説明

加工装置および加工方法

【課題】直方体(長手方向の長さはL)の底面以外の5面に対する加工を行う場合でも、2L長もの作業空間を必要とせず、加工装置をコンパクト化できる技術を提供することである。
【解決手段】ワーク台と、前記ワーク台上の被加工物を加工する加工用工具が取り付けられる取付部とを具備し、前記ワーク台は、X−Y−Z三次元直交座標系における(X,Y)面に平行な水平面内において回動可能に、かつ、Y軸方向に沿って移動可能に構成されてなり、前記取付部は、前記X−Y−Z三次元直交座標系における(Y,Z)面に平行な垂直面内において回動可能に、かつ、X軸方向およびZ軸方向に沿って移動可能に構成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば五面(例えば、上面と四方の側面)加工が可能で、そして作業空間が小さくて済む加工技術に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1に開示の装置が有る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】DMG/MORI SEIKI−完璧なコンビネーション/Journal 02/2010年版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば直方体の5面(底面以外の面)に対する加工を非特許文献1の装置で行う場合、該装置は大きな作業空間を必要とした。例えば、直方体(長手方向の長さはL)の底面以外の5面、中でも、側面に対する加工を非特許文献1の装置で行う場合、少なくとも2L長の長さの作業空間を必要とした。この為、装置が大型化する。
【0005】
従って、本発明が解決しようとする課題は上記問題点を解決することである。例えば、直方体(長手方向の長さはL)の底面以外の5面に対する加工を行う場合でも、2L長もの長さの作業空間を必要とせず、装置をコンパクト化できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題は、
ワーク台と、
前記ワーク台上の被加工物を加工する加工用工具が取り付けられる取付部
とを具備し、
前記ワーク台は、
X−Y−Z三次元直交座標系における(X,Y)面に平行な水平面内において回動可能に、かつ、Y軸方向に沿って移動可能に構成されてなり、
前記取付部は、
前記X−Y−Z三次元直交座標系における(Y,Z)面に平行な垂直面内において回動可能に、かつ、X軸方向およびZ軸方向に沿って移動可能に構成されてなる
ことを特徴とする加工装置によって解決される。
【0007】
前記の課題は、
ワーク台と、コラムと、加工用工具が取り付けられる取付部とを具備し、前記コラムは前記ワーク台の前方側に設けられ、前記取付部は前記コラムに対して直接的または間接的に取り付けられてなる加工装置であって、
前記ワーク台は、
水平面内において回動可能に構成され、
前後方向に沿って移動可能に構成されてなり、
前記取付部は、
前記コラムによって構成されるコラム面に対して交差する方向の面内において、回動可能に構成されてなり、
上下方向に沿って移動可能に構成され、
前記ワーク台と前記取付部とは、
一方が他方に対して、相対的に、左右方向に移動可能に構成されてなる
ことを特徴とする加工装置によって解決される。
【0008】
前記の課題は、
ワーク台と、コラムと、加工用工具が取り付けられる取付部とを具備し、前記コラムは前記ワーク台の前方側に設けられ、前記取付部は前記コラムに対して直接的または間接的に取り付けられてなる加工装置であって、
前記ワーク台は、
水平面内において回動可能に構成され、
前後方向に沿って移動可能に構成されてなり、
前記取付部は、
前記コラム面に垂直な鉛直面内において、回動可能に構成されてなり、
上下方向に沿って移動可能に構成され、
前記ワーク台と前記取付部とは、
一方が他方に対して、相対的に、左右方向に移動可能に構成されてなる
ことを特徴とする加工装置によって解決される。
【0009】
前記の課題は、
ワーク台と、
前記ワーク台上の被加工物を加工する加工用工具が取り付けられる取付部とを具備し、
前記ワーク台と前記取付部とは、一方が他方に対して、相対的に、前後方向、上下方向、左右方向に移動可能に構成されてなり、
前記ワーク台は、水平面内において、回動可能に構成され、
前記取付部は、前後方向の垂直面内において、回動可能に構成されてなる
ことを特徴とする加工装置によって解決される。
【0010】
前記の課題は、
ワーク台を水平面内において回動させるワーク台回動ステップと、ワーク台を前後方向に沿って移動させるワーク台前後動ステップと、加工用工具を前後方向の垂直面内において回動させる加工用工具回動ステップと、加工用工具を上下方向に沿って移動させる加工用工具上下動ステップと、加工用工具を左右方向に沿って移動させる加工用工具左右動ステップとを具備する加工方法であって、
前記ワーク台上に載せられた被加工物の上面Aにおける加工を前記加工用工具で行う場合、前記加工用工具が下側に向いてなかった場合には前記加工用工具回動ステップによって前記加工用工具が下側に向くようになし、前記加工用工具が下側に向いていた場合にはそのままとし、必要に応じて、前記ワーク台前後動ステップによって前記ワーク台を前後方向に沿って移動させ、前記加工用工具上下動ステップによって前記加工用工具を上下方向に沿って移動させ、前記加工用工具左右動ステップによって前記加工用工具を左右方向に沿って移動させ、前記加工用工具を前記被加工物の上面Aの所望位置に位置させて前記ワーク台上に載せられた被加工物の上面Aにおける加工を行い、
前記上面A加工工程における前記ワーク台上の被加工物の前面側の側面Bを前記加工用工具で加工する場合、前記加工用工具が前記前面側に向いてなかった場合には前記加工用工具回動ステップ及び加工用工具上下動ステップによって前記加工用工具が前記前面側に向くようになし、前記加工用工具が前記前面側に向いていた場合にはそのままとし、必要に応じて、前記ワーク台前後動ステップによって前記ワーク台を前後方向に沿って移動させ、前記加工用工具上下動ステップによって前記加工用工具を上下方向に沿って移動させ、前記加工用工具左右動ステップによって前記加工用工具を左右方向に沿って移動させ、前記加工用工具を前記被加工物の前記前面側の所望位置に位置させて前記ワーク台上に載せられた被加工物の側面Bにおける加工を行い、
前記上面A加工工程における前記ワーク台上の被加工物の後面側の側面Cを前記加工用工具で加工する場合、前記側面Cが前面側に位置してなかった場合には前記ワーク台回動ステップによって前記側面Cが前面側に位置するようになし、前記側面Cが前面側に位置していた場合にはそのままとし、前記加工用工具が前記前面側に向いてなかった場合には前記加工用工具回動ステップ及び加工用工具上下動ステップによって前記加工用工具が前記前面側に向くようになし、前記加工用工具が前記前面側に向いていた場合にはそのままとし、必要に応じて、前記ワーク台前後動ステップによって前記ワーク台を前後方向に沿って移動させ、前記加工用工具上下動ステップによって前記加工用工具を上下方向に沿って移動させ、前記加工用工具左右動ステップによって前記加工用工具を左右方向に沿って移動させ、前記加工用工具を前記被加工物の前記前面側の所望位置に位置させて前記ワーク台上に載せられた被加工物の側面Cにおける加工を行い、
前記上面A加工工程における前記ワーク台上の被加工物の右側面側の側面Dを前記加工用工具で加工する場合、前記側面Dが前面側に位置してなかった場合には前記ワーク台回動ステップによって前記側面Dが前面側に位置するようになし、前記側面Dが前面側に位置していた場合にはそのままとし、前記加工用工具が前記前面側に向いてなかった場合には前記加工用工具回動ステップ及び加工用工具上下動ステップによって前記加工用工具が前記前面側に向くようになし、前記加工用工具が前記前面側に向いていた場合にはそのままとし、必要に応じて、前記ワーク台前後動ステップによって前記ワーク台を前後方向に沿って移動させ、前記加工用工具上下動ステップによって前記加工用工具を上下方向に沿って移動させ、前記加工用工具左右動ステップによって前記加工用工具を左右方向に沿って移動させ、前記加工用工具を前記被加工物の前記前面側の所望位置に位置させて前記ワーク台上に載せられた被加工物の側面Dにおける加工を行い、
前記上面A加工工程における前記ワーク台上の被加工物の左側面側の側面Eを前記加工用工具で加工する場合、前記側面Eが前面側に位置してなかった場合には前記ワーク台回動ステップによって前記側面Eが前面側に位置するようになし、前記側面Eが前面側に位置していた場合にはそのままとし、前記加工用工具が前記前面側に向いてなかった場合には前記加工用工具回動ステップ及び加工用工具上下動ステップによって前記加工用工具が前記前面側に向くようになし、前記加工用工具が前記前面側に向いていた場合にはそのままとし、必要に応じて、前記ワーク台前後動ステップによって前記ワーク台を前後方向に沿って移動させ、前記加工用工具上下動ステップによって前記加工用工具を上下方向に沿って移動させ、前記加工用工具左右動ステップによって前記加工用工具を左右方向に沿って移動させ、前記加工用工具を前記被加工物の前記前面側の所望位置に位置させて前記ワーク台上に載せられた被加工物の側面Eにおける加工を行う
ことを特徴とする加工方法によって解決される。
【発明の効果】
【0011】
直方体(長手方向の長さはL)の底面以外の5面に対して加工を行う場合、2L長もの作業空間を必要としない。従って、装置をコンパクト化できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態になる加工装置の全体概略側面図
【図2】本発明の実施形態になる加工装置の要部概略斜視図
【図3】A面(上面)加工時の概略平面図
【図4】B面(側面)加工時の概略正面図
【図5】C面(側面)加工時の概略正面図
【図6】D面(側面)加工時の概略正面図
【図7】E面(側面)加工時の概略正面図
【図8】非特許文献1に開示の装置の問題点を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の本発明は加工装置である。前記加工装置はワーク台を具備する。前記加工装置は取付部を具備する。前記取付部は、前記ワーク台上の被加工物を加工する加工用工具が取り付けられる部である。前記ワーク台と前記取付部とは、一方が他方に対して、相対的に、前後方向、上下方向、左右方向に移動可能に構成されている。前記ワーク台は、水平面内において、回動可能に構成されている。前記取付部は、前後方向の垂直面内において、回動可能に構成されている。
【0014】
前記加工装置は次のような構成であっても良い。前記加工装置はワーク台を具備する。前記加工装置は取付部を具備する。前記取付部は、前記ワーク台上の被加工物を加工する加工用工具が取り付けられる部である。前記ワーク台は、X−Y−Z三次元直交座標系における(X,Y)面に平行な水平面内において回動可能に、かつ、Y軸方向に沿って移動可能に構成されている。前記取付部は、前記X−Y−Z三次元直交座標系における(Y,Z)面に平行な垂直面内において回動可能に、かつ、X軸方向およびZ軸方向に沿って移動可能に構成されている。
【0015】
前記加工装置は次のような構成であっても良い。前記加工装置はワーク台を具備する。前記加工装置はコラムを具備する。前記加工装置は取付部を具備する。前記取付部は加工用工具が取り付けられる部である。前記コラムは前記ワーク台の前方側に設けられている。前記取付部は前記コラムに対して直接的または間接的に取り付けられている。前記ワーク台は、水平面内において回動可能に構成され、かつ、前後方向に沿って移動可能に構成されている。前記取付部は、前記コラムによって構成されるコラム面に対して交差する方向の面内において、回動可能に構成されてなり、かつ、上下方向に沿って移動可能に構成されている。前記ワーク台と前記取付部とは、一方が他方に対して、相対的に、左右方向に移動可能に構成されている。前記取付部は、好ましくは、前記コラム面に垂直な鉛直面内において、回動可能に構成されている。
【0016】
第2の本発明は加工方法である。特に、上記装置が用いて行われる加工方法である。前記加工方法は、ワーク台を水平面{例えば、(X,Y)面に平行な面}内において回動させるワーク台回動ステップを具備する。前記加工方法は、ワーク台を前後方向(Y軸方向)に沿って移動させるワーク台前後動ステップを具備する。前記加工方法は、加工用工具を前後方向の垂直面{例えば、(Y,Z)面に平行な面}内において回動させる加工用工具回動ステップを具備する。前記加工方法は、加工用工具を上下方向(Z軸方向)に沿って移動させる加工用工具上下動ステップを具備する。前記加工方法は、加工用工具を左右方向(X軸方向)に沿って移動させる加工用工具左右動ステップを具備する。前記ワーク台上に載せられた被加工物の上面Aにおける加工が前記加工用工具で行われる場合、次の動作が行われる。前記加工用工具が下側に向いてなかった場合には、前記加工用工具回動ステップによって、前記加工用工具が下側に向く。前記加工用工具が下側に向いていた場合には、そのままである。必要に応じて、前記ワーク台前後動ステップによって、前記ワーク台が前後方向に沿って移動する。必要に応じて、前記加工用工具上下動ステップによって、前記加工用工具が上下方向に沿って移動する。必要に応じて、前記加工用工具左右動ステップによって、前記加工用工具が左右方向に沿って移動する。そして、前記加工用工具が前記被加工物の上面Aの所望位置に位置し、前記ワーク台上に載せられた被加工物の上面Aにおける加工が行われる。
【0017】
前記上面A加工工程における前記ワーク台上の被加工物の前面側の側面Bにおける加工が前記加工用工具で行われる場合、次の動作が行われる。前記加工用工具が前記前面側に向いてなかった場合には、前記加工用工具回動ステップによって、前記加工用工具が前記前面側に向く。前記加工用工具が前記前面側に向いていた場合には、そのままである。必要に応じて、前記ワーク台前後動ステップによって、前記ワーク台が前後方向に沿って移動する。必要に応じて、前記加工用工具上下動ステップによって、前記加工用工具が上下方向に沿って移動する。必要に応じて、前記加工用工具左右動ステップによって、前記加工用工具が左右方向に沿って移動する。そして、前記加工用工具が記被加工物の前記前面側の所望位置に位置し、前記ワーク台上に載せられた被加工物の側面Bにおける加工が行われる。
【0018】
前記上面A加工工程における前記ワーク台上の被加工物の後面側の側面Cにおける加工が前記加工用工具で行われる場合、次の動作が行われる。前記側面Cが前面側に位置してなかった場合には、前記ワーク台回動ステップによって、前記側面Cが前面側に位置する。前記側面Cが前面側に位置していた場合には、そのままである。前記加工用工具が前記前面側に向いてなかった場合には、前記加工用工具回動ステップによって、前記加工用工具が前記前面側に向く。前記加工用工具が前記前面側に向いていた場合には、そのままである。必要に応じて、前記ワーク台前後動ステップによって、前記ワーク台が前後方向に沿って移動する。必要に応じて、前記加工用工具上下動ステップによって、前記加工用工具が上下方向に沿って移動する。必要に応じて、前記加工用工具左右動ステップによって、前記加工用工具が左右方向に沿って移動する。そして、前記加工用工具が前記被加工物の前記前面側の所望位置に位置し、前記ワーク台上に載せられた被加工物の側面Cにおける加工が行われる。
【0019】
前記上面A加工工程における前記ワーク台上の被加工物の右側面側の側面Dにおける加工が前記加工用工具で行われる場合、次の動作が行われる。前記側面Dが前面側に位置してなかった場合には、前記ワーク台回動ステップによって、前記側面Dが前面側に位置する。前記側面Dが前面側に位置していた場合には、そのままである。前記加工用工具が前記前面側に向いてなかった場合には、前記加工用工具回動ステップによって、前記加工用工具が前記前面側に向く。前記加工用工具が前記前面側に向いていた場合には、そのままである。必要に応じて、前記ワーク台前後動ステップによって、前記ワーク台が前後方向に沿って移動する。必要に応じて、前記加工用工具上下動ステップによって、前記加工用工具が上下方向に沿って移動する。必要に応じて、前記加工用工具左右動ステップによって、前記加工用工具が左右方向に沿って移動する。そして、前記加工用工具が前記被加工物の前記前面側の所望位置に位置し、前記ワーク台上に載せられた被加工物の側面Dにおける加工が行われる。
【0020】
前記上面A加工工程における前記ワーク台上の被加工物の左側面側の側面Eにおける加工が前記加工用工具で行われる場合、次の動作が行われる。前記側面Eが前面側に位置してなかった場合には、前記ワーク台回動ステップによって、前記側面Eが前面側に位置する。前記側面Eが前面側に位置していた場合には、そのままである。前記加工用工具が前記前面側に向いてなかった場合には、前記加工用工具回動ステップによって、前記加工用工具が前記前面側に向く。前記加工用工具が前記前面側に向いていた場合には、そのままである。必要に応じて、前記ワーク台前後動ステップによって、前記ワーク台が前後方向に沿って移動する。必要に応じて、前記加工用工具上下動ステップによって、前記加工用工具が上下方向に沿って移動する。必要に応じて、前記加工用工具左右動ステップによって、前記加工用工具が左右方向に沿って移動する。そして、前記加工用工具が前記被加工物の前記前面側の所望位置に位置し、前記ワーク台上に載せられた被加工物の側面Eにおける加工が行われる。
【0021】
以下、更に具体的に説明される。
【0022】
図1〜図7は本発明になる実施形態の加工装置を示すもので、図1は加工装置の全体概略側面図、図2は要部概略斜視図、図3はA面(上面)加工時の加工用工具とA面との関係を示す概略平面図、図4はB面(側面)加工時の加工用工具とB面との関係を示す概略正面図、図5はC面(側面)加工時の加工用工具とC面との関係を示す概略正面図、図6はD面(側面)加工時の加工用工具とD面との関係を示す概略正面図、図7はE面(側面)加工時の加工用工具とE面との関係を示す概略正面図である。
【0023】
各図中、1は被加工物である。被加工物1は、例えば直方体(H(高さ)×W(幅)×L(長さ):L=最大長)形状である。説明の都合上、本実施形態では、被加工物1の上面はA面、四つの側面はB面、C面、D面、E面と称される。
【0024】
2はワーク台である。被加工物1は、加工作業時には、ワーク台2上に載置されている。ワーク台2は、水平面(X−Y−Z三次元直交座標系(X軸方向は、図1中、紙面に垂直な方向。Y軸方向は、図1中、左右方向。Z軸方向は、図1中、上下方向。)における(X,Y)面に平行な面)内において、回動可能に構成されている。ワーク台2は、前後方向(Y軸方向(図1中、左右方向))に沿って、移動可能に構成されている。前記ワーク台回動機構や前記ワーク台前後動機構は、公知技術で簡単に達成されるから、詳細は省略される。
【0025】
3は取付部(スピンドルヘッド)である。スピンドルヘッド3には、ワーク台2上に載置されている被加工物1を加工する加工用工具4が取り付けられる。スピンドルヘッド3は、後述のコラムの面に対して垂直な鉛直面(X−Y−Z三次元直交座標系における(Y,Z)面に平行な面)内において、回動可能に構成されている。スピンドルヘッド3は、左右方向(X軸方向)および上下方向(Z軸方向)に沿って、移動可能に構成されている。前記スピンドルヘッド回動機構や前記スピンドルヘッド左右動機構や前記スピンドルヘッド上下動機構は、公知技術で簡単に達成されるから、詳細は省略される。
【0026】
5はコラムである。コラム5はワーク台2の前方側(図1では右側)に設けられている。このコラム5に対して、スピンドルヘッド3は、直接的または間接的に取り付けられている。垂直方向に立設されたコラム5はベース台6に固定されているから、図1,2からも判る通り、スピンドルヘッド3は前後方向(Y軸方向)には移動不能である。前後方向(Y軸方向)に沿って移動できるのは、ワーク台2である。
【0027】
上記のように構成させた加工装置が被加工物1の5面(A面、B面、C面、D面、E面)を研磨加工する場合を説明する。
【0028】
先ず、A面(上面)が加工される場合が説明される。被加工物1は、その長手方向がX軸方向であるように、ワーク台2上に載置されている。スピンドルヘッド回動機構の作動により、スピンドルヘッド3がZ軸の方向に向く。従って、スピンドルヘッド3の先端に取り付けられている加工用工具4は下側を向く。スピンドルヘッド上下動機構の作動により、加工用工具4は被加工物1の上面に位置する。この状態にて、スピンドルヘッド左右動機構およびワーク台前後動機構の作動により、A面が加工される(図3参照)。
【0029】
A面加工後に、B面(側面)が加工される場合が説明される。A面加工時において、前面(正面)はB面である。前面(B面)が加工される為には、加工用工具4が前面(B面)に対向している必要がある。例えば、スピンドルヘッド上下動機構の作動により、スピンドルヘッド3が少しばかり上昇する。尚、ワーク台前後動機構の作動により、被加工物1が、図1中、左側に退避しておれば、スピンドルヘッド3を上昇させなくても良い。この状態であれば、スピンドルヘッド回動時、加工用工具4は被加工物1に衝突しない。そして、加工用工具4は被加工物1を傷付けることが無い。この後、スピンドルヘッド回動機構の作動により、スピンドルヘッド3がY軸の方向に向く。ワーク台前後動機構の作動により、被加工物1は、図1中、左側に退避している。この後、スピンドルヘッド上下動機構の作動により、スピンドルヘッド3が降下する。この降下時にあっては、加工用工具4はY軸の方向に在る。スピンドルヘッド3の降下により、加工用工具4が前面(B面)に対向する。この後、ワーク台前後動機構の作動により、被加工物1の前面(B面)が加工用工具4に接触する。この後、スピンドルヘッド左右動機構およびスピンドルヘッド上下動機構の作動により、B面が加工される(図4参照)。
【0030】
B面加工後に、C面(側面:C面とB面とは対向)が加工される場合が説明される。スピンドルヘッド3は、既に、Y軸の方向に向いている。すなわち、加工用工具4は前面(正面)に向いている。従って、この場合には、スピンドルヘッド回動機構が作動する必要は無い。B面加工時におけるC面は後面(背面)である。従って、この状態では、加工用工具4はC面に接触することが出来ない。従って、C面が加工用工具4に対向する必要が有る。これは、ワーク台2の回転により達成される。このワーク台回動時、加工用工具4と被加工物1との衝突回避の為、被加工物1は加工用工具4から離れている必要が有る。例えば、ワーク台前後動機構の作動により、ワーク台2が、図1中、左側に退避する。この後、ワーク台回動機構の作動により、ワーク台2が180°回転する。これにより、C面が加工用工具4に対向する。すなわち、前面(正面)はC面である。この後、ワーク台前後動機構の作動により、被加工物1の前面(C面)が加工用工具4に接触する。この後、スピンドルヘッド左右動機構およびスピンドルヘッド上下動機構の作動により、C面が加工される(図5参照)。
【0031】
C面加工後に、D面(図3の状態では左側面がD面)が加工される場合が説明される。スピンドルヘッド3の方向は、既に、Y軸方向に存している。すなわち、加工用工具4は前面に向いている。従って、この場合には、スピンドルヘッド回動機構が作動する必要は無い。C面加工時に、D面は、加工用工具4に対向していない。従って、D面が加工用工具4に対向する必要が有る。これは、ワーク台2の回転により達成される。このワーク台回動時、加工用工具4と被加工物1との衝突回避の為、被加工物1は加工用工具4から離れている必要が有る。例えば、ワーク台前後動機構の作動により、ワーク台2が、図1中、左側に退避する。この後、ワーク台回動機構の作動により、ワーク台2が90°回転する。これにより、D面が加工用工具4に対向する。すなわち、D面が前面(正面)となる。この後、ワーク台前後動機構の作動により、被加工物1の前面(D面)が加工用工具4に接触する。この後、スピンドルヘッド左右動機構およびスピンドルヘッド上下動機構の作動により、D面が加工される(図6参照)。
【0032】
D面加工後に、E面(図3の状態では右側面がE面)が加工される場合が説明される。スピンドルヘッド3の方向は、既に、Y軸方向に存している。すなわち、加工用工具4は前面に向いている。従って、この場合には、スピンドルヘッド回動機構が作動する必要は無い。D面加工時におけるE面は後面(背面)である。従って、この状態では、加工用工具4はE面に接触することが出来ない。従って、E面が加工用工具4に対向する必要が有る。これは、ワーク台2の回転により達成される。このワーク台回動時、加工用工具4と被加工物1との衝突回避の為、被加工物1は加工用工具4から離れている必要が有る。例えば、ワーク台前後動機構の作動により、ワーク台2が、図1中、左側に退避する。この後、ワーク台回動機構の作動により、ワーク台2が180°回転する。これにより、E面が加工用工具4に対向する。すなわち、E面が前面(正面)となる。この後、ワーク台前後動機構の作動により、被加工物1の前面(E面)が加工用工具4に接触する。この後、スピンドルヘッド左右動機構およびスピンドルヘッド上下動機構の作動により、E面が加工される(図7参照)。
【0033】
上記の如きの工程を経ることによって、底面以外の5面に対して加工が施される。
【0034】
上記にあっては、加工順序がA面→B面→C面→D面→E面であった。しかしながら、加工順序は、適宜、変更されても良い。例えば、A面→B面→D面→C面→E面であつても良い。最後がA面であっても良い。このような場合、スピンドルヘッド回動機構、スピンドルヘッド上下動機構、スピンドルヘッド左右動機構、ワーク台回動機構、ワーク台前後動機構の作動の有無や作動順は、必要に応じて、適宜、変更される。
【0035】
上記にあっては、加工が研磨の場合であった。しかしながら、穿孔の場合でも同様に行われる。但し、この場合も、スピンドルヘッド回動機構、スピンドルヘッド上下動機構、スピンドルヘッド左右動機構、ワーク台回動機構、ワーク台前後動機構の作動の有無や作動順は、必要に応じて、適宜、変更される。
【0036】
ところで、上記実施形態の加工装置は、スピンドルヘッド3がX−Y−Z三次元直交座標系における(Y,Z)面に平行な垂直面(ワーク台2の前方側(図1では右側)に設けられたコラム面に対して垂直な鉛直面)内において回動可能に構成されている。この為、側面(B面、C面、D面、E面)の表面研磨加工時には、ワーク台2を前後動させなくても済む。加工が表面研磨の場合には、スピンドルヘッド3の作動(上下動、左右動)のみで済む。上面(A面)の加工時には、ワーク台を移動させる必要が有るが、この場合でも、移動長が2Lになることは無い。加工が穿孔の場合、穿孔深さに応じて、ワーク台を移動させる必要が有る。しかしながら、この場合でもワーク台の移動は長さLで済む。すなわち、上記実施形態の装置によれば、作業空間に2L長もの長さを要さない。従って、装置がコンパクトである。
【0037】
これに対して、非特許文献1の装置は、スピンドルヘッドがX−Y−Z三次元直交座標系における(X,Z)面に平行な垂直面(図1のコラム面に平行な垂直面)内において回動可能に構成されている。この為、側面(B面、C面、D面、E面)の加工時において、ワーク台(被加工物)を前後動させなければならない。被加工物のY軸方向における側面の長さがLであるとすると、非特許文献1の装置が用いられた場合、ワーク台(被加工物)を移動させる為、Y軸方向にあっては、2L長の長さの作業空間が必要になる(図8参照)。従って、装置が大型化してしまう。
【符号の説明】
【0038】
1 被加工物
2 ワーク台
3 取付部(スピンドルヘッド)
4 加工用工具
5 コラム
6 ベース台



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク台と、
前記ワーク台上の被加工物を加工する加工用工具が取り付けられる取付部
とを具備し、
前記ワーク台は、
X−Y−Z三次元直交座標系における(X,Y)面に平行な水平面内において回動可能に、かつ、Y軸方向に沿って移動可能に構成されてなり、
前記取付部は、
前記X−Y−Z三次元直交座標系における(Y,Z)面に平行な垂直面内において回動可能に、かつ、X軸方向およびZ軸方向に沿って移動可能に構成されてなる
ことを特徴とする加工装置。
【請求項2】
ワーク台と、コラムと、加工用工具が取り付けられる取付部とを具備し、前記コラムは前記ワーク台の前方側に設けられ、前記取付部は前記コラムに対して直接的または間接的に取り付けられてなる加工装置であって、
前記ワーク台は、
水平面内において回動可能に構成され、
前後方向に沿って移動可能に構成されてなり、
前記取付部は、
前記コラムによって構成されるコラム面に対して交差する方向の面内において、回動可能に構成されてなり、
上下方向に沿って移動可能に構成され、
前記ワーク台と前記取付部とは、
一方が他方に対して、相対的に、左右方向に移動可能に構成されてなる
ことを特徴とする加工装置。
【請求項3】
前記取付部は、前記コラム面に垂直な鉛直面内において、回動可能に構成されてなる
ことを特徴とする請求項2の加工装置。
【請求項4】
ワーク台と、
前記ワーク台上の被加工物を加工する加工用工具が取り付けられる取付部とを具備し、
前記ワーク台と前記取付部とは、一方が他方に対して、相対的に、前後方向、上下方向、左右方向に移動可能に構成されてなり、
前記ワーク台は、水平面内において、回動可能に構成され、
前記取付部は、前後方向の垂直面内において、回動可能に構成されてなる
ことを特徴とする加工装置。
【請求項5】
ワーク台を水平面内において回動させるワーク台回動ステップと、ワーク台を前後方向に沿って移動させるワーク台前後動ステップと、加工用工具を前後方向の垂直面内において回動させる加工用工具回動ステップと、加工用工具を上下方向に沿って移動させる加工用工具上下動ステップと、加工用工具を左右方向に沿って移動させる加工用工具左右動ステップとを具備する加工方法であって、
前記ワーク台上に載せられた被加工物の上面Aにおける加工を前記加工用工具で行う場合、前記加工用工具が下側に向いてなかった場合には前記加工用工具回動ステップによって前記加工用工具が下側に向くようになし、前記加工用工具が下側に向いていた場合にはそのままとし、必要に応じて、前記ワーク台前後動ステップによって前記ワーク台を前後方向に沿って移動させ、前記加工用工具上下動ステップによって前記加工用工具を上下方向に沿って移動させ、前記加工用工具左右動ステップによって前記加工用工具を左右方向に沿って移動させ、前記加工用工具を前記被加工物の上面Aの所望位置に位置させて前記ワーク台上に載せられた被加工物の上面Aにおける加工を行い、
前記上面A加工工程における前記ワーク台上の被加工物の前面側の側面Bを前記加工用工具で加工する場合、前記加工用工具が前記前面側に向いてなかった場合には前記加工用工具回動ステップ及び加工用工具上下動ステップによって前記加工用工具が前記前面側に向くようになし、前記加工用工具が前記前面側に向いていた場合にはそのままとし、必要に応じて、前記ワーク台前後動ステップによって前記ワーク台を前後方向に沿って移動させ、前記加工用工具上下動ステップによって前記加工用工具を上下方向に沿って移動させ、前記加工用工具左右動ステップによって前記加工用工具を左右方向に沿って移動させ、前記加工用工具を前記被加工物の前記前面側の所望位置に位置させて前記ワーク台上に載せられた被加工物の側面Bにおける加工を行い、
前記上面A加工工程における前記ワーク台上の被加工物の後面側の側面Cを前記加工用工具で加工する場合、前記側面Cが前面側に位置してなかった場合には前記ワーク台回動ステップによって前記側面Cが前面側に位置するようになし、前記側面Cが前面側に位置していた場合にはそのままとし、前記加工用工具が前記前面側に向いてなかった場合には前記加工用工具回動ステップ及び加工用工具上下動ステップによって前記加工用工具が前記前面側に向くようになし、前記加工用工具が前記前面側に向いていた場合にはそのままとし、必要に応じて、前記ワーク台前後動ステップによって前記ワーク台を前後方向に沿って移動させ、前記加工用工具上下動ステップによって前記加工用工具を上下方向に沿って移動させ、前記加工用工具左右動ステップによって前記加工用工具を左右方向に沿って移動させ、前記加工用工具を前記被加工物の前記前面側の所望位置に位置させて前記ワーク台上に載せられた被加工物の側面Cにおける加工を行い、
前記上面A加工工程における前記ワーク台上の被加工物の右側面側の側面Dを前記加工用工具で加工する場合、前記側面Dが前面側に位置してなかった場合には前記ワーク台回動ステップによって前記側面Dが前面側に位置するようになし、前記側面Dが前面側に位置していた場合にはそのままとし、前記加工用工具が前記前面側に向いてなかった場合には前記加工用工具回動ステップ及び加工用工具上下動ステップによって前記加工用工具が前記前面側に向くようになし、前記加工用工具が前記前面側に向いていた場合にはそのままとし、必要に応じて、前記ワーク台前後動ステップによって前記ワーク台を前後方向に沿って移動させ、前記加工用工具上下動ステップによって前記加工用工具を上下方向に沿って移動させ、前記加工用工具左右動ステップによって前記加工用工具を左右方向に沿って移動させ、前記加工用工具を前記被加工物の前記前面側の所望位置に位置させて前記ワーク台上に載せられた被加工物の側面Dにおける加工を行い、
前記上面A加工工程における前記ワーク台上の被加工物の左側面側の側面Eを前記加工用工具で加工する場合、前記側面Eが前面側に位置してなかった場合には前記ワーク台回動ステップによって前記側面Eが前面側に位置するようになし、前記側面Eが前面側に位置していた場合にはそのままとし、前記加工用工具が前記前面側に向いてなかった場合には前記加工用工具回動ステップ及び加工用工具上下動ステップによって前記加工用工具が前記前面側に向くようになし、前記加工用工具が前記前面側に向いていた場合にはそのままとし、必要に応じて、前記ワーク台前後動ステップによって前記ワーク台を前後方向に沿って移動させ、前記加工用工具上下動ステップによって前記加工用工具を上下方向に沿って移動させ、前記加工用工具左右動ステップによって前記加工用工具を左右方向に沿って移動させ、前記加工用工具を前記被加工物の前記前面側の所望位置に位置させて前記ワーク台上に載せられた被加工物の側面Eにおける加工を行う
ことを特徴とする加工方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−18106(P2013−18106A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155777(P2011−155777)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(511172276)有限会社ジェー・ケー・エム (1)
【Fターム(参考)】