説明

加湿器

【課題】好適に加湿可能な加湿器を提供する。
【解決手段】複数の中空糸膜12が束ねられてなる中空糸膜束11と、中空糸膜束11を収容する筒状のケース21と、ケース21の前端に設けられ、ケース21の前端側の開口を閉じる封止部30と、を備え、空気が中空糸膜12内を通流し、カソードオフガスがケース21内であって中空糸膜12外を通流する加湿器1であって、封止部30は、その内部に、中空糸膜12内と連通し、空気が通流する複数の第1通路と、中空糸膜12外であってケース21内と連通すると共にケース21内に開口し、カソードオフガスが通流する複数の第2通路と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池等に供給される空気等の流体を加湿する加湿器に関し、詳しくは、水分透過性の中空糸膜を有する加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)等の燃料電池においては、燃料電池を構成する電解質膜の湿潤状態を確保するべく、水素(燃料ガス)、酸素を含む空気(酸化剤ガス)を加湿する加湿器が必要とされる。このような加湿器は、中空糸膜を束ねてなる中空糸膜束と、中空糸膜束を収容するケースとを備え、例えば、燃料電池に向かう加湿すべき空気が中空糸膜内を、燃料電池のカソードから排出された多湿のカソードオフガスが中空糸膜外を、それぞれ通流する(特許文献1〜2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−273687号公報
【特許文献2】特開2005−321188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の加湿器では、カソードオフガスが、中空糸膜束を収容するケースの周壁部に形成されたオフガス流入部/流出部から流入/流出するので、中空糸膜束において、オフガスが通流しないスペース(デッドスペース)が形成されてしまい、このデットスペースにおいて、空気が加湿されず、加湿効率が低下するという不都合があった。
なお、デッドスペースは、オフガス流入部/流出部を通るケースの輪切り断面方向において、オフガス流入部/流出部から離れた部分に形成される。
【0005】
そこで、本発明は、好適に加湿可能な加湿器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、複数の中空糸膜が束ねられてなる中空糸膜束と、前記中空糸膜束を収容する筒状のケースと、前記ケースの一端に設けられ、前記ケースの一端側の開口を閉じる封止部と、を備え、第1流体が前記中空糸膜内を通流し、前記第1流体と異なる湿度の第2流体が前記ケース内であって前記中空糸膜外を通流する加湿器であって、前記封止部は、その内部に、前記中空糸膜内と連通し、第1流体が通流する複数の第1通路と、前記中空糸膜外であって前記ケース内と連通すると共に前記ケース内に開口し、第2流体が通流する複数の第2通路と、を有することを特徴とする加湿器である。
【0007】
このような加湿器によれば、第2流体が、封止部内に形成された複数の第2通路を通って、ケース内に流入又はケース内から流出し、複数の第2通路のケース内側の開口近傍においても、第2流体が通流することになる。つまり、ケースの一端側内において、第2流体の通流しないデットスペースが形成されない。
これにより、複数の第2通路のケース内側の開口近傍においても、中空糸膜を介して、第1流体と第2流体との間で水分交換でき、湿度の低い第1流体又は第2流体を好適に加湿できる。
【0008】
また、前記加湿器において、前記複数の第2通路の前記ケース内側の開口は、前記ケースの輪切り断面方向全体に分布していることを特徴とする。
【0009】
このような加湿器によれば、第2流体が、ケースの一端側内の全体を通流しやすくなるので、ケースの一端側内において、デットスペースがさらに形成されにくくなる。
【0010】
また、前記加湿器において、前記複数の第2通路は、前記封止部内に埋設された複数の中空部材により構成されていることを特徴とする。
【0011】
このような加湿器によれば、封止部内の複数の第2通路を容易に構成できる。
【0012】
また、前記加湿器において、前記複数の第1通路は、前記複数の中空糸膜が前記封止部内を延び埋設された部分により構成されていることを特徴とする。
【0013】
このような加湿器によれば、中空糸膜を封止部内に延長し、埋設することによって、部品点数を増加させずに、封止部内の複数の第1通路を容易に構成できる。
【0014】
また、前記加湿器において、前記封止部は、ポッティングにより形成されることを特徴とする。
【0015】
このような加湿器によれば、複数の第1通路及び複数の第2通路を、容易に一体で形成できる。
なお、複数の第2通路を、前記した複数の中空部材により構成する場合、複数の中空部材のケース内側端は、そのケース内側の開口がポッティングを構成する樹脂によって閉塞されないように、やや延びていることが好ましい。
【0016】
また、前記加湿器において、前記封止部は、前記ケースの外部に膨出すると共に、外部に臨む異なる第1面及び第2面を有し、前記複数の第1通路は、前記第1面で開口し、前記複数の第2通路は、前記第2面で開口していることを特徴とする。
【0017】
このような加湿器では、第1面と第2面とが、非同一面上に配置されることになる。
したがって、第1面に被さるように設けられ、複数の第1通路に対して第1流体を分配又は集合する第1キャップ部と、第2面に被さるように設けられ、複数の第2通路に対して第2流体を分配又は集合する第2キャップ部とは、異なる第1面及び第2面と同様に、異なる面上に配置されることになる。
【0018】
そうすると、第1キャップ部に第1面と垂直となるように形成され、ホース等が接続される第1接続部と、第2キャップ部に第2面と垂直になるように形成され、ホース等が接続される第2接続部とが、並んで配置されることはなく、ホース等を接続容易とするための空間が形成される。すなわち、第1面、第2面に対応して形成される第1接続部と第2接続部とが同一平面上で並んで配置されることはない。これにより、第1接続部及び第2接続部の一方に対して、他方に邪魔されることなく、ホース等を容易に接続できる。
【0019】
また、前記加湿器において、前記封止部と同様の封止部を、前記ケースの他端にも備えることを特徴とする。
【0020】
このような加湿器によれば、ケースの他端側内においても第2流体の通流しないデットスペースが形成されない。これにより、ケースの他端側内においても、湿度の低い第1流体又は第2流体を好適に加湿できる。
【0021】
また、前記加湿器において、前記封止部は、前記ケースの外部に膨出すると共に、外部に臨み異なる第1面及び第2面を前記中空糸膜の径方向両外側(後記する実施形態では上下方向の上側及び下側)にそれぞれ有し、前記第2流路は前記第2面で開口しており、当該封止部と同様の封止部を、前記ケースの他端にも備え、前記一端側(後記する実施形態では前端側)における前記封止部の前記第2面と、前記他端側(後記する実施形態では後端側)における前記封止部の前記第2面とは、前記中空糸膜の径方向(後記する実施形態では上下方向)において逆であることを特徴とする。
【0022】
このような加湿器によれば、一端側の第2面と他端側の第2面とは、中空糸膜の径方向において逆であるので、一端側の第2面における第2通路の開口と、他端側の第2面における第2通路の開口とは、中空糸膜の径方向において逆となり、略対角に配置される。
すなわち、第2流体の入口又は出口となる一端側の開口と他端側の開口とが、中空糸膜の径方向において逆であって、略対角に離れて配置されるので、第2流体が中空糸膜束とケース内壁面との間を偏って通流せず、ケース内全体に亘って通流しやすくなる。これにより、第1流体又は第2流体を好適に加湿できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、好適に加湿可能な加湿器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について、図1から図8を参照して説明する。
まず、本実施形態に係る加湿器1が組み込まれた燃料電池システム100について、図1を参照して説明する。燃料電池システム100は、図示しない燃料電池自動車(移動体)に搭載されており、燃料電池スタック110と、水素タンク121と、コンプレッサ131と、加湿器1とを備えている。
【0025】
燃料電池スタック110は、固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)であり、MEA(Membrane Electrode Assembly、膜電極接合体)をセパレータ(図示しない)で挟持してなる単セルが複数積層されて構成されている。MEAは、電解質膜(固体高分子膜)と、これを挟持するカソード及びアノードとを備えている。各セパレータには、溝や貫通孔からなるアノード流路111及びカソード流路112が形成されている。
【0026】
そして、水素が、水素タンク121から、配管121a、アノード流路111を介してアノードに供給され、酸素を含む空気が、外気を吸気するコンプレッサ131から、配管131a、加湿器1、配管131b、カソード流路112を介してカソードに供給されると、アノード及びカソードに含まれる触媒(Pt等)上で電極反応が起こり、燃料電池スタック110が発電可能な状態となる。
【0027】
このように発電可能な状態の燃料電池スタック110と、外部負荷(例えば走行用のモータ)とが電気的に接続され、電流が取り出されると、燃料電池スタック110が発電するようになっている。
【0028】
また、アノード流路111から排出されたアノードオフガスは、配管121bを介して、希釈器132に排出されるようになっている。一方、カソード流路112から排出されたカソードオフガスは、配管131c、加湿器1、配管132aを介して、希釈器132に排出され、希釈器132においてアノードオフガス中の未消費の水素を希釈するようになっている。そして、希釈後のガスは、配管132bを介して、車外に排出されるようになっている。
なお、カソードオフガスは、カソードにおける電極反応により生成する水蒸気(水分)により多湿である。また、生成した水蒸気の一部は電解質膜をアノード側に透過するので、アノードオフガスも多湿である。
【0029】
≪加湿器の構成≫
次に、加湿器1の構成について、図2から図8を参照して説明する。なお、明確に説明するために、図2を基準として、前、後、左、右、上、下を設定する。また、図3から図8では、中空糸膜12、中空部材40の本数を減らして記載している。
【0030】
加湿器1は、コンプレッサ131からカソード流路112に向かう加湿すべき空気(第1流体)を、カソード流路112から排出された多湿のカソードオフガス(第2流体)で加湿するものであって、その外形は図2示すように略直方体を呈している。すなわち、カソード流路112に向かう空気の湿度と、カソードオフガスの湿度とは異なり、カソードオフガスの湿度が高い。
【0031】
図3に示すように、加湿器1は、中空糸膜束11と、中空糸膜束11を収容する四角筒状のケース21と、封止部30、30と、複数の中空部材40と、キャップ50、50を備えている。
ここで、本実施形態では、加湿される空気は中空糸膜束11を構成する中空糸膜12内を前方に向かって通流し、多湿のカソードオフガスは中空糸膜12外であってケース21内を後方に向かって通流する。つまり、空気の通流向きとカソードオフガスの通流向きとは対向しており、加湿効率が高められている。
【0032】
また、加湿器1は、側断面視において、その中心点P(図3参照)を中心とした点対称な構造を有している。よって、以下、加湿後の空気の出口側であって、カソードオフガスの入口側となる加湿器1の前側の構造を主に説明し、加湿前の空気の入口側であって、カソードオフガスの出口側となる加湿器1の後側については、適宜省略する。
【0033】
中空糸膜束11は、ポリイミド等から形成され、水分透過性を有する中空糸膜12が、複数本(例えば10〜10000本)にて束ねられたものである。
【0034】
各中空糸膜12の前側、後側は、図3から図5に示すように、封止部30を介して、ケース21にそれぞれ固定されている。
【0035】
各中空糸膜12の前側は、図3及び図4に示すように、前側の封止部30内を前方に延び、これに埋設されると共に、各中空糸膜12の前端は、封止部30の後記する第1面31で開口している(図6参照)。そして、中空糸膜12内の空気は、キャップ50の第1キャップ部51内で集合した後、第1接続部51aを通って配管131bに流出するようになっている。
【0036】
すなわち、前側の封止部30内に形成され、中空糸膜12内と連通すると共に、空気(第1流体)が通流する第1通路は、各中空糸膜12が、前側の封止部30内を前方に延び、封止部30に埋設された部分によって構成されている。
【0037】
各中空糸膜12の後側は、図3及び図5に示すように、後側の封止部30内を後方に延び、第1面31で開口している(図7参照)。そして、配管131aからの加湿前の空気は、第1接続部51aを通り、後側のキャップ50の第1キャップ部51内で、各中空糸膜12に分配されるようになっている。
【0038】
ケース21は、その内部に、中空糸膜束11を収容する四角筒状の容器であり、例えば、PC(ポリカーボネート)やPPO(ポリフェニレンオキサイド)等の硬質樹脂から形成されている。
【0039】
封止部30、30は、ケース21の前端(一端)又は後端(他端)にそれぞれ設けられると共に、ケース21の前端側又は後端側の開口22、22を閉じている。なお、封止部30、30は、エポキシ樹脂等をポッティングすることにより容易に形成され、ポッティング部とも称される。
【0040】
各封止部30の上下方向における中央は、外部に膨出、つまり、中空糸膜12の軸方向において外方向(前方向又は後方向)に、この中央を頂点とした断面三角形で膨出している。そして、各封止部30は、前記頂点となる中央を境として、外部に臨む異なる第1面31と第2面32を有している。すなわち、第1面31と第2面32とは、同一平面上にない異なる面である。
【0041】
ここで、加湿器1は、前記したように、側断面視において点対称な構造であるので、前側の第1面31と後側の第1面31、前側の第2面32と後側の第2面32は、上下方向(中空糸膜12の径方向)において、それぞれ逆となり、側断面視においてそれぞれ略対角に離れて配置されている。
【0042】
すなわち、前側の第2面32における中空部材40の開口(カソードオフガスの入口)と、後側の第2面32における中空部材40の開口(カソードオフガスの出口)とは、上下方向において逆であって、略対角に離れて配置されるので、カソードオフガスが中空糸膜束11とケース21の天壁面や底壁面(内壁面)との間を偏って通流せず、ケース21内全体に亘って通流するようになっている。
【0043】
なお、本実施形態では、各封止部30が、側断面視において膨出した中央を境(稜線)として、その上下に第1面31及び第2面32を備える構成を例示しているが、その他に例えば、平断面視において各封止部30の中央が膨出し、その左右に第1面31及び第2面32を備える構成でもよい。
【0044】
<中空部材>
複数の中空部材40は、前側の封止部30と後側の封止部30とにそれぞれ埋設されている。前側の封止部30に埋設された複数の中空部材40は、キャップ50の後記する第2キャップ部52からのカソードオフガスを、ケース21内に流入させるものである(図4参照)。後側の封止部30に埋設された複数の中空部材40は、ケース21内のカソードオフガスを、キャップ50の後記する第2キャップ部52内に流出させるものである(図5参照)。
なお、中空部材40は中空糸膜12よりも太く、中空部材40の数は中空糸膜12よりも少なく設定されている(図4〜図8参照)。これは、中空部材40の太さが細く、数が多くなるにしたがって、封止部30での複数の中空膜12間における中空部材40の均等な配置が難しくなるためである。
【0045】
さらに説明すると、前側の封止部30に埋設された複数の中空部材40は、図4に示すように、その前端は中空糸膜12が開口する第1面31と異なる第2面32で開口しており(図6参照)、その後端は、ケース21内で開口している。そして、配管131cからのカソードオフガスは、キャップ50の第2キャップ部52内で、各中空部材40に分配された後、各中空部材40内を後方に向かって通流した後、ケース21内全体に流出するようになっている。これにより、ケース21内のカソードオフガスの入口側(封止部30の後方近傍)において、カソードオフガスの通流しないデッドスペースが形成されないようになっている。
【0046】
すなわち、前側の封止部30内に形成され、中空糸膜12外であってケース21内と連通すると共にケース21内に開口し、カソードオフガス(第2流体)が通流する第2通路は、封止部30内に埋設された中空部材40によって構成されている。
【0047】
また、中空部材40の後端側(ケース21内側)の開口は、ケース21の輪切り断面方向全体に分布しており、カソードオフガスがケース21の輪切り断面方向において均等に流出し、カソードオフガスの通流しないデッドスペースがさらに形成されにくくなっている(図8参照)。
【0048】
さらに、中空部材40の後端は、封止部30からケース21内に向かって突出しており、ポッティングによって封止部30を形成する際に、エポキシ樹脂等が中空部材40内に流入しないようになっている。
【0049】
一方、後側の封止部30に埋設された複数の中空部材40は、図5に示すように、その後端は中空糸膜12が開口する第1面31と異なる第2面32で開口しており(図7参照)、その前端は、ケース21内で開口している。そして、ケース21内のカソードオフガスは、各中空部材40内を後方に向かって通流し、キャップ50の第2キャップ部52内で集合した後、第2接続部52aを通って配管132aに流出するようになっている。これにより、ケース21内のカソードオフガスの出口側(封止部30の前方近傍)においても、カソードオフガスの通流しないデッドスペースが形成されないようになっている。
【0050】
キャップ50は、複数の中空糸膜12に対して空気を分配又は集合する第1キャップ部51と、複数の中空部材40に対してカソードオフガスを分配又は集合する第2キャップ部52とが、一体成形されたものである。
【0051】
すなわち、第1キャップ部51は、複数の中空糸膜12が開口する封止部30の第1面31にそれぞれ被さるように配置される(図4、図5参照)。そして、前側の第1キャップ部51内では各中空糸膜12からの空気を集合し(図4参照)、後側の第1キャップ部51内では空気を各中空糸膜12に分配する(図5参照)。
【0052】
一方、第2キャップ部52は、複数の中空部材40が開口する封止部30の第2面32にそれぞれ被さるように配置される(図4、図5参照)。そして、前側の第2キャップ部52内ではカソードオフガスを各中空部材40に分配し(図4参照)、後側の第2キャップ部52内では中空部材40からのカソードオフガスを集合する(図5参照)。
【0053】
ここで、封止部30に形成された第1面31と第2面32とは、前記したように同一平面上にない異なる面であるので、第1キャップ部51と第2キャップ部52も、異なる面上に配置される(図4、図5参照)。すなわち、第1キャップ部51と第2キャップ部52とが、同一平面上に並んで配置されていない。
【0054】
そして、第1キャップ部51に形成された第1接続部51aと、第2キャップ部52に形成された第2接続部52aとも、同一平面上に並んでおらず、側断面視において開いた配置となっている(図4、図5参照)。なお、第1接続部51aは、ゴムホース等からなる配管131b又は配管131aが接続される部分であり、第2接続部52aは、配管131a又は配管132aが接続される部分である。
【0055】
このように、第1接続部51aと第2接続部52aとが、同一平面上に並設された構成でなく、相互に離間し開いた状態であるので、第1接続部51aに配管131b又は配管131aを、第2接続部52aに配管131a又は配管132aを、接続する際の作業スペースが形成され、これら配管131b等を容易に接続できる。
【0056】
≪加湿器の作用効果≫
次に、加湿器1の作用効果を説明する。
コンプレッサ131からの空気は、配管131aから、後側の第1キャップ部51内を通って、各中空糸膜12に流入し(図5参照)、各中空糸膜12内を前方に向かって通流する。次いで、空気は、各中空糸膜12から、前側の第1キャップ部51内を通って、配管131bに流出する(図4参照)。
【0057】
一方、カソードオフガスは、配管131cから前側の第2キャップ部52内を通って、各中空部材40内に流入し、輪切り断面方向全体に分布している各中空部材40の後側開口から、中空糸膜12の軸方向(前後方向)に沿いつつ、ケース21内の前側全体に流入した後(図4参照)、中空糸膜12外であってケース21内を後方に向かって通流する(図3参照)。
【0058】
すなわち、ケース21内の前側部分において、ケース21内へのカソードオフガスの流入口(各中空部材40の後側開口)が、輪切り断面方向全体に分布しているので(図8参照)、カソードオフガスが通流しないデッドスペースが形成されず、中空糸膜12のケース21内の前側部分を介してもカソードオフガスによって空気が加湿され、加湿効率が高められている。
【0059】
また、ケース21内を後方に通流したカソードオフガスは、輪切り断面方向全体に分布している各中空部材40の前側開口から、各中空部材40内に流入する(図5参照)。
すなわち、ケース21内の後側部分において、ケース21内からのカソードオフガスの流出口(各中空部材40の前側開口)が、輪切り断面方向全体に分布しているので、カソードオフガスが通流しないデッドスペースが形成されず、中空糸膜12のケース21内の後側部分を介してもカソードオフガスによって空気が加湿され、加湿効率が高められている。
【0060】
さらに、カソードオフガスは、中空糸膜12に対して垂直方向(上下方向)ではなく、中空糸膜12の軸方向(前後方向)に沿いながら、流入/流出するので、カソードオフガスが受ける圧力損失は小さくなっている。これにより、カソードオフガスの流れが、ケース21内において乱れにくくなっている。
【0061】
さらにまた、前側の第2面32における中空部材40の開口(カソードオフガスの入口)と、後側の第2面32における中空部材40の開口(カソードオフガスの出口)とは、上下方向において逆、つまり、略対角に離れているので、ケース21内において、カソードオフガスが、中空糸膜束11とケース21の天壁面や底壁面(内壁面)との間を偏って通流せず、ケース21内全体に亘って通流する。これにより、カソードオフガスの通流しないデッドスペースがさらに発生しにくくなり、カソードオフガスで空気をより効率的に加湿できる。
【0062】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば次のように変更することができる。
【0063】
前記した実施形態では、封止部30内において空気(第1流体)の通流する第1通路が、中空糸膜12の封止部30に埋設された部分によって構成された場合を例示したが、その他に例えば、封止部30に中空部材を埋設し、その内部を第1通路(空気通路)としてもよい。この場合、第1通路(空気通路)用の中空部材と、中空糸膜12とを適宜に接続させる。
【0064】
前記した実施形態では、封止部30内においてカソードオフガス(第2流体)の通流する第2通路が、封止部30に埋設された中空部材40によって構成された場合を例示したが、その他に例えば、ポッティングによって封止部30を形成する際に、フレキシブルな中子等を埋設し、樹脂の硬化後、この中子を引き抜き、封止部30内に第2通路を形成する構成でもよい。
【0065】
前記した実施形態では、ケース21が四角筒形である構成を例示したが、その他に例えば、円筒形である構成でもよい。
また、第1キャップ部51と第2キャップ部52とが一体成形された構成を例示したが、別体である構成でもよい。
さらに、中空部材40が両端側の封止部30、30に埋設された構成を例示したが、片側の封止部30のみに埋設された構成でもよい。
【0066】
前記した実施形態では、空気が中空糸膜12内を通流し、カソードオフガスが中空糸膜12外を通流する構成を例示したが、空気が中空糸膜12外を通流し、湿度の高いカソードオフガスが中空糸膜12内を通流する構成でもよい。
また、空気及びカソードオフガスの通流方向が、逆向きである構成を例示したが、同方向でもよい。
さらに、第1流体が空気、第2流体がカソードオフガスである構成、つまり、第1流体及び第2流体がガスである構成を例示したが、その他に例えば、第2流体が水(液体)である構成でもよい。
【0067】
前記した実施形態では、加湿器1が空気とカソードオフガスとの間で水分交換し、燃料電池スタック110に向かう空気を加湿する構成を例示したが、その他に例えば、水素とアノードオフガスとの間で水分交換し、燃料電池スタック110に向かう水素を加湿する構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本実施形態に係る燃料電池システムの構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る加湿器の斜視図である。
【図3】本実施形態に係る加湿器の側断面図(図2のX1−X1線断面図)である。
【図4】本実施形態に係る加湿器の側断面図であって、前側の拡大図である。
【図5】本実施形態に係る加湿器の側断面図であって、後側の拡大図である。
【図6】本実施形態に係る加湿器を前方から見た図であって、キャップを省略したものである。
【図7】本実施形態に係る加湿器を後方から見た図であって、キャップを省略したものである。
【図8】図4のX2−X2線断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 加湿器
11 中空糸膜束
12 中空糸膜
21 ケース
22 開口
30 封止部
31 第1面
32 第2面
40 中空部材(第2通路)
P 点対称構造の中心点



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中空糸膜が束ねられてなる中空糸膜束と、
前記中空糸膜束を収容する筒状のケースと、
前記ケースの一端に設けられ、前記ケースの一端側の開口を閉じる封止部と、
を備え、
第1流体が前記中空糸膜内を通流し、前記第1流体と異なる湿度の第2流体が前記ケース内であって前記中空糸膜外を通流する加湿器であって、
前記封止部は、その内部に、前記中空糸膜内と連通し、第1流体が通流する複数の第1通路と、前記中空糸膜外であって前記ケース内と連通すると共に前記ケース内に開口し、第2流体が通流する複数の第2通路と、を有する
ことを特徴とする加湿器。
【請求項2】
前記複数の第2通路の前記ケース内側の開口は、前記ケースの輪切り断面方向全体に分布している
ことを特徴とする請求項1に記載の加湿器。
【請求項3】
前記複数の第2通路は、前記封止部内に埋設された複数の中空部材により構成されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の加湿器。
【請求項4】
前記複数の第1通路は、前記複数の中空糸膜が前記封止部内を延び埋設された部分により構成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の加湿器。
【請求項5】
前記封止部は、ポッティングにより形成される
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の加湿器。
【請求項6】
前記封止部は、前記ケースの外部に膨出すると共に、外部に臨む異なる第1面及び第2面を有し、
前記複数の第1通路は、前記第1面で開口し、
前記複数の第2通路は、前記第2面で開口している
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の加湿器。
【請求項7】
前記封止部と同様の封止部を、前記ケースの他端にも備える
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の加湿器。
【請求項8】
前記封止部は、前記ケースの外部に膨出すると共に、外部に臨み異なる第1面及び第2面を前記中空糸膜の径方向両外側にそれぞれ有し、前記第2流路は前記第2面で開口しており、
当該封止部と同様の封止部を、前記ケースの他端にも備え、
前記一端側における前記封止部の前記第2面と、前記他端側における前記封止部の前記第2面とは、前記中空糸膜の径方向において逆である
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の加湿器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−139192(P2010−139192A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317820(P2008−317820)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】