説明

力率改善装置

【課題】連続的に力率制御を行い、力率を理想状態の1に近づけ、且つ進み力率も調整可能な力率改善装置を提供するにある。
【解決手段】回転界磁型同期機12と、この同期機12の回転界磁に対して直流電力を供給することで同期機12の力率を設定力率に自動的に保つ制御を行うAPFR装置13と、同期機12およびAPFR装置13を需要家負荷1に入り切りする遮断器14とを有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力率改善装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、需要家における負荷力率改善装置においては、直列リアクトルを有する進相コンデンサが使用されている。このような力率改善装置としては、直列リアクトルとコンデンサを1セットとし最大容量分だけセットを準備し、負荷力率に応じて開閉器で並列接続する自動制御装置を備えた進相コンデンサ設備というものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、この負荷力率改善に使用する例えば、高圧のコンデンサは、JIS C 4902(1998)高圧および特別高圧進相コンデンサおよび付属機器として日本工業規格に定められ公知されている。同様に、低圧のコンデンサは、JIS C 4901(2000)低圧進相コンデンサとして日本工業規格に定められ知られている。
【0004】
一方、需要家における負荷力率改善装置として、回転界磁型同期機を負荷と並列に接続して調相機として利用するロータリーコンデンサ方式および、ロータリーコンデンサとスタティックコンデンサとを組み合わせた方式もある。
【0005】
ロータリーコンデンサおよびロータリーコンデンサとスタティックコンデンサとを組み合わせた力率改善装置は、高調波を出さない、力率を連続的に可変制御できる、そして遅れ力率から進み力率まで補償できるといった特性を有する。
【0006】
従来ロータリーコンデンサは、電力供給側の系統電圧調整設備として利用されている。また水力発電機をロータリーコンデンサと同じ調相運転として利用している(例えば特許文献2参照)。
【0007】
他方、主系統への落雷等の外乱により瞬低(瞬間的に電圧が低下)または瞬断(瞬間的な停電)が発生することがあり、電力・電子機器への悪影響が懸念されている。なお、瞬低において電圧の低下が著しい場合が瞬断に当たると考え、以降に述べる瞬低に関しては瞬断を含むものとする。
【0008】
また、瞬低対策の一環として瞬低発生を検出するための瞬低検出装置がすでに市販されている。瞬低検出装置は予め設定した電力の低下量、瞬低時間を越える瞬低が発生した場合に高速で検出し、警報等の信号を出力するもので、事故の波及防止や瞬低復帰時の電源順次投入シーケンス等に用いられている。
【特許文献1】特開平11−046445号公報
【特許文献2】特開平05−038054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した直列リアクトルとコンデンサを使用した進相コンデンサ設備においては、設備を段階的に切替えるため、連続的な力率調整ができなかった。
【0010】
切替え段階を細かくすると、切替え制御が複雑になると共に、切替えのための開閉器の寿命が短くなる一方、切替え段階を大まかにすると、力率を1に近づけることが出来ないという課題があった。
【0011】
また、進相コンデンサでは負荷側が遅れ力率の場合は調整できるが、進み力率の調整はできないことが課題であった。
【0012】
一方、力率を改善しようとする店舗、事務所および工場などは夜間と昼間で負荷が大きく変化し、夜間特に深夜から早朝は低負荷になっている。そして、上述したロータリーコンデンサにより力率調整を行う場合、ロータリーコンデンサは回転機であるため、低負荷時でも、同期機の運転ロスが発生し、有効電力を消費する。
【0013】
この場合力率改善による効果よりもロータリーコンデンサが運転していることの損失が大きいという問題があった。
【0014】
他方、上述した力率改善装置において落雷等により主系統において瞬低が発生した場合にその瞬低時間(数msecから数百msec)と瞬低発生時の需要家の負荷状況によっては電力復旧時に位相のずれが生じロータリーコンデンサが同期はずれを起こして設備に過電流が流れ設備の損傷に繋がる虞がある。
【0015】
例えば、瞬断発生により主系統の電圧が低下(0になる)すると、需要家電圧も低下し、接続されたロータリーコンデンサへの電力供給も絶たれることになる。しかし、ロータリーコンデンサはその慣性力により電力供給が絶たれた後も回転を続けるため、ロータリーコンデンサは発電機として作用し、系統に対して電力を供給することになる。
【0016】
また、ロータリーコンデンサは慣性力により回転しているため、その回転数は定格回転数に対して時間の経過と共に低下することになる。その結果、発生する電力は電圧・周波数も経過と共に低下し、位相のずれた定格外の電力となる。
【0017】
このとき、瞬低時間経過後に電力が復帰することになるが、ロータリーコンデンサにより発生される電力との間に位相のずれが生じ、ロータリーコンデンサが同期はずれを起こすことが考えられる。
【0018】
例えば、瞬断時間が短い場合(数msecから数十msec程度)には瞬断時間における電圧の低下、位相のずれがそれほど大きくならない。その結果、瞬低時間経過後電力が復帰するとロータリーコンデンサがAPFR装置により位相のずれを吸収し同期を回復することにより、電圧は定格電圧に戻る。また、電流についても復帰後に波形が乱れるが、こちらも徐々に安定していく。
【0019】
しかし、瞬断時間が長かった場合(数百msec程度)には瞬断時間の間に電圧が大きく低下すると共に、位相も大きくずれる。その結果、瞬断時間経過後復帰してもAPFR装置が追従できずに同期を取ることが出来なくなり、ロータリーコンデンサが同期はずれを生じ異常振動を発生する。電圧は徐々に定格電圧に戻るが、電流については安定することなく乱れ続けることになる。
【0020】
なお、同期はずれが発生するか否かについては瞬低時間、低下量および需要家の負荷状態、すなわちロータリーコンデンサの力率改善装置としての負荷状態により決定され、瞬低時間が長く、低下率が大きく、需要家の負荷が大きくロータリーコンデンサの負荷が大きい場合に同期はずれが起こりやすくなる。
【0021】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、連続的に力率制御を行い、力率を理想状態の1に近づけ、且つ進み力率も調整可能な力率改善装置を提供することを目的とする。
【0022】
本発明の他の目的は、低負荷時には同期機を自動的に停止し、負荷が増すと自動的に同期機の運転を行う制御方式を採用した力率改善装置を提供するにある。
【0023】
さらに、本発明の他の目的は、瞬低復帰後の同期機の同期はずれを防止し、過電流による設備の損傷を防止する力率改善装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明に係る力率改善装置は、上述した課題を解決するために、請求項1に記載したように、回転界磁型同期機と、この同期機の回転界磁に対して直流電力を供給することで上記同期機の力率を設定力率に自動的に保つ制御を行うAPFR装置と、上記同期機および上記APFR装置を需要家負荷に入り切りする遮断器とを有するものである。
【0025】
また、上述した課題を解決するために、請求項2に記載したように、上記APFR装置への供給電圧を受電電圧から逓減する励磁変圧器を有するものである。
【0026】
さらに、上述した課題を解決するために、請求項3に記載したように、直列リアクトルとコンデンサとを組み合わせた進相コンデンサと、この進相コンデンサを入り切りする開閉器と、この進相コンデンサ用開閉器を入り切りする制御信号を有するAPFR装置と、上記同期機、上記APFR装置および上記進相コンデンサを上記需要家負荷に入り切りする遮断器とを有するものである。
【0027】
そして、上述した課題を解決するために、請求項4に記載したように、上記同期機の回転軸に直結したフライホイールを有するものである。
【0028】
そしてまた、上述した課題を解決するために、請求項5に記載したように、上記同期機と上記フライホイールとの問に結合力を制御できる機能を持つクラッチ装置を有するものである。
【0029】
また、上述した課題を解決するために、請求項6に記載したように、被力率改善回路の電流検出手段と、この電流検出手段で上記回転界磁型同期機を自動起動停止する制御回路を有するものである。
【0030】
さらに、上述した課題を解決するために、請求項7に記載したように、上記流検出手段に限時特性をもたせたものである。
【0031】
そして、上述した課題を解決するために、請求項8に記載したように、上記電流検出手段にヒステリシス特性をもたせたものである。
【0032】
そしてまた、上述した課題を解決するために、請求項9に記載したように、運転時間帯を設定するプログラマブルタイマを備え、このプログラマブルタイマで上記回転界磁型同期機を自動起動停止する制御回路を有するものである。
【0033】
また、上述した課題を解決するために、請求項10に記載したように、瞬間的な電圧の低下発生時にこれを検出して上記回転界磁型同期機への電力供給を停止し、上記回転界磁型同期機を停止させるように構成したものである。
【0034】
さらに、上述した課題を解決するために、請求項11に記載したように、瞬間的な電圧の低下発生時にこれを検出して上記回転界磁型同期機の再起動を行うように構成したものである。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る力率改善装置によれば、受電端の電力を力率1の理想状態に制御することが可能となる。また、連続的な力率制御も可能となる。さらに、系統側に瞬時電圧低下が発生しても、負荷電圧の瞬時低下を防ぐことが可能となる。
【0036】
また、過大な起動電流および脱調による起動不可能な状態を回避することが出来る。さらに、電力の損失を防止でき、効率のよい力率改善を行う事ができる。さらにまた、検出電流付近での電流変化に対して、過度に同期機を入り切りすることが無く制御することができる。そして、瞬低後の電力復帰時の、同期機の同期はずれを未然に防止することができ、過電流による設備損傷の防止および同期機の異常振動を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0038】
図1は、本発明に係る力率改善装置の第一実施形態である基本系統図である。図1に示すように、内部に複数の負荷1(負荷〜負荷)を有する需要家2には外部の図示しない電源からの電力供給を受ける受電端3が設けられ、この受電端3から需要家2内に向かって主電力供給線4が延びる。主電力供給線4は途中に主遮断器4aが設けられ、この主遮断器4aの下流において主電力供給線4は複数の副電力供給線5に分岐して各負荷1に接続される。また、副電力供給線5の各負荷1上流側にはそれぞれ副遮断器5aが設けられる。そして、複数ある副電力供給線5のうちの一本は需要家2外に導かれ、力率改善装置11に接続される。
【0039】
力率改善装置11は、例えばロータリーコンデンサ(RC)等の回転界磁型同期機12(以下同期機と略す)と、この同期機12の回転界磁を、直流電力を付与し同期機12の力率を設定力率に自動的に保つ制御を行うAPFR(力率制御)装置13と、同期機12およびAPFR装置13を需要家負荷1に入り切りする遮断器14(電磁接触器)とから構成される。
【0040】
需要家2外に導かれた副電力供給線5は同期機12に接続されると共に、同期機12の上流側に遮断器14が設けられる。また、この遮断器14と同期機12との間にAPFR装置13が接続される。
【0041】
上記構成の力率改善装置11(第一実施形態)において、需要家2は負荷〜負荷迄の負荷1を使用しており、この結果負荷力率が理想の負荷力率より遅れている状態である場合、本発明による力率改善装置11の遮断器14を投入すると、同期機12は無負荷の同期電動機として起動し同期速度に達する。
【0042】
遮断器14の投入と同時にAPFR装置13は同期機12の界磁に対して直流の励磁を与える。このときの励磁量はAPFR装置13に設定された力率に対し実負荷の力率でフィードバック制御を行い設定力率となるよう制御される。
【0043】
このように、系統に無負荷状態の同期機12を接続して界磁電流を増減することにより、同期機12に流れる電流の力率を制御できる。すなわち需要家負荷1の力率が遅れ状態であれば同期機12に流れる電流を進み状態とすることで、受電端3の電力は力率1の理想状態に制御することが可能となる。
【0044】
また、負荷1が工場の電動機負荷のように作業により負荷状態が変わり、その結果として、受電端3の力率を変更してしまうような場合でも、本方式によればAPFR装置13のフィードバック制御がリアルタイムに追従し、段階制御では得ることができない連続的な力率制御が可能となる。
【0045】
さらに、工場における夜間状態のように大きな動力負荷が停止し、コンデンサを有する電子機器の負荷が主体となり、力率が進んで逆方向に力率低下した場合でも、励磁を調整することで同期機12を遅れ状態とし、受電端3の電力は力率1の理想状態に制御することが可能となる。
【0046】
図2は、本発明に係る力率改善装置の第二実施形態である系統図である。なお、第一実施形態に示す力率改善装置11と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0047】
第二実施形態では、力率改善装置21を高圧または特別高圧に接続した場合を示す。力率改善装置21は、例えばロータリーコンデンサ(RC)等の同期機12と、この同期機12の回転界磁を、直流電力を付与し同期機12の力率を設定力率に自動的に保つ制御を行うAPFR装置13と、同期機12およびAPFR装置13を需要家負荷1に入り切りする遮断器14(電磁接触器)と、高圧または特別高圧を所定の電圧に逓減する励磁用変圧器22とから構成されており、励磁用変圧器22は遮断器14と同期機12との間に接続されるAPFR装置13の上流側に設けられる。また、各負荷1上流側の副電力供給線5にも他の励磁用変圧器23が設けられる。但し、力率改善装置21に向かって分岐する副電力供給線5はこの他の励磁用変圧器23の上流側で分岐する。
【0048】
上記構成の力率改善装置21(第二実施形態)において、需要家2は負荷〜負荷迄の負荷1を使用しており、この結果負荷力率が理想の負荷力率より遅れている状態である場合、本発明による力率改善装置21の遮断器14を投入すると、同期機12は無負荷の同期電動機として起動し同期速度に達する。
【0049】
遮断器14の投入と同時にAPFR装置13は同期機12の界磁に対して直流の励磁を与える。このときの励磁量はAPFR装置13に設定された力率に対し実負荷の力率でフィードバック制御を行い設定力率となるよう制御される。さらに、励磁用変圧器22が高圧または特別高圧の電圧を励磁に必要な電圧に逓減する。
【0050】
このように、系統に無負荷状態の同期機12を接続して界磁電流を増減することにより、同期機12に流れる電流の力率を制御でき、この力率改善装置21も第一実施形態に示す力率改善装置11と同様の効果を得ることが出来る。
【0051】
図3は、本発明に係る力率改善装置の第三実施形態である系統図である。なお、第一実施形態に示す力率改善装置11と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0052】
第三実施形態では、力率改善装置31は、例えばロータリーコンデンサ(RC)等の同期機12と、この同期機12の回転界磁を、直流電力を付与し同期機12の力率を設定力率に自動的に保つ制御を行い、且つ直列リアクトルとコンデンサとを組み合わせた進相コンデンサ32を入り切りする開閉器33の制御信号を有するAPFR装置13と、同期機12およびAPFR装置13を需要家負荷1に入り切りする遮断器14(電磁接触器)とから構成される。なお、進相コンデンサ32の容量は同期機12の進相容量と同じとする。
【0053】
上記構成の力率改善装置31(第三実施形態)において、需要家2は負荷〜負荷迄の負荷1を使用しており、この結果負荷力率が理想の負荷力率より遅れている状態である場合、本発明による力率改善装置31の遮断器14を投入すると、同期機12は無負荷の同期電動機として起動し同期速度に達する。
【0054】
遮断器14の投入と同時にAPFR装置13は同期機12の界磁に対して直流の励磁を与える。このときの励磁量はAPFR装置13に設定された力率に対し実負荷の力率でフィードバック制御を行い設定力率となるよう制御される。さらに力率調整のため進相電力容量が不足する場合は進相コンデンサ32用開閉器33を投入し進相容量を増加する。そして、進相コンデンサ32投入後同期機12の電流が負荷1の変化により遅れ側になったら進相コンデンサ32用の開閉器33を開き同期機12のみで進相電力を供給する。
【0055】
このように、系統に無負荷状態の同期機12を接続して界磁電流を増減することにより、同期機12に流れる電流の力率を制御できる。すなわち、需要家負荷1の力率が遅れ状態であれば同期機12に流れる電流を進み状態とすることで、受電端3の電力は力率1の理想状態に制御することが可能となる。
【0056】
また、負荷1が工場の電動機負荷のように作業により負荷状態が変わり、その結果として、受電端3の力率を変更してしまうような場合でも、本方式によればAPFR装置13のフィードバック制御がリアルタイムに追従し、段階制御では得ることができない連続的な力率制御が可能となる。
【0057】
さらに、工場における夜間状態のように大きな動力負荷が停止し、コンデンサを有する電子機器の負荷が主体となり、力率が進んで逆方向に力率低下した場合でも、励磁を調整することで同期機12を遅れ状態とし、受電端3の電力は力率1の理想状態に制御することが可能となる。
【0058】
さらにまた、進相コンデンサ32とハイブリッド化使用することにより同期機12の設備容量を下げることができ、同期機12単独で設備する場合よりも設備費用で優れる。
【0059】
ところで、上述した第三実施形態では、進相コンデンサ32が1セットの場合を示したが、複数セット設備した場合、たとえばnセット設備すると、同期機12容量は全体必要容量の1/(n+1)となり、さらに設備費用面で有利となる。なお、進相コンデンサ32の設置数が増すと切替え制御が複雑・高頻度となるので5セット以下が望ましい。
【0060】
また、第三実施形態においても第二実施形態と同様に設備(高圧または特別高圧)することが可能であり、力率改善装置31の接続点電圧は低圧、高圧および特別高圧を問わない。
【0061】
図4は、本発明に係る力率改善装置の第四実施形態である系統図である。なお、第一実施形態に示す力率改善装置11と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0062】
第四実施形態では、力率改善装置41は、例えばロータリーコンデンサ(RC)等の同期機12と、この同期機12の回転界磁を、直流電力を付与し同期機12の力率を設定力率に自動的に保つ制御を行うAPFR装置13と、同期機12およびAPFR装置13を需要家負荷1に入り切りする遮断器14(電磁接触器)と、同期機12の回転軸42に取り付けたフライホイール43とから構成される。
【0063】
上記構成の力率改善装置41(第四実施形態)において、力率の調相に関する作用は、第一実施形態に示すものと同じである。ただし、同期機12の回転軸42に取り付けたフライホイール43も常時同期速度で回転している。
【0064】
そして、同期機12回転軸42上にフライホイール43を取り付けたことにより、負荷1側で急激に大きな負荷が投入された場合や、系統側に落雷等による瞬時電圧低下が発生した場合、フライホイール43の効果により負荷1側に瞬時電力を供給し、全体として負荷電圧の瞬時低下を防ぐことが可能となる。
【0065】
この瞬時電圧低下補償動作により、近年急増している負荷としての、電子機器のメモリー(図示せず)の喪失や動作停止等を防止できる。
【0066】
図5は、本発明に係る力率改善装置の第五実施形態である系統図である。なお、第四実施形態に示す力率改善装置41と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0067】
第五実施形態では、力率改善装置51は、第四実施形態に示す力率改善装置41の同期機12とフライホイール43の問に結合力を調整できる例えばパウダークラッチ等のクラッチ装置52を設けたものである。
【0068】
上記構成の力率改善装置51(第五実施形態)において、力率の調相に関する作用は、第一実施形態に示すものと同じである。また、遮断器14を投入して起動するとき、クラッチ装置52は解放状態とし、同期機12は無負荷で起動される。
【0069】
同期機12が同期速度に到達後、徐々にクラッチ装置52の結合力が増加され、同期機12が脱調しないようにフライホイール43を同期機12に結合される。そして、フライホイール43も同期速度に到達すると完全に結合状態とされる。
【0070】
上記構成の力率改善装置51(第五実施形態)において、力率の調相および瞬時電圧低下に関する作用は、第四実施形態に示すものと同じである。また、起動時にフライホイール43を除外し無負荷で起動することから、過大な起動電流および脱調による起動不可能な状態を回避することが出来る。
【0071】
図6(a)および(b)は、本発明に係る力率改善装置の第六実施形態である系統図および制御回路図である。なお、第一実施形態に示す力率改善装置11と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0072】
第六実施形態における力率改善装置61は、例えばロータリーコンデンサ(RC)等の同期機12と、この同期機12の回転界磁を、直流電力を付与し同期機12の力率を設定力率に自動的に保つ制御を行うAPFR装置13と、同期機12およびAPFR装置13を需要家負荷1に入り切りする遮断器14(電磁接触器)とから構成される。また、主電力供給線4の主遮断器4a下流とAPFR装置13との間には力率を改善するフィーダーの電流が設定値以上になったら動作する、被力率改善回路の電流検出手段である電流検出リレー62が設けられる。
【0073】
上記構成の力率改善装置61の制御方式(第六実施形態)において、力率改善装置の起動は、手動スイッチを入れて力率改善対象である負荷〜負荷迄の合計電流が電流検出リレー62の設定値以上になると、電流検出リレー62の接点62aが動作し、同期機12は回転を始める。
【0074】
また、夜間等負荷電流が低下し、電流検出リレー62が復帰すると、電流検出リレー62の接点62aは復帰し、同期機12は停止する。
【0075】
このように負荷電流を検出して、負荷電流が小さい時は同期機12を自動停止する制御方式を採用することにより、電力の損失を防止でき、効率のよい力率改善を行う事ができる。
【0076】
図7(a)および(b)は、本発明に係る力率改善装置の第七実施形態である系統図および制御回路図である。なお、第六実施形態に示す力率改善装置61と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0077】
第七実施形態における力率改善装置71は、例えばロータリーコンデンサ(RC)等の同期機12と、この同期機12の回転界磁を、直流電力を付与し同期機12の力率を設定力率に自動的に保つ制御を行うAPFR装置13と、同期機12およびAPFR装置13を需要家負荷1に入り切りする遮断器14(電磁接触器)とから構成される。また、主電力供給線4の主遮断器4a下流とAPFR装置13との間には力率を改善するフィーダーの電流が設定値以上になったら動作する電流検出リレー62が設けられると共に、手動の起動および停止スイッチの条件で動作する補助リレー72および限時動作リレー73と限時復帰動作リレー74とから遮断器14を操作する制御回路を構成する。
【0078】
上記構成の力率改善装置71の制御方式(第七実施形態)において、力率改善装置の起動は、手動スイッチを入れて力率改善対象である負荷〜負荷迄の合計電流が電流検出リレー62の設定値以上になると、電流検出リレー62の接点62aが動作し限時動作リレー73と限時復帰動作リレー74とを同時に励磁する。
【0079】
限時復帰リレーの接点62aは瞬時に動作するが、限時動作リレー73の接点と直列に接続されて遮断器14を駆動するので、同期機12は設定時間経過後回転を始める。
【0080】
また、夜間等負荷電流が低下し電流検出リレー62が復帰すると、限時復帰リレーにより、同期機12は設定時間経過後停止する。
【0081】
このように負荷電流を検出して、負荷電流が小さい時は同期機12を自動停止する制御方式を採用することにより、電力の損失を防止でき、効率のよい力率改善を行う事ができる。
【0082】
また、本実施例のように電流検出リレー62の動作および復帰に限時特性を与えることにより、検出電流付近での電流変化に対して、過度に同期機12を入り切りすることが無く制御することができる。
【0083】
図8(a)および(b)は、本発明に係る力率改善装置の第八実施形態である系統図および制御回路図である。なお、第六実施形態に示す力率改善装置61と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0084】
第八実施形態における力率改善装置81は、基本的に第六実施形態に示す力率改善装置61と同一の構成を有するが、第六実施形態の力率改善装置61が一つの電流検出リレー62を有することに対し、第八実施形態の力率改善装置81は設定値の異なる2つの電流検出リレー82,83を備える。また、上流側に配置される電流検出リレー82の設定値は下流側に配置される電流検出リレー83の設定値より大きく設定される。
【0085】
上記構成の力率改善装置81の制御方式(第八実施形態)において、力率改善装置81の起動は、手動スイッチを入れて力率改善対象である負荷〜負荷迄の合計電流が下流側電流検出リレー83の設定値以上になると、下流側電流検出リレー83の接点83aが動作する。このとき上流側電流検出リレー82の接点82aは既に動作しており、同期機12は回転を始める。
【0086】
また、夜間等負荷1電流が低下し下流側電流検出リレー83が復帰したとき、上流側電流検出リレー82の接点82aは既に復帰しており、同期機12は停止する。
【0087】
このように負荷電流を検出して、負荷電流が小さい時は同期機12を自動停止する制御方式を採用することにより、電力の損失を防止でき、効率のよい力率改善を行う事ができる。
【0088】
また、本実施例のように電流検出リレー82,83の動作および復帰にヒステリシス特性を与えることにより、検出電流付近での電流変化に対して、チャタリングにより過度に同期機12を入り切りすることが無く制御することができる。
【0089】
図9(a)および(b)は、本発明に係る力率改善装置の第九実施形態である系統図および制御回路図である。なお、第六実施形態に示す力率改善装置61と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0090】
第九実施形態における力率改善装置91は、基本的に第六実施形態に示す力率改善装置61と同一の構成を有するが、第六実施形態の力率改善装置61が電流検出リレー62を有することに対し、第九実施形態の力率改善装置91は、同期機12を運転する時間を設定するプログラマブルタイマ92を主回路に備える。
【0091】
このプログラマブルタイマ92は、デイリータイマまたはウイークリータイマと呼ばれている物で、負荷1の増減が時間によって決定されている工場設備などの時間にあわせて同期機12の運転時間帯が設定される。
【0092】
上記構成の力率改善装置91の制御方式(第九実施形態)において、力率改善装置の起動は、手動スイッチを入れて力率改善対象である負荷〜負荷の負荷1が増加する時間になると運転を開始し、負荷1が低下する夜間には同期機12の運転を停止する。
【0093】
このように負荷1が増える時間帯を設定して運転し、負荷1が小さい時間帯は同期機12を自動停止することにより、電力の損失を防止でき、効率のよい力率改善を行う事ができる。
【0094】
なお、上述した第六〜第八実施形態に適用した負荷電流検出方式の応用例として、本願発明は負荷電力検出方式とすることも可能であると共に、制御をデジタル化、ソフト化することも含まれる。また、第六〜第八実施形態に適用した負荷1の実電流検出方式と、第九実施形態に適用した運転時間帯を設定するタイマとを組み合わせることも本発明に含まれる。
【0095】
図10は、本発明に係る力率改善装置の第十実施形態である系統図である。なお、第一実施形態に示す力率改善装置11と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0096】
第十実施形態における力率改善装置101は、基本的に第一実施形態に示す力率改善装置11と同一の構成を有するが、同期機12の上流側に設置された力率改善装置用の開閉器33の上流側に瞬低(瞬間的な電圧の低下)検出装置102を設置し、この瞬低検出装置102が瞬低検出時に制御信号により力率改善装置用の開閉器33を開くように構成したものである。なお、瞬低検出装置102の設置位置については主系統における瞬低を検出可能な位置であれはよく、本実施例に限定するものではない。
【0097】
そして、第十実施形態における力率改善装置101は、受電端3の主系統側に瞬低が発生した場合、この瞬低を瞬低検出装置102が検出し、予め設定された瞬低時間や電圧の低下量等を超えた場合に制御信号により力率改善装置用開閉器33を速やかに開き、同期機12への電力供給を停止するように構成される。
【0098】
このように瞬低発生時に速やかに同期機12への電力供給を停止して同期機12を停止することで瞬低後の電力復帰時の、同期機12の同期はずれを未然に防止することにより、過電流による設備損傷の防止および同期機12の異常振動を防止することが可能となる。
【0099】
図11は、本発明に係る力率改善装置の第十一実施形態である系統図である。なお、第十実施形態に示す力率改善装置101と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0100】
第十一実施形態における力率改善装置111は、基本的に第十実施形態に示す力率改善装置101と同一の構成を有するが、同期機12の上流側に設置された力率改善装置用の開閉器33の上流側に設置された瞬低検出装置102が、瞬低検出時に制御信号によりAPFR装置13に対して再起動命令を出し、APFR装置13により同期機12の再起動を行うように構成したものである。なお、瞬低検出装置102の設置位置については主系統における瞬低を検出可能な位置であれはよく、本実施例に限定するものではない。
【0101】
そして、第十一実施形態における力率改善装置111は、受電端3の主系統側に瞬低が発正した場合、この瞬低を瞬低検出装置102が検出し、予め設定された瞬低時間や電圧の低下量等を超えた場合に制御信号によりAPFR装置13は同期機12の再起動を行う。このとき、瞬低検出装置102からの再起動命令を受けたAPFR装置13は同期機12の界磁に対しての励磁を停止する。
【0102】
瞬低時問後に電力が復帰することにより同期機12は始動時と同様に無負荷の誘導電動機として起動し同期速度・定格回転数に達した後同期機12の界磁に対して直流の励磁を与えることにより同期機12が復旧する。
【0103】
このように瞬低発生時に速やかにAPFR装置13が同期機12に対して再起動を行うことにより、瞬低復帰時に位相のずれが生じている状況においては、励磁を切ることで同期機12を誘導電動機として位相のずれの影響を受けることなく起動し、同期速度に達することが可能となる。そして、同期速度に達したのち励磁を与えることにより、始動時と同様に同期機12を復旧することができる。
【0104】
以上により瞬低復旧時においても始動時と同様に同期はずれを起こすことなく同期機12を復旧することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明に係る力率改善装置の第一実施形態を示す基本系統図。
【図2】本発明に係る力率改善装置の第二実施形態を示す系統図。
【図3】本発明に係る力率改善装置の第三実施形態を示す系統図。
【図4】本発明に係る力率改善装置の第四実施形態を示す系統図。
【図5】本発明に係る力率改善装置の第五実施形態を示す系統図。
【図6】(a)および(b)は、それぞれ本発明に係る力率改善装置の第六実施形態を示す系統図および制御回路図。
【図7】(a)および(b)は、それぞれ本発明に係る力率改善装置の第七実施形態を示す系統図および制御回路図。
【図8】(a)および(b)は、それぞれ本発明に係る力率改善装置の第八実施形態を示す系統図および制御回路図。
【図9】(a)および(b)は、それぞれ本発明に係る力率改善装置の第九実施形態を示す系統図および制御回路図。
【図10】本発明に係る力率改善装置の第十実施形態を示す系統図。
【図11】本発明に係る力率改善装置の第十一実施形態を示す系統図。
【符号の説明】
【0106】
1 負荷
2 需要家
11,21,32,41,51,61,71,81,91,101,111 力率改善装置
12 回転界磁型同期機
13 APFR装置
14 遮断器
22 励磁変圧器
32 進相コンデンサ
33 開閉器
43 フライホイール
52 クラッチ装置
62,82,83 電流検出リレー(被力率改善回路の電流検出手段)
92 プログラマブルタイマ
102 瞬低検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転界磁型同期機と、この同期機の回転界磁に対して直流電力を供給することで上記同期機の力率を設定力率に自動的に保つ制御を行うAPFR装置と、上記同期機および上記APFR装置を需要家負荷に入り切りする遮断器とを有することを特徴とする力率改善装置。
【請求項2】
上記APFR装置への供給電圧を受電電圧から逓減する励磁変圧器を有する請求項1記載の力率改善装置。
【請求項3】
直列リアクトルとコンデンサとを組み合わせた進相コンデンサと、この進相コンデンサを入り切りする開閉器と、この進相コンデンサ用開閉器を入り切りする制御信号を有するAPFR装置と、上記同期機、上記APFR装置および上記進相コンデンサを上記需要家負荷に入り切りする遮断器とを有する請求項1または2記載の力率改善装置。
【請求項4】
上記同期機の回転軸に直結したフライホイールを有する請求項1、2または3記載の力率改善装置。
【請求項5】
上記同期機と上記フライホイールとの問に結合力を制御できる機能を持つクラッチ装置を有する請求項4記載の力率改善装置。
【請求項6】
被力率改善回路の電流検出手段と、この電流検出手段で上記回転界磁型同期機を自動起動停止する制御回路を有する請求項1〜5のいずれかに記載の力率改善装置。
【請求項7】
上記電流検出手段に限時特性をもたせた請求項6記載の力率改善装置。
【請求項8】
上記電流検出手段にヒステリシス特性をもたせた請求項6または7記載の力率改善装置。
【請求項9】
運転時間帯を設定するプログラマブルタイマを備え、このプログラマブルタイマで上記回転界磁型同期機を自動起動停止する制御回路を有する請求項8記載の力率改善装置。
【請求項10】
瞬間的な電圧の低下発生時にこれを検出して上記回転界磁型同期機への電力供給を停止し、上記回転界磁型同期機を停止させるように構成した請求項1〜9のいずれかに記載の力率改善装置。
【請求項11】
瞬間的な電圧の低下発生時にこれを検出して上記回転界磁型同期機の再起動を行うように構成した1〜9のいずれかに記載の力率改善装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−219256(P2009−219256A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60579(P2008−60579)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(390014568)東芝プラントシステム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】