説明

剪定作業用多孔体シート

【課題】冬期における圃場での長時間の立ち作業や屈んだ状態での厳しい条件での剪定作業における足腰の疲労、血行悪化、筋肉疲労、筋肉痛、むくみ等の軽減および解凍した土壌によるぬかるみを軽減した作業性が良好で軽量で容易に持ち運びができる剪定作業用シートを提供する。
【解決手段】ポリエステル繊維等の合成樹脂繊維で成形した基布に塩化ビニル樹脂を被覆した大きさが7m〜20mで厚さが0.8mm〜1.5mmの樹脂シートに円形状または方形状で径の大きさが0.8mm〜2mmの孔を空隙率が2%〜10%になるように設けるとともに、多孔体シートの周辺に補強用のテープをまた多孔体シートの四辺の隅部には補強用のハトメを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は主として冬期における圃場での剪定作業の環境劣化を防ぐための断熱性と作業性に優れた剪定作業用多孔体シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
果樹の剪定は樹盛の維持や拡大のため夏期の収穫が終わった後の新芽が膨らむ春までにしなければならない重要な作業の一つであるが、枝の切り落とし、整枝、誘引および切り落とした枝の回収作業は主に12月以降の冬期の作業になる事が多く圃場での長時間の剪定作業はきわめて厳しいものである。一方、午後になると午前中は凍結していた霜柱が溶けてぬかるみが生じて剪定作業環境が劣化するという問題がありこの様な剪定作業の環境改善が望まれてきた。
従来から果樹の剪定作業は作業者が立ったまま、あるいは屈んだ状態で行われているが、このような作業環境での長時間の作業は作業者にとっては厳しいものである。厳しい寒風や足元から来る冷気等の環境下における無理な態勢での力仕事や体重移動を頻繁に繰り返す作業は足首、膝などに高い負荷が加わり、血行悪化、筋肉疲労、筋肉痛、むくみ等の病状を発症することが少なくない。
【0003】
ところが、収穫物である果実や野菜を冷気や鳥害から保護するために保護膜や保護ネット等の用具を設けることは従来から知られているが、厳しい環境下で作業している作業員に対しては余り考慮されておらず、これまで厳しい圃場における作業者の作業環境を向上するための器具や用具は知られていない。
勿論、これまでにも石材、セメント、木材等の硬質部材で成形された床上で長時間の作業をする作業者の負荷軽減と血行促進等を向上するために平板状の弾性部材からなる基板の下面と上面に半球状の突起が一定の間隔を持って配設されてクッション性を有する作業用マット等は知られている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、このような一般的な作業用マットと違って剪定作業用に特化して工夫されたた用具や道具は殆ど知られていない。たとえば、体に装着しても苦にならず、動き易く長時間座っていても臀部に痛みが生じ難く地面に多少に凹凸が有るところでも座面は水平なままなので常に安定しているだけでなく座ったままの作業位置をずらす際にも本体がソフトなので体をあらゆる方向に傾けることができ体重移動がスムーズに移動し易く、空気弁を操作することによりいつでも簡単に空気圧を変えて、作業者それぞれの好みに合った高さ調節が可能な空気圧製品からなる作業用腰掛(特許文献3)、発泡倍率20〜50倍のポリオレフィン発泡体からなり上面に多数の凹部または凸部が設けられた農作業台(特許文献4)等が知られている。しかしながら、これらの用具は嵩張るものであったり、好適に使用のための調整が必要であったりする。しかも、従来から使用されているこれらの製品は定位置で作業するためには便利であるが剪定作業のような作業位置が頻繁に移動するような仕事には適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−293806号公報
【特許文献2】特開2007− 44178号公報
【特許文献3】特開2000−253952号公報
【特許文献4】実開平06−49650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
冬期における圃場での長時間の立ち作業や屈んだ状態での剪定作業は血行悪化、筋肉疲労、筋肉痛、むくみ等の種々の病状の原因になるとされているが、本願発明はこのような厳しい作業環境によって生じる問題を解決できる安価で簡単に施工と収納ができる剪定作業用の多孔体シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は剪定作業における上記の課題を解決するものとして、第1の発明は、大きさが7m〜20mで厚さ0.8mm〜1.5mmの合成樹脂繊維からなる基布の表面に空隙率が2%〜10%になるようにポリ塩化ビニル樹脂が被覆されているとともに多孔体シートの周辺部および/または隅部が補強されている剪定作業用多孔体シートを提供する。
第2の発明は、基布の素材である合成樹脂繊維としてポリエステル繊維を用いた上記の剪定作業用多孔体シートを提供する。
第3の発明は、シートに直径が0.8mm〜2mmの円形状または方形状の孔が設けられている上記の剪定作業用多孔体シートを提供する。
第4の発明は、多孔体シートの周辺部および/または隅部を補強するためにテープ、管体、棒体およびハトメ(鳩目)が施されている上記の剪定作業用多孔体シートを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本願第1発明によれば、特定の大きさ、厚さ、孔の大きさを備えた剪定作業用多孔体シートを用いることにより、従来から行われているように圃場の地面に直接立って作業をするのに比べ足元からの冷気が遮断されるため足元の保温が確保されるだけでなく果実や野菜等の摘み取り作業におけるぬかるみを抑制することができる、また足腰の疲労や筋肉痛を著しく軽減して作業性を高めることができる。さらには、剪定によって切り落された枝は地面から隔離されるため裁断された枝の汚れや濡れも抑制することができる。
第2の発明によれば、上記の効果に加えて合成樹脂繊維としてポリエステル繊維からなる基布を用いることにより柔軟性と耐久性が良好な安価で作業性に優れた剪定作業用多孔体シートを提供することができる。
第3の発明によれば、上記の効果に加えて0.8mm〜2mmの大きさの円形状または方形状の孔を設けることにより地面になじみ性が良好で霜柱が解凍しても孔から汚泥が表面に出て来ない剪定作業用多孔体シートを提供できる。
第4の発明によれば、上記の効果に加えて多孔体シートの周辺部および/または隅部に補強部材としてテープ、管体、棒体またはハトメを設けることにより多孔体シートを補強することができるとともに剪定作業の終了後には剪定作業用多孔体シートの周辺部や隅部に設けられた補強部材を持って手繰り寄せたり次の区域に移動させたりすることができる。さらに、該ハトメを柵の張り線や杭に縛り付けて保持することにより裁断された枝の回収作業を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】剪定作業用多孔体シートの平面図である。
【図2】剪定作業用多孔体シートの側面図である。
【図3】剪定作業用多孔体シートの斜視図である。
【図4】剪定作業用多孔体シートの使用態様の例を示したものである。
【図5】剪定作業用多孔体シートの使用態様の他の例を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願発明の剪定作業用多孔体シートは冬期における剪定作業に好適な様に特定の大きさと特定の厚さを有する合成樹脂繊維からなる基布に特定の大きさの孔が特定の割合で設けられている点に特徴を有している。従来から庭の樹木を剪定するに際して、剪定によって裁断された枝を片付けるために可撓性の樹脂シートを使用することは普通に行われている。しかしながら、本願発明の剪定作業用多孔体シートは従来から剪定後の後片付け用として用いられている可撓性の樹脂シートとは異なり裁断された枝の後片付けだけでなく、冬期に圃場の果樹を剪定する作業員の作業環境を改善する機能を備えている点に特徴を有するものである。一般に果樹の剪定は夏期の収穫が終わった後の新芽が膨らむ春までにしなければならないが枝の切り落とし、整枝、誘引および切り落とした枝の回収作業は主に12月以降の冬期の作業になる事が多く圃場での長時間の作業はきわめて厳しいものとされている。ところが、圃場で果実や野菜を栽培するに際し、果実や野菜そのものを冷気や鳥害から保護するために果実や野菜を覆うシートやネットを設けることは普通に行われているが作業員の作業環境を向上するための用具は殆ど知られていない。本願発明は剪定作業を好適に行うことができる多孔体シートを提供することを目的とするものである。
【0011】
本願発明の剪定作業用多孔体シートは熱可塑性の合成樹脂繊維からなる基布に空隙率が2%〜10%になるように沢山の孔が設けられているとともに該多孔体シートの表面がポリ塩化ビニル樹脂で被覆されている面積が7m〜20mで厚さが0.8mm〜1.5mmの構成を備えている点に要旨を有するものであるが、具体的に本願発明の剪定作業用多孔体シートを図1〜図5に従って説明すると、図1は本願発明の典型的な剪定作業用多孔体シート(1)の平面図であり、(2)は該シートに設けられている孔である。また(3)は周辺部に硬質テープ等の補強部材を入れて折り返された補強部であり、(4)は該補強部に設けられたハトメである。このハトメ(4)は剪定作業用多孔体シート(1)の大きさに応じて適宜設けることができる。図2は剪定作業用多孔体シート(1)の側面図であり、(2)は該シートに設けられている孔である。(3)はシートの周辺部を折り曲げて形成された補強部であり、(4)はハトメである。
なお、図2では孔(2)の形状は模式的に単純に示されているが孔(2)の形状は円形状や方形状またはそれらを組み合わせた任意の形状で良い。
【0012】
図3は本願発明の剪定作業用多孔体シート(1)の斜視図であり、図3における(2)は該シートに設けられた孔であり(3)はシートの周辺部を折り曲げて形成された補強部であり、(4)はハトメである。図4は本願発明の剪定作業用多孔体シート(1)の典型的な使用態様を示したものであるが、図4に示されているように剪定作業用多孔体シート(1)の片側のハトメ(4)に適当なフック(5)を設けてそれを棚の張り線(6)に係止させることにより裁断された枝の散逸を防ぐことができる。また、他方のハトメ(4)には次の区域に移動させるための紐(7)等が設けられて当該区域での剪定が終わったらフック(5)を外して紐(7)を引っ張りながら移動させることができる。さらに、図5に示されているものは剪定作業用多孔体シート(1)の他の使用態様を示したものであるが、図5に示されているものは基本的に図4に示されているものとは変わりはなく剪定作業用多孔体シート(1)の片側のハトメ(4)に適当なフック(5)を設けてそれを杭に縛り付けるなどして係止させることにより裁断された枝の散逸を防ぐことができるようにしたものである。
【0013】
なお、本願発明の剪定作業用多孔体シートは熱可塑性の合成樹脂繊維からなる多孔体の基布を用いることを要件としているが、本願発明に用いることができる合成樹脂繊維の素材としては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、二酢酸セルロースや三酢酸セルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、塩化ビニル系ポリマー、ポリアミド等々があるが、加工性、耐摩耗性、剛性、価格等の観点からはポリエステル繊維の使用が最も好ましい。
【0014】
そして、本願発明ではこの熱可塑性の合成樹脂繊維、特にポリエステル繊維を素材とする基布に径の大きさが0.8mm〜1.5mmの円形状や方形状またはそれらを組み合わせた任意の形状をした孔が設けられているとともに当該多孔体シートの周辺部には補強用のテープが、また多孔体シートの周辺部および/または隅部には補強用のハトメが施されていることを特徴とするものである。なお、本願発明においては多孔体シートの大きさが7m〜20mに特定されているが、この様に多孔体シートの大きさが特定されている理由としては、大きさが7m以下であれば剪定の際に切落とした枝の受け皿としての収容面積が小さ過ぎて収容効率が悪くなるし、大きさが20m以上になれば圃場に植栽されている果樹の間を移動することが困難であり試行錯誤の結果、剪定作業が最も効率的に行うことができる7m〜20mの範囲に特定したものである。
【0015】
なお、本願発明の剪定作業用多孔体シートは多孔体シートの大きさだけでなく多孔体シートの厚さや多孔体シートに設けられる孔の大きさについても特定の範囲に限定されているが多孔体シートの厚さおよび孔の大きさを特定の範囲内にすることは本願発明の剪定作業用多孔体シートとして重要な要素である。
すなわち、多孔体シートの厚さが0.8mmより薄い場合は下敷き材としての強度を保つのは困難となるし、厚さが1.5mm以上の場合は地面に対してなじみが損なわれるだけでなく重量が増して多孔体シートの持上げや移動等の作業効率が悪くなる。また合成樹脂からなるシートに0.8mm以上の大きさの孔を設けることによって地面が平らでなくてもなじみ易くなり多孔体シートのスリップが抑制されて安心してシート上を歩行移動することが可能となる。
【0016】
なお、孔の大きさが2.0mm以上になれば解凍によって泥濘となった圃場の土が孔を通して多孔体シートの上面に出てくる等の問題が発生する。この様に、剪定作業用多孔体シートは大きさや厚さ或いは孔の大きさ等についても特定されているが、多孔体シートの大きさや厚さ或いは孔の大きさをこの範囲内に特定することにより、歩行、立ち作業およびシート上に切落とした枝の回収作業等の一連の作業において作業者の疲労を少なくすることができるものであり、作業性、コスト、保温性を最適条件に保持できるものである。なお、本願発明の剪定作業用多孔体シートの大きさ、厚さおよび孔の大きさ等を上記の範囲に特定することはこれまでの数多くの経験から得られたものである。
【0017】
また、本願発明の剪定作業用多孔体シートの周辺部には補強用のテープ、竹竿等の管体、棒等の補強部材が設けられているとともに、周辺部および/または隅部には補強用および移動用としてハトメが施されている。なお、この多孔体シートの周辺部を補強する方法は特に限定されている訳ではないが剪定作業用多孔体シートの周辺部に補強テープ、竹竿等の管体、棒体を添えて該シートの周辺部を3.5cm〜5cm程度折り返して補強部材を包むようにした後、折り返し部を縫い合わせることによりシートが折れないようにして移動することができる。なお、この多孔体シートの周辺部および/または隅部に設けられているハトメは剪定作業を行うに際し、ハトメを棚の張り線に縛り付けたり、杭やパイプに縛り付けて剪定作業用多孔体シートの周辺部を高くして裁断された枝の散逸を防ぎ作業を効率的に行うことができるだけでなく当該区域での作業終了時にはハトメに通した紐や周辺の補強部を把持しながら次の区域に移動させて剪定作業を続けることが可能である。なお、この様な作業をスムーズに行えるようにハトメの大きさは一般の敷布に設けられているハトメより大き目(3cm〜4.5cm程度)が好ましい。この様に本願発明の剪定作業用多孔体シートは圃場の作業対象区域に展張して、多孔体シートの上で剪定作業を開始し、切り落とした枝を剪定作業が終了した時点でシートを手操ることにより集約して回収することができるとともに多孔体シートを手操る際には片方のハトメ側部を棚線または親木に固定すれば効率的に回収作業が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
良質な果実を栽培するには樹木の剪定作業は不可欠であるが、この剪定作業は作業環境が厳しい冬期に行われる場合が多く作業者の労働負担は大きい。
本願発明の剪定作業用多孔体シートはこのような作業環境の厳しい冬期における剪定作業をより好適にする用具として使用することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 剪定作業用多孔体シート
2 孔
3 補強部
4 ハトメ
5 フック
6 棚の張り線
7 紐


【特許請求の範囲】
【請求項1】
大きさが7m〜20mで厚さ0.8mm〜1.5mmの合成樹脂繊維からなる基布の表面に空隙率が2%〜10%になるようにポリ塩化ビニル樹脂が被覆されているとともに多孔体シートの周辺部および/または隅部が補強されていることを特徴とする剪定作業用多孔体シート。
【請求項2】
合成樹脂繊維がポリエステル繊維であること特徴とする請求項1に記載の剪定作業用多孔体シート。
【請求項3】
多孔体シートに設けられている孔の形状が円形状または方形状で、孔の大きさが0.8mm〜2mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の剪定作業用多孔体シート。
【請求項4】
多孔体シートの周辺部および/または隅部の補強部材がテープ、管体、棒体またはハトメであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の剪定作業用多孔体シート。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−172770(P2011−172770A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39537(P2010−39537)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(508196461)
【Fターム(参考)】