説明

加入者側終端装置

【課題】安価で簡易な構成で光ファイバの伝送距離を伸長できるファブリーペロー型レーザダイオードを用いた加入者側終端装置を得る。
【解決手段】発光波長が1.31μm帯であるファブリーペロー型レーザダイオードであるレーザダイオード6を有する一芯双方向光モジュール5を加熱する加熱部15を有し、温度センサ11が一芯双方向光モジュール5の周囲温度を検出し、温度補償回路12が温度センサ11の検出温度に基づいて加熱部15を制御し、一芯双方向光モジュール5の周囲温度を設定温度以上に保つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、FTTB(Fiber to The Building)等の光加入者システムもしくはFTTH(Fiber To The Home)等の受動型光加入者システム(PON システム:Passive Optical Network System)を構築するための通信事業者や自営ネットワークに適用する光加入者アクセスネットワークを構成する加入者側終端装置(ONU:Optical Network Unit)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、上位である基幹系ネットワークと通信可能な集約局側である局側終端装置(OLT:Optical Line Terminal)と加入者側終端装置の間は、光加入者システムでは1対1の関係で接続され、受動型光加入者システムでは光ファイバと光分岐装置を用いて1対複数の関係で接続されている。加入者側終端装置から局側終端装置への通信経路である上り通信と、局側終端装置から加入者側終端装置への通信経路である下り通信は、上り通信の波長と下り通信の波長を変えて、一芯の光ファイバ内を波長多重する方式を用いている。この一芯双方向光通信において、上り通信は1.31μm帯の発光波長のレーザダイオード、下り通信は1.49μm帯、1.55μm帯もしくは1.65μm帯のレーザダイオードを用いている。局側終端装置と加入者側終端装置との通信には通常石英製の光ファイバが用いられており、この石英製光ファイバは1.31μm前後にて波長分散量がゼロになるシングルモード光ファイバ(SMF)である。
【0003】
近年では主信号データの伝送速度が100Mbps程度から1000Mbps程度まで上昇し、今後もデータ伝送速度が上昇すると予測されるため、更なる伝送品質の確保が要求される。伝送品質の劣化量は伝送距離すなわち光ファイバの長さ、光ファイバの波長分散量、レーザダイオードのスペクトラム線幅及び主信号データの伝送速度より決定され、波長分散量と密接な関係がある。
【0004】
低価格化の要求の強い加入者側終端装置では、安価であるファブリーペロー型レーザダイオード(FP−LD: Fabry-Perot Laser Diode、多モード発振)が用いられている。ファブリーペロー型レーザダイオードは安価であるが伝送特性が良くなく周囲の温度変動に対して発光中心波長の変動が大きい。レーザダイオードの温度変動に対する発光中心波長の変動を抑えるために、レーザダイオードの周囲にペルチェ素子とサーミスタを設け、ペルチェ素子に電流を流して冷却もしくは加熱する温度補償回路を用いてレーザダイオードの周囲温度を制御する方法が知られている。しかし、ペルチェ素子は高価であり、さらに冷却及び加熱機能を有する温度補償回路が必要であるため、ペルチェ素子を用いた加入者側終端装置は一般的ではない。
【0005】
また、局側終端装置で使うレーザダイオードは発光波長が1.49μm帯、1.55μm帯もしくは1.65μm帯と、光ファイバの波長分散が大きい波長帯で用いられている。そのため、伝送特性が良く周囲の温度変動に対して発光中心波長の変動の少ない分布帰還型レーザダイオード(DFB−LD: Distributed Feedback Laser Diode、単一モード発振)を用いられることも多いが、ファブリーペロー型レーザダイオードよりも高価である。
【0006】
これらの対策として特許文献1は、加入者側終端装置の上り信号と局側終端装置の下り信号の双方を発光波長が1.31μm帯のファブリーペロー型レーザダイオードを用い、下り信号の伝送速度を上り信号より高速に設定し、且つ、下り信号を低周波領域に空きスペクトルがあるような符号化形式で符号化する光送受信器を開示している。このように、特許文献1の光送受信器は周波数スペクトラムを上りと下りで変える符号化方法を採用することにより、上りと下りとで略対称な情報伝送量が発生する場合においても略同じ波長を使用しつつ高速伝送サービスを可能にしている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−198487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された技術では、加入者側終端装置がファブリーペロー型レーザダイオードを用いて構成されているので、局側終端装置と加入者側終端装置との伝送品質劣化量を一定の水準に保つために、伝送距離である光ファイバの長さ、もしくは光ファイバの波長分散量を制限しなければならず、伝送距離を伸ばす際には、波長分散量の少ない領域で発光するファブリーペロー型レーザダイオードを選別する必要がある。しかし、発光中心波長の製造誤差の大きいファブリーペロー型レーザダイオードの選別を行うと、歩留まりが悪い製造ロットではコストが高くなるという課題があった。また、伝送距離を更に延長化する場合には伝送特性は良いが高価である分布帰還型レーザダイオードを用いなければならない等の課題があった。
【0009】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、発光波長が1.31μm帯であるファブリーペロー型レーザダイオードを用いた加入者側終端装置においても、安価で簡易な回路で伝送距離を延長することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る加入者側終端装置は、局装置と加入者装置の間で光信号及び電気信号を送受信する加入者側終端装置において、前記局装置側の局側インタフェース部と、前記加入者装置側の加入者側インタフェース部と、前記局側インタフェース部から入力される光信号を受信して電気信号に変換する光/電気変換部と、前記加入者側インタフェース部から入力される電気信号を受信して光信号に変換する電気/光変換部とを有する双方向光モジュールと、前記双方向光モジュールを加熱する加熱部と、前記双方向光モジュールの温度を検出する温度センサと、前記温度センサの出力に基づき、前記加熱部を制御する温度補償手段とを備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、加入者側終端装置に双方向光モジュールの加熱を行う加熱部と、加熱部を制御する温度補償手段を設けるように構成したので、双方向光モジュールの温度を設定温度以上に保つことが可能となり、安価で簡易な構成で伝送距離の伸長が可能な加入者側終端装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る加入者側終端装置の構成を示すブロック図である。
実施の形態1に係る加入者側終端装置1は、レベル変換部2、フレーム制御部3、LDドライバ部4、一芯双方向光モジュール(双方向光モジュール)5、リミッテング部10、温度センサ11、温度補償回路(温度補償手段)12及び加熱部15から構成されている。また、一芯双方向光モジュール5は、レーザダイオード(電気/光変換部)6、波長合分波部7、フォトディテクタ(光/電気変換部)8及びトランスインピーダンスアンプ9を構成し、局側光ファイバとのインタフェースを有している。また、温度補償回路12は、温度設定回路13と温度制御回路14から構成されている。加入者側終端装置1には、局側へ出力されるLAN主信号と加入者側に出力されるLAN主信号が導通する加入者側LANケーブル16と、局側へ出力される光主信号と加入者側に出力される光主信号が導通するが導通する局側光ファイバ17が接続されている。
【0013】
主信号の通信方向は、加入者側LANケーブル16から加入者側終端装置1を経由した後、局側光ファイバ17へ送信される方向を上りと定義し、局側光ファイバ17から加入者側終端装置1を経由した後、加入者側LANケーブル16へ送信される方向を下りと定義する。また、主信号とは伝送システムの主通信で送受信される信号である。
【0014】
レベル変換部2は、入力される信号の電気レベルの変換を行う。加入者側LANケーブル16から入力される上りLAN主信号を上り電気主信号に変換してフレーム制御部3に出力すると共に、フレーム制御部3から入力される下り電気主信号を下りLAN主信号に変換して加入者側LANケーブル16に出力する。フレーム制御部3は、レベル変換部2から入力される上り電気主信号の出力タイミングを制御してLDドライバ部4へ出力すると共に、リミッテング部10から入力される下り電気主信号の波長を制御するフィルタリング処理を行いレベル変換部2に出力する。LDドライバ部4は、レーザダイオード6を駆動する駆動手段であり、フレーム制御部3から入力される上り電気主信号を、レーザダイオード6の駆動信号である上り電流主信号に変換してレーザダイオード6に供給する。
【0015】
レーザダイオード6は、発光波長が1.31μm帯であるファブリーペロー型レーザダイオードであり、LDドライバ部4からの駆動信号である上り電流主信号を受けて駆動し、レーザ信号光である上り光主信号を出射する。レーザダイオード6に用いたファブリーペロー型レーザダイオードは、高い反射率を持つ鏡が対向して設けられ、鏡表面に垂直に当たる特定の周波数の光のみが連続反射で強められ、発振モードを形成するまで増幅される。これに対して、ファブリーペロー型レーザダイオードと同様に半導体レーザとして知られる分布帰還型レーザダイオードは、屈折率が周期的に変化する回折格子を共振器内部に有し、特定の波長の光だけに帰還がかかるようにすることにより、波長選択性を備える。回折格子の周期を調整することにより発振波長の調整が可能であるという利点を有するが、ファブリーペロー型レーザダイオードよりも高価であるという欠点がある。
【0016】
波長合分波部7は、波長多重分離機能を有し、レーザダイオード6から入力される上り光主信号を、局側装置から送信される下り光主信号と合波して局側光ファイバ17に出力すると共に、局側光ファイバ17より入力された下り光主信号を分波してフォトディテクタ8へ出力する。フォトディテクタ8は、波長合分波部7より入力された下り光主信号を下り電流主信号に変換し、トランスインピーダンスアンプ9は、フォトディテクタ8から入力された下り電流主信号を電気主信号へ変換し、リミッテング部10へ出力する。リミッテング部10は、2R再生機能を有し、トランスインピーダンスアンプ9から入力された電気主信号を特定の識別閾値で波形整形(Reshaping)及び識別再生(Regeneration)し、フレーム制御部3へ出力する。
【0017】
温度センサ11は、周囲の温度変化に対応して異なる値を出力するセンサであり、例えば温度によって抵抗値が変化する素子であるチップサーミスタ等が挙げられる。また、温度センサ11は検出した温度情報を温度補償回路12に出力する。温度補償回路12は、観測部分の目標温度を設定温度として記憶する温度設定回路13と、温度センサ11から入力された温度情報が温度設定回路13の設定温度より高いか否か判定し、温度情報が設定温度を下回った場合には加熱部15に加熱信号を送る温度制御回路14とから構成されている。温度制御回路14は、例えば温度情報が設定温度を下回ったと判定されると加熱部15への出力電力を制御するトランジスタ等の回路で構成されている。
【0018】
加熱部15は、温度補償回路12の温度制御回路14から入力された加熱信号に応じて発熱する素子を有しており、例えば巻き線抵抗体などの発熱体で構成されている。温度センサ11、温度補償回路12及び加熱部15による温度補償動作(ATC:Auto Temperature Control)により、一芯双方向光モジュール5内のレーザダイオード6の温度を常に設定温度以上に保つことができる。
【0019】
一般的にレーザダイオードの発光中心波長は温度上昇に伴い長波長側にシフトする性質をもっている。ファブリーペロー型レーザダイオードの発光中心波長の温度による波長シフト量は0.5nm/℃、分布帰還型レーザダイオードの発光中心波長のシフト量は0.1nm/℃と言われている。このようにファブリーペロー型レーザダイオードの発光中心波長の温度による波長シフト量は分布帰還型レーザダイオードに比べて5倍程度大きい。また、ファブリーペロー型レーザダイオードの発光中心波長の製造誤差は、分布帰還型レーザダイオードよりも大きいことが知られている。
【0020】
例えば、発光波長が1.31μm帯のファブリーペロー型レーザダイオードの温度変化による波長変動幅と製造誤差を合わせると、発光中心波長の分布は1.26μm〜1.36μmと0.1μmの幅があるのに対して、発光波長が1.31μm帯の分布帰還型レーザダイオードの発光中心波長の分布は1.29μm〜1.33μmと0.04μmの幅であり、ファブリーペロー型レーザダイオードの発光中心波長の分布は分布帰還型レーザダイオードの中心波長の分布に比べて非常に大きい。
【0021】
光加入者アクセスネットワークの標準規格であるIEEE802.3ah 1000BASE−PX10−U(加入者側終端装置、伝送距離10km、伝送速度1.25Gbps、シングルモード光ファイバ)において、伝送品質劣化量(Transmitter and dispersion penalty)の規定値は最大2.8dBと規定されている。この伝送品質劣化量は値が小さいほど伝送後の伝送品質が劣化していないことを示す。
【0022】
レーザダイオード6にファブリーペロー型レーザダイオードを用いているこの実施の形態1では、RMS(root mean square 自乗平均平方根)スペクトラム線幅を3.0nmと仮定すると、上述の伝送品質劣化量の規定値である2.8dBを満足する許容発光中心波長は1.28μm〜1.35μmである。レーザダイオード6の動作環境温度が最低温度になる場合に、レーザダイオード6の発光中心波長が最短波となるので、例えば、加入者側終端装置1の動作環境温度の下限を0℃と仮定すると、発光中心波長が1.28μmとなるレーザダイオード6を実装した加入者側終端装置1では最大伝送距離は10kmとなる。
【0023】
しかし、この実施の形態1では、温度センサ11、温度補償回路12及び加熱部15を設けているため一芯双方向光モジュール5の周囲温度を設定温度以上に保つことができる。また、一芯双方向光モジュール5の内部にあるレーザダイオード6の温度も設定温度以上に保つことができる。例えば、レーザダイオード6の温度を20℃以上に保つことができる場合には、レーザダイオード6の発光中心波長は長波長側にシフトし、1.29μm(1.28μm+0.5nm/℃×(20℃−0℃))となる。また、最大伝送距離も動作環境温度の下限を0℃と仮定した場合の最大伝送距離の10km以上とすることができる。
【0024】
このように、温度センサ11、温度補償回路12及び加熱部15を設け、一芯双方向光モジュール5内部のレーザダイオード6を設定温度以上に保つことにより、発光中心波長を長波長側にシフトさせ、光ファイバの波長分散がゼロになる1.31μmに近い発光中心波長を得ることができる。そのため、光ファイバの波長分散量が抑制され、伝送品質劣化の抑制が可能となり、最大伝送距離を伸長することができる。
【0025】
以上のように、実施の形態1によれば、抵抗体等の発熱体で構成される加熱部と、加熱部の加熱のみを制御する温度補償回路を設けるように構成したので、一芯双方向光モジュールの周辺温度を設定温度以上に保つことができ、一芯双方向光モジュール内のレーザダイオードも設定温度以上に保つことができる。また、安価で容易な構成で光ファイバの波長分散量を抑制し、加入者側終端装置の伝送距離の伸長を実現することができる。
【0026】
実施の形態2.
図2は、この発明の実施の形態2に係る加入者側終端装置の構成を示すブロック図である。
この加入者側終端装置は、図1に示した実施の形態1に係る加入者側終端装置の温度センサ及び加熱部を一芯双方向光モジュールの内部に組み込んで構成している。以下では、実施の形態1に係る加入者側終端装置の構成要素と同一または相当する部分には、実施の形態1で使用した符号と同一の符号を付して説明を省略または簡略化する。
【0027】
実施の形態2に係る加入者側終端装置1は、一芯双方向光モジュール5内部に温度センサ11及び加熱部15を設けている。そのため、温度センサ11及び加熱部15をレーザダイオード6の近傍に設けることができ、温度センサ11の観測点がレーザダイオード6に近づき、より正確なレーザダイオード6の温度を測定することができる。また、温度センサ11により測定された温度が、温度補償回路12の設定温度よりも低く加熱部15による加熱を必要とする場合にも、熱効率よくレーザダイオード6の温度を上昇させることができる。
【0028】
以上のように、実施の形態2によれば、温度センサ及び加熱部を一芯双方向光モジュールの内部に組み込んで構成したので、レーザダイオードの正確な温度を測定することができ、さらにレーザダイオードの温度を熱効率よく上昇させることができる。
【0029】
実施の形態3.
図3は、この発明の実施の形態3に係る加入者側終端装置の構成を示すブロック図である。
この加入者側終端装置は、図1に示した実施の形態1に係る加入者側終端装置の温度センサ、温度補償回路及び加熱部を設けずに構成している。以下では、実施の形態1に係る加入者側終端装置の構成要素と同一または相当する部分には、実施の形態1で使用した符号と同一の符号を付して説明を省略または簡略化する。
【0030】
実施の形態3に係る加入者側終端装置1は、レベル変換部2、フレーム制御部3、一芯双方向光モジュール5、リミッテング部10から構成されている。また、一芯双方向光モジュール5は、LDドライバ部4、レーザダイオード6、波長合分波部7、フォトディテクタ8及びトランスインピーダンスアンプ9が同一パッケージ内に構成されている。さらに、加入者側終端装置1には、局側へ出力されるLAN主信号と加入者側に出力されるLAN主信号が導通する加入者側LANケーブル16と、局側へ出力される光主信号と加入者側に出力される光主信号が導通する局側光ファイバ17が接続されている。
【0031】
レベル変換部2には、加入者側LANケーブル16から入力される上りLAN主信号を電気主信号に変換してフレーム制御部3に出力する。フレーム制御部3は、レベル変換部2から入力される上り電気主信号の出力タイミングを制御してLDドライバ部4へ出力する。LDドライバ部4は、レーザダイオード6を駆動する駆動手段であり、フレーム制御部3から入力される上り電気主信号を、レーザダイオード6の駆動信号である上り電流主信号に変換してレーザダイオード6に供給する。レーザダイオード6は、発光波長が1.31μm帯であるファブリーペロー型レーザダイオードであり、LDドライバ部4からの駆動信号である上り電流主信号を受けて駆動し、レーザ信号光である上り光主信号を出射する。波長合分波部7は、波長多重分離機能を有し、レーザダイオード6から入力される上り光主信号を、局側装置から送信される下り光主信号と合波して局側光ファイバ17に出力する。
【0032】
一般的にLDドライバは発熱体であり、LDドライバ部4を一芯双方向光モジュール5内に設ける構成とすると、LDドライバ部4の自己発熱により、一芯双方向光モジュール5内の温度を上昇させることができ、一芯双方向光モジュール5内に実装されているレーザダイオード6の温度も上昇させることができる。さらに、ケーシングを設けて一芯双方向光モジュール5を密閉したり、あるいはLDドライバ部4をレーザダイオード6の近傍に設けることにより、LDドライバ部4から発生した熱を効率よく利用することができる。このようにレーザダイオード6の温度を上昇させることにより、上述した実施の形態1と同様に、レーザダイオード6の発光中心波長を長波長側にシフトさせ、光ファイバの波長分散がゼロになる1.31μmに近い発光中心波長を得ることができる。そのため、光ファイバの波長分散量が抑制され、伝送品質劣化の抑制が可能となり、最大伝送距離を伸長することができる。
【0033】
以上のように、この実施の形態3によれば、LDドライバ部を一芯双方向光モジュールの内部に設けるように構成したので、一芯双方向光モジュールの周辺温度が低い場合でも、LDドライバ部の自己発熱により一芯双方向光モジュールの内部に構成されたレーザダイオードの温度を周囲温度よりも高い状態を保つことができる。また、温度センサ、温度補償回路及び加熱部を設けることなくレーザダイオードの温度を維持することができ、部品点数が削減され、安価に加入者側終端装置を構成することができる。
【0034】
また、この実施の形態3によれば、一芯双方向光モジュールを密閉するケーシングを設けたり、あるいはLDドライバ部をレーザダイオードの近傍に設けるように構成したので、LDドライバ部から発生した熱を効率よく利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の実施の形態1に係る加入者側終端装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態2に係る加入者側終端装置の構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態3に係る加入者側終端装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0036】
1 加入者側終端装置、2 レベル変換部、3 フレーム制御部、4 LDドライバ部、5 一芯双方向光モジュール、6 レーザダイオード、7 波長合分波部、8 フォトディテクタ、9 トランスインピーダンスアンプ、10 リミッテング部、11 温度センサ、12 温度補償回路、13 温度設定回路、14 温度制御回路、15 加熱部、16 加入者側LANケーブル、17 局側光ファイバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局装置と加入者装置の間で光信号及び電気信号を送受信する加入者側終端装置において、
前記局装置側の局側インタフェース部と、
前記加入者装置側の加入者側インタフェース部と、
前記局側インタフェース部から入力される光信号を受信して電気信号に変換する光/電気変換部と、前記加入者側インタフェース部から入力される電気信号を受信して光信号に変換する電気/光変換部とを有する双方向光モジュールと、
前記双方向光モジュールを加熱する加熱部と、
前記双方向光モジュールの温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの出力に基づき、前記加熱部を制御する温度補償手段とを備えたことを特徴とする加入者側終端装置。
【請求項2】
加熱部及び温度センサが、双方向光モジュール内に実装されていることを特徴とする請求項1記載の加入者側終端装置。
【請求項3】
局装置と加入者装置の間で光信号及び電気信号を送受信する加入者側終端装置において、
前記局装置側の局側インタフェース部と、
前記加入者側終端装置側の加入者側インタフェース部と、
前記局側インタフェース部から入力される光信号を受信して電気信号に変換する光/電気変換部と、前記加入者側インタフェース部から入力される電気信号を受信して光信号に変換する電気/光変換部と、前記電気/光変換部を駆動させるLDドライバ部とを有する双方向光モジュールとを備え、
前記LDドライバ回路は、自己発熱により前記双方向光モジュール内温度を維持することを特徴とする加入者側終端装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−263300(P2008−263300A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103056(P2007−103056)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】