説明

加水分解反応用触媒の製造方法及び加水分解反応用触媒

【課題】加水分解反応用触媒の製造方法及び加水分解反応用触媒に関するものである。更に詳しくは、本発明は、特徴を有する加水分解反応用触媒を提供する。
【解決手段】メタロシリケートを酢酸ニッケル及び/又は蟻酸ニッケルを溶解させた溶液に浸漬する工程を有する加水分解反応用触媒の製造方法。メタロシリケートとしては、Si/Me原子比(ここに、Meは、Al、Cu、Ga、Fe、B、Zn、Cr、Be、Co、La、Ge、Ti、Zr、Hf、V、Ni、Sb、Bi、Nb等から選ばれる1種又は2種以上の金属元素を示す。)が、5以上であるメタロシリケートがより好ましいが、Me成分を実質的に含まない二酸化ケイ素からなる結晶性シリケートでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加水分解反応用触媒の製造方法及び加水分解反応用触媒に関するものである。更に詳しくは、本発明は、特徴を有する加水分解反応用触媒の製造方法及び該製造方法により得られる加水分解反応用触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば塩素化炭化水素化合物の塩素を水酸基で置換する加水分解反応に用いる触媒としては、金属坦持結晶性メタロシリケート、リン酸ランタン等が知られている。特許文献1には、結晶性メタロシリケートに塩化銅を担持した触媒が開示されている。
【0003】
しかしながら、従来の触媒は、所望の加水分解反応を高収率かつ高選択率の下に実施するという点において必ずしも満足できるものではなかった。
【0004】
【特許文献1】特開昭62-192330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる状況において、本発明が解決しようとする課題は、本発明は、特徴を有する加水分解反応用触媒の製造方法及び該製造方法により得られる加水分解反応用触媒を提供する点に存する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明のうち第一の発明は、メタロシリケートを酢酸ニッケル及び/又は蟻酸ニッケルを溶解させた溶液に浸漬する工程を有する加水分解反応用触媒の製造方法に係るものである。
【0007】
また、本発明のうち第二の発明は、上記の製造方法により得られる加水分解反応用触媒に係るものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、加水分解反応用触媒の製造方法及び加水分解反応用触媒に関するものである。更に詳しくは、本発明は、特徴を有する加水分解反応用触媒を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の製造方法は、メタロシリケートを酢酸ニッケル及び/又は蟻酸ニッケルを溶解させた溶液に浸漬する工程を有する。
【0010】
メタロシリケートとは、Siを必須成分として含み、Al、Cu、Ga、Fe、B、Zn、Cr、Be、Co、La、Ge、Ti、Zr、Hf、V、Ni、Sb、Bi、Nb等から選ばれる1種又は2種以上の金属元素を含み、Siと他金属原子比、Si/Me原子比(ここに、Meは、Al、Cu、Ga、Fe、B、Zn、Cr、Be、Co、La、Ge、Ti、Zr、Hf、V、Ni、Sb、Bi、Nb等から選ばれる1種又は2種以上の金属元素を示す。)が、5以上であるメタロシリケートがより好ましいが、Me成分を実質的に含まない二酸化ケイ素からなる結晶性シリケートでもよい。メタロシリケートには結晶性のものと非晶性のものがあり、本発明はどちらも使用できるが、加水分解反応の収率、選択率向上の観点から結晶性のものがこのましい。ここで結晶性とはX線回折において回折ピークが観察されるものを示す意味する。
【0011】
メタロシリケートを酢酸ニッケル及び/又は蟻酸ニッケルを溶解させた溶液に浸漬する溶液の溶媒は水を用いることができる。溶液中の酢酸ニッケル及び/又は蟻酸ニッケル濃度はニッケルに換算して0.001〜1モル/Lが好ましい。該濃度が低すぎると加水分解反応の収率が低下することがあり、一方該濃度が高すぎると不溶の酢酸ニッケル及び/又は蟻酸ニッケルが発生し、触媒性能が悪化することがある。なお、酢酸ニッケルと蟻酸ニッケルはその一種を単独で用いてもよく、両方を併用してもよい。
【0012】
含浸させるときの溶液の温度は10〜100℃が好ましい。該温度が低すぎると触媒中のニッケル含有量が低くなることがあり、一方該温度が高すぎると触媒中のニッケル含有量が多すぎるとなることがある。
【0013】
含浸時間は1〜48時間が好ましい。該時間が短かすぎると触媒中のニッケル含有量が低くなり収率(転化率)が低下することがあり、一方該時間が長すぎると触媒中のニッケルが多すぎると、選択率が低下することがある。
【0014】
含浸後は、濾過、乾燥(たとえば、80〜150℃、1〜24時間)及び焼成(たとえば、300〜500℃、1〜8時間)することにより粉状の触媒を得ることができる。必要に応じ、成形して用いることができる。また、濾過せずに蒸発乾燥させた後、焼成してもよい。
【0015】
本発明の製造方法により得られる触媒は、加水分解反応に供せられるものである。加水分解反応としては、塩素化炭化水素化合物の塩素を水酸基で置換する反応をあげることができ、より具体的にはクロルベンゼンをフェノールに変換する反応をあげることができる。
【0016】
加水分解反応させる方法は、特に制限はなく、公知の方法を使用することができる。クロルベンゼンをフェノールに変換する反応を例にしてあげれば次のとおりである。反応は、液相、気相いずれによっても実施されるが、通常は気相反応を用いる。反応形態としては、固定床、流動床、移動床のいずれでもよい。塩酸中の水と塩素化炭化水素のモル比(水/塩素化炭化水素)は通常0.5〜10であり、反応温度は160〜600℃であり、反応圧力は減圧、常圧、加圧いずれでもよいが、通常は常圧である。
【実施例】
【0017】
次に本発明を実施例により説明する。
実施例1
イオン交換水150ml中に、市販の酢酸ニッケル四水和物(和光純薬工業製 99.9%)1.87g(0.05モル/L)を室温で攪拌、溶解させ酢酸ニッケル水溶液を調製した。その酢酸ニッケル水溶液中に、市販のNa−ZSM−5ゼオライト(エヌ・イー ケムキャット製 Si/Al=25 パウダー)30.0gを添加し、撹拌機にて攪拌下に100℃で加熱し、21時間含浸しイオン交換を行った。固形分をろ過、イオン交換水による水洗をした後、120℃で4時間乾燥、更に空気流通下400℃で5時間焼成し、触媒を得た。
200℃の固定床蒸発器と内径17mmφのガラス固定床反応器を直截に配置した。上記触媒1.00gをガラス固定床反応器に充填し、454℃に保持した。窒素11ml/minを流通させた200℃の固定床蒸発器に窒素11ml/min水を2.9g/h、さらにクロルベンゼン(和光純薬工業製 特級)を3.0g/h固定床蒸発器に供給し、60ml/minの水蒸気として、さらにクロルベンゼン蒸気として10ml/min(水/クロルベンゼン=6.0)をガラス固定床反応器に供給して反応を開始した。
1.5時間経過後、生成ガスをトルエン溶媒に吸収させ、生成物をガスクロマトグラフにより分析としたところ、モノクロルベンゼン転化率18.8%、フェノール選択率93.7%、ベンゼン選択率5.8%であった。
【0018】
実施例2
酢酸ニッケルの代わりに、市販の蟻酸ニッケル二水和物(和光純薬工業製)1.38重量部(0.05モル/L)を使用した以外、実施例1と同様に触媒を得た。
実施例1と同様反応を開始し、1.5時間経過後、モノクロルベンゼン転化率13.5%、フェノール選択率96.9%、ベンゼン選択率2.2%であった。
【0019】
比較例1
酢酸ニッケルの代わりに、市販の塩化ニッケル六水和物(和光純薬工業製 99.9%)1.77重量部(0.05モル/L)を使用した以外、実施例1と同様に触媒を得た。
実施例1と同様反応を開始し、1.5時間経過後、モノクロルベンゼン転化率12.9%、フェノール選択率94.9%、ベンゼン選択率4.6%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタロシリケートを酢酸ニッケル及び/又は蟻酸ニッケルを溶解させた溶液に浸漬する工程を有する加水分解反応用触媒の製造方法。
【請求項2】
メタロシリケートが結晶性のメタロシリケートである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
加水分解反応が塩素化炭化水素化合物の塩素を水酸基で置換する反応である請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
加水分解反応がクロルベンゼンをフェノールに変換する反応である請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
溶液が水溶液である請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のうちの一の請求項に記載の製造方法により得られる加水分解反応用触媒。

【公開番号】特開2008−126123(P2008−126123A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312527(P2006−312527)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】