説明

加熱装置の製造方法

【課題】 シーズヒータを加熱装置の溝に組み込むときにカシメ型が不要であり、かつ、シーズヒータと溝との間に隙間が発生する場合が少なくなるシーズヒータを用いた加熱装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】 シーズヒータを発熱源とする加熱装置10の製造方法において、金属板等の熱伝導性部材20の表面21に蟻溝30を形成し、蟻溝30内に、加圧により変形可能なシーズヒータ40を配置し、シーズヒータ40を加圧して、蟻溝30内にシーズヒータ40を埋め込んだこと。さらに、シーズヒータ40を加圧する際に、前蟻溝30内のシーズヒータ40の全てを同時に加圧すること。さらに、蟻溝30内において、シーズヒータ40が熱伝導性部材20と一体化するようにすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーズヒータを発熱源とする加熱装置の製造方法に関し、特にシーズヒータを加熱装置に組み込む工程を改良する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シーズヒータを発熱源とする加熱装置の製造方法として、図6に示すものがある(例えば特許文献1参照)。まず、図6(a)に示すように、加熱体本体61に溝62を形成する。そして、シーズヒータ63を用意する。このシーズヒータ63は金属パイプ64の中に絶縁体65を介して発熱線66を配設したものである。つぎに、図6(b)に示すように、シーズヒータ63を溝62中に配置して図示しない加圧手段により加圧する。さらに、図6(c)に示すように、図示しないカシメ型によりカシメ部67を形成する。このようにして、シーズヒータ63を溝62に固定して、加熱装置60を製造している。
【特許文献1】特開平6−189852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述の従来例では、カシメ金型が必要になるので、カシメ作業に時間がかかる。また、シーズヒータ63と加熱体本体61との温度差による膨張収縮の繰り返しにより、溝62とシーズヒータ63との間に隙間ができる場合があるという問題があった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、シーズヒータを加熱装置の溝に組み込むときのカシメ型が不要であり、かつ、シーズヒータと溝との間に隙間が発生する場合が少なくなるシーズヒータを発熱源とする加熱装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、シーズヒータを発熱源とする加熱装置の製造方法において、金属板等の熱伝導性部材の表面に蟻溝を形成し、この蟻溝内に、加圧により変形可能なシーズヒータを配置し、前記シーズヒータを加圧して、前記蟻溝内に前記シーズヒータを埋め込んだことを特徴とする加熱装置の製造方法である。
なお、ここで、「シーズヒータ」は、シーズ型ヒータを含み、金属パイプ内に金属発熱線を配置し金属パイプと金属発熱線の間隙に電気絶縁物を充填しスエージング又はプレス等で圧縮減径した構造のヒータである。また、「蟻溝」は溝の内部の幅が溝の開口部(入口部)の幅より広くなっている形状の溝である。
これにより、前記蟻溝内に埋め込まれたシーズヒータの外形は加圧により前記蟻溝の側壁および低面にそった形状になるので、シーズヒータの外形は蟻溝の底面側にて蟻溝の開口部側より広がった形状になる。このため、シーズヒータが蟻溝から外れて脱落することを防ぐことができる。
【0005】
さらに、請求項2記載の発明は、請求項1に記載した加熱装置の製造方法であって、前記シーズヒータを加圧する際に、前記蟻溝内のシーズヒータの全てを同時に加圧することを特徴とする加熱装置の製造方法である。
これにより、シーズヒータ全体を均等に加圧して蟻溝内に埋め込むことができるので、シーズヒータを均等に蟻溝内に埋め込むことができる。
【0006】
さらに、請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載した加熱装置の製造方法であって、前記蟻溝内において、前記シーズヒータが前記熱伝導性部材と一体化するようにすることを特徴とする加熱装置の製造方法である。
これにより、前記シーズヒータが前記熱伝導性部材と一体化すると、シーズヒータと熱伝導性部材との間の熱抵抗が小さくなる。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、シーズヒータを熱伝導性部材の蟻溝内に確実に埋め込むことができる。
さらに、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果とともに、シーズヒータと熱伝導性部材との結合状態を良くすることができる。
さらに、請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果とともに、
加熱装置においてシーズヒータから熱伝導性部材に熱が伝わりやすくなる。このため、熱伝導性部材に接触する被加熱物を加熱しやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明における実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本願発明に係る加熱装置の製造方法に使用するシーズヒータの一例の正面を示し、図2は本願発明に係る加熱装置の製造方法に使用する熱伝導性部材の一例の正面を示し、図3は本願発明に係る加熱装置の製造方法により製造される加熱装置の一例の正面を示す。さらに、図4は図3の加熱装置の製造方法を示す説明図であり、(a)から(d)まで順に各工程を示している。
【0009】
図1に示すように、シーズヒータ40は、加圧により変形可能なものであり、細長い真っ直ぐな棒状の外形のものを曲げ加工したものである。シーズヒータ40には第1端子44および第2端子45が設けられている。第1端子44と第2端子45との間に電圧を加えると、シーズヒータ40が発熱する。図4(c)に示すように、シーズヒータ40は円筒状の金属パイプ41内に加圧により変形可能な絶縁体42(例えば粉状のマグネシア等の絶縁体粉を金属パイプ41内に充填したもの)を介して螺旋状の金属発熱線43を密封して埋め込んだものであり、金属発熱線43は図1の第1端子44と第2端子45との間に接続されている。
【0010】
図4(a)に示す加熱体本体等になる金属板等の熱伝導性部材20の表面21に、図4(b)に示すように蟻溝30を形成する(図2参照)。蟻溝30では、その開口部31の幅Waが底面32の幅Wbよりも狭く形成され、一方の側面33と他方の側面34との間隔が開口部31から底面32に近付くほど広くなっている。これにより、蟻溝30の内部の幅が開口部31の幅Waよりも広くなっている。
【0011】
つぎに、図4(c)に示すように、蟻溝30内に、シーズヒータ40を配置し、図示しないシリンダ等で駆動される加圧手段46の加圧面47でシーズヒータ40を加圧して、図4(d)に示すように、蟻溝30内にシーズヒータ40を埋め込んで、図3に示すように蟻溝30の長手方向に沿って細長いシーズヒータ40を埋め込んだ状態の加熱装置10を製造する。
なお、シーズヒータ40を加圧する際に、蟻溝30内のシーズヒータ40の全てを同時に加圧するようにしてもよい。
また、蟻溝30内において、シーズヒータ40が熱伝導性部材20と一体化するようにしてもよい。
【0012】
なお、蟻溝30が図2に示すように表面21の各部分にまんべんなく形成されるように湾曲しているので、この蟻溝30の湾曲した形状に対応するように図1に示すシーズヒータ40が湾曲している。このため、熱伝導性部材20の表面21近傍の各部分をシーズヒータ40によりまんべんなく加熱することができる。
【0013】
以上のような加熱装置10の製造方法は以下の作用効果を奏する。
蟻溝30内に埋め込まれたシーズヒータ40の外形は加圧により蟻溝30の側壁33、34および底面32にそった形状になるので、シーズヒータ40の外形は蟻溝30の底面32側にて蟻溝30の開口部31側より広がった形状になる。このため、シーズヒータ40が蟻溝30から外れて脱落することを防ぐことができる。
【0014】
さらに、シーズヒータ40全体を加圧手段46の加圧面47により均等に加圧して蟻溝30内に埋め込むと、シーズヒータ40を均等に蟻溝30内に埋め込むことができる。
さらに、シーズヒータ40が熱伝導性部材20と一体化すると、シーズヒータ40と蟻溝30の底面32および側面33、34との間に隙間がほとんどなくなるので、シーズヒータ40と熱伝導性部材20との間の熱抵抗が小さくなる。
【0015】
なお、上記実施の形態において、加熱装置10の熱伝導性部材20は平板状であるが、これに限定されず、加熱装置を種々の形状にすることができる。例えば、図5(a)に示す円筒状の加熱装置50においては、図5(b)に示すように、加熱装置50の円筒状の熱伝導部材51の表面52に螺旋状に蟻溝53を形成し、この蟻溝53に螺旋状のシーズヒータ54を埋め込んでいる。このようにすると、シーズヒータ54の発熱により熱伝導性部材51の内面55内を流れる液体、気体等の流体を加熱することができる。
また、シーズヒータ40を加圧して蟻溝30内に埋め込む場合に、シーズヒータ40全体を同時に加圧してもよいし、シーズヒータ40をその一部分ごとに加圧してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本願発明に係る加熱装置の製造方法に使用するシーズヒータの一例の正面図である。
【図2】本願発明に係る加熱装置の製造方法に使用する熱伝導性部材の一例の正面図である。
【図3】本願発明に係る加熱装置の製造方法により製造される加熱装置の一例の正面図である。
【図4】図3の加熱装置の製造方法を示す説明図であり、(a)から(d)まで順に各工程を示している。
【図5】本願発明に係る加熱装置の製造方法により製造される加熱装置の他の例を示し、(a)は正面図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図6】従来の加熱装置の製造方法を示す説明図であり、(a)から(c)まで順に各工程を示している。
【符号の説明】
【0017】
10 加熱装置
20 熱伝導性部材
21 表面
30 蟻溝
40 シーズヒータ
46 加圧手段
47 加圧面
50 加熱装置
51 熱伝導性部材
52 表面
53 蟻溝
54 シーズヒータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーズヒータを発熱源とする加熱装置の製造方法において、
金属板等の熱伝導性部材の表面に蟻溝を形成し、この蟻溝内に、加圧により変形可能なシーズヒータを配置し、
前記シーズヒータを加圧して、前記蟻溝内に前記シーズヒータを埋め込んだことを特徴とする加熱装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載した加熱装置の製造方法であって、
前記シーズヒータを加圧する際に、前記蟻溝内のシーズヒータの全てを同時に加圧することを特徴とする加熱装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載した加熱装置の製造方法であって、
前記蟻溝内において、前記シーズヒータが前記熱伝導性部材と一体化するようにすることを特徴とする加熱装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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