説明

副原料投入孔ジャケット及び転炉操業方法

【課題】副原料投入孔ジャケットのOGフード側端部への地金等の付着や堆積を抑制する。
【解決手段】上吹き酸素を用いて吹錬を行う転炉内溶鋼中に副原料を投入すべく、OGフード2の副原料投入孔2aに取り付けられた副原料投入孔ジャケット11である。副原料投入孔ジャケット11に、炉内へ向けてパージ用ガスを噴射するガス噴射部12を設ける。ガス噴射部12から炉内へ向けてパージ用ガスを噴射しつつ吹錬を行う際に、副原投入孔ジャケット11の供給管1との連結側から副原料投入孔2aを撮像して、副原料投入孔ジャケット11のOGフード側端部11aの内壁に付着する地金及びスラグを監視し、地金及びスラグの付着量に応じてパージ用ガスの噴射量を調整する。
【効果】地金等の付着や堆積を抑制することができるので、生産性の向上が図れるのと共にコストの削減を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転炉での吹錬において、排ガス処理装置のOG(Oxygen Gas)フードに開口された副原料投入孔に対して下り勾配の傾斜状に取り付けられた水冷ジャケット、及びこの水冷ジャケットを使用した転炉操業方法に関するものである。以下、この水冷ジャケットを、副原料投入孔ジャケットという。
【背景技術】
【0002】
転炉操業において、上部ホッパーから切り出されたフラックスや冷却材等の副原料は、供給管1を経て排ガス処理装置のOGフード2に設けられた副原料投入孔2aから転炉3内の溶鋼5に投入される(図5参照)。なお、図5中の6は酸素ランスである。
【0003】
前記供給管1のうち、OGフード2の内壁から3m程度の長さ部分は、転炉内の熱にさらされるために水冷構造となっている。この水冷構造部は、一般に副原料投入孔ジャケット4と呼ばれ、前記供給管1とは別体に形成してフランジ連結されている。
【0004】
転炉での吹錬中は、スロッピングやスピッチングにより炉内から溶融地金やスラグ(以下、地金等7と略す。)が吹き上がり、副原料投入孔ジャケット4のOGフード側端部(以降、先端部という。)内壁の主に上端部4aや下端部4bに付着する場合がある。この地金等の付着が堆積して成長すると、やがて副原料投入孔を閉塞させて転炉の操業を停止せざるを得なくなる。
【0005】
転炉の操業効率を向上させるには上吹き酸素の供給速度を上げる必要があるが、この供給速度の上昇に伴って地金等の吹き上がり量も増加する。従って、副原料投入孔ジャケットの先端部内壁への地金等の付着が見られる場合は、上吹き酸素の供給速度を低下させざるを得なかった。
【0006】
しかしながら、転炉操業時における地金等の付着防止に関しては、ランスや炉口への対策がほとんどで、しかも二次燃焼を利用した技術ばかりで、吹錬中における副原料投入孔ジャケットへの地金等の付着に関しては、特許文献1の他はほとんど報告されていない。
【0007】
特許文献1に記載された発明は、ボイラーチューブによる冷却が不十分な副原料投入孔周辺部に、炉外側より冷却用ガスを吹き付け、付着した地金等を冷却収縮させることにより落下させようとするものである。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された方法は、地金等の付着そのものを減少させるものではないため、地金等の付着力が強くて落下しなかった場合は、冷却効率が悪化して地金等の堆積成長が進行してしまう。しかも、新たにボイラーチューブを改造するにはかなりのコストがかかってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−216432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする問題点は、特許文献1に記載された方法では、副原料投入孔ジャケットの先端部内壁への地金等の付着そのものを減少させることができないという点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の副原料投入孔ジャケットは、
副原料投入孔ジャケットの先端部内壁への地金等の付着や堆積を抑制するために、
上吹き酸素を用いて吹錬を行う転炉内溶鋼中に副原料を投入すべく、OGフードの副原料投入孔に取り付けられた副原料投入孔ジャケットであって、
前記副原料投入孔ジャケットに、炉内へ向けてパージ用ガスを噴射するガス噴射部を設けたこと最も主要な特徴としている。
【0012】
本発明の副原投入孔ジャケットを使用し、ガス噴射部から炉内へ向けてパージ用ガスを噴射しつつ吹錬を行う際に、
前記副原投入孔ジャケットの供給管との連結側から副原料投入孔を撮像して、副原料投入孔ジャケットの先端部内壁に付着する地金等を監視し、地金等の付着量に応じてパージ用ガスの噴射量を調整する。これが本発明の転炉操業方法である。
【0013】
上記本発明によれば、副原料投入孔のガス噴射部から炉内へ向けて噴射するパージ用ガスによって、副原料投入孔ジャケットの先端部内壁に地金等が付着したり、付着した地金等が堆積するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、副原料投入孔ジャケットの先端部内壁への地金等の付着や堆積を抑制することができるので、生産性の向上が図れるのと共にコストの削減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の副原料投入孔ジャケットの第1の例を説明する図で、(a)は縦断面図、(b)は(a)図のA部の拡大詳細図である。
【図2】本発明の副原料投入孔ジャケットの第2の例を説明する図で、(a)は縦断面図、(b)は(a)図のB−B断面図である。
【図3】本発明の副原料投入孔ジャケットの第3の例を説明する図で、(a)は縦断面図、(b)は環状空間体の縦断面斜視図である。
【図4】本発明の転炉操業方法を説明する図である。
【図5】転炉OGフードの副原料投入孔に取り付けられた副原料投入孔ジャケットを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明では、副原料投入孔ジャケットの先端部内壁への地金等の付着や堆積を抑制するという目的を、副原料投入孔ジャケットに、炉内へ向けてパージ用ガスを噴射するガス噴射部を設けることで実現した。
【0017】
以下、本発明を実施するための形態例を図1〜図4を用いて説明する。
図1〜図3は本発明の副原料投入孔ジャケットを説明する図である。
【0018】
11はOGフード2に開口された副原料投入孔2aに対して下り勾配の傾斜状に取り付けられた本発明の副原料投入孔ジャケットであり、転炉内の熱に耐えることができるように水冷構造(図示省略)となっている。
【0019】
本発明では、この副原料投入孔ジャケット11にガス噴射部12を形成或いは取付け、このガス噴射部12から炉内へ向けてパージ用ガスを噴射するようにしている。
【0020】
上記構成の副原料投入孔ジャケット11を使用し、転炉の吹錬中、ガス噴射部12から炉内へ向けてパージ用ガスを噴射することで、副原料投入孔ジャケット11の先端部11aの内壁への地金等の付着を抑制することができる。前記パージ用ガスはAr、N2、CO2などの不活性ガスを使用することが好ましい。
【0021】
このガス噴射部12は、例えば図1〜図3に示すような形態が考えられる。
【0022】
例えば図1に示した形態は、副原料投入孔ジャケット11を長手方向の適宜の位置で2つのパーツ11b,11cに分割し、OGフード側に位置するパーツ11bと、供給管とフランジ連結するパーツ11cを、所定の隙間を存して嵌合させることで、副原料投入孔2aに向けて開口する環状のスリット間隙12aを形成したものである。
【0023】
このような形態の場合、環状のスリット間隙12aから副原料投入孔2aの内周側にパージ用ガスを均一に噴射することができるので、副原料投入孔ジャケット11の先端部11aの内壁の、上端部11aaや下端部11abに地金等が付着するのを効果的に防止することができる。
【0024】
また、図2に示した形態は、副原料投入孔ジャケット11の外周に、パージ用ガスの噴射用配管12bを環状に並べ、そこから炉内に向けてパージ用ガスを噴射するようにしたものである。
【0025】
なお、図2の形態に換えて、副原料投入孔ジャケット11の外周部に環状のスリット形成したパーツを配置したものでも良い。
【0026】
これらの形態の場合、従来の副原料投入孔ジャケットをそのまま利用することができる。
【0027】
さらに、図3に示した形態は、内部に環状空間12caを有し、この環状空間12caに繋がる環状のスリット12cbを内周壁部に形成した環状空間体12cを、副原料投入孔ジャケット11の、前記供給管との連結部に設置したものである。
【0028】
このような形態の場合、図1に示した形態と同様、地金等の付着を効果的に防止することができる。加えて、既設の副原料投入孔ジャケットの改造を必要とせず、また、環状のスリット12cbのスリット幅の変更などを容易に行うことができる。
【0029】
上記構成の本発明の副原料投入孔ジャケット11を使用し、ガス噴射部12から炉内へ向けてパージ用ガスを噴射しつつ吹錬を行う際には、副原料投入孔ジャケット11の先端部11aの内壁の上端部11aaでのガス流速が、1m/sec以上となるよう流量を調整して噴射することが望ましい。
【0030】
その理由は、吹錬時におけるスロッピングやスピッチングに起因する地金等の付着・堆積は、副原料投入孔ジャケット11の先端部内壁の上端部11aaが多く、この堆積は先端部内壁の上端部11aaでのガス流速が1m/sec以上あれば抑制できることを発明者らは観察により知見したからである。
【0031】
また、前記吹錬の際には、例えば図4に示すように、副原投入孔ジャケット11の前記供給管1との連結側にカメラ13を設けて副原料投入孔2aを撮像し、副原料投入孔ジャケット11の先端部11aの内壁に付着する地金等を監視する。
【0032】
そして、副原料投入孔ジャケット11の先端部11aの内壁に地金等が付着した場合は、その付着量に応じてパージ用ガスの噴射量を増加する。一方、副原料投入孔ジャケット11の先端部11aの内壁に地金等が付着しない場合は、パージ用ガスの噴射量を減少する。このような調整を行うことにより、最も効率的に付着を抑制できる流量にパージ用ガスを設定することができる。これが、本発明の転炉操業方法である。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の効果を確認するために行った実施結果について説明する。
炉容量が1チャージ当り250トンの転炉において吹錬を行った。副原料投入孔には内径がφ700mmのものを用いた。そして、スリット幅が15mmの環状のスリットを有する、図3に示した環状空間体を既設の副原料投入孔ジャケットに設置した。
【0034】
前記環状のスリットからは、副原料投入孔ジャケット内壁の先端上端部での流速が2m/secになるようにN2ガスを噴出させると同時に、副原料投入孔内部にカメラを設け、先端の地金を監視しながら30日間の継続操業を行った。
【0035】
その結果、30日間の操業期間内では副原料投入孔ジャケットの先端部への地金付着はまったく起こらず、酸素ガスの供給速度を低下させることなく円滑な操業を行うことができ、生産性が著しく向上した。
【符号の説明】
【0036】
1 供給管
2 OGフード
2a 副原料投入孔
3 転炉
5 副原料
6 溶鋼
11 副原料投入孔ジャケット
11a 先端部
11aa 上端部
11c,11d パーツ
12 ガス噴射部
12a 環状のスリット間隙
12b 噴射用配管
12c 環状空間体
12ca 環状空間
12cb 環状のスリット
13 カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上吹き酸素を用いて吹錬を行う転炉内溶鋼中に副原料を投入すべく、OGフードの副原料投入孔に取り付けられた副原料投入孔ジャケットであって、
前記副原料投入孔ジャケットに、炉内へ向けてパージ用ガスを噴射するガス噴射部を設けたことを特徴とする副原料投入孔ジャケット。
【請求項2】
前記ガス噴射部は、内部の環状空間に繋がる環状のスリットを内周壁部に形成した環状空間体を、副原料投入孔ジャケットの、副原料投入孔ジャケットと連結する副原料の供給管との連結部に設置することにより成したものであることを特徴とする請求項1に記載の副原料投入孔ジャケット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の副原投入孔ジャケットを使用し、ガス噴射部から炉内へ向けてパージ用ガスを噴射しつつ吹錬を行う際に、
前記副原投入孔ジャケットの前記供給管との連結側から副原料投入孔を撮像して、副原料投入孔ジャケットのOGフード側の端部内壁に付着する地金及びスラグを監視し、地金及びスラグの付着量に応じて前記パージ用ガスの噴射量を調整することを特徴とする転炉操業方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−219319(P2012−219319A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85645(P2011−85645)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】