説明

加湿器、発電セルシステム、燃料電池装置及び電子機器。

【課題】導電性材料により構成された加湿器における流路を流れる加湿用流体による加湿器の筐体の腐食及び溶出を抑える。
【解決手段】複数の燃料電池セルの間に挟持される加湿器100である。燃料電池セルに供給される被加湿流体を内側に流通させるとともに水蒸気を透過させる中空糸膜106と、中空糸膜106の外側に被加湿流体よりも水蒸気分圧が高い加湿用流体を流通させる流路100Dを有する導電性の筐体110,150と、を備え、流路100Dの内壁面には腐食防止層が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電セルに供給する流体を加湿する加湿器、これを備える発電セルシステム、及びこれを用いた燃料電池装置、燃料電池装置を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、高いエネルギー利用効率を実現できる燃料電池についての研究・開発が盛んにおこなわれている。燃料電池は、アノードガス中の水素ガスと空気中の酸素ガスとを電気化学的に反応させて化学エネルギーから電気エネルギーを直接取り出すものであり、将来性に富む有望な電池であると位置付けられている。
【0003】
従来の燃料電池は、2つのセパレータとその間に挟持された膜電極接合体とにより構成される燃料電池セルを備えている。膜電極接合体は電解質膜の一方の面に燃料極、他方の面に酸素極が設けられたものである。セパレータには、それぞれアノードガス流路及びカソードガス流路が形成され、アノードガス流路はアノードガスを膜電極接合体の燃料極に供給し、カソードガス流路はカソードガスを酸素極に供給する。
【0004】
燃料極に供給された水素ガスは水素イオンと電子となり、電子は燃料極に移動し、水素イオンは電解質膜を透過して酸素極に移動する。酸素極では、電解質膜を透過した水素イオンと、外部回路を経て水素極から酸素極へ移動した電子と、酸素極に供給された酸素ガスとが反応して水を生成する。この電子の移動するエネルギーを電気エネルギーとして利用することができる。
【0005】
電解質膜は水分含有度が高いほど水素イオン透過性が高いため、燃料電池セルに供給するアノードガスやカソードガスを充分に加湿する必要がある。例えば特許文献1では、燃料電池セルに供給するアノードガスやカソードガスを加湿する加湿器が設けられている。この加湿器では、燃料電池セルで生じた水を再利用するため、加湿する水の流路内壁面にフッ化水素酸耐性の樹脂による表面処理が施されている。
【0006】
また、セルスタック内に加湿器を設けることで装置のコンパクト化を図ることも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平2006−127842号公報
【特許文献2】特開平7−245116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、本出願人は装置のコンパクト化及び燃料電池セルでの過剰な結露の防止を図るため、例えば複数の燃料電池セル間に挟持されるインターコネクタや締結部材内に加湿器を設けることを検討している。しかし、このようなインターコネクタや締結部材は導電性の材料からなるため、腐食が起こりやすく、さらなる腐食対策を図る必要がある。
【0008】
本発明の課題は、加湿器における流路を流れる加湿用流体による加湿器の筐体の腐食及び溶出を抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、加湿器であって、発電セルに供給される被加湿流体を内側に流通させるとともに水蒸気を透過させる中空糸膜と、前記発電セルのアノード又はカソードの少なくとも何れか一方に電気的に接続されて設けられ、前記中空糸膜の外側に前記被加湿流体よりも水蒸気分圧が高い加湿用流体を流通させる流路を有する導電性の筐体と、前記流路の内壁面に形成された、樹脂材料からなる腐食防止層と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の加湿器であって、前記腐食防止層は、15〜30μmの厚さを有することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の加湿器であって、前記腐食防止層は、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、の何れかからなることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の加湿器であって、前記腐食防止層は、フッ素系樹脂、球状の黒鉛が混合されたフッ素系樹脂、の何れかからなることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の加湿器であって、前記筐体は前記中空糸膜が収納され前記流路となる凹部を有する容器と、前記凹部を塞ぐ蓋とからなり、前記容器と前記蓋との隙間を塞ぐ環状の封止材が設けられ、前記容器と前記蓋とは前記封止材よりも外側において当接することを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の加湿器であって、少なくとも、前記凹部の内壁面及び前記蓋の前記凹部の開口端に対応する領域に前記腐食防止層が形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の加湿器であって、前記容器及び前記蓋の表面における、前記腐食防止層が形成されている領域を除く領域に、金メッキ層が形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の加湿器であって、前記容器及び前記蓋の表面に金メッキ層が形成され、前記腐食防止層は該金メッキ層上に形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の発明は、発電セルシステムであって、アノード及びカソードを有する少なくとも1つの単位起電部からなる発電セルと、前記発電セルに供給される被加湿流体を内側に流通させるとともに水蒸気を透過させる中空糸膜と、前記発電セルの、前記アノード又は前記カソードの少なくとも何れか一方に電気的に接続されて設けられ、前記中空糸膜の外側に前記被加湿流体よりも水蒸気分圧が高い加湿用流体を流通させる流路を有する導電性の筐体と、前記流路の内壁面に形成された、樹脂材料からなる腐食防止層と、を有する少なくとも1つの加湿器と、を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発電セルシステムであって、前記発電セル及び前記加湿器を複数有し、前記複数の発電セルは積層して配置され、前記複数の加湿器が、前記複数の発電セルの何れかの、前記アノード又は前記カソードの少なくとも何れか一方に電気的に接続されて設けられたセルスタックをなすことを特徴とする。
【0019】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の発電セルシステムであって、前記複数の発電セルにおける少なくとも2つの前記発電セルは、少なくとも1つの前記加湿器を挟持して配置され、該加湿器は、前記2つの発電セルの一方の前記発電セルの前記アノードと他方の前記発電セルの前記カソードとを電気的に導通させるインターコネクタを兼ねていることを特徴とする。
【0020】
請求項12に記載の発明は、請求項9に記載の発電セルシステムであって、前記複数の加湿器における少なくとも2つの前記加湿器は、前記複数の発電セルを間に挟持して締め付ける、締結部材を兼ねていることを特徴とする。
【0021】
請求項13に記載の発明は、燃料電池装置であって、請求項9乃至12のいずれかに記載のセルスタックを備えることを特徴とする。
【0022】
請求項14に記載の発明は、電子機器であって、請求項13に記載の燃料電池装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、導電性の筐体を有する加湿器において、加湿用流体の流路の内壁面に腐食防止層が形成されているので、加湿用流体による加湿器の筐体の腐食及び溶出を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0025】
[第1の実施の形態]
図1は本発明の第1の実施の形態に係るセルスタック1の上面図であり、図2はセルスタック1の前面図であり、図3はセルスタック1の下面図であり、図4はセルスタック1の分解図である。セルスタック1は、下から順に3つの燃料電池セルユニット(発電セル)1A,1B,1Cと、燃料電池セルユニット1B,1Cの間に設けられたアノードガス加湿器100(加湿器)と、燃料電池セルユニット1A,1Bの間に設けられたカソードガス加湿器200(加湿器)と、燃料電池セルユニット1Aの上に設けられた上エンドプレート300A(締結部材)と、燃料電池セルユニット1Cの下に設けられた下エンドプレート300B(締結部材)と、これらを締結するボルト401〜408とからなる。
【0026】
〔燃料電池セルユニット〕
図5は燃料電池セルユニット1Aの断面図である。図5に示すように、燃料電池セルユニット1Aは、単位起電部10を、上部片面セパレータ40と両面セパレータ80との間、両面セパレータ80,80,80の間、両面セパレータ80と下部片面セパレータ60との間に挟持してなる。この上部片面セパレータ40と両面セパレータ80との間に単位起電部10が挟持された構造、両面セパレータ80,80,80の間に単位起電部10が挟持された構造、両面セパレータ80と下部片面セパレータ60との間に単位起電部10が挟持された構造が、それぞれ単位燃料電池セルである。
【0027】
図6は単位起電部10の上面図であり、図7は図6のVII−VII矢視断面図であり、図8は単位起電部10の下面図である。図6,図7,図8に示すように、この単位起電部10は、固体高分子電解質膜11c両面に触媒層11a,11bが設けられた膜電極接合体11と、ガス拡散層12a,12bと、ガスケット13a,13bとを備えて構成されている。
【0028】
固体高分子電解質膜11cは、矩形状又は正方形状に形成された膜であって、水素イオン(H+)を選択的に透過させるものである。固体高分子電解質膜11cの両面であってそれぞれの中央部には、触媒層11a,11bが矩形状又は正方形状に成膜され、触媒層11a上にガス拡散層12aが、触媒層11b上にガス拡散層12bが成膜されている。ガス拡散層12a,12bはガス透過性と電気伝導性を有し、後述する上部片面セパレータ40,70または両面セパレータ80と触媒層11a,11bとを導通させる。触媒層11a及びガス拡散層12aがアノード(水素極)として機能し、触媒層11b及びガス拡散層12bがカソード(酸素極)として機能する。
【0029】
図6、図7に示すように、膜電極接合体11の上面の外周部には、ガス拡散層12aを囲繞するよう矩形枠型又は正方形枠型のガスケット13aが設けられている。また、図7、図8に示すように、膜電極接合体11の下面の外周部には、ガス拡散層22bを囲繞するよう矩形枠型又は正方形枠型のガスケット13bが設けられている。
ガスケット13a,13bは絶縁体であり、かつ弾性体である。このようなガスケット13a,13bは、例えばイソブチレンゴムを用いて形成することができる。
【0030】
ガスケット13a,13bは上部片面セパレータ40、下部片面セパレータ60または両面セパレータ80と固体高分子電解質膜11cとの間に、触媒層11a,11b及びガス拡散層12a,12bを配置するためのスペーサーとして機能する。また、ガスケット13aは、上部片面セパレータ40または両面セパレータ80より供給されるアノードガスが燃料電池セルユニット1Aから漏れ出すことを防ぐガスシールとして機能し、ガスケット13bは、両面セパレータ80または下部片面セパレータ60より供給されるカソードガスが燃料電池セルユニット1Aから漏れ出すことを防ぐガスシールとして機能する。
【0031】
単位起電部10の外周部には、ボルト挿通孔301〜308及びボルト締結孔311〜318と対応する位置に、固体高分子電解質膜11c及びガスケット13a,13bを貫通するボルト挿通孔21〜28が設けられている。
【0032】
さらに、単位起電部10の外周部には、固体高分子電解質膜11c及びガスケット13a,13bを貫通する加湿後アノードガス導入孔31、アノードオフガス排出孔32、加湿後カソードガス導入孔33、カソードオフガス排出孔34、加湿前アノードガス供給孔35、加湿前カソードガス供給孔36、加湿用流体供給孔37、加湿用流体排出孔38が設けられている。
【0033】
加湿後アノードガス導入孔31は、加湿前カソードガス供給孔36及びガス拡散層12a,12bよりも右寄りの位置かつボルト挿通孔22,23,26よりも左寄りの位置であって、ボルト挿通孔22とボルト挿通孔26との中間の位置に設けられている。
【0034】
アノードオフガス排出孔32は、加湿前アノードガス供給孔35及びガス拡散層12a,12bよりも左寄りの位置かつボルト挿通孔21,24,28よりも右寄りの位置であって、ボルト挿通孔24とボルト挿通孔28との中間の位置に設けられている。
【0035】
加湿後カソードガス導入孔33は、加湿前アノードガス供給孔35及びガス拡散層12a,12bよりも左寄りの位置かつボルト挿通孔21,24,28よりも右寄りの位置であって、ボルト挿通孔21とボルト挿通孔28との中間の位置に設けられている。
【0036】
カソードオフガス排出孔24は、加湿前カソードガス供給孔26及びガス拡散層12a,12bよりも右寄りの位置かつボルト挿通孔22,23,26よりも左寄りの位置であって、ボルト挿通孔23とボルト挿通孔26との中間の位置に設けられている。
【0037】
加湿前アノードガス供給孔35は、アノードオフガス排出孔32及び加湿後カソードガス導入孔33よりも右寄りかつ加湿用流体排出孔38よりも左寄りの位置であって、アノードオフガス排出孔32、カソードオフガス排出孔34及びガス拡散層12a,12bよりも後寄りの位置かつボルト挿通孔23,24,27よりも前寄りの位置に設けられている。
【0038】
加湿前カソードガス供給孔36は、加湿後アノードガス導入孔31及びカソードオフガス排出孔34よりも左寄りかつ加湿用流体供給孔37よりも右寄りの位置であって、加湿後アノードガス導入孔31、加湿後カソードガス導入孔33及びガス拡散層12a,12bよりも前寄りの位置かつボルト挿通孔21,22,25よりも後寄りの位置に設けられている。
【0039】
加湿用流体供給孔37は、ボルト挿通孔25,27よりも右寄りかつ加湿前カソードガス供給孔36よりも左寄りの位置であって、アノードオフガス排出孔32、カソードオフガス排出孔34及びガス拡散層12a,12bよりも後寄りの位置かつボルト挿通孔23,24,27よりも前寄りの位置に設けられている。
【0040】
加湿用流体排出孔38は、ボルト挿通孔25,27よりも左寄りかつ加湿前アノードガス供給孔35よりも右寄りの位置であって、加湿後アノードガス導入孔31、加湿後カソードガス導入孔33及びガス拡散層12a,12bよりも前寄りの位置かつボルト挿通孔21,22,25よりも前寄りの位置に設けられている。
【0041】
図9は上部片面セパレータ40の下面(ガス拡散層22と当接する面)図である。上部片面セパレータ40には、上述のボルト挿通孔21〜28、加湿後アノードガス導入孔31、アノードオフガス排出孔32、加湿後カソードガス導入孔33、カソードオフガス排出孔34、加湿前アノードガス供給孔35、加湿前カソードガス供給孔36、加湿用流体供給孔37、及び加湿用流体排出孔38と対応する位置に、ボルト挿通孔41〜48、加湿後アノードガス導入孔51、アノードオフガス排出孔52、加湿後カソードガス導入孔53、カソードオフガス排出孔54、加湿前アノードガス供給孔55、加湿前カソードガス供給孔56、加湿用流体供給孔57、及び加湿用流体排出孔58が、それぞれ貫通して形成されている。
【0042】
図9に示すように、上部片面セパレータ40の下面であってその中央部には、葛折り状の蛇行溝59aが形成されている。蛇行溝59aの一端部は加湿後アノードガス導入孔51に導かれ、他端部はアノードオフガス排出孔52に導かれている。蛇行溝59aがガス拡散層12aにより蓋されることで、加湿後アノードガス導入孔51からアノードオフガス排出孔52まで繋がったアノードガス流路が形成される。
【0043】
図10は下部片面セパレータ60の上面(ガス拡散層12bと当接する面)図である。下部片面セパレータ60には、上述のボルト挿通孔21〜28、加湿後アノードガス導入孔31、アノードオフガス排出孔32、加湿後カソードガス導入孔33、カソードオフガス排出孔34、加湿前アノードガス供給孔35、加湿前カソードガス供給孔36、加湿用流体供給孔37、及び加湿用流体排出孔38と対応する位置に、ボルト挿通孔61〜68、加湿後アノードガス導入孔71、アノードオフガス排出孔72、加湿後カソードガス導入孔73、カソードオフガス排出孔74、加湿前アノードガス供給孔75、加湿前カソードガス供給孔76、加湿用流体供給孔77、及び加湿用流体排出孔78が、それぞれ貫通して形成されている。
【0044】
図10に示すように、下部片面セパレータ60の上面であってその中央部には、葛折り状の蛇行溝79bが形成されている。蛇行溝79bの一端部は加湿後カソードガス導入孔73に導かれ、他端部はカソードオフガス排出孔74に導かれている。蛇行溝79bがガス拡散層12bにより蓋されることで、加湿後カソードガス導入孔73からカソードオフガス排出孔74まで繋がったカソードガス流路が形成される。
【0045】
図11は両面セパレータ80の上面(ガス拡散層12と当接する面)図であり、図12は図11のXII−XII矢視断面図であり、図13は両面セパレータ80の下面(ガス拡散層12と当接する面)図である。両面セパレータ80には、上述のボルト挿通孔21〜28、加湿後アノードガス導入孔31、アノードオフガス排出孔32、加湿後カソードガス導入孔33、カソードオフガス排出孔34、加湿前アノードガス供給孔35、加湿前カソードガス供給孔36、加湿用流体供給孔37、及び加湿用流体排出孔38と対応する位置に、ボルト挿通孔81〜88、加湿後アノードガス導入孔91、アノードオフガス排出孔92、加湿後カソードガス導入孔93、カソードオフガス排出孔94、加湿前アノードガス供給孔95、加湿前カソードガス供給孔96、加湿用流体供給孔97、及び加湿用流体排出孔98が、それぞれ貫通して形成されている。
【0046】
図11、図12に示すように、両面セパレータ80の上面であってその中央部には、葛折り状の蛇行溝99bが形成されている。蛇行溝80bの一端部は加湿後カソードガス導入孔93に導かれ、他端部はカソードオフガス排出孔94に導かれている。蛇行溝99bがガス拡散層12bにより蓋されることで、加湿後カソードガス導入孔93からカソードオフガス排出孔94まで繋がったカソードガス流路が形成される。
【0047】
図12、図13に示すように、両面セパレータ80の下面であってその中央部には、葛折り状の蛇行溝99aが形成されている。蛇行溝99aの一端部は加湿後アノードガス導入孔91に導かれ、他端部はアノードオフガス排出孔92に導かれている。蛇行溝80aがガス拡散層12により蓋されることで、加湿後アノードガス導入孔91からアノードオフガス排出孔92まで繋がったアノードガス流路が形成される。
【0048】
単位起電部10を、上部片面セパレータ40と両面セパレータ80との間、両面セパレータ80,80,80の間、両面セパレータ80と下部片面セパレータ60との間に挟持すると、図5に示すように、加湿後アノードガス導入孔31,51,71,91が連続したアノードガス導入流路、加湿後カソードガス導入孔33,53,73,93が連続したカソードガス導入流路となる。
同様に、アノードオフガス排出孔32,52,72,92が連続したアノードガス排出流路となり、カソードオフガス排出孔34,54,74,94が連続したカソードガス排出流路となり、加湿前アノードガス供給孔35,55,75,95が連続した加湿前アノードガス供給流路となり、加湿前カソードガス供給孔36,56,76,96が連続した加湿前カソードガス供給流路となり、加湿用流体供給孔37,57,77,97が連続したカソードガス加湿用流体供給流路となり、カソードガス加湿用流体排出孔38,58,78,98が連続したカソードガス加湿用流体排出流路となる。
また、ボルト挿通孔21〜28,41〜48,61〜68,81〜88が連続したネジ挿通孔となる。
【0049】
燃料電池セルユニット1B,1Cの構造については、燃料電池セルユニット1Aと同様の構造であるので説明を割愛する。
【0050】
〔アノードガス加湿器〕
図14はアノードガス加湿器100の断面図であり、図15はアノードガス加湿器100の分解図である。アノードガス加湿器100は、蓋110及び加湿容器150からなる筐体と、ガスケット190(封止材)と、締結ボルト101〜104と、中空糸膜モジュール105とからなる。
なお、アノードガス加湿器100は、燃料電池セルユニット1Bの上部片面セパレータ40と燃料電池セルユニット1Cの下部片面セパレータ60とを導通させるインターコネクタとしても機能する。
【0051】
図16は蓋110の上面図であり、図17は蓋110の側面図であり、図18は蓋110の下面図である。図16〜図18に示すように、蓋110には、上述のボルト挿通孔21〜28及び加湿後アノードガス導入孔31、アノードオフガス排出孔32、加湿後カソードガス導入孔33、カソードオフガス排出孔34と対応する位置に、ボルト挿通孔111〜118及び加湿後アノードガス導入孔121、アノードオフガス排出孔122、加湿後カソードガス導入孔123、カソードオフガス排出孔124が、それぞれ設けられている。
【0052】
また、蓋110の上面において、加湿後アノードガス導入孔121、アノードオフガス排出孔122、加湿後カソードガス導入孔123、カソードオフガス排出孔124を囲むように、それぞれOリング131,132,133,134が設けられている。Oリング131〜134は、燃料電池セルユニット1Cの下部片面セパレータ60と蓋110の上面との隙間を封止する。
【0053】
また、ボルト挿通孔111とボルト挿通孔115との中間の位置には、ボルト挿通孔141が設けられており、ボルト挿通孔112とボルト挿通孔115との中間の位置には、ボルト挿通孔142が設けられており、ボルト挿通孔113とボルト挿通孔117との中間の位置には、ボルト挿通孔143が設けられており、ボルト挿通孔114とボルト挿通孔115との中間の位置には、ボルト挿通孔144が設けられている。
【0054】
蓋110の下面の中央部には、凹部110Aが形成されている。凹部110Aは加湿容器150の凹部150Aとともに加湿槽100Aを形成する。
【0055】
蓋110は、例えば金属等の剛性が高くかつ導電性を有する材料からなり、さらに、熱伝導性が高いことが好ましい。ここで、蓋110の表面には、例えば、下地メッキ層(例えばNi等)を形成した上にAuメッキ層が形成される。これにより、電気的な接触抵抗を低減するとともに、熱伝導性を高めることができる。
【0056】
図18に示すように、加湿後アノードガス導入孔121、アノードオフガス排出孔122、加湿後カソードガス導入孔123、カソードオフガス排出孔124の内壁面、蓋110の上面においてOリング131〜134の内側の面、蓋110の下面において凹部110Aの内壁面及びその近傍、加湿後アノードガス導入孔121、アノードオフガス排出孔122、加湿後カソードガス導入孔123、カソードオフガス排出孔124の外周部の表面、及び後述する加湿前アノードガス供給溝185、加湿後アノードガス排出溝186、加湿用流体供給溝187、加湿用流体排出溝188と対応する部分の表面には、腐食防止層110Bが形成されている。
【0057】
腐食防止層110Bは例えば樹脂を膜厚約15〜30μmでコーティングすることにより形成することができる。腐食防止層110Bを形成する樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂などで、好ましくは、フッ素系樹脂である。また、さらに熱伝導を向上させるためにフッ素系樹脂に球状の黒鉛を混合したものなどを用いることもできる。また、これらの樹脂を複合して用いてもよく、複数層に積層して腐食防止層110Bを形成してもよい。腐食防止層110Bを設けることで、加湿用流体による蓋110を形成する材料の腐食及び溶出を抑えることができる。
【0058】
ここで、蓋110の表面に形成されるAuメッキ層と蓋110の下面に形成される腐食防止層110Bの関係について説明する。蓋110に形成されるAuメッキ層は蓋110の表面全体に形成されるものであってもよく、この場合、腐食防止層110BはAuメッキ層上に形成される。これによれば、電気的な接触抵抗を良好に低減し、熱伝導性を高めることができるとともに、腐食防止層110Bによる蓋110を形成する材料の腐食及び溶出の抑制効果に加えて、Auメッキ層による腐食防止効果も得ることができて、より高い腐食及び溶出の防止効果を得ることができる。
【0059】
しかしながら、Auメッキ層上には、一般に他の物質が付着し難いことが知られており、Auメッキ層上に形成した腐食防止層110Bに、長期的に剥離が生じる可能性もあるため、蓋110の下面において、蓋110の下面全体ではなく、図18の斜線部分に示す、腐食防止層110Bが形成される領域を除く領域にのみAuメッキ層110Dを形成してもよい。この場合、腐食防止層110Bは蓋110を構成する材料上に直接形成されて、Auメッキ110D層が形成されていることにより接触抵抗を良好に低減し、熱伝導性を高め、腐食防止層110Bによる腐食及び溶出の良好に抑制することができるとともに、高い信頼性を得ることができる。
【0060】
図19は加湿容器150の上面図であり、図20は加湿容器150の側面図であり、図21は加湿容器150の下面図である。図19〜図21に示すように、加湿容器150には、上述のボルト挿通孔21〜28及び加湿後アノードガス導入孔31、アノードオフガス排出孔32、加湿後カソードガス導入孔33、カソードオフガス排出孔34、加湿前アノードガス供給孔35、加湿用流体供給孔37、加湿用流体排出孔38と対応する位置に、ボルト挿通孔151〜158及び加湿後アノードガス導入孔161、アノードオフガス排出孔162、加湿後カソードガス導入孔163、カソードオフガス排出孔164、加湿前アノードガス供給孔165、加湿用流体供給孔167、加湿用流体排出孔168が、それぞれ設けられている。
【0061】
また、加湿容器150の下面において、加湿後アノードガス導入孔161、アノードオフガス排出孔162、加湿後カソードガス導入孔163、カソードオフガス排出孔164、加湿前アノードガス供給孔165、加湿用流体供給孔167、加湿用流体排出孔168の外周部には、それぞれOリング171〜178が設けられている。Oリング171〜178は、上部片面セパレータ40と加湿容器150の下面との隙間を封止する。
【0062】
また、加湿容器150には、ボルト挿通孔141〜144と対応する位置に、それぞれボルト締結孔181〜184が設けられている。
【0063】
加湿容器150の上面の中央部には、凹部150Aが形成されている。凹部150Aは蓋110の凹部110Aとともに加湿槽100Aを形成する。
凹部150Aと、加湿前アノードガス供給孔165、加湿後アノードガス導入孔161、加湿用流体供給孔167、加湿用流体排出孔168との間には、それぞれ、加湿前アノードガス供給溝185、加湿後アノードガス排出溝186、加湿用流体供給溝187、加湿用流体排出溝188が設けられている。
【0064】
また、加湿容器150の上面には、外周部、ボルト挿通孔151〜158の近傍及びボルト締結孔181〜184の近傍を除く部分に、ガスケット190(封止材)が配置される座ぐり150Cが設けられている。座ぐり150Cは加湿容器150の上面からガスケット190の厚さと同等の深さ(約100μm)の窪みである。
【0065】
加湿容器150は、例えば金属等の剛性が高くかつ導電性を有する材料からなり、さらに、熱伝導性が高いことが好ましい。加湿容器150の表面には、例えば、下地メッキ層(例えばNi等)を形成した上にAuメッキ層が形成されて、電気的な接触抵抗を低減するとともに、熱伝導性を高めることができる。
【0066】
図19に示すように、加湿後アノードガス導入孔161、アノードオフガス排出孔162、加湿後カソードガス導入孔163、カソードオフガス排出孔164、加湿前アノードガス供給孔165、加湿前カソードガス供給孔166、加湿用流体供給孔167、加湿用流体排出孔168の内壁面、加湿容器150の上面において凹部150A、加湿前アノードガス供給溝185、加湿後アノードガス排出溝186、加湿用流体供給溝187、加湿用流体排出溝188の内壁面、加湿後アノードガス導入孔161、アノードオフガス排出孔162、加湿後カソードガス導入孔163、カソードオフガス排出孔164の外周部の表面、及び加湿容器150の下面においてOリング171〜178の内側の面には、腐食防止層150Bが形成されている。
【0067】
腐食防止層150Bは例えば樹脂を膜厚15〜30μmでコーティングすることにより形成することができる。腐食防止層150Bを形成する樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂などで、好ましくは、フッ素樹脂である。また、さらに熱伝導を向上させるためにフッ素樹脂に球状の黒鉛を混合したものなどを用いることもできる。また、これらの樹脂を複合して用いてもよく、複数層に積層して腐食防止層110Bを形成してもよい。腐食防止層150Bを設けることで、加湿用流体による加湿容器150を形成する材料の腐食及び溶出を抑えることができる。
【0068】
ここで、加湿容器150においても、上述の蓋110の場合と同様に、Auメッキ層を加湿容器150の表面全体に形成し、腐食防止層150BをAuメッキ層上に形成するものであってもよい。また、加湿容器150の上面において、加湿容器150の上面全体ではなく、図19の斜線部分に示す、腐食防止層150Bが形成される領域を除く領域にのみAuメッキ層150Dを形成してもよい。
【0069】
図22はガスケット190の上面図である。ガスケット190は座ぐり150Cと同様の形状であり、貫通孔191,192,193,194が設けられている。貫通孔191は、凹部150A、加湿前アノードガス供給溝185、加湿後アノードガス排出溝186、加湿用流体供給溝187、加湿用流体排出溝188及び加湿前アノードガス供給孔165、加湿後アノードガス導入孔161、加湿用流体供給孔167、加湿用流体排出孔168と対応する形状である。また、貫通孔192,193,194は、それぞれアノードオフガス排出孔162、加湿後カソードガス導入孔163、カソードオフガス排出孔164と対応する位置に設けられている。
【0070】
なお、蓋110は座ぐり150Cよりも外側において加湿容器150と当接するため、ガスケット190が蓋110と加湿容器150との当接を妨げることはない。
【0071】
中空糸膜モジュール105は、複数の中空糸膜106と、中空糸膜の両端部に設けられた封止固定部107,108とからなる。中空糸膜106は、中心部に空洞106aを有する多数の中空糸を有しており、水分子の透過性を有する膜である。このような中空糸膜106としては、ポリイミドやフッ素系の高分子膜、例えば、NOK(株)製の微多孔質であるポリフェニールスルホン、ポリエーテルイミドや、旭硝子(株)製の非多孔質であるテトラフルオロエチレン+パーフルオロビニルエーテル等からなるものを用いることができる。また、ポリエチレン、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、酢酸セルロース等からなる中空糸膜を用いてもよい。
【0072】
図23は中空糸膜モジュール105の側面図である。封止固定部107,108は、例えば加熱硬化樹脂、自然硬化する樹脂、光硬化樹脂等を硬化させてなり、中空糸膜106の束の両端部を固定する。図23に示すように、中空糸膜106は封止固定部107,108を貫通している。
【0073】
図15に示すように、中空糸膜モジュール105は中空糸膜106が左右方向に配置されるように加湿槽100Aに収容され、加湿槽100A内の空間を封止固定部107,108により3区画に分割する。中空糸膜モジュール105よりも左右側方の区画は、それぞれ加湿前アノードガス供給溝185と繋がる加湿前アノードガス供給部100B、加湿後アノードガス排出溝186と繋がる加湿後アノードガス排出部100Cとなる。加湿前アノードガス供給部100Bと加湿後アノードガス排出部100Cとは、中空糸膜106の空洞106aにより通じている。
【0074】
ここで、中空糸膜モジュール105の加湿槽100A内での位置を固定するために、中空糸膜モジュール105の左右両端の封止固定部107、108は、蓋110の下面の凹部110Aの内壁面上の腐食防止層110Bと、又は、加湿容器150の凹部150Aの内壁面上の腐食防止層150Bと、あるいはこれらの両方と、図示しない接着剤を介して、接着されている。
【0075】
この場合、蓋110の下面の凹部110Aの内壁面や加湿容器150の凹部150Aの内壁面にAuメッキ層のみが形成されている場合には、Auメッキ層と封止固定部107、108とは接着され難く、良好な信頼性を得難いが、本実施形態においては、蓋110の下面の凹部110Aの内壁面上及び加湿容器150の凹部150Aの内壁面上に樹脂からなる腐食防止層150Bが形成されているため、封止固定部107、108を比較的強固に接着することができて、良好な信頼性を得ることができる。
一方、封止固定部107,108間の空間は、加湿用流体供給溝187及び加湿用流体排出溝188と繋がる加湿用流体流路100Dとなる。
【0076】
中空糸膜106の空洞106aにアノードガスを流通させ、加湿用流体流路100Dに加湿用流体を流通させることで、加湿用流体中の水分子が中空糸膜106を通過して空洞106aに移動し、アノードガス内で気化することにより、アノードガスが加湿される。
【0077】
締結ボルト101〜104は、加湿容器150の凹部151内に中空糸膜モジュール105が配置され、かつ、座ぐり150Cにガスケット190が配置された状態で、それぞれ蓋110の上方からボルト挿通孔141〜144に挿通され、ボルト締結孔181〜184に締結される。
【0078】
〔カソードガス加湿器〕
図24はカソードガス加湿器200の断面図であり、図25はカソードガス加湿器200の分解図である。カソードガス加湿器200は、アノードガス加湿器100と同様に、蓋210及び加湿容器250からなる筐体と、ガスケット290(封止材)と、締結ボルト201〜204と、中空糸膜モジュール205とからなる。
なお、カソードガス加湿器200は、燃料電池セルユニット1Aの上部片面セパレータ40と燃料電池セルユニット1Bの下部片面セパレータ60とを導通させるインターコネクタとしても機能する。
【0079】
図26は蓋210の上面図であり、図27は蓋210の側面図であり、図28は蓋210の下面図である。蓋210においては、蓋110と同様に、ボルト挿通孔211〜218及び加湿後アノードガス導入孔221、アノードオフガス排出孔222、加湿後カソードガス導入孔223、カソードオフガス排出孔224がそれぞれ設けられており、さらに、加湿前アノードガス供給孔35、加湿前カソードガス供給孔36、加湿用流体供給孔37、及び加湿用流体排出孔38と対応する位置に、加湿前アノードガス供給孔225、加湿前カソードガス供給孔226、加湿用流体供給孔227、及び加湿用流体排出孔228が設けられている。
【0080】
また、蓋210の上面において、蓋110と同様にOリング231〜234が設けられるとともに、加湿前アノードガス供給孔225、加湿前カソードガス供給孔226、加湿用流体供給孔227、及び加湿用流体排出孔228を囲むように、それぞれOリング235,236,237,238が設けられている。Oリング231〜238は、下部片面セパレータ60と蓋210の上面との隙間を封止する。
【0081】
また、蓋210には、蓋110と同様に、ボルト挿通孔141〜144と同様のボルト挿通孔241〜244が設けられている。
【0082】
蓋210の下面の中央部には、凹部210Aが形成されている。凹部210Aは加湿容器250の凹部250Aとともに加湿槽200Aを形成する。
【0083】
蓋210は、例えば金属等の剛性が高くかつ導電性を有する材料からなり、さらに、熱伝導性が高いことが好ましい。蓋210の表面には、例えば、下地メッキ層(例えばNi等)を形成した上にAuメッキが形成されて、電気的な接触抵抗を低減するとともに、熱伝導性を高めることができる。
【0084】
図28に示すように、加湿後アノードガス導入孔221、アノードオフガス排出孔222、加湿後カソードガス導入孔223、カソードオフガス排出孔224、加湿前アノードガス供給孔225、加湿前カソードガス供給孔226、加湿用流体供給孔227、加湿用流体排出孔228の内壁面、蓋210の上面においてOリング231〜238の内側の面、蓋210の下面において凹部210Aの内壁面及びその近傍、加湿後アノードガス導入孔221、アノードオフガス排出孔222、加湿後カソードガス導入孔223、カソードオフガス排出孔224、加湿前アノードガス供給孔225、加湿前カソードガス供給孔226、加湿用流体供給孔227、加湿用流体排出孔228の外周部の表面、及び後述する加湿後カソードガス排出溝285、加湿前カソードガス供給溝286、加湿用流体供給溝287、加湿用流体排出溝288と対応する部分の表面には、腐食防止層210Bが形成されている。
【0085】
腐食防止層210Bは例えば樹脂を膜厚15〜30μmでコーティングすることにより形成することができる。腐食防止層210Bを形成する樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂などで、好ましくは、フッ素樹脂である。また、さらに熱伝導を向上させるためにフッ素樹脂に球状の黒鉛を混合したものなどを用いることもできる。また、これらの樹脂を複合して用いてもよく、複数層に積層して腐食防止層110Bを形成してもよい。腐食防止層210Bを設けることで、加湿用流体による蓋210を形成する材料の腐食及び溶出をさらに抑えることができる。
【0086】
ここで、蓋210においても、上述の蓋110の場合と同様に、Auメッキ層を蓋210の表面全体に形成し、腐食防止層210BをAuメッキ層上に形成するものであってもよい。また、蓋210の下面において、蓋210の下面全体ではなく、図28の斜線部分に示す、腐食防止層210Bが形成される領域を除く領域にのみAuメッキ層210Dを形成してもよい。
【0087】
図29は加湿容器250の上面図であり、図30は加湿容器250の側面図であり、図31は加湿容器250の下面図である。図29〜図31に示すように、加湿容器250には、加湿容器150と同様に、ボルト挿通孔251〜258及び加湿後アノードガス導入孔261、アノードオフガス排出孔262、加湿後カソードガス導入孔263、カソードオフガス排出孔264、加湿前アノードガス供給孔265、加湿用流体供給孔267、加湿用流体排出孔268が、それぞれ設けられている。また、加湿前カソードガス供給孔36と対応する位置に、加湿前カソードガス供給孔266が設けられている。
【0088】
また、加湿容器250の下面において、加湿後アノードガス導入孔261、アノードオフガス排出孔262、加湿後カソードガス導入孔263、カソードオフガス排出孔264、加湿前アノードガス供給孔265、加湿前カソードガス供給孔266、加湿用流体供給孔267、加湿用流体排出孔268の外周部には、それぞれOリング271〜278が設けられている。Oリング271〜278は、上部片面セパレータ40と加湿容器250の下面との隙間を封止する。
【0089】
また、加湿容器250には、ボルト挿通孔241〜244と対応する位置に、それぞれボルト締結孔281〜284が設けられている。
【0090】
加湿容器250の上面の中央部には、凹部250Aが形成されている。凹部250Aは蓋210の凹部210Aとともに加湿槽200Aを形成する。
凹部250Aと、加湿後カソードガス導入孔263、加湿前カソードガス供給孔266、加湿用流体供給孔267、加湿用流体排出孔268との間には、それぞれ、加湿後カソードガス排出溝285、加湿前カソードガス供給溝286、加湿用流体供給溝287、加湿用流体排出溝288が設けられている。
【0091】
また、加湿容器250の上面には、外周部、ボルト挿通孔251〜258の近傍及びボルト締結孔281〜284の近傍を除く部分に、ガスケット290(封止材)が配置される座ぐり250Cが設けられている。座ぐり250Cは加湿容器250の上面からガスケット290の厚さと同等の深さ(約100μm)の窪みである。
【0092】
加湿容器250は、例えば金属等の剛性が高くかつ導電性を有する材料からなり、さらに、熱伝導性が高いことが好ましい。加湿容器250の表面には、例えば、下地メッキ層(例えばNi等)を形成した上にAuメッキ層が形成されて、電気的な接触抵抗を低減するとともに、熱伝導性を高めることができる。
【0093】
図29に示すように、加湿後アノードガス導入孔261、アノードオフガス排出孔262、加湿後カソードガス導入孔263、カソードオフガス排出孔264、加湿前アノードガス供給孔265、加湿前カソードガス供給孔266、加湿用流体供給孔267、加湿用流体排出孔268の内壁面、加湿容器250の上面において凹部250A、加湿後カソードガス排出溝285、加湿前カソードガス供給溝286、加湿用流体供給溝287、加湿用流体排出溝288の内壁面、加湿後アノードガス導入孔261、アノードオフガス排出孔262、加湿後カソードガス導入孔263、カソードオフガス排出孔264の外周部の表面、及び加湿容器250の下面においてOリング271〜278の内側の面には、腐食防止層250Bが形成されている。
【0094】
腐食防止層250Bは例えば樹脂を膜厚15〜30μmでコーティングすることにより形成することができる。腐食防止層250Bを形成する樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂などで、好ましくは、フッ素樹脂である。また、さらに熱伝導を向上させるためにフッ素樹脂に球状の黒鉛を混合したもの等を用いることもできる。また、これらの樹脂を複合して用いてもよく、複数層に積層して腐食防止層110Bを形成してもよい。腐食防止層250Bを設けることで、加湿用流体による加湿容器250を形成する材料の腐食及び溶出をさらに抑えることができる。
【0095】
ここで、加湿容器250においても、上述の蓋110の場合と同様に、Auメッキ層を加湿容器250の表面全体に形成し、腐食防止層250BをAuメッキ層上に形成するものであってもよい。また、加湿容器250の上面において、加湿容器250の上面全体ではなく、図29の斜線部分に示す、腐食防止層250Bが形成される領域を除く領域にのみAuメッキ層250Dを形成してもよい。
【0096】
図32はガスケット290の上面図である。ガスケット290は座ぐり250Cと同様の形状であり、貫通孔291,292,293,294,295が設けられている。貫通孔293は、凹部150A、加湿後カソードガス排出溝285、加湿前カソードガス供給溝286、加湿用流体供給溝287、加湿用流体排出溝288及び加湿後カソードガス導入孔263、加湿前カソードガス供給口266、加湿用流体供給口267、加湿用流体排出口268と対応する形状である。また、貫通孔291,292,294,295は、それぞれ加湿後アノードガス導入孔261、アノードオフガス排出孔262、カソードオフガス排出孔264、加湿前アノードガス供給孔265と対応する位置に設けられている。
【0097】
なお、蓋210は座ぐり250Cよりも外側において加湿容器250と当接するため、ガスケット290が蓋210と加湿容器250との当接を妨げることはない。
【0098】
中空糸膜モジュール205は、複数の中空糸膜206と、中空糸膜の両端部に設けられた封止固定部207,208とからなる。中空糸膜206は、中心部に空洞206aを有しており、水分子の透過性を有する膜である。このような中空糸膜206としては、ポリイミドやフッ素系の高分子膜、例えば、NOK(株)製の微多孔質であるポリフェニールスルホン、ポリエーテルイミドや、旭硝子(株)製の非多孔質であるテトラフルオロエチレン+パーフルオロビニルエーテル等からなるものを用いることができる。また、ポリエチレン、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、酢酸セルロース等からなる中空糸膜を用いてもよい。
【0099】
図33は中空糸膜モジュール205の側面図である。封止固定部207,208は、例えば加熱硬化樹脂、自然硬化する樹脂、光硬化樹脂等を硬化させてなり、中空糸膜の束の両端部を固定する。図33に示すように、中空糸膜206は封止固定部207,208を貫通している。
【0100】
図25に示すように、中空糸膜モジュール205は中空糸膜206が左右方向に配置されるように加湿槽200Aに収容され、加湿槽200A内の空間を封止固定部207,208により3区画に分割する。中空糸膜モジュール205よりも左右側方の区画は、それぞれ加湿前カソードガス供給溝286と繋がる加湿前カソードガス供給部200B、加湿後カソードガス排出溝285と繋がる加湿後カソードガス排出部200Cとなる。加湿前カソードガス供給部200Bと加湿後カソードガス排出部200Cとは、中空糸膜206の空洞206aにより通じている。
【0101】
ここで、中空糸膜モジュール205の加湿槽200A内での位置を固定するために、中空糸膜モジュール205の左右両端の封止固定部207、208は、蓋210の下面の凹部210Aの内壁面上の腐食防止層210Bと、又は、加湿容器250の凹部250Aの内壁面上の腐食防止層250Bと、あるいはこれらの両方と、図示しない接着剤を介して、接着されている。この場合においても、蓋210の下面の凹部210Aの内壁面上及び加湿容器250の凹部250Aの内壁面上に樹脂からなる腐食防止層250Bが形成されていることにより、封止固定部207、208を比較的強固に接着することができて、良好な信頼性を得ることができる。
一方、封止固定部207,208間の空間は、加湿用流体供給溝287及び加湿用流体排出溝288と繋がる加湿用流体流路200Dとなる。
【0102】
中空糸膜206の空洞206aにカソードガスを流通させ、加湿用流体流路200Dに加湿用流体を流通させることで、加湿用流体中の水分子が中空糸膜206を通過して空洞206aに移動し、カソードガス内で気化することにより、カソードガスが加湿される。
【0103】
締結ボルト201〜204は、加湿容器250の凹部251内に中空糸膜モジュール205が配置され、かつ、座ぐり250Cにガスケット290が配置された状態で、それぞれ蓋210の上方からボルト挿通孔241〜244に挿通され、ボルト締結孔281〜284に締結される。
【0104】
上エンドプレート300Aには、図1、図2に示すように、左前角部にボルト挿通孔301が、右前角部にボルト挿通孔302が、右後角部にボルト挿通孔303が、左後角部にボルト挿通孔304がそれぞれ設けられている。また、ボルト挿通孔301とボルト挿通孔302との中間の位置にボルト挿通孔305が、ボルト挿通孔302とボルト挿通孔303との中間位置にボルト挿通孔306が、ボルト挿通孔303とボルト挿通孔304との中間位置にボルト挿通孔307が、ボルト挿通孔304とボルト挿通孔301との中間位置にボルト挿通孔308がそれぞれ設けられている。
【0105】
下エンドプレート300Bには、図2、図3に示すように、ボルト挿通孔301〜308と対応する位置に、ボルト締結孔311〜318がそれぞれ設けられている。
ボルト401〜408には、ボルト締結孔311〜318と螺合する先端部に雄ネジが切られるとともに、雄ネジが切られた部分以外は例えば樹脂コーティングにより表面に絶縁処理が施されている。
【0106】
さらに、下エンドプレート300Bには、アノードオフガス排出孔32、カソードオフガス排出孔34、加湿前アノードガス供給孔35、加湿前カソードガス供給孔36、加湿用流体供給孔37、加湿用流体排出孔38と対応する位置に、上下に貫通するアノードオフガス排出孔322、カソードオフガス排出孔324、加湿前アノードガス供給孔325、加湿前カソードガス供給孔326、加湿用流体供給孔327、加湿用流体排出孔328が設けられている。アノードオフガス排出孔322、カソードオフガス排出孔324、加湿前アノードガス供給孔325、加湿前カソードガス供給孔326、加湿用流体供給孔327、加湿用流体排出孔328は、下エンドプレート300Bの下面において、図示しないアノードオフガス排出管、カソードオフガス排出管、加湿前アノードガス供給管、加湿前カソードガス供給管、加湿用流体供給管、加湿用流体排出管にそれぞれ接続される。
【0107】
下エンドプレート300B、燃料電池セルユニット1A、カソードガス加湿器200、燃料電池セルユニット1B、アノードガス加湿器100、燃料電池セルユニット1C、及び上エンドプレート300Aは下からこの順に積層される。ボルト401〜408は、図1〜図4に示すように、それぞれ上エンドプレート300Aのボルト挿通孔301〜308に挿入するとともに、3つの燃料電池セルユニット1A,1B,1C、アノードガス加湿器100及びカソードガス加湿器200に設けられたボルト挿入孔に挿入し、ボルト締結孔311〜318に締結することで、セルスタック1が図1に示す状態に組み立てられる。
【0108】
なお、上記実施形態においては、セルスタック1において、燃料電池セルユニット1Bと燃料電池セルユニット1Cとの間にアノードガス加湿器100が設けられ、燃料電池セルユニット1Aと燃料電池セルユニット1Bとの間にカソードガス加湿器200が設けられる構成としたが、これは一例に過ぎず、他の構成を有するものであってもよい。例えば、上エンドプレート300Aと燃料電池セルユニット1Cとの間に、更にアノードガス加湿器100が設けられるものであってもよいし、燃料電池セルユニット1Aと下エンドプレート300Bとの間に、更にカソードガス加湿器200が設けられるものであってもよいし、更に、上エンドプレート300Aや下エンドプレート300Bを備えず、アノードガス加湿器100又はカソードガス加湿器200を上エンドプレート300Aや下エンドプレート300Bの代わりとしても用いるものであってもよい。また、アノードガス加湿器100及びカソードガス加湿器200の配置が異なるものであってもよい。
【0109】
〔セルスタックの動作〕
次に、本実施形態におけるセルスタック1の動作について説明する。まず、セルスタック1を所定の動作温度にし、加湿用流体、アノードガス及びカソードガスを供給する。
【0110】
1.加湿用流体の供給
加湿用流体供給孔327から、加湿用流体供給孔37,57,77,97,167,227,267、加湿用流体供給溝187,287を経て、加湿用流体流路100D,200Dに加湿用流体を流通させ、加湿用流体排出溝188,288から加湿用流体排出孔38,58,78,98,168,228,268,328から排出されるように、加湿用流体を供給する。
【0111】
加湿用流体として、アノードガスやカソードガスよりも水蒸気分圧が高い気体または水を含む液体のうち何れか一方の流体を用いることができる。このような流体として、例えば水を用いることができる。
【0112】
2.アノードガスの供給
加湿前アノードガス供給孔325から、加湿前アノードガス供給孔35,55,75,95,165,225,265、加湿前アノードガス供給溝185、加湿前アノードガス供給部100Bを経て、中空糸膜106の空洞106aにアノードガスを流通させ、加湿後アノードガス排出部100C、加湿後アノードガス排出溝186、加湿後アノードガス導入孔31,51,71,91,121,161,221,261、蛇行溝59a,99a、アノードオフガス排出孔32,52,72,92,122,162,222,262を通って、アノードオフガス排出孔322から排出されるように、アノードガスを供給する。
【0113】
3.カソードガスの供給
加湿前アノードガス供給孔326から、加湿前アノードガス供給孔36,56,76,96,226,266、加湿前カソードガス供給溝286、加湿前カソードガス供給部200Bを経て、中空糸膜206の空洞206aにカソードガスを流通させ、加湿後カソードガス排出部200C、加湿後カソードガス排出溝285、加湿後カソードガス導入孔33,53,73,93,123,163,223,263、蛇行溝59b,79b、カソードオフガス排出孔34,54,74,94,124,164,224,264を通って、カソードオフガス排出孔324から排出されるように、カソードガスを供給する。
【0114】
以上のように、加湿用流体、アノードガス及びカソードガスをセルスタック1に供給すると、加湿用流体流路加湿用流体流路100D,200D内の水分子が中空糸膜106,206を透過して空洞106a,206a内で気化するため、空洞106a内を通過するアノードガス、空洞206a内を通過するカソードガスを加湿することができる。
【0115】
ここで、アノードガス加湿器100及びカソードガス加湿器200は燃料電池セルユニット1A,1B,1Cと隣接するとともに、熱伝導性が高い材料からなる。
このため、加湿用流体中の水分子が中空糸膜106,206を通過して空洞106a,206aに移動し、アノードガス内やカソードガス内で気化するときの気化熱として、燃料電池セルユニット1A,1B,1Cで発生する熱を利用することができるので、アノードガス加湿器100、カソードガス加湿器200と燃料電池セルユニット1A,1B,1Cとの間で効率よく熱交換することができる。
【0116】
また、燃料電池セルユニット1A,1B,1Cの熱がアノードガス加湿器100及びカソードガス加湿器200に伝達し、加湿用流体中の水の気化熱として奪われるので、加湿用流体流路100D,200Dの温度は、燃料電池セルユニット1の温度に合わせて変動し、燃料電池セルユニット1A,1B,1Cの温度よりも低く維持される。したがって、加湿されたアノードガス及びカソードガスは燃料電池セルユニット1A,1B,1C内で冷却されることがなく、結露が発生しにくい。
【0117】
また、加湿用流体を循環させることによりアノードガス加湿器100及びカソードガス加湿器200を冷却するとともに、加湿用流体中の水が奪う気化熱によりアノードガス加湿器100及びカソードガス加湿器200が冷却されるので、燃料電池セルユニット1A,1B,1Cを冷却することができる。ここで、腐食防止層110B,150B,210B,250Bの膜厚を15〜30μmに抑えているため、アノードガス加湿器100及びカソードガス加湿器200から加湿用流体への伝熱が腐食防止層110B,150B,210B,250Bにより妨げられることがない。
【0118】
加湿されたアノードガスは蛇行溝59a,99aからガス拡散層12aに供給される。アノードガス中の水素ガスは、電気化学反応式(1)に示すように、図示しない触媒の作用により、水素イオンと、電子とに分離される。水素イオンは、膜電極接合体11が備える固体高分子電解質膜を透過してガス拡散層12bに到達する。
2→2H++2e- ・・・ (1)
【0119】
一方、加湿されたカソードガスは蛇行溝79b,99bからガス拡散層12bに供給される。カソードガス中の酸素ガスは、電気化学反応式(2)に示すように、図示しない触媒の作用により、膜電極接合体11が備える固体高分子電解質膜を透過した水素イオン及び電子とともに、水を生成する。
2H++1/2O2+2e-→H2O ・・・ (2)
【0120】
このように、ガス拡散層12bで電子が消費され、ガス拡散層12aで電子が生成されることにより、膜電極接合体11が備える固体高分子電解質膜の両面間に電位差が生じるため、電力を取り出すことができる。
【0121】
また、上記実施形態においては、アノードガスやカソードガスよりも水蒸気分圧が高い加湿用流体を加湿用流体流路100D,200Dに供給したが、代わりに、乾燥した気体などの、アノードガスやカソードガスよりも水蒸気分圧が低い流体を供給することで、アノードガス加湿器100やカソードガス加湿器200を乾燥装置として用いることもできる。例えば、上記実施形態と比べて低出力で駆動するなど、燃料電池装置の駆動条件によって燃料電池セルユニット1A,1B,1Cの動作温度が比較的低くなることがある。この場合、アノードガス加湿器100やカソードガス加湿器200を乾燥装置として用いることで、燃料電池セルユニット1A,1B,1C内で結露するのを抑制することができる。
【0122】
なお、上記実施形態においては、上エンドプレート300A、下エンドプレート300B及びボルト401〜408によりセルスタック1を締め付ける構造としたが、ボルト401〜408を用いる代わりに、例えば図示しない帯状または紐状の部材で上エンドプレート300Aと下エンドプレート300Bとを連結することでセルスタック1を締め付ける構造としてもよい。あるいは、ボルト401〜408を用いる代わりに、例えば図示しない箱体にセルスタック1を収容し、箱体の壁面に螺合するネジ等の締付部材によりセルスタック1を締め付けてもよい。
【0123】
〔電子機器〕
図34は、本実施形態のセルスタック1が好適に適用される電子機器500を示すブロック図である。電子機器500は、例えば、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、電子手帳、腕時計、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、ゲーム機器、遊技機、電子計算機その他の電子機器である。
【0124】
電子機器500は、燃料電池装置510と、電子機器本体590とを備える。燃料電池装置510は、燃料容器501と、気化器502と、改質器503と、一酸化炭素除去器504と、セルスタック1と、DC/DCコンバータ505と、二次電池506とを備える。
【0125】
燃料容器501は、燃料および水を貯留し、図示しないマイクロポンプにより燃料及び水の混合液を気化器502に供給する。この燃料容器501内に貯留される燃料としては、炭化水素系の液体燃料が適用可能である。具体的には、メタノール、エタノールなどのアルコール類や、ジメチルエーテルなどのエーテル類、ガソリンなどがある。燃料容器501内には、燃料と水とは別々で貯蔵されていてもよいし、混合された状態で貯蔵されていてもよい。
なお、以下の説明では燃料としてメタノールを使用する場合について説明するが、他の化合物を用いてもよい。
【0126】
気化器502は、燃料容器501から供給される燃料と水を気化させる。改質器503は、気化器502から供給される気化された燃料および水蒸気を触媒による改質反応によって改質し、水素を含む混合気体を生成するものである。燃料としてメタノールを用いる場合、下記の化学反応式(3),(4)に示す改質反応によって、主生成物である水素ガス、二酸化炭素ガス及び副生成物である微量の一酸化炭素の混合気体が生成される。
【0127】
一酸化炭素除去器504は、一酸化炭素を化学反応式(5)のように酸化させることで混合気体から除去する。一酸化炭素除去器504には、改質器503から供給される混合気体の他に空気が供給される。一酸化炭素除去器504は、これらの混合気体中の一酸化炭素を、触媒により、下記の化学反応式(5)に示す一酸化炭素除去反応によって選択的に酸化して除去する。
【0128】
CH3OH+H2O→3H2+CO2 …(3)
2CH3OH+H2O→5H2+CO+CO2 …(4)
2CO+O2→2CO2 …(5)
この一酸化炭素を除去した混合気体がアノードガスとして用いられ、アノードガス加湿器100に供給される。
【0129】
DC/DCコンバータ505は、燃料電池セルユニット1A〜1Cにより出力された電気エネルギーを適切な電圧に変換したのちに電子機器本体1001に供給する機能の他に、二次電池506に充電する機能を有する。これにより、燃料電池装置1が動作していない時にも、二次電池506に蓄電された電気エネルギーを電子機器本体590に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るセルスタック1の上面図である。
【図2】セルスタック1の前面図である。
【図3】セルスタック1の下面図である。
【図4】セルスタック1の分解図である。
【図5】燃料電池セルユニット1Aの断面図である。
【図6】単位起電部10の上面図である。
【図7】図6のVII−VII矢視断面図である。
【図8】単位起電部10の下面図である。
【図9】上部片面セパレータ40の下面図である。
【図10】下部片面セパレータ60の上面図である。
【図11】両面セパレータ80の上面図である。
【図12】図11のXII−XII矢視断面図である。
【図13】両面セパレータ80の下面図である。
【図14】アノードガス加湿器100の断面図である。
【図15】アノードガス加湿器100の分解図である。
【図16】蓋110の上面図である。
【図17】蓋110の側面図である。
【図18】蓋110の下面図である。
【図19】加湿容器150の上面図である。
【図20】加湿容器150の側面図である。
【図21】加湿容器150の下面図である。
【図22】ガスケット190の上面図である。
【図23】中空糸膜モジュール105の側面図である。
【図24】カソードガス加湿器200の断面図である。
【図25】カソードガス加湿器200の分解図である。
【図26】蓋210の上面図である。
【図27】蓋210の側面図である。
【図28】蓋210の下面図である。
【図29】加湿容器250の上面図である。
【図30】加湿容器250の側面図である。
【図31】加湿容器250の下面図である。
【図32】ガスケット290の上面図である。
【図33】中空糸膜モジュール205の側面図である。
【図34】本実施形態のセルスタック1が好適に適用される電子機器500を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0131】
1 セルスタック
1A,1B,1C 燃料電池セル
100 アノードガス加湿器(インターコネクタ)
100D,200D 加湿用流体流路(流路)
106,206 中空糸膜
110,210 蓋(筐体)
150,250 加湿容器(筐体)
150A,250A 凹部
190,290 ガスケット(封止材)
200 カソードガス加湿器(インターコネクタ)
300A 上エンドプレート(締結部材)
300B 下エンドプレート(締結部材)
510 燃料電池装置
500 電子機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電セルに供給される被加湿流体を内側に流通させるとともに水蒸気を透過させる中空糸膜と、
前記発電セルのアノード又はカソードの少なくとも何れか一方に電気的に接続されて設けられ、前記中空糸膜の外側に前記被加湿流体よりも水蒸気分圧が高い加湿用流体を流通させる流路を有する導電性の筐体と、
前記流路の内壁面に形成された、樹脂材料からなる腐食防止層と、
を備えることを特徴とする加湿器。
【請求項2】
前記腐食防止層は、15〜30μmの厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の加湿器。
【請求項3】
前記腐食防止層は、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、の何れかからなることを特徴とする請求項1に記載の加湿器。
【請求項4】
前記腐食防止層は、フッ素系樹脂、球状の黒鉛が混合されたフッ素系樹脂、の何れかからなることを特徴とする請求項1に記載の加湿器。
【請求項5】
前記筐体は前記中空糸膜が収納され前記流路となる凹部を有する容器と、
前記凹部を塞ぐ蓋とからなり、
前記容器と前記蓋との隙間を塞ぐ環状の封止材が設けられ、
前記容器と前記蓋とは前記封止材よりも外側において当接することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の加湿器。
【請求項6】
少なくとも、前記凹部の内壁面及び前記蓋の前記凹部の開口端に対応する領域に前記腐食防止層が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の加湿器。
【請求項7】
前記容器及び前記蓋の表面における、前記腐食防止層が形成されている領域を除く領域に、金メッキ層が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の加湿器。
【請求項8】
前記容器及び前記蓋の表面に金メッキ層が形成され、前記腐食防止層は該金メッキ層上に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の加湿器。
【請求項9】
アノード及びカソードを有する少なくとも1つの単位起電部からなる発電セルと、
前記発電セルに供給される被加湿流体を内側に流通させるとともに水蒸気を透過させる中空糸膜と、前記発電セルの、前記アノード又は前記カソードの少なくとも何れか一方に電気的に接続されて設けられ、前記中空糸膜の外側に前記被加湿流体よりも水蒸気分圧が高い加湿用流体を流通させる流路を有する導電性の筐体と、前記流路の内壁面に形成された、樹脂材料からなる腐食防止層と、を有する少なくとも1つの加湿器と、
を備えることを特徴とする発電セルシステム。
【請求項10】
前記発電セル及び前記加湿器を複数有し、前記複数の発電セルは積層して配置され、前記複数の加湿器が、前記複数の発電セルの何れかの、前記アノード又は前記カソードの少なくとも何れか一方に電気的に接続されて設けられたセルスタックをなすことを特徴とする請求項9に記載の発電セルシステム。
【請求項11】
前記複数の発電セルにおける少なくとも2つの前記発電セルは、少なくとも1つの前記加湿器を挟持して配置され、該加湿器は、前記2つの発電セルの一方の前記発電セルの前記アノードと他方の前記発電セルの前記カソードとを電気的に導通させるインターコネクタを兼ねていることを特徴とする請求項10に記載の発電セルシステム。
【請求項12】
前記複数の加湿器における少なくとも2つの前記加湿器は、前記複数の発電セルを間に挟持して締め付ける、締結部材を兼ねていることを特徴とする請求項9に記載の発電セルシステム。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれかに記載のセルスタックを備えることを特徴とする燃料電池装置。
【請求項14】
請求項13に記載の燃料電池装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2009−224211(P2009−224211A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67987(P2008−67987)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】