加熱装置及び加熱方法
【課題】外周面に塗料が塗布された円筒状または無端ベルト状の被加熱物を加熱・硬化する際に、塗膜の垂れやピンホール、スジむらなどの外観不良の発生が抑制され、かつ、省エネルギー化することが可能な加熱装置、及び加熱方法を提供すること。
【解決手段】筐体内30に、円筒状または無端ベルト状の被加熱物5を内側から支持する支持部材1と、被加熱物5に熱を加える加熱手段12と、が配された加熱装置において、支持部材1が、略水平方向で平行に林立した複数の棒状体8で構成されるとともに、当該複数の棒状体8が、長手方向から見て1つの円周上に位置するように配されており、複数の棒状体8の全てが被加熱物5の内側に位置するように被加熱物5を吊り掛けた際に、当該被加熱物5の最下部が棒状体8と常に離間しており、複数の棒状体8が前記円周上を移動するように支持部材1を回転させる回転手段11を備えたことを特徴とする加熱装置、及びそれを用いた加熱方法である。
【解決手段】筐体内30に、円筒状または無端ベルト状の被加熱物5を内側から支持する支持部材1と、被加熱物5に熱を加える加熱手段12と、が配された加熱装置において、支持部材1が、略水平方向で平行に林立した複数の棒状体8で構成されるとともに、当該複数の棒状体8が、長手方向から見て1つの円周上に位置するように配されており、複数の棒状体8の全てが被加熱物5の内側に位置するように被加熱物5を吊り掛けた際に、当該被加熱物5の最下部が棒状体8と常に離間しており、複数の棒状体8が前記円周上を移動するように支持部材1を回転させる回転手段11を備えたことを特徴とする加熱装置、及びそれを用いた加熱方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状もしくは無端ベルト状の被加熱物の外周面に塗料を塗布した後、加熱硬化して塗膜を形成する際に用いる加熱装置及び加熱方法に関し、特に、画像形成装置の定着装置における定着ローラや定着ベルトの表面に各種層を形成する際に、塗膜を硬化するのに適した加熱装置及び加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式による画像形成装置は、カラー化、省エネルギー化が進んでおり、それに伴い、用紙を挟み込んで圧しつつ熱によりトナーを溶融して用紙に定着させる定着プロセスに用いる定着ユニットは、ローラ方式からベルト方式へと大きく構造が変化している。
【0003】
またごく最近では、いわゆるプロダクションプリンティング事業として従来は印刷機で対応していた高速プリンティング領域まで、電子写真の原理を用いた画像形成装置の適応範囲が広がっており、ベルト方式を採用する定着部品としての無端ベルトも、従来の50〜75mmφの内径(円相当の内径を指す。以下、無端ベルトにおいて同様。)の物から145mmφ以上の内径の物まで径が約2倍前後にまで拡大しており、多種多様な内径のバリエーションが増えている。
【0004】
この定着プロセスで用いられる無端ベルトには、耐熱性ゴム(シリコーンゴム等)による弾性層(100〜300μm程度)を形成した上にプライマ(接着剤)を塗布して、離型層(フッ素樹脂等)を20〜30μm程度形成した構造の定着ベルトを用いるのが一般的となっており、各社独自の工法を開発し商品化を行っている。
【0005】
従来、前記弾性層を形成するための工法としては、液状のシリコーンゴムをスプレーコーティングや浸漬塗工(ディッピング工法)で塗装する方法が一般的に用いられてきた。シリコーンゴムによる当該弾性層は、上記の如き方式で塗装された後に加熱装置内で約100〜150℃程度の温度で加熱され加硫することで液状から固体へ変化し膜として形成されるのが一般的である。通常上記の加熱工程を1次加硫工程と呼び、従来は熱風炉を主体とした加熱方法が用いられてきた。
【0006】
いわゆる金庫炉タイプの熱風式オーブン(加熱装置)を用いて円筒形状の被加熱物を加熱する場合、図11に示すように、被加熱物35の中心軸を垂直方向に向けて保持具31で保持し、これを何本も炉内に投入し(図11では1本のみ表す。)て加熱(焼成)するバッチ方式による加熱が一般的に行われている。このようなバッチ方式による加熱で、無端ベルト状の上記定着部品の外周面に塗装した液状のシリコーンゴムを加硫すると、塗膜の上部や端部に垂れが発生し膜厚の乱れが発生しやすい。
【0007】
硬化までの間に液状のシリコーンゴムが垂れないように、熱風の設定温度を高く設定し急激に加熱することも考えられるが、高温による加熱では、液状のシリコーンゴムから空気が揮発し気泡となって破裂して、弾性層の表面にピンホール状の欠陥が発生しやすくなるため好ましくない。
【0008】
画像形成装置の定着プロセスで用いられる定着部品において、このような欠陥は、ピンホールの径が0.1mmφ程度でも不良となり、後から修復することができない(ピンホールを埋めることが困難である)ため、製造時の良品率を低下させる一因となる。
【0009】
上記の課題(塗膜の垂れや外観欠陥)を解決するためには、加熱する際に被加熱物を保持具で円筒形状の中心軸を水平に保持して回転させながら熱をかける方式が考えられる。この場合は上記で紹介したような金庫炉タイプの熱風炉を用いてバッチで被加熱物を処理することに代えて、熱風炉と被加熱物の搬送装置とを組み合わせた連続加熱ができる連続熱風炉を用いることもできる。熱風炉においては、バッチ処理を行うと、その都度熱が外部に漏れ、炉内を所定の温度に戻すには時間がかかるため、被加熱物を1度に多数本まとめて処理しないと、時間効率もエネルギー効率も低下してしまう。そのため、円筒形状の中心軸を水平に保持して回転させながら熱をかける上記方式においては、これら効率性を考慮すると、連続熱風炉とすることが望ましい。
【0010】
しかし、連続炉であるため、加熱時間にもよるが、炉長が3〜6m程度と長くなりがちであり、被加熱物の入口と出口とが離れた位置になってしまい、量産ラインに設置する際の制約になり、また炉内を絶えず熱風で温めておく必要がある。例えば、加熱処理前には1時間程度予熱が必要であり、また、昼休みなど作業者の休憩時間も加熱炉の熱風は温度を維持することが必要で、消費電力が大きくなる欠点がある。
【0011】
これらの欠点を回避するためには、熱風炉による加熱方式に代えて、特許文献1に示されるように赤外線による加熱を使うことが考えられる。赤外線による加熱の場合、加熱する際に加熱源(ヒータ)に電気を供給すればよく、上記のように消費エネルギーが大きくなることもない。
【0012】
具体的には例えば、図12に示すように、円筒形状の金属からなる保持具41にセットされた被加熱物45は、保持具41ごと加熱装置に投入され、外周に塗装された液状のシリコーンゴムが垂れないように数〜数十rpm(回転/分)の回転数で被加熱物45を絶えず回転させておく。そして、被加熱物45の近傍に配されたハロゲンヒータ42及びその背後に配された反射板43によって、被加熱物45表面の液状のシリコーンゴムが加熱・硬化される。
【0013】
このような方式では、液状のシリコーンゴムの垂れが発生し難いので、加熱温度を高温にする必要も無くピンホールのような外観欠陥を発生させないで塗膜を硬化することが可能となる。
【0014】
しかし、円筒形状や無端ベルト状の被加熱物を加熱する際には、図12に示されように、円筒形状の金属からなる中子を挿入して保持具41とするのが一般的であるが、この保持具41は通常被加熱物45の内面を微々たる隙間無く完全に密着して保持することは困難であり、実際にこのような中子を保持具42として加熱すると密着している所としていないところでわずかながら温度差が生じ、被加熱物45の表面に加熱ムラが、加熱硬化後にスジとなって現れる。
【0015】
当然、このようなスジを有する物を画像形成装置の定着部品として用いた場合、出力画像に表れるため好ましくない。また、熱容量の少ない無端ベルト状の被加熱物を加熱する際には特に、中子に熱容量の大きい保持具が挿入された状態になるため、省エネルギー化の観点からも好ましくない。
【0016】
このように、円筒状や無端ベルト状の被加熱物に液状のシリコーンゴムを塗布して硬化(加硫)するために加熱する工程や設備では、いずれの方式においても外観欠陥の発生や省エネルギー化等いずれかの観点から問題があり、その全てを満足することができていないのが現状である。
【0017】
以上の問題は、定着部品の外周面におけるシリコーンゴム等の弾性層の形成のみならず、広く、外周面に塗料が塗布された円筒状または無端ベルト状の被加熱物を加熱・硬化する際に用いる加熱装置全般に言えることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明は、外周面に塗料が塗布された円筒状または無端ベルト状の被加熱物を加熱・硬化する際に、塗膜の垂れやピンホール、スジむらなどの外観不良の発生を抑制することができ、かつ、省エネルギー化することができる加熱装置、及び加熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題は、以下に示す本発明によって達成される。
【0020】
請求項1に記載された発明は、筐体内に、円筒状または無端ベルト状の被加熱物を内側から支持する支持部材と、前記被加熱物に熱を加える加熱手段と、が配された加熱装置において、前記支持部材が、略水平方向で平行に林立した複数の棒状体で構成されるとともに、当該複数の棒状体が、長手方向から見て1つの円周上に位置するように配されており、前記複数の棒状体の全てが前記被加熱物の内側に位置するように当該被加熱物を吊り掛けた際に、当該被加熱物の最下部が前記棒状体と常に離間しており、かつ、前記複数の棒状体が前記円周上を移動するように前記支持部材を回転させる回転手段が備えられていることを特徴とする加熱装置である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載された発明は、前記複数の棒状体の全てが前記被加熱物の内側に位置するように前記被加熱物を吊り掛けて、前記回転手段により前記支持部材を回転させつつ、前記加熱手段によって前記被加熱物を加熱すると、前記支持部材(前記複数の棒状体)の下方に前記被加熱物が垂れ下がった状態になっており、前記支持部材の回転と共に前記被加熱物も回転して前記棒状体に吊り掛けられた部位がその回転と共に移動する。
【0022】
したがって、請求項1に記載された発明によれば、前記被加熱物を回転させながら加熱するため、塗膜の垂れやピンホールが生じることが抑制される。また、前記被加熱物が前記複数の棒状体に張り渡されずに最下部が垂れ下がった状態で支持されていることから、前記被加熱物とこれを支持する前記棒状体との接触点が前記支持部材の回転により移動するため、スジむらが生じることが抑制される。さらに、前記被加熱物を支持する前記支持部材が複数の棒状体からなり、該棒状体だけが前記被加熱物の内周面と線状に接触して支持しているため、例えば、円筒形状の中子を支持部材とする場合等と比べて、支持部材の熱容量が大幅に低減され、省エネルギー化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の例示的一態様である実施形態の加熱装置を示す正面断面図である。
【図2】図1に示す実施形態の加熱装置の右側断面図(B−B断面図)である。
【図3】図1中の支持部材の一部のみを抜き出した拡大正面図である。
【図4】図3におけるC−C断面図である。
【図5】図1及び図2中の支持部材及び被加熱物のみを抜き出した、図3におけるC−C断面に相当する拡大断面図である。
【図6】図5における被加熱物を無端ベルト体から円筒体に変更した場合の変形例を表す拡大断面図である。
【図7】図1中の支持部材及び加熱手段周辺部を抜き出した右側断面図(B−B断面図)である。
【図8】図1に示す実施形態の加熱装置によって得られる定着ベルトの例を示す模式拡大断面図である。
【図9】図1に示す実施形態の加熱装置を用いた検証試験において、加熱時における無端ベルト体の外周面に形成されたシリコーンゴム層表面の温度変化の推移を示すグラフである。
【図10】図1に示す実施形態の加熱装置を用いた検証試験において、温度が設定温度に到達した際の無端ベルト体外周面に形成されたシリコーンゴム層表面の温度を、無端ベルト体の回転軸方向と平行な方向に3点測定した結果を示す。
【図11】従来の金庫炉タイプの熱風式加熱装置を模式的に示す概略構成図である。
【図12】従来の金庫炉タイプで被加熱物を回転させつつ赤外線ヒータで加熱する加熱装置を模式的に示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の加熱装置及び無端ベルト部材について、図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の例示的一態様である実施形態の加熱装置を示す正面断面図であり、図2はその右側方向からの断面図である。詳しくは、図1は、図2におけるA−A断面図であり、図2は、図1におけるB−B断面図である。
【0026】
本実施形態の加熱装置には、図1及び図2に示すように、筐体30内に、被加熱物である無端ベルト体5を内側から支持する治具としての保持具(支持部材)1と、無端ベルト体5に熱を加えるハロゲンヒータ(加熱手段)12とが配されている。
【0027】
保持具1は、軸心7と、骨格材(棒状体)8と、保持板大9aと、保持板小9bとから構成される。骨格材8は、例えば6mmφ程度の径のステンレス製(SUS)パイプなどの金属を曲げ加工し、さらに耐熱性を有する樹脂粘着テープを巻いて製作した物である。
【0028】
図3に、図1中の保持具1における骨格材8及び保持板小9bのみを抜き出した拡大正面図を示す。また、図3におけるC−C断面図を図4に示す。
【0029】
保持具1は、図4に示されるように、12本の骨格材8が、軸心7と同軸上の円D上に位置するように等間隔で配されており、図3に示されるように、水平方向に林立して構成される。
【0030】
骨格材8の一方の端部は、曲げ加工によって軸心7側に曲げられて、それらの縁端が描く円が円Dよりも小径となって、軸心7の先端にこれを中心として接続された円盤状の保持板小9bに取り付けられている。骨格材8の他方の端部は、軸心7の中途にこれを中心として接続された円盤状の保持板大9aにそのまま取り付けられている。
【0031】
したがって、軸心7の回転に連れて、12本の骨格材8が円Dの周上を移動するように回転する。
【0032】
林立した骨格材8には、図2に示されるように、被加熱物である無端ベルト体5が吊り掛けられる。図5に、図1及び図2における保持具1及び無端ベルト体5のみを抜き出した図3におけるC−C断面に相当する箇所での拡大断面図を示す。図5に示されるように、無端ベルト体5は、12本の骨格材8の全てが無端ベルト体5の内側に位置するように吊り掛けられる。この際、無端ベルト体5の最下部は、骨格材8と離間している。保持具1が回転して、12本の骨格材8が円Dの周上を移動すると、それに連れて無端ベルト体5も回転するが、円Dよりも内周長が長い無端ベルト体5は、その最下部が骨格材8と常に離間した状態になっている。
【0033】
図6は、無端ベルト体5に代えて、円Dよりも内周長が長い円筒体5’を被加熱物とした変形例であり、図5と同様の位置からの拡大断面図である。円筒体5’の場合であっても、無端ベルト体5の場合と同様、12本の骨格材8の全てが円筒体5’の内側に位置するように吊り掛けられ、その最下部が骨格材8と常に離間した状態になっている。
【0034】
軸心7は、保持板大9aが接続された部位からさらに延伸し、その端部近傍が回転軸10に嵌挿されている。この回転軸10は円筒構造をしており、その中を軸心7が貫通し、つまみネジ6にて両者が固定されている。回転軸10と軸心7との間がつまみネジ6にて脱着可能になっていることから、種々の径(本実施形態における円Dの径)の保持具を用意しておき、段取り換え時に、被加熱物(本実施形態では無端ベルト体5)の内径に応じた適切な径の保持具を選択して交換することで、種々の内径の被加熱物に対応可能になっている。
【0035】
回転軸10にはリング状のプーリ11bが取り付けられている。このプーリ11bの外周には、モータ11の軸に取り付けられたプーリ11aの外周との間にタイミングベルト11cが架張されており、モータ11の回転力が回転軸10等を介して保持具1に伝達されるようになっている。
【0036】
加熱手段であるハロゲンヒータ12は、図2に示されるように、骨格材8に吊り掛けられた無端ベルト体5の外周面と間隔を開けた位置で、軸心7の軸方向の左右に2個配される。ハロゲンヒータ12は、赤外線を放射する輻射式の赤外線ヒータの一種であり、本実施形態においては、ヒータから照射される赤外線の波長帯が0.7〜2μm程度の波長の物を使用している。
【0037】
なお、本発明において赤外線ヒータとしては、本実施形態のハロゲンヒータに限定されず、例えば、カーボンヒータやセラミックヒータ等の公知の輻射式の赤外線ヒータを用いることができる。
【0038】
図7に、保持具1及びハロゲンヒータ12周辺部を抜き出した図1におけるB−B断面図を示す。図7に示されるように、ハロゲンヒータ12の保持具1に向かって背面には、その表面が光輝アルミニウムからなる反射板13が配されている。該反射板13は、図7を見るとわかるように放物線形状に加工されており、その焦点を結ぶ側にハロゲンヒータ12が位置するように配されている。
【0039】
このハロゲンヒータ12と反射板13とは一体構造になっており、後述する移動機構によって、無端ベルト体5の外周面に対して前後に移動可能になっている。そのため、無端ベルト体5に代えて他の被加熱物を加熱処理する際には、その大きさに合わせてハロゲンヒータ12と被加熱物との距離を設定することができる。
【0040】
前記移動機構は、ガイドシャフト14aと、スベリネジ14bと、伝達シャフト14cと、つまみ14dとで構成される。つまみ14dを装置の使用者が回転させると、その回転が伝達シャフト14cを通じてスベリネジ14bに伝達され、その回転によりガイドシャフト14aに沿ってハロゲンヒータ12及び反射板13が一体となって移動自在な構造となっている。したがって、被加熱物の周長が変化した場合にも、ハロゲンヒータ12と被加熱物との距離を適切に設定することが可能となる。その時の位置をセンサ14eで検知して、いつも一定の位置で加熱することも可能となる。
【0041】
無端ベルト体5の下方には、放射温度計15が設置されており、これにより無端ベルト体5の外周面の温度を測定している。その測定結果は、図示していない制御手段に信号として送られ、その値に基づいてPID制御(P:比例制御、I:積分制御、D:微分制御)にて制御された電圧をハロゲンヒータ12に印加するようにフィードバック制御される。このフィードバック制御によって、無端ベルト体5は所望の温度に維持される。この時、ハロゲンヒータ12から放射された赤外線が直接、放射温度計15にて検知されないように、先覗筒15aが取り付けられている。そのため、無端ベルト体5が発した赤外線のみをセンシングすることが可能となり、正確に無端ベルト体5の外周面を所望の温度で加熱することが可能になる。
【0042】
以上説明した保持具1や加熱のための機構(ハロゲンヒータ12、反射板13等)は、断熱板16にていずれの方向からも囲われた閉空間の内部に設置されている。筐体30には、断熱板16で囲われた閉空間の内部において無端ベルト体5等の被加熱物を加熱した際に発生したガスを前記閉空間内から排気するための排気口17が設置されている。
【0043】
本実施形態の加熱装置は、前後左右上下の6方向を断熱板16により囲まれた閉空間の内部を炉内として、無端ベルト体5等の被加熱物を加熱する構造となっている。その閉空間の外部は、安全のために保護板16b,16cで覆われており、炉内温度に近い温度に熱せられた断熱板16を作業者が直接触り、火傷などの外傷を負わないように配慮している。
【0044】
前記閉空間においては、断熱板16の一部である上部断熱板16aが、図1において矢印Xに示す方向に開閉自在な構造になっている。無端ベルト体5等の被加熱物を炉内から出し入れする際には、ギヤ19aを介してモータ19の回転を支点軸18に伝えることで、上部断熱板16a及び上部保護板16cからなる開閉扉を開閉することができる。当該開閉扉の開放時には、保持具1やモータ11とその回転を伝える機構部品類(11a〜11c)が、図1中破線で示されるよう(該破線においては一部図示を省略している。)に、全て傾く構造になっている。この開閉動作が滑らかに動作するように、上部断熱板16a及び上部保護板16cとバランスが取れる重量を有するカウンターウエイト20が、前記開閉扉の開放時垂直方向位置が低下する側に取り付けられている。
【0045】
装置の上部には、人の手を検知するセンサ21が配されており、無端ベルト体5等の被加熱物の出し入れ時に上部断熱板16a及び上部保護板16cからなる開閉扉が開閉しないように設置されている。センサ21が人の手を検知した際には、無端ベルト体5の出し入れ時に誤って加熱操作をスタートさせてもエラーとなり、開閉扉の開閉機構が作動しないようになっている。
【0046】
また、無端ベルト体5等の被加熱物の出し入れは、ワーク検知センサ23でセンシングされ、無端ベルト体5がセットされていない状態でスタートボタン22を押しても装置が作動しないようになっており、炉内が空の状態で加熱(空焚き)することが防止される。
【0047】
筐体30は、構造材24で構成され、その構造材24に金属カバー25が取り付けられ、センサ21が有効である範囲以外は全て当該金属カバー25で覆われている。また、金属カバー25の一部にメンテナンス扉26a,26bが設けられており、装置のメンテナンス時にはこのメンテナンス扉26a,26bを開放して、装置内部にアクセスすることができるようになっている。
【0048】
本発明は、円筒状または無端ベルト状の基材の表面に直接、あるいは他の層を介して塗布された塗料を加熱・硬化するに適した加熱装置を開示するが、本実施形態においては、特に、表面に液状のシリコーンゴムが塗布された無端ベルト体5を被加熱物として用いている。本実施形態における無端ベルト体5は、最終的に定着ベルトとして用いられる無端ベルト体になる。
【0049】
図8に、本実施形態の加熱装置によってシリコーンゴム層が加熱・硬化されることで得られる定着ベルトの模式拡大断面図を示す。当該定着ベルトは、図8に示されるように、基材5aの表面(外周面)にプライマ層(接着層)5dを介してシリコーンゴム層5bが形成され、さらにプライマ層(接着層)5d’を介して離型層5cが形成されてなり、省略された両端が接続して環状になった無端ベルト状の物である。
【0050】
基材5aの材質は樹脂であり、具体的にはポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂などが好適なものとして挙げられ、通常、延伸成型により50〜90μm程度の厚さで無端ベルト状に成型される。
【0051】
シリコーンゴム層5bは、弾性層として機能する層であり、既述の通り液状のシリコーンゴムを塗布し、それを加熱して加硫することで硬化して形成されるものである。シリコーンゴム層5bの厚みは、通常100〜300μm程度の範囲から選択される。
【0052】
離型層5cは、15〜25μm程度の厚みのフッ素樹脂(PFA、PTFEなど)からなる層である。
【0053】
プライマ層5d,5d’は、厚さ数μm程度の接着性を有する層である。接着性向上のために、各機能を有する各層(基材5a,シリコーンゴム層5b,離型層5c)の間に介在させる。
【0054】
これら各層は、基材5aの表面(外周面)に、積層させるべき順に塗装して加熱を繰り返すことで積層される。これら各層は、例えば特許文献2に記載の塗膜形成装置や従来からのスプレー塗装法あるいはディッピング塗装法等による塗装装置などを用いて塗装することができる。
【0055】
次に、本実施形態の加熱装置の動作(本発明の加熱方法の実施形態)について説明する。
【0056】
まず、加熱処理前、本加熱装置は上部断熱板16a及び上部保護板16cからなる開閉扉が開いた状態になっており、図1中破線で示されるように、保持具1も同様の角度になっている。ここに、不図示の把持治具で無端ベルト体5の一方の端部を内周面側から把持し他方の端部から保持具1に無端ベルト体5を骨格材8に沿って挿入する(図中2の矢印Y方向)。前記把持治具の把持を解除すると、無端ベルト体5は骨格材8に沿って若干落下し保持板大9aに突き当たる。その際、無端ベルト体5はワーク検知センサ23で検知されている。
【0057】
因みに、無端ベルト体5は本加熱装置による加熱処理の前の段階で、スプレー塗装法やディッピング塗装法等により、その外周面に塗膜が形成されているので該外周面を触ることができない。そのため、上記のように本加熱装置に無端ベルト体5をセットする際には、内周面から別の把持治具で把持した状態での作業となる。
【0058】
以上の如く、無端ベルト体5を保持具1にセットした状態で、本加熱装置のスタートボタン22を押すと、支点軸18を回転するモータ19が作動し、上部断熱板16a及び上部保護板16cからなる開閉扉が閉じ断熱板16に囲まれた閉空間が生まれ、図1に実線で示されるような状態になる。
【0059】
この時、無端ベルト体5は、図5に示されるように保持具1における骨格材8の位置する円Dが無端ベルト体5の内径より小さいため、その上部が骨格材8に接し支えられるが、その下部はだらんと垂れ下がった状態となる。この時の形状は、無端ベルト体5の剛性次第であり、剛性が自重に負けると垂れ下がった状態になるが、無端ベルト体5に剛性があり形状を保持できる場合は円形に近い形状(図6に近い形状)になる。いずれの場合も、上部のみが骨格材8と接触することになる。
【0060】
以上のようにして、複数の骨格材(棒状体)8の全てが無端ベルト体(被加熱物)5の内側に位置するように無端ベルト体5が保持具(支持部材)1に吊り掛けられて、本加熱装置への無端ベルト体5のセットが完了したことになる(以上、「吊り掛け工程」)。
【0061】
なお、この時、保持具1の骨格材8は完全に水平にはならず、2〜5°程度無端ベルト体5の挿入側が地面から離れる側に傾ける状態に角度をつけておくことが望ましい。このように角度をつけておくことで、次工程の動作で保持具1が回転した際に、無端ベルト体5が保持具1からずれたり脱落したりする可能性を低減することができる。本発明において、「略水平方向」という場合には、このように、完全に水平な状態から若干の角度を付けた場合を含む概念であり、具体的には0〜10°程度の範囲から選択され、上記のように2〜5°程度の範囲とすることがより好ましい。
【0062】
本加熱装置は、以上のようにして無端ベルト体5のセットが完了した状態から、加熱工程の動作が自動的に開始するようになっている。上部断熱板16a及び上部保護板16cからなる開閉扉が閉じられたのち、モータ11が回転しその回転駆動力が回転軸10を通じて保持具1に伝達される。保持具1は、所定の回転数で、図2における矢印Z方向に回転し、骨格材8を介して無端ベルト体5に回転が伝達され、無端ベルト体5が回転する。
【0063】
次いで、ハロゲンヒータ12が点灯し赤外線の輻射により無端ベルト体5が加熱される。無端ベルト体5の温度は放射温度計15により測定され、その測定結果の信号が不図示の制御手段に送られて、ハロゲンヒータ12の電圧を電力調整器でフィードバック制御するように構成されている。このフィードバック制御によって、所望の昇温速度で無端ベルト体5を加熱することができるとともに、前記制御手段に予めプログラムされたタイマーで所望の時間、所望の温度に維持することが可能となる。その際、ハロゲンヒータ12は無端ベルト体5の内径に合わせて、予め移動機構(14a〜14d)を用いて、無端ベルト体5との距離が適切になるように調整しておく。
【0064】
通常、このような加熱装置では、軸方向(図1における左右方向)の両端部は中央部と比較して熱が逃げやすいため温度が落ち込む懸念がある。そこで、本実施形態では、ハロゲンヒータ12の両端部は中央部に対して発熱量が10〜20%大きくなるように調整されている。そのため、無端ベルト体5の端部の温度低下も無く、均一に加熱することができる。
【0065】
加熱時には、塗布された液状のシリコーンゴムから不純物を含むガスが放出される。そこで排気口17から断熱板16で囲われた閉空間内部の空気を排気し、断熱板16の隙間から自然に外部の空気を給気することでそのガスを入れ替えている。
【0066】
所定時間加熱し、無端ベルト体5の外周面に塗布されたシリコーンゴムが硬化した所で加熱が終了し(以上が、加熱工程)、ハロゲンヒータ12の加熱が終了し、モータ11の回転が停止する。その後、モータ19が作動し、上部断熱板16a及び上部保護板16cからなる開閉扉が開き、保持具1が一緒に持ち上がって傾いた状態となる。この状態で作業者は把持治具を用いて無端ベルト体5の端部を把持し保持具から無端ベルト体5を取り出し、本加熱装置を用いた1サイクルの加熱の動作が終了することとなる。
【0067】
加熱時において、無端ベルト体5と保持具1の外径(≒円D)の周速度は略同じになるため、無端ベルト体5と円Dの周長が異なることから、両者の回転数は異なることとなる。ゆえに、骨格材8と無端ベルト体5との接触部は回転ごとに2つの周長の差の分だけズレが生じる。このため、無端ベルト体5の内周面における同一の箇所に骨格材8が接触することを回避することが可能となり、全体に均一に骨格材8を接触させることが可能になる。
【0068】
一般的に、加熱中同一の箇所が長時間治具等に触れた状態になった場合、その部分の熱容量が大きくなり、加熱による昇温速度に他の箇所と差が生ずるため、加熱・硬化処理後の塗膜(シリコーンゴム層)の外観にスジが発生する懸念がある。
【0069】
しかし、本実施形態の加熱装置では、先述のように無端ベルト体5の内周面が均等に骨格材8と接触するため、スジの発生を抑制することができる。
【0070】
なお、無端ベルト体5と円Dの周長の差Mが、隣接する骨格材8同士の距離Lの整数倍の場合には、無端ベルト体5が1回転する毎に、その整数倍分離れた骨格材8が、前に骨格材8が接触していた箇所に接触してしまうので、スジの発生を抑制するためには、MがLの整数倍にならないようにすることが望ましい。
【0071】
ただし、無端ベルト体5は、そのフレキシブルさゆえに、骨格材8に吊り掛けられた際に、吊り掛けられて骨格材8に接触している上部において、隣り合う骨格材8間で直線を描いており、厳密には円を描いていない。また、骨格材8自体の太さから、吊り掛けられて骨格材8に接触している上部において、厳密には円Dよりも外形が大きい。後者については、無端ベルト体5に代えて円筒体を被加熱体とした場合にも同様である。
【0072】
そのため、上記M及びLの関係は、上記2つの誤差要因を考慮の上で、実際に無端ベルト体5と骨格材8との接触部位の周期が重ならないように、適宜調整すればよい。即ち、本発明においては、被加熱物が支持部材の回転に従動して1回転した際に、回転前に棒状体と接触していた被加熱物の内周面の箇所が、回転後棒状体と接触しない周期となるように、各条件(被加熱物の周長、棒状体が配される円の径、棒状体の本数、棒状体の径等)を設定することが望ましい。
【0073】
ところで、本発明においては、周期が重なって、無端ベルト体5の内周面における同一箇所が骨格材8と接触してしまうような場合であっても、回転ごとに接離を繰り返し、いつでも接触している状態が避けられるため、常に中子である保持具41と接触しているような図12に示される加熱装置のような構成に比して、スジむらの低減効果が期待できる。
【0074】
本実施形態の加熱装置では、保持具1が棒状体である骨格材8で構成されており、しかもその一部だけしか無端ベルト体5と接触していないので熱容量が極めて小さく、無端ベルト体5を加熱した際の熱が支持部材としての治具(保持具1)に奪われることを抑制することができる。そのため、運転時の消費電力を少なくすることができ、省エネルギー化することができる。骨格材8に、耐熱性のある樹脂製のテープを巻いている本実施形態においては、より省エネルギー化することができる。
【0075】
以上のように、本加熱装置の保持具1は複数の骨格材8から構成され、かつ無端ベルト体5を吊り掛けた際に無端ベルト体5の最下部が骨格材8と常に離間した状態になっていることで、スジむらのような外観欠陥発生の抑制と、加熱処理時におけるエネルギーの低減と言う、2つの効果を同時に達成することができる。
【0076】
本実施形態においては、加熱手段が、無端ベルト体5の外周面と間隔を開けて配された赤外線ヒータであるハロゲンヒータ12なので、炉内の昇温に時間がかかり炉内を一定温度に保たなければならない熱風式オーブン等に比べて、加熱源自体の昇温が早く、また、エネルギー効率が遥かに高く、省エネルギー化に資するとともに、処理時間の短縮にも繋がる。
【0077】
加えて、ハロゲンヒータ12における無端ベルト体5側とは反対側の位置に当該ハロゲンヒータ12から放射される赤外線を無端ベルト体5側に反射する反射板13が配されているため、無端ベルト体5の照射面に均一に赤外線を照射することができ、加熱・硬化後の塗膜の外観に垂れやスジ、ピンホールなどの欠陥が生じにくく、また、エネルギー効率が向上するため、省エネルギー化に資することができる。
【0078】
また、本実施形態においては、図7に示されるように、加熱手段としてのハロゲンヒータ12は、骨格材8が位置する円Dの中心点の高さ、すなわち軸心7の高さ(図7中の一点鎖線)よりも下方(矢印E方向)に配されている。そのため、ハロゲンヒータ12は、無端ベルト体5の下方の、骨格材8が接触していない領域に赤外線を効果的に照射することができる。したがって、当該構成によれば、骨格材8に熱が奪われて無端ベルト体5の外周面の塗膜に硬化ムラが発生するのが抑制されるため、塗膜の外観に垂れやスジ、ピンホールなどの欠陥が生じにくく、かつ、省エネルギー化することができる。
【0079】
さらに、本実施形態においては、加熱手段が赤外線ヒータの一種であるハロゲンヒータ12であることから、当然に、電圧の印加によって発熱するとともに、印加する電圧の大きさに応じてその発熱量が増減する物であり、かつ、ハロゲンヒータ12の温度を、印加する電圧の大きさによって制御する制御手段を備えているため、例えば、ハロゲンヒータ12に弱い電圧を印加することで加熱の出力を低下させて温度を制御することが可能となり、加熱源をON−OFF制御する場合と比較して、定温加熱時における無端ベルト体5の温度変化が小さくなる。そのため、塗膜の外観に垂れやスジ、ピンホールなどの欠陥が生じにくく、かつ、省エネルギー化することができる。
【0080】
以上、本発明について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明の加熱装置及び加熱方法は上記実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、無端ベルト体を加熱する場合を例に挙げて説明しているが、本発明は円筒体を加熱する場合においても、その作用及び効果が期待できる。
【0081】
また、支持部材として、12本の骨格材(棒状体)8からなる保持具1を例に挙げているが、棒状体の本数に特に制限はなく、最低2本以上であれば、被加熱物が吊り掛けられて、かつ、それを回転させ得るため、本発明の構成を具備することになる。ただし、安定した回転による塗膜の平滑化の為には、棒状体があまりに少ないのは好ましくなく、最低でも3本以上、できれば4本以上、さらには5本以上の棒状体が配されていることが好ましい。棒状体の形状についても、円筒状に限定されず、円柱状は勿論、楕円筒(柱)状、半円筒(柱)状、その他各種形状の物を用いることができる。ただし、被加熱物との接触面が曲面形状であることが好ましい。
【0082】
さらに、上記実施形態では、画像形成装置の定着部品である定着ベルトにシリコーンゴム層を形成する場合を例に挙げたが、本発明においては、定着ローラは勿論、その他あらゆる円筒体や無端ベルト体の外周面に塗膜を形成する際に好適に用いることができる。なかでも画像形成装置の定着部品は、外周面に高い平滑性が要求され、特にシリコーンゴム層は比較的肉厚で、スジむらや垂れの問題が生じやすいので、本発明の加熱装置及び加熱方法が極めて好適である。
【0083】
さらにまた、上記実施形態では、加熱手段として赤外線ヒータを用いたバッチ方式の例を挙げたが、従来からの熱風方式の加熱手段を用いたり、さらには搬送手段をも備える連続加熱方式に適用することも可能である。勿論これらは、エネルギー効率、処理時間、装置の省スペース化等の観点からは赤外線ヒータに劣るが、支持部材として棒状体を用い、それを回転させつつ加熱し、かつ、支持部材に吊り掛けられた被加熱物の最下部が棒状体と接していない本発明の構成を具備することで、それに応じた省エネルギーを期待できる上、塗膜の垂れやピンホール、スジむらなどの外観不良の発生を抑制する効果も十分に期待できる。
【0084】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の加熱装置及び加熱方法を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の加熱装置乃至加熱方法の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【実施例】
【0085】
次に、上記説明した本実施形態の加熱装置を実際に加熱に用い、本発明の効果を検証した。その検証試験の内容と結果を以下に示す。
【0086】
塗膜の形成に供する無端ベルト体5として、ポリイミド基材(グンゼ製)からなり、円形にした際の内径が147mmφで、幅(軸方向の長さ)が420mm、厚みが110μmの無端ベルト体Aと、円形にした際の内径が80mmφで、幅(軸方向の長さ)が420mm、厚みが90μmの無端ベルト体Bの2種類を用意した。これら基材に、液状のシリコーンゴム(LR3390/30A,B:旭化成ワッカー社)を湿潤膜厚が200μmになるように塗布した後に、本実施形態の加熱装置を用いて加熱処理した。
【0087】
加熱の条件は、設定温度(塗膜表面の検知温度)110℃で、加熱時間を290secとし、保持具1の回転得度は30回転/分(rpm)になるようにした。
【0088】
無端ベルト体5とハロゲンヒータ12との距離は、無端ベルト体Aで50mm、無端ベルト体Bで70mmになるように調節した。
【0089】
昇温は、ハロゲンヒータ12に供給する電圧値を制御する電力調整器の設定で可変し、実際には25%出力の設定で加熱をした。
【0090】
ハロゲンヒータ12には、坂口伝熱社製のコーツヒータ(ハロゲンヒータ)を1262W(100V、12.62A)で用い、全長420mmの内、端部から145mmの部分の配光を135%にアップさせて使用した。
【0091】
保持具1の仕様は、骨格材8として外径6mmφ、内径4mmφのアルミニウム製パイプ12本を130mmφの円形(円D)上に均等な間隔(角度)で配置し、それぞれの骨格材8の外周には、厚さ1.0mmのフッ素樹脂チューブを被覆して使用した。
【0092】
図9に、加熱時における無端ベルト体5外周面に形成されたシリコーンゴム層表面の温度変化の推移を示す。また、図10に、温度が設定温度に到達した際の無端ベルト体5外周面に形成されたシリコーンゴム層表面の温度を、軸心7に平行な方向に3点測定した結果を示す。
【0093】
図10中の0mmの位置は、本加熱装置に無端ベルト体5をセットした際の保持具1の保持板大9a側の端部を示す。また、設定温度が110℃であるのに対して実測値が100℃前後で低く計測されるのは、設定は無端ベルト体5の下方の、ハロゲンヒータ12によって赤外線が照射される側で制御しているが、表面温度の測定は、上部にある上部断熱板16a及び上部保護板16cからなる開閉扉の隙間から行っているため、測定結果の方が低めの値になっている。
【0094】
[比較例1,2]
一方、比較のため、図11及び図12に示す加熱装置によって実施例1と同様の加熱処理を行った。ただし、被加熱物35,45の基材として、円形にした際の内径が75mmφで、幅(軸方向の長さ)が390mm、厚みが90μmの無端状のポリイミド基材(無端ベルト体C)を用いて、上記検証試験と同様に液状のシリコーンゴムを塗布した上で、加熱処理を行った。
【0095】
図11に示す加熱装置(比較例1)は、バッチ処理タイプの箱型の熱風加熱炉(炉内容積:0.22m2、定格出力:4kW、最高温度:250℃)である。
【0096】
当該加熱装置の炉内に、図11に示される如き保持具31に被加熱物35を縦に保持させて入れた。炉内の温度は、120℃及び150℃に設定し、炉内の空気がその温度になっている所に保持具31に保持された無端ベルト体35を投入して加熱した。加熱時間は290secとした。
【0097】
一方、図12に示す加熱装置(比較例2)は、バッチ処理タイプの箱型の筐体内に、本実施形態におけるハロゲンヒータ12及び反射板13と同様のハロゲンヒータ42及び反射板43を用いて、かつ、被加熱物45を保持した保持具41を回転させながら加熱した。
【0098】
ただし、比較例2では、実施例1(前記実施形態)の加熱装置とは、被加熱物45を保持する保持具41の構造が異なっており、詳しくは、保持具41として、無端ベルト体Cの内径よりも外径が少し小さい(74mmφ)円筒状のアルミニウム製パイプを用いている。この保持具41に、図12に示されるように、無端ベルト体Cを巻きつけるようにして保持させている。
【0099】
実際の生産の現場では、無端ベルト体の内径寸法は、一定の規格内でばらついているのが通例であり、全ての無端ベルト体に完全に一致した保持具を用意することは極めて困難である。そのため、保持すべき無端ベルト体の内径寸法の規格の最小値に保持具の外径を合わせることになる。そのため、無端ベルト体の外径によっては、保持具との間に隙間が生じて接触しない部分と接触する部分とが存在することになる。本比較例2では、この状態を再現している。
【0100】
以上の実施例1と、それと比較するための比較例1及び比較例2について、形成されたシリコーンゴム層の塗膜外観を目視により観察し評価した。評価項目は、(1)スジむら、(2)垂れ、(3)ピンホールの発生程度とした。評価基準は、以下の通りである。
【0101】
○:発生率が1%未満である。
△:発生率が1%以上、10%未満である。
×:発生率が10%以上である。
【0102】
なお、ここでいう「発生率」とは、シリコーンゴム表面に発生する、(1)目視で視認できるスジ、(2)下端4mmの範囲に発生する0.2mm以上の高さが変化する垂れ、(3)0.1mmφ以上の大きさのピンホール、等の発生する割合のことである。
【0103】
結果を下記表1にまとめて示す。また、それぞれの加熱源の消費電力量(被加熱物1個当たり)についても併せて示す。
【0104】
【表1】
【0105】
上記表1に示される通り、本発明の構成を具備しない比較例1及び比較例2の加熱装置では塗膜外観と省エネルギーの両方の要求を満足することが難しく、本発明の構成を具備する実施例1の結果で、これらの問題が解決されていることがわかる。
【0106】
比較例1の加熱方法では、被加熱物を縦に置いて加熱しているので、塗装直後に塗膜のシリコーンゴムに垂れが生じていなくても、炉内でシリコーンゴムが加熱されるとその粘度が低下し、被加熱物の上端の塗膜が垂れやすくなる。上端の塗膜が垂れると当該箇所の塗膜の厚みが薄くなる一方、下端部は垂れたシリコーンゴムが溜まり、端部4mm程度の領域は0.2〜0.3mm程度盛り上がった形状になっていた。
【0107】
そこで、比較例1の加熱方法から、温度設定を180℃、加熱時間を290secに変更し、他の条件は同様にして、さらに加熱試験を行ってみた。その結果、シリコーンゴム層が硬化するまでの時間が短くなり、下端部の垂れが確認されたのは端部2mm程度の領域まで緩和されたが、塗膜表面にピンホール状の外観欠陥が発生しているのが確認された(上記表1における評価基準で「×」に相当)。
【0108】
本発明者らの経験では、昇温速度が2.0℃/sec以上になると、塗装時にシリコーンゴムの塗膜内に巻き込んだ空気が抜ける前にシリコーンゴムの最表面が硬化してしまい、その後空気がその硬化した膜を突き破り揮発するため、塗膜表面にピンホール状の外観欠陥が発生する確率が上昇する。したがって、比較例1の加熱装置では、如何に加熱温度を制御しても、垂れによる膜厚の乱れとピンホールが発生するという外観欠陥を共に抑制することが難しい。
【0109】
また、比較例1の加熱装置による加熱方式は、消費エネルギーの観点でも不利な点がある。従来、生産ラインでは休憩時間や被加熱物の種類を変えるときに、段取りなど加熱処理をしていない(炉内が空の)時間がある。しかし、比較例1の加熱装置の如く、熱風を用いた方式の加熱炉は、炉内が所定の温度になるまで時間を要する(一般的には、30〜60分程度)。そのため、炉内が空の時間があっても加熱装置を停止することができず、その間も多くのエネルギーを消費することとなる。従って、被加熱物1個当たりの加熱に要する電力量に換算すると、赤外線ヒータを加熱手段として用いる場合に比べて、格段に電力消費量が大きくなってしまう。
【0110】
一方、比較例2では、既述の如く、無端ベルト体Cと保持具41との間に隙間が生じて接触しない部分と接触する部分とが存在している。両者が接触している部分では、赤外線が照射された際にその熱が保持具41に奪われ無端ベルト体Cに加わる熱が減少する一方、接触していない部分ではそのまま無端ベルト体Cに熱が加わることとなり、双方に温度差が生じる。そのため、シリコーンゴム層が硬化するまでの時間差が生じ、温度の高い部位が先に硬化し、保持具41と接触し温度の低い部位は後で硬化することとなる。そのため、最終的に形成されたシリコーンゴム層の表面に硬化ムラが発生し、スジ状に観察される。
【0111】
比較例2の加熱装置による加熱方式は、加熱手段にハロゲンヒータ42を用いているので、通電後の温度の立ち上がりが早いため無端ベルト体Cを加熱していない時間にはハロゲンヒータ42を停止することが可能となる。そのため、消費エネルギーは比較例1の加熱装置の場合ほどはかからない。しかし、本発明の構成を具備する実施例1の場合と比較すると、保持具41の熱容量が、本実施形態における保持具1よりも大きくなり、当該保持具に奪われる熱量が多くなる。そのため、省エネルギー効果についても実施例1に比して低い結果になっている。
【符号の説明】
【0112】
1:保持具(支持部材)
5:無端ベルト体(被加熱物)
5’:円筒体(被加熱物)
6:つまみネジ
7:軸心
8:骨格材(棒状体)
9a:保持板大
9b:保持板小
10:回転軸
11,19:モータ
11a,11b:プーリ
11c:タイミングベルト
12:ハロゲンヒータ(加熱手段、赤外線ヒータ)
13:反射板(反射部材)
14a:ガイドシャフト
14b:スベリネジ
14c:伝達シャフト
14d:つまみ
15:放射温度計
15a:先覗筒
16:断熱板
16b,16c:保護板
17:排気口
18:支点軸
19a:ギヤ
20:カウンターウエイト
21:センサ
22:スタートボタン
23:ワーク検知センサ
24:構造材
25:金属カバー
26a,26b:メンテナンス扉
30:筐体
31,41:保持具
35,45:被加熱物
42:ハロゲンヒータ
43:反射板
【先行技術文献】
【特許文献】
【0113】
【特許文献1】特開2000−24586号公報
【特許文献2】特開2007−245073号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状もしくは無端ベルト状の被加熱物の外周面に塗料を塗布した後、加熱硬化して塗膜を形成する際に用いる加熱装置及び加熱方法に関し、特に、画像形成装置の定着装置における定着ローラや定着ベルトの表面に各種層を形成する際に、塗膜を硬化するのに適した加熱装置及び加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式による画像形成装置は、カラー化、省エネルギー化が進んでおり、それに伴い、用紙を挟み込んで圧しつつ熱によりトナーを溶融して用紙に定着させる定着プロセスに用いる定着ユニットは、ローラ方式からベルト方式へと大きく構造が変化している。
【0003】
またごく最近では、いわゆるプロダクションプリンティング事業として従来は印刷機で対応していた高速プリンティング領域まで、電子写真の原理を用いた画像形成装置の適応範囲が広がっており、ベルト方式を採用する定着部品としての無端ベルトも、従来の50〜75mmφの内径(円相当の内径を指す。以下、無端ベルトにおいて同様。)の物から145mmφ以上の内径の物まで径が約2倍前後にまで拡大しており、多種多様な内径のバリエーションが増えている。
【0004】
この定着プロセスで用いられる無端ベルトには、耐熱性ゴム(シリコーンゴム等)による弾性層(100〜300μm程度)を形成した上にプライマ(接着剤)を塗布して、離型層(フッ素樹脂等)を20〜30μm程度形成した構造の定着ベルトを用いるのが一般的となっており、各社独自の工法を開発し商品化を行っている。
【0005】
従来、前記弾性層を形成するための工法としては、液状のシリコーンゴムをスプレーコーティングや浸漬塗工(ディッピング工法)で塗装する方法が一般的に用いられてきた。シリコーンゴムによる当該弾性層は、上記の如き方式で塗装された後に加熱装置内で約100〜150℃程度の温度で加熱され加硫することで液状から固体へ変化し膜として形成されるのが一般的である。通常上記の加熱工程を1次加硫工程と呼び、従来は熱風炉を主体とした加熱方法が用いられてきた。
【0006】
いわゆる金庫炉タイプの熱風式オーブン(加熱装置)を用いて円筒形状の被加熱物を加熱する場合、図11に示すように、被加熱物35の中心軸を垂直方向に向けて保持具31で保持し、これを何本も炉内に投入し(図11では1本のみ表す。)て加熱(焼成)するバッチ方式による加熱が一般的に行われている。このようなバッチ方式による加熱で、無端ベルト状の上記定着部品の外周面に塗装した液状のシリコーンゴムを加硫すると、塗膜の上部や端部に垂れが発生し膜厚の乱れが発生しやすい。
【0007】
硬化までの間に液状のシリコーンゴムが垂れないように、熱風の設定温度を高く設定し急激に加熱することも考えられるが、高温による加熱では、液状のシリコーンゴムから空気が揮発し気泡となって破裂して、弾性層の表面にピンホール状の欠陥が発生しやすくなるため好ましくない。
【0008】
画像形成装置の定着プロセスで用いられる定着部品において、このような欠陥は、ピンホールの径が0.1mmφ程度でも不良となり、後から修復することができない(ピンホールを埋めることが困難である)ため、製造時の良品率を低下させる一因となる。
【0009】
上記の課題(塗膜の垂れや外観欠陥)を解決するためには、加熱する際に被加熱物を保持具で円筒形状の中心軸を水平に保持して回転させながら熱をかける方式が考えられる。この場合は上記で紹介したような金庫炉タイプの熱風炉を用いてバッチで被加熱物を処理することに代えて、熱風炉と被加熱物の搬送装置とを組み合わせた連続加熱ができる連続熱風炉を用いることもできる。熱風炉においては、バッチ処理を行うと、その都度熱が外部に漏れ、炉内を所定の温度に戻すには時間がかかるため、被加熱物を1度に多数本まとめて処理しないと、時間効率もエネルギー効率も低下してしまう。そのため、円筒形状の中心軸を水平に保持して回転させながら熱をかける上記方式においては、これら効率性を考慮すると、連続熱風炉とすることが望ましい。
【0010】
しかし、連続炉であるため、加熱時間にもよるが、炉長が3〜6m程度と長くなりがちであり、被加熱物の入口と出口とが離れた位置になってしまい、量産ラインに設置する際の制約になり、また炉内を絶えず熱風で温めておく必要がある。例えば、加熱処理前には1時間程度予熱が必要であり、また、昼休みなど作業者の休憩時間も加熱炉の熱風は温度を維持することが必要で、消費電力が大きくなる欠点がある。
【0011】
これらの欠点を回避するためには、熱風炉による加熱方式に代えて、特許文献1に示されるように赤外線による加熱を使うことが考えられる。赤外線による加熱の場合、加熱する際に加熱源(ヒータ)に電気を供給すればよく、上記のように消費エネルギーが大きくなることもない。
【0012】
具体的には例えば、図12に示すように、円筒形状の金属からなる保持具41にセットされた被加熱物45は、保持具41ごと加熱装置に投入され、外周に塗装された液状のシリコーンゴムが垂れないように数〜数十rpm(回転/分)の回転数で被加熱物45を絶えず回転させておく。そして、被加熱物45の近傍に配されたハロゲンヒータ42及びその背後に配された反射板43によって、被加熱物45表面の液状のシリコーンゴムが加熱・硬化される。
【0013】
このような方式では、液状のシリコーンゴムの垂れが発生し難いので、加熱温度を高温にする必要も無くピンホールのような外観欠陥を発生させないで塗膜を硬化することが可能となる。
【0014】
しかし、円筒形状や無端ベルト状の被加熱物を加熱する際には、図12に示されように、円筒形状の金属からなる中子を挿入して保持具41とするのが一般的であるが、この保持具41は通常被加熱物45の内面を微々たる隙間無く完全に密着して保持することは困難であり、実際にこのような中子を保持具42として加熱すると密着している所としていないところでわずかながら温度差が生じ、被加熱物45の表面に加熱ムラが、加熱硬化後にスジとなって現れる。
【0015】
当然、このようなスジを有する物を画像形成装置の定着部品として用いた場合、出力画像に表れるため好ましくない。また、熱容量の少ない無端ベルト状の被加熱物を加熱する際には特に、中子に熱容量の大きい保持具が挿入された状態になるため、省エネルギー化の観点からも好ましくない。
【0016】
このように、円筒状や無端ベルト状の被加熱物に液状のシリコーンゴムを塗布して硬化(加硫)するために加熱する工程や設備では、いずれの方式においても外観欠陥の発生や省エネルギー化等いずれかの観点から問題があり、その全てを満足することができていないのが現状である。
【0017】
以上の問題は、定着部品の外周面におけるシリコーンゴム等の弾性層の形成のみならず、広く、外周面に塗料が塗布された円筒状または無端ベルト状の被加熱物を加熱・硬化する際に用いる加熱装置全般に言えることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明は、外周面に塗料が塗布された円筒状または無端ベルト状の被加熱物を加熱・硬化する際に、塗膜の垂れやピンホール、スジむらなどの外観不良の発生を抑制することができ、かつ、省エネルギー化することができる加熱装置、及び加熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題は、以下に示す本発明によって達成される。
【0020】
請求項1に記載された発明は、筐体内に、円筒状または無端ベルト状の被加熱物を内側から支持する支持部材と、前記被加熱物に熱を加える加熱手段と、が配された加熱装置において、前記支持部材が、略水平方向で平行に林立した複数の棒状体で構成されるとともに、当該複数の棒状体が、長手方向から見て1つの円周上に位置するように配されており、前記複数の棒状体の全てが前記被加熱物の内側に位置するように当該被加熱物を吊り掛けた際に、当該被加熱物の最下部が前記棒状体と常に離間しており、かつ、前記複数の棒状体が前記円周上を移動するように前記支持部材を回転させる回転手段が備えられていることを特徴とする加熱装置である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載された発明は、前記複数の棒状体の全てが前記被加熱物の内側に位置するように前記被加熱物を吊り掛けて、前記回転手段により前記支持部材を回転させつつ、前記加熱手段によって前記被加熱物を加熱すると、前記支持部材(前記複数の棒状体)の下方に前記被加熱物が垂れ下がった状態になっており、前記支持部材の回転と共に前記被加熱物も回転して前記棒状体に吊り掛けられた部位がその回転と共に移動する。
【0022】
したがって、請求項1に記載された発明によれば、前記被加熱物を回転させながら加熱するため、塗膜の垂れやピンホールが生じることが抑制される。また、前記被加熱物が前記複数の棒状体に張り渡されずに最下部が垂れ下がった状態で支持されていることから、前記被加熱物とこれを支持する前記棒状体との接触点が前記支持部材の回転により移動するため、スジむらが生じることが抑制される。さらに、前記被加熱物を支持する前記支持部材が複数の棒状体からなり、該棒状体だけが前記被加熱物の内周面と線状に接触して支持しているため、例えば、円筒形状の中子を支持部材とする場合等と比べて、支持部材の熱容量が大幅に低減され、省エネルギー化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の例示的一態様である実施形態の加熱装置を示す正面断面図である。
【図2】図1に示す実施形態の加熱装置の右側断面図(B−B断面図)である。
【図3】図1中の支持部材の一部のみを抜き出した拡大正面図である。
【図4】図3におけるC−C断面図である。
【図5】図1及び図2中の支持部材及び被加熱物のみを抜き出した、図3におけるC−C断面に相当する拡大断面図である。
【図6】図5における被加熱物を無端ベルト体から円筒体に変更した場合の変形例を表す拡大断面図である。
【図7】図1中の支持部材及び加熱手段周辺部を抜き出した右側断面図(B−B断面図)である。
【図8】図1に示す実施形態の加熱装置によって得られる定着ベルトの例を示す模式拡大断面図である。
【図9】図1に示す実施形態の加熱装置を用いた検証試験において、加熱時における無端ベルト体の外周面に形成されたシリコーンゴム層表面の温度変化の推移を示すグラフである。
【図10】図1に示す実施形態の加熱装置を用いた検証試験において、温度が設定温度に到達した際の無端ベルト体外周面に形成されたシリコーンゴム層表面の温度を、無端ベルト体の回転軸方向と平行な方向に3点測定した結果を示す。
【図11】従来の金庫炉タイプの熱風式加熱装置を模式的に示す概略構成図である。
【図12】従来の金庫炉タイプで被加熱物を回転させつつ赤外線ヒータで加熱する加熱装置を模式的に示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の加熱装置及び無端ベルト部材について、図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の例示的一態様である実施形態の加熱装置を示す正面断面図であり、図2はその右側方向からの断面図である。詳しくは、図1は、図2におけるA−A断面図であり、図2は、図1におけるB−B断面図である。
【0026】
本実施形態の加熱装置には、図1及び図2に示すように、筐体30内に、被加熱物である無端ベルト体5を内側から支持する治具としての保持具(支持部材)1と、無端ベルト体5に熱を加えるハロゲンヒータ(加熱手段)12とが配されている。
【0027】
保持具1は、軸心7と、骨格材(棒状体)8と、保持板大9aと、保持板小9bとから構成される。骨格材8は、例えば6mmφ程度の径のステンレス製(SUS)パイプなどの金属を曲げ加工し、さらに耐熱性を有する樹脂粘着テープを巻いて製作した物である。
【0028】
図3に、図1中の保持具1における骨格材8及び保持板小9bのみを抜き出した拡大正面図を示す。また、図3におけるC−C断面図を図4に示す。
【0029】
保持具1は、図4に示されるように、12本の骨格材8が、軸心7と同軸上の円D上に位置するように等間隔で配されており、図3に示されるように、水平方向に林立して構成される。
【0030】
骨格材8の一方の端部は、曲げ加工によって軸心7側に曲げられて、それらの縁端が描く円が円Dよりも小径となって、軸心7の先端にこれを中心として接続された円盤状の保持板小9bに取り付けられている。骨格材8の他方の端部は、軸心7の中途にこれを中心として接続された円盤状の保持板大9aにそのまま取り付けられている。
【0031】
したがって、軸心7の回転に連れて、12本の骨格材8が円Dの周上を移動するように回転する。
【0032】
林立した骨格材8には、図2に示されるように、被加熱物である無端ベルト体5が吊り掛けられる。図5に、図1及び図2における保持具1及び無端ベルト体5のみを抜き出した図3におけるC−C断面に相当する箇所での拡大断面図を示す。図5に示されるように、無端ベルト体5は、12本の骨格材8の全てが無端ベルト体5の内側に位置するように吊り掛けられる。この際、無端ベルト体5の最下部は、骨格材8と離間している。保持具1が回転して、12本の骨格材8が円Dの周上を移動すると、それに連れて無端ベルト体5も回転するが、円Dよりも内周長が長い無端ベルト体5は、その最下部が骨格材8と常に離間した状態になっている。
【0033】
図6は、無端ベルト体5に代えて、円Dよりも内周長が長い円筒体5’を被加熱物とした変形例であり、図5と同様の位置からの拡大断面図である。円筒体5’の場合であっても、無端ベルト体5の場合と同様、12本の骨格材8の全てが円筒体5’の内側に位置するように吊り掛けられ、その最下部が骨格材8と常に離間した状態になっている。
【0034】
軸心7は、保持板大9aが接続された部位からさらに延伸し、その端部近傍が回転軸10に嵌挿されている。この回転軸10は円筒構造をしており、その中を軸心7が貫通し、つまみネジ6にて両者が固定されている。回転軸10と軸心7との間がつまみネジ6にて脱着可能になっていることから、種々の径(本実施形態における円Dの径)の保持具を用意しておき、段取り換え時に、被加熱物(本実施形態では無端ベルト体5)の内径に応じた適切な径の保持具を選択して交換することで、種々の内径の被加熱物に対応可能になっている。
【0035】
回転軸10にはリング状のプーリ11bが取り付けられている。このプーリ11bの外周には、モータ11の軸に取り付けられたプーリ11aの外周との間にタイミングベルト11cが架張されており、モータ11の回転力が回転軸10等を介して保持具1に伝達されるようになっている。
【0036】
加熱手段であるハロゲンヒータ12は、図2に示されるように、骨格材8に吊り掛けられた無端ベルト体5の外周面と間隔を開けた位置で、軸心7の軸方向の左右に2個配される。ハロゲンヒータ12は、赤外線を放射する輻射式の赤外線ヒータの一種であり、本実施形態においては、ヒータから照射される赤外線の波長帯が0.7〜2μm程度の波長の物を使用している。
【0037】
なお、本発明において赤外線ヒータとしては、本実施形態のハロゲンヒータに限定されず、例えば、カーボンヒータやセラミックヒータ等の公知の輻射式の赤外線ヒータを用いることができる。
【0038】
図7に、保持具1及びハロゲンヒータ12周辺部を抜き出した図1におけるB−B断面図を示す。図7に示されるように、ハロゲンヒータ12の保持具1に向かって背面には、その表面が光輝アルミニウムからなる反射板13が配されている。該反射板13は、図7を見るとわかるように放物線形状に加工されており、その焦点を結ぶ側にハロゲンヒータ12が位置するように配されている。
【0039】
このハロゲンヒータ12と反射板13とは一体構造になっており、後述する移動機構によって、無端ベルト体5の外周面に対して前後に移動可能になっている。そのため、無端ベルト体5に代えて他の被加熱物を加熱処理する際には、その大きさに合わせてハロゲンヒータ12と被加熱物との距離を設定することができる。
【0040】
前記移動機構は、ガイドシャフト14aと、スベリネジ14bと、伝達シャフト14cと、つまみ14dとで構成される。つまみ14dを装置の使用者が回転させると、その回転が伝達シャフト14cを通じてスベリネジ14bに伝達され、その回転によりガイドシャフト14aに沿ってハロゲンヒータ12及び反射板13が一体となって移動自在な構造となっている。したがって、被加熱物の周長が変化した場合にも、ハロゲンヒータ12と被加熱物との距離を適切に設定することが可能となる。その時の位置をセンサ14eで検知して、いつも一定の位置で加熱することも可能となる。
【0041】
無端ベルト体5の下方には、放射温度計15が設置されており、これにより無端ベルト体5の外周面の温度を測定している。その測定結果は、図示していない制御手段に信号として送られ、その値に基づいてPID制御(P:比例制御、I:積分制御、D:微分制御)にて制御された電圧をハロゲンヒータ12に印加するようにフィードバック制御される。このフィードバック制御によって、無端ベルト体5は所望の温度に維持される。この時、ハロゲンヒータ12から放射された赤外線が直接、放射温度計15にて検知されないように、先覗筒15aが取り付けられている。そのため、無端ベルト体5が発した赤外線のみをセンシングすることが可能となり、正確に無端ベルト体5の外周面を所望の温度で加熱することが可能になる。
【0042】
以上説明した保持具1や加熱のための機構(ハロゲンヒータ12、反射板13等)は、断熱板16にていずれの方向からも囲われた閉空間の内部に設置されている。筐体30には、断熱板16で囲われた閉空間の内部において無端ベルト体5等の被加熱物を加熱した際に発生したガスを前記閉空間内から排気するための排気口17が設置されている。
【0043】
本実施形態の加熱装置は、前後左右上下の6方向を断熱板16により囲まれた閉空間の内部を炉内として、無端ベルト体5等の被加熱物を加熱する構造となっている。その閉空間の外部は、安全のために保護板16b,16cで覆われており、炉内温度に近い温度に熱せられた断熱板16を作業者が直接触り、火傷などの外傷を負わないように配慮している。
【0044】
前記閉空間においては、断熱板16の一部である上部断熱板16aが、図1において矢印Xに示す方向に開閉自在な構造になっている。無端ベルト体5等の被加熱物を炉内から出し入れする際には、ギヤ19aを介してモータ19の回転を支点軸18に伝えることで、上部断熱板16a及び上部保護板16cからなる開閉扉を開閉することができる。当該開閉扉の開放時には、保持具1やモータ11とその回転を伝える機構部品類(11a〜11c)が、図1中破線で示されるよう(該破線においては一部図示を省略している。)に、全て傾く構造になっている。この開閉動作が滑らかに動作するように、上部断熱板16a及び上部保護板16cとバランスが取れる重量を有するカウンターウエイト20が、前記開閉扉の開放時垂直方向位置が低下する側に取り付けられている。
【0045】
装置の上部には、人の手を検知するセンサ21が配されており、無端ベルト体5等の被加熱物の出し入れ時に上部断熱板16a及び上部保護板16cからなる開閉扉が開閉しないように設置されている。センサ21が人の手を検知した際には、無端ベルト体5の出し入れ時に誤って加熱操作をスタートさせてもエラーとなり、開閉扉の開閉機構が作動しないようになっている。
【0046】
また、無端ベルト体5等の被加熱物の出し入れは、ワーク検知センサ23でセンシングされ、無端ベルト体5がセットされていない状態でスタートボタン22を押しても装置が作動しないようになっており、炉内が空の状態で加熱(空焚き)することが防止される。
【0047】
筐体30は、構造材24で構成され、その構造材24に金属カバー25が取り付けられ、センサ21が有効である範囲以外は全て当該金属カバー25で覆われている。また、金属カバー25の一部にメンテナンス扉26a,26bが設けられており、装置のメンテナンス時にはこのメンテナンス扉26a,26bを開放して、装置内部にアクセスすることができるようになっている。
【0048】
本発明は、円筒状または無端ベルト状の基材の表面に直接、あるいは他の層を介して塗布された塗料を加熱・硬化するに適した加熱装置を開示するが、本実施形態においては、特に、表面に液状のシリコーンゴムが塗布された無端ベルト体5を被加熱物として用いている。本実施形態における無端ベルト体5は、最終的に定着ベルトとして用いられる無端ベルト体になる。
【0049】
図8に、本実施形態の加熱装置によってシリコーンゴム層が加熱・硬化されることで得られる定着ベルトの模式拡大断面図を示す。当該定着ベルトは、図8に示されるように、基材5aの表面(外周面)にプライマ層(接着層)5dを介してシリコーンゴム層5bが形成され、さらにプライマ層(接着層)5d’を介して離型層5cが形成されてなり、省略された両端が接続して環状になった無端ベルト状の物である。
【0050】
基材5aの材質は樹脂であり、具体的にはポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂などが好適なものとして挙げられ、通常、延伸成型により50〜90μm程度の厚さで無端ベルト状に成型される。
【0051】
シリコーンゴム層5bは、弾性層として機能する層であり、既述の通り液状のシリコーンゴムを塗布し、それを加熱して加硫することで硬化して形成されるものである。シリコーンゴム層5bの厚みは、通常100〜300μm程度の範囲から選択される。
【0052】
離型層5cは、15〜25μm程度の厚みのフッ素樹脂(PFA、PTFEなど)からなる層である。
【0053】
プライマ層5d,5d’は、厚さ数μm程度の接着性を有する層である。接着性向上のために、各機能を有する各層(基材5a,シリコーンゴム層5b,離型層5c)の間に介在させる。
【0054】
これら各層は、基材5aの表面(外周面)に、積層させるべき順に塗装して加熱を繰り返すことで積層される。これら各層は、例えば特許文献2に記載の塗膜形成装置や従来からのスプレー塗装法あるいはディッピング塗装法等による塗装装置などを用いて塗装することができる。
【0055】
次に、本実施形態の加熱装置の動作(本発明の加熱方法の実施形態)について説明する。
【0056】
まず、加熱処理前、本加熱装置は上部断熱板16a及び上部保護板16cからなる開閉扉が開いた状態になっており、図1中破線で示されるように、保持具1も同様の角度になっている。ここに、不図示の把持治具で無端ベルト体5の一方の端部を内周面側から把持し他方の端部から保持具1に無端ベルト体5を骨格材8に沿って挿入する(図中2の矢印Y方向)。前記把持治具の把持を解除すると、無端ベルト体5は骨格材8に沿って若干落下し保持板大9aに突き当たる。その際、無端ベルト体5はワーク検知センサ23で検知されている。
【0057】
因みに、無端ベルト体5は本加熱装置による加熱処理の前の段階で、スプレー塗装法やディッピング塗装法等により、その外周面に塗膜が形成されているので該外周面を触ることができない。そのため、上記のように本加熱装置に無端ベルト体5をセットする際には、内周面から別の把持治具で把持した状態での作業となる。
【0058】
以上の如く、無端ベルト体5を保持具1にセットした状態で、本加熱装置のスタートボタン22を押すと、支点軸18を回転するモータ19が作動し、上部断熱板16a及び上部保護板16cからなる開閉扉が閉じ断熱板16に囲まれた閉空間が生まれ、図1に実線で示されるような状態になる。
【0059】
この時、無端ベルト体5は、図5に示されるように保持具1における骨格材8の位置する円Dが無端ベルト体5の内径より小さいため、その上部が骨格材8に接し支えられるが、その下部はだらんと垂れ下がった状態となる。この時の形状は、無端ベルト体5の剛性次第であり、剛性が自重に負けると垂れ下がった状態になるが、無端ベルト体5に剛性があり形状を保持できる場合は円形に近い形状(図6に近い形状)になる。いずれの場合も、上部のみが骨格材8と接触することになる。
【0060】
以上のようにして、複数の骨格材(棒状体)8の全てが無端ベルト体(被加熱物)5の内側に位置するように無端ベルト体5が保持具(支持部材)1に吊り掛けられて、本加熱装置への無端ベルト体5のセットが完了したことになる(以上、「吊り掛け工程」)。
【0061】
なお、この時、保持具1の骨格材8は完全に水平にはならず、2〜5°程度無端ベルト体5の挿入側が地面から離れる側に傾ける状態に角度をつけておくことが望ましい。このように角度をつけておくことで、次工程の動作で保持具1が回転した際に、無端ベルト体5が保持具1からずれたり脱落したりする可能性を低減することができる。本発明において、「略水平方向」という場合には、このように、完全に水平な状態から若干の角度を付けた場合を含む概念であり、具体的には0〜10°程度の範囲から選択され、上記のように2〜5°程度の範囲とすることがより好ましい。
【0062】
本加熱装置は、以上のようにして無端ベルト体5のセットが完了した状態から、加熱工程の動作が自動的に開始するようになっている。上部断熱板16a及び上部保護板16cからなる開閉扉が閉じられたのち、モータ11が回転しその回転駆動力が回転軸10を通じて保持具1に伝達される。保持具1は、所定の回転数で、図2における矢印Z方向に回転し、骨格材8を介して無端ベルト体5に回転が伝達され、無端ベルト体5が回転する。
【0063】
次いで、ハロゲンヒータ12が点灯し赤外線の輻射により無端ベルト体5が加熱される。無端ベルト体5の温度は放射温度計15により測定され、その測定結果の信号が不図示の制御手段に送られて、ハロゲンヒータ12の電圧を電力調整器でフィードバック制御するように構成されている。このフィードバック制御によって、所望の昇温速度で無端ベルト体5を加熱することができるとともに、前記制御手段に予めプログラムされたタイマーで所望の時間、所望の温度に維持することが可能となる。その際、ハロゲンヒータ12は無端ベルト体5の内径に合わせて、予め移動機構(14a〜14d)を用いて、無端ベルト体5との距離が適切になるように調整しておく。
【0064】
通常、このような加熱装置では、軸方向(図1における左右方向)の両端部は中央部と比較して熱が逃げやすいため温度が落ち込む懸念がある。そこで、本実施形態では、ハロゲンヒータ12の両端部は中央部に対して発熱量が10〜20%大きくなるように調整されている。そのため、無端ベルト体5の端部の温度低下も無く、均一に加熱することができる。
【0065】
加熱時には、塗布された液状のシリコーンゴムから不純物を含むガスが放出される。そこで排気口17から断熱板16で囲われた閉空間内部の空気を排気し、断熱板16の隙間から自然に外部の空気を給気することでそのガスを入れ替えている。
【0066】
所定時間加熱し、無端ベルト体5の外周面に塗布されたシリコーンゴムが硬化した所で加熱が終了し(以上が、加熱工程)、ハロゲンヒータ12の加熱が終了し、モータ11の回転が停止する。その後、モータ19が作動し、上部断熱板16a及び上部保護板16cからなる開閉扉が開き、保持具1が一緒に持ち上がって傾いた状態となる。この状態で作業者は把持治具を用いて無端ベルト体5の端部を把持し保持具から無端ベルト体5を取り出し、本加熱装置を用いた1サイクルの加熱の動作が終了することとなる。
【0067】
加熱時において、無端ベルト体5と保持具1の外径(≒円D)の周速度は略同じになるため、無端ベルト体5と円Dの周長が異なることから、両者の回転数は異なることとなる。ゆえに、骨格材8と無端ベルト体5との接触部は回転ごとに2つの周長の差の分だけズレが生じる。このため、無端ベルト体5の内周面における同一の箇所に骨格材8が接触することを回避することが可能となり、全体に均一に骨格材8を接触させることが可能になる。
【0068】
一般的に、加熱中同一の箇所が長時間治具等に触れた状態になった場合、その部分の熱容量が大きくなり、加熱による昇温速度に他の箇所と差が生ずるため、加熱・硬化処理後の塗膜(シリコーンゴム層)の外観にスジが発生する懸念がある。
【0069】
しかし、本実施形態の加熱装置では、先述のように無端ベルト体5の内周面が均等に骨格材8と接触するため、スジの発生を抑制することができる。
【0070】
なお、無端ベルト体5と円Dの周長の差Mが、隣接する骨格材8同士の距離Lの整数倍の場合には、無端ベルト体5が1回転する毎に、その整数倍分離れた骨格材8が、前に骨格材8が接触していた箇所に接触してしまうので、スジの発生を抑制するためには、MがLの整数倍にならないようにすることが望ましい。
【0071】
ただし、無端ベルト体5は、そのフレキシブルさゆえに、骨格材8に吊り掛けられた際に、吊り掛けられて骨格材8に接触している上部において、隣り合う骨格材8間で直線を描いており、厳密には円を描いていない。また、骨格材8自体の太さから、吊り掛けられて骨格材8に接触している上部において、厳密には円Dよりも外形が大きい。後者については、無端ベルト体5に代えて円筒体を被加熱体とした場合にも同様である。
【0072】
そのため、上記M及びLの関係は、上記2つの誤差要因を考慮の上で、実際に無端ベルト体5と骨格材8との接触部位の周期が重ならないように、適宜調整すればよい。即ち、本発明においては、被加熱物が支持部材の回転に従動して1回転した際に、回転前に棒状体と接触していた被加熱物の内周面の箇所が、回転後棒状体と接触しない周期となるように、各条件(被加熱物の周長、棒状体が配される円の径、棒状体の本数、棒状体の径等)を設定することが望ましい。
【0073】
ところで、本発明においては、周期が重なって、無端ベルト体5の内周面における同一箇所が骨格材8と接触してしまうような場合であっても、回転ごとに接離を繰り返し、いつでも接触している状態が避けられるため、常に中子である保持具41と接触しているような図12に示される加熱装置のような構成に比して、スジむらの低減効果が期待できる。
【0074】
本実施形態の加熱装置では、保持具1が棒状体である骨格材8で構成されており、しかもその一部だけしか無端ベルト体5と接触していないので熱容量が極めて小さく、無端ベルト体5を加熱した際の熱が支持部材としての治具(保持具1)に奪われることを抑制することができる。そのため、運転時の消費電力を少なくすることができ、省エネルギー化することができる。骨格材8に、耐熱性のある樹脂製のテープを巻いている本実施形態においては、より省エネルギー化することができる。
【0075】
以上のように、本加熱装置の保持具1は複数の骨格材8から構成され、かつ無端ベルト体5を吊り掛けた際に無端ベルト体5の最下部が骨格材8と常に離間した状態になっていることで、スジむらのような外観欠陥発生の抑制と、加熱処理時におけるエネルギーの低減と言う、2つの効果を同時に達成することができる。
【0076】
本実施形態においては、加熱手段が、無端ベルト体5の外周面と間隔を開けて配された赤外線ヒータであるハロゲンヒータ12なので、炉内の昇温に時間がかかり炉内を一定温度に保たなければならない熱風式オーブン等に比べて、加熱源自体の昇温が早く、また、エネルギー効率が遥かに高く、省エネルギー化に資するとともに、処理時間の短縮にも繋がる。
【0077】
加えて、ハロゲンヒータ12における無端ベルト体5側とは反対側の位置に当該ハロゲンヒータ12から放射される赤外線を無端ベルト体5側に反射する反射板13が配されているため、無端ベルト体5の照射面に均一に赤外線を照射することができ、加熱・硬化後の塗膜の外観に垂れやスジ、ピンホールなどの欠陥が生じにくく、また、エネルギー効率が向上するため、省エネルギー化に資することができる。
【0078】
また、本実施形態においては、図7に示されるように、加熱手段としてのハロゲンヒータ12は、骨格材8が位置する円Dの中心点の高さ、すなわち軸心7の高さ(図7中の一点鎖線)よりも下方(矢印E方向)に配されている。そのため、ハロゲンヒータ12は、無端ベルト体5の下方の、骨格材8が接触していない領域に赤外線を効果的に照射することができる。したがって、当該構成によれば、骨格材8に熱が奪われて無端ベルト体5の外周面の塗膜に硬化ムラが発生するのが抑制されるため、塗膜の外観に垂れやスジ、ピンホールなどの欠陥が生じにくく、かつ、省エネルギー化することができる。
【0079】
さらに、本実施形態においては、加熱手段が赤外線ヒータの一種であるハロゲンヒータ12であることから、当然に、電圧の印加によって発熱するとともに、印加する電圧の大きさに応じてその発熱量が増減する物であり、かつ、ハロゲンヒータ12の温度を、印加する電圧の大きさによって制御する制御手段を備えているため、例えば、ハロゲンヒータ12に弱い電圧を印加することで加熱の出力を低下させて温度を制御することが可能となり、加熱源をON−OFF制御する場合と比較して、定温加熱時における無端ベルト体5の温度変化が小さくなる。そのため、塗膜の外観に垂れやスジ、ピンホールなどの欠陥が生じにくく、かつ、省エネルギー化することができる。
【0080】
以上、本発明について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明の加熱装置及び加熱方法は上記実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、無端ベルト体を加熱する場合を例に挙げて説明しているが、本発明は円筒体を加熱する場合においても、その作用及び効果が期待できる。
【0081】
また、支持部材として、12本の骨格材(棒状体)8からなる保持具1を例に挙げているが、棒状体の本数に特に制限はなく、最低2本以上であれば、被加熱物が吊り掛けられて、かつ、それを回転させ得るため、本発明の構成を具備することになる。ただし、安定した回転による塗膜の平滑化の為には、棒状体があまりに少ないのは好ましくなく、最低でも3本以上、できれば4本以上、さらには5本以上の棒状体が配されていることが好ましい。棒状体の形状についても、円筒状に限定されず、円柱状は勿論、楕円筒(柱)状、半円筒(柱)状、その他各種形状の物を用いることができる。ただし、被加熱物との接触面が曲面形状であることが好ましい。
【0082】
さらに、上記実施形態では、画像形成装置の定着部品である定着ベルトにシリコーンゴム層を形成する場合を例に挙げたが、本発明においては、定着ローラは勿論、その他あらゆる円筒体や無端ベルト体の外周面に塗膜を形成する際に好適に用いることができる。なかでも画像形成装置の定着部品は、外周面に高い平滑性が要求され、特にシリコーンゴム層は比較的肉厚で、スジむらや垂れの問題が生じやすいので、本発明の加熱装置及び加熱方法が極めて好適である。
【0083】
さらにまた、上記実施形態では、加熱手段として赤外線ヒータを用いたバッチ方式の例を挙げたが、従来からの熱風方式の加熱手段を用いたり、さらには搬送手段をも備える連続加熱方式に適用することも可能である。勿論これらは、エネルギー効率、処理時間、装置の省スペース化等の観点からは赤外線ヒータに劣るが、支持部材として棒状体を用い、それを回転させつつ加熱し、かつ、支持部材に吊り掛けられた被加熱物の最下部が棒状体と接していない本発明の構成を具備することで、それに応じた省エネルギーを期待できる上、塗膜の垂れやピンホール、スジむらなどの外観不良の発生を抑制する効果も十分に期待できる。
【0084】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の加熱装置及び加熱方法を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の加熱装置乃至加熱方法の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【実施例】
【0085】
次に、上記説明した本実施形態の加熱装置を実際に加熱に用い、本発明の効果を検証した。その検証試験の内容と結果を以下に示す。
【0086】
塗膜の形成に供する無端ベルト体5として、ポリイミド基材(グンゼ製)からなり、円形にした際の内径が147mmφで、幅(軸方向の長さ)が420mm、厚みが110μmの無端ベルト体Aと、円形にした際の内径が80mmφで、幅(軸方向の長さ)が420mm、厚みが90μmの無端ベルト体Bの2種類を用意した。これら基材に、液状のシリコーンゴム(LR3390/30A,B:旭化成ワッカー社)を湿潤膜厚が200μmになるように塗布した後に、本実施形態の加熱装置を用いて加熱処理した。
【0087】
加熱の条件は、設定温度(塗膜表面の検知温度)110℃で、加熱時間を290secとし、保持具1の回転得度は30回転/分(rpm)になるようにした。
【0088】
無端ベルト体5とハロゲンヒータ12との距離は、無端ベルト体Aで50mm、無端ベルト体Bで70mmになるように調節した。
【0089】
昇温は、ハロゲンヒータ12に供給する電圧値を制御する電力調整器の設定で可変し、実際には25%出力の設定で加熱をした。
【0090】
ハロゲンヒータ12には、坂口伝熱社製のコーツヒータ(ハロゲンヒータ)を1262W(100V、12.62A)で用い、全長420mmの内、端部から145mmの部分の配光を135%にアップさせて使用した。
【0091】
保持具1の仕様は、骨格材8として外径6mmφ、内径4mmφのアルミニウム製パイプ12本を130mmφの円形(円D)上に均等な間隔(角度)で配置し、それぞれの骨格材8の外周には、厚さ1.0mmのフッ素樹脂チューブを被覆して使用した。
【0092】
図9に、加熱時における無端ベルト体5外周面に形成されたシリコーンゴム層表面の温度変化の推移を示す。また、図10に、温度が設定温度に到達した際の無端ベルト体5外周面に形成されたシリコーンゴム層表面の温度を、軸心7に平行な方向に3点測定した結果を示す。
【0093】
図10中の0mmの位置は、本加熱装置に無端ベルト体5をセットした際の保持具1の保持板大9a側の端部を示す。また、設定温度が110℃であるのに対して実測値が100℃前後で低く計測されるのは、設定は無端ベルト体5の下方の、ハロゲンヒータ12によって赤外線が照射される側で制御しているが、表面温度の測定は、上部にある上部断熱板16a及び上部保護板16cからなる開閉扉の隙間から行っているため、測定結果の方が低めの値になっている。
【0094】
[比較例1,2]
一方、比較のため、図11及び図12に示す加熱装置によって実施例1と同様の加熱処理を行った。ただし、被加熱物35,45の基材として、円形にした際の内径が75mmφで、幅(軸方向の長さ)が390mm、厚みが90μmの無端状のポリイミド基材(無端ベルト体C)を用いて、上記検証試験と同様に液状のシリコーンゴムを塗布した上で、加熱処理を行った。
【0095】
図11に示す加熱装置(比較例1)は、バッチ処理タイプの箱型の熱風加熱炉(炉内容積:0.22m2、定格出力:4kW、最高温度:250℃)である。
【0096】
当該加熱装置の炉内に、図11に示される如き保持具31に被加熱物35を縦に保持させて入れた。炉内の温度は、120℃及び150℃に設定し、炉内の空気がその温度になっている所に保持具31に保持された無端ベルト体35を投入して加熱した。加熱時間は290secとした。
【0097】
一方、図12に示す加熱装置(比較例2)は、バッチ処理タイプの箱型の筐体内に、本実施形態におけるハロゲンヒータ12及び反射板13と同様のハロゲンヒータ42及び反射板43を用いて、かつ、被加熱物45を保持した保持具41を回転させながら加熱した。
【0098】
ただし、比較例2では、実施例1(前記実施形態)の加熱装置とは、被加熱物45を保持する保持具41の構造が異なっており、詳しくは、保持具41として、無端ベルト体Cの内径よりも外径が少し小さい(74mmφ)円筒状のアルミニウム製パイプを用いている。この保持具41に、図12に示されるように、無端ベルト体Cを巻きつけるようにして保持させている。
【0099】
実際の生産の現場では、無端ベルト体の内径寸法は、一定の規格内でばらついているのが通例であり、全ての無端ベルト体に完全に一致した保持具を用意することは極めて困難である。そのため、保持すべき無端ベルト体の内径寸法の規格の最小値に保持具の外径を合わせることになる。そのため、無端ベルト体の外径によっては、保持具との間に隙間が生じて接触しない部分と接触する部分とが存在することになる。本比較例2では、この状態を再現している。
【0100】
以上の実施例1と、それと比較するための比較例1及び比較例2について、形成されたシリコーンゴム層の塗膜外観を目視により観察し評価した。評価項目は、(1)スジむら、(2)垂れ、(3)ピンホールの発生程度とした。評価基準は、以下の通りである。
【0101】
○:発生率が1%未満である。
△:発生率が1%以上、10%未満である。
×:発生率が10%以上である。
【0102】
なお、ここでいう「発生率」とは、シリコーンゴム表面に発生する、(1)目視で視認できるスジ、(2)下端4mmの範囲に発生する0.2mm以上の高さが変化する垂れ、(3)0.1mmφ以上の大きさのピンホール、等の発生する割合のことである。
【0103】
結果を下記表1にまとめて示す。また、それぞれの加熱源の消費電力量(被加熱物1個当たり)についても併せて示す。
【0104】
【表1】
【0105】
上記表1に示される通り、本発明の構成を具備しない比較例1及び比較例2の加熱装置では塗膜外観と省エネルギーの両方の要求を満足することが難しく、本発明の構成を具備する実施例1の結果で、これらの問題が解決されていることがわかる。
【0106】
比較例1の加熱方法では、被加熱物を縦に置いて加熱しているので、塗装直後に塗膜のシリコーンゴムに垂れが生じていなくても、炉内でシリコーンゴムが加熱されるとその粘度が低下し、被加熱物の上端の塗膜が垂れやすくなる。上端の塗膜が垂れると当該箇所の塗膜の厚みが薄くなる一方、下端部は垂れたシリコーンゴムが溜まり、端部4mm程度の領域は0.2〜0.3mm程度盛り上がった形状になっていた。
【0107】
そこで、比較例1の加熱方法から、温度設定を180℃、加熱時間を290secに変更し、他の条件は同様にして、さらに加熱試験を行ってみた。その結果、シリコーンゴム層が硬化するまでの時間が短くなり、下端部の垂れが確認されたのは端部2mm程度の領域まで緩和されたが、塗膜表面にピンホール状の外観欠陥が発生しているのが確認された(上記表1における評価基準で「×」に相当)。
【0108】
本発明者らの経験では、昇温速度が2.0℃/sec以上になると、塗装時にシリコーンゴムの塗膜内に巻き込んだ空気が抜ける前にシリコーンゴムの最表面が硬化してしまい、その後空気がその硬化した膜を突き破り揮発するため、塗膜表面にピンホール状の外観欠陥が発生する確率が上昇する。したがって、比較例1の加熱装置では、如何に加熱温度を制御しても、垂れによる膜厚の乱れとピンホールが発生するという外観欠陥を共に抑制することが難しい。
【0109】
また、比較例1の加熱装置による加熱方式は、消費エネルギーの観点でも不利な点がある。従来、生産ラインでは休憩時間や被加熱物の種類を変えるときに、段取りなど加熱処理をしていない(炉内が空の)時間がある。しかし、比較例1の加熱装置の如く、熱風を用いた方式の加熱炉は、炉内が所定の温度になるまで時間を要する(一般的には、30〜60分程度)。そのため、炉内が空の時間があっても加熱装置を停止することができず、その間も多くのエネルギーを消費することとなる。従って、被加熱物1個当たりの加熱に要する電力量に換算すると、赤外線ヒータを加熱手段として用いる場合に比べて、格段に電力消費量が大きくなってしまう。
【0110】
一方、比較例2では、既述の如く、無端ベルト体Cと保持具41との間に隙間が生じて接触しない部分と接触する部分とが存在している。両者が接触している部分では、赤外線が照射された際にその熱が保持具41に奪われ無端ベルト体Cに加わる熱が減少する一方、接触していない部分ではそのまま無端ベルト体Cに熱が加わることとなり、双方に温度差が生じる。そのため、シリコーンゴム層が硬化するまでの時間差が生じ、温度の高い部位が先に硬化し、保持具41と接触し温度の低い部位は後で硬化することとなる。そのため、最終的に形成されたシリコーンゴム層の表面に硬化ムラが発生し、スジ状に観察される。
【0111】
比較例2の加熱装置による加熱方式は、加熱手段にハロゲンヒータ42を用いているので、通電後の温度の立ち上がりが早いため無端ベルト体Cを加熱していない時間にはハロゲンヒータ42を停止することが可能となる。そのため、消費エネルギーは比較例1の加熱装置の場合ほどはかからない。しかし、本発明の構成を具備する実施例1の場合と比較すると、保持具41の熱容量が、本実施形態における保持具1よりも大きくなり、当該保持具に奪われる熱量が多くなる。そのため、省エネルギー効果についても実施例1に比して低い結果になっている。
【符号の説明】
【0112】
1:保持具(支持部材)
5:無端ベルト体(被加熱物)
5’:円筒体(被加熱物)
6:つまみネジ
7:軸心
8:骨格材(棒状体)
9a:保持板大
9b:保持板小
10:回転軸
11,19:モータ
11a,11b:プーリ
11c:タイミングベルト
12:ハロゲンヒータ(加熱手段、赤外線ヒータ)
13:反射板(反射部材)
14a:ガイドシャフト
14b:スベリネジ
14c:伝達シャフト
14d:つまみ
15:放射温度計
15a:先覗筒
16:断熱板
16b,16c:保護板
17:排気口
18:支点軸
19a:ギヤ
20:カウンターウエイト
21:センサ
22:スタートボタン
23:ワーク検知センサ
24:構造材
25:金属カバー
26a,26b:メンテナンス扉
30:筐体
31,41:保持具
35,45:被加熱物
42:ハロゲンヒータ
43:反射板
【先行技術文献】
【特許文献】
【0113】
【特許文献1】特開2000−24586号公報
【特許文献2】特開2007−245073号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に、円筒状または無端ベルト状の被加熱物を内側から支持する支持部材と、前記被加熱物に熱を加える加熱手段と、が配された加熱装置において、
前記支持部材が、略水平方向で平行に林立した複数の棒状体で構成されるとともに、当該複数の棒状体が、長手方向から見て1つの円周上に位置するように配されており、
前記複数の棒状体の全てが前記被加熱物の内側に位置するように当該被加熱物を吊り掛けた際に、当該被加熱物の最下部が前記棒状体と常に離間しており、かつ、
前記複数の棒状体が前記円周上を移動するように前記支持部材を回転させる回転手段が備えられている
ことを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記加熱手段が、前記棒状体が位置する円周の中心点の高さよりも下方に配されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記加熱手段が、前記複数の棒状体の全てが前記被加熱物の内側に位置するように前記被加熱物を吊り掛けた際の当該被加熱物の外周面と間隔を開けて配された、赤外線ヒータであることを特徴とする請求項1または2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記赤外線ヒータから放射される赤外線を前記被加熱物側に反射する反射部材が、該赤外線ヒータにおける前記被加熱物側とは反対側の位置に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記加熱手段が、電圧の印加によって発熱するとともに、印加する電圧の大きさに応じてその発熱量が増減するヒータであり、かつ、
前記ヒータの温度を、印加する電圧の大きさによって制御する制御手段
を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項6】
前記被加熱物が、画像形成装置の定着部品としての定着ロールまたは定着ベルトであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の加熱装置を用いて、円筒状または無端ベルト状の被加熱物を加熱する加熱方法であって、
前記複数の棒状体の全てが前記被加熱物の内側に位置するように前記被加熱物を前記支持部材に吊り掛ける吊り掛け工程と、
前記回転手段によって前記支持部材を回転させつつ、前記加熱手段によって前記被加熱物を加熱する加熱工程と、
を有することを特徴とする加熱方法。
【請求項8】
前記被加熱物として、前記支持部材に吊り掛けられた際に、その最下部が前記棒状体と常に離間した状態になる内周長の円筒体または無端ベルト体を用いることを特徴とする請求項7に記載の加熱方法。
【請求項1】
筐体内に、円筒状または無端ベルト状の被加熱物を内側から支持する支持部材と、前記被加熱物に熱を加える加熱手段と、が配された加熱装置において、
前記支持部材が、略水平方向で平行に林立した複数の棒状体で構成されるとともに、当該複数の棒状体が、長手方向から見て1つの円周上に位置するように配されており、
前記複数の棒状体の全てが前記被加熱物の内側に位置するように当該被加熱物を吊り掛けた際に、当該被加熱物の最下部が前記棒状体と常に離間しており、かつ、
前記複数の棒状体が前記円周上を移動するように前記支持部材を回転させる回転手段が備えられている
ことを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記加熱手段が、前記棒状体が位置する円周の中心点の高さよりも下方に配されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記加熱手段が、前記複数の棒状体の全てが前記被加熱物の内側に位置するように前記被加熱物を吊り掛けた際の当該被加熱物の外周面と間隔を開けて配された、赤外線ヒータであることを特徴とする請求項1または2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記赤外線ヒータから放射される赤外線を前記被加熱物側に反射する反射部材が、該赤外線ヒータにおける前記被加熱物側とは反対側の位置に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記加熱手段が、電圧の印加によって発熱するとともに、印加する電圧の大きさに応じてその発熱量が増減するヒータであり、かつ、
前記ヒータの温度を、印加する電圧の大きさによって制御する制御手段
を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項6】
前記被加熱物が、画像形成装置の定着部品としての定着ロールまたは定着ベルトであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の加熱装置を用いて、円筒状または無端ベルト状の被加熱物を加熱する加熱方法であって、
前記複数の棒状体の全てが前記被加熱物の内側に位置するように前記被加熱物を前記支持部材に吊り掛ける吊り掛け工程と、
前記回転手段によって前記支持部材を回転させつつ、前記加熱手段によって前記被加熱物を加熱する加熱工程と、
を有することを特徴とする加熱方法。
【請求項8】
前記被加熱物として、前記支持部材に吊り掛けられた際に、その最下部が前記棒状体と常に離間した状態になる内周長の円筒体または無端ベルト体を用いることを特徴とする請求項7に記載の加熱方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−73071(P2013−73071A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212678(P2011−212678)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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