説明

加熱炉の排気設備

【課題】連続燃焼バーナと蓄熱式バーナとを備えた加熱炉の排気設備において、排気設備の設備費の低減化を図る。
【解決手段】加熱炉1内の燃焼排ガスを蓄熱式バーナ3の蓄熱体、吸引ファンを順次介して排出する第1の排気系4と、加熱炉1内の燃焼排ガスを加熱炉1の炉尻側からドラフトによって排出する第2の排気系5と、第1の排気系4及び第2の排気系5から排出される燃焼排ガスを大気中に放散する1本の煙突6と、第2の排気系5から排出される燃焼排ガスの排熱を回収して連続燃焼バーナ2に供給する燃焼空気を予熱する熱交換手段(好ましくは圧損が10mmHO以上20mmHO以下のレキュぺレータ)9を備え、加熱炉1に設置された全バーナの燃焼量に対する連続燃焼バーナ2の燃焼量の割合が10容量%以上、50容量%以下であり、煙突6の高さが45m以上60m未満であることを特徴とする加熱炉の排気設備。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続燃焼バーナと蓄熱式バーナとを備えた加熱炉の排気設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熱間圧延設備の連続式加熱炉では、省エネルギー対策として蓄熱式(リジェネ)バーナの導入が積極的に進められている(例えば、特許文献1を参照。) 。蓄熱式バーナは、蓄熱体を備えた一対のバーナによって構成されるものであり、これら一対のバーナが燃焼と排気とを交互に繰り返しながら、一方のバーナの燃焼により発生した燃焼排ガスを他方のバーナの蓄熱体に通過させることによって、その燃焼排ガス中の排熱を蓄熱体に蓄熱し、他方のバーナが燃焼する際に、この蓄熱体に燃焼空気を通過させることによって燃焼空気を予熱し、この燃焼空気の温度を上げて省エネルギー化を図るものである。この蓄熱式バーナでは、排気時に燃焼排ガスの排熱を蓄熱体によって蓄熱回収し燃焼時に燃焼空気が蓄熱体と直接熱交換により加熱されるため、一般的なレキュペレータを用いて排熱回収する場合よりも、高い熱交換率を得ることが可能である。
【特許文献1】特開2000−345237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1に記載される蓄熱式バーナを備えた加熱炉の排気設備では、加熱炉内の燃焼排ガスを蓄熱式バーナを介して排出する第1の排気系と、加熱炉内の燃焼排ガスを加熱炉の炉尻側から排出する第2の排気系とのうち、第1の排気系に加熱炉内の燃焼排ガスを誘引する誘引ファンを設け、第2の排気系に加熱炉の炉圧を制御する炉圧ダンバを設けて、第1の排気系と第2の排気系とを1本の煙突に接続し、この煙突から燃焼排ガスを合流して排出することが行われている。
【0004】
このような排気設備を備えた加熱炉では、蓄熱式バーナの蓄熱体で、該蓄熱式バーナから発生する燃焼排ガスの約80%を排熱回収している。しかし、連続燃焼バーナで発生する燃焼排ガスは、排熱回収することなく、全て炉尻から炉外へと排出している。このため、加熱炉の炉尻から排出される燃焼排ガスには大きな排熱が存在することになる。
【0005】
この加熱炉の炉尻から排出される燃焼排ガスから排熱回収するためにレキュペレータを設けることが行われている。しかし、このレキュペレータで発生する圧損を補償してドラフトを確保するために、このレキュペレータと煙突との間に誘引ファンを設けたり、煙突の高さを100m以上確保したりする必要があるため、このような排気設備の建設費が高くなるといった問題が発生してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、連続燃焼バーナと蓄熱式バーナとを備えた加熱炉の排気設備において、排気設備の設備費の低減化を実現可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することを目的とした本発明の要旨は以下の通りである。
(1) 炉内を連続的に燃焼する連続燃焼バーナと、炉内で燃焼と排気とを交互に繰り返しながら、排気時に燃焼排ガスの排熱を蓄熱体によって蓄熱回収し、燃焼時に蓄熱体に蓄熱された熱によって燃焼空気を予熱する蓄熱式バーナとを備えた加熱炉の排気設備であって、
前記加熱炉内の燃焼排ガスを前記蓄熱式バーナの蓄熱体、吸引ファンを順次介して排出する第1の排気系と、
前記加熱炉内の燃焼排ガスを前記加熱炉の炉尻側からドラフト(自然通風)によって排出する第2の排気系と、前記第1の排気系及び前記第2の排気系から排出される燃焼排ガスを大気中に放散する1本の煙突と、
前記第2の排気系から排出される燃焼排ガスの排熱を回収して前記連続燃焼バーナに供給する燃焼空気を予熱する熱交換手段とを備え、
前記加熱炉に設置された全バーナの燃焼量に対する前記連続燃焼バーナの燃焼量の割合が10容量%以上、50容量%以下であり、前記煙突の高さが45m以上60m未満であることを特徴とする加熱炉の排気設備。
(2) 前記連続燃焼バーナとして、ルーフバーナ、サイドバーナ、軸流バーナの何れか1種又は2種以上を備えることを特徴とする前記(1)に記載の加熱炉の排気設備。
(3) 前記熱交換手段として、レキュペレータを用い、このレキュぺレータの圧損が10mmHO以上20mmHO以下であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の加熱炉の排気設備。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加熱炉の燃焼排ガスを大気中に放散するのに必要な高さである45m以上で、かつ、建設費が大幅に増加しない高さ60m以下の煙突で得られる自然通風可能な領域で、連続燃焼バーナにおける燃焼量の比率を設定したので、その分、第1の排気系に接続された吸引ファンの容量を低減可能となり、該吸引ファンの設備コスト(ランニングコストを含む)を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を適用した加熱炉の排気設備について、図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態では、図1に示すような熱間圧延設備の連続式加熱炉1に本発明の排気設備を適用した場合を例に挙げて説明する。
【0010】
熱間圧延設備の連続式加熱炉(以下、加熱炉という。)1は、炉内に装入された被加熱材であるスラブ(鋳片)を、搬送手段であるウォーキングビームによって矢印方向に搬送しながら、炉内の予熱帯、加熱帯、均熱帯を順次通過する間に、炉内に設置されたバーナによって所定温度まで加熱するものであり、所定温度まで加熱されたスラブは加熱炉1から抽出され、次工程の圧延ラインへと送られる。
【0011】
この加熱炉1には、炉内を連続的に加熱する連続燃焼バーナ2と炉内で燃焼と排気とを交互に繰り返しながら排気時に燃焼排ガスの排熱を蓄熱体によって排熱回収し、燃焼時に、蓄熱体に蓄熱された熱によって燃焼空気を予熱する蓄熱式バーナ3とが設置されている。
【0012】
連続燃焼バーナ2は、例えば加熱炉1の上部に炉幅方向に並んで配置されたルーフバーナであり、このルーフバーナは、スラブ長手方向の温度分布を目標温度分布(均一又は傾斜)にするため、加熱炉1の出側の上部、具体的には均熱帯の上部に設置されている。なお、連続燃焼バーナ2としては、ルーフバーナ以外にも、加熱炉1の側部に配置されるサイドバーナや、加熱炉1の上部又は下部に炉長方向に沿って配置される軸流バーナなどを挙げることができ、これらの連続燃焼バーナ2を1種又は2種以上用いることができる。また、これらの連続燃焼バーナ2は、上述した配置に限らず予熱帯、加熱帯、均熱帯の何れかの上部下部又は側部に任意に設置することも可能である。
【0013】
蓄熱式バーナ3は、蓄熱体を備えた一対のバーナを加熱炉1の側部に対向配置されてなり、これら一対のバーナが燃焼と排気とを交互に繰り返しながら、一方のバーナの燃焼により発生した燃焼排ガスを他方のバーナの蓄熱体に通過させることによってその燃焼排ガス中の排熱を蓄熱体に蓄熱し、他方のバーナが燃焼する際に、この蓄熱体に燃焼空気を通過させることによって燃焼空気を予熱するようになされている。この蓄熱式バーナ3は、加熱炉1の予熱帯及び加熱帯の側部において、搬送するスラブを挟んだ上部側と下部側とにそれぞれ設置されている。さらに、この蓄熱式バーナ3は、加熱炉1の均熱帯の側部において、搬送するスラブを挟んだ下部側に設置されている。なお、蓄熱式バーナ3は、上述した配置に限らず、予熱帯、加熱帯、均熱帯の何れかの側部に任意に設置することができる。
【0014】
加熱炉1は、その排気設備として、炉内の燃焼排ガスを蓄熱式バーナ3を介して排出する第1の排気系4と、炉内の燃焼排ガスを炉尻側から排出する第2の排気系5と、第1の排気系4及び第2の排気系5から排出される燃焼排ガスを炉外に排出する1本の煙突6と、加熱炉1内の燃焼排ガスを第1の排気系4に誘引する排ガス誘引手段である誘引ファン(IDF)7と、第2の排気系5に接続された炉圧制御手段である炉圧ダンパ8と、第2の排気系5から排出される燃焼排ガスの排熱を回収して燃焼空気を予熱する熱交換手段であるレキュぺレータ9とを備えている。
【0015】
第1の排気系4は、加熱炉1に設置された各蓄熱式バーナ3から排出される燃焼排ガスを煙突6へと導くものである。第2の排気系5は、加熱炉1の炉尻から排出する燃焼排ガスを煙突6へと導くものである。煙突6は、これら第1の排気系4及び第2の排気系5から排出される燃焼排ガスを合流して外部に放出する。
【0016】
また、第1の排気系4には、流量測定器(図示せず。)用のオリフィス11と、排ガス量を調整するための流量調節弁12とが設けられ、これらオリフィス11と流量調節弁12とを介して誘引ファン7により蓄熱式バーナ3からの燃焼排ガスを煙突6へと送り込む。
【0017】
炉圧ダンバ8は、煙突6とレキュぺレータ9との間に配置されて、煙突6への合流部の圧力が煙突6のドラフトとバランスするように加熱炉1の炉圧を制御するものである。
【0018】
レキュペレータ9は、第2の排気系5から排出される燃焼排ガスの排熱を回収し、燃焼空気ファン10により導入された燃焼空気を予熱する。そして、この予熱された燃焼空気は連続燃焼バーナ2に供給される。
【0019】
また、上述したように1本の煙突6から第1の排気系4及び第2の排気系5から排出される燃焼排ガスを加熱炉1の炉外に排出しており、この煙突6の高さは、NOx、SOx、COの着地濃度を満足する最低の高さである45m以上を確保する必要がある。また、航空法による航空障害灯の設置等の義務付けがない60m未満とすることによってその建設費を大幅に低く抑えることが可能である。
【0020】
一方、連続燃焼バーナ2に対する蓄熱式バーナ3の設置比率が高くなるに従って、蓄熱式バーナ3からの燃焼排ガス量が多くなって容量の大きい誘引ファン7が必要となり、イニシャルコスト(設備費)、ランニングコスト(消費電力費用)が高くなる。
【0021】
この両者のことから、煙突6の必要高さ(45m以上、60m未満)で発生するドラフト力を利用できる範囲内での連続燃焼バーナ2の燃焼量比率とし、それ以外を蓄熱式バーナ3とすることにより、該第1の排気系4に設置されている吸引ブロワ7の容量を小さくすることが可能となり、吸引ブロワ7のイニシャルコスト、ランニングコストを低減することができる。
【0022】
このため、本発明は、加熱炉1内の全バーナに対する連続燃焼バーナ2の燃焼量の割合を10%以上、40%以下とするものである。つまり、連続燃焼バーナ2の燃焼量の割合が10%未満であると、煙突6のドラフトに余裕が出来ると共に吸引ブロワ7の容量を大幅に低減できない。一方、50%を超えると吸引ブロワ7の容量は大幅に低減するが、煙突6のドラフトが不足して、煙突6の高さを60m以上にすることが必要となる。
【0023】
また、本発明を適用した加熱炉1の排気設備では、第2の排気系5に設けたレキュペレータ9は、低圧損型とし、その圧損が10mmHO以上20mmHO以下(mmHO=9.8Pa)のものを用いることが、煙突6の高さを45mに近づけることが可能となり好ましい。
【0024】
なお本発明は、上述した熱間圧延設備の連続式加熱炉1に本発明の排気設備を適用した場合に限らず、連続燃焼バーナと蓄熱式バーナとを備えた加熱炉において本発明の排気設備を幅広く適用することが可能であり、これにより加熱炉の排気設備の低コスト化を実現することが可能である。
【実施例】
【0025】
以下、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなくその要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0026】
表1に本発明における実施例と比較例を示す。これは図1に示す加熱炉1を用いて、該加熱炉1の均熱帯の上部の炉幅方向に設置した連続燃焼バーナ2と、その他の部位に設置した蓄熱式バーナ3に供給する燃料量を変更した際における、煙突6の高さと吸引ファン7の吸引力を求めた例である。
【0027】
【表1】

【0028】
実施例1及び実施例2では、連続燃焼バーナ2の燃焼割合が本発明の範囲内にすることにより、煙突6の高さを本発明の範囲内にすることができ、しかも、誘引ファン7の必要吸引力を1000mmHOにすることができた。しかし、実施例2では、レキュペレータ9の圧損が請求項3の範囲を外れたため、実施例1に比較して、煙突6の高さが若干高くなった。
【0029】
一方、比較例1では、連続燃焼バーナ2の燃焼割合が本発明の上限を外れたので、煙突6の高さが本発明の範囲より高くなった。また、比較例2では、連続燃焼バーナ2の燃焼割合が本発明の下限を外れたので、非常に大きな誘引ファン7の吸引力が必要となった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明を適用した加熱炉の排気設備を示す模式図である。
【符号の説明】
【0031】
1:加熱炉
2:連続燃焼バーナ
3:蓄熱式バーナ
4:第1の排気系
5:第2の排気系
6:煙突
7:誘引ファン
8:炉圧ダンパ
9:レキュペレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内を連続的に燃焼する連続燃焼バーナと、炉内で燃焼と排気とを交互に繰り返しながら、排気時に燃焼排ガスの排熱を蓄熱体によって蓄熱回収し、燃焼時に蓄熱体に蓄熱された熱によって燃焼空気を予熱する蓄熱式バーナとを備えた加熱炉の排気設備であって、
前記加熱炉内の燃焼排ガスを前記蓄熱式バーナの蓄熱体、吸引ファンを順次介して排出する第1の排気系と、
前記加熱炉内の燃焼排ガスを前記加熱炉の炉尻側からドラフトによって排出する第2の排気系と、
前記第1の排気系及び前記第2の排気系から排出される燃焼排ガスを大気中に放散する1本の煙突と、
前記第2の排気系から排出される燃焼排ガスの排熱を回収して前記連続燃焼バーナに供給する燃焼空気を予熱する熱交換手段とを備え、
前記加熱炉に設置された全バーナの燃焼量に対する前記連続燃焼バーナの燃焼量の割合が10容量%以上、50容量%以下であり、前記煙突の高さが45m以上60m未満であることを特徴とする加熱炉の排気設備。
【請求項2】
前記連続燃焼バーナとして、ルーフバーナ、サイドバーナ、軸流バーナの何れか1種又は2種以上を備えることを特徴とする請求項1に記載の加熱炉の排気設備。
【請求項3】
前記熱交換手段として、レキュペレータを用い、このレキュペレータの圧損が10mmHO以上20mmHO以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱炉の排気設備。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−60157(P2010−60157A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223724(P2008−223724)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】