説明

加熱されたシリンダ

本発明は繊維材料のウェブ(1)を製造および/または品質を向上するのに用いられる機械内の紙、板紙、薄紙または他の繊維材料のウェブ(1)を加熱するための加熱されたシリンダに関する。加熱されたシリンダは少なくとも部分的に内部からおよび/または部分的にジャケット内で加熱されるジャケットを含む。表面張力を低減するために、シリンダジャケットは少なくとも2つの層(3、4)を含んでいる。ジャケットの外側層(4)の材料は、その内側層(3)の材料より、平均動作温度未満の設置温度でより大きい熱膨張係数および平均動作温度を超える設置温度でより小さい熱膨張係数を有し、および/またはジャケットの外側層(4)はその内側層(3)より厚さが薄い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は少なくとも部分的に内部からおよび/または部分的にシリンダシェル内で加熱されるシリンダシェルを有する、繊維ウェブを製造および/または仕上げする機械内の紙、板紙、薄紙または他の繊維ウェブを乾燥するための加熱されたシリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
これらの加熱されたシリンダにおいて、繊維ウェブに対する熱の放出の結果、シリンダ表面に向かう温度勾配が動作中に確立する。加熱されたシリンダの内部領域の熱的に誘発される膨張がより激しいため、引張応力がシリンダ表面に生じる。
【0003】
これらの熱的引張応力が許容強度値を超えないように、単位表面あたりの内部から外部に移動できる熱的エネルギーを制限する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため本発明の目的は、移動可能な熱エネルギーを減少させることなく加熱されたシリンダ内のこれらの引張応力を最小限に抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によればこの目的は、シリンダシェルが少なくとも2つのシェル層を含み、外側シェル層の材料が内側シェル層の材料より、平均動作温度未満の設置温度でより高い熱膨張係数および平均動作温度を超える設置温度でより低い熱膨張係数を有し、および/または最外側シェル層の層厚さが内側シェル層の層厚さより薄いことにより達成される。
【0006】
2つのシェル層しか有していないシリンダシェルの場合、平均的動作温度はシェル層の接触領域内の温度として規定され、3つ以上のシェル層の場合、繊維ウェブを乾燥するシリンダの通常動作中のシリンダシェルの内面と外面との平均として規定される。
【0007】
その結果、シリンダの動作中に生じる温度分布下で加熱されたシリンダ内での応力の最小化をもたらすようになる。
【0008】
最外側シェル層の場合、特に硬度に関して特定の要件があるため、経済的な観点から材料選択に対する制限もある。その結果外側シェル層を比較的低熱伝導率を有する材料で作らなければならない場合には、その薄い、それでも適正である厚さが繊維ウェブに向けて熱を確実に伝達する。
【0009】
しかし内側シェル層の装填のため、最小限の制限が最外側シェル層の厚さに課せられる。
【0010】
そのため追加的にまたは代替的には、熱膨張の係数、弾性率、熱伝導率、厚さ関係、材料量の分布およびシェル層間の接続構成、に対して材料を適切に選択することにより応力を低減することも有利であり得る。
【0011】
設置温度が平均動作温度未満である場合には、加熱した時にいずれの場合も最外側シェル層を内側よりも確実に大きく膨張させるようにする。
【0012】
他の場合、例えばシェル層の溶接中、設置温度は平均動作温度を超える。この場合、後に続くことが好適な低応力アニーリングは完全にシェル層間の応力を排除することができないということを考慮に入れる必要がある。一般にはこの場合それぞれの外側シェル層は設置後冷える際に内側よりも収縮しないようにしなければならない。この場合、シリンダの動作時に生じる温度分布において応力の最小値に達しなければならない。
【0013】
これは、それぞれの内側シェル層がこれまでよりも膨張せず、および/またはその上方に位置する外側シェル層がこれまでよりも大きく膨張するということである。ある層内の膨張を妨げることは必然的に隣接層内の膨張の増加につながる。それぞれの内側シェル層内のより高い温度を考慮することにより、それぞれ内側および外側シェル層内で同程度の膨張が確立されるように材料の組み合わせおよび厚さ関係を選ぶことさえできる。
【0014】
例えば内部からの蒸気により、またはチャネルを介して内部にまたはシェル層間に導かれる加熱媒体により加熱を行う。
【0015】
構造を簡単にするため、シリンダシェルは2つのシェル層を含んでいる。しかし応力の消散を改善するため、シリンダシェルは3つ以上、好ましくは4つ以上のシェル層を含むこともできる。この場合、外側および内側シェル層もシリンダシェル内に配置する。名称「内側」または「外側」にとって重要なことは、単にどのシェル層が他の上に配置されているかについての問題である。
【0016】
特に加熱されたシリンダの回転中摩擦および損傷を回避するため、シェル層を少なくとも相対的回転に対して固定しなければならない。溶接、ねじ固定または他の接着結合によりこれを行うことができる。
【0017】
さらにまた、最外側シェル層の材料が内側シェル層の1つ、好ましくはすべての材料よりも高い熱伝導率を有することは有利である。これにより外側シェル層内の温度勾配を低減し、そのため外側シェル層内の引張応力も低減する。
【0018】
また最外側シェル層の材料が好適な内側シェル層の材料よりも低い弾性率を有していれば、引張応力を低減する上で有利である。
【0019】
熱伝導率および重量に関する利点は、特に少なくとも中間および/または最外側シェル層がアルミニウムで作られている場合にある。
【0020】
シリンダシェルの摩耗および平滑度に関する高い要件のため、最外側シェル層が硬質材料、例えば170〜220HB硬度の範囲の硬質材料で作られていなければならない。
【0021】
最良の方法で最外側層内の熱膨張係数、熱伝導率および硬度に関する要件を満たすことができるように、内側シェル層がロードベアリング層として構成されていれば有利であり得る。
【0022】
このような加熱されたシリンダを特に乾燥用乾燥部内の乾燥シリンダとしておよび繊維ウェブを脱水するためのプレス部内のプレスロールとして用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下の本文において例示的な実施形態を用いて本発明をより詳細に説明する。添付の図面において図は乾燥シリンダにわたる概略的な断面を示す。
【0024】
乾燥シリンダは金属製のシリンダシェルを有し、加熱されたシリンダの内部2は蒸気で加熱されている。蒸気により導入される熱エネルギーはシリンダシェルを介して外側に伝達されるとともにそこで乾燥シリンダに巻き付いている繊維ウェブ1を加熱乾燥するのに用いられる。
【0025】
またこの場合繊維ウェブ1は通常、ドライヤ布によって乾燥シリンダの円周面に押し付けられる。
【0026】
この熱移動は外側シェル面に向かって温度勾配をもたらしそのため外部領域の引張応力ももたらす。これらの引張応力を低減するために、シリンダシェルは異なる材料の2つのシェル層3、4を含んでいる。
【0027】
外側シェル層4は熱膨張係数が内側シェル層3の材料よりも高い材料で作られている。これにより外側シェル層4は、この層の低温にも係らずこれまでよりも大幅に膨張することになり、引張応力の低減につながる。
【0028】
この応力の消散は、外側シェル層4の熱伝導率が内側シェル層3より高く且つ弾性率が内側シェル層3より低いことによりさらに促進される。
【0029】
シェル層3、4はネジ止めにより互いに接合された管として実施される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】乾燥シリンダにわたる概略的な断面を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に内部からおよび/または部分的にシリンダシェル内で加熱されるシリンダシェルを有する、繊維ウェブ(1)を製造および/または仕上げする機械内の紙、板紙、薄紙または他の繊維ウェブ(1)を加熱するための加熱されたシリンダであって、前記シリンダシェルが少なくとも2つのシェル層(3、4)を含み、外側シェル層(4)の材料が内側シェル層(3)の材料より、平均動作温度未満の設置温度でより高い熱膨張係数および平均動作温度を超える設置温度でより低い熱膨張係数を有し、および/または前記最外側シェル層(4)の層厚さが内側シェル層(3)の層厚さより薄いことを特徴とする加熱されたシリンダ。
【請求項2】
前記シリンダシェルが2つのシェル層(3、4)を有することを特徴とする請求項1に記載の加熱されたシリンダ。
【請求項3】
前記シリンダシェルが3つ以上、好ましくは4つ以上のシェル層(3、4)を有することを特徴とする請求項1に記載の加熱されたシリンダ。
【請求項4】
前記シェル層(3、4)が少なくとも相対的回転に対して固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の加熱されたシリンダ。
【請求項5】
前記最外側層(4)の材料が前記内側シェル層(3)の1つ、好ましくはすべての材料よりも高い熱伝導率を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の加熱されたシリンダ。
【請求項6】
前記最外側層(4)の材料が前記内側シェル層(3)の1つ、好ましくはすべての材料よりも低い弾性率を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の加熱されたシリンダ。
【請求項7】
少なくとも中間および/または前記最外側シェル層(4)がアルミニウムで作られていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の加熱されたシリンダ。
【請求項8】
前記最外側層が硬質材料、好ましくは170〜220HB硬度の範囲の硬質材料で作られていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の加熱されたシリンダ。
【請求項9】
内側シェル層(3)がロードベアリング層として構成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の加熱されたシリンダ。

【図1】
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【公表番号】特表2006−512555(P2006−512555A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−561507(P2004−561507)
【出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2003/051048
【国際公開番号】WO2004/057103
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(300080412)ボイス ペ−パ− パテント ゲ−エムベ−ハ− (25)
【Fターム(参考)】