説明

力センサおよび同力センサを用いた電動パーキングブレーキ装置

【課題】 力のリリースが完了した時点(作用力が略ゼロとなったとき)を正確に検出することが可能な力センサを提供すること。
【解決手段】 力センサS1は、マグネット49が固定されたシャフト43と、このシャフト43に対して往復動可能でマグネット49との相対変位に応じて出力電圧が変化するホールIC素子51が固定されたケース45と、シャフト43とケース45間に介装されてシャフト43とケース45間に作用する往復動方向の力に応じて弾性変形する主ばね53を備えている。この力センサS1においては、主ばね53の弾性変形量が略ゼロである状態でシャフト43に対するケース45の往復動方向にてシャフト43のフランジ部43aと主ばね53の一端部間およびケース45と主ばね53の他端部間に隙間が生じないように予荷重を付与する副ばね55が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力センサおよび同力センサを用いた電動パーキングブレーキ装置に関するものであり、例えば、車両用のパーキングブレーキ装置に採用可能である。
【背景技術】
【0002】
力センサの一つとして、マグネットが固定された第1部材と、前記マグネットとの相対変位に応じて出力電圧が変化する電気素子が固定された第2部材と、前記第1部材と前記第2部材間に介装されて前記第1部材と前記第2部材間に作用する往復動方向の力に応じて弾性変形する主ばねを備えたものがあり、例えば、下記特許文献1および2に記載されている。
【0003】
また、上記した力センサを用いた電動パーキングブレーキ装置の一つとして、車両において採用可能で、電気モータの正回転駆動によりパーキングブレーキを制動状態とし、前記電気モータの逆回転駆動により前記パーキングブレーキを解除状態とするように構成したものがあり、例えば、下記特許文献1および2に記載されている。
【特許文献1】国際公開第02/20324号(WO 02/20324 A1)パンフレット
【特許文献2】国際公開第02/057122号(WO 02/057122 A1)パンフレット
【0004】
上記した特許文献1および2に記載されている力センサにおいては、第1部材と第2部材の相対的な往復動方向にて、第1部材と主ばねの一端部が離間可能に当接し、第2部材と主ばねの他端部が離間可能に当接している。このため、上記した力がリリースされるときには、主ばねの弾性変形量がゼロとなったときに、第1部材に対する第2部材の復動を止めることができなくて、引き続きマグネットと電気素子が相対変位可能であり、電気素子からの出力電圧は引き続き変化する。したがって、上記した力のリリースが完了した時点、すなわち、主ばねの弾性変形量がゼロとなった時点を正確に検出することができない。
【0005】
なお、主ばねのへたりが発生しない場合には、当該力センサにおいて、主ばねの弾性変形量と電気素子からの出力電圧の関係を予め測定して、主ばねの弾性変形量がゼロとなったときの電気素子からの出力電圧を基準値として予め求めておけば、この基準値と電気素子からの現実の出力電圧との比較によって、上記した力のリリースが完了した時点を検出することができる。しかし、主ばねのへたりは使用により少なからず発生するものであり、かつ主ばねのへたりに伴って上記した基準値は変化するため、実際の使用時には、使用初期においては上記した力のリリースが完了した時点を正確に検出することが可能であるものの、使用の中・後期においては上記した力のリリースが完了した時点を正確に検出することができなくなる。
【0006】
また、上記した特許文献1および2に記載されている力センサを用いた電動パーキングブレーキ装置においては、使用初期において如何に設定したとしても、力センサにおける主ばねのへたり発生により、力センサにてパーキングブレーキに作用する力が略ゼロとなったときを正確に検出することができなくなるため、電気モータの作動制御において種々な不具合が生じるおそれがある。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、上記した前者の課題(力センサの課題)を解決するために、マグネットが固定された第1部材と、前記マグネットとの相対変位に応じて出力電圧が変化する電気素子が固定された第2部材と、前記第1部材と前記第2部材間に介装されて前記第1部材と前記第2部材間に作用する往復動方向の力に応じて弾性変形する主ばねを備えた力センサにおいて、前記主ばねの弾性変形量が略ゼロである状態で前記第2部材に対する前記第1部材の往復動方向にて前記第1部材と前記主ばねの一端部間および前記第2部材と前記主ばねの他端部間に隙間が生じないように予荷重を付与する副ばねを設けたこと(請求項1に係る発明)に特徴がある。
【0008】
この発明による力センサにおいては、第2部材に対する第1部材の往復動方向(主ばねの弾性変形方向)にて、第2部材に対して第1部材が相対的に往動すると、その際に第1部材と前記第2部材間に作用する往復動方向の力に応じて主ばねが弾性変形し、この変形量に応じた相対変位がマグネットと電気素子間に生じて、電気素子の出力電圧が上記した力に応じて変化する。したがって、電気素子の出力電圧に基づいて上記した力を検出することが可能である。
【0009】
ところで、この発明による力センサにおいては、上記した力がリリースされるとき、主ばねの弾性変形量が略ゼロとなった時点で、第2部材に対する第1部材の復動が副ばねの予荷重により止められて、マグネットと電気素子間の相対変位がなくなり、電気素子の出力電圧が変化しなくなる。かかる作動は、主ばねのへたりが発生して主ばねの弾性変形方向での寸法が変化した場合においても略同様に得られる。したがって、電気素子の出力電圧が変化しなくなる時点を検出することで、当該力センサの使用初期は勿論のこと使用の中・後期においても、上記した力のリリースが完了した時点(上記した力が略ゼロとなったとき)を正確に検出することが可能である。
【0010】
また、上記した発明による力センサの実施に際しては、前記マグネットと前記電気素子の相対変位方向に対して略直交する方向での前記マグネットと前記電気素子間のクリアランスを略一定に保持するガイドおよび付勢部材を設けること(請求項2に係る発明)が好ましい。この力センサにおいては、マグネットと電気素子の相対変位方向に対して略直交する方向でのマグネットと電気素子間のクリアランスがガイドおよび付勢部材によって略一定に保持されるため、電気素子の出力電圧が上記した力に応じて安定して変化する。したがって、当該力センサでの検出精度を高めることが可能である。
【0011】
また、本発明は、上記した後者の課題(電動パーキングブレーキ装置の課題)を解決するために、電気モータの正回転駆動によりパーキングブレーキを制動状態とし、前記電気モータの逆回転駆動により前記パーキングブレーキを解除状態とするアクチュエータと、前記パーキングブレーキに作用する力を検出する力センサと、この力センサからの出力電圧に応じて前記電気モータの回転駆動を制御する電気制御装置とを備えている電動パーキングブレーキ装置において、前記力センサとして請求項1または2に係る発明の力センサを用いたことに特徴がある。
【0012】
この電動パーキングブレーキ装置においては、パーキングブレーキの解除時において、力センサにおける主ばねのへたりに拘らず、力センサにてパーキングブレーキに作用する力が略ゼロとなったときを正確に検出することが可能であるため、そのときに電気モータの逆回転駆動を停止させるように設定すれば、パーキングブレーキの過リリースを防止することが可能である。
【0013】
また、上記した発明による電動パーキングブレーキ装置の実施に際して、前記電気制御装置は、前記力センサによって前記パーキングブレーキに作用する力が略ゼロとなったことが検出されたときに前記力センサからの出力電圧を基準値として更新する基準値更新手段を備えることが好ましい。この電動パーキングブレーキ装置においては、パーキングブレーキに作用する力が略ゼロとなったことが検出されたときに力センサからの出力電圧を基準値として更新する基準値更新手段を備えているため、力センサにおける主ばねのへたりが発生した場合、主ばねのへたりに応じて基準値が更新される。したがって、更新された基準値をゼロ点として設定値にて電気モータの正回転駆動を停止させるように設定すれば、力センサにおける主ばねのへたりに拘らず、パーキングブレーキに所期の力を付与し得て、パーキングブレーキを所期の制動状態とすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明を実施した自動車用の電動パーキングブレーキ装置のアクチュエータを示していて、このアクチュエータは、電気モータ11の出力である回転駆動力を減速して伝達する減速機構Aと、この減速機構Aを介して伝達される電気モータ11の回転駆動力を直線駆動力に変換する変換機構Bと、この変換機構Bにより変換された直線駆動力によって駆動されるとともに直線駆動力を二つの出力部に分配するイコライザ機構Cと、このイコライザ機構Cの各出力部に連結されて直線駆動力を各パーキングブレーキ13,15に伝達する一対のケーブル17,19と、電気モータ11の回転駆動を制御する電気制御装置ECUを備えている。
【0015】
電気モータ11は、図2に示したように、電気制御装置ECUによって作動を制御されるようになっていて、運転者が制動スイッチSW1を操作することにより正方向に回転駆動され、運転者が解除スイッチSW2を操作することにより逆方向に回転駆動されるようになっている。減速機構Aは、図1に示したように、多段のはすば減速ギヤ列によって構成されていて、各ギヤはハウジング21に組付けたケーシング23内に組み込まれており、入力ギヤ25は電気モータ11の出力軸27に固着され、出力ギヤ29はねじ軸31の一端(ケーシング23内に突出している端部)に固着されている。
【0016】
変換機構Bは、上述したねじ軸31と、このねじ軸31に螺合して組付けたナット33を備えていて、ねじ軸31が正方向に回転駆動されることによりナット33が図1の実線で示した解除位置から図1の仮想線で示した制動位置に向けてねじ軸31の軸線方向に移動され、また、ねじ軸31が逆方向に回転駆動されることによりナット33が図1の実線で示した解除位置に向けてねじ軸31の軸線方向に移動されるようになっている。なお、ねじ軸31は、一対の軸受35,37を介してハウジング21に回転自在かつ軸方向へ移動不能に組付けられている。
【0017】
イコライザ機構Cは、ナット33に作用する直線駆動力を二つの出力部に等分に分配するものであり、ナット33に揺動可能に組付けたレバー39によって構成されている。レバー39は、その中央部にてナット33に所定量揺動可能に組付けられていて、一方の出力部であるアーム部39aには、一方のケーブル17のインナーワイヤ17aが張力センサS1を介して回動可能に連結され、他方の出力部であるアーム部39bには、他方のケーブル19のインナーワイヤ19aが接続ケーブル41を介して回動可能に連結されている。なお、接続ケーブル41はハウジング21に回転可能に組付けた固定滑車42に巻装されていて、他方のケーブル19のインナーワイヤ19aがハウジング21からケーブル17のインナーワイヤ17aとは逆方向に延出している。
【0018】
張力センサS1は、図1にて示したように、一方のケーブル17のインナーワイヤ17aとイコライザ機構Cの一方の出力部であるアーム部39aとの連結部位に介装されて一方のケーブル17におけるインナーワイヤ17aに作用する張力Fを検出するものであり、図3および図4に示したように、第1部材としてのシャフト43と、第2部材としてのケース45およびロッド47を備えるとともに、マグネット49、ホールIC素子51、主ばね53および副ばね55を備えている。
【0019】
シャフト43は、ケース45に対してシャフト軸方向に往復動可能であり、ケース45外に突出する外端部にて一方のケーブル17におけるインナーワイヤ17aの端部に連結されている。ケース45は、シャフト43の内端部とロッド47の内端部を収容するとともに、主ばね53および副ばね55を収容している。ロッド47は、外端部にてレバー39の一方のアーム部39aに回動可能に連結され、内端部に一体的に設けたフランジ部47aにてケース45の一端に一体的に連結固定されている。
【0020】
マグネット49は、樹脂モールドされた状態にて、シャフト43のケース45外に突出する外端部外周に、トーションスプリング57を介して回動可能かつシャフト軸方向には一体的に移動可能に組付けられていて、図4に示したように、ケース45に形成したガイド突起45aに当接した状態、すなわちシャフト軸方向に対して略直交する方向でのホールIC素子51間のクリアランスXを略一定に保持された状態にて、シャフト軸方向に移動するようになっている。このため、ホールIC素子51の出力電圧Vがケーブル17のインナーワイヤ17aに作用する張力Fに応じて安定して変化する。
【0021】
ホールIC素子51は、ケース45に形成した支持アーム45bに固着されていて、マグネット49とのシャフト軸方向での相対変位量すなわちインナーワイヤ17aの張力Fに相当する主ばね53の圧縮弾性変形量に応じた出力電圧Vを電気制御装置ECUに出力するようになっている。主ばね53は、シャフト43の内端部外周に組付けられた圧縮コイルスプリングであり、シャフト43の一端に形成したフランジ部43aとケース45間に介装されていて、シャフト43とケース45を弾撥的に連結している。
【0022】
副ばね55は、シャフト43の内端部軸心に形成した取付穴43bに組付けられた圧縮コイルスプリングであって、そのばね定数は主ばね53のばね定数に比して十分に小さいものであり、シャフト43とロッド47間に介装されている。この副ばね55は、主ばね53の圧縮弾性変形量が略ゼロである状態で、シャフト軸方向にて、シャフト43のフランジ部43aと主ばね53の一端部間およびケース45と主ばね53の他端部間に隙間が生じないように小さな予荷重を付与するものである。
【0023】
このため、ケーブル17のインナーワイヤ17aに作用する張力Fがリリースされるとき、主ばね53の圧縮弾性変形量が略ゼロとなった時点で、シャフト43に対するケース45の復動が副ばね55の予荷重により止められて、マグネット49とホールIC素子51間の相対変位がなくなり、ホールIC素子51の出力電圧Vが変化しなくなる(図5の引張り量ゼロ近傍参照)。
【0024】
かかる作動は、主ばね53のへたりが発生して主ばね53の圧縮弾性変形方向での寸法が変化した場合においても略同様に得られる。したがって、上記した張力Fのリリースが完了してホールIC素子51の出力電圧Vが変化しなくなる時点(図5の折れ点a)を例えば出力電圧Vの電圧減少勾配δの急激な変化にて検出することで、当該張力センサS1の使用初期は勿論のこと使用の中・後期においても、上記した張力Fのリリースが完了した時点を正確に検出することが可能である。なお、主ばね53のへたりが発生した場合には、ホールIC素子51の出力電圧Vが図5の一点鎖線にて示したように全体的に増大変化する。
【0025】
電気制御装置ECUは、図2にて示したように、制動スイッチSW1と解除スイッチSW2に電気的に接続されるとともに、張力センサS1、電気モータ11、インジケータランプL1および異常警告ランプL2等に電気的に接続されている。また、電気制御装置ECUは、CPU、ROM、RAM、インターフェース、タイマ等を有するマイクロコンピュータを備えていて、制動スイッチSW1と解除スイッチSW2の操作に応答して、電気制御装置ECUのCPUが図6と図7のフローチャートに対応した制御プログラムを実行して、電気モータ11の回転駆動とインジケータランプL1の作動(点灯および消灯)と異常警告ランプL2の作動(点灯および消灯)等を制御する。
【0026】
上記のように構成したこの実施形態においては、当該アクチュエータが正常に作動する場合、制動スイッチSW1が操作されると、電気モータ11が正回転駆動されて、変換機構Bのねじ軸31が正回転され、マイクロコンピュータのタイマが計時するタイマ値t(制動スイッチSW1が操作された後の経過時間)が設定時間T1となる前に、イコライザ機構Cが図1の実線位置から仮想線位置に移動する。このため、両ケーブル17,19のインナーワイヤ17a,19aが引っ張られて両パーキングブレーキ13,15が制動状態とされる。
【0027】
このときには、張力センサS1において、主ばね53の弾性変形方向にて、シャフト43に対してケース45が相対的に引っ張られて往動し、シャフト43に作用する引張力に応じて主ばね53が圧縮弾性変形し、この圧縮弾性変形量に応じた相対変位がマグネット49とホールIC素子51間に生じて、ホールIC素子51の出力電圧Vがシャフト43に作用する引張力すなわちケーブル17のインナーワイヤ17aに作用する張力Fに応じて増大変化する。
【0028】
上記した制動作動において、制動スイッチSW1が操作されて、イコライザ機構Cが図1の実線位置から仮想線位置に移動するまでの過程では、図6に示したフローチャートのステップ100,101,102,103,104,105が実行された後に、ステップ108,104,105が繰り返し実行される。ステップ100では制動スイッチSW1の操作信号に基づいてプログラムの実行が開始され、ステップ101ではタイマのタイマ値tがゼロにリセットされる。
【0029】
また、ステップ102では基準値Voと設定値ΔVから目標出力電圧Vfが演算されて記憶され、ステップ103では電気モータ11を正回転駆動させる駆動信号が出力される。また、ステップ104では張力センサS1からホールIC素子51の出力電圧Vが読み込まれて記憶され、ステップ105ではステップ104にて読み込まれて記憶されたホールIC素子51の出力電圧Vと上記した目標出力電圧VfがV≧Vfの関係にあるか否かが判定される。また、ステップ108では、タイマのタイマ値tと設定時間T1がt>T1の関係にあるか否かが判定される。
【0030】
上記したステップ102の実行において使用される基準値Voは、図5の実線に示したように主ばね53のへたりが発生していない状態を想定して初期値(折点aの値)が予め設定されているが、後述するリリース作動が実行されることにより、同リリース作動の実行中に更新されて、主ばね53のへたりに応じて増大する。なお、ステップ102の実行において使用される設定値ΔVは、イコライザ機構Cの移動量すなわち引張り量(図5参照)とケーブル17のインナーワイヤ17aに作用する張力Fの関係を考慮して、各パーキングブレーキ13,15にて所期のパーキングブレーキ力が得られるように予め設定されていて変更されないものである。また、ステップ108の実行において使用される設定時間T1は、電気モータ11、減速機構A、変換機構B等の正回転性能を考慮して予め設定されていて変更されないものである。
【0031】
また、上記した制動作動において、イコライザ機構Cが図1の実線位置から仮想線位置に移動して、ホールIC素子51の出力電圧Vが目標出力電圧Vfに達したときには、図6に示したフローチャートのステップ105にて「Yes」と判定され、その後にステップ106,107が実行される。このため、このときには、ステップ106の実行によりインジケータランプL1が点灯するとともに、電気モータ11の正回転駆動が停止されて、両パーキングブレーキ13,15の制動状態が維持される。また、ステップ107の実行により、プログラムの実行が終了される。
【0032】
なお、制動スイッチSW1が操作された後の経過時間すなわちタイマのタイマ値tが設定時間T1となる前に、ホールIC素子51の出力電圧Vが目標出力電圧Vfに達しない場合(当該アクチュエータの異常作動時)には、上記したタイマ値tが設定時間T1となった時点で、図6に示したフローチャートのステップ108にて「Yes」と判定され、その後にステップ109が実行される。このため、このときには、ステップ109の実行により、異常警告ランプL2が点灯するとともに、電気モータ11の正回転駆動が停止される。
【0033】
また、当該アクチュエータが正常に作動する場合において、解除スイッチSW2が操作されると、電気モータ11が逆回転駆動されて、変換機構Bのねじ軸31が逆回転され、マイクロコンピュータのタイマが計時するタイマ値t(解除スイッチSW2が操作された後の経過時間)が設定時間T2となる前に、イコライザ機構Cが図1の仮想線位置から実線位置に移動する。このため、両ケーブル17,19が緩められて両パーキングブレーキ13,15が解除状態とされる。
【0034】
このときには、張力センサS1において、主ばね53の弾性変形方向にて、シャフト43に対してケース45が相対的に戻されて復動し、シャフト43に作用する引張力に応じて主ばね53が弾性復帰し、この弾性復帰量に応じた相対変位がマグネット49とホールIC素子51間に生じて、ホールIC素子51の出力電圧Vがシャフト43に作用する引張力すなわちケーブル17のインナーワイヤ17aに作用する張力Fの減少に応じて減少変化する。
【0035】
上記した解除作動において、解除スイッチSW2が操作されて、イコライザ機構Cが図1の仮想線位置から実線位置に移動するまでの過程では、図7に示したフローチャートのステップ200,201,202,203,204が実行された後に、ステップ208,203,204が繰り返し実行される。ステップ200では解除スイッチSW2の操作信号に基づいてプログラムの実行が開始され、ステップ201ではタイマのタイマ値tがゼロにリセットされる。
【0036】
また、ステップ202では電気モータ11を逆回転駆動させる駆動信号が出力される。また、ステップ203では張力センサS1のホールIC素子51からの出力電圧Vに基づいて同出力電圧Vの電圧減少勾配δが演算されて記憶され、ステップ204ではステップ203にて演算されて記憶された電圧減少勾配δと設定値δ1がδ≧δ1の関係にあるか否かが判定される。また、ステップ208では、タイマのタイマ値tと設定時間T2がt>T2の関係にあるか否かが判定される。
【0037】
上記したステップ204の実行において使用される設定値δ1は、図5に示した折点aを検出するために予め設定されていて変更されないものである。また、ステップ208の実行において使用される設定時間T2は、電気モータ11、減速機構A、変換機構B等の逆回転性能を考慮して予め設定されていて変更されないものである。
【0038】
また、上記した解除作動において、イコライザ機構Cが図1の仮想線位置から実線位置に移動して、ホールIC素子51の出力電圧Vが基準値Voに戻って略一定となり、電圧減少勾配δが設定値δ1以上に急激に変化したときには、図7に示したフローチャートのステップ204にて「Yes」と判定され、その後にステップ205,206,207が実行される。このため、このときには、ステップ205の実行によりインジケータランプL1が消灯するとともに、電気モータ11の逆回転駆動が停止されて、両パーキングブレーキ13,15の解除状態が維持される。また、ステップ206の実行によりそのときのホールIC素子51からの出力電圧Vが上記した目標出力電圧Vfの演算において用いられる基準値Voとして更新される。また、ステップ207の実行により、プログラムの実行が終了される。
【0039】
なお、解除スイッチSW2が操作された後の経過時間すなわちタイマのタイマ値tが設定時間T2となる前に、電圧減少勾配δが設定値δ1以上に急激に変化しない場合(当該アクチュエータの異常作動時)には、上記したタイマ値tが設定時間T2となった時点で、図7に示したフローチャートのステップ208にて「Yes」と判定され、その後にステップ209が実行される。このため、このときには、ステップ209の実行により、異常警告ランプL2が点灯するとともに、電気モータ11の逆回転駆動が停止される。
【0040】
ところで、この実施形態においては、パーキングブレーキ13,15の解除時において、張力センサS1における主ばね53のへたりに拘らず、張力センサS1にてケーブル17のインナーワイヤ17aに作用する張力Fが略ゼロとなったときを正確に検出することが可能であり、ケーブルのインナーワイヤ17aに作用する張力Fが略ゼロとなったときに電気モータ11の逆回転駆動を停止させるように設定したため、ケーブル17a,19aの過リリースを防止することが可能である。
【0041】
また、この実施形態においては、ケーブルのインナーワイヤ17aに作用する張力Fが略ゼロとなったことが検出されたときに張力センサS1におけるホールIC素子51からの出力電圧Vを基準値Voとして更新する図7のステップ206を有しているため、張力センサS1における主ばね53のへたりが発生した場合にも、主ばね53のへたりに応じて基準値Voが更新される。したがって、更新された基準値Voをゼロ点として設定値ΔVにて、すなわち、ホールIC素子51からの出力電圧VがVo+ΔVの目標出力電圧Vfとなった時点で、図6のステップ105,106に示したように、電気モータ11の正回転駆動を停止させることができて、張力センサS1における主ばね53のへたりに拘らず、ケーブルのインナーワイヤ17a,19aに所期の張力Fを付与し得て、パーキングブレーキ13,15を所期の制動状態とすることが可能である。
【0042】
上記実施形態においては、ステップ206の実行により基準値Voが常に更新されるように実施したが、先に記憶されている基準値Voより所定値以上に変化したときにのみ基準値Voが更新されるように実施することも可能である。
【0043】
また、上記実施形態においては、一方のケーブル17のインナーワイヤ17aとイコライザ機構Cの一方の出力部であるアーム部39aとの連結部位に介装されて一方のケーブル17におけるインナーワイヤ17aに作用する張力Fを検出する張力センサS1に本発明を実施したが、図8に示した実施形態のようにハウジング21とねじ軸31(この実施形態ではハウジング21に対して軸方向に移動可能に支持されている)の延長軸部31a間に介装されてねじ軸31に作用する軸力を検出する力センサS1に本発明を実施することも可能である。
【0044】
図8に示した実施形態の力センサS1は、第1部材としてのシャフト43と、第2部材としてのケース45を備えるとともに、マグネット49、ホールIC素子51、主ばね53および副ばね55を備えている。なお、マグネット49、ホールIC素子51、主ばね53および副ばね55等の構成は、副ばね55が引っ張りコイルスプリングであることを除いて、上記実施形態の構成と実質的に同じであるため、その説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明による電動パーキングブレーキ装置の一実施形態を示す一部破断平面図である。
【図2】図1に示した電気モータ、張力センサおよび電気制御装置と図1に示されていない制動スイッチ、解除スイッチ、インジケータランプおよび異常警告ランプとの関係を示すブロック図である。
【図3】図1に示した張力センサの拡大図である。
【図4】図3に示した張力センサのシャフト、ケース、マグネット、ホールIC素子、トーションスプリング等の関係を示す縦断側面図である。
【図5】図1に示した張力センサの引張り量とホールIC素子の出力電圧Vの関係を示す線図である。
【図6】図1に示した電気制御装置が有するマイクロコンピュータのCPUが制動スイッチの操作に応答して実行する制御プログラムに対応するフローチャートである。
【図7】図1に示した電気制御装置が有するマイクロコンピュータのCPUが解除スイッチの操作に応答して実行する制御プログラムに対応するフローチャートである。
【図8】本発明による電動パーキングブレーキ装置の他の実施形態を示す一部破断平面図である。
【符号の説明】
【0046】
11…電気モータ、13,15…パーキングブレーキ、17,19…ケーブル、17a,19a…インナーワイヤ、21…ハウジング、23…ケーシング、31…ねじ軸、33…ナット、43…シャフト、45…ケース、45a…ガイド突起、47…ロッド、49…マグネット、51…ホールIC素子、53…主ばね、55…副ばね、57…トーションスプリング、X…クリアランス、ECU…電気制御装置、A…減速機構、B…変換機構、C…イコライザ機構、S1…張力センサ、SW1…制動スイッチ、SW2…解除スイッチ、L1…インジケータランプ、L2…異常警告ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネットが固定された第1部材と、前記マグネットとの相対変位に応じて出力電圧が変化する電気素子が固定された第2部材と、前記第1部材と前記第2部材間に介装されて前記第1部材と前記第2部材間に作用する往復動方向の力に応じて弾性変形する主ばねを備えた力センサにおいて、前記主ばねの弾性変形量が略ゼロである状態で前記第2部材に対する前記第1部材の往復動方向にて前記第1部材と前記主ばねの一端部間および前記第2部材と前記主ばねの他端部間に隙間が生じないように予荷重を付与する副ばねを設けたことを特徴とする力センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の力センサにおいて、前記マグネットと前記電気素子の相対変位方向に対して略直交する方向での前記マグネットと前記電気素子間のクリアランスを略一定に保持するガイドおよび付勢部材を設けたことを特徴とする力センサ。
【請求項3】
電気モータの正回転駆動によりパーキングブレーキを制動状態とし、前記電気モータの逆回転駆動により前記パーキングブレーキを解除状態とするアクチュエータと、前記パーキングブレーキに作用する力を検出する力センサと、この力センサからの出力電圧に応じて前記電気モータの回転駆動を制御する電気制御装置とを備えている電動パーキングブレーキ装置において、前記力センサとして請求項1または2に記載の力センサを用いたことを特徴とする電動パーキングブレーキ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電動パーキングブレーキ装置において、前記電気制御装置は、前記力センサによって前記パーキングブレーキに作用する力が略ゼロとなったことが検出されたときに前記力センサからの出力電圧を基準値として更新する基準値更新手段を備えることを特徴とする電動パーキングブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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