説明

加圧ローラ

【課題】 発泡シリコーンゴムで成型された加圧ローラ機能を安定させる。
【解決手段】 加圧ローラ17は、8枚の羽板15が設けられた軸体14の周囲に発泡シリコーンゴム8が成型されてなる。羽板15を有する軸体14と発泡シリコーンゴム8との接着面積18は、軸体14の外周面積と、羽板15の高さ16と羽板の枚数で求まる面積とを足し合わせた面積となる。このように軸体14の外周に羽板15の面積が加わることで、発泡シリコーンゴム8と軸体14との接着面積18を拡大できるため、その接着強度が向上する。このため加圧ローラ17が所定の負荷を受けた状態で回転すると、羽板15には回転方向と同じ方向に発泡シリコーンゴム8を押す力が発生する。このため発泡シリコーンゴム8と軸体14との境界付近におけるせん断力が緩和され、発泡シリコーンゴムのセルが切断してしまうことを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置の加熱定着装置における発泡シリコーンゴムを使用した加圧ローラに用いて好適な加圧ローラの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機、プリンタ等の多くの画像形成装置の加熱定着装置には、発泡シリコーンゴム(シリコーン発泡体)等の弾性体で成型された加圧ローラが使用されている(例えば、特許文献1〜8参照)。
図8は上記従来の加熱定着装置を搭載した画像形成装置の概略的な構成図である。
図8において、給紙部から給紙された転写紙は中間ローラ部で搬送され、転写部において、画像信号に応じて光学部により静電潜像され現像部で現像されたトナー画像を転写され、定着部で加熱定着された後、排紙部から排紙される。
【0003】
図9は上記定着部で用いられる発泡シリコーンゴムで成型した加圧ローラを用いた従来の加熱定着装置の概略構成図である。
図9において、第1の加圧ローラ1と第2の加圧ローラ2とが所定のニップ幅を以って圧接している。加圧ローラ1は第1のヒータ3を有する駆動ローラ4により定着ベルト5を介して回転される。加圧ローラ2は第2のヒータ6を有する。加圧ローラ1は、図10に示すように、大径部と小径部を有する金属性の軸体7の周囲に発泡シリコーンゴム8で成型してなるものである。
【特許文献1】特開平6−348163号公報
【特許文献2】特開平8−22214号公報
【特許文献3】特開2001−65544号公報
【特許文献4】特開2001−345169号公報
【特許文献5】特開2002−148988号公報
【特許文献6】特開2002−258653号公報
【特許文献7】特開2002−116644号公報
【特許文献8】特開2003−337488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記図9、図10に示す従来の発泡シリコーンゴム8で成型してなる加圧ローラ1は次のような問題があった。
図11において、加圧ローラ1は加圧ローラ2と所定のニップ幅9を以って圧接している。ここで、加圧ローラ1が所定の加圧力を受けて回転しようとすると、軸体7の回転方向10と発泡シリコーンゴム8と金属軸の境界付近は同じ方向11に回転する。しかし、ニップ幅9を形成するために加圧ローラ2により加圧されているため、回転時には加圧ローラ1を止める方向12の力が生じる。このため、発泡シリコーンゴム8と金属製の軸体7との境界付近13にせん断力が作用し、このせん断力により発泡シリコーンゴム8内のセル(発泡部分)が切断され、発泡シリコーンゴム8が軸体7と分離して、ローラを回転させることができなくなってしまうという問題があった。
従って、本発明は上記せん断力を軽減し、安定した機能が得られる加圧ローラの構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明による加圧ローラは、軸体の外周に弾性体を成型してなる加圧ローラにおいて、前記軸体の周面に、軸方向に伸びる剛性を持つ複数の羽板を前記周面の円周方向に配置したことを特徴とするものである。
請求項2の発明による加圧ローラは、請求項1において、前記羽板の先端部に突出部を設けたものである。
【0006】
請求項3の発明による加圧ローラは、請求項2において、前記突出部は前記羽板を中心に対して対称又は非対称な断面略T字形状をなすことを特徴とするものである。
請求項4の発明による加圧ローラは、請求項2において、前記突出部は前記羽板に対して断面略L字形状をなすことを特徴とするものである。
【0007】
請求項5の発明による加圧ローラは、請求項2から4のいずれかにおいて、前記突出部の上面が任意の曲率を有する曲面に形成されていることを特徴とするものである。
請求項6の発明による加圧ローラは、請求項1から5のいずれかにおいて、前記弾性体は発泡シリコーンゴムであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、加圧ローラが所定の負荷を受けて回転しても、発泡シリコーンゴムと軸の境界のせん断力を緩和できるので、発泡シリコーンゴムと軸の接着面境界近傍で起こる発泡シリコーンゴムのセル切断が防止できる。従って、発泡シリコーンゴム等電子で成型された加圧ローラが、所定の負荷を持って回転動作する場合において、加圧ローラの成型条件については従来技術を変更することなく、安定した機能が得られる加圧ローラを実現することができる。
【0009】
請求項2,3,4の発明によれば、断面略T字形状、L字形状等の突出部を形成したことにより、羽板部分と弾性体との接着面積がさらに大きくなり、これによって、局部的な圧分布の変化を防止し、加圧ローラ円周上で均一な圧分布を形成することができる。また、L字形状とすることにより、部品加工を容易に行うことができる。
【0010】
請求項5の発明によれば、突出部上面を曲面とすることにより、圧分布の均一性がさらに向上させることができる。
請求項6の発明によれば、画像形成装置の発泡シリコーンゴム8を用いた第1の加圧ローラとして用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は本発明の第1の実施形態による加圧ローラの構成を示す。
図1(a)は加圧ローラの軸体14を示すもので、この軸体14には、図示のように8枚の羽板15が設けられている。この羽板15は同図(b)にも示すように、軸体14の中心から法線方向に高さ16を以って設けられている。同図(c)は羽板15を有する軸体14を用いた本実施の形態による加圧ローラ17を示すもので、図示のように軸体14の周囲に発泡シリコーンゴム8が成型されている。軸体14に羽板15を形成するには、一般的な押し出し成型法、あるいは一般的な金属材料(SECC,SUS等)を溶接することによって形成することができる。
【0012】
次に、上記構成による作用について説明する。
図1(b)(c)において、羽板15を有する軸体14と発泡シリコーンゴム8との接着面積18は、軸体14の外周面積と、羽板15の高さと羽板枚数(8)で求まる面積とを足し合わせた面積となる。このように、軸体14の外周に羽板15の面積が加わることで、発泡シリコーンゴム8と軸体14との接着面積18を拡大できるため、その接着強度が向上する。このため図2に示すように、加圧ローラ17が所定の負荷を受けた状態で回転方向19に回転すると、羽板15には軸体14の回転方向19と同じ方向に発泡シリコーンゴム8を押す力20が発生する。
【0013】
本実施形態によれば、上記のように羽板15が発泡シリコーンゴム8を押す力20が回転中において常に発生するので、発泡シリコーンゴム8と軸体14との境界付近におけるせん断力が緩和され、発泡シリコーンゴムのセルが切断してしまうことを防止することができる。
【0014】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
上記第1の実施の形態では、図3に示すように、所定のニップ幅9を得るために第2の加圧ローラ2で加圧して規定の加圧力21が作用した状態で加圧ローラ1は回転する。この場合、羽板15が第2の加圧ローラ2と対向する位置に来ると、図4に示すように羽板15の高さ16と羽板15先端からの発泡シリコーンゴム8のゴム厚さ22の条件によっては、加圧ローラ1に対する圧分布23が図示のように不均一になるという問題が生じる。本実施の形態はこの問題を解決するものである。
【0015】
図5は第2の実施形態による加圧ローラ17を示す。
本実施の形態は、羽板15の先端部に断面T字形状の平面を持つ突出部24を形成したものである。
図5において、T字形状の突出部24は、羽板15中心を基準として幅をそれぞれa、bとすると、対称的なT字形状の場合はa=b、非対称なT字形状の場合はa>b、又はa<bとする。また、T字形状の平面と羽板15とは角度θT1=θT2=90度となっている。尚、突出部24は必ずしもT字形状ではなく、θT1、θT2は任意の角度としてよい。
【0016】
本実施形態によれば、羽板14先端部にT字形状の突出部24を形成したことにより、
羽板部分と発泡シリコーンゴム8との接着面積がさらに大きくなり、これによって、第1の実施の形態で起こり得る図4に示すような局部的な圧分布23の変化を防止し、加圧ローラ円周上で均一な圧分布を形成することができる。
【0017】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図6は第3の実施形態による加圧ローラ17を示す。
本実施の形態は、第3の実施の形態におけるT字形状の突出部24に代えて、羽板15中心を基準として角度θL=90度で幅cを持ち、かつ加圧ローラ17の回転方向に突き出したL字形状の突出部25を設けたものである。尚、必ずしもL字形状ではなく、θLは任意の角度としてよい。
【0018】
本実施形態によれば、第2の実施形態による効果が得られると共に、L字形状の平面25とすることでT字形状の突出部24と比較して部品加工を容易に行うことができる。
【0019】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
図7において、本実施形態は、上記第2の実施の形態に示したT字形状の突出部24の上面を図示のように任意のRを持つ曲面に形成した突出部26を設けたものである。上面を任意のRを持つ曲面とすることで、同心形状を形成することが可能となり、圧分布の均一性がさらに向上する。
【0020】
以上説明した各実施形態による加圧ローラ17は、軸体14に発泡シリコーンゴム(シリコーン発泡体)8を成型した場合であるが、発泡シリコーンゴムに限らず他の弾性体を用いることができる。
また、各実施形態における加圧ローラ17は、画像形成装置の加熱定着装置における第1の加圧ローラとして用いた場合を説明したが、トナーを除去するクリーニングローラや他の用途の加圧ローラ等に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態による加圧ローラの斜視図である。
【図2】羽板の作用を説明するための加圧ローラの側面図である。
【図3】第1の実施形態の問題点を説明するための加圧ローラの側面図である。
【図4】第1の実施形態の問題点を説明するための加圧ローラの側面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態による加圧ローラと突出部を示す側面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態による加圧ローラと突出部を示す側面図である。
【図7】本発明の第4の実施形態による加圧ローラの突出部を示す側面図である。
【図8】本発明を適用し得る画像形成装置の概略的な構成図である。
【図9】従来の画像形成装置の加熱定着装置を示す概略的な構成図である。
【図10】従来の加熱定着装置における第1の加圧ローラの斜視図である。
【図11】従来の加熱定着装置の問題点を説明するための第1の加圧ローラの斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
8 発泡シリコーンゴム
14 軸体
15 羽板
17 加圧ローラ
23,24,25 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の外周に弾性体を成型してなる加圧ローラにおいて、
前記軸体の周面に、軸方向に伸びる剛性を持つ複数の羽板を前記周面の円周方向に配置したことを特徴とする加圧ローラ。
【請求項2】
前記羽板の先端部に突出部を設けたことを特徴とする請求項1記載の加圧ローラ。
【請求項3】
前記突出部は前記羽板を中心に対して対称又は非対称な断面略T字形状をなすことを特徴とする請求項記2載の加圧ローラ。
【請求項4】
前記突出部は前記羽板に対して断面略L字形状をなすことを特徴とする請求項2記載の加圧ローラ。
【請求項5】
前記突出部の上面が任意の曲率を有する曲面に形成されていることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の加圧ローラ。
【請求項6】
前記弾性体は発泡シリコーンゴムであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の加圧ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−163086(P2006−163086A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356023(P2004−356023)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】