触面積を増加させることが可能になり、結果として剥離力を増加させることが可能になる点である。
【0024】
請求項2の発明の効果は、剥離層を形成する際に、表面に凹凸のある物体と剥離層を接触させることによって、剥離層に凹凸を形成するという具体的な製造方法を提供した点である。
【0025】
請求項3の発明の効果は、通常の剥離シートの製造工程において、表面に凹凸を有するシートを挟み込むことによって、目的とする剥離層表面に凹凸を有する剥離シートを製造する方法を提供した点である。通常の製造工程を大幅に変えることなく、目的を達成することができる。
【0026】
請求項4の発明の効果も通常の剥離シートの製造工程を変えることなく、目的とする剥離シートを製造することができる点である。
【0027】
請求項5の第一の効果は、請求項4と同じく、通常の剥離シートの製造工程を変えることなく、目的とする剥離シートを製造することができる点である。第2の効果は、基材シートとして両面に凹凸があるものを使用したので、剥離層を塗布した面の凹凸も、剥離層表面の凹凸形成に寄与するので、剥離力がその分大きくなる点である。
【0028】
請求項6の発明の効果は、印刷における製版技術を使用することによって、所望の凹凸表面を形成することができる点である。
【0029】
請求項7の発明の効果は、剥離層の表面の凹凸量と粘着剤に対する剥離力が比例関係に
あることを利用して、剥離力を制御して増加させる方法を提供した点である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の方法の一つと、本発明の基本的な作用効果を、図1によって説明する。図1(a)において、基材シート上に剥離層を形成したフィルム11を凹凸のあるフィルム12と共に巻くことでロール13を形成する。ただし、シリコーン組成物である剥離層がまだ塑性変形可能な間に、巻き取る必要がある。すると、図1(b)に示すように、基材シート1の上の可塑性が残っている剥離層2は、巻き取った状態で印加される圧力によってフィルム12の凹凸に対応して塑性変形する。剥離層が硬化して塑性変形しなくなった状態で凹凸フィルム12を引き離すと、図1(c)に示すように、剥離層2にはフィルム12の凹凸に対応した逆パターンの凹凸形状が転写形成される。
【0031】
図1(d)は、図1(c)の状態の剥離シート11を粘着テープ14と重ね、加圧した結果、粘着剤3が剥離層の凹部へ押し込まれた状態を示す。すると、粘着剤と剥離層の表面の接触面積が、剥離層が平坦な場合と比較して、凹部の分だけ増加する。結果として、剥離シートを剥離するための剥離力が増加する。フィルム12の凹凸量(表面積)を変えることによって、剥離層に形成される凹凸量(剥離層の表面積)を制御することができるので、剥離層の剥離力を制御することが可能である。
【0032】
本発明者らは、フィルム12の表面積の代表値として、算術平均表面粗さRa(JIS
B0601)を使用した場合に、実施例の項で示すように、Raと剥離力の間にほぼ直線関係があることを見いだした。
【0033】
本発明の剥離構造体に用いられる基材シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、アセテート、セロハン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリスチレン等のプラスチックフィルム、および紙をベースにしてその上に上記のプラスチックの層を形成したもの、さらにクラフト紙、グラシン紙、クレープ紙等の各種の紙を使用することができる。
【0034】
これら基材シートに剥離層となるシリコーン組成物の液体を塗布する方法としては、ロール塗布、グラビア塗布、ワイヤードクター塗布、エアーナイフ塗布、ディッピング塗布等の公知の方法を採用することができる。
【0035】
剥離層の厚さとしては、表面に形成する凹凸の形成の妨げにならない厚さであればよい。例えば、凹部の最大深さが3μmのものを製造する予定であれば、剥離層の厚さは少なくとも3μm以上とする。また、基材シートに紙等の表面に凹凸があるものを使用する場合には、プライマーコート等によって表面を平滑にするか、あるいは剥離層の厚さを、その凹凸を埋めることができる厚さ分だけ追加する必要がある。
【0036】
挟み込むための表面に凹凸があるフィルム12としては、第一に通常のコート法によって、所望の凹凸表面を形成したフィルムを使用することができる。すなわち、平滑な基材に、微小な粒子を分散させたコート用の液を塗布し、密着硬化させるたものを使用することができる。粒子のサイズ、分散量を変えることによって、所望の凹凸表面を形成することができる。
【0037】
また、アンチブロッキング性能を発揮させるためにフィルム表面に凹凸ができるように微小な粒子を練りこんだフィルムが市販されていて、フィルム12として使用することができる。練り込んだ粒子の量やサイズが異なると表面の凹凸状態が異なる。種々の凹凸形状、凹凸状態を有するフィルムを入手することが可能である。図1(b)の12はこのアンチブロッキングフィルムの断面を模式的に示している。挟み込むフィルムの表面の凹凸
の程度を変えることによって、剥離シートの剥離力を変えることができる。
【0038】
本発明の剥離シートの別の製造方法として、図1の基材シート1として、少なくとも剥離剤を塗布する面でない面(裏面)に凹凸が形成されているものを使用し、表面に凹凸のあるフィルム12を挟み込まずに巻き取る方法がある。巻き取られた状態で、剥離層は基材シートの裏面と接触するので、基材シートの裏面の凹凸形状が反転した形状で剥離層に転写される。
【0039】
さらに、別の製造方法として、図2に示す方法がある。図2において、ロール15の表面には所望の凹凸が、例えばフォトエッチング法を使用して、形成してある。まず、剥離シートの基材シート14をロールから巻きだし、その上にコータ14で紫外線硬化型の剥離層用の溶液2を塗布し、ロール15と重なった時点で、裏面から紫外線17を照射して、剥離層を硬化する。硬化したら巻き取ってロール16とする。
【0040】
図2の方法は、基本的に広義の印刷法の一種であり、例えばエンボスフィルムを製造する場合に使用されている。また、種々の印刷技術を使用することができる。例えば、紫外線硬化型でなく、加熱硬化型の剥離剤用の溶液を使用することができる。その場合には、ロールと重なった部分で加熱する。さらに溶剤を揮発させる必要がある場合には塗布した後、ヒータ部を通過させて加熱し、溶剤を揮発する。また、ロール15の表面の凹凸の形成にはグラビア印刷ロールを作製する方法、樹脂凸版を作製する方法を使用することができる。
【0041】
また、図2では凹凸パターンを形成したロールを使用しているが、平板に凹凸を形成して使用することができる。その場合には、重ねて加圧する方法として、例えばホットスタンプの方法を使用することができる。すなわち、加熱硬化性の剥離剤を塗布した基材シートを間欠的に送って、平板と重ねた状態で加圧・加熱して剥離層を硬化する方法である。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものでない。
【0043】
(実施例1)
基材シートとして膜厚100μmのポリプロピレンフィルムを用い、その上にシリコーン組成物からなる剥離層を以下のようにして作製した。すなわち、UV硬化型剥離紙用シリコーンTPR6500(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)100質量部と硬化剤UV9380C(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)1質量部を混合したものを1μmの膜厚となるように塗工し、120W/cmのハロゲンランプを用いて、所定の時間硬化して、剥離層とした。
【0044】
この剥離層を有するポリプロピレンフィルムを巻き取り、ロールを作製する際に、平均粒径10μmのゼオライト粒子からなるアンチブロッキング剤を(A)0.5質量%、(B)1質量%、(C)2質量%含有する膜厚20μmのブロッキング防止ポリプロピレンフィルム3種類を順次間に挟みこんでロール状に巻き取った(図1(a)参照)。また、剥離層を有するポリプロピレンフィルムを巻き取る際に、あいだにブロッキング防止フィルムを挟みこまなかった場合を比較例(フィルムなし)とした。
【0045】
(剥離力の測定)
得られた剥離層を有するポリプロピレンフィルムの剥離力を以下の方法で測定した。 剥離層上に、JIS指定の粘着テープを貼り合わせ、質量5kgの加圧ロールで一往復圧着し、40℃で16時間経過後、JIS K−6854に準じて180度剥離の剥離力を
測定した。剥離速度は300mm/分とした。剥離力の測定結果を表1に示す。なお、剥離層表面の凹凸の程度はRaで代表している。RaはJIS B0601によって規定されている物体表面の粗さを示す数値である。そして、Raは微視的に見た場合のその物体の表面積を示す代替値の一種であると考えられる。
【0046】
【表1】

表1に示すように、剥離層を有するポリプロピレンフィルムを巻き取る際に、アンチブロッキング剤によって凹凸を持つフィルムを間に挟みこむことで、剥離層の剥離力を向上させることができた。この結果から、アンチブロッキング剤量によって、剥離層の剥離力の調節が可能であることが示された。
【0047】
(実施例2)
基材シートとして平均粒径10μmのゼオライト粒子からなるアンチブロッキング剤を含まない平滑な膜厚100μmのポリプロピレンフィルム、(A)0.5質量%、(B)1質量%、(C)2質量%含有する膜厚100μmのブロッキング防止ポリプロピレンフィルムを用い、その上に実施例1と同じ組成のシリコーン組成物からなる剥離層を1μmの膜厚となるように塗工作製した。この剥離層を有するポリプロピレンフィルムを渦巻状に巻き取り、ロールを作製した。
【0048】
(剥離力の測定)
得られた剥離層を有するポリプロピレンフィルムの剥離力を以下の通りに評価した。剥離層上に、JIS指定の1インチ幅の粘着テープを貼り合わせ、質量5kgの加圧ロールで一往復圧着し、40℃で16時間経過後、JIS K−6854に準じて180度剥離により剥離力を測定した。剥離速度は300mm/分とした。剥離力の測定結果を表2に示す。
【0049】
【表2】

表2に示すように、基材シートにアンチブロッキング剤によって凹凸を持つフィルムを用いて剥離層を形成し巻き取ることで、剥離層の剥離力を向上させることができた。この結果から、基材シート中のアンチブロッキング剤量によって、剥離層の剥離力の調節ができることが示された。
【0050】
図3は表1、表2の結果を図示したものであり、いずれもアンチブロッキングフィルムに練り込んだ微粒子(ゼオライト)の量に対して、剥離力が直線的に比例して増加している。この結果から、微粒子の量はアンチブロッキングフィルムの表面の凹凸量、すなわち表面積に比例すると考えられる。また、アンチブロッキングフィルムの表面の凹凸は、剥離層の表面の凹凸に一対一で対応すると考えられる。従って、挟み込む合紙の表面の凹凸の程度(Ra値)を選択することによって、所望の剥離力を得ることができる。
【0051】
実施例1と実施例2では、同じ品番のアンチブロッキングフィルムを使用しても、得られた剥離層の表面粗さが異なる。その理由は、実施例1では、剥離層の凹凸は重ね合わせたアンチブロッキングフィルムの表面の凹凸だけを反映しているが、実施例2では、剥離層の厚さが1μmと薄いため、剥離層の凹凸が、重ねあわせたブロッキングフィルムの凹凸だけでなく、基材シートとして使用したブロッキングフィルムの凹凸も反映した凹凸になっているためと考えられる。
【0052】
また、実施例2において、ブロッキング防止剤量が2%のフィルムを使用した場合に、剥離層の表面粗さが、その他の3例が載っている直線より若干下回っている。一方、実施例1では直線上に載っている。この相違の理由は明確でないが、実施例2では、剥離層が重ねあわせたブロッキングフィルムの表面の凹凸の細部まで入りこまず、結果として、ブ
ロッキングフィルムの表面の凹凸を完全には転写しなかったと考えられる。
【0053】
図4に、表1と表2の剥離層の表面粗さに対する剥離力をまとめて示した。図4において、凹凸の形成方法が異なっていても、表面粗さと剥離力のテスト結果は、ほぼ一つの直線上に並んでいる。この結果は、剥離層の表面粗さを増すことによって、剥離力をほぼ比例して増加させることが可能であることを示している。この結果から、本発明に到った。
【0054】
ただし、剥離力はどこまでも増加させる得るわけでなく、図1(d)において、粘着材が剥離層の凹凸の微細な部分にどの程度まで入り込めるかによって、異なり、また入り込めなくなった時点で飽和する。実際には剥離力を、実施例1では約3倍、実施例2では約4倍増加させることができた。
【0055】
図4において、表面粗さRa=1.9μmの場合以外は、ほぼ直線上に並んでいる。1.9μmの場合に期待される剥離力が得られない理由は明確でないが、粘着剤が剥離層の凹凸の全面まで入り込めなかったことが考えられる。
【0056】
さらに剥離力を増加させるには、第一に剥離層と重ね合わせる物体の表面の凹凸(Ra値)増加すること、第2に剥離層を表面に凹凸がある物体と重ね合わせ、加圧する際の剥離層の粘度を低下させ、凹部の細部まで剥離層が入り込むようにすること、第3に粘着剤と貼り合わせる際の圧力を高くして、粘着剤が剥離層の凹部の細部まで入り込むようにすることが必要であると考えられる。
【0057】
本発明によって、剥離層の組成を変更することなく剥離層の剥離力が制御可能となるため、産業上求められる様々な剥離力に安価かつ迅速に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施例の概略と作用効果を説明するための概略図である。
【図2】本発明の剥離シートの別の製造方法を説明するための概略図である。
【図3】実施例1、実施例2の結果を説明するための図である。
【図4】本発明の作用効果を実施例1、実施例2の結果から説明するための図である。
【符号の説明】
【0059】
1:剥離シート用基材シート
2:剥離層
3:粘着剤
4:粘着テープ用基材シート
11:剥離層用液を塗布した基材シート
12:凹凸のあるフィルム
13:巻き取りロール
14:粘着テープ
21:剥離シート用基材シート巻きだしロール
22:塗布装置
23:表面に凹凸を有するロール
24:紫外線照射装置
25:剥離シート巻き取りロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材シートとその上に形成されたシリコーン組成物よりなる剥離層を有する剥離シートであって、剥離層の表面に凹凸を形成して粘着剤に対する剥離力を増加したことを特徴とする剥離シート。
【請求項2】
請求項1に記載の剥離シートの製造方法であって、剥離層の表面に凹凸を形成する方法が、基材シートの上に塗布した剥離層形成用の液体を硬化させる間に、表面に凹凸を有する物体を剥離層用の液体と重ねて加圧することによって、物体の表面の凹凸形状を離型層の表面に転写する方法であることを特徴とする剥離シートの製造方法。
【請求項3】
表面に凹凸がある物体として表面に凹凸を有するシートを使用し、重ねて加圧する方法が、その凹凸を有するシートをその凹凸面と剥離層とが接するように挟みこんでロール状に巻き取り、巻き取り状態での圧力によって加圧する方法であることを特徴とする請求項2に記載の剥離シートの製造方法。
【請求項4】
表面に凹凸がある物体として一面に凹凸がある基材シートを使用し、重ねて加圧する方法が、剥離層形成用の液体を基材シートの他の面に塗布し、ロール状に巻き取り、巻き取り状態での圧力によって加圧する方法であることを特徴とする請求項2に記載の剥離シートの製造方法。
【請求項5】
表面に凹凸がある物体として両面に凹凸がある基材シートを使用し、重ねて加圧する方法が、剥離層形成用の液体を基材シートの一面に塗布し、ロール状に巻き取り、巻き取り状態での圧力によって加圧する方法であることを特徴とする請求項2に記載の剥離シートの製造方法。
【請求項6】
表面の凹凸を有する物体が、表面に凹凸を形成した平板またはロールであることを特徴とする請求項2に記載の剥離シートの製造方法。
【請求項7】
表面に凹凸を有する物体の凹凸量を制御することによって、剥離層の表面の凹凸量を制御することを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の剥離シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−202442(P2009−202442A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47373(P2008−47373)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】