説明

加熱溶融型標示塗料組成物

【課題】 耐衝撃性が高い標示物を形成できる加熱溶融型標示塗料組成物を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂、顔料、ガラスビーズ及び繊維を含む、加熱溶融型標示塗料組成物である。前記繊維が、主鎖に芳香族骨格を有する芳香族ポリマー繊維であってもよく、前記芳香族ポリマー繊維が、ポリアリレート繊維、芳香族ポリアミド繊維及びPBO繊維よりなる群より選ばれる単一の繊維または複数の繊維の組合せであってもよい。また、前記繊維の繊度が50dtx〜10000dtxであってもよく、そして前記繊維の長さが5mm〜10mmであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱溶融型標示塗料組成物に関し、より詳細には、道路の中央線、横断歩道標示線、駐車場の区画線、制限速度を表示する文字、方向指示矢印等のような車両通行面(例えば、道路の路面、駐車場の床面等)に様々な標示を形成する際に使用される加熱溶融型の標示塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
道路の路面や駐車場の床面等のような車両通行面には、車両(運転者)や歩行者等に対して目視により種々な情報を与えるため多様な標示が形成されている。車両通行面に形成される標示としては、例えば、道路の中央線、横断歩道標示線、駐車場の区画線、制限速度を表示する文字、方向指示矢印等のようなものが知られている。
かかる標示は、車両通行面に標示形成用の塗料組成物を塗着(塗布を含む)し、塗着された塗料組成物によって形成される車両通行面の標示物の色彩を、塗料が塗着されていない部分(該標示物が形成されていない部分)の色彩とは異ならせることによって形成される。
【0003】
このような車両通行面に塗着される塗料組成物として様々なものが知られているが、耐久性や視認性に優れた標示を形成できること等から加熱溶融型標示塗料組成物がこれまで多用されている。加熱溶融型標示塗料組成物は、バインダーとなる熱可塑性樹脂成分を主材とし、これに顔料やガラスビーズ等が配合されたものが一般的に使用されている。加熱溶融型標示塗料組成物を加熱し、それに含まれるバインダー成分である熱可塑性樹脂を融解させることで加熱溶融型標示塗料組成物全体を溶融物とし、該溶融物を車両通行面に所定形状(所望の標示物の形状)に塗着した後、該溶融物を冷却(通常は自然冷却される)し、車両通行面に固形の標示物を形成するものである。
【0004】
このような加熱溶融型標示塗料組成物は、それによって形成される車両通行面の標示物の特性を改善する等のために様々なものが提案されてきた(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1は、「道路標示材の施工作業時における溶融用塗料の作業時の臭気を低減し得るとともに滑り抵抗性を向上し、同時に幼児や高齢者の転倒時の怪我を減少する」(特許文献1中の要約の課題)ためになされたもので、具体的には「溶融型道路標示材に、粒度300〜1500μmからなる滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻の細粒体を、10〜30%の混合比をもって混合したことを特徴とする滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材」(特許文献1中の請求項1)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−322290公報(例えば、要約、特許請求の範囲、発明の詳細な説明中の段落番号0003〜0008、第1図等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の溶融型道路標示材(本発明にいう加熱溶融型標示塗料組成物)を含め、従来から知られている加熱溶融型標示塗料組成物によって車両通行面に形成される標示物は、耐衝撃性が低く、容易に割れて車両通行面から簡単に剥離するといった問題があった。
特に、車両通行面への積雪が生じる冬期においては、除雪車が有する除雪板による除雪作業に伴い除雪板と標示物との摺動及び衝突や、車両のタイヤチェーンやタイヤスパイクと標示物との摺動及び衝突によって、標示物が割れて車両通行面から剥離することがあり、これによって(1)視認されるべき標示物が視認されないことによる危険性増大や、(2)標示物の補修工事を頻繁に行うことに伴う車両通行面の保守費用増大や車両通行面の車両通行禁止時間増大(車両通行面が路面であれば交通渋滞の原因となり得る)といった問題があった。
【0007】
そこで、本発明では、耐衝撃性が高い標示物を形成できる加熱溶融型標示塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、高い耐衝撃性を有する標示物を形成できる加熱溶融型標示塗料組成物を発明すべく鋭意研究を行った。その結果、本発明者は、加熱溶融型標示塗料組成物に繊維を含有させることで、それによって形成される標示物の耐衝撃性を顕著に向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の加熱溶融型標示塗料組成物(以下、「本組成物」という。)は、熱可塑性樹脂、顔料、ガラスビーズ及び繊維を含む、加熱溶融型標示塗料組成物である。
熱可塑性樹脂、顔料及びガラスビーズを含む加熱溶融型標示塗料組成物(以下、「従来組成物」という。)は、「JIS K 5665」の3種(溶融式)として従来から知られており、本組成物は、かかる従来組成物に繊維を含有せしめることによっても調製できる。
このように繊維を含有させた加熱溶融型標示塗料組成物である本組成物は、従来組成物に比し、本組成物によって車両通行面に形成される標示物の耐衝撃性を顕著に向上させることができる。
なお、本組成物に含まれる繊維は、本組成物を溶融させる温度にて溶融しない程度の耐熱性を備えるものを使用する。
【0010】
本組成物においては、前記繊維が、主鎖に芳香族骨格を有する芳香族ポリマー繊維であってもよい(以下、「芳香族ポリマー本組成物」という。)。
本組成物を構成する繊維は、上述の如く、本組成物を溶融させる温度にて溶融しない程度の耐熱性を備えるものを使用するが、本組成物の溶融温度は高温(例えば、200℃前後)とされることが多く、かかる高温にて溶融しない程度の耐熱性を有する繊維としては、主鎖に芳香族骨格を有する芳香族ポリマー繊維を用いてもよい。芳香族ポリマーは、通常、高耐熱性を有することに加え、高強度を有するので本組成物によって車両通行面に形成される標示物の耐衝撃性を向上させることができる。
【0011】
芳香族ポリマー本組成物の場合、前記芳香族ポリマー繊維が、ポリアリレート繊維、芳香族ポリアミド繊維及びPBO繊維よりなる群より選ばれる単一の繊維または複数の繊維の組合せであってもよい。
ポリアリレート繊維、芳香族ポリアミド繊維及びPBO繊維(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維)は、いずれも高耐熱性であるので本組成物の溶融温度まで通常は耐えることができ、さらに高強度を有するので本組成物によって車両通行面に形成される標示物の耐衝撃性を向上させることができる。
また、芳香族ポリアミド繊維としては、全芳香族ポリアミド繊維(パラ系全芳香族ポリアミド繊維を好適に含む。)を用いてもよい。
【0012】
本組成物においては、前記繊維の繊度が50dtx〜10000dtxであってもよい。
「dtx」とは、繊度の単位としてのデシテックスを表し(dtexと記載されることもある)、繊維の長さ10000m当たりの質量(単位:グラム)を示す。
ここに「前記繊維の繊度」とは、本組成物に含まれる複数繊維の繊度(dtx)の算術平均値(複数繊維それぞれの繊度の合計を繊維本数にて除した値)をいう。
本組成物を構成する前記繊維の繊度があまり小さいと本組成物の溶融物の粘度が上昇(流動性が低下)して車両通行面に該溶融物を塗着する作業性が悪化し、反対に、繊度があまり大きいと本組成物によって車両通行面に形成される標示物の耐衝撃性の向上効果が減少するので、これらの両方を満たす範囲とされてもよく、通常、本組成物を構成する前記繊維の繊度は50dtx〜10000dtxとされてもよい。
【0013】
本組成物においては、前記繊維の長さが5mm〜10mmであってもよい。
ここに「前記繊維の長さ」とは、本組成物に含まれる複数の繊維の長さの算術平均値(複数繊維それぞれの長さの合計を繊維本数にて除した値)をいう。
本組成物を構成する前記繊維の長さがあまり小さいと本組成物によって車両通行面に形成される標示物の耐衝撃性の向上効果が減少すると共に本組成物の溶融物の粘度が上昇(流動性が低下)して車両通行面に該溶融物を塗着する作業性が悪化し、反対に、長さがあまり長いと本組成物の溶融物の粘度が上昇(流動性が低下)して車両通行面に該溶融物を塗着する作業性が悪化するので、これらの両方を満たす範囲とされてもよく、通常、本組成物を構成する前記繊維の長さは5mm〜10mmとされてもよい。
【0014】
本組成物においては、前記加熱溶融型標示塗料組成物全体の質量W1に対する前記繊維の質量wf1の割合(100×wf1/W1)が、0.1重量パーセント〜0.2重量パーセントであってもよい。
本組成物の質量W1に対する本組成物W1中に含まれる繊維の質量wf1の割合(100×wf1/W1)は、あまり小さいと本組成物によって車両通行面に形成される標示物の耐衝撃性の向上効果が減少し、あまり大きいと本組成物の溶融物の粘度が上昇(流動性が低下)して車両通行面に該溶融物を塗着する作業性が悪化すると共に、本組成物によって車両通行面に形成される標示物の耐衝撃性の向上効果が該割合の増加に伴ってあまり増加しなくなるので、これらの両方を満たす範囲とされてもよく、通常、該割合(100×wf1/W1)は0.1重量パーセント〜0.2重量パーセントとされてもよい。
【0015】
また、本発明は、本発明の加熱溶融型標示塗料組成物(本組成物)を用いた車両通行面への標示物の製造方法(以下、「本方法」という。)も提供する。
即ち、本方法は、前記加熱溶融型標示塗料組成物(本組成物)の溶融物を車両通行面に塗着する塗着ステップと、塗着ステップにより車両通行面に塗着された溶融物を降温し固形の標示物とする降温ステップと、を含んでなる、標示物の製造方法である。
本方法は、塗着ステップと降温ステップとを含んでなる。
塗着ステップにおいては、本組成物の溶融物を車両通行面に塗着する。本組成物の溶融物は、塗着ステップに先立ち、加熱することで本組成物が含むバインダーとなる熱可塑性樹脂を溶融させること(溶融ステップ)で調製できる。この本組成物の溶融物を塗着ステップにおいては車両通行面に塗着するが、塗着作業は従来の加熱溶融型標示塗料組成物(従来組成物)を車両通行面に塗着するのと同様に行うことができ、例えば、加熱溶融型標示塗料組成物用の施工機(例えば、スリット式、スプレー式(回転体・噴射)等)を用いることもできる。
降温ステップにおいては、塗着ステップにより車両通行面に塗着された本組成物の溶融物を降温し固形の標示物とする。通常、本組成物の溶融物は高温(例えば、200℃前後)の状態で車両通行面に塗着されるので、そのままの状態で自然に冷却(降温)され、固形の標示物となる。
以上の通り、本方法によれば、従来の加熱溶融型標示塗料組成物(従来組成物)を車両通行面に塗着する作業において、従来の加熱溶融型標示塗料組成物(従来組成物)に替えて本組成物を用いれば、従来の作業と同様の作業によって、本組成物を用いて車両通行面への標示物を容易に形成することができる。
【0016】
本方法においては、塗着ステップに先立ち、前記加熱溶融型標示塗料組成物(本組成物)のうち前記繊維以外の残部と、前記繊維と、を混合する混合ステップを含んでなるものであってもよい。
本組成物のうち前記繊維以外の残部とは、従来からの加熱溶融型標示塗料組成物(従来組成物)と同様であるので、汎用されている従来組成物(該残部)に前記繊維を混合すること(混合ステップ)によって、汎用の従来組成物を用いて本組成物を調製することができ、本組成物を容易に形成できる。
なお、混合ステップにおける該残部(従来組成物)と前記繊維との混合は、該残部(従来組成物)が固体(例えば、粉状や粒状)状態において前記繊維と混合されても、また、該残部(従来組成物)が溶融状態において前記繊維と混合されても、いずれであってもよい。
【0017】
さらに、本発明は、車両通行面に形成される標示物(以下、「本標示物」という。)も提供する。
即ち、本標示物は、熱可塑性樹脂、顔料、ガラスビーズ及び繊維を含む、標示物である。
本標示物は、本組成物を用いた本方法によって製造され得るものであり、従来組成物によって車両通行面に形成される標示物(以下、「従来標示物」という。)に比し、本標示物は繊維を含むことから高い耐衝撃性を有する。
【0018】
本標示物においては、前記繊維が、主鎖に芳香族骨格を有する芳香族ポリマー繊維であってもよい(以下、「芳香族ポリマー本標示物」という。)。
本標示物に含まれる繊維は、上述の如く、本標示物に高い耐衝撃性を付与するが、かかる繊維として主鎖に芳香族骨格を有する芳香族ポリマー繊維を用いれば、芳香族ポリマーは、通常、高強度を有することから本標示物の耐衝撃性を一層向上させることができる。
【0019】
芳香族ポリマー本標示物の場合、前記芳香族ポリマー繊維が、ポリアリレート繊維、芳香族ポリアミド繊維及びPBO繊維よりなる群より選ばれる単一の繊維または複数の繊維の組合せであってもよい。
ポリアリレート繊維、芳香族ポリアミド繊維及びPBO繊維(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維)は、いずれも高強度を有するので本標示物の耐衝撃性を向上させることができる。
また、芳香族ポリアミド繊維には、全芳香族ポリアミド繊維(パラ系全芳香族ポリアミド繊維を好適に含む。)を用いてもよい。
【0020】
本標示物においては、前記繊維の繊度が50dtx〜10000dtxであってもよい。
「dtx」とは、デシテックスを表し(dtexと記載されることもある)、繊維の長さ10000m当たりの質量(単位:グラム)を示す。
ここで「前記繊維の繊度」とは、本標示物に含まれる複数繊維の繊度(dtx)の算術平均値(複数繊維それぞれの繊度の合計を繊維本数にて除した値)をいう。
本標示物を構成する前記繊維の繊度があまり小さいと、本組成物を用いて本標示物を形成する際の本組成物の溶融物の粘度が上昇(流動性が低下)して車両通行面に該溶融物を塗着する作業性が悪化し、反対に、繊度があまり大きいと本標示物の耐衝撃性の向上効果が減少するので、これらの両方を満たす範囲とされてもよく、通常、本標示物を構成する前記繊維の繊度は50dtx〜10000dtxとされてもよい。
【0021】
本標示物においては、前記繊維の長さが5mm〜10mmであってもよい。
ここに「前記繊維の長さ」とは、本標示物を構成する複数の繊維の長さの算術平均値(複数繊維それぞれの長さの合計を繊維本数にて除した値)をいう。
本標示物を構成する前記繊維の長さがあまり小さいと本標示物の耐衝撃性の向上効果が減少し、反対に、長さがあまり長いと、本組成物を用いて本標示物を形成する際の本組成物の溶融物の粘度が上昇(流動性が低下)して車両通行面に該溶融物を塗着する作業性が悪化するので、これらの両方を満たす範囲とされてもよく、通常、本標示物を構成する前記繊維の長さは5mm〜10mmとされてもよい。
【0022】
本標示物においては、前記標示物全体の質量W2に対する前記繊維の質量wf2の割合(100×wf2/W2)が、0.1重量パーセント〜0.2重量パーセントであってもよい。
本標示物の質量W2に対する本標示物W2に含まれる繊維の質量wf2の割合(100×wf2/W2)は、あまり小さいと本標示物の耐衝撃性の向上効果が減少し、あまり大きいと、本組成物を用いて本標示物を形成する際の本組成物の溶融物の粘度が上昇(流動性が低下)して車両通行面に該溶融物を塗着する作業性が悪化すると共に、本標示物の耐衝撃性の向上効果が該割合の増加に伴ってあまり増加しなくなるので、これらの両方を満たす範囲とされてもよく、通常、該割合(100×wf2/W2)は0.1重量パーセント〜0.2重量パーセントとされてもよい。
【0023】
加えて、本発明は、可塑性樹脂、顔料及びガラスビーズを含む加熱溶融型標示塗料組成物に添加する添加材(以下、「本添加材」という。)も提供する。
即ち、本添加材は、熱可塑性樹脂、顔料及びガラスビーズを含む加熱溶融型標示塗料組成物に添加する、繊維を含む添加材である。
このため本添加材を、熱可塑性樹脂、顔料及びガラスビーズを含む加熱溶融型標示塗料組成物に添加することで、本組成物を容易に調製できる(本添加材には、本添加材が加熱溶融型標示塗料組成物に添加された際に調製される本組成物に問題を生じない該繊維以外の成分が含まれてもよいし、本添加材は実質的に該繊維のみからなるものであってもよい。)。
例えば、本添加材と従来組成物とを用い本組成物を調製し使用することで、従来組成物をそのまま用いる場合に比し、車両通行面に形成される標示物の耐衝撃性を向上させることができる。
なお、本添加材を構成する繊維は、本添加材が添加される加熱溶融型標示塗料組成物が溶融される温度にて溶融しない程度の耐熱性を備えるものを使用する。
【0024】
本添加材においては、前記繊維が、主鎖に芳香族骨格を有する芳香族ポリマー繊維であってもよい(以下、「芳香族ポリマー本添加材」という。)。
本添加材を構成する繊維は、上述の如く、本添加材が添加される加熱溶融型標示塗料組成物が溶融される温度にて溶融しない程度の耐熱性を備えるものを使用するが、加熱溶融型標示塗料組成物の溶融温度は高温(例えば、200℃前後)とされることが多く、かかる高温にて溶融しない程度の耐熱性を有する繊維としては、主鎖に芳香族骨格を有する芳香族ポリマー繊維を用いてもよい。芳香族ポリマーは、通常、高耐熱性を有することに加え、高強度を有するので、本添加材が添加される加熱溶融型標示塗料組成物によって車両通行面に形成される標示物の耐衝撃性を向上させることができる。
【0025】
芳香族ポリマー本添加材の場合、前記芳香族ポリマー繊維が、ポリアリレート繊維、芳香族ポリアミド繊維及びPBO繊維よりなる群より選ばれる単一の繊維または複数の繊維の組合せであってもよい。
ポリアリレート繊維、芳香族ポリアミド繊維及びPBO繊維(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維)は、いずれも高耐熱性であるので加熱溶融型標示塗料組成物の溶融温度まで通常は耐えることができ、さらに高強度を有するので本添加材が添加される加熱溶融型標示塗料組成物によって車両通行面に形成される標示物の耐衝撃性を向上させることができる。
また、芳香族ポリアミド繊維には、全芳香族ポリアミド繊維(パラ系全芳香族ポリアミド繊維を好適に含む。)を用いてもよい。
【0026】
本添加材においては、前記繊維の繊度が50dtx〜10000dtxであってもよい。
「dtx」とは、デシテックスを表し(dtexと記載されることもある)、繊維の長さ10000m当たりの質量(単位:グラム)を示す。
ここに「前記繊維の繊度」とは、本添加材を構成する複数繊維の繊度(dtx)の算術平均値(複数繊維それぞれの繊度の合計を繊維本数にて除した値)をいう。
本添加材を構成する前記繊維の繊度があまり小さいと本添加材が添加される加熱溶融型標示塗料組成物の溶融物の粘度が上昇(流動性が低下)して車両通行面に該溶融物を塗着する作業性が悪化し、反対に、繊度があまり大きいと本添加材が添加される加熱溶融型標示塗料組成物によって車両通行面に形成される標示物の耐衝撃性の向上効果が減少するので、これらの両方を満たす範囲とされてもよく、通常、本添加材に含まれる前記繊維の繊度は50dtx〜10000dtxとされてもよい。
【0027】
本添加材においては、前記繊維の長さが5mm〜10mmであってもよい。
ここに「前記繊維の長さ」とは、本添加材に含まれる複数の繊維の長さの算術平均値(複数繊維それぞれの長さの合計を繊維本数にて除した値)をいう。
本添加材を構成する前記繊維の長さがあまり小さいと本添加材が添加される加熱溶融型標示塗料組成物によって車両通行面に形成される標示物の耐衝撃性の向上効果が減少し、反対に、長さがあまり長いと本添加材が添加される加熱溶融型標示塗料組成物の溶融物の粘度が上昇(流動性が低下)して車両通行面に該溶融物を塗着する作業性が悪化するので、これらの両方を満たす範囲とされてもよく、通常、本添加材を構成する前記繊維の長さは5mm〜10mmとされてもよい。
【0028】
本添加材は、本添加材が添加された加熱溶融型標示塗料組成物全体の質量W3に対する、本添加材が添加された加熱溶融型標示塗料組成物全体の質量W3中の前記繊維の質量wf3の割合(100×wf3/W3)が、0.1重量パーセント〜0.2重量パーセントとなるように用いられてもよい。
本添加材が添加された加熱溶融型標示塗料組成物全体の質量W3に対してそれに含まれる繊維の質量wf3の割合(100×wf3/W3)は、あまり小さいと車両通行面に形成される標示物の耐衝撃性の向上効果が減少し、あまり大きいと本添加材が添加された加熱溶融型標示塗料組成物の溶融物の粘度が上昇(流動性が低下)して車両通行面に該溶融物を塗着する作業性が悪化すると共に、該割合増加に伴って標示物の耐衝撃性があまり増加しなくなるので、これらの両方を満たす範囲とされてもよく、通常、該割合(100×wf3/W3)は0.1重量パーセント〜0.2重量パーセントとされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実験手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を説明する。しかしながら、これらによって本発明は何ら制限されるものではない。
【0031】
(鉄球落下試験)
加熱溶融型標示塗料組成物に繊維を含有させることによって、塗料組成物の溶融物やそれによって形成される標示物の性質がどのように変化するかを以下の通り評価した。
図1は、実験手順を示すフローチャートである。図1を参照して、実験の手順について説明する。
ここでは市販の路面標示用塗料11としてJIS K 5665に規定される3種1号に適合するアトミクス株式会社製の商品名「アトムライン」(型番:#15白)を用いた。ここで用いた市販路面標示用塗料11は、熱可塑性樹脂、顔料及びガラスビーズを含んでいる。
【0032】
繊維21として、ポリアリレート繊維である株式会社クラレ社製の商品名ベクトラン(登録商標)を用いた。繊維21は、長手方向に対して垂直な断面が円形(該円の直径は約0.015mm)を略なすものを用い、繊維の繊度は約1670dtx(デシテックス)であった。また繊維21として、繊維長が0.6cm、0.8cm及び1.0cmの3種類のものを用意した。
まず1kgの市販路面標示用塗料11を、容量1リットルのホーロービーカーに装入し、約200℃で加熱溶融31した。溶融した市販路面標示用塗料11をボール盤(撹拌装置)にて1300回転/分で撹拌しつつ、繊維21を添加し混合41した。繊維21の添加量は、ここでは1g及び2gの2段階で行った。
【0033】
このように溶融した市販路面標示用塗料11に上記所定量(1g、2g)の繊維21(繊維長:0.6cm、0.8cm及び1.0cmの3種類)を添加し十分に混合することで繊維添加組成物51(繊維長が0.6cm、0.8cm及び1.0cmの3種類それぞれについて繊維添加量1gと2gの2種類を行ったので計6種類)を得た。また、繊維21の添加の効果を確認するため、繊維を添加していない溶融した市販路面標示用塗料11を対照組成物53とした。
対照組成物53(溶融物)及び6種類の繊維添加組成物51(溶融物)について溶融物テスト63(後述)を行った。
【0034】
そして、対照組成物53(溶融物)を用いて対照試験片53pを作成(試験片作成53a)すると共に、繊維添加組成物51(溶融物)を用いて繊維添加試験片51p(前述の如く、繊維長3種類それぞれについて繊維添加量2種類を行ったので計6種類)を作成(試験片作成51a)した。試験片作成51a、53aのいずれも同様に行い、対照試験片53p及び繊維添加試験片51pのいずれも同形状とした。具体的には、対照試験片53p及び繊維添加試験片51pは、アスファルト試験片(直径100mm×厚50mmの円柱状のアスファルト製の試験片)の上面(該円柱の円形状の上面)に対照組成物53(溶融物)及び繊維添加組成物51(溶融物)を塗布することにより(試験片作成51a、53a)該上面に形成した平らな円盤状(詳細には、直径80mm×厚1.5mm)のものとした。
これら対照試験片53p及び6種類の繊維添加試験片51pについて試験片テスト61(後述)を行った。
【0035】
ここでは試験片テスト61として、耐衝撃性を評価する鉄球落下試験を行った。
鉄球落下試験は、上記アスファルト試験片の上面に形成された対照試験片53p及び6種類の繊維添加試験片51pいずれも−20℃に冷却し、試験片51p、53pの上部から2.0kgの鉄球を自由落下させた。割れ等の破損が試験片51p、53pに生じていないかを確認しつつ、鉄球の落下高さを最初は20cmから5cmずつ増加させ、割れが発生した鉄球の高さ(cm)を試験結果とした。
【0036】
また、ここでは溶融物テスト63として、対照組成物53(溶融物)及び6種類の繊維添加組成物51(溶融物)の200℃における粘度(単位:cP)をブルックフィールド型回転式粘度計によって測定した。
対照試験片53p(繊維量0g)及び6種類の繊維添加試験片51pに関する鉄球落下試験における鉄球高さ(cm)と、対照組成物53(繊維量0g)(溶融物)及び6種類の繊維添加組成物51(溶融物)の粘度(cP)と、を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1に示す通り、対照試験片53p(繊維量0g)に比し、繊維添加試験片51p(繊維量1g及び2g)の鉄球落下試験における鉄球高さ(cm)が大きくなることから、繊維を添加することによって耐衝撃性を顕著に向上させることができることが明らかになった。繊維21の添加量が1gから2gに増加するにつれて、鉄球高さ(cm)(耐衝撃性)は大きくなるが、繊維添加組成物51(溶融物)の粘度(cP)も増加することが明らかになった。
なお、表1には記載していないが、繊維21の添加量を2gを超えて増加させても、鉄球高さ(cm)(耐衝撃性)の増加はあまり観察されなかったことに加え、繊維添加組成物51(溶融物)の粘度(cP)が増加し作業性が悪化することも明らかになった。
【0039】
これらのことから、長さ5mm〜10mmの繊維を、繊維添加組成物51全体の質量W1に対する繊維の質量wf1の割合(100×wf1/W1)が、0.1パーセント〜0.2パーセントになるように添加するのが好ましいことが明らかになった。
また、対照試験片53pに鉄球を落下させ対照試験片53pが割れると破断片が飛散するが、繊維添加試験片51pに鉄球を落下させて繊維添加試験片51pに割れが生じても破断片が飛散しにくいことも明らかになった。このことは繊維を添加することにより、衝撃によって標示に割れが生じても標示がその位置に留まることを意味し、車両通行面に形成された標示に割れが生じても視認性を維持することができ好ましい。
【0040】
(耐摩耗性及びすべり抵抗等試験)
再び図1を参照して、実験の手順について説明する。
ここでも市販の路面標示用塗料11としてJIS K 5665に規定される3種1号に適合するアトミクス株式会社製の商品名「アトムライン」(型番:#15白)を用いた。ここで用いた市販路面標示用塗料11は、熱可塑性樹脂、顔料及びガラスビーズを含む。
【0041】
繊維21として、ポリアリレート繊維である株式会社クラレ社製の商品名ベクトラン(登録商標)を用いた。繊維21は、長手方向に対して垂直な断面が円形(該円の直径は約0.015mm)を略なすものを用い、繊維の繊度は約1670dtx(デシテックス)であった。また繊維21として、ここでは繊維長が0.6cmのものを用意した。
まず1kgの市販路面標示用塗料11を、容量1リットルのホーロービーカーに装入し、約200℃で加熱溶融31した。溶融した市販路面標示用塗料11をボール盤(撹拌装置)にて1300回転/分で撹拌しつつ、繊維21を添加し混合41した。繊維21の添加量は、ここでは1g、1.5g及び2gの3段階で行った。
【0042】
このように市販路面標示用塗料11に上記所定量(1g、1.5g、2g)の繊維21を添加し十分に混合することで繊維添加組成物51(繊維添加量1g、1.5g、2gの3種類)を得た。また、繊維21の添加の効果を確認するため、繊維を添加していない市販路面標示用塗料11を対照組成物53とした。
【0043】
そして、対照組成物53(溶融物)を用いて対照試験片53pを作成(試験片作成53a)すると共に、繊維添加組成物51(溶融物)を用いて繊維添加試験片51p(繊維添加量1g、1.5g、2gそれぞれに応じて3種類)を作成(試験片作成51a)した。試験片作成51a及び試験片作成53aのいずれも同様に行い、対照試験片53p及び繊維添加試験片51pのいずれも同形状とした。具体的には、対照試験片53p及び繊維添加試験片51pの形状は平板状(詳細には、縦100mm×横150mm×厚1.5mm)であり、試験片作成51a、53aは、厚さ0.5mmのアルミニウム製の平板に対照組成物53(溶融物)及び繊維添加組成物51(溶融物)を塗布することで行った。
これら対照試験片53p及び3種類の繊維添加試験片51pに関し試験片テスト61(後述)を行った。
【0044】
ここでは試験片テスト61として、耐摩耗性試験、圧縮強さ試験、軟化点試験、すべり抵抗値試験を行った。
耐摩耗性試験は、走行車両や歩行者等による摩耗により路面の標示物がどの程度すり減るかを評価するための試験である。具体的な耐摩耗性試験の試験方法はJIS K 5665の8.17bに従って行い、100回転での摩耗減量(mg)を測定した。
【0045】
圧縮強さ試験は、走行車両等による路面の標示物への荷重に対する強さを主として評価するための試験である。具体的な圧縮強さ試験はJIS K 5665の8.18に従って行った。
軟化点試験は、路面の標示物の温度に対する安定性及び施工性を評価するための試験である。軟化点が低い標示用塗料を夏季に使用すると乾燥が遅れることで汚れを生じやすく、逆に、軟化点が高い標示用塗料を冬季に使用すると乾燥が早すぎて標示物にクラックが生じやすい。具体的な軟化点試験はJIS K 5665の8.8に従って行った。
【0046】
すべり抵抗値試験は、英国のスタンレー社製の商品名「ポータブル・スキッド・レジスタンス・テスター」を用い、湿潤状態でのすべり抵抗値(スキッドレジスタンス)を測定した。かかるスタンレー社製の商品名「ポータブル・スキッド・レジスタンス・テスター」にて測定されるすべり抵抗値はBPNと呼ばれており、数値が高いほどすべり抵抗が大きく、滑りにくいので好ましい。
また、路面に標示用塗料を塗着する際、夜間における標示の視認性を向上させるため路面に塗着された標示用塗料(未固化)にガラスビーズを散布して標示上面にガラスビーズを接着する。この標示上面に存するガラスビーズはすべり抵抗を上昇させるが、車両通行等により経年的に脱離することが知られており、これによって経年的に標示上面のすべり抵抗が低下する。この標示上面にガラスビーズが存在する状態(標示用塗料を塗着した直後を想定)として表面にガラスビーズが存在する試験片(ビーズ散布)と、標示上面にガラスビーズが存在しない状態(標示用塗料を塗着してから長い時間が経過し、ガラスビーズが脱離した状態を想定)として表面にガラスビーズが存在しない試験片(ビーズ散布無し)と、の2種類の試験片を作成し試験した。
以上の結果を表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
ここに表2中の「現行」は、繊維を添加していない対照組成物53及び対照試験片53pに基づく結果を示しており、表2中の「繊維0.1%」、「繊維0.15%」及び「繊維0.2%」は、繊維添加組成物51及び繊維添加試験片51pに基づく結果を示している。詳細には、「繊維0.1%」は、繊維添加量1gの繊維添加組成物51及び繊維添加試験片51pに基づく結果を示しており、「繊維0.15%」は、繊維添加量1.5gの繊維添加組成物51及び繊維添加試験片51pに基づく結果を示しており、そして「繊維0.2%」は、繊維添加量2gの繊維添加組成物51及び繊維添加試験片51pに基づく結果を示している。
【0049】
表2の結果から以下の点が示唆された。
(a)繊維添加量が増加するに従い、耐摩耗性が向上する(表2中の耐摩耗性を示す数値が減少している。)。
(b)繊維添加による圧縮強さへの影響はみられない。
(c)繊維添加による軟化点への影響はみられない。
(d)表面にガラスビーズが存在する試験片(ビーズ散布)においては、繊維添加によるすべり抵抗への効果は見られないが、表面にガラスビーズが存在しない試験片(ビーズ散布無し)においては、繊維の添加量が増加するに従い、すべり抵抗を増加させる。このことは車両通行等により標示からガラスビーズが脱離しても、繊維を添加していれば標示上面のすべり抵抗の低下を減少させることができることを意味する(例えば、繊維無添加の現行であればガラスビーズ存在状態で51からガラスビーズがなくなると32と大幅に減少するのに対し、繊維0.2%であればガラスビーズ存在状態で53からガラスビーズがなくなっても45に留まるので、すべり抵抗をある程度維持することができる。)。
【0050】
以上のように、上記の実施例においては、繊維添加組成物51は、熱可塑性樹脂、顔料、ガラスビーズ及び繊維を含む、加熱溶融型標示塗料組成物(本組成物)である。これらのうち熱可塑性樹脂、顔料及びガラスビーズについては、JIS K 5665に規定される3種に適合する市販路面標示用塗料11に含まれていたものであり、繊維は繊維21としてポリアリレート繊維を用いた。なお、ここでは市販路面標示用塗料11を加熱溶融31した溶融物に繊維21を添加混合して本組成物としたが、熱可塑性樹脂、顔料、ガラスビーズ及び繊維を含む固体状(粉状、粒状、塊状等)の本組成物としておくこともできる。
また、本組成物を構成する繊維としては、前述のように本組成物を溶融させる温度にて溶融しない程度の耐熱性を備えるものを使用するが(バインダーとしての熱可塑性樹脂の溶融温度において繊維は少なくとも溶融しない)、加えて、繊維の強度(引っ張り強度)は、バインダーとしての熱可塑性樹脂(固体)の強度(引っ張り強度)よりも少なくとも高く、繊維の耐衝撃性は、バインダーとしての熱可塑性樹脂(固体)の耐衝撃性よりも少なくとも高いものを用いてもよい。
なお、本組成物中に含まれる繊維の割合は、上述のように小さく、本組成物中の繊維以外の成分(熱可塑性樹脂、顔料、ガラスビーズを含む)については、従来組成物と同様に調製することができる。
【0051】
繊維添加組成物51が含む繊維は、主鎖に芳香族骨格を有する芳香族ポリマー繊維であり、さらに詳細には、該芳香族ポリマー繊維がポリアリレート繊維の単一の繊維である。
繊維添加組成物51が含む繊維の繊度が1670dtx(50dtx〜10000dtx)である。
繊維添加組成物51が含む繊維の長さが6mm、8mm、10mm(いずれも5mm〜10mmの範囲内)である。
また、繊維添加組成物51においては、繊維添加組成物51(前記加熱溶融型標示塗料組成物)全体の質量W1に対する前記繊維の質量wf1の割合(100×wf1/W1)が、繊維添加量wf1が1gの場合にはW1は1001gであるので該割合(100×wf1/W1)は約0.1パーセントであり、繊維添加量wf1が1.5gの場合にはW1は1001.5gであるので該割合(100×wf1/W1)は約0.15パーセントであり、そして繊維添加量wf1が2gの場合にはW1は1002gであるので該割合(100×wf1/W1)は約0.2パーセントであり、いずれも0.1パーセント〜0.2パーセントの範囲内である。
【0052】
そして、繊維添加組成物51を用いて路面のような車両通行面に標示物の製造(形成)することができる。具体的には、熱可塑性樹脂、顔料、ガラスビーズ及び繊維を含む、加熱溶融型標示塗料組成物(本組成物)の溶融物である繊維添加組成物51を車両通行面に塗着する塗着ステップと、塗着ステップにより車両通行面に塗着された溶融物を降温し固形の標示物とする降温ステップと、を含んでなる、標示物の製造方法により、従来から従来組成物を施工している塗着工程と同様に標示物を形成できる。
また、ここでは塗着ステップに先立ち、前記加熱溶融型標示塗料組成物(繊維添加組成物51)のうち前記繊維以外の残部(JIS K 5665に規定される3種に適合する市販路面標示用塗料11の成分)と、前記繊維(繊維21たるポリアリレート繊維)と、を混合する混合ステップ(図1中の混合工程41)を含んでなる。これにより従来からの加熱溶融型標示塗料組成物(市販路面標示用塗料11)に繊維21を添加することで容易に本組成物が調製できる。
【0053】
この繊維添加組成物51を用いて形成される車両通行面の標示物は、繊維添加組成物51が冷却されて固化したものであるから、熱可塑性樹脂(バインダーとして機能する)、顔料、ガラスビーズ及び繊維を含む標示物である。
該標示物においては、前記繊維が、主鎖に芳香族骨格を有する芳香族ポリマー繊維であり、該芳香族ポリマー繊維がポリアリレート繊維の単一の繊維である。
該標示物が含む繊維の繊度が1670dtx(50dtx〜10000dtx)である。
該標示物が含む繊維の長さが6mm、8mm、10mm(いずれも5mm〜10mmの範囲内)である。
該標示物全体の質量W2に対する前記繊維の質量wf2の割合(100×wf2/W2)が、繊維添加量が1gの場合にはwf2=1gでありW2=1001gであるので該割合(100×wf2/W2)は約0.1パーセントであり、繊維添加量が1.5gの場合にはwf2=1.5gでありW2=1001.5gであるので該割合(100×wf2/W2)は約0.15パーセントであり、そして繊維添加量が2gの場合にはwf2=2gでありW2=1002gであるので該割合(100×wf2/W2)は約0.2パーセントであり、いずれも0.1パーセント〜0.2パーセントの範囲内である。
【0054】
繊維21は、熱可塑性樹脂、顔料及びガラスビーズを含む加熱溶融型標示塗料組成物(市販路面標示用塗料11)に添加する、繊維を含む添加材として使用できる。
繊維21は、主鎖に芳香族骨格を有する芳香族ポリマー繊維であり、該芳香族ポリマー繊維がポリアリレート繊維の単一の繊維である。
そして、繊維21の繊度が1670dtx(50dtx〜10000dtx)である。
繊維21の長さが6mm、8mm、10mm(いずれも5mm〜10mmの範囲内)である。
【符号の説明】
【0055】
11 市販の路面標示用塗料
21 繊維
31 加熱溶融(工程)
41 混合(工程)
51 繊維添加組成物
51a 試験片作成(工程)
51p 繊維添加試験片
53 対照組成物
53a 試験片作成(工程)
53p 対照試験片
61 試験片テスト
63 溶融物テスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂、顔料、ガラスビーズ及び繊維を含む、加熱溶融型標示塗料組成物。
【請求項2】
前記繊維が、主鎖に芳香族骨格を有する芳香族ポリマー繊維である、請求項1に記載の加熱溶融型標示塗料組成物。
【請求項3】
前記芳香族ポリマー繊維が、ポリアリレート繊維、芳香族ポリアミド繊維及びPBO繊維よりなる群より選ばれる単一の繊維または複数の繊維の組合せである、請求項2に記載の加熱溶融型標示塗料組成物。
【請求項4】
前記繊維の繊度が50dtx〜10000dtxである、請求項1乃至3のいずれか1に記載の加熱溶融型標示塗料組成物。
【請求項5】
前記繊維の長さが5mm〜10mmである、請求項1乃至4のいずれか1に記載の加熱溶融型標示塗料組成物。
【請求項6】
前記加熱溶融型標示塗料組成物全体の質量W1に対する前記繊維の質量wf1の割合(100×wf1/W1)が、0.1重量パーセント〜0.2重量パーセントである、請求項1乃至5のいずれか1に記載の加熱溶融型標示塗料組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1に記載の前記加熱溶融型標示塗料組成物の溶融物を車両通行面に塗着する塗着ステップと、
塗着ステップにより車両通行面に塗着された溶融物を降温し固形の標示物とする降温ステップと、
を含んでなる、標示物の製造方法。
【請求項8】
塗着ステップに先立ち、前記加熱溶融型標示塗料組成物のうち前記繊維以外の残部と、前記繊維と、を混合する混合ステップを含んでなる、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
熱可塑性樹脂、顔料、ガラスビーズ及び繊維を含む、標示物。
【請求項10】
前記繊維が、主鎖に芳香族骨格を有する芳香族ポリマー繊維である、請求項9に記載の標示物。
【請求項11】
前記芳香族ポリマー繊維が、ポリアリレート繊維、芳香族ポリアミド繊維及びPBO繊維よりなる群より選ばれる単一の繊維または複数の繊維の組合せである、請求項10に記載の標示物。
【請求項12】
前記繊維の繊度が50dtx〜10000dtxである、請求項9乃至11のいずれか1に記載の標示物。
【請求項13】
前記繊維の長さが5mm〜10mmである、請求項9乃至12のいずれか1に記載の標示物。
【請求項14】
前記標示物全体の質量W2に対する前記繊維の質量wf2の割合(100×wf2/W2)が、0.1重量パーセント〜0.2重量パーセントである、請求項9乃至13のいずれか1に記載の標示物。
【請求項15】
熱可塑性樹脂、顔料及びガラスビーズを含む加熱溶融型標示塗料組成物に添加する、繊維を含む添加材。
【請求項16】
前記繊維が、主鎖に芳香族骨格を有する芳香族ポリマー繊維である、請求項15に記載の添加材。
【請求項17】
前記芳香族ポリマー繊維が、ポリアリレート繊維、芳香族ポリアミド繊維及びPBO繊維よりなる群より選ばれる単一の繊維または複数の繊維の組合せである、請求項16に記載の添加材。
【請求項18】
前記繊維の繊度が50dtx〜10000dtxである、請求項15乃至17のいずれか1に記載の添加材。
【請求項19】
前記繊維の長さが5mm〜10mmである、請求項15乃至18のいずれか1に記載の添加材。

【図1】
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【公開番号】特開2012−197556(P2012−197556A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60516(P2011−60516)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(511071278)テック鬼城株式会社 (1)
【Fターム(参考)】