説明

副作用が低減されたトラネキサム酸製剤

【課題】トラネキサム酸治療の副作用を低減し、患者の治療に対するコンプライアンスを高めるためのトラネキサム酸製剤を提供する。
【解決手段】胃中でトラネキサム酸の放出を低下させる少なくとも1種の剤を用いて経口剤形に製剤化されたトラネキサム酸製剤であって、そのような剤が、胃中のトラネキサム酸のボーラス放出を妨げるワックス、ポリマー等である持続放出製剤、或いは、そのような剤が、腸のより酸性度が低い環境に達するまでトラネキサム酸の放出を遅延させるポリマーである遅延放出製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、望ましくない副作用を最小化又は除去する治療用の経口トラネキサム酸製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
トラネキサム酸(トランス-4-(アミノメチル)シクロヘキサンカルボン酸、Cyklokapron(登録商標)(Pfizer))は、抗線溶剤である。すなわち、それは、止血の正常な生理的過程で形成されるフィブリン血餅の溶解(lysis)又は溶解(dissolution)の抑制を補助する。その作用機構は、プラスミノーゲン活性化の競合阻害剤であり、且つプラスミンの非競合阻害剤である。プラスミノーゲン及びプラスミンは両方とも線維素溶解の活性化剤であり、活性血餅溶解剤である。従ってトラネキサム酸は、フィブリン血餅の安定化を補助し、その後、凝固を維持して出血の抑制に役立つ。
【0003】
トラネキサム酸は、過剰な出血の抑制に用いられる。過剰な出血とは、例えば、血友病患者の歯科処置の間に起こる過剰な出血や、月経中の重い出血(月経過多)である。月経過多を患う女性は、通常は500mgのトラネキサム酸錠剤を用いて経口で治療される。該トラネキサム酸錠は、毎日3回又は4回投与され、総日用量は、3グラム/日(8時間おきに2錠)から6グラム/日(6時間おきに3錠)である。しかし、この治療は、吐き気、嘔吐、下痢及び痙攣等を含む胃腸の有害反応を引き起こし得る。これらの胃腸の副作用は、各用量と共に胃に入るトラネキサム酸の量及び錠剤に用いられて胃に入る大量の賦形剤に起因する。痙攣、膨満感、痛み、及び月経に伴う他の症状に加えて、このような副作用は望ましくないため、これらの副作用を低減又は除去するトラネキサム酸製剤が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
経口トラネキサム酸治療を受けている患者、例えば月経過多(重い月経出血)の治療を受けている女性の望ましくない胃腸の副作用を最小化又は除去するトラネキサム酸製剤が開示されている。1つの実施形態は持続放出製剤であり、制御放出製剤とも呼ばれるが、該製剤は、剤形からのトラネキサム酸の放出が持続され又は制御された方式で起こるように作製され、トラネキサム酸のボーラスが胃中に投与されて胃内容物に溶解利用されることを防止する。別の実施形態は、遅延放出製剤である。遅延放出剤形は、胃中における該薬物の溶解を最小化し又は抑制するように作製される。トラネキサム酸の放出は、剤形が胃を出て小腸に到達するまで遅延される。持続放出剤形及び遅延放出剤形は両方とも改変放出剤形と呼ばれる。この改変放出剤形は、胃内容物中で溶解するトラネキサム酸の濃度を低減する。この低減したトラネキサム酸濃度の有益な効果は、胃内容物中のトラネキサム酸量を低下させ、その結果、トラネキサム酸療法に伴う胃の副作用を減らすことである。胃の副作用の低減は、治療に対する患者のコンプライアンスの改善をもたらすが、これは患者が前記の有害な副作用を避けるために、意図的に服用しないといったことがなくなるからである。医師もまた、患者の不満が減るため、患者に対してトラネキサム酸治療を開始し、持続することができるであろう。
【0005】
これら及び別の利点は、下記の詳細な説明及び実施例に照らしてみれば明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0006】
詳細な説明
経口投与のための改変放出トラネキサム酸錠剤が開示されている。前記錠剤は、少なくとも1種の賦形剤(本明細書中において、活性物質、すなわちトラネキサム酸、以外の任意の物質と定義される)を含有し、該賦形剤は、患者の前記胃腸の有害な副作用を最小化し又は除去する。患者は、例えば月経過多の治療のために経口トラネキサム酸を投薬されている女性である。
【0007】
改変放出製品は、米国薬局方(USP)によって、遅延放出製品及び持続-(制御)放出製品を含むと定義されている。1つの実施形態は持続放出製剤であり、徐放性製剤又は制御放出製剤とも呼ばれる。持続放出、制御放出、又は徐放性製剤は、一定の時間にわたってトラネキサム酸を制御可能に放出することによって服用後に胃液中で溶解するトラネキサム酸及び賦形剤の濃度を低減する。このことは、一度に全てのトラネキサム酸用量を放出する即時放出製剤とは反対である。即時放出製剤中においては、全用量と該剤形中の可溶成分が胃液中で溶解し、吸収される高濃度の溶質が存在する。
【0008】
もう1つの実施形態は、遅延放出製剤である。本明細書において使用される遅延放出剤形の定義は、米国薬局方(USP)第1151章「医薬剤形-錠剤」であり、本明細書に参照によりそのまま全て明確に組み入れられる。該錠剤は、錠剤が胃を通過するまでのトラネキサム酸放出の遅延のために、1種又はそれ以上の被覆剤を含む(腸溶性コーティング)。遅延放出錠剤は、投与の直後より遅い時間にトラネキサム酸を放出する剤形であり、すなわち、定量化可能な血漿トラネキサム酸濃度において、時間のずれを示す。1種又はそれ以上の被覆剤は、剤形が胃の酸性媒体を通過するまでトラネキサム酸の放出を遅延させる。遅延放出製剤は、該剤形が胃を空にして小腸に入るまで、胃中においてトラネキサム酸の放出を最小化し又は抑制して放出を遅延させる。
【0009】
遅延放出製剤は、腸溶性コーティング錠剤、腸溶性コーティングカプセル、腸溶性コーティング顆粒及び腸溶性コーティング球(一般に、tiny little time pillsすなわち、多粒子剤形と呼ばれる)を含む。
【0010】
該腸溶性コーティングは、胃中の酸性条件下で安定であり、腸の、低酸性又は実質的に中性の媒体(例えば、pH約5.5からpH約7.5まで)中においてのみトラネキサム酸を放出する。該腸溶性コーティングは、腸の、高めのpHに接触した場合にのみトラネキサム酸を崩壊し、浸食し又は溶解し、放出する。腸溶性コーティング製剤は、胃の比較的低いpHにおいて、トラネキサム酸の溶解を実質的に抑制する。持続放出製剤及び遅延放出製剤は両方とも改変放出形態であり、これによって1回分のトラネキサム酸が服用され、すぐに胃に到達した際に起こる胃腸の反応及び副作用を最小化し又は抑制する。
【0011】
本明細書において使用する、持続放出製剤、制御放出製剤、又は徐放製剤という用語は、長期にわたってトラネキサム酸を放出するように設計された医薬品製剤を記載するために使用される。本明細書において使用する持続放出錠剤の定義は、前に引用したように、米国薬局方(USP)第1151章からの定義である。該錠剤は、トラネキサム酸を、摂取後長期間にわたって利用できるようにする仕方で作製される。「持続性作用」、「反復作用」及び「徐放」という表現もまた、このような剤形を記載する。持続放出剤形は通常、トラネキサム酸が即時放出剤形中に存在する場合と比較して、服用頻度の低減を可能とする。これらの持続放出剤形はまた、血漿トラネキサム酸濃度の変動を低減してもよい。持続放出剤形は、錠剤、カプセル、顆粒、ペレット又は懸濁剤として調製されてもよく、カプセル、サシェ等にパッケージされてもよい。これらの剤形は、任意の製剤化技法によって調製されてもよく、ここで活性物質(トラネキサム酸)の剤形からの放出は、即時放出製剤からの放出より遅い速度で起こるように改変される。これらの製剤においては、トラネキサム酸の放出は胃及び腸の両方で起こるが遅い速度であるため、溶解する薬物のボーラスは、胃又は腸の内張りには到達せず、トラネキサム酸が低濃度であるため、副作用を引き起こさないか又は副作用が低い強度もしくは低い頻度で起こる。従って、副作用は低減され、最小化され又は除去される。
【0012】
持続放出製剤を調製する方法は、当業者に公知であり、Modified Release Drug Delivery Technology, Rathbone, Hadgraft及びRoberts編, Drugs and the Pharmaceutical Sciences, Vol. 126, Marcel Dekker Inc, New York, 2003; Modern Pharmaceutics, 3版, Banker及びRhodes編, Drugs and the Pharmaceutical Sciences, Vol. 72, Marcel Dekker Inc., New York, 1996; Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, Robinson編, Drugs and the Pharmaceutical Sciences, Vol. 6, Marcel Dekker Inc., NY 1978; Sustained Release Medications, Chemical Technology Review No. 177, Johnson編, Noyes Data Corporation 1980; Controlled Drug Delivery, Fundamentals and Applications, 2版, Robinson及びLee編, Marcel Dekker Inc., New York, 1987及び米国特許6,548,084,に見られ、これらの各参考文献は、本明細書に参照によりそのまま全て明確に組み入れられる。持続放出製剤、制御放出製剤及び徐放製剤という用語は、他に指示がない限り、本明細書中において交換可能に用いられる。
【0013】
改変放出形態の1つの例である持続放出形態は、摂取後長期間にわたってトラネキサム酸を利用できるようにする。胃腸管における消化過程及び吸収過程と結びついた持続放出剤形は、胃腸管中の溶液中で、従来の剤形として(例えば、溶液として又は即時放出剤形として)提示されたトラネキサム酸の投与と比較してトラネキサム酸量の低減を引き起こす。該持続放出製剤は、米国食品医薬品局(FDA)の基準に従って、in vitro 溶解試験及びin vivo 生物学的同等性文書によって実証されてもよい。該基準は、例えば、www.fda.gov, 21 CFR §314, 320に規定されており、米国薬局方(USP)23 NF 18 §711, 724にも規定されている。
【0014】
簡単には、in vitro溶解は、12個の個々の投与単位について行われる。装置、攪拌速度及び媒体を異なる組み合わせで用いることによって、多点溶解プロファイルが得られる。理にかなっていれば、界面活性剤を使用してもよい。サンプリング時間は、剤形の放出特性を明確にし、バッチごとの再現性を確保するように選択される。溶解試験のための適切な機器は、米国薬局方(USP)23の装置1(回転バスケット)、装置2(回転パドル)、装置3(往復シリンダー*)、装置4(素通り式セル*)、装置5(往復ディスク*)(*改良された試験条件を用いる)の中で特定されている。バスケットでは、50rpm、100rpm及び150rpmの回転速度が用いられ、パドルでは、50rpm、75rpm及び100rpmの回転速度が用いられる。温度は、37℃±0.5℃である。溶解容量は、500 mlから1000 mlである。溶解媒体は、様々なpH値の水性媒体である。サンプリングスケジュールは、80%のトラネキサム酸が放出されるか又は漸近線に達するかのいずれかに至るまで、適正なサンプリングが実施されるようなスケジュールである。
【0015】
トラネキサム酸持続放出錠剤は、錠剤摂取後最初の約1時間から2時間以内に1用量のトラネキサム酸、通常は1錠〜2錠、1〜2グラム、を提供するように作製しうる。したがって、トラネキサム酸放出は、長期間、例えば60分から120分にわたって制御された速度で起こる。この期間にわたる、トラネキサム酸放出の制御された速度は、胃中において低減濃度のトラネキサム酸を提供する一方、胃腸管全体にわたってトラネキサム酸の吸収が起こるように設計される。トラネキサム酸の吸収は、トラネキサム酸が剤形から放出され、胃腸管を内張りする膜に接している胃腸液体に溶解するとすぐに始まる。剤形からの、制御され、持続されたトラネキサム酸の放出及び胃腸粘膜による薬物の吸収は、胃腸液体中で低濃度の薬物を維持するのに役立つ。低下した濃度は、胃腸における有害な副作用のより低い強度、頻度及び/又は重篤性をもたらす。胃及び上部小腸中における剤形からのトラネキサム酸の持続放出、任意の溶解トラネキサム酸を含む胃液の胃からの自然な排出、及び胃腸管(すなわち、長い放出時間の持続放出剤形を使用する場合、胃のみ又は小腸下部ではなく胃及び小腸の両方)の大セグメントからのトラネキサム酸の吸収は、該剤形と近位の又は遠位の胃腸管領域において低下したレベルの溶解トラネキサム酸をもたらす。胃腸管に沿ったトラネキサム酸の低下した濃度は、経口トラネキサム酸治療に関連した胃腸への副作用を低減する。
【0016】
本明細書において使用する遅延放出製剤という用語は、任意の製剤技法を示し、ここで剤形からの活性物質(トラネキサム酸)の放出は改変され、従来の即時放出製剤からの放出よりも遅延した時間で放出が起こる。遅延放出製剤の1つの例は、腸溶性コーティング製剤である。該剤形上の腸溶性コーティングは、該腸溶性コーティング剤形からのトラネキサム酸の溶解及びそれに続く吸収が起こる胃腸管領域の制御を意図する。腸溶性コーティングは、胃中で剤形含有物の溶解を実質的に妨げるように調製することができる。これらのコーティングは、原料を腸溶性コーティング中に取り込むことによって機能し、ここで腸溶性コーティングは、胃の酸性環境中において実質的に損なわれることはない。この実質的に無傷の腸溶性コーティングは、胃内容物へのトラネキサム酸の溶解を最小化し又は抑制する。腸溶性コーティングは、胃腸液のpHが増加した場合、前記剤形の内容物を放出するように作製される。このpHの増加は通常、該剤形が胃を出て小腸に入る時に起こる。つまり、該コーティングは、胃の比較的高い酸性のpH(pH≦2)においては損なわれず、腸の比較的低い酸性pH(pH≧2、小腸の上方領域では約5及び小腸の下方領域では約7〜約8.5)において崩壊し、溶解し、又は除去される。製剤は、通常小腸の下方領域で生じる約5.5〜約6.5のpH値又はそれより高いpH値においてトラネキサム酸を放出することを意図した腸溶性コーティングを用いて調製することが可能である。pH5.5〜約6.5又はそれより高いpHにおいて溶解することを意図したこれらの遅延放出製剤では、トラネキサム酸の放出が、実質的には十二指腸(小腸の上部)に到達した時にのみ起こり、したがって胃中においては実質的にトラネキサム酸は放出されず、このため副作用を最小化し又は除去する。
【0017】
遅延放出錠剤として作製されたトラネキサム酸は、腸溶性コーティングを含有してもよい。該腸溶性コーティングは、中性もしくは弱酸性もしくは弱アルカリ性のpHにおいて崩壊し、溶解しもしくは浸食され、これによって胃を出る時、すなわち胃を空にして小腸に入る時にトラネキサム酸の溶解を可能にする。小腸におけるトラネキサム酸の放出によって、大用量のトラネキサム酸が急速に胃中に放出されることに関連した胃腸における副作用が低減される。遅延放出用トラネキサム酸の腸溶性コーティング製剤で治療される患者は、トラネキサム酸治療中制酸剤を摂取しないように注意される。なぜなら、制酸剤は胃のpHを変化させ、それによって錠剤が溶解又は崩壊する部位を変化させるからである。他の種類の遅延放出製剤を利用することは可能であり、前記の例は限定的ではない。
【0018】
改変放出形態のもう1つの例である遅延放出形態は、トラネキサム酸を、経口投与の直後以外の時に利用できるようにする。持続放出製剤と同様に、遅延放出製剤は、前述した利用可能な基準(米国薬局方(USP)23 NF18、§§711,724)に従ったin vitro溶解試験及びin vivo生物学的同等性文書によって実証されてよい。該指針が応用/公定放出要件に加えて溶解試験に言及する場合、該溶解試験は、0.1N HCl中で2時間(酸性段階)行い、その後pH範囲4.5から7.5の間のUSPバッファ媒体中(バッファ段階)、応用/公定試験装置を用いて、標準(応用/公定)試験条件下、攪拌速度を増加させて試験する必要がある。回転バスケット法(装置1)では、50rpm、100rpm及び150rpmの回転速度を用いてよく、回転パドル法(装置2)では、50rpm、75rpm及び100rpmの回転速度を用いてよい。試験のバッファ段階中は、多点溶解プロファイルを得る必要がある。適切なサンプリングを行う必要があり、例えば薬物の80%が放出されるか又は漸近線に達するかのいずれかまで、(剤形をバッファ中に入れた時点から後の)15分、30分、45分、60分、120分にサンプリングされる。
【0019】
遅延放出製剤を調製する方法は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16版, Mack Publishing Company 1980, Osol編、及び持続放出製剤に関して引用された参考文献に見られ、その各々の関連部分は本明細書に参照によりそのまま全て明確に組み入れられる。
【0020】
本明細書において使用する、これらの製剤を用いた副作用の軽減は、症状の発生、重篤性又は持続時間の減少などの1つ又はそれ以上の症状における任意の軽減を示し、症状の非存在又は除去に限定されるものではない。従って治療は、これに限定するものではないが、吐き気、膨満感、痙攣、嘔吐、下痢及び便秘を含む有害な胃腸の症状の発生、持続時間、強度、頻度等の任意の減少を含む。該製剤はトラネキサム酸治療中のいつでも症状を低減することができるが、最小化された副作用については、投与の直後又は間もなく、すなわち投与後最初の2〜3時間内、特に留意される。本明細書において使用する、胃腸の有害作用及び副作用は、不快だが我慢できる感覚から重篤な胃腸の症状に及ぶ非治療作用(すなわち、トラネキサム酸による任意の可能な有益効果に関連しない作用)を示すために交換可能に使用される。本明細書において使用される、経口製剤、経口摂取製剤、及び経口投与製剤という用語は、交換可能に用いられ、口から摂取される剤形を含み、これには、限定されるものではないが、錠剤、丸薬、液体、ジェルキャップ、糖衣錠、カプセル、粉末、顆粒、ペレット等が含まれる。
【0021】
遅延放出製剤は、腸溶性コーティングされたトラネキサム酸錠剤又は腸溶性コーティングされた顆粒であってもよい。これらの錠剤は、市販の又は特別に作製された腸溶性フィルムコート、例えば米国薬局方(USP)及び米国食品医薬品局(FDA)の腸溶性コートされた錠剤についての要件を満たすワックス、ポリマー、及び/又はpH-感受性マトリクスで圧縮錠剤をコーティングすることによって調製されうる。該腸溶性コーティングは、胃と十二指腸との間のpHの変化の結果としてトラネキサム酸錠の崩壊及びトラネキサム酸の溶解を可能とする。胃中でのトラネキサム酸の急速な放出を抑制し、腸中での溶解及び放出を促進する錠剤賦形剤を用いてもよい。これらは、限定されるものではないが、ビニルポリマー及び共重合体のフタル酸誘導体などのフタル酸誘導体、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルセルロース、酢酸セルロース、酢酸ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、酢酸アルキルセルロース及びそれらの部分エステル、並びに低アルキルアクリル酸及び低アルキルアクリレートのポリマー及び共重合体、及びその部分エステルを含む。錠剤、カプセル及び顆粒の腸溶性コーティング用に意図された市販製品は、Degussa(Parsippany, NJ)及びColorcon(West Point, PA)から入手可能である。1つの実施形態においては、該ポリマーはメタクリル酸共重合体である。これらは、アクリル酸エチル又はメタクリル酸メチルなどの、中性のアクリレート又はメタクリレートエステルと、メタクリル酸との共重合体である。例としては、Rhom PharmaからEudragit(登録商標)L 100-55(粉末)又はL30D-55(30%分散水)として市販されている、メタクリル酸共重合体のC型米国薬局方(USP)(46.0%と50.6%の間のメタクリル酸単位を有するメタクリル酸及びアクリル酸エチルの共重合体)が挙げられる。別の実施形態においては、該ポリマーは、フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルピロリドンフタレートなどである。1種又はそれ以上のpH依存性賦形剤は、約1重量%から約20重量%、約5重量%から約12重量%の範囲の量、又は約10重量%の量で存在している。
【0022】
pH依存性賦形剤の量は、遅延放出製剤を作製するために十分な量であり、該遅延放出製剤からのトラネキサム酸の放出速度は制御され、約5より下のpHでは溶解速度は著しく遅くなる。メタクリル酸共重合体のC型米国薬局方(USP)(Eudragit(登録商標)L 100-55)について、pH依存性ポリマーコーティングの量は、約2%から約15重量%の間の範囲内(乾燥基準)で錠剤に使用されてもよい。別の実施形態では、該範囲は約3%から約6重量%の間(乾燥基準)である。該pH依存性ポリマーは、約1%から約20%のメタクリル酸カルボキシル基を中和してもよい。1つの実施形態においては、約3%から約6%の結合剤メタクリル酸カルボキシル基が中和される。1種又はそれ以上のpH非依存性賦形剤は、約1重量%から約10重量%、約1重量%から約3重量%の範囲の量、又は約2重量%の量で存在してもよい。ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、中性ポリ(メタ)アクリレートエステルなどのフィルム形成剤又は粘度増強剤もまた存在してよい。
【0023】
賦形剤は、トラネキサム酸及びpH依存性結合剤と均一混合物を形成するように混合されてよい。賦形剤は、pH非依存性結合剤又はフィルム形成剤、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、中性ポリ(メタ)アクリレートエステル(例えば、Eudragit(登録商標)(Rohm Pharma)として販売されているメタクリル酸メチル/アクリル酸エチル共重合体)、澱粉、ゼラチン、糖、例えばグルコース、スクロース、及びマンニトール、ケイ酸、カルボキシメチルセルロースなど、希釈剤、例えばラクトース、マンニトール、乾燥澱粉、微結晶性セルロースなど、界面活性剤、例えばポリオキシエチレンソルビタンエステル、ソルビタンエーテルなど、着色剤、着香料、滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及び他の錠剤化助剤を含む。これらの賦形剤は、トラネキサム酸と組み合わせて、遅延放出錠剤を形成する。
【0024】
トラネキサム酸錠剤の1つの実施形態においては、トラネキサム酸は、約50重量%から約95重量%又はそれ以上の重量の範囲内にある。他の実施形態においては、トラネキサム酸は、約70重量%から約90重量%、又は約70重量%から約80重量%の範囲内にある。pH依存性結合剤は、約5重量%から約40重量%、約5重量%から約25重量%、又は約5重量%から約15重量%の範囲内でよい。残りの重量は、pH非依存性結合剤、充填剤、又は他の賦形剤から構成されてよい。
【0025】
遅延放出製剤を調製するために、トラネキサム酸の放出を制御する剤を、錠剤マトリクスに取り込むかもしくは該剤で錠剤の表面をコーティングする、又はその両方を行うことができる。結合剤として錠剤マトリクスに添加されるpH依存性賦形剤を用いて調製される錠剤製剤は、pH依存性結合剤と構成粉末との混合物を粒状化することによって作製される。或いは、該pH依存性結合剤を粉末として添加し、該粉末混合物に溶媒を添加することによって湿式造粒してもよい。該粉末混合物は、錠剤を構成する粉末成分の一部分を混合することによって形成される。これらの粉末は、乾式混合によって密に混合される。該乾式混合された混合物は、結合剤の溶液と該粉末混合物との湿式混合によって粒状化される。この湿式混合の時間は、該製剤の溶解速度に影響を与えるように制御されてよい。例えば、総粉末混合時間、すなわち、該粉末が粒状化される時間は、約1分から約10分、又は約2分から約5分の範囲でありえる。粒状化の後、粒子は造粒機から除去され、乾燥させるため流動床乾燥機、真空乾燥機、マイクロ波乾燥機、又はトレイ乾燥機に入れられる。乾燥条件は、許容可能なレベルまで、通常は水である望ましくない造粒溶媒を除去し又は造粒溶媒の量を低減するために十分な条件である。流動床乾燥機又はトレイ乾燥機中の乾燥条件は、通常約60℃である。該粒状物は、乾燥され、選別され、崩壊剤、流動剤もしくは圧縮助剤などの他の賦形剤、及び滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸もしくはステアリン酸マグネシウムと混合され、錠剤に圧縮される。
【0026】
錠剤マトリクス中に遅延放出剤を含有する錠剤は、最適なフィルム形成剤でコーティングされてよい。この使用されるフィルムは、同一性を補助し、不快な味を隠し、望ましい色及び外観とすることを可能にし、より一層の上品さを提供し、飲み込みを補助し、腸溶性コーティング等を補助する。フィルム形成剤の量は、約2%錠剤重量から約4%錠剤重量の範囲内でよい。適切なフィルム形成剤は、当業者に知られており、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースエステル、セルロースエーテル、1種又はそれ以上のアクリルポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カチオン性メタクリル酸共重合体(ジエチルアミノエチル)、メタクリル酸塩/メチル-ブチル-メタクリル酸共重合体、例えばEudragit E(登録商標)(Rohm Pharma)などを含む。該フィルム形成剤は、適宜、着色剤、可塑剤、充填剤など、これらには、これに限定するものではないが、プロピレングリコール、ソルビタンモノオレエート、ソルビン酸、二酸化チタン、及び1種又はそれ以上の製薬上許容可能な色素を含有してもよい。
【0027】
1つの実施形態においては、トラネキサム酸錠剤は、腸溶性フィルムコートによってコーティングされる。トラネキサム酸錠剤は、乾式混合、回転圧密化、又はトラネキサム酸及び錠剤賦形剤からなる粉末の湿式造粒によって作製される。これらの粉末は、圧縮されて即時放出錠剤となる。この即時放出錠剤を腸溶性コーティングでコーティングすると、このトラネキサム酸錠剤が遅延放出錠剤となる。
【0028】
錠剤、ペレット、顆粒、カプセル又は他の経口剤形を含むトラネキサム酸の持続放出製剤は、トラネキサム酸を制御された方法で放出するように調製される。
【0029】
持続放出トラネキサム酸錠剤は、トラネキサム酸錠剤組成物にゲル形成性又は水和性ポリマーを添加することによって調製される。適切なゲル形成性又は水和性ポリマーは、以下のものに限定するものではないが、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を含む。これは、圧縮成型錠剤を提供し、この錠剤はフィルムコーティングされていてもよいし、されていなくてもよい。該錠剤は、錠剤マトリクスを通り抜けるトラネキサム酸の拡散によって、又は錠剤マトリクスの侵食によって、又は錠剤マトリクスからの拡散及び錠剤マトリクスの浸食の組合せによってトラネキサム酸を放出する。或いは、該錠剤マトリクスを形成するために水膨潤性ポリマーを用いてよい。水膨潤性ポリマーを用いて形成された錠剤は、錠剤マトリクスを通り抜けるトラネキサム酸の拡散によって、又は錠剤マトリクスの侵食によって、又は錠剤マトリクスからの拡散及び錠剤マトリクスの浸食の組合せによってトラネキサム酸を放出する。1種又はそれ以上の水溶性親水性ポリマーもまた使用しうる。これらは、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、現在はヒプロメロース(例えば、Methocel(登録商標)、Dow Chemical Company)と呼ばれているヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、メタクリル酸共重合体、無水マレイン酸/メチルビニルエーテル共重合体、それらの誘導体及びそれらの混合物を含む。様々な実施形態においては、該ポリマーはヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースである。該ポリマーは、約50 cpsから約200 cpsの範囲の粘度を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースであってよい。該ポリマーは、Methocel(登録商標)K 100 LV(Dow Chemical Company)として市販の、粘度100 cpsのヒドロキシプロピルメチルセルロースであってもよい。組成物中のポリマーの量は、該組成物の約5重量%から約50重量%の範囲内でよい。様々な実施形態において、該ポリマーは、該組成物の約10重量%から約35重量%、又は該組成物の約10重量%から約30重量%の範囲内である。
【0030】
錠剤マトリクスは、トラネキサム酸の製剤及び/又はトラネキサム酸の持続放出速度の補助のため可溶性成分及び不溶性成分を含有してもよい。放出プロセスは、錠剤成分の種類、量及び割合を変更することによって調整されてよく、これによって当業者に知られた望ましい溶解プロファイルがもたらされる。コーティングは、部分的に中和されたpH依存性結合剤であってよい。該pH依存性結合剤は、pH約2の胃中及びpH約5.5の腸中のpH範囲内の水溶性媒体中におけるトラネキサム酸の溶解速度を制御する。1種又はそれ以上のpH依存性結合剤が溶解プロファイルを制御するために使用され、これによって、製剤が胃及び胃腸管を通過するにつれてトラネキサム酸がゆっくりと継続的に放出される。
【0031】
1つの実施形態においては、圧縮された持続放出錠剤は、米国薬局方(USP)の基準を満たし、飲み込み易い大きさ及び形となるように作製される。該錠剤の大きさは、適切な治療を提供するために必要とされるトラネキサム酸の用量、並びに錠剤化及び持続放出のために必要とされる物理的特性を提供するために選択された特定の製剤及び賦形剤の用量に依存する。様々な実施形態において、圧縮された持続放出錠剤は、約500mgから約1gのトラネキサム酸、又は約600mgから約750 mgのトラネキサム酸を含有する。トラネキサム酸の日用量は、毎服用時に1つ又は2つの錠剤を服用することで達成されうる。
【0032】
1つの実施形態においては、トラネキサム酸用量/錠剤は、1錠剤について約500mgから約1000 mgの範囲内であり、顆粒で満たされている1つのサシェについては約500mgから約1500 mgの範囲内である。別の実施形態においては、トラネキサム酸の用量は、3つ又は4つの分割用量で約3g/日から約6g/日の範囲内である。1つの例として、総日用量が3gのトラネキサム酸を、各錠剤が1gのトラネキサム酸を含有する1つの錠剤を3回に分けて投与してもよいし、又は各錠剤が0.775gのトラネキサム酸を含有する1つの錠剤を4回に分けて投与してもよい。別の例として、総日用量が4gのトラネキサム酸を、各錠剤が0.666gのトラネキサム酸を含有する錠剤を毎回2錠で3回に分けて投与してもよいし、又は各錠剤が1gのトラネキサム酸を含有する1つの錠剤を4回に分けて投与してもよい。別の例として、総日用量が5gのトラネキサム酸を、各錠剤が0.833gのトラネキサム酸を含有する1つの錠剤を3回に分けて投与してもよいし、又は各錠剤が0.625gのトラネキサム酸を含有する錠剤を毎服2錠で4回に分けて投与してもよい。別の例として、総日用量が6gのトラネキサム酸を、各錠剤が1gのトラネキサム酸を含有する錠剤を毎服2錠で3回に分けて投与してもよいし、又は各錠剤が0.75gのトラネキサム酸を含有する錠剤を毎服2錠で4回に分けて投与してもよい。嚥下を楽にするために、毎投与時に服用されるトラネキサム酸用量は、複数の錠剤の服用によって送達されてよい。例えば、4gの日用量は、666.67mgの錠剤2錠を3回/日又は500mgの錠剤2錠を4回/日服用することによって送達されてもよい。同様に、3gの日用量は、550mgの錠剤2錠を3回/日又は375mgの錠剤2錠を4回/日服用することによって達成されてもよい。或いは、基準を容易にするために、1錠につき600mg、650mg又は700mgの用量のトラネキサム酸を用いてよい。或いは、各用量は、便利な単位用量パッケージに存在する所定量のトラネキサム酸を含有する顆粒を服用することによって送達されてよい。この例は限定的ではなく、これらの範囲内の他の用量は当業者に理解されることであろう。
【0033】
或いは、持続放出トラネキサム酸製剤又は遅延放出トラネキサム酸製剤は、ペレット又はサシェに入った顆粒として投与されてよい。持続放出トラネキサム酸ペレット又は持続放出トラネキサム酸顆粒は、該顆粒又はペレットマトリクスからのトラネキサム酸の放出を制御するために賦形剤を用いて調製されてよい。持続放出製剤は、該顆粒又はペレットからのトラネキサム酸の放出を制御するためにコーティングを用いて作製されてよい。遅延放出製剤は、トラネキサム酸の放出を制御するために該顆粒又はペレットのマトリクス中に賦形剤を取り込むことによって、又はコーティング剤として該顆粒又はペレットの表面に賦形剤を取り込むことによって調製されてよい。本明細書に参照によりそのまま全て明確に組み入れられる米国特許6,433,215は、薬物及び結合剤の層を糖球上に構築し、それらを膜でコーティングしてフィルムコーティングを形成する方法を開示している。このようなコーティングは、持続放出製剤又は遅延放出製剤のいずれに使用されてもよく、及び/又は医薬の上品さのために用いてもよい。本明細書に参照によりそのまま全て明確に組み入れられる米国特許5,650,174、5,229,135及び5,242,337は、ペレット又はノンパレイユ剤形を製造する際の変形物を開示している。球状物は、パケット、いわゆるサシェに入れられるが、このサシェは、所定用量の薬物を含む重量で満たされている。本明細書に参照によりそのまま全て明確に組み入れられる米国特許6,066,339に開示されているとおり、多数の粒子が、持続放出コーティング又は遅延放出コーティングでコーティングされていてもよい。コーティングされた多数の粒子は、カプセル又はサシェにパッケージされてもよい。持続放出又は遅延放出のための顆粒又はペレットの製剤は、Multiparticulate Oral Drug Delivery, Ghebre-Sellassie, Ed. in Drugs and the Pharmaceutical Sciences, Vol. 65, Marcel Dekker Inc., NY, 1994及び持続放出製剤及び遅延放出製剤について前に引用された参考文献の関連部分中に記載されており、該関連部分は本明細書に参照により組み入れられる。
【0034】
本発明のトラネキサム酸製剤は、月経過多以外の他の適応症に使用されてもよい。
【0035】
(実施例)
本発明は、関連する下記の実施例を参照してさらに理解されるであろう。
【実施例1】
【0036】
持続放出製剤は、pH依存性結合剤及びpH非依存性結合剤を含む。トラネキサム酸(5333g)は、メタクリル酸共重合体C型(Eudragit(登録商標)L 100-55(Rohm Pharma))(200g)、微結晶性セルロース(Avicel(登録商標))(142g)、及びポリビニルピロリドン粉末(20g)と合一され、Fielder PMA 65混合造粒機中において密に混合される。該混合物は、水酸化ナトリウム(8g)を含む水溶液中で顆粒状化され、メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル共重合体(Eudragit(登録商標)NE 30 D(Rohm Pharma))(300g)の30%水分散液が該湿潤塊に添加される。結果として生じた顆粒は、Aeromatic Strea-5流動床乾燥機で乾燥され、選別された後クロスカルメロースナトリウム(10g)及びステアリン酸マグネシウム(10g)と混合される。該混合物は、Manesty B錠剤プレスで錠剤へと圧縮され、1用量700mgのトラネキサム酸/錠剤が得られる。
【実施例2】
【0037】
持続放出製剤は、Eudragit(登録商標)L 100-55が100gまで減量され、Eudragit(登録商標)NE 30 Dがメタクリル酸メチル/アクリル酸エチル共重合体(Eudragit(登録商標)NE 40 D(Rohm Pharma)200g)の40%水分散液に置き換えられる点を除いては、実施例1に従って調製される。
【実施例3】
【0038】
持続放出製剤は、トラネキサム酸700mg/錠剤を、微結晶性セルロース及びポリビニルピロリドンK25と混合し、水で顆粒状化し、乾燥させ、クロスカルメロースナトリウム及びステアリン酸マグネシウムと混合することによって調製される。該混合物は、錠剤へと圧縮され、腸溶性コーティングでコートされる。
【実施例4】
【0039】
持続放出組成物は、トラネキサム酸(3000g)及び約100gから約300gのMethocel (登録商標)K 100 LV(Dow Chemical Company)とを混合することによって調製される。当業者に知られているとおり、該混合物は、乾式混合され、その後水を用いて適切な造粒が得られるまで顆粒状化される。湿った顆粒は、流動床乾燥機で乾燥され、移されて、適当な大きさまで粉砕される。滑沢剤及び流動剤は、乾燥顆粒と混合され、錠剤へと圧縮されて1つの錠剤につき650mgのトラネキサム酸を含有する最終的な製剤が得られる。
【実施例5】
【0040】
Methocel(登録商標)K 100 LV(Dow Chemical Company)は、混合機に入れられて、トラネキサム酸と乾式混合される。当業者に知られているとおり、該混合物は、水を用いて適切な造粒が得られるまで顆粒状化される。該顆粒はその後乾燥され、移されて、適当な大きさまで粉砕される。
【0041】
タルク及びステアリン酸マグネシウムが選択され、乾燥顆粒と混合される。該顆粒は、ホッパーに入れられて錠剤へと圧縮される。錠剤はその後、水溶性フィルムコーティングでコートされる。
【0042】
下記の製剤においては、650mgのトラネキサム酸錠剤が、顆粒から、所望の量(qs)まで添加された水を用いて圧縮される。
【0043】
製剤1は、50mg/錠剤のMethocel(登録商標)K 100 LV Premium CR Grade (Dow Chemical Company)、50mg/錠剤のラクトース一水和物、25mg/錠剤の米国薬局方(USP)タルク、及び8mg/錠剤のステアリン酸マグネシウムを含有する。
【0044】
製剤2は、75mg/錠剤のMethocel(登録商標)K 100 LV Premium CR Grade (Dow Chemical Company)、50mg/錠剤のラクトース一水和物、25mg/錠剤の米国薬局方(USP)タルク、及び10mg/錠剤のステアリン酸マグネシウムを含有する。
【0045】
製剤3は、100mg/錠剤のMethocel(登録商標)K 100 LV Premium CR Grade (Dow Chemical Company)、50mg/錠剤のラクトース一水和物、30mg/錠剤の米国薬局方(USP)タルク、及び10mg/錠剤のステアリン酸マグネシウムを含有する。
【0046】
本発明の他の変形又は実施形態もまた、上記の説明及び実施例から当業者にとって明白であろう。従って、前述の実施形態は、本発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラネキサム酸と、胃腸管において製剤からのトラネキサム酸の放出を改変する少なくとも1種の剤とを含む製薬上許容可能で経口摂取可能な固体製剤を含む組成物。
【請求項2】
前記剤が、胃及び腸において前記組成物からのトラネキサム酸放出の速度を遅らせる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記剤が、胃においてトラネキサム酸放出を実質的に妨げる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記剤が、pH<5.5においてトラネキサム酸放出を実質的に妨げる、請求項1に記載の組成物
【請求項5】
前記剤が、少なくとも1種のワックス、ポリマー、又は時間放出性マトリクスを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
トラネキサム酸の量が、約375mgから約1gの間の範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
製薬上許容可能な改変放出性経口摂取製剤中にトラネキサム酸を含む組成物。
【請求項8】
遅延放出錠剤中の請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
持続放出錠剤中の請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記製剤が、錠剤、カプセル、顆粒、粉末、ペレット、糖衣錠、トローチ、ノンパレイユ、サシェ及び丸薬の少なくとも1種から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
トラネキサム酸を含む組成物であって、前記組成物からのトラネキサム酸の持続放出を提供するのに十分な量の剤を少なくとも1種有する経口摂取可能な製薬上許容可能な固体製剤中にトラネキサム酸を含む、前記組成物。
【請求項12】
少なくとも1種の剤が、前記組成物からのトラネキサム酸放出の速度を低減する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記速度が、実質的に均一に低減される、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記剤が、少なくとも1種の、ゲル形成ポリマー、水和ポリマー、水溶性ポリマー又は水膨潤性ポリマーから選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
前記ポリマーが、少なくとも1種の、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、メタクリル酸共重合体、無水マレイン酸/メチルビニルエーテル共重合体、それらの誘導体及びそれらの混合物から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリマーの総濃度が、前記組成物の約5重量%から約50重量%の範囲内である、請求項11に記載の組成物。
【請求項17】
前記ポリマーの総濃度が、前記組成物の約10重量%から約35重量%の範囲内である、請求項11に記載の組成物。
【請求項18】
前記ポリマーの総濃度が、前記組成物の約10重量%から約30重量%の範囲内である、請求項11に記載の組成物。
【請求項19】
前記ポリマーが、Methocel(登録商標)K 100 LVである、請求項11に記載の組成物。
【請求項20】
トラネキサム酸を含む組成物であって、pH>約5.5に遭遇するまで該組成物からのトラネキサム酸の放出を遅延させるのに十分な剤を少なくとも1種有する経口摂取可能な製薬上許容可能な固体製剤中にトラネキサム酸を含む、前記組成物。
【請求項21】
前記剤が、少なくとも1種の、ビニルポリマーのフタル酸誘導体、ビニル共重合体のフタル酸誘導体、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルセルロース、酢酸セルロース、酢酸ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、酢酸アルキルセルロース、及びそれらの部分エステル、並びに低アルキルアクリル酸及び低アルキルアクリレートのポリマー及び共重合体、及びそれらの部分エステルである、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
少なくとも1種の前記剤の総濃度が、前記組成物の約1重量%から約20重量%の範囲内である、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
少なくとも1種の前記剤の総濃度が、前記組成物の約5重量%から約12重量%の範囲内である、請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
少なくとも1種の前記剤の総濃度が、前記組成物の約10重量%である、請求項20に記載の組成物。
【請求項25】
治療の間、胃中のトラネキサム酸濃度を低減する方法に使用するためのトラネキサム酸であって、該方法が、治療用量のトラネキサム酸と、胃中でトラネキサム酸の放出を遅らせる少なくとも1種の賦形剤とを含む製薬上許容可能な経口製剤を患者に提供することを含む、前記トラネキサム酸。
【請求項26】
胃腸の治療上有害な副作用をさらに低減する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
吐き気、嘔吐、下痢、便秘、痙攣又は膨満感の少なくとも1つを低減する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
月経過多の患者に用いる、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記製剤が、持続放出又は遅延放出製剤の少なくとも1種である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
治療中実質的にトラネキサム酸を小腸で放出することによって、胃中のトラネキサム酸濃度を低減させる、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1種の前記賦形剤が、胃中でトラネキサム酸の放出を制御する、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1種の前記賦形剤が、胃中でトラネキサム酸の放出を遅らせる、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記治療用量が、約375mgトラネキサム酸/投与から約1gトラネキサム酸/投与の範囲内である、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記用量が、3回/日又は4回/日投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
前記用量が、少なくとも2つの固体錠剤、又は顆粒を含む1つのサシェである、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
医薬の製造におけるトラネキサム酸の使用であって、該医薬が、治療用量のトラネキサム酸と、少なくとも1種の、胃中でトラネキサム酸の放出を遅らせて実質的にトラネキサム酸を小腸で放出する賦形剤とを含み、前記治療における少なくとも1つの胃腸に対する副作用を低減させる、前記使用。
【請求項37】
持続放出、遅延放出及びこれらの組み合わせからなる群から選択される経口製剤中の医薬であり、経口投与の際、実質的にトラネキサム酸が小腸において放出される、請求項36に記載の医薬。

【公開番号】特開2011−93938(P2011−93938A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28472(P2011−28472)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【分割の表示】特願2006−521917(P2006−521917)の分割
【原出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(511039061)フェリング ビー.ブイ. (3)
【Fターム(参考)】