説明

加熱装置、及び加熱方法

【課題】 最適でかつ無駄のない温度上昇を図ることができるとともに、連続生産に適した加熱装置を提供する。
【解決手段】 噴出し口3aを有し、該噴出し口3aから温風を噴出す温風発生部3と、温風発生部3からの温風を被加熱部品4の所定箇所に噴射するノズル部5と、被加熱部品4とノズル部5の先端との距離を変化させる駆動部6と、駆動部6を制御し、被加熱部品4とノズル部5の先端との距離を変化させることにより所定の温度勾配で加熱させる制御部7とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置に関し、特に半導体の基板への半田接合、又は既に基板上に実装されている部品の取り外しをする際に用いられる加熱装置及び加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線基板に精密部品である電子部品などを半田付けする場合、高温の熱風を半田に吹き付けることで、半田を溶かし半田付けを行う方法が用いられており、そのための加熱装置も種々提案されている。例えば、様々な温度の熱風を発生するヒーターとその熱風が噴射されるノズルとを有する加熱装置により、半田を加熱する装置がある。それらは、例えば、基板を一定の速度で装置の入り口から出口まで連続搬送しながら加熱炉体部を通過させる方法が用いられている。このような加熱装置においては、装置は大掛かりな加熱炉体部を設ける必要があり、装置全体が大型なものとなっていた。そこで、様々な温度の熱風を発生するヒーターとその熱風が噴射されるノズルとを有する加熱装置により、半田を熱する装置もある。
【0003】
ところで、熱風を半田に吹き付ける場合、半導体などの電子部品によっては急激な温度上昇に弱い材料により形成されているものがある。このような半導体は、パッケージの吸湿による水分の急激な気化が原因でパッケージが膨張し、剥離する。あるいは、パッケージ内部の素子が急激に膨張することが原因で内部応力が増加しパッケージの剥離や金線の断線なども起こりうる。そこで、これらの半導体を扱うときは、急激に加熱することによる破損を避けるために低温で加熱することになり、そうした場合は半田が十分熱せられず、溶融点まで温度が達しない場合が多い。
【0004】
ひとつの手段として、低温から徐々に高温にヒーターの温度を変化させることで半導体に熱衝撃を与えずに半田溶融点まで温度を上昇させることは可能だが、連続生産する場合においては、一つの半田付けが終了してから、次の半田付けに移る際、熱風の温度を急激に下げることができないため、安定した加熱を行うためにはヒーター及びノズルなどの加熱装置の温度が下がるまで生産を中断する必要があり、その場合、加熱よりも冷却時間の問題が大きくなっていた。
【0005】
また、同じ熱量を物体に与え続けたとき、平衡温度に近くなるに従い、時間当たりの温度上昇は小さくなるため、同じ熱量を与える方式では、直線的に目標温度まで上げることや、そこから急激に温度を下げるということはできないため、連続生産するに際し時間のロスが生じていた。
【0006】
【特許文献1】特開平5−296658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述のような問題点に鑑みて提案されたものであり、半導体等の被加熱部品に対して、最適でかつ無駄のない温度上昇を図ることができるとともに、連続生産に適した加熱装置、及び加熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明に係る加熱装置は、噴出し口を有し、該噴出し口から温風を噴出す温風発生部と、上記温風発生部からの温風を被加熱部品の所定箇所に噴射するノズル部と、上記被加熱部品と上記ノズル部の先端との距離を変化させる駆動部と、上記駆動部を制御し、上記被加熱部品と上記ノズル部の先端との距離を変化させることにより所定の温度勾配で加熱させる制御部とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る加熱方法は、温風が噴射されるノズル部から被加熱部品までの距離を変化させることにより、上記被加熱部品が所定の温度勾配で加熱されるように、上記ノズル部を移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、温風発生部から一定の温度、流量の温風が噴射されており、被加熱部品とノズル部の先端との距離と移動速度とを変化させることのみで、被加熱部品の温度を急激に上昇させたり、ゆっくりと上昇させることもできる。つまり、本発明は、被加熱部品とノズル部の先端との距離を変化させることのみで、被加熱部品を所定の温度勾配で加熱させることができ、最短の温度上昇を実現することができる。また、本発明は、異なる温度勾配で加熱するように変更する場合にも、温風発生部からの温度を変化させ安定させるための時間が必要なく、ノズル部の被加熱部品からの距離を変化させることで時間的なロスなく対応することが可能となる。さらに、本発明は、炉を設ける必要がないために小型化が図れる上に、所定の位置に必要な熱量の温風を噴射させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を適用した加熱装置の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1及び図2に示すように、本発明に係る加熱装置1は、円筒状の本体部2と、本体部2の内部に取り付けられた温風を噴出す温風発生部3と、本体部2の一方の端部に設けられ、温風発生部3からの温風を被加熱部品4の所定箇所に噴射するノズル5と、本体部2を変位させる駆動部6と、駆動部6を制御し、被加熱部品4とノズル5の先端との距離を変化させることにより所定の温度勾配で加熱させる制御部7とから構成される。加熱装置1は、温風発生部3から噴出す温風を、ノズル5を介して被加熱部品4の所定箇所に噴射し、所定の温度に加熱する。また、加熱装置1は、制御部7により駆動部6を制御させ、被加熱部品4とノズル5との距離を変化させることにより、被加熱部品4を所定の温度勾配で加熱させる。
【0013】
被加熱部品4は、例えば半導体であり、加熱装置1からの温風により、所定時間で所定の温度に上昇される。なお、被加熱部品4は、半導体に限らず、加熱装置1により加熱されるものであれば如何なるものであってもよい。
【0014】
加熱装置1の本体部2は、円筒形状で、耐熱性を有する材料から形成されている。本体部2の内部には、一端から挿嵌された温風発生部3が取付けられ、他端にノズル5が取付けられている。また、本体部2は、ノズル5が設けられる側の端部近傍の側面部において、後述する温度測定部9が挿通される貫通孔2aが設けられている。
【0015】
温風発生部3は、図示しないヒーターにより所定の温度に熱せられた空気を送風機により所定の風速で噴出す噴出し口3aを有し、その噴出し口3aが本体部2内のノズル5が設けられた側の端部近傍に位置するように配置されている。温風発生部3の噴出し口3aから噴出される温風は、本体部2内で噴出し口3aと本体部2の端部に取り付けられたノズル5との間の空間部2bに噴出し、ノズル5の温風噴射孔5aを通り外部に噴射される。
【0016】
ノズル5は、本体部2の噴出し口3aが設けられる側の端部を覆うように設けられ、中心部に温風噴射孔5aが設けられている。ノズル5の温風噴射孔5aの径は、温風発生部3からの温風が所定の流速で噴射されるように所定の大きさに形成されている。なお、ノズル5の温風噴射孔5aの形状は、上述に限らず、被加熱部品4の形状、温風を噴き付けたいと所望する位置、面積等により様々なものを選択することができる。
【0017】
駆動部6は、本体部2のノズル5が設けられた側とは反対側の端部近傍の側面に取り付けられたフレーム8を介して本体部2と連結されている。駆動部6は、図示しない駆動軸を有し、この駆動軸に沿って本体部2を移動させ、ノズル5の先端部と被加熱部品4との間を所定速度で移動させる。なお、駆動部6は、上述に限らず、ノズル5の先端部が所定速度で、所定位置に移動させることができるものであれば如何なる駆動源からなるものであってもよい。
【0018】
温度測定部9は、本体部2内の温風発生部3の噴出し口3aとノズル5との間の空間部2bで、噴出し口3aの近傍に設けられる熱電対であり、噴出し口3aから噴出す温風の温度を測定する。温度測定部9は、温度を測定する熱電対が噴出し口3aに臨まされるように、本体部2の側面に設けられた貫通孔2aに挿通され固定されている。温度測定部9により測定された信号は、制御部7に出力される。なお、温度測定部9は、上述のように熱電対を用いるものに限らず、温度を測定できるものであれば如何なるものであってもよい。
【0019】
制御部7は、温風発生部3、駆動部6、温度測定部9などと接続されており、加熱装置1の動作全体を制御する。制御部7は、温度測定部9からの信号が入力され、その入力された温風発生部3から噴出される温風の温度を一定のものとするために、温風発生部3の出力を制御する。また、制御部7は、被加熱部品4が所定の温度勾配に沿って温度上昇するように、駆動部6を制御し、被加熱部品4とノズル5との距離を変化させる。
【0020】
以上のように構成された加熱装置1は、温風発生部3から一定の温度、流速の温風が噴射されており、制御部7により駆動部6を制御し、被加熱部品4とノズル5の先端との距離と移動速度とを変化させることのみで、被加熱部品4の温度を急激に上昇させたり、ゆっくりと上昇させることもできる。つまり、加熱装置1は、被加熱部品4とノズル5の先端との距離を変化させることのみで、被加熱部品4を所定の温度勾配で加熱させることができ、最短の温度上昇を実現することができる。このことは、ノズル5と被加熱部品4との間には、空気の層があり、その空気の層の厚みの違いにより伝わる熱量が変化することを利用している。すなわち、ノズル5と被加熱部品4との距離が長ければ、温風発生部3から被加熱部品4に伝わる熱量が小さく、逆にその距離が短ければ、伝わる熱量が大きい。また、加熱装置1は、異なる温度勾配で加熱するように変更する場合にも、温風発生部3からの温度を変化させ安定させるための時間が必要なく、ノズル5の被加熱部品4からの距離を変化させることで時間的なロスなく対応することが可能となる。さらに、装置の大型化の最大の要因となっている炉を設ける必要がないために小型化が図れる上に、ピンポイントの位置に必要な熱量の温風を噴射させることができる。
【0021】
次に、一例を挙げて、本発明についてさらに詳細に説明する。図3は、加熱工程におけるノズル5と被加熱部品4との距離と、そのときの被加熱部品4の各部の温度を測定した図である。
【0022】
まず初めに、加熱装置1の温風発生部3を制御し、噴出し口3aから噴出される温風の温度を318℃、流量を30リットル/分とする。また、被加熱部品4として、1秒間に3℃より小さい温度上昇に抑える必要がある半導体を用いる。これは、この半導体が3℃/sec以上の温度上昇の場合、吸湿したパッケージ内の水分が短時間で蒸発し、急激に膨張することにより、パッケージが剥離し不良となってしまうためである。また、本実施例においては、パッケージ表面、パッケージ裏面、リードの3箇所についての温度を測定した。
【0023】
図3に示すように、最初にノズル5の先端部と被加熱部品4との距離を90mmとする。そして、制御部7は、この位置で8秒間同じ位置で、温風を噴射させる(ステップS1)。次に、制御部7は、駆動部6を制御し、3mm/secで15秒間ノズル5を降下させる(ステップS2)。次に、制御部7は、2mm/secで7秒間ノズル5を降下させ(ステップS3)、1mm/secで16秒間ノズル5を降下させる(ステップS4)。次に、制御部7は、その位置で8秒間ノズル5を保持させた(ステップS5)後、1mm/secで5秒間ノズル5を降下させ(ステップS6)、この位置で8秒間ノズル5を保持させる(ステップS7)。次に、制御部7は、1mm/secで1秒間ノズル5を降下させ(ステップS8)、この位置で3秒間ノズル5を保持させ(ステップS9)、1mm/secで1秒間ノズル5を降下させ(ステップS10)、この位置で6秒間ノズル5を保持させる(ステップS11)。次に、制御部7は、1mm/secで1秒間ノズル5を降下させ(ステップS12)、この位置で3秒間ノズル5を保持させ(ステップS13)、1mm/secで1秒間ノズル5を降下させ(ステップS14)、この位置で13秒間ノズル5を降下させる(ステップS15)。この時点において、被加熱部品4は、融点が183℃である共晶半田が十分溶解する状態となっている。最後に、制御部7は、駆動部6を制御し、5mm/secでノズル5と被加熱部品4との距離が初期値である90mmの位置まで上昇させる(ステップS16)。
【0024】
このようにすると、図3に示すように、加熱装置1は、被加熱部品4の各部の温度を略直線的な温度勾配で所望とする温度まで上昇させることができ、最短時間で被加熱部品4を損傷させることなく加熱することができる。また、加熱装置1は、温風発生部3から噴出す温風を一定流量、一定温度としているので、温風発生部3を冷却させる時間を設ける必要がなく、時間のロスなく連続して加熱作業を行うことができる。
【0025】
本説明において、被加熱部品として1秒間に3℃より小さい温度上昇の半導体についての加熱工程の例を挙げたが、本発明は、被加熱部品の材質、形状等の諸条件により所望とする温度勾配となるように予め温度特性を測定して、駆動部6の移動速度、位置を制御部7に記憶させるようにする。
【0026】
なお、本説明においては、1つの被加熱部品4につき、1つの加熱装置1を用いることについて述べたが、これに限らず、上下1台ずつ上述の加熱装置1を配置し、上下より被加熱部品4を加熱するようにしてもよい。
【0027】
また、本発明に係る加熱装置は、基板上の半導体の取り外しの際にも用いることができ、例えば、半導体不良による動作不良基板に対し半導体付け替えの修理を行う場合、対象の半導体を外すときは不良であるため、より多くの熱量を与えて最短の時間で加熱して取り外し、ただちに上述のような最適な温度上昇による取り付けを同一の装置で行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る加熱装置の外観模式図である。
【図2】本発明に係る加熱装置の一部破断斜視図である。
【図3】本発明の一実施例における被加熱部品の温度勾配図である。
【符号の説明】
【0029】
1 加熱装置、2 本体部、2a 貫通孔、3 温風発生部、3a 噴出し口、4 被加熱部品、5 ノズル、5a 温風噴射孔、6 駆動部、7 制御部、8 フレーム、9 温度測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴出し口を有し、該噴出し口から温風を噴出す温風発生部と、
上記温風発生部からの温風を被加熱部品の所定箇所に噴射するノズル部と、
上記被加熱部品と上記ノズル部の先端との距離を変化させる駆動部と、
上記駆動部を制御し、上記被加熱部品と上記ノズル部の先端との距離を変化させることにより所定の温度勾配で加熱させる制御部とを備える
ことを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
上記噴出し口の近傍で、上記温風発生部からの温風の温度を測定する温度測定部を備え、
上記制御部は、上記温度測定部により測定される温度に基づいて、上記温風発生部を制御することを特徴とする請求項1記載の加熱装置。
【請求項3】
温風が噴射されるノズル部から被加熱部品までの距離を変化させることにより、上記被加熱部品が所定の温度勾配で加熱されるように、上記ノズル部を移動させることを特徴とする被加熱部品の加熱方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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