説明

創傷治療のための方法および薬学的組成物

【課題】細胞増殖および/または細胞分化を誘導および/または加速して創傷の治癒プロセスを誘導又は加速するための薬学的組成物の提供
【解決手段】皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための方法であって、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するために、皮膚創傷に治療上有効な量のインシュリンを投与する工程を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞増殖および/または細胞分化を誘導および/または加速して創傷の治癒プロセスを加速するための方法および薬学的組成物に関する。より詳細には、本発明は、細胞増殖および/または細胞分化を誘導および/または加速して創傷の治癒プロセスを加速するために、たとえば、PKC類としても知られるセリン/スレオニンプロテインキナーゼの膜転位によって開始される発現および/または活性化の増強を利用することに関する。このような発現の増強は、本発明の教示に従って、(i)PKC発現構築物による創傷細胞の形質転換、(ii)創傷細胞の内在性PKC遺伝子の上流に隣接して挿入されるシス作用要素による形質転換、(iii)創傷細胞内でのPKCの発現および/または活性化を誘導するためのインシュリンの投与、(iv)発現され分泌されたインシュリンがPKC発現および/または活性化に対する正の調節因子になる場合の、インシュリン発現構築物による創傷細胞の形質転換(v)発現され分泌されたインシュリンがPKC発現および/または活性化に対する正の調節因子になる場合の、創傷細胞の内在性インシュリン遺伝子の上流に隣接して挿入されるシス作用要素による創傷細胞の形質転換、(vi)創傷へのインシュリン分泌細胞の移植、(vii)内在性インシュリンの生産および分泌を誘導するための、トランス作用因子、たとえばPDX1による創傷細胞の形質転換、この場合インシュリンはPKC発現および/または活性化に対する正の調節因子として働く、および(viii)PKCアクチベーターの創傷への投与により実施することが可能である。
【0002】
上述の方法のいずれかによって実現されるような本発明は、植皮の生成によって生体外でも実施することができる。
【背景技術】
【0003】
創傷の治療の主たる目的は、創傷の閉鎖を達成することである。開口した皮膚創傷は、創傷の主たるカテゴリを示し、火傷、ニューロパシー性潰瘍、床ずれ、静脈うっ滞潰瘍、および糖尿病性潰瘍を含んでいる。
【0004】
開口した皮膚創傷は常套的には、以下の6つの主たる要素、すなわち(i)炎症、(ii)線維芽細胞増殖、(iii)血管増殖、(iv)結合組織合成、(v)上皮形成、および(vi)創傷収縮を含むプロセスによって治癒する。創傷の治癒は、上記の要素が個々としてあるいは全体として、適切に機能しない場合に損なわれる。創傷の治癒には、栄養失調、感染、薬物(たとえば、アクチノマイシンおよびステロイド)、加齢および糖尿病を含む多数の因子が影響を及ぼしうる(非特許文献1を参照のこと)。
【0005】
糖尿病に関しては、糖尿病は、インシュリンシグナリングの低下、血漿グルコースの上昇、いくつかの特徴的な組織を伴う慢性の合併症の発症に対する素因によって特徴付けられる。糖尿病の全ての慢性の合併症のなかでも、創傷の治癒低下による足の潰瘍化の研究が最も遅れている。また糖尿病患者における皮膚潰瘍化は驚くほど人手と費用を要する(非特許文献2、3)(29、30)。さらに、足の潰瘍とこれに続く下肢の切断は、糖尿病患者のあいだでの最も一般的な入院要因である(非特許文献3〜6)(30〜33)。糖尿病において、創傷治癒プロセスが低下すると、治癒後の創傷の創傷強度が低下するという特徴が現れる。組織修復の欠陥は、神経障害、脈管疾患および感染を含むいくつかの因子に関連づけられてきた。しかしながら、異常なインシュリンシグナリングに付随する糖尿状態が創傷の治癒を低下させ、皮膚の生理機能を変える他の機構については、いまだ解明されていない。
【0006】
身体の多様な部分における外科手術後の創傷の治癒についても、手術は成功したものの創傷の開口が治癒しないという一般的な問題が存在する。
【0007】
皮膚は重層鱗状の上皮であって、この上皮内で成長と分化を受ける細胞が厳密に区画化されている。生理学的状態において、増殖は基底膜に付着した基底細胞でしか起こらない。分化は基底細胞が基底膜への付着力を失い、DNA合成を止め、一連の形態学的および生化学的変化を受ける、空間的プロセスである。最終の成熟工程は、皮膚の保護バリアを形成する角質層の生成である(非特許文献7、8)(1、2)。基底細胞が分化される際に最初に観察される変化には、基底細胞が基底膜から脱着して移動する能力が随伴する(非特許文献9)(3)。同様の変化は創傷治癒プロセスにおいても随伴し、この場合細胞は創傷領域に移動するとともに、増殖能力も高められる。これらのプロセスは、皮膚層の再構成や上皮層の適切な分化の誘導に対して必須のものである。
【0008】
上皮細胞の成長と分化を調節する機構の分析は、マウスおよびヒトケラチノサイトに対する培養系の開発(非特許文献8、10)(2、4)によって非常に容易になった。in vitroにおいて、ケラチノサイトは高速で増殖する基底増殖細胞として維持することができる。さらに、in vivoの表皮内での成熟パターンに従って、in vitroにおいて分化を誘導することもできる。初期の事象には、半接着斑成分の損失(非特許文献9、11)(3、5)と、α6β4インテグリンの選択的損失と、マトリックスタンパク質への細胞付着が含まれている。このことは、インテグリン発現における変化が、ケラチノサイト分化における初期事象であることを示唆している。初期に起こる半接着斑接触の損失はケラチノサイトの超基底移動(suprabasal migration)を引き起こすとともに、培養されたケラチノサイトおよび皮膚におけるケラチン1(K1)の誘導に連絡される(非特許文献7、9、12)(1、3、6)。さらに、顆粒層表現型への分化には、β1およびβ4インテグリン発現の負の調節、すべてのマトリックスタンパク質への付着能力の損失が伴い、続いて角質エンベロープ形成および細胞死が起こる。分化中の細胞は、最終的に培養皿から成熟した鱗片として脱離する(非特許文献8、13)(2、7)。in vitroにおけるこの分化プログラムは、in vivoでの表皮の成熟パターンに密接に従っている。
【0009】
ケラチノサイト生物学における最近の研究の焦点は、皮膚の増殖と分化を調節するプロテインキナーゼC経路の寄与に当てられている。セリン−スレオニンキナーゼのなかのプロテインキナーゼC(PKC)ファミリーは、多様な生物学的現象における重要な役割を果たしている(非特許文献14、15)(8、9)。PKCファミリーは、3つの明確なカテゴリに属する少なくとも12の別個のアイソフォームから構成される。3つのカテゴリとは、(i)Ca2+、ホルボールエステル、およびホスホリパーゼCによって細胞内で遊離されたジアシルグリセロールによって活性化される従来のアイソフォーム(α、β1、β2、γ)、(ii)ホルボールエステルおよびジアシルグリセロールによっては活性化されるが、Ca2+によっては活性化されない新規なアイソフォーム(δ、ε、η、θ)、および(iii)Ca2+、ホルボールエステルまたはジアシルグリセロールによって活性化されないファミリーの非定型(ζ、λ、τ)メンバーである。
【0010】
活性化によって、全てではないがほとんどのアイソフォームが細胞質から原形質膜へ転位されると考えられている。アイソフォームの種類と分布のパターンは、組織ごとに異なり、表現型の関数として変化する場合もある。多数の研究がPKCの構造と機能の特徴を明らかにしてきた。これはPKCがホルモン作用の多様な細胞終点において重要であるからである。5つのPKCアイソフォーム、α、δ、ε、ηおよびζがin vivo表皮中および培養中で同定された。最近の研究では、PKC情報伝達経路は、分化応答の主たる細胞内メディエーターであることが示された(非特許文献16、17)(10、11)。さらに、PKCの薬理学的アクチベーターは、in vivoおよびin vitroにおけるケラチノサイト分化の強力なインデューサーであり(非特許文献10、18)(4、12)、PKC阻害剤は分化マーカーの発現を阻害する(非特許文献16)(10)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Hunt & Goodson,Current Surgical Diagnosis & Treatment (Way ; Appleton & Lange) : 86-98, 1988.
【非特許文献2】Knighton, D. R. and Fiegel, V. D. Growth factors and comprehensive surgical care of diabetic wounds. Curr. Opin. Gen. Surg., : 32-9 : 32-39,1993.
【非特許文献3】Shaw, J. E. and Boulton, A. J. The pathogenesis of diabetic foot problems: an overview. Diabetes, 46Suppl2 : S58-61 : S58-S611997.
【非特許文献4】Coghlan, M. P., Pillay, T. S., Tavare, J. M., and Siddle, K. Site-specific anti-phosphopeptide antibodies: use in assessing insulin receptor serine/threonine phosphorylation state and identification of serine-1327 as a novel site of phorbol ester-induced phosphorylation. Biochem. J., 303 : 893-899,1994.
【非特許文献5】Grunfeld, C. Diabetic foot ulcers: etiology, treatment, and prevention. Adv. Intern. Med., 37 : 103-32 : 103-132,1992.
【非特許文献6】Reiber, G. E., Lipsky, B. A., and Gibbons, G. W. The burden of diabetic foot ulcers. Am. J. Surg., 176 : 5S-1OS, 1998.
【非特許文献7】Hennings, H., Michael, D., Cheng, C., Steinert, P., Holbrook, K., and Yuspa, S. H. Calcium regulation of growth and differentiation of mouse epidermal cells in culture. Cell, 19 : 245-254,1980.
【非特許文献8】Yuspa, S. H., Kilkenny, A. E., Steinert, P. M., and Roop, D. R. Expression of murine epidermal differentiation markers is tightly regulated by restricted extracellular calcium concentrations in vitro. J. Cell Biol., 109 : 1207-1217,1989.
【非特許文献9】Fuchs, E. Epidermal differentiation: the bare essentials. J. Cell Biol., placeStateI ll : 2807-2814,1990.
【非特許文献10】Yuspa, S. H. The pathogenesis of squamous cell cancer: lessons learned from studies of skin carcinogenesis--Thirty-third G. H. A. Clowes Memorial Award Lecture. Cancer Res., 54 : 1178-1189,1994.
【非特許文献11】Hennings, H. and Holbrook, K. A. Calcium regulation of cell-cell contact and differentiation of epidermal cells in culture. An ultrastructural study. Exp. Cell Res., 143 : 127-142,1983.
【非特許文献12】Tennenbaum, T., Li, L., Belanger, A. J., De Luca, L. M., and Yuspa, S. H. Selective changes in laminin adhesion and a6 (34 integrin regulation are associated with the initial steps in keratinocyte maturation. Cell Growth Differ., 7: 615-628,1996.
【非特許文献13】Tennenbaum, T., Belanger, A. J., Quaranta, V., and Yuspa, S. H. Differential regulation of integrins and extracellular matrix binding in epidermal differentiation and squamous tumor progression. J. Invest. Dermatol., 1 : 157-161, 1996.
【非特許文献14】Nishizuka, Y. The molecular heterogeneity of PKC and its implications for cellular regulation. Nature, 334 : 661-665,1988.
【非特許文献15】Nishizuka, Y. The family of protein kinase C for signal transduction. JAMA, 262 : 1826-1833,1989.
【非特許文献16】Denning, M. F., Dlugosz, A. A., Williams, E. K., Szallasi, Z., Blumberg, P. M., and Yuspa, S. H. Specific protein kinase C isozymes mediate the induction of keratinocyte differentiation markers by calcium. Cell Growth Differ., 6 : 149-157,1995.
【非特許文献17】Dlugosz, A. A., Pettit, G. R., and Yuspa, S. H. Involvement of Protein kinase C in Ca-mediated differentiation on cultured primary mouse keratinocytes. J. Invest. Dermatol., 94 : 519-519,1990. (Abstract)
【非特許文献18】Dlugosz, A. A. and Yuspa, S. H. Coordinate changes in gene expression which mark the spinous to granular cell transition in epidermis are regulated by protein kinase C. J. Cell Biol., 120 : 217-225,1993.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明を考案するにあたって、PKCアイソフォームの過剰発現および/または活性化が創傷治癒プロセスを加速するのに役立つのではないかという仮説をたてた。従来の方法によって一次細胞中に外来遺伝子を効率的に導入することが困難であったため、皮膚細胞の増殖および/または分化における個々のPKCアイソフォームの役割を調べることができなかった。短寿命、分化潜在能力、および安定な形質転換体の単離が不可能であることにより、一次皮膚細胞へ外来の遺伝子を効率的に形質導入することができない。
【0013】
創傷の治癒に関連するプロセスを加速するための新しい手法が必要であり、これを実現することが非常に有益であることは広く認識されている。さらに、細胞の増殖および/または分化プロセスおよび創傷の治癒を加速する皮膚細胞に組み換え遺伝子を挿入する効率的な方法が必要であり、これを実現することが非常に有益であることも広く認識されている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の1つの態様によれば、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための方法であって、皮膚創傷に治療上有効な量のPKC生産を増強および/またはPKC活性化を増強するための薬剤を投与する工程を含む方法が提供される。
【0015】
本発明の別の態様によれば、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための薬学的組成物であって、有効成分として治療上有効な量のPKC生産を増強および/またはPKC活性化を増強するための薬剤と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物が提供される。
【0016】
本発明のさらに別の態様によれば、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための方法であって、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するために、皮膚創傷に治療上有効な量のインシュリンを投与する工程を含む方法が提供される。
【0017】
本発明のさらに別の態様によれば、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための薬学的組成物であって、有効成分として治療上有効な量のインシュリンと、該薬学的組成物を局所投与するように設計された薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物が提供される。
【0018】
本発明のさらに別の態様によれば、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための方法であって、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するために、皮膚創傷中に治療上有効な量のインシュリン分泌細胞を移植する工程を含む方法が提供される。
【0019】
本発明のさらに別の態様によれば、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための薬学的組成物であって、有効成分としてインシュリン分泌細胞と、該薬学的組成物を局所投与するように設計された薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物が提供される。
【0020】
本発明のさらに別の態様によれば、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための方法であって、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するために、皮膚創傷の細胞を形質転換して、インシュリンを生産および分泌させる工程を含む方法が提供される。
【0021】
本発明のさらに別の態様によれば、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための薬学的組成物であって、有効成分として皮膚創傷の細胞を形質転換してインシュリンを生産および分泌させるように設計された核酸構築物と、該薬学的組成物を局所投与するように設計された薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物が提供される。
【0022】
本発明のさらに別の態様によれば、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための方法であって、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するために、皮膚創傷の細胞を形質転換して、プロテインキナーゼCを生産させる工程を含む方法が提供される。
【0023】
本発明のさらに別の態様によれば、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための薬学的組成物であって、有効成分として皮膚創傷の細胞を形質転換してプロテインキナーゼCを生産させるように設計された核酸構築物と、該薬学的組成物を局所投与するように設計された薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物が提供される。
【0024】
本発明のさらに別の態様によれば、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための方法であって、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するために、皮膚創傷に治療上有効な量のPKCアクチベーターを投与する工程を含む方法が提供される。
【0025】
本発明のさらに別の態様によれば、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための薬学的組成物であって、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するために、有効成分として治療上有効な量のPKCアクチベーターと、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物が提供される。
【0026】
後述する本発明の好ましい実施形態の中のさらなる特徴によれば、創傷は、潰瘍、火傷、裂創および外科切開創からなる群より選択される。
【0027】
後述する本発明の好ましい実施形態の中のさらなる特徴によれば、潰瘍は糖尿病潰瘍である。
【0028】
後述する本発明の好ましい実施形態の中のさらなる特徴によれば、インシュリンは組換え体である。
【0029】
後述する本発明の好ましい実施形態の中のさらなる特徴によれば、インシュリンは天然起源のものである。
【0030】
後述する本発明の好ましい実施形態の中のさらなる特徴によれば、薬学的組成物は、水性溶液、ゲル剤、クリーム、パスタ剤、ローション剤、噴霧剤、懸濁剤、粉剤、分散剤、軟膏剤(salve)および軟膏剤(ointment)からなる群から選択される。
【0031】
後述する本発明の好ましい実施形態の中のさらなる特徴によれば、薬学的組成物は固体支持体を含んでいる。
【0032】
後述する本発明の好ましい実施形態の中のさらなる特徴によれば、細胞はインシュリンを生産し分泌するように形質転換される。
【0033】
後述する本発明の好ましい実施形態の中のさらなる特徴によれば、細胞は組換えPDX1遺伝子によって形質転換されることにより、細胞は天然のインシュリンを生産し分泌する。後述する本発明の好ましい実施形態の中のさらなる特徴によれば、細胞は、細胞の内在性インシュリン遺伝子の上流に組み込まれたシス作用要素配列によって形質転換されることにより、細胞は天然のインシュリンを生産し分泌する。
【0034】
後述する本発明の好ましい実施形態の中のさらなる特徴によれば、インシュリン分泌細胞は分泌顆粒を形成することができる。
【0035】
後述する本発明の好ましい実施形態の中のさらなる特徴によれば、インシュリン分泌細胞は内分泌細胞である。
【0036】
後述する本発明の好ましい実施形態の中のさらなる特徴によれば、インシュリン分泌細胞はヒト起源のものである。
【0037】
後述する本発明の好ましい実施形態の中のさらなる特徴によれば、インシュリン分泌細胞は組織適合ヒト化動物起源のものである。
【0038】
後述する本発明の好ましい実施形態の中のさらなる特徴によれば、インシュリン分泌細胞はヒトインシュリンを分泌する。
【0039】
後述する本発明の好ましい実施形態の中のさらなる特徴によれば、インシュリン分泌細胞は自己細胞である。
【0040】
後述する本発明の好ましい実施形態の中のさらなる特徴によれば、細胞は、線維芽細胞、上皮細胞およびケラチノサイトからなる群より選択される。
【0041】
後述する本発明の好ましい実施形態の中のさらなる特徴によれば、細胞はプロテインキナーゼC転写アクチベーターを生産するように形質転換され、これにより細胞は天然のプロテインキナーゼCを生産する。
【0042】
後述する本発明の好ましい実施形態の中のさらなる特徴によれば、細胞は該細胞の内在性プロテインキナーゼCの上流に組み込まれたシス作用要素配列によって形質転換され、これにより細胞は天然のプロテインキナーゼCを生産する。
【0043】
後述する本発明の好ましい実施形態の中のさらなる特徴によれば、細胞は組み換えプロテインキナーゼC遺伝子によって形質転換され、これにより細胞は組み換えプロテインキナーゼCを生産する。
【0044】
後述する本発明の好ましい実施形態の中のさらなる特徴によれば、プロテインキナーゼCは、PKC−β1,PKC−β2,PKC−γ,PKC−θ,PKC−λおよびPKC−τからなる群より選択される。
【0045】
後述する本発明の好ましい実施形態の中のさらなる特徴によれば、プロテインキナーゼCは、PKC−α,PKC−δ,PKC−ε,PKC−ηおよびPKC−ζからなる群より選択される。
【0046】
本発明は皮膚創傷と戦う新しい治療法を提供することにより、現在知られている構成の欠点にうまく対処している。
【図面の簡単な説明】
【0047】
本発明は添付の図面を参照して説明するが、これは例示にすぎない。ここでは図面の詳細を特別に参照するが、示される詳細は例示であって、本発明の好ましい実施形態の図示による検討を目的としているだけであり、本発明の最も有用で容易に理解されうる原理の説明および概念的局面であると信じられるものを提供する過程で示されたものである。この点について、本発明の基礎的理解に必要である以上に詳細に構造上の詳細を示すことは意図しておらず、当業者には、図面を参照して明細書を読むことにより、実務上本発明のどれほどの形態を具現できるかが明らかになる。
【図1】組み換えアデノウィルスベクターを用いたPKCアイソフォームの効果的過剰発現を示している。左パネル:4日齢の一次ケラチノサイトをβ−galアデノウィルスを用いて1時間感染させ、感染から48時間後、細胞を固定しβ−ガラクトシダーゼタンパク質の活性化を青色反応の誘導により、非感染ケラチノサイトと比較して定量した。右パネル:4日齢の一次ケラチノサイトを組み換えアイソフォーム特異的PKCアデノウィルスを用いて1時間感染させた。24時間後、感染タンパク質(Ad)および非感染対照(C)培養物をウェスタンブロット分析用に抽出し、試料を実施例の部で後述するように、アイソフォーム特異的抗PKC抗体を用いて分析した。
【図2】ブリオスタチン1によるPKCの活性化が、過剰発現されたPKCアイソフォームの転位を誘導することを示している。4日齢の一次ケラチノサイトをアイソフォーム特異的組み換えPKCアデノウィルスに1時間感染させた。感染から24時間後、細胞を処理しないか(C)あるいはブリオスタチン1で30分間刺激(B)し、分画した。タンパク質試料をウェスタンブロットに供し、アイソフォーム特異的抗PKC抗体を用いて分析した。
【図3】過剰発現されたPKCアイソフォームがその天然型で活性であることを示している。4日齢の一次ケラチノサイトをアイソフォーム特異的組み換えPKCアデノウィルスに1時間感染させた。感染から18時間後、非感染対照細胞からの細胞溶解物(C)およびPKCアイソフォーム過剰発現細胞からの細胞溶解物(OE)に対してアイソフォーム特異的抗PKC抗体を用いて免疫沈降を行った。免疫沈降物は、後述の実施例の部に記載されるように、PKC活性検定に供した。
【図4】特異的PKCアイソフォームの過剰発現が一次ケラチノサイト内に明確な形態学的変化を誘導していることを示している。一次ケラチノサイトは、未処理のまま(C)若しくは、組み換えPKCα、δ、ηまたはζアデノウィルスに感染させた。24時間後、培養物を明視野顕微鏡で観察し、写真撮影した(×20)。
【図5】感染一次ケラチノサイトにおける過剰発現されたPKCアイソフォームの明確な局在化を示したものである。一次ケラチノサイトをラミニン5でコートしたスライドグラスにプレーティングした。培養物は未処理のままか、若しくは異なる組み換えPKCアデノウィルスに感染させた。感染から24時間後、細胞を固定し、洗浄し、風乾した。培養物をアイソフォーム特異的抗PKC抗体に続きFITC結合二次抗体を用いて免疫蛍光により分析した。細胞を共焦点顕微鏡によって走査し、代表的な視野を写真撮影した。
【図6】PKCアイソフォームがα6β4インテグリン発現を特異的に調節していることを実証するものである。5日齢の一次マウス皮膚ケラチノサイトを処理しないか、若しくはPKCα、PKCδ、PKCηまたはPKCζ組み換えアデノウィルスに感染させた。感染から48時間後、膜細胞画分をSDS−PAGE電気泳動に供し、ニトロセルロース膜に転移させ、抗α6および抗β4抗体でイムノブロットし、ECLで分析した。
【図7】PKCηおよびPKCδの過剰発現がケラチノサイトの増殖を誘導したことを示している。5日齢一次マウス皮膚ケラチノサイトを処理しないか、あるいはPKCδ,PKCα、PKCηまたはPKCζ組み換えアデノウィルスに感染させた。感染から48時間後、実験手順の項に記載のようにして、細胞増殖を1時間の間のH−チミジン取り込みによって分析した。結果は、β−ガラクトシダーゼ感染ケラチノサイトと比較して、cpm/dishとして表されている。数値は3回の独立した実験における3回の測定の平均±標準偏差として表されている。
【図8】PKCアイソフォームの過剰発現がα6β4インテグリンの半接着斑局在に影響を及ぼすことを実証するものである。一次ケラチノサイトをラミニン5でコートしたスライドグラス上にプレーティングし、ケラチノサイト培養物を低Ca2+EMEM中に48時間維持した。この期間の終了後、培養物を未処理(A)若しくはPKCα,PKCδ,PKCηまたはPKCζ組み換えアデノウィルスに感染させた(それぞれB〜E)。感染から24時間後、実験手順の項に記載のように、ケラチノサイトを4%パラホルムアルデヒドで固定し、次に0.2%Triton−X−100で穏やかに抽出し、PBS中で洗浄し風乾した。培養物は、実験手順の項に記載のように、アイソフォーム特異的抗α6抗体に続きFITC結合二次抗体を用いる免疫蛍光分析に供した。
【図9】過剰発現されたPKCδおよびPKCζがin vitroにおけるケラチノサイト脱着を誘導することを示している。(a)では、一次ケラチノサイトを処理しないか(C)、あるいは組み換えPKCα、δ、η、またはζアデノウィルスに感染させた。細胞付着は感染から24時間および48時間後に、細胞を引き上げ、これをマトリックスでコートしたプレートに再度プレーティングすることにより分析した。細胞数は付着した細胞のタンパク質濃度(mg/dish)として表した。(b)では、一次ケラチノサイトを処理しないか(C)、あるいは組み換えPKCα、δ、η、またはζアデノウィルスに感染させた。細胞の脱着は感染から24時間後に、培地中に脱着して浮遊している細胞を回収することにより分析した。細胞数は脱着した細胞のタンパク質濃度(mg/dish)として表した。
【図10】活発に増殖しているケラチノサイトにおいて、PKCηが発現されていることを実証している。一次ケラチノサイトをラミニン5でコートしたスライドグラス上にプレーティングした。プレーティングから48時間後、ケラチノサイトをBrdU溶液とともに1時間インキュベートし、後述の実施例の部に記載したように、抗PKCη(赤)および抗BrdU(緑)抗体を用いて免疫蛍光分析を行った。細胞は共焦点顕微鏡によって走査し、代表的な視野を写真撮影した。
【図11】PKCηはケラチノサイト増殖を誘導するが、PKCη変異体はケラチノサイト増殖を低下させることを示している。一次皮膚ケラチノサイトを組み換えPKCηまたはPKCηアデノウィルスの優性ネガティブ変異体(DNPKCηまたはPKCDNη)に1時間感染させた。感染から48時間後、細胞増殖を、後述の実施例の部に記載するように、1時間のH−チミジン取り込みによって分析した。結果は非感染細胞を対照としてcpm/dishとして表した。
【図12】図12aおよび図12bはPKCηおよびDNPKCηの過剰発現が、PKCの局在化および細胞の形態を特異的に調節していることを実証している。一次皮膚ケラチノサイトを組み換えPKCηまたはPKCηアデノウィルスの優性ネガティブ変異体(PKCDNη)に1時間感染させた。感染から48時間後、ケラチノサイトを固定し、実験手順の項に後述するように、(a)明視野写真撮影(×20)および(b)PKCη特異的抗体に続きFITC結合二次抗体を用いた免疫蛍光分析に供した。非感染細胞を対照とした。
【図13】図13aおよび図13bはPKCη発現の阻害が、増殖中のケラチノサイトにおけるケラチノサイト分化を誘導することを実証している。一次皮膚ケラチノサイトを低Ca2+培地中で増殖させ続けるか、あるいは0.12mMのCa2+中で24時間分化させた。その後、ケラチノサイトを組み換えPKCηまたはPKCηアデノウィルスの優性ネガティブ変異体(PKCDNη)に1時間感染させた。感染から24時間後、ケラチノサイトを低Ca2+培地中に維持するか、0.12mMCa2+を含む分化用培地に移して、さらに24時間維持した。感染から48時間後、ケラチノサイトを抽出し、SDS−PAGEゲルに供した。PKCη(a)およびケラチン1(b)発現をウェスタンブロットにより分析した。
【図14】PKCηの局所的in vivo発現が顆粒組織の形成を増強し、マウス切開創における創傷治癒を加速することを実証している。ヌードマウスの背部に全皮膚7mmの切開を創った。対照のβ−gal、PKCηおよびPKCαアデノウィルス懸濁液の局所投与を、創傷後1日目および4日目に行った。全皮膚創傷を4%パラホルムアルデヒド中に固定し、皮膚切片をH&E染色および明視野顕微鏡により組織学的に分析した。Eは表皮を表し、Dは真皮を表す。
【図15】インシュリンは増殖中のケラチノサイトにおけるPKCδの転位を特異的に誘導するが、IGF1はこれを行わないことを実証している。一次ケラチノサイトは、後述の実施例の部に記載のようにして、単離しプレーティングした。増殖中のケラチノサイトを80%の融合性に達するまで、低Ca2+培地(0.05mM)中に5日間維持した。細胞を10−7Mインシュリン(Ins)または10−8MIGF1(IGF)で15分間刺激した。記載のように細胞を溶解し、刺激された細胞または対照である非刺激細胞(Cont)の膜またはサイトゾル抽出物20μgをSDS−PAGEに供し、転移させた。ブロットを各PKCアイソフォームに対する特異的ポリクローナル抗体で確かめた。
【図16】インシュリンはPKCδ活性を誘導するが、IGF1はPKCδ活性を誘導しないことを示している。PKCδ活性を判定するために、ケラチノサイトの5日間培養物を10−7Mインシュリン(Ins)または10−8MIGF1(IGF)で所定時間(1,l5または30分間)刺激した。PKCδは、特異的抗PKCδ抗体を用いて膜(青棒、mem)およびサイトゾル(紫棒、cyto)画分から免疫沈降した。PKCδ免疫沈降物のPKC活性を実験手順において説明するように、in vitroキナーゼ検定を用いて分析した。各棒は、3回の独立した実験における3回の測定の平均±標準偏差として表されている。数値は、ピコモルATP/dish/分として表されている。
【図17】図17aおよび図17bは、インシュリンとIGF1がケラチノサイト増殖に対してさらなる影響を有することを示している。増殖中のケラチノサイトを低Ca2+培地(0.05mM)中に、80%の融合性に達するまで5日間維持した。(a)ケラチノサイトの5日間培養物を所定濃度のインシュリンまたはIGF1で24時間刺激した。(b)これに平行して、ケラチノサイトを10−7Mインシュリン(Ins)および増加用量のIGF1(IGF)で刺激した。各濃度において、右側の柱(斜線棒)は両ホルモンをともに添加したときに観察された増殖である。左側の棒は10−7Mインシュリン(赤棒)および増加濃度のIGF1(灰色の棒)の個々の効果を実証している。チミジン取り込みは、実験手順の項に記載したようにして測定した。示した結果は6回の実験のうちの代表である。各棒は、3回の測定の平均±標準偏差を、上記対照である刺激を行っていないケラチノサイトに対する百分率で表したものである。
【図18】図18aおよび図18bは、組み換えPKCアデノウィルス構築物の過剰発現を実証している。ケラチノサイト培養物を、野生型PKCδ(WTPKCδ)、野生型PKCα(WTPKCα)、または優性ネガティブPKCδ変異体(DNPKCδ)を含む組み換えアデノウィルス構築物を用いて感染させた。(a)感染に続いて、細胞を24時間培養して採集し、20μgのタンパク質抽出物を特異的抗PKCαまたはPKCδ抗体を用いたウェスタンブロットにより分析した。提示したブロットは、5回の独立した実験の代表的なものである。(b)感染から24時間後、細胞を集菌し、PKCαまたはPKCδ免疫沈降物をin vitroキナーゼ検定により評価した。
【図19】インシュリンまたはIGF1によって誘導される増殖に対する、PKCの過剰発現の影響を示したものである。非感染(薄青棒)またはWTPKCδを過剰発現している細胞(濃青棒)またはDNPKCδ(斜線青棒)を10−7Mインシュリン(Ins)10−8MIGF1(IGF)またはその両方(Ins+IGF)で24時間処理した。実験手順に記載のようにして、チミジン取り込みを測定した。各棒は、別個の培養物に対して行った3回の実験における3回の測定の平均±標準偏差を示している。数値は、対照、すなわち各実験毎に同一の培養物からの非刺激細胞に対する百分率で表されている。
【図20】PKCδ活性の阻害が、インシュリンによって誘導されるケラチノサイト増殖を特異的に排除することを示している。一次ケラチノサイトは、後述の実施例に記載のようにして培養した。非感染細胞またはDNPKCδに感染したケラチノサイトを以下に示す濃度の成長因子で24時間刺激した。10−7Mインシュリン(Ins)、10−8M IGF1(IGF),10ng/mL EGF,10ng/mL PDGF,1ng/mL KGFまたは5ng/mL ECGF。後述の実施例の部に記載のようにして、チミジン取り込みを測定した。各棒は、別個の培養物に対して行った3回の実験における3回の測定の平均±標準偏差を示している。数値は、対照、すなわち各実験毎に同一の培養物からの非刺激細胞に対する百分率で表されている。
【図21】PKCδの過剰発現が、インシュリンによって誘導されるケラチノサイト増殖を特異的に媒介することを示している。一次ケラチノサイトを図1において記載したように培養した。非感染細胞または、過剰発現したWTPKCδで感染させたケラチノサイトを、以下に示す濃度の成長因子で24時間刺激した。10−7Mインシュリン(Ins)、10−8M IGF1(IGF),10ng/mL EGF,10ng/mL PDGF,1ng/mL KGFまたは5ng/mL ECGF。後述の実施例の部に記載のようにして、チミジン取り込みを測定した。各棒は、別個の培養物に対して行った3回の実験における3回の測定の平均±標準偏差を示している。数値は、対照、すなわち各実験毎に同一の培養物からの非刺激細胞に対する百分率で表されている。
【図22】図22aおよび図22bは、in vivoにおける皮膚の創傷治癒プロセスにおけるPKCδおよびPKCζの重要性を確証するものである。新しく開発されたアイソフォーム特異的PKCヌルマウスのin vivoマウスモデルを使用して、PKCα、PKCδおよびPKCζヌルマウスおよびそれらの野生型同腹仔に対して、創傷治癒試験を行った。マウスを麻酔し、マウスの背部に、直径4mmの皮膚貫通孔バイオプシーを創った。一週間のフォローアップ後、マウスの皮膚を除去し、皮弁を破裂チャンバ技術を用いた創傷強度試験に供することにより、皮膚創傷治癒を定量化した。数値は、破裂が起こるまでモニタされたチャンバ内の最大圧力を示す破裂圧として表されている。結果は、12〜20匹の別個の群において得られた判定である。実験は少なくとも3回繰り返した。
【図23】一次皮膚ケラチノサイトにおけるSTAT3とPKCδの間の特異的相互作用を同定したものである。一次ケラチノサイトを処理しないか(上側パネル)またはアイソフォーム特異的組み換えPKCアデノウィルスに1時間感染させた(下側パネル)。細胞を抽出し、アイソフォーム特異的PKC抗体で免疫沈降させた(IP)。この免疫沈降物を抗PKC類または抗STAT3抗体を用いたウェスタンブロット分析に供した。
【図24】STAT3のインシュリンによって誘導される転写活性化に対する、PKCδ活性化の重要性を実証している。一次ケラチノサイトをスライドグラス上にプレーティングし、低Ca++培地(0.05mmol/L)中で、80%融合性に達するまで5日間維持した。細胞は処理しないか(Cont,上側パネル)あるいは5μMロットレリンで7分間前処理し(R,下側パネル)、続いて10−7Mインシュリンで5分間処理した(Ins)。細胞をメタノールにより固定し、洗浄し、風乾した。培養物を、抗ホスホ−Tyr−705−STAT3抗体、続いてFITC結合二次抗体を用いた免疫蛍光によって分析した。細胞は、共焦点顕微鏡によって走査した。
【図25】DN PKCδの過剰発現が、PKCδおよびSTAT3の過剰発現によって誘導されるケラチノサイト増殖を阻害することを実証したものである。一次ケラチノサイトをβ−Gal(対照用),PKCδ、WT STAT3、DN STAT3を含む組み換えアデノウィルス構築物に1時間感染させるか、DN PKCδに続いてSTAT3に感染させる二重感染を行った。感染から24時間後、1時間のH−チミジン取り込みにより、細胞増殖を分析した。結果はDPM/mgタンパク質として表されている。各棒は、同一の培養物からのプレート内での3回の測定の平均を表している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
本発明は、細胞増殖および/または細胞分化を誘導および/または加速して創傷の治癒プロセスを加速するために、たとえば、PKC類としても知られセリン/スレオニンプロテインキナーゼの発現および/または活性化を増強するように設計された方法および薬学的組成物のものである。このような発現の増強は、本発明の教示に従って、(i)PKC発現構築物による創傷細胞の形質転換、(ii)創傷細胞の内在性PKC遺伝子の上流に隣接して挿入されるシス作用要素による形質転換、(iii)創傷細胞内でのPKCの発現および/または活性化を誘導するためのインシュリンの投与、(iv)発現され分泌されたインシュリンがPKC発現および/または活性化に対する正の調節因子になる場合の、インシュリン発現構築物による創傷細胞の形質転換(v)発現され分泌されたインシュリンがPKC発現および/または活性化に対する正の調節因子になる場合の、創傷細胞の内在性インシュリン遺伝子の上流に隣接して挿入されるシス作用要素による創傷細胞の形質転換、(vi)創傷へのインシュリン分泌細胞の移植、(vii)内在性インシュリンの生産および分泌を誘導するための、トランス作用因子、たとえばPDX1による創傷細胞の形質転換、この場合インシュリンはPKC発現および/または活性化に対する正の調節因子として働く、および(viii)PKCアクチベーターの創傷への投与により実施することが可能である。
【0049】
本発明に従う方法および薬学的組成物の原理および作用は、図面および付随の説明を参照してより詳しく理解することができるであろう。
【0050】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用に関して、以下の実施形態の説明に挙げる、あるいは実施例の部において例示する成分の構造および構成の詳細に限定されないことを理解すべきである。本発明は、他の実施形態も可能であるし、様々な様式で実施または実行することができる。また、本明細書中で用いる言い回しや用語は、説明のみを目的としており、限定を意図したものではない。
【0051】
成人の皮膚は以下の2つの層を含んでいる。すなわち、角質化した層状表皮と、支持と栄養を提供するコラーゲンに富む真皮結合組織の厚い下層である。皮膚は外界に対する保護バリアの働きをしている。したがって、皮膚中のあらゆる損傷や破損は、迅速かつ効率的に修復されなければならない。上述の背景の部に記載したように、修復の第一段階は、初期創傷を塞ぐ血餅の形成によって成し遂げられる。その後、炎症細胞、線維芽細胞および毛細管が血餅に侵入して顆粒組織を形成する。次の段階は、創傷が再度上皮で覆われることを伴い、ここで基底ケラチノサイトは半接着斑との接触を失い、ケラチノサイトは顆粒組織の上方に移動して創傷を覆う。ケラチノサイトの移動に続いて、ケラチノサイトは増殖の上昇に入り、これにより損傷のあいだに失われた細胞の交換が可能になる。創傷がケラチノサイトの単一層によって覆われた後、新しい層状表皮が形成され、新しい基底膜が再構築される(20〜23)。このプロセスには、成長因子のEGFファミリー,KGF,PDGFおよびTGFβ1を含むいくつかの成長因子が関与していることが示されてきた(22〜24)。これらの成長因子のなかでも、EGFとKGFの両者は、表皮ケラチノサイトの増殖と移動の調節に深く関与していると考えられている(25,26)。創傷治癒生物学の理解の基礎をなすのは、創傷内の細胞が移動し増殖し創傷空隙内の新しいマトリックス内に着座することを誘引するシグナルを知ることである。
【0052】
以下の開示に列挙する本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語について定義する。
【0053】
「創傷」という用語は、広義には様々な方法(たとえば、長期のベッド休養による床ずれ、障害によって引き起こされた創傷、切創、潰瘍、火傷など)のいずれかによって創出され、様々な特徴を有する皮膚および皮下組織への損傷をいう。創傷は典型的には、創傷の深さによって次の4段階のうちの1つに分類される。(i)グレードI:表皮だけの創傷、(ii)グレードII:真皮まで延びる創傷、(iii)グレードIII:皮下組織内まで延びる創傷、および(iv)グレードIV(または全層創傷):骨が露出した創傷(たとえば、大転子や仙骨などの骨ばったツボ)。
【0054】
「部分厚創傷」という用語は、グレードI〜IIIに包含される創傷のことをいい、部分厚創傷の例としては、火傷、床ずれ、静脈うっ滞潰瘍、および糖尿病性潰瘍が挙げられる。
【0055】
「深創傷」と言う用語は、グレードIIIおよびグレードIVの創傷の両方を含む。
【0056】
創傷に関しての「治癒」という用語は、傷跡の形成による創傷の修復するためのプロセスをいう。
【0057】
「皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速する」という表現は、創傷収縮の顆粒組織の形成の誘導および/または上皮化の誘導(すなわち、上皮内の新しい細胞の生成)をいう。創傷治癒は、従来より創傷面積の減少によって測定されている。
【0058】
本発明は、深創傷および慢性創傷を含むあらゆるタイプの創傷の治療も包含している。
【0059】
「慢性創傷」という用語は、30日以内に治癒しない創傷のことをいう。
【0060】
「細胞を形質転換する」という言い回しは、細胞のゲノムに組み込まれて遺伝学的にその細胞を改変しているか、組み込まれないままである外来の核酸の組み込みによって、細胞の核酸内容を一時的または永久的に変えることをいう。
【0061】
「シス作用要素」という用語は、本明細書中では、DNA結合タンパク質(たとえば、エンハンサー、オペレーターおよびプロモーター)に対する付着部位として働くことにより、同一の染色体上の1つまたはそれ以上の遺伝子の活性に影響を与える遺伝学的領域を記述するために用いられる。
【0062】
「トランス作用因子」という表現は、本明細書中では、シス作用要素に結合して該要素からの遺伝子発現に関してその活性を調節しする因子を記述するために用いられる。したがって、PDX1は、インシュリン遺伝子プロモーターに結合して、その活性を調節するトランス作用因子である。
【0063】
「転写アクチベーター」という用語は、本明細書中では、遺伝子発現を増大させる因子を記述するために用いられる。トランス作用因子は、直接的転写アクチベーターの一例である。
【0064】
「アクチベーター」という用語は、本明細書中では、活性を増強する分子を記述するために用いられる。
【0065】
PKCは、ケラチノサイトの増殖と分化を媒介する主たるシグナリング経路である。PKCアイソフォームα、δ、ε、ηおよびζは皮膚内で発現される(4,10)。本発明を考案するにあたって、PKCの増強された発現および/または活性化が、細胞増殖および/または細胞分化を誘導することにより、創傷の治癒プロセスを加速するという仮説をたてた。本発明を実施に向けて煮詰めていく間に、この理論は、PKCの増強された発現および/または活性化が実際に細胞増殖および細胞分化を誘導し、創傷の治癒プロセスを加速することを示した多数の実験から立証された。ここでさらに詳しく述べるように、PKCの発現および/または活性化を増強して、創傷の治癒プロセスを加速するために様々な明確に区別できるアプローチを行った。実験の知見に基づき、他のアプローチも編み出した。インシュリンがPKCの増強された発現および/または活性化に対するインデューサとして働くという、顕著かつ新規な現象は本発明を実施に向けて煮詰めていく間に発見された。そのようなものとして、インシュリンは創傷への局所投与に対する治療薬として働く。
【0066】
個別のPKCアイソフォームの特性およびそれらの細胞増殖および/または分化に対する特異的効果は、皮膚創傷治癒の生物学にとって非常に重要なことである。PKCアデノウィルス構築物を用いることにより、in vitroおよびin vivoにおける創傷治癒プロセスにおける様々なPKCアイソフォームの特異的役割を同定することができた。すべてのアイソフォームは、ケラチノサイトの成長および分化の異なる局面に特異的に影響を及ぼすことができた。2つのアイソフォーム、PKCδおよびPKCζは、インテグリン調節(下記実施例6を参照)、基底膜への付着(下記実施例9を参照)および半接着斑形成(下記実施例8を参照)を特異的に調節することができた。2つのアイソフォーム、PKCδおよびPKCηは、上皮ケラチノサイトの増殖能力(下記実施例7および11)を調節することが分かった。さらに、PKCηの優性ネガティブアイソフォーム(DNPKCη)は、活発に増殖中のケラチノサイトにおいて特異的に分化を誘導することができた(下記実施例12を参照)。最後に、皮膚内の創傷治癒プロセスに対する個別のPKCアイソフォームの重要性もin vivo系においても確認した。個別のPKCアイソフォームの発現を阻害したPKCヌルマウスを用いることにより、皮膚ケラチノサイトにおける付着および運動の両プロセスに必要とされることが分かっているPKCδおよびPKCζは、動物モデルにおけるin vivo創傷治癒プロセスにおいても重要であることが判明した(実施例19を参照)。PKCが全くない皮膚における全皮膚全層バイオプシーからは、PKCδおよびPKCζのどちらも創傷の適切な治癒に必須であるが、PKCαは必須でないことが示唆された。
【0067】
PKCηは、ユニークな組織分布をもつ。PKCηは上皮組織中で優性に発現される(27,28)。in situハイブリダイゼーション研究ならびに免疫組織化学的研究からは、PKCηが分化中および分化した層において高度に発現していることが実証された(27)。ここで示された結果は、PKCηの細胞生理学による皮膚の増殖と分化の機能的レギュレーターとしての役割を示唆するものである。低Ca2+条件下でケラチノサイトを増殖状態に維持した場合、PKCηは、上述の対照のケラチノサイトより5倍〜7倍高い増殖速度を誘導した。しかしながら、Ca2+濃度を高めることにより細胞の分化を誘導した場合には、対照細胞に比べてより迅速かつ高速で分化が誘導された(実施例12を参照)。このことは、増殖能および分化層の形成が達成されることから、PKCηが創傷治癒および顆粒組織の形成を劇的に誘導することができることの説明になる。興味深いことに、創傷治癒はin vivoで起こり、成体では通常はPKCηを高濃度では発現しない胚組織におけるPKCηの発現は、増殖だけでなく他の組織の組織化におけるPKCηの可能な役割を示唆するものであろう。これには、皮膚や筋肉組織だけでなく、創傷の顆粒組織において効率的に治癒されると考えられる神経組織も含まれる。さらに、優性ネガティブ変異体を利用して、ケラチノサイトの分化を特異的に調節することができ、また活発に増殖している細胞において正常な分化を誘導することができることから、個別に分化を操作したり、創傷治癒に伴う過増殖異常を制御することができる。
【0068】
本明細書中にはPKCηの治癒能力は、in vivoにおいて、ヌードマウスの背部に与えた創傷に対して発揮されることで例示されている。下記実施例14はPKCηを発現する構築物を創傷に投与することにより、局所感染の4日後に顆粒組織が形成されることを示している。
【0069】
全体として、本明細書に示した結果は、PKCアイソフォームの発現と活性化(膜流動化)が、持続性の創傷と戦う有効な道具となることを実証している。
【0070】
したがって、本発明の1つの態様によれば、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速する方法が提供され、該方法は、皮膚創傷に治療上有効な量の、PKC生産増強および/またはPKC活性化増強のための物質を投与することによって達成される。したがって、本発明のこの態様による方法を達成するための薬学的組成物は、有効成分として、皮膚創傷に治療上有効な量の、PKC生産増強および/またはPKC活性化増強のための物質と、薬学的に許容される担体とを含む。
【0071】
皮膚は古典的なインシュリン応答組織とは考えられていない。したがって、皮膚におけるインシュリンの効果は、主にインシュリンの、密接に関連したIGFRを活性化する能力によるものである。ケラチノサイトにおいては、インシュリンとIGF1の両方が両方の受容体を刺激することができ、類似の下流エフェクターを活性化することができることが分かっている(34)。しかしながら、本発明は、どちらの成長因子もケラチノサイト増殖を用量依存的に誘導するが、各ホルモンはその効果を個別のシグナリング経路を介して発揮することを実証した。インシュリンとIGF1によってケラチノサイト増殖が異なる調節を受けるという当初の指摘は、これらのホルモンが各ホルモンの最大増殖誘導濃度で同時に添加された場合に、両者がケラチノサイト増殖に対して追加的効果を有するという知見によって確認された(実施例15を参照)。ケラチノサイト増殖の調節におけるインシュリンとIGF1のシグナリング経路の分岐点を同定するために、ケラチノサイト増殖を調節し、かつインシュリンシグナリングの下流エフェクターとして働くことが知られている要素について調べた。この研究から、ケラチノサイト増殖においてインシュリンシグナリングは、PKCδによって特異的に媒介されることが判明した(実施例17を参照)。PKCδは、様々な細胞型の成長と成熟に特異的に関与するタンパク質のPKCファミリーのなかではユニークなアイソフォームである(35)。しかしながら、PKCδは、EGF、血小板由来成長因子および神経伝達物質を含むいくつかの成長因子の刺激により特異的に調節されていることが示された一方で、その生理学的効果は、アポトーシス、分化および細胞サイクルの遅延と拘束を含む細胞成長の成長因子の阻害に参加することであることが示されている(36〜41)。最近になって、Ca2+の上昇後12〜24時間以内におけるα6β4インテグリン複合体の選択的損失が、培養マウスケラチノサイトにおけるK1の誘導に関連していることが示された(6)。α6β4タンパク質発現の損失は、α6鎖およびβ4鎖のプロセシングの増強を含む転写および転写後の事象の結果として起こる。以前の研究では、PKCの活性化とα6β4インテグリンのプロセシングおよび調節との間で関連があることが確立されていた。これらの結果は、ケラチノサイト脱着を誘導するα6β4発現および半接着斑形成の損失における、PKCδならびにPKCζの働きについての以前の結果に合致するものであった。しかしながら、本発明は、インシュリンによって誘導されるケラチノサイト増殖に対する標的としてのPKCδに対する別の役割を同定した。下記の実施例は、EGF,KGF,PDGF,ECGFおよびIGF1を含むがこれらに限定されない様々な成長因子による刺激では認められないが、インシュリンの刺激のみが、皮膚内で発現される他のPKCアイソフォームのなかで、PKCδのみを転位させ活性化することができることを示した。インシュリン刺激に対するPKCδの重要性は、EGF,KGF,PDGF,ECGFおよびIGF1による細胞分裂誘起刺激が、PKCδの優性ネガティブ変異体によって阻害されなかったことからさらに確認され、インシュリンは、ケラチノサイト増殖の調節におけるこのPKCアイソフォームの第1のアクチベーターであると考えられる(実施例17を参照)。しかしながら、ケラチノサイトをWT PKCδケラチノサイトに感染させた場合、EGFおよびKGFによる細胞分裂誘起刺激が高められた。このことは、PKCδ活性化が、上流のシグナリング経路による他の成長因子の増殖刺激に対しても必須であることを示唆している。さらに、下流要素は、インシュリンによって誘導されるPKCδ活性化およびケラチノサイト増殖における媒介を行っていることが特徴づけられ、このプロセスにおけるSTAT3および転写アクチベーターの関与が確認された。STAT(Signal Transducers and Activators of Transcription)タンパク質は、様々なサイトカインおよび成長因子によって召集される転写因子のファミリーである。7つの公知のSTATファミリーのメンバーの中ではSTAT3はユニークである。他のSTATファミリーのメンバーを破壊せずにSTAT3のみを破壊した場合、胚の致死を早める。すなわち、皮膚中のSTAT3を条件付きで除去した場合、皮膚の再構築が著しく妨害される。活性化により、STATタンパク質はホモまたはヘテロダイマーを形成し、核に転位して目的遺伝子のDNA応答要素に結合して転写を誘導する。ケラチノサイトにおいては、PKCδのみがSTAT3に構造的に結合しており、このことは皮膚内で発現される他のPKCアイソフォーム(PKCα、ζ、ηおよびε)では見られないことが分かった(実施例18を参照)。さらに、インシュリンは、PKCδの特異的活性化を介してSTAT3のリン酸化、活性化および核転位を調節する。PKCδ活性を薬理学的阻害剤であるロットレリンによって阻害するか、あるいは、優性ネガティブPKCδ変異体を過剰発現させることにより、インシュリンによって誘導されるSTAT3活性化および核転位が阻害された。最後に、優性ネガティブPKCδ変異体の過剰発現は、STAT3の過剰発現によって誘導されるケラチノサイト増殖を阻害した(実施例18を参照)。これらの結果は、皮膚ケラチノサイト増殖において、STAT3による転写活性化におけるインシュリンによって誘導されるPKC活性の役割を示唆するものである。STAT3は皮膚の再構築にとって重要であるとともに、様々なサイトカインや増殖因子によって召集される下流エフェクターであるので、これらの結果全体は、PKCδの活性化が、様々な皮膚成長因子によるケラチノサイトの増殖を媒介する第一の下流要素としての役目を果たすことを示唆する。特に、PKCδは糖尿病患者において見られるため、不完全な創傷治癒に対する第一の病因の候補でもありうる。PKCδと創傷治癒との関係は、in vivoにおいても認められている。新しく構築されたPKCδヌルマウスを用いて、PKCδ欠損がマウスの皮膚における創傷治癒を遅延させることが示された(実施例19を参照)。PKCδとインシュリンシグナリングとの関係は、いくつかの他の系においても確立されている。たとえば、筋肉培養物において、PKCδがインシュリンによって誘導されるグルコース輸送を媒介することが最近になって示された(42,43)。同様に、インシュリン受容体を過剰発現している細胞において、インシュリン刺激はPKCδの活性化に関連していることが示された(44〜46)。しかしながら、上記の研究においてインシュリンによって媒介されるPKCδ活性化はインシュリンの代謝効果に結びつけられているが、本願はPKCδをインシュリンによって媒介される細胞増殖に結びつけた初めての報告である。ケラチノサイト増殖と、細胞が下側の基底膜への付着力を失う初期分化段階の制御との両方の調節における、PKCδの同定された2つの役割が示された。このことは、インシュリンによって誘導されるPKCδが、皮膚における増殖と分化の間の生理学的バランスの調節の第一候補であることを示唆するものである。
【0072】
したがって、本発明の教示に従えば、PKC生産の増強および/またはPKC活性化の増強は、創傷細胞をインシュリンに供することによって達成される。このことは、これから記載する複数の代替方法のいずれか1つによって実現される。
【0073】
1つの方法としては、インシュリンの創傷への直接投与が挙げられる。したがって、本発明の別の態様に従えば、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速する方法が提供される。この方法は、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するために、皮膚創傷に治療上有効な量のインシュリンを投与することによって達成される。したがって、本発明の別の態様に従う、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための薬学的組成物は、有効成分として治療上有効な量のインシュリンと、該薬学的組成物の局所投与用に設計された薬学的に許容される担体とを含み、該担体は、限定はされないが、後でさらに詳述するように、ゲル剤、クリーム剤、パスタ剤、ローション剤、噴霧剤、懸濁剤、粉剤、分散剤、軟膏剤(salve)および軟膏剤(ointment)などである。創傷中へインシュリンを持続的に放出するために固体支持体を用いることもできる。インシュリンは、ヒトまたは他の任意の適切な起源の天然または好ましくは組み換え型のものである。
【0074】
本発明の代替実施形態において、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するために、インシュリンを発現し分泌している細胞が創傷中に移植される。このようなインシュリン生産細胞は本来的にインシュリンを生産する細胞であってもよいし、あるいは、インシュリンを生産および分泌するように形質転換された細胞であってもよい。細胞は、たとえばインシュリンの生産および分泌に対するトランス作用因子である組み換えPDX1遺伝子(GeneBank受託番号:AH0055712,AF035260,AF035259)によって形質転換することもできる。あるいは、細胞は、細胞が天然のインシュリンを過剰発現し分泌することができるように、遺伝子ノックインにより、細胞の内在インシュリン遺伝子の上流に組み込まれる強力かつ構造的または誘導可能なプロモーターなどのシス作用要素によって形質転換することもできる。このことは、インシュリン遺伝子の上流領域がすでにクローン化されていることから可能である(受託番号:E00011,NM000207を参照)。あるいは、細胞は組み換えインシュリン遺伝子(例えば受託番号J02547)によって形質転換し、これにより細胞が組み換え型インシュリンを生産し分泌するようにしてもよい。
【0075】
したがって、本発明の本態様に従う、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための薬学的組成物は、有効成分としてインシュリン分泌細胞と、該薬学的組成物の局所投与用に設計された薬学的に許容される担体とを含んでいる。創傷に投与されるインシュリン分泌細胞は、該細胞によって生産されたインシュリンを分泌するために、分泌顆粒を形成できると有益である。インシュリン分泌細胞は、エンドクリン細胞であってもよい。インシュリン分泌細胞は、ヒト起源のものであってもよいし、組織適合ヒト化動物起源のものであってもよい。最も好ましくは、インシュリン分泌細胞は形質転換の有無に関わらず自己起源のものである。インシュリン分泌細胞によって分泌されたインシュリンは、好ましくはヒトインシュリンであるか、あるいはヒトインシュリンのアミノ酸配列を有している。インシュリン分泌細胞は、線維芽細胞、上皮細胞またケラチノサイトである。ただし、これらの細胞が上述のようにインシュリンを生産し分泌するようにするために形質転換された場合についてである。
【0076】
さらに代替の実施形態において、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するために、皮膚創傷の細胞がインシュリンを生産および分泌するように形質転換される。
【0077】
したがって、本発明の本態様に従う、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための薬学的組成物は、有効成分として、皮膚創傷の細胞を形質転換してインシュリンを生産および分泌させるようにするための核酸構築物と、該薬学的組成物の局所投与用に設計された薬学的に許容される担体とを含んでいる。
【0078】
上述の任意の方法、たとえば、インシュリンをコードする構築物による形質転換、遺伝子ノックインにより内在インシュリン遺伝子の下流に挿入されるシス作用要素を含んだ構築物による形質転換、および内在インシュリンの生産および分泌を活性化するためのトランス作用因子をコードする構築物による形質転換を、本発明の本実施形態において用いることができる。
【0079】
皮膚内の個別のPKCアイソフォームの効果についての以前の研究は、短寿命、識別能力および安定な形質転換体を単離することができないなどの理由から、従来の方法によって一次細胞中に外来遺伝子を効率的に導入することが困難であったため、うまく運ばなかった。これらの障害を克服するために、目的の遺伝子を導入するためにウィルスベクターが用いられている。ウィルスベクターはウィルスゲノムを複製欠損ウィルスの形態に改変することによって開発される。最も広く用いられているウィルスベクターは、実験だけでなく治療用としても用いられるレトロウィルスおよびアデノウィルスである(13)。特に、非複製細胞におけるアデノウィルスの高い感染効率、ウィルスの高い力価および変換タンパク質の高発現により、この系はレトロウィルスベクターと比較して一次培養に特に有益となっている。アデノウィルスは宿主ゲノム中に組み込まれることがなく、安定したウィルス力価によって複製を不完全にすることができるため、これらのウィルス構築物は、ヒトならびに動物モデルにおいて悪性をもたらす危険性が最も小さい(14)。現在までに、皮膚において、アデノウィルス構築物はex vivoおよびin vivo手法のいずれでも高い感染効率でうまく用いられてきた(15,16)。I.Saito氏らによって開発された(17)アデノウィルスベクターを本研究では用いた。コスミドカセット(pAxCAwt)は、ほぼ全長のアデノウィルス5ゲノムであるが、E1A、E1BおよびE3領域を欠損しており、これによりウィルスの複製が欠失している。上記カセットは、サイトメガロウィルスの前初期エンハンサー、ニワトリβ−アクチン、およびウサギβ−グロビンポリアデニル化シグナルから成り、挿入されたDNAの発現を強力に誘導する複合CAGプロモーターを含んでいる(13,17)。目的遺伝子をコスミドカセットに挿入し、これをヒト初期腎臓293細胞にアデノウィルスDNA終始タンパク質複合体(TPC)とともに同時トランスフェクションした。ElAおよびElB領域を発現する293細胞において、コスミドカセットとアデノウィルスDNA−TPCとの間での組み換えが起こり、所望の組み換えウィルスが従来の方法の100倍の効率で得られた。このような高効率は、主にプロテイナーゼ処理したDNAの代わりにアデノウィルスDNA−TPCを用いたことに起因する。さらに、より長い相同領域により、相同的組み換えの効率が上昇する。複製コンピテントウィルスの再生は、複数のEcoT221部位の存在によって回避される。この点に関して、ケラチノサイトを個別のPKC組み換えアデノウィルスに感染させたところ、24時間後にPKCアイソフォームの有効な過剰発現が認められた(実施例1を参照)。
【0080】
したがって、本発明に従ってPKC生産の増強および/またはPKC活性化の増強を実現する別の方法は、皮膚創傷細胞内のPKCの過剰発現を誘導することによるものである。このことは、細胞を、相同的組み換えにより細胞の内在プロテインキナーゼCの上流に組み込まれたシス作用要素配列で形質転換し、これにより、細胞に天然のプロテインキナーゼCを生産させることによって達成することができる。さらなる代替として、このことは、細胞を限定はされないがPKC−β1遺伝子(受託番号:X06318,NM002738)、PKC−β2遺伝子(受託番号:X07109)、PKC−γ遺伝子(受託番号:L28035)、PKC−θ遺伝子(受託番号:L07032)、PKC−λ遺伝子(受託番号:D28577)、PKC−τ遺伝子(受託番号:L18964)、PKC−α遺伝子(受託番号:X52479)、PKC−δ遺伝子(受託番号:L07860,L07861)、PKC−ε遺伝子(受託番号:X72974)、PKC−η遺伝子(受託番号:Z15108)およびPKC−ζ遺伝子(受託番号:Z15108,X72973,NM002744)などの組み換えプロテインキナーゼC遺伝子によって形質転換し、これにより細胞に組み換えプロテインキナーゼCを生産させることによって達成できる。
【0081】
したがって、本発明の本態様に従う、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための薬学的組成物は、有効成分として、皮膚創傷の細胞を形質転換してプロテインキナーゼCを生産させるように設計された核酸構築物と、該薬学的組成物の局所投与用に設計された薬学的に許容される担体とを含んでいる。
【0082】
本発明に従ってPKC生産の増強および/またはPKC活性化の増強を実現するさらに方法は、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するために、Ca2+、インシュリンまたはブリオスタチン1などのPKCアクチベーターであって、これらに限定されることはないPKCアクチベーターによるものである。
【0083】
したがって、本発明の本態様に従う、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための薬学的組成物は、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するために、有効成分として治療上有効な量のPKCアクチベーターと、薬学的に許容される担体とを含んでいる。
【0084】
本発明の治療的/薬学的有効成分は、創傷そのものに投与することもできるし、あるいは、適切な担体および/または賦形剤と混合した薬学的組成物として投与することもできる。本発明の内容において使用に適した薬学的組成物としては、意図する治療効果を達成するのに有効な量の有効成分が含まれた組成物が挙げられる。
【0085】
本明細書中で用いる「薬学的組成物」とは、タンパク質、化学物質、核酸または細胞のいずれかである本明細書に記載の1つまたはそれ以上の有効成分若しくはその薬学的に許容される塩またはプロドラッグと、伝統的な薬物、生理学的に適切な担体および賦形剤などの他の化学成分との調製物のことをいう。薬学的組成物の目的は、生物への化合物または細胞の投与を容易にすることである。本発明の薬学的組成物は、たとえば従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作成、すりつぶし、乳化、カプセル化、閉じ込め、または凍結乾燥法などの当該分野において周知の製法によって製造することができる。
【0086】
以後、「生理学的に適切な担体」および「薬学的に許容される担体」は互換的に用いられ、生物に対して有意な刺激を及ぼすことなく、投与された結合物の生物学的活性および性質を阻害することのない担体または希釈剤のことをいう。
【0087】
本明細書において、「賦形剤」という用語は、有効成分の製法および投与をさらに容易にするために薬学的組成物に添加される不活性物質のことをいう。賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖および種類のでんぷん、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0088】
有効成分の調合および投与のための技術は、参照により本願に組み込まれる“Remington´s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.,Easton,PA,最新版)”の中に見いだすことができる。
【0089】
有効成分の投与に対しては様々な経路が可能であり、以前にも記載されているが、本発明の目的のためには、局所経路が好ましく、局所担体によって支援される。局所担体とは一般に局所有効成分投与に適したものであり、これには当該技術において知られる任意のそのような材料が含まれる。局所担体は、組成物を所望の形態、たとえば、液体または非液体担体、ローション剤、クリーム剤、パスタ剤、ゲル剤、粉剤、軟膏剤(ointment)、溶剤、希釈液、ドロップ剤などの形態で提供するように選択され、天然に存在する材料、合成された材料のいずれからなるものであってもよい。選択された担体は活性剤または局所調剤の他の成分に悪影響を与えず、局所調剤の全ての成分に対して安定であることが必要であることは明らかである。本願で用いられる適切な局所担体の例としては、水、アルコールおよび他の非毒性有機溶媒、グリセリン、鉱油、シリコーン、ワセリン、ラノリン、脂肪酸、植物油、パラベン、ワックスなどが含まれる。本願における好ましい調剤は、無色、無臭の軟膏剤、液剤、ローション剤、クリーム剤およびゲル剤である。
【0090】
軟膏剤は、典型的にはペトロラタムまたは他のペトロラタム誘導体を主成分とする半固体調剤である。当業者であれば分かるであろうが、使用される具体的な軟膏基剤は、最適な成分送達を与えるものであり、好ましくは、同時に他の望ましい特性、たとえば軟化性などを与えるものである。他の担体または賦形剤の場合と同様に、軟膏基剤もまた不活性かつ安定で、刺激性が無く、感作性の無いものでなければならない。Remingtonの”The Science and Practice of Pharmacy,第19版(Easton, Pa.: Mack Publishing Co., 1995)”の1399〜1404頁に説明されているように、軟膏基剤は次の4つの群に分類することができる。脂肪性基剤、乳化性基剤、乳剤性基剤、および水溶性基剤である。脂肪性軟膏基剤には、たとえば、植物油、動物から得た脂肪、および石油から得た半固体の炭化水素が含まれる。乳化性基剤は吸収性軟膏基剤としても知られ、水をほとんど若しくは全く含まず、たとえば硫酸ヒドロキシステアリン、無水ラノリンおよび親水性ペトロラタムが含まれる。乳剤性基剤は、油中水(W/O)エマルションまたは水中油(O/W)エマルションであり、たとえば、セチルアルコール、グリセロールモノステアレート、ラノリンおよびステアリン酸が含まれる。好ましい水溶性軟膏基剤は、様々な分子量のポリエチレングリコールから調製される。ここでさらなる情報のために再度、Remingtonの”The Science and Practice of Pharmacy”を参照する。
【0091】
ローション剤は、皮膚表面に摩擦無く塗布するための調剤であって、典型的には有効成分を含む粒子が水またはアルコール基剤中に存在している、液体または半液体の調製物である。ローション剤は通常は固体の懸濁液であり、水中油型の液体の油状エマルションからなるものであってもよい。ローション剤は、大きな体面積を治療するためには好ましい調剤である。というのも、より流動性のある組成物を容易に塗布することができるからである。ローション剤中の不溶性物質は細かく分割しておくことが一般に必要である。ローション剤は典型的には、より良好な分散を与えるための懸濁化剤ならびに活性剤を皮膚に接触した状態で配置、保持するのに有用な化合物、たとえばメチルセルロースやカルボキシメチルセルロース・ナトリウムなどを含んでいる。
【0092】
選択された有効成分を含むクリーム剤は、当該技術分野において知られるように、粘性の液体または半固体のエマルションであり、水中油または油中水のいずれかである。クリーム基剤は水洗可能であり、油相と、乳化剤と水相とを含んでいる。「内相」と呼ばれることもある油相は、一般にはペトロラタムおよびセチルまたはステアリルアルコールのような脂肪族アルコールからなり、水相は必ずしもではないが通常は油相よりも体積が大きく、一般に湿潤剤を含んでいる。クリーム調剤中の乳化剤は、上記Remingtonにも説明されているように、一般に非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性の界面活性剤である。
【0093】
ゲル調剤は、頭皮への塗布に好適である。局所有効成分の調合の分野の当業者ならば分かるように、ゲルは半固体の懸濁型の系である。単一相ゲルは、担体液体全体に実質的に均一に分布した有機マクロ分子を含んでおり、典型的には水性であるが好ましくはアルコール、随意で油を含んでいる。
【0094】
核酸のための担体には、標的リポソームを含むリポソーム、核酸錯化剤、ウィルス外被などが含まれるが、これらに限定されることはない。しかしながら、裸の核酸による形質転換を用いることもできる。
【0095】
当業者によって知られている様々な添加剤を、本発明の局所調剤中に含めることができる。たとえば、一定の有効成分物質を可溶化するために溶剤を用いてもよい。他の随意の添加剤としては、皮膚浸透増進剤、乳白剤、酸化防止剤、ゲル化剤、増粘剤、安定剤などが挙げられる。
【0096】
すでに上述したように、本発明に従う創傷を治療するための局所調製物は、かかる創傷を治療するために伝統的に用いられている、他の薬学的に活性な物質または有効成分を含んでいてもよい。これには、シクロスポリンなどの免疫抑制剤や、メトトレキサート、コルチコステロイド、ビタミンDおよびビタミンD類似体などの代謝拮抗物質、エトレチナート、タール、コールタール、などのビタミンAまたはその類似体、杜松油などの止痒剤および角質形成剤、サリチル酸などの角質溶解剤、緩和剤、潤滑剤、防腐剤および殺菌剤、たとえば、殺菌性ジトラノール(アントラリンとしても知られている)、ソラレンやメトキサレンなどの感光剤、およびUV照射が含まれる。抗菌剤、抗真菌剤、抗生物質および抗炎症剤などの他の薬剤を添加してもよい。酸素化による治療(高酸素圧)を併用してもよい。
【0097】
本発明の局所組成物は、有効成分組成物が積層構造の中に含まれており、皮膚に接着される薬剤送達素子として働く従来の皮膚型のパッチまたは商品を用いて皮膚に送達することもできる。このような構造において、有効成分組成物は、上側の裏張り層の下にある層、つまり「リザーバー」内に含まれている。積層構造は、単一のリザーバーしか含まないものであってもよいし、複数のリザーバーを含むものであってもよい。1つの実施形態において、リザーバーは、有効成分を送達する間、系を皮膚に固着させておく働きをする薬学的に許容される接着材料の高分子マトリックスからなる。好適な皮膚接着材料の例としては、ポリエチレン、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、ポリアクリレート、ポリウレタンなどが挙げられるが、これらに限定されることはない。選ばれる高分子接着材料は、その場合の有効成分や賦形剤等に応じて異なり、すなわち、接着剤は有効成分を含んだ組成物のすべての成分に適合しなければならない。あるいは、有効成分含有リザーバーおよび皮膚接着剤は、接着剤がリザーバーの下側にくる状態で別々の明確に区別できる層として存在しており、この場合、リザーバーは、上述のように高分子マトリックスであってもよいし、あるいは液体またはヒドロゲルリザーバーであってもよいし、あるいは他の何らかの形態をとってもよい。
【0098】
素子の上面として働く上記積層物の裏張り層は、積層構造の主たる構造要素として機能し、素子に大きな柔軟性を与える。裏張り層のために選ばれる材料は、該材料が実質的に有効成分に対して不透過性であるとともに、有効成分含有組成物の他のいずれの要素に対しても不透過性である材料を選ぶべきであり、これにより、素子の上面を通してのいかなる成分の損失も防止している。裏張り層は、有効成分の送達のあいだに皮膚が水和されることが望ましいかどうかに応じて、閉塞性、非閉塞性のいずれであってもよい。裏張りは好ましくは柔軟なエラストマー材料からなるシートまたはフィルムで作製されるのが好ましい。裏張り層に適したポリマーの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリエステルが挙げられる。
【0099】
保存中および使用前に、積層構造は剥離ライナーを含んでいる。使用直前に、この層を素子から除去して、有効成分リザーバー若しくは別の接着剤層であるその底面を露出して系を皮膚に固定できるようにする。剥離ライナーは、有効成分/賦形剤不透過性材料で作成すべきである。
【0100】
上記のような素子は、たとえば、接着剤、有効成分および賦形剤の流動性混合物を裏張り層上に注入し、剥離ライナーを積層することにより、当該技術分野において知られている従来の技術によって製造することができる。同様に、接着剤混合物を剥離ライナー上に注入してから、裏張り層を積層してもよい。あるいは、有効成分リザーバーは、有効成分または賦形剤のない状態で調製しておき、有効成分/賦形剤混合物中に「浸漬」することにより保持させるようにしてもよい。
【0101】
本発明の局所調剤の場合と同様に、上記積層系の有効成分リザーバー内に含まれる有効成分組成物は、多数の成分を含んでいてもよい。いくつかの場合では、有効成分は、「ストレートで」、すなわち液体を添加せずに送達することもできる。しかしながら、殆どの場合、有効成分は適切な薬学的に許容される賦形剤、典型的には溶剤またはゲルに溶解されるか、分散されるか、懸濁される。存在していてもよい他の成分としては、保存剤、安定剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0102】
本明細書中に記載の薬学的組成物は、適切な固体またはゲル相担体または賦形剤を含んでいてもよい。そのような担体または賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0103】
投与は、苦痛の種類、重篤性および症状、有効成分に対する患者の反応、ならびに、用いる投与形態、それぞれの結合物の効能および用いる投与経路に左右される。当業者であれば、最適な用量、投与方法および繰り返し率を容易に決定することができる。適正な調合、投与経路および用量は、患者の状態に鑑みて医師個人によって選択されることができる(たとえば、Finglら”The Pharmacological Basis of Therapeutics”第1章、1頁(1975)を参照のこと)。
【0104】
したがって、治療すべき状態の重篤性および反応に応じて、投与は一回または繰り返し投与にて、数日から数週間続く治療単位で、あるいは回復が得られるまで、あるいは皮膚損傷の減少が達成されるまで行われる。
【0105】
いくつかの態様において、本発明は、細胞の形質転換および遺伝子ノックイン型形質転換を伴うin vivoおよびex vivo(細胞性)遺伝子治療技術を利用している。本明細書中で用いる遺伝子治療とは、目的とする遺伝学的材料(たとえばDNAまたはRNA)を宿主に転移させて、遺伝的あるいは獲得された疾病または状態または表現型を治療または防止することをいう。目的の遺伝学的材料は、in vivoで生産しようとする生成物(たとえば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、機能性RNA、アンチセンスRNA)をコードする。たとえば、目的とする遺伝学的材料は、薬効のあるホルモン、レセプタ、酵素、ポリペプチドまたはペプチドをコードすることができる。一般的なことについては、”Gene Therapy”(Advanced in Pharmacology 40,アカデミックプレス、1997年)の内容を参照のこと。
【0106】
(i)ex vivoおよび(ii)in vivo遺伝子治療という、遺伝子治療に対する2つの基本的なアプローチを発展させた。ex vivo遺伝子治療において、細胞を患者から取り出すか、あるいは他の起源から取り出したが、培養中はin vitroで処理した。一般には、機能性置換遺伝子を適当な遺伝子輸送賦形剤/方法(トランスフェクション、形質導入、相同的組み換えなど)および必要であれば発現系を介して細胞内へ導入し、改変された細胞を培養液中で展開し、宿主である患者に戻す。これらの遺伝学的に再移植された細胞は、in situにおいてトランスフェクトされた遺伝学的材料を発現することが示されている。
【0107】
in vivo遺伝子治療においては、標的細胞を患者から取り出すのではなく、転移させるべき遺伝学的材料を受容者内を意味するin situにおいて受容者生物の細胞中に導入する。代替の実施形態において、宿主遺伝子が欠損している場合には、遺伝子はin situにおいて修復される(Culver,1998年(アブストラクト) Antisense DNA & RNA based therapeutics, February l998, カリフォルニア州コロラド)。これらの遺伝学的に変更された細胞は、in situにおいてトランスフェクトされた遺伝学的材料を発現することが示されている。
【0108】
遺伝子発現伝播体は、異種核酸を宿主細胞中へ輸送/移送することができる。発現伝播体は、細胞中の核酸のターゲッティング、発現および転写を、当該技術において周知の細胞選択的方法で制御するための要素を含んでいてもよい。遺伝子の5´UTRおよび/または3´UTRは、しばしば発現伝播体の3´UTRおよび/または5´UTRで置換されていてもよいことを注記しておく。したがって、本明細書中で用いる発現伝播体は、必要に応じて、トランスフェクトされる実際の遺伝子の5´UTRおよび/または3´UTRを含んでいなくてもよく、個別のアミノ酸コーディング領域のみを含むものであってもよい。
【0109】
発現伝播体は、異種材料の転写を制御するためのプロモーターを含んでいてもよく、構造的なものであってもよいし、選択的転写を可能にする誘導可能なプロモーターであってもよい。必要な転写レベルを得るために必要になることもあるエンハンサーも随意で含まれていてもよい。エンハンサーは一般に、コーディング配列と連続して(シスに)働いて、プロモーターによって命令される基底転写レベルを変えるための、任意の翻訳されないDNA配列である。発現伝播体は、以下に記載する選択遺伝子を含んでいてもよい。
【0110】
ベクターは当該技術分野において知られている様々な方法の何れか一方法によって、細胞または組織内に導入することができる。そのような方法は、一般にSambrookら著“分子クローニング:実験室マニュアル(コールドスプリングハーバー研究所、ニューヨーク、1989年、1992年)”、Ausubelら著“Current Protocols in Molecular Biology(John WileyとSons、メリーランド州バルチモア、1989年)”、Changら著“Somatic Gene Therapy(CRCプレス、ミシガン州アンアーバー、1995年)”、Vegaら著、“Gene Targeting(CRCプレス、ミシガン州アンアーバー(995)”、“Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses(Butterworths,マサチューセッツ州ボストン、1988年)およびGilboaら著“Biotechniques 4(6):504〜512頁,1986年)に記載されたものの中からみつけることができ、たとえば、安定的または一時的なトランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポーレーション、および組み換えられたウィルスベクターによる感染などが含まれる。さらに、中枢神経系に関与するベクターについては、米国特許第4866042号が、ポジティブ/ネガティブ選択法については米国特許第5464764号および第5487992号が参照される。
【0111】
インフェクションによる核酸の導入は、列挙した他の方法に対してもいくつかの利点を与える。その感染特性によりより高い効率を得ることができる。さらに、ウィルスは非常に特殊化されており、特異的細胞種において典型的に感染し伝播する。したがって、それらの天然の特異性は、in vivoまたは組織内あるいは細胞の混合培養物中において、特異的細胞種をベクターの標的とするために使用することができる。ウィルスベクターは、受容体によって媒介される事象を通して標的の特異性を変えるために、特異的受容体またはリガンドで修飾することもできる。
【0112】
組み換え配列を導入し発現するDNAウィルスベクターの具体例は、アデノウィルス由来ベクターAdenop53TKである。このベクターは、ポジティブまたはネガティブ選択のためにヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(TK)遺伝子を発現するとともに、所望の組み換え遺伝子に対する発現カセットを発現する。このベクターは、上皮起源ならびに他のほとんどの組織を含むアデノウィルス受容体を有する細胞を感染させるために用いることができる。このベクターならびに同様の所望の機能を呈する他のものは、細胞の混合集団を処理するために用いることができるとともに、たとえば、細胞、組織または人間被験者のin vitroまたはex vivo培養物を含んでいてもよい。
【0113】
また、特定の細胞型の発現を制限する特徴が含まれていてもよい。そのような特徴としては、たとえば、所望の細胞型に対して特異的なプロモーターまたは調節要素が挙げられる。
【0114】
さらに、組み換えウィルスベクターは、横感染および標的特異性という利点を与えることから、所望の核酸のin vivo発現に対して有用である。横感染は、たとえばレトロウィルスのライフサイクルに固有のものであって、この過程によって、単一の感染細胞は出芽して母体を離れ隣接する細胞を感染させる多くの子孫ビリオンを生産する。その結果、殆どが元のウィルス粒子に最初は感染していなかった広い面積を迅速に感染させることになる。このことは、感染因子が娘子孫を介してのみ伝播する縦型感染とは対照的である。ウィルスベクターは、縦方向に伝播することができないように作成することもできる。この特性は、所望の目的が特定の遺伝子を局在する多数の標的細胞のみに導入することである場合に有用であろう。
【0115】
上述のように、ウィルスは、多くの場合宿主の防衛機構を巧みに交わすように開発された、非常に特殊化された因子である。典型的には、ウィルスは特定の細胞型のみを感染させ伝播する。ウィルスベクターの標的特異性は、その天然の特異性を利用して所定の細胞型を特異的に目標とし、これにより組み換え遺伝子を感染細胞内に導入する。本発明の方法および組成物において用いられるベクターは、標的とする所望の細胞型に左右されるが、当業者によって知られたものであろう。
【0116】
レトロウィルスベクターは、感染粒子として機能するか、あるいは感染の最初の1つの周期のみを受けるように構築することができる。前者の場合、ウィルスのゲノムは、新しいウィルスタンパク質とRNAを合成するための、全ての必要な遺伝子と、調節配列と、パッケージングシグナルとを維持するように改変される。一度これらの分子が合成されてしまえば、宿主細胞はRNAを、さらなる感染周期を受けることのできる新しいウィルス粒子内にパッケージングする。ベクターのゲノムもまた、所望の組み換え遺伝子をコードし発現するように操作される。非感染性ウィルスベクターの場合、ベクターゲノムは、通常は、RNAをウィルス粒子内に封入するために必要とされるウィルスパッケージングシグナルを破壊するように変異される。そのようなシグナルが無い場合、形成されたすべての粒子はゲノムを含んでおらず、感染の続きの周期を遂行することができない。ベクターの具体的な型は、意図する用途によって決まる。実際のベクターは当該技術分野において知られていて容易に入手できるが、周知の方法を用いて当業者によって構築することもできる。
【0117】
組み換えベクターは、様々な方法によって投与することができる。たとえばウィルスベクターを用いる場合には、その方法ではウィルスベクターの標的特異性をうまく利用することができ、結果として、疾病部位に局所的に投与する必要がなくなる。しかしながら、局所投与はより迅速かつ効果的な治療を提供することができる。
【0118】
ノックイン法において用いられる相同的組み換えを含むin vivoおよびex vivo細胞形質転換のための方法は、例えば、米国特許第5487992号、第5464764号、第5387742号、第5360735号、第5347075号、第5298422号、第5288846号、第5221778号、第5175385号、第5175384号、第5175383号、第4736866号、ならびに、BurkeとOlson“Methods in Enzymology”第194巻、251〜270頁(1991年);Capecchi“Science第244巻、l288〜l292頁(1989年);Daviesら“Nucleic Acids Research”第20巻11号、2693〜2698頁(1992年);Dickinsonら“Human Molecular Genetics”第2巻8号、1299〜1302頁(1993年);DuffとLincoln“Insertion of a pathogenic mutation into a yeast artificial chromosome containing the human APP gene and expression in ES cells”,Research Advances in Alzheimer´s Disease and Related Disorders(1995年);Huxleyら“Genomics”第9巻、742〜750頁(1991年);Jakobovitsら“Nature”第362巻、255〜261頁(1993年);Lambら“Nature Genetics”第5巻、22〜29頁(1993年);PearsonとChoi“Proc.Natl.Acad.Sci.USA(l993年)、第90巻、10578〜82頁;Rothstein“Methods in Enzymology”第194巻、281〜301頁(1991年);Schedlら“Nature”第362巻、258〜261頁(1993年);Straussら“Science”第259巻、1904〜1907頁(1993年)に挙げられている。さらに、特許出願WO94/23049、WO93/14200,WO94/06908,WO94/28123も情報を提供する。
【0119】
本発明のさらなる目的、利点および新規な特徴は、限定を意図しない以下の実施例を精査することにより当業者によって明らかになるであろう。さらに、上述および下記請求項の部において請求される本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、以下の実施例において実験的な支持を見つけることができる。
【0120】
実施例
次に以下の実施例を参照する。実施例は上述の説明とともに本発明を非限定的に説明するものである。
【0121】
一般に、本明細書において用いる述語および本発明において用いる実験方法は、分子学的、生化学的、微生物学的、組み換えDNA技術を含んでいる。このような方法は、文献中にくまなく説明されている。たとえば、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”Sambrookら(1989年);“Current Protocols in Molecular Biology”、第I〜III巻、Ausubel,R.M.編(1994年);Ausubelら“Current Protocols in Molecular Biology”、John Wiley&Sons、メリーランド州バルチモア(1989年);Perbal、“A Practical Guide to Molecular Cloning”、John Wiley&Sons、ニューヨーク(1988年);Watsonら、“Recombinant DNA”、Scientific American Books、ニューヨーク;Birrenら(編)“Genome Analysis:A Laboratory Manual Series”、第1〜4巻、コールドスプリングハーバー研究所出版、ニューヨーク(1998年);米国特許第4666828号;第4683202号;第4801531号;第5192659号および第5272057号に記載の方法;“Cell Biology:A Laboratory Handbook”、第I−III巻、Cellis,J.E.編(1994年);Freshneyによる“Culture of Animal Cells−A Manual of Basic Technique”、Wiley−Liss,ニューヨーク(1994年)、第3版;“Current Protocols in Immunology”、第I〜III巻、Coligan J.E.編(1994年);Stitesら(編)、“Basic and Clinical Immunology”(第8版)、Appleton&Lange、コネチカット州ノーウォーク(1994年);MishellとShiigi(編)、“Selected Methods in Cellular Immunology”、W.H.Freeman and Co.、ニューヨーク(1980年)を参照のこと。また、利用できるイムノアッセイは、特許および科学文献中に広範に記載されている。たとえば、米国特許第3791932号、第3839153号、第3850752号、第3850578号、第3853987号、第3867517号、第3879262号、第3901654号、第3935074号、第3984533号、第3996345号、第4034074号、第4098876号、第4879219号、第5011771号および第5281521号、“Oligonucleotide Synthesis”、Gait,M.J.編(l984年);“Nucleic Acid Hybridization”、Hames,B.D.とHiggins S.J.編(1985年);“Transcription and Translation”、Hames,B.D.とHiggins S.J.編(1984年);“Animal Cell Culture”、Freshney,R.I.編(1986年);“Immobilized Cells and Enzymes”、IRL Press(1986年);“A Practical Guide to Molecular Cloning”、Perbal,B.(1984年)および“Methods in Enzymology”、Vol.1−317,Academic Press;“PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications”、Academic Press、カリフォルニア州サンディエゴ(l990年);Marshakら、“Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual”、CSHL Press(1996年)が参照される。上記全ての文献は、本願にそれら全内容が記載されるかのごとく、参照により本願に組み込まれる。他の一般的な引例は、本文中全体で提供される。ここに記載の方法は当該技術分野において周知であろうが、読者の便を図って提供したものである。ここに含まれるすべての情報は参照により本願に組み込まれる。
【実施例】
【0122】
材料と実験方法
材料
組織培養培地および血清は、バイオロジカル・インダストリーズ社(イスラエル、ベイトハイメック)より購入した。ECL(Enhanced Chemical Luminescence)は、バイオラッド社(イスラエル)より購入したキットを用いて実施した。モノクローナル抗p−tyr抗体は、アップステート・バイオテクノロジー社(米国ニューヨーク州レークプラシッド)より購入した。PKCアイソフォームに対するポリクローナルおよびモノクローナル抗体は、サンタクルーズ社(米国カリフォルニア)およびトランスダクション・ラボラトリーズ社(ケンタッキー州レキシントン)より購入した。α6ラット抗マウスmAb(GoH3)は、ファーミンゲン社(カリフォルニア州サンディエゴ)より購入した。α6A細胞質ドメインに対する抗体6844はV.Quaranta博士(スクリップス研究所、カリフォルニア州ラ・ホーヤ)より寄贈された。マウスβ4の細胞外ドメイン(346−llA)に対するラットmAbは、S.J.Kennel博士(オークリッジ国立研究所、テネシー州オークリッジ)より寄贈された。ホスホチロシンに対するラットmABはシグマ社(ミズーリ州セントルイス)より購入し、ウサギ抗ホスホセリンはZymed社(カリフォルニア州サンフランシスコ)より購入した。ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ−抗−ウサギおよび抗−マウスIgGは、バイオラッド社(イスラエル)より購入した。ロイペプチン、アプロチニン、PMSF、DTT、Na−オルトバナデートおよびペプスタチンは、シグマ・ケミカルズ社(ミズーリ州セントルイス)より購入した。インシュリン(ヒューマリンR−組み換えヒトインシュリン)は、イーライリリー・フランスSA(仏国、Fergersheim)より購入した。IGF1はCytolab社(イスラエル)より寄贈された。
【0123】
マウスケラチノサイトの単離と培養
一次ケラチノサイトは、以前に記載されているように(18)新生児の皮膚から単離した。ケラチノサイトは、8%Chelex(Chelex−100,バイオラッド社)で処理したウシ胎仔血清を含むイーグル最少培地(EMEM)中で培養した。増殖性の基底細胞表現型を維持するために、Ca2+の最終濃度を0.05mMに調節した。実験はプレーティング後、5〜7日間実施した。
【0124】
細胞抽出物の調製とウェスタンブロット分析
粗膜画分に対して、細胞を10μg/mLアプロチニン、10μg/mLロイペプチン、2μg/mLペプスタチン、1mM PMSF、10mM EDTA,200μM NaVOおよび10mM NaFを含むPBS中に粉砕することにより、全細胞溶解物を調製した。均質化後、凍結/解凍サイクルを4回繰り返し、溶解物を微量遠心機の最高回転数で4℃にて20分間スピンダウンした。可溶性サイトゾルタンパク質画分を含む上清を、他のチューブに移した。ペレットを1% TritonX−100を含む250μLのPBSにプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤とともに再懸濁し、4℃で30分間インキュベートし、微量遠心機の最高回転数で4℃にてスピンダウンした。この際の上清は膜画分を含んでいる。タンパク質濃度は、改良ローリー検定法(バイオラッドDCタンパク質検定キット)を用いて測定した。細胞性タンパク質画分のウェスタンブロット分析は、参照文献(6)の記載に従って実施した。
【0125】
免疫沈降のための細胞溶解物の調製
ケラチノサイトを含む培養皿を、Ca2+/Mg2+を含まないPBSで洗浄した。プロテアーゼとホスファターゼ阻害剤のカクテル(20μg/mL ロイペプチン;10μg/mLアプロチニン;0.1mM PMSF;1mM DTT;200μMオルトバナデート;2μg/mLペプスタチン)を含むRIPAバッファー(50mMトリス−HCl pH7.4;150mM NaCl;1mM EDTA;10mM NaF;1%TritonX−100;0.1%SDS,1%デオキシコール酸ナトリウム)中に細胞を機械的に脱着させた。調製物は微量遠心機の最高回転数で4℃にて20分間遠心分離した。上清を免疫沈降のために用いた。
【0126】
免疫沈降
溶解物は、300μgの細胞溶解物を25μLのタンパク質A/Gセファロース(サンタクルーズ社,米国カリフォルニア州)と混合することにより調製し、懸濁液を4℃で30分間連続的に回転させた。調製物は最高回転数で4℃にて10分間遠心分離し、30μLのA/Gセファロースを、各抗原に対する特異的ポリクローナルまたはモノクローナル抗体とともに上清に添加した(1:100希釈)。試料を4℃で一晩回転させた。次に懸濁液を最高回転数で4℃にて10分間遠心分離し、ペレットをRIPAバッファーで洗浄した。懸濁液を15,000×g(4℃で10分間)でもう一度遠心分離し、TBST中で4回洗浄した。サンプルバッファー(0.5M トリス−HCl,pH6.8;10%SDS;10%グリセロール;4% 2−β−メルカプトエタノール;0.05%ブロモフェノールブルー)を加え、試料を5分間煮沸してからSDS−PAGEに供した。
【0127】
付着検定
24ウェルシャーレ(Greiner)をPBSに溶解した20μg/mLマトリックスタンパク質で、37℃で1時間コートした(250μL/ウェル)。インキュベーション後、シャーレを洗浄し、室温にて0.1%BSAで30分間洗浄して非特異的結合をブロックした。ケラチノサイト培養物を0.25%トリプシンにより簡単にトリプシン処理して脱着させ、細胞を再懸濁し、コートされたウェルにケラチノサイト(1×10)を加え、37℃で1時間インキュベートした。非付着細胞を除去し、ウェルをPBSで2度リンスし、残った細胞を1M NaOHで抽出した。細胞数は、改良ローリー検定法(バイオラッドDCタンパク質検定キット)を用いてタンパク質濃度によって決定した。結果は、非処理対照に対する百分率によって計算した。
【0128】
免疫蛍光法
一次ケラチノサイトをラミニン5でコートしたスライドグラス上にプレーティングした。2日齢ケラチノサイトをPKCアデノウィルスに1時間感染させ、PBSで2回洗浄し、低Ca2+EMEMの培養物中に維持した。感染から24時間後、細胞を4%パラホルムアルデヒド中で30分間固定し、0.2%Tritonで5分間透過化処理した。分析のために、対照およびPKC感染ケラチノサイトをPBSでリンスし、PBS中1%BSA中に希釈したPKC抗体(サンタクルーズ社)とともに4℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、スライドグラスをPBSで10分間洗浄し、この洗浄を2回行い、ビオチニル化した二次抗ウサギ抗体とともに20分間インキュベートし、PBS中で2回洗浄し、ストレプトアビジン−FITCとともに20分間インキュベートした。α6β4染色の分析のために、スライドグラスを氷上にて0.2%TritonX−100で5分間処理し、次にメタノール中に5分間固定した。スライドグラスを抗α6または抗β4抗体とともに一晩インキュベートし、ビオチニル化した二次抗ラット抗体とともに、それぞれ20分間インキュベートし、PBS中で2回洗浄し、ストレプトアビジン−FITCとともに20分間インキュベートした。PBS中で2回洗浄した後、スライドグラスを1%のp−フェニレンジアミン(シグマ社)を含むグリセロールバッファーとともに標本にし、蛍光をレーザー走査共焦点撮影顕微鏡(MRC1024,英国、バイオラッド社)によって調べた。
【0129】
アデノウィルス構築物
組み換えアデノウィルスベクターは、以前に記載されているようにして(19)構築した。マウスPKCの優性ネガティブ変異体は、ATP結合部位にあるリジン残基をアラニンに置換することによって作成した。変異cDNAは、SRD発現ベクターからEcoRIを用いて切り出し、pAxCA1wコスミドカセットに連結してAxベクターを構築した。遺伝子の優性ネガティブ活性は、その自己リン酸化活性の排除によって実証された。
【0130】
PKCアイソフォーム遺伝子によるケラチノサイトの形質導入
培養培地を吸引し、ケラチノサイト培養物をPKC組み換えアデノウィルスを含むウィルス上清に1時間感染させた。次に培養物をMEMで2回洗浄し、再度培養した。感染から10時間後、細胞を血清を含まない低Ca2+含有MEMに24時間転移させた。対照およびインシュリン処理またはIGF1処理した培養物からのケラチノサイト増殖検定、86Rb取り込みのために用いるか、あるいは抽出して、上述の免疫沈降、免疫蛍光およびウェスタンブロットのために、サイトゾルと膜画分に分画した。
【0131】
PKC活性
特異的PKC活性は、適切な処理に続いてケラチノサイト培養物から調製したばかりの免疫沈降物において決定した。これらの溶解物は、NaFを含まないRIPAバッファー中で調製した。活性はSignaTECTプロテインキナーゼCアッセイシステム(Promega,米国ウィスコンシン州マディソン)を用いて製造者の指示に従って測定した。PKCα偽基質をこれらの研究における基質として使用した。
【0132】
細胞増殖
細胞増殖は、24ウェルプレートにおける[H]チミジン取り込みによって測定した。細胞を[H]チミジン(1μCi/mL)で一晩パルスした。インキュベーション後、細胞をPBSで5回洗浄し、5%TCAを30分間各ウェルに添加した。溶液を除去し細胞を1%TritonX−100中に可溶化した。細胞中に取り込まれた標識されたチミジンは、Tricarb液体シンチレーションカウンタのH−ウィンドウにおいて計数した。
【0133】
Na/Kポンプ活性
Na/Kポンプ活性は、2mMRbClと2.5μCiの86Rbを含む1mLのK非含有PBS中の全細胞による86Rbのウアバイン感受性取り込みの測定によって決定した。Rb取り込みは、培地の吸引により15分後に終了し、その後細胞を即座に冷4℃のK非含有PBS中で4回洗浄し、1%TritonX−100中に可溶化した。プレートから得た細胞をシンチレーションバイアル中で3mLのHOに加えた。試料の計数は、Tricarb液体シンチレーションカウンタのH−ウィンドウにおいて行った。Na/Kポンプ活性に関係するRb取り込み特異性は、阻害剤の非存在下において決定された取り込みから、10−4Mウアバイン存在下において蓄積されたcpmをひいた差によって決定した。
【0134】
PKCイムノキナーゼ検定
精製、標準化されたPKCアイソザイムは、P.Blumberg博士(NCI,NIH,米国)およびMarcello G.Kazanietz博士(ペンシルベニア大学、医学部)より親切にも寄贈された。一次ケラチノサイトは、500μLの1%Triton溶解バッファー(1×PBS中、1%Triton−X100,10μg/mLアプロチニンおよびロイペプチン、2μg/mLペプスタチン、1mM PMSF、1mM EDTA,200μM NaVO,10mM NaF)中に採取した。溶解物を4℃で30分間インキュベートし、16,000×gにて4℃で30分間遠心分離した。上清を新しいチューブに移した。細胞溶解物の免疫沈降は、5μg/試料の抗α6/GoH3(ファーミンゲン社)および30μL/試料のタンパク質A/G−Plusアガローススラリー(サンタクルーズ社)により、4℃で一晩行った。ビーズをRIPAバッファーで1回、50mMトリス−HCl(pH7.5)で2回洗浄し、35μLの反応バッファー(1mM CaCl,20mM MgCl,50mMトリス−HCl pH7.5)を各検定に加えた。各検定に対し、5.5μL/検定のDMSOまたは10mM TPAのいずれかを含むリン脂質伝播体の懸濁液を、標準化された量の特異的PKCアイソザイムとともにスラリーに加えた。反応は、10μL/検定の125mM ATP(1.25μCi/検定[γ−32P]ATP,アマシャム社)を加えることにより開始し、30℃で10分間継続させた。その後ビーズをRIPAバッファーで2回洗浄した。30μL/試料のタンパク質ローディング染料(3×Laemmli,5%SDS)を加え、試料を水浴中5分間煮沸した。タンパク質はSDS−PAGEにより8.5%ゲル上で分離し、Protranメンブレン(Schleicher&Schuell)に転移させ、オートラジオグラフィーによって可視化した。ヒストンのリン酸化およびPKC基質ペプチドのリン酸化を、PKC活性に対する対照として用いた。
【0135】
実験結果
実施例1
組み換えアデノウィルスベクターを用いたPKCアイソフォームの効率的過剰発現
組み換えβ−ガラクトシダーゼアデノウィルスを用いることにより、培養ケラチノサイト集団の90%以上が組換えタンパク質を発現するという、高い感染効率が達成された。組み換えβ−ガラクトシダーゼアデノウィルスの感染は、細胞の生存または細胞の成長に影響を及ぼさなかった。さらに、β−ガラクトシダーゼの発現は、2週間の培養まで持続され、以下の実験における対照感染として用いた。組み換えPKCアデノウィルス構築物がマウスケラチノサイト培養物においてタンパク質発現を誘導し適切に活性化される効率を調べた。図1のウェスタンブロッティングに見られるように、組み換えPKCアデノウィルス構築物に1時間感染させた24時間後、特異的PKCタンパク質発現において、特異的アイソフォームの内生発現レベルの5〜10倍という劇的な上昇が観察された。組み換えタンパク質は、感染から6時間後にはすでに感染したケラチノサイト培養物中に検出することができ、発現のピークは24時間後であった。タンパク質発現は、培養期間中ずっと(14日後まで)持続された。
【0136】
実施例2
過剰発現されたPKCアイソフォームはPKCアクチベーターによって活性化される。
PKCアイソフォームの組み換えタンパク質は、PKCアクチベーターに典型的に応答した。図2に見られるように、ブリオスタチン1による処理は、PKCαおよびδタンパク質が膜画分に転位することを誘導したが、PKCηおよびζアイソフォームに対しては効果が小さかった。この結果は、内在性アイソフォームの場合に得られた結果と類似しており、これらが補助因子を必要としていると予想される。
【0137】
実施例3
過剰発現されたPKCアイソフォームはその天然型において活性である。
早くも感染から18時間後に、PKCキナーゼ検定は個々のPKCアイソフォームの免疫沈降物が酵素的に活性であり、PKCアクチベーターによるさらなる刺激を必要としなかった(図3)ことを明らかにした。
【0138】
実施例4
特異的PKCアイソフォームの過剰発現は、一次ケラチノサイトにおける明確な形態学的変化を誘導する。
採用したPKCアデノウィルス構築物のそれぞれが、一次ケラチノサイトにおいて特異的な形態学的変化を誘導した(図4)。非感染の一次マウスケラチノサイト培養物およびβ−ガラクトシダーゼに感染した細胞は、培養中の増殖基底細胞の特性に典型的な立方体の形態を示す。アイソフォーム特異性とは関係なく、全てのPKCを過剰発現しているケラチノサイトは、細胞の伸張とニューロン状の外観を含むPKC活性化に典型的な形態学的変化を見せた。しかしながら、どのPKCアイソフォームをとっても、ケラチノサイト形態学に対して特徴的な効果を有していた。PKCα感染は、典型的な扁平形態を有するケラチノサイトの層化を誘導した。これに対し、PKCηは、正確な速度で増殖する基底細胞の形態学的特徴を示す、細胞の凝縮したクローンとして現れた(図4)。アイソフォームのうちの2つが、細胞同士の結合だけでなく細胞マトリックスにも影響を及ぼすように見えた。PKCδ感染から18〜48時間後、細胞はニューロン状の突起を有し伸張し拡大したように見えた。このことは、培養期間のあいだに徐々に起きる培養皿からの細胞の逐次的損失から分かる。過剰発現しているPKCζケラチノサイトは、丸いケラチノサイトクラスターとして現れ、該クラスターは培養皿に緩く付着しており、感染から数日で徐々に失われた。
【0139】
実施例5
感染一次ケラチノサイトにおける過剰発現されたPKCアイソフォームの明確な局在化
明確な形態学的変化には、免疫蛍光分析によって特徴付けられる明確な細胞局在化が伴った。増殖中のケラチノサイトにおいて、PKCα、PKCδおよびPKCζが細胞質膜中だけでなく細胞質中でも発現していた。内在性タンパク質発現の場合と同様に、PKCηアイソフォームは、ケラチノサイトの核周囲領域に局在化していた(図5)。分布の動的変化は、PKCδおよびPKCζに付随し、ここでは次に起こる細胞脱着において、PKCアイソフォーム発現が細胞膜に広く局在化した(図5)。
【0140】
実施例6
PKCアイソフォームによるα6β4発現の調節の実験結果
個別のPKCアイソフォームがもつ、増殖基底層の基底表現型に特徴的なタンパク質を調節する能力について調べた。α6β4インテグリンのダウンレギュレーションは、ケラチノサイト分化の間に起こる初期事象のうちの1つであるので、様々なPKCアイソフォームの、基底層の半接着斑に特異的に局在化するインテグリンであるα6β4インテグリンの発現を調節する能力について調べた。図6に示したイムノブロットに見られるように、α6β4インテグリンサブユニットは対照ケラチノサイトと同レベルであったのに対し、PKCδとPKCζアイソフォームのみが、α6β4発現をダウンレギュレートすることができた。同時に、α3またはβ1インテグリンサブユニットのレベルは減少されなかった。これに対し、矛盾無く、PKCαアイソフォームの過剰発現により、α6β4レベルが対照発現の2〜3倍に増加した(図6)。PKCηの過剰発現は、α6β4タンパク質の発現に影響を及ぼさなかった。いくつかの特性が細胞分化に関わっており、これらの特性が、増殖速度の減少、新たなケラチンの合成、細胞の脱着および基底膜成分への付着の損失を含むα6β4タンパク質のダウンレギュレーションに関与している。異なるPKCアイソフォームの過剰発現によっては、ケラチン発現にいかなる変化も観察されなかった。これには、増殖中の基底ケラチノサイトに特徴的であるK5およびK14の発現、および棘分化(spinous differentiation)の初期段階に特徴的なK1およびK10の発現が含まれていた。さらに、増殖速度をH−チミジン取り込みによって分析したところ、α6β4の発現の損失と増殖能力との間には何の相関関係もなかった。
【0141】
実施例7
過剰発現されたPKCηとPKCδはin vitroケラチノサイト増殖を誘導する。
PKCηとPKCδの過剰発現は、ケラチノサイト増殖をそれぞれ対照レベルの5倍および2倍に有意に誘導した(図7)。PKCζとPKCαは細胞増殖に影響を及ぼさなかった。
【0142】
実施例8
過剰発現されたPKCδおよびζはin vitroにおけるケラチノサイト脱着を誘導する。
PKCδおよびζを過剰発現しているケラチノサイトの付着特性を調べた。対照ケラチノサイトと比較して、ラミニン1、ラミニン5、フィブロネクチンおよびコラーゲンを含む特定マトリックスタンパク質に対する付着能力に変化は見られなかった(データ示さず)。しかしながら、PKCδおよびPKCζアイソフォームを過剰発現している細胞において、培養皿との細胞接触の損失により、培養皿から次第にケラチノサイトが脱着した(図4)。
【0143】
実施例9
PKCアイソフォームの過剰発現はα6β4インテグリンの半接着斑局在化に影響を与える。
α6β4の発現は、半接着斑付着複合体の形成に必須であるので、α6β4ダウンレギュレーションおよび細胞脱着と、半接着斑へのα6β4の局在化の関係を調べた。図8は、半接着斑複合体とのα6β4の会合の様子を示す免疫蛍光分析である。図8に見られるように、対照の感染ケラチノサイトと比べると、過剰発現しているPKCαケラチノサイトにおけるα6β4インテグリン発現のアップレギュレーション(図6)には、半接着斑複合体へのα6β4の取り込みの増加が伴っていた。PKCηを過剰発現している細胞は、α6β4インテグリンと半接着斑複合体との会合も誘導したが、過剰発現しているPKCα細胞に観察されたほどではなかった。予測されるように、PKCδおよびPKCζを過剰発現しているケラチノサイトにおける、α6β4インテグリンの有意なダウンレギュレーションは、α6β4と細胞の半接着斑複合体との結合の低下を伴うことが判明した(図8)。これらの結果は、α6β4インテグリンが、細胞−マトリックス会合、およびその下にある基底膜へのケラチノサイトのコア化(encoring)に重要な役割を果たしていることを示唆する。さらに、PKCδおよびζによって媒介されるα6β4のダウンレギュレーションは、ケラチノサイト分化プロセスとは別の経路でケラチノサイト細胞脱着を開始する。最後に、PKCによって媒介されるα6β4ダウンレギュレーション、半接着斑とα6β4の結合の減少および特定的形態変化を、ケラチノサイト脱着と結びつけるために、培養期間において、異なるPKCアイソフォームを過剰発現している細胞の付着または脱着細胞量の変化を追跡した。図9において、PKCアデノウィルス感染から24および48時間後の培養物中の付着細胞を計数した。明確に観察することができるように、PKCδおよびPKCζのいずれもin vitroにおける細胞損失を誘導した。これと平行して、培養物中の細胞の損失は、上層培地中に浮遊している細胞の増加と相関していた。これらの結果は、PKCδおよびPKCζが、細胞分化の初期段階に伴う脱着工程の制御にとって重要であることを示している。
【0144】
実施例10
PKCηは、生理学的設定下においてケラチノサイトの増殖と分化を差別的に調節する。
図7に明確に示されるように、PKCηアイソフォームを過剰発現している細胞は、対照である非感染細胞よりも5〜7倍も高速で増殖し、他のPKCアイソフォームを過剰発現しているケラチノサイト培養物よりも一貫して高速で増殖する。しかしながら、増殖の誘導は、培地中のCa2+濃度を調節することによって判別されるように、ケラチノサイトの分化状態に依存していた。低Ca2+濃度(0.05mM)下に維持された増殖中のケラチノサイトにおいて、内在性PKCηは、大部分の増殖中の細胞の核周囲領域に局在化していた(図10)。これらの条件下において、PKCηの過剰発現は、ケラチノサイト増殖の劇的な増大を誘導した(図11)。しかしながら、Ca2+濃度を0.12mMに高めることによってケラチノサイトを分化させた場合には、PKCηの過剰発現は増殖を誘導しなかったが、ケラチノサイトの分化はさらに刺激された。これらの結果は、過剰発現されたPKCηが、生理学的に増殖している細胞においてのみ増殖を誘導するものの、細胞の分化を妨害することはないことを示唆している。PKCη発現の調節における分岐は、in vivoにおいても見られる。胚の神経細胞だけでなく活発に増殖中の皮膚におけるPKCηの発現が確認されたが、成熟した大人の脳においてはPKCηは全く観察されず、表皮においては、PKCηは皮膚内の顆粒層に局在化していた。
【0145】
実施例11
PKCηおよびDNPKCηの過剰発現は、PKC局在化および細胞形態を特異的に調節する。
ケラチノサイトにおける増殖または分化の両状態におけるPKCηに対するポジティブな役割を支持する結果をさらに確証するために、キナーゼ不活性優性ネガティブアデノウィルスPKCη構築物の効果を、ケラチノサイトの増殖および分化における感染の効果を調べることにより分析した。図12に見られるように、PKCηおよびDNPKCηのどちらのアデノウィルス感染も、増殖および分化のいずれの状態に対しても効果があった。予想されるように、増殖中のケラチノサイトにおいて、DNPKCηは、Ca2+によって誘導される分化に伴う形態学的変化と同様の、細胞の扁平化や細胞と細胞の間の境界の消失を含む細胞形態の劇的な変化をもたらすケラチノサイト分化を誘導した(図12A,図12B)。さらに、これらの変化には、ケラチノサイト増殖の遮断(図11)と、ケラチン1、ケラチン10、ロリクリンおよびフィラグリンを含む分化マーカーの劇的な誘導が伴い、該マーカーは、in vivoにおいて正常な皮膚において示されるのと同等のレベルまで高められた(図13A,図13B)。同時に、分化プログラムの開始しても、DNPKCηの過剰発現は、Ca2+によって誘導される分化を阻害することはなかった。これらの結果は、PKCηおよびDNPKCηを、生理学的設定の下で、ケラチノサイトの増殖および分化を別々に調節するために利用できることを示唆している。
【0146】
実施例12
in vivo実験
PKCηのもつ、in vivoにおける細胞の増殖および分化を別々に調節する能力を調べるために、PKCηのもつ、ヌードマウスの背部に設けた全切開創の治癒を誘導する能力について調べた。ケラチノサイトが外来性の組み換えタンパク質を発現する能力は、対照β−galアデノウィルスを用いることにより確認した。図14に見られるように、感染から2週間後、β−gal発現はin vivo皮膚だけでなくin vitroケラチノサイトにおいても維持されている。興味深いことに、対照、PKCαおよびPKCηアデノウィルス構築物に局所感染させた後のマウスにおいて創傷治癒プロセスを調べたところ、PKCηのみが局所感染から4日目にすでに顆粒組織の形成を誘導していた。これには、筋肉、脂肪および皮膚層の組織化された形成も含まれる。同時に対照およびPKCαに感染した皮膚において、凝縮された顆粒組織は認められず創傷の閉鎖は全く観察されなかった(図14)。したがって、PKCηは、創傷治癒プロセスの誘導における皮膚の増殖および分化を調節する第一候補であると考えることができる。
【0147】
実施例13
インシュリンは増殖中のケラチノサイトにおけるPKCδの転位を特異的に誘導する。
皮膚中で発現される2つのPKCアイソフォーム、すなわちPKCηおよびPKCδがケラチノサイト増殖に影響を及ぼすことが分かった。皮膚増殖を調節する個別のPKCアイソフォームを活性化する内在因子を試験し同定するために、EGF、KGF、インシュリン、PDGFおよびIGF1を含む、ケラチノサイトの増殖を促進することが知られているいくつかの成長因子について、個別のPKCアイソフォームを成長依存的に活性化する能力を持つかどうかを調べた。PKCアイソフォームα、δ、ε、ηおよびζを皮膚中で発現させる。PKCアイソフォームの活性化にはそれらの膜画分への転位が伴うので、様々なPKCアイソフォームのサイトゾルから膜への転位に対する、上記成長因子の影響を調べた。図15に見られるように、早くも刺激から5分後に、インシュリンは、細胞質から膜画分へのPKCδの転位を特異的に誘導した。PKCδの膜発現は、インシュリン刺激から数時間にわたって維持されていた。これに対し、IGF1は、膜におけるPKCδの発現を減少させるとともに、その細胞質画分における発現の相対レベルを増大させた。他のどの成長因子もPKCδの転位および局在化に有意な影響を及ぼさなかった。IGF1およびインシュリンを含むどの成長因子によって刺激した場合でも、他のPKCアイソフォームの分布に変化は認められなかった。
【0148】
実施例14
インシュリンは増殖中のケラチノサイトにおけるPKCδの活性化を特異的に誘導する。
PKCδの転位が活性化にとって十分であるかどうかを判定するために、インシュリンおよびIGF1で処理したケラチノサイトの細胞質画分および膜画分から得たPKC免疫沈降物について、そのキナーゼ活性を測定した。図16に見られるように、インシュリンは膜画分におけるPKCδの活性を増加させたが、IGF1では増加させなかった。細胞質画分においてはPKCα活性の上昇は全く観察されなかった。インシュリンによって誘導される活性化は、PKCδに対して特異的であり、PKCα、ε、ηまたはζに対してはインシュリン刺激から30分たっても活性化は全く観察されなかった。これらの結果をまとめると、PKCδ活性化はインシュリンによって選択的に刺激されるが、IGF1によっては刺激されないことが示唆される。
【0149】
実施例15
インシュリンおよびIGF1は、ケラチノサイト増殖に対して付加的効果を有する。
PKCδの特異的活性化が、ケラチノサイトにおけるインシュリンによって誘導される特定の分裂促進経路を示すかどうかを分析するために、インシュリンとIGF1について、チミジン取り込みによって測定されるケラチノサイト増殖を誘導する能力を持つかどうかを調べることにより、該インシュリンとIGF1の両方の分裂促進効果を調べた。図17Aに見られるように、インシュリンとIGF1のいずれも用量依存的にチミジン取り込みを刺激し、最大の取り込みは、それぞれ10−7Mおよび10−8Mで達成された。どの濃度においても、IGF1による最大刺激はインシュリンによる最大刺激よりも大きかった。興味深いことに、すべての濃度において、両ホルモンを同時に与えた場合、分裂促進効果は付加的であった(図17B)。これらの結果は、インシュリンが、IGF1によって誘導されるケラチノサイト増殖とは別の、明確に区別される経路を介してケラチノサイト増殖を調節することを示唆している。
【0150】
実施例16
インシュリンによって誘導されるPKCδの活性化とインシュリンによって誘導されるケラチノサイト増殖の関連性
インシュリンによって誘導されるPKCδの活性化とインシュリンによって誘導されるケラチノサイト増殖の関連性を直接調べるために、組み換えPKCアデノウィルス構築物を用いて、野生型PKCδ(WTPKCδ)、ならびに、内在性PKCδ活性を阻害するPKCのキナーゼ不活性優性ネガティブ変異体(DNPKCδ)の両方を過剰発現させた。インシュリンによって誘導されるケラチノサイト増殖に対する、WTPKCδおよびDNPKCδの過剰発現の影響を調べた。両方の構築物ならびにPKCα構築物を、ケラチノサイト中で効率的に発現させた(図18A)。さらに、PKCδおよびPKCαに感染させたところ、対照レベルの数倍アイソフォーム特異的PKC活性が誘導された(図18B)。予想どおり、DNPKCδはPKC活性を誘導しなかった。図19Aに示されるように、非トランスフェクト細胞のインシュリン処理またはインシュリン処理なしのWTPKCδの過剰発現は、チミジン取り込みを、非処理細胞またはPKCαによる変換細胞の2〜3倍高い、ほぼ同等のレベルまで高めた。さらに、すでにWTPKCδを過剰発現している細胞にインシュリンを加えても、チミジン取り込みに付加的な増大はもたらされなかった。IGF1は、非感染細胞とWTPKCδおよびPKCαを過剰発現している細胞のいずれにおいても同様にチミジン取り込みを増加させた(図19A)。インシュリンによって誘導される増殖におけるPKCδの直接関与は、PKCδの活性を阻害することによりさらに確証された。図19Bに見られるように、優性ネガティブPKCδを過剰発現している細胞における基底チミジン取り込みは、非感染細胞における取り込みよりも僅かであるが有意に低かった。DNPKCδの過剰発現は、インシュリンによって誘導される増殖を完全に排除したが、IGF1によって誘導される増殖には影響を及ぼさなかった。さらに、インシュリンとIGF1の付加的効果は、IGF1単独の効果と同等まで低減された。
【0151】
実施例17
インシュリンによって媒介される経路に対するPKCδ活性化の特異性
IGF1,EGF,KGF,ECGFおよびPDGFを含む様々な成長因子に対する分裂促進応答への、PKCδおよびDNPKCδの影響を調べることにより、インシュリンによって媒介される経路に対するPKCδ活性化の特異性を分析した。図20に見られるように、DNPKCδの過剰発現は、インシュリンによって誘導される増殖効果を選択的に排除したものの、調べた他の成長因子のいずれも阻害しなかった。しかしながら、PKCδの過剰発現は、インシュリンによって誘導される増殖と同様に、IGF1によって誘導される増殖には影響を及ぼさなかった。EFGおよびKFGによる刺激によって誘導される増殖は増大されていた(図21)。これらのデータは、インシュリンによるPKCδ活性化が、PKCδが関与する経路を介してケラチノサイトの増殖を媒介すること、およびこの経路が、ケラチノサイト増殖を調節することが知られている2つの主たる成長因子であるEGFおよびKGFシグナリングの上流にあることを示している。全体的に見ると、インシュリンはPKCδ活性の特異的レギュレーターであり、インシュリン、EGFおよびKGFによって誘導されるケラチノサイト増殖の調節における特異的候補となりうることが判明した。
【0152】
実施例18
インシュリンによって誘導されるPKCδ活性およびケラチノサイト増殖は、STAT3転写活性化によって媒介される。
インシュリンシグナリングにおけるPKCδの役割をさらにキャラクタライズしたところ、STAT3によって媒介される転写活性化の誘導を含むことが判明した。図23に見られるように、一次ケラチノサイト内においてPKCδはSTAT3と特異的に会合することが示された。インシュリン刺激に続いて、PKCδは活性化され、次にSTAT3をリン酸化し、活性化する(図24)。さらに薬学的阻害剤(ロットレリン)によるPKCδ活性の阻害は、STAT3の核転位だけでなく活性化も阻害する。さらに、図25に見られるように、STAT3の過剰発現は、インシュリンおよびPKCδの過剰発現によって誘導される増殖と同様の増殖を誘導し、優性ネガティブPKCδ変異体の過剰発現によってPKCδ活性を阻害すると、STAT3のもつケラチノサイト増殖を誘導する能力が排除される。これらの結果全体は、インシュリンおよびPKCδが、ケラチノサイト増殖に関連する転写活性化において役割を果たしていることを示唆するものである。
【0153】
実施例19
PKCδおよびPKCζはin vivoにおける創傷治癒プロセスに対して必要不可欠である。
in vivo創傷治癒プロセスにおけるPKCアイソフォームの重要性は、アイソフォーム特異的PKCヌルマウスを用いて確認した。図22Aおよび図22Bに見られるように、全厚創傷をPKCδ、PKCζ、PKCαヌルマウス(ノックアウト、KO)およびそれらの野生型同腹仔の背部に設けたところ、PKCδおよびPKCζヌルマウスにおいては遅延創傷治癒が観察されたが、PKCαヌルマウスにおいては観察されなかった。このデータは、糖尿のバックグラウンドの非存在下でさえ、特定のPKCアイソフォームは皮膚内の創傷治癒プロセスに対して必要不可欠であることを示している。
【0154】
本発明は具体的な実施形態と組み合わせて説明してきたが、多くの代替、改変および変更が当業者によって明らかであろう。したがって、添付の請求項の精神および範囲から逸脱しないそのような代替、改変および変更のすべてが包含されるものとする。本明細書中に記載した名前および/またはデータベース受託番号によって識別されるすべての文献、特許、特許出願および配列は、個々の文献、特許、特許出願または配列が具体的かつ個別に参照により本願に組み込まれることが指示されているかのごとく、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる。さらに、本願における参考文献の引用または識別は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用できることを認めるものと解釈すべきでない。
【0155】
〔参考文献〕
数字により引用される参考文献
(追加の参考文献は本文中に引用されている)
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための方法であって、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するために、皮膚創傷に治療上有効な量のインシュリンを投与する工程を含む方法。
【請求項2】
前記創傷は、潰瘍、火傷、裂創および外科切開創からなる群より選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記潰瘍は糖尿病潰瘍である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記インシュリンは組換え体である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記インシュリンは天然起源のものである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記インシュリンが局所投与するように適合させられた薬学的組成物に含まれる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記薬学的組成物は、水性溶液、ゲル剤、クリーム、パスタ剤、ローション剤、噴霧剤、懸濁剤、粉剤、分散剤、軟膏剤(salve)および軟膏剤(ointment)からなる群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記薬学的組成物は固体支持体を含む請求項6に記載の方法。
【請求項9】
皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための方法であって、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するために、皮膚創傷中に治療上有効な量のインシュリン分泌細胞を移植する工程を含む方法。
【請求項10】
前記創傷は、潰瘍、火傷、裂創および外科切開創からなる群より選択される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記潰瘍は糖尿病潰瘍である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞はインシュリンを生産し分泌するように形質転換される請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞は組換えPDX1遺伝子によって形質転換され、これにより前記細胞は天然のインシュリンを生産し分泌する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞は、前記細胞の内在性インシュリン遺伝子の上流に組み込まれたシス作用要素配列によって形質転換され、これにより前記細胞は天然のインシュリンを生産し分泌する請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞は組換えインシュリン遺伝子によって形質転換され、これにより前記細胞は組換えインシュリンを生産し分泌する請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記インシュリン分泌細胞は分泌顆粒を形成することができる請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記インシュリン分泌細胞は内分泌細胞である請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記インシュリン分泌細胞はヒト起源のものである請求項9に記載の方法。
【請求項19】
前記インシュリン分泌細胞は組織適合ヒト化動物起源のものである請求項9に記載の方法。
【請求項20】
前記インシュリン分泌細胞はヒトインシュリンを分泌する請求項9に記載の方法。
【請求項21】
前記インシュリン分泌細胞は自己細胞である請求項9に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞は、線維芽細胞、上皮細胞およびケラチノサイトからなる群より選択される請求項9に記載の方法。
【請求項23】
皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための方法であって、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するために、皮膚創傷の細胞を形質転換して、インシュリンを生産および分泌させる工程を含む方法。
【請求項24】
前記創傷は、潰瘍、火傷、裂創および外科切開創からなる群より選択される請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記潰瘍は糖尿病潰瘍である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞は組換えPDX1遺伝子によって形質転換され、これにより前記細胞は天然のインシュリンを生産し分泌する請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞は、前記細胞の内在性インシュリン遺伝子の上流に組み込まれたシス作用要素配列によって形質転換され、これにより前記細胞は天然のインシュリンを生産し分泌する請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞は組換えインシュリン遺伝子によって形質転換され、これにより前記細胞は組換えインシュリンを生産し分泌する請求項23に記載の方法。
【請求項29】
皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための方法であって、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するために、前記皮膚創傷の細胞を形質転換して、プロテインキナーゼCを生産させる工程を含む方法。
【請求項30】
前記皮膚創傷は、潰瘍、火傷、裂創および外科切開創からなる群より選択される請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記潰瘍は糖尿病潰瘍である請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記細胞はプロテインキナーゼC転写アクチベーターを生産するように形質転換され、これにより前記細胞は天然のプロテインキナーゼCを生産する請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記細胞は前記細胞の内在性プロテインキナーゼCの上流に組み込まれたシス作用要素配列によって形質転換され、これにより前記細胞は天然のプロテインキナーゼCを生産する請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞は組換えプロテインキナーゼC遺伝子によって形質転換され、これにより前記細胞は組換えプロテインキナーゼCを生産する請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記プロテインキナーゼCは、PKC−β1,PKC−β2,PKC−γ,PKC−θ,PKC−λおよびPKC−τからなる群より選択される請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記プロテインキナーゼCは、PKC−α,PKC−δ,PKC−ε,PKC−ηおよびPKC−ζからなる群より選択される請求項30に記載の方法。
【請求項37】
皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための薬学的組成物であって、有効成分として治療上有効な量のインシュリンと、前記薬学的組成物を局所投与するように設計された薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
【請求項38】
前記創傷は、潰瘍、火傷、裂創および外科切開創からなる群より選択される請求項37に記載の薬学的組成物。
【請求項39】
前記潰瘍は糖尿病潰瘍である請求項38に記載の薬学的組成物。
【請求項40】
前記インシュリンは組換え体である請求項37に記載の薬学的組成物。
【請求項41】
前記インシュリンは天然起源のものである請求項37に記載の薬学的組成物。
【請求項42】
前記インシュリンが局所投与するように適合させられた薬学的組成物に含まれる請求項37に記載の薬学的組成物。
【請求項43】
前記薬学的組成物は、水性溶液、ゲル剤、クリーム、パスタ剤、ローション剤、噴霧剤、懸濁剤、粉剤、分散剤、軟膏剤(salve)および軟膏剤(ointment)からなる群から選択される請求項42に記載の薬学的組成物。
【請求項44】
前記薬学的組成物は固体支持体を含む請求項42に記載の薬学的組成物。
【請求項45】
皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための薬学的組成物であって、有効成分としてインシュリン分泌細胞と、薬学的組成物を局所投与するように設計された薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
【請求項46】
前記創傷は、潰瘍、火傷、裂創および外科切開創からなる群より選択される請求項45に記載の薬学的組成物。
【請求項47】
前記潰瘍は糖尿病潰瘍である請求項46に記載の薬学的組成物。
【請求項48】
前記細胞はインシュリンを生産し分泌するように形質転換される請求項45に記載の薬学的組成物。
【請求項49】
前記細胞は組換えPDX1遺伝子によって形質転換され、これにより前記細胞は天然のインシュリンを生産し分泌する請求項45に記載の薬学的組成物。
【請求項50】
前記細胞は、前記細胞の内在性インシュリン遺伝子の上流に組み込まれたシス作用要素配列によって形質転換され、これにより前記細胞は天然のインシュリンを生産し分泌する請求項45に記載の薬学的組成物。
【請求項51】
前記細胞は組換えインシュリン遺伝子によって形質転換され、これにより前記細胞は組換えインシュリンを生産し分泌する請求項45に記載の薬学的組成物。
【請求項52】
前記インシュリン分泌細胞は分泌顆粒を形成することができる請求項45に記載の薬学的組成物。
【請求項53】
前記インシュリン分泌細胞は内分泌細胞である請求項45に記載の薬学的組成物。
【請求項54】
前記インシュリン分泌細胞はヒト起源のものである請求項45に記載の薬学的組成物。
【請求項55】
前記インシュリン分泌細胞は組織適合ヒト化動物起源のものである請求項45に記載の薬学的組成物。
【請求項56】
前記インシュリン分泌細胞はヒトインシュリンを分泌する請求項45に記載の薬学的組成物。
【請求項57】
前記インシュリン分泌細胞は自己細胞である請求項45に記載の薬学的組成物。
【請求項58】
前記細胞は、線維芽細胞、上皮細胞およびケラチノサイトからなる群より選択される請求項45に記載の薬学的組成物。
【請求項59】
皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための薬学的組成物であって、有効成分として前記皮膚創傷の細胞を形質転換してインシュリンを生産および分泌させるように設計された核酸構築物と、薬学的組成物を局所投与するように設計された薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
【請求項60】
前記創傷は、潰瘍、火傷、裂創および外科切開創からなる群より選択される請求項59に記載の薬学的組成物。
【請求項61】
前記潰瘍は糖尿病潰瘍である請求項60に記載の薬学的組成物。
【請求項62】
前記細胞は組換えPDX1遺伝子によって形質転換され、これにより前記細胞は天然のインシュリンを生産し分泌する請求項59に記載の薬学的組成物。
【請求項63】
前記細胞は、前記細胞の内在性インシュリン遺伝子の上流に組み込まれたシス作用要素配列によって形質転換され、これにより前記細胞は天然のインシュリンを生産し分泌する請求項59に記載の薬学的組成物。
【請求項64】
前記細胞は組換えインシュリン遺伝子によって形質転換され、これにより前記細胞は組換えインシュリンを生産し分泌する請求項59に記載の薬学的組成物。
【請求項65】
皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための薬学的組成物であって、有効成分として前記皮膚創傷の細胞を形質転換してプロテインキナーゼCを生産させるように設計された核酸構築物と、薬学的組成物を局所投与するように設計された薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
【請求項66】
前記皮膚創傷は、潰瘍、火傷、裂創および外科切開創からなる群より選択される請求項65に記載の薬学的組成物。
【請求項67】
前記潰瘍は糖尿病潰瘍である請求項66に記載の薬学的組成物。
【請求項68】
前記細胞はプロテインキナーゼC転写アクチベーターを生産するように形質転換され、これにより前記細胞は天然のプロテインキナーゼCを生産する請求項65に記載の薬学的組成物。
【請求項69】
前記細胞は前記細胞の内在性プロテインキナーゼCの上流に組み込まれたシス作用要素配列によって形質転換され、これにより前記細胞は天然のプロテインキナーゼCを生産する請求項65に記載の薬学的組成物。
【請求項70】
前記細胞は組換えプロテインキナーゼC遺伝子によって形質転換され、これにより前記細胞は組換えプロテインキナーゼCを生産する請求項65に記載の薬学的組成物。
【請求項71】
前記プロテインキナーゼCは、PKC−β1,PKC−β2,PKC−γ,PKC−θ,PKC−λおよびPKC−τからなる群より選択される請求項65に記載の薬学的組成物。
【請求項72】
前記プロテインキナーゼCは、PKC−α,PKC−δ,PKC−ε,PKC−ηおよびPKC−ζからなる群より選択される請求項65に記載の薬学的組成物。
【請求項73】
皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための方法であって、皮膚創傷に治療上有効な量のPKC生産を増強および/またはPKC活性化を増強するための薬剤を投与する工程を含む方法。
【請求項74】
皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための薬学的組成物であって、有効成分として治療上有効な量のPKC生産を増強および/またはPKC活性化を増強するための薬剤と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
【請求項75】
皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための方法であって、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するために、皮膚創傷に治療上有効な量のPKCアクチベーターを投与する工程を含む方法。
【請求項76】
皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するための薬学的組成物であって、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または加速するために、有効成分として治療上有効な量のPKCアクチベーターと、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
【請求項77】
皮膚細胞のex vivo増殖を誘導または加速するための方法であって、皮膚細胞を有効な量のPKC生産を増強および/またはPKC活性化を増強するための薬剤に供する工程を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−140505(P2011−140505A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46656(P2011−46656)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【分割の表示】特願2002−515194(P2002−515194)の分割
【原出願日】平成13年7月23日(2001.7.23)
【出願人】(593003710)バル・イラン・ユニバーシティ (2)
【氏名又は名称原語表記】BAR ILAN UNIVERSITY
【Fターム(参考)】