説明

加熱装置

【課題】高精度の温度制御及びワークの位置決めを簡易な構成で果たすことができる加熱装置を提供する。
【解決手段】加熱炉3内に送られてくるワーク2を位置決め機構37が回転部材22の変位を伴いつつ位置決めし、これに合わせて回転部材22が温度センサ30をワーク2に接触させて、温度センサ30が検出するワーク2の温度に基づいて、位置決めの確認を行う。そして、ワーク2の位置決めを確認した上で、ワーク2に接触した温度センサ30が検出するワーク2の温度を加熱用ヒータ10の制御に用いる。加熱用ヒータ10の制御には、位置決めが確認されたワーク2の温度で、かつ温度センサ30がワーク2に接触して得た温度が用いられるので、ワーク2に対する熱処理を高精度で果たすことが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに対して加熱処理を施す加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱装置の一例として、特許文献1に示される成形装置がある。特許文献1に示される成形装置は、加熱部、成形部(加圧部)、冷却部の順に配置された連続炉の形状を成す成形装置本体を有しており、成型用素材が収容された状態で成形型が、加熱部から成形部に移送される。
成形部には、制御弁を有する作動流体の配管に接続された流体圧アクチュエータと、成形型を圧下する加圧棒と、からなる加圧装置が設けられている。成形部内には、電圧調整器を介して制御装置が接続された加熱手段が収納されている。成形部の壁には筒状部が形成されている。筒状部の孔内には、温度測定装置の長手状の温度検出素子が収容されている。
【0003】
この成形装置では、成形型が加熱部を出て成形部に進入し、成形型が筒状部の孔の上に停止すると、それまで、前記孔の中に退入していた温度検出素子が成形型の孔に侵入して成形型の温度が測定されると共に、その検出値が制御装置に入力される。そして、制御装置は、電圧調整器と制御弁を制御し、加熱手段における発熱量の調整と加圧棒から成形型に付加する圧力の調整とが行われる。
【特許文献1】特公平6−24988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来技術では、成形部(加圧部)において成形型を圧下するものである。このため、上述した従来技術では、成形部(加圧部)内における成形型の移送が所望の位置に確実に行われたことを確認する手段(移送確認手段)を準備する必要があった。そして、移送確認手段を設けると、その分、装置が複雑になり、これに伴いコスト高になってしまうという問題点があった。
【0005】
また、近時、加熱装置にあっては、鉛フリーはんだ付け用の加熱装置のように、高精度の温度制御が要求される場合が多くなってきており、上記問題点に対する改善と共に、この要望に応えることが望まれているというのが実情であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高精度の温度制御及びワークの位置決めを簡易な構成で果たすことができる加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、加熱炉内に送られてくるワークに対して加熱手段を用いて加熱処理を施す加熱装置において、前記ワークを位置決めする位置決め機構と、前記ワークに接触して前記ワークの温度を検出し、検出結果が前記加熱手段の制御に用いられる接触型の温度検知手段と、前記位置決め機構に設けられて前記ワークの位置決めに伴って変位する可動部に連動して前記温度検知手段を前記ワークに接触させる連動接触機構と、を有することを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の加熱装置において、前記加熱炉内に送られてくるワークの温度が前記加熱炉内温度よりも高くなるように前記加熱炉外に予備加熱手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1及び2記載の発明によれば、加熱炉内に送られてくるワークを位置決め機構が可動部の変位を伴いつつ位置決めし、これに合わせて連動接触機構が温度検知手段をワークに接触させて、温度検知手段が検出するワークの温度に基づいて、位置決めの確認を行える。また、ワークの位置決めを確認した上で、ワークに接触した温度検知手段が検出するワークの温度を加熱手段の制御に用いる。加熱手段の制御には、位置決めが確認されたワークの温度で、かつ温度検知手段がワークに接触して得た温度が用いられるので、ワークに対する熱処理を高精度で果たすことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施の形態に係る加熱装置を図1ないし図6に基づいて説明する。
図1ないし図3において、加熱装置1は、ワーク2を加熱するためのはんだ付け炉等の加熱炉3と、加熱炉3の下部側を通過するように配置されてワーク2を図1左から右方向に移送するコンベア4と、を有している。
コンベア4は、無端状に形成された2条のベルト(便宜状、第1、第2ベルト5,6という。)を有している。第1、第2ベルト5,6は、空間部7を空けて平行に配置され、ワーク2を載置し、駆動手段8の作動により回転して、上述したようにワーク2を移送する。
【0009】
加熱炉3の下部側中央部分には、加熱用ヒータ10が配置されている。加熱炉3の外部で、コンベア4の上流側部分(図1左側部分)には、予備加熱用ヒータ11が配置されている。
加熱炉3の天井部12の中央部分には、制御弁13を介して作動流体により作動されるアクチュエータ14が配置されている。アクチュエータ14は、加熱炉3の天井部12の中央部分に配置されたアクチュエータ本体15と、アクチュエータ本体15から加熱炉3内部に垂直に挿入され上下動可能とされた可動軸16と、を備えている。
【0010】
可動軸16は、下方に移動した際、その先端部が、第1、第2ベルト5,6間の空間部7に達するようになっている。可動軸16の先端部の近傍には、第1、第2取付け部材18,19が先端部(図1下側)から基端部(図1上側)に向けてこの順で取付けられている。
第1取付け部材18は、その一部が、可動軸16よりコンベア4の上流側に所定長さ突出して可動軸16に取付けられている。第1取付け部材18のこの突出部分を、便宜状、第1取付け部材突出部20という。
また、第2取付け部材19は、その一部が、可動軸16よりコンベア4の上流側に所定長さ突出して可動軸16に取付けられている。第2取付け部材19のこの突出部分を、便宜状、第2取付け部材突出部21という。
【0011】
第1取付け部材突出部20には、回転部材22が所定回動範囲にわたって回動可能に取付けられている。回転部材22は、略直交して連接される第1、第2辺部23,24からなっており、略L字型をなしている。回転部材22の第1取付け部材突出部20に対する回動可能の取付けは、第1、第2辺部23,24の連接部分25で、ピン26を介して行われている。また、回転部材22は、第2辺部24が可動軸16と略沿い、第1辺部23がコンベア4の上流側に延びるようにして取付けられている。回転部材22の図3反時計方向の回動は、第2辺部24が可動軸16に当接することにより規制される。
【0012】
第1辺部23と第2取付け部材突出部21との間には、回転部材保持ばね27が介在されており、回転部材22を図3時計方向に付勢するようにしている。回転部材22は、通常時、図3(A)に示すように、回転部材保持ばね27のばね力により、第2辺部24が可動軸16に対して所定角αをなすようにされている。
第1辺部23の先端部には、孔28が形成されている。この孔28には、先端側に接触型の熱電対などからなる温度センサ30を保持する軸状のセンサ保持部材31が進退可能に挿入されている。センサ保持部材31における温度センサ30と反対側の端部32と第1辺部23の先端部との間には、接触圧調整用ばね33が介在されている。接触圧調整用ばね33は、温度センサ30とワーク2の接触(後述する)に際し、所望の大きさの接触圧を確保するようにしている。
【0013】
コンベア4の駆動手段8、加熱用ヒータ10、予備加熱用ヒータ11、アクチュエータ14(制御弁13)、温度センサ30、にはコントローラ35が接続されており、コンベア4、加熱用ヒータ10、予備加熱用ヒータ11、アクチュエータ14、の制御を行うようにしている。
本実施の形態では、可動軸16を含むアクチュエータ14、回転部材22及び温度センサ30が位置決め機構37を構成し、可動軸16及び回転部材22が可動部を構成している。また、位置決め機構37の構成要素となっている回転部材22は、連動接触機構を構成している。
【0014】
上述したように構成された、加熱装置1の作用を、コントローラ35の制御内容とともに、図4のフローチャートに基づいて説明する。
まず、コンベア4の駆動手段8が作動されてコンベア4が回転する(ステップS1)。
これに伴い、図3(A)に示すように、上方に退避されていた可動軸16及び回転部材22(可動部)が下降する(ステップS2)。
【0015】
一方、予備加熱用ヒータ11により予備加熱されているワーク2がコンベア4の回転により加熱炉3内に移送され〔図3(B)〕、この移送がさらに進められてワーク2が第2辺部24に接触する(ステップS3)。
ワーク2がさらに移送されて、回転部材22がワーク2に押されて回転し、センサ保持部材31ひいては温度センサ30がワーク2に押し付けられる(ステップS4)。ステップS4では、接触圧調整用ばね33が伸びることにより温度センサ30がワーク2に所望の接触圧で押し付けられる。このように、温度センサ30は、ワーク2に所望の接触圧で押し付けられることによりワーク2の表面温度を適正に検出できるようになる。
【0016】
ステップS4の処理に伴い、温度センサ30によるワーク2の表面温度の検出が行われる(ステップS5)。この際、温度センサ30は、ワーク2からの熱の伝達を受けて、検出温度が、図5に示すように徐々に高くなる。
ステップS5に続いて、温度センサ30の検出温度が位置決め完了判定閾値T0に達したか否かを判定する(ステップS6)。
ステップS6でNOと判定すると、ステップS5に戻る。
【0017】
ステップS6でYESと判定すると、コンベア4の作動を停止する(ステップS7)。
温度センサ30の検出温度に基づいて、ワーク2に対して所望の熱処理を施すようにコントローラ35は加熱用ヒータ10が発熱するように制御する(ステップS8)。
そして、所望の温度(以下、処理基準温度T1という。)で所定時間taにわたって、ワーク2に対する加熱が行われた(加熱完了条件が満たされた)か否かを判定する(ステップS9)。
ステップS9でNOと判定すると、ステップS8に戻る。
【0018】
ステップS9でYESと判定すると、加熱用ヒータ10による発熱を停止するように制御し、かつ、アクチュエータ14を制御して、可動軸16を上昇させ、図3(A)に示す位置に戻す(ステップS10)。
ステップS10に続いて、コンベア4を作動し、ワーク2を加熱炉3から排出し、該ワーク2に対する熱処理を終了する(ステップS11)。
【0019】
上述したように、加熱炉3内に送られてくるワーク2を位置決め機構37が回転部材22(可動部)の変位を伴いつつ位置決めし、これに合わせて回転部材22(連動接触機構)が温度センサ30(温度検知手段)をワーク2に接触させて、温度センサ30(温度検知手段)が検出するワーク2の温度に基づいて、位置決めの確認を行う。そして、ワーク2の位置決めを確認した上で、ワーク2に接触した温度センサ30(温度検知手段)が検出するワーク2の温度を加熱用ヒータ10(加熱手段)の制御に用いる。加熱用ヒータ10(加熱手段)の制御には、位置決めが確認されたワーク2の温度で、かつ温度センサ30(温度検知手段)がワーク2に接触して得た温度が用いられるので、ワーク2に対する熱処理を高精度で果たすことが可能になる。
【0020】
上述したように本実施の形態では、接触型の温度センサ30を用いていることから、ワーク2の温度を精度高く検出することができる。例えば、非接触型の温度検知手段である放射型温度計は、周囲の光の影響を受けやすくて設置位置が限定され、また、ワーク2の表面放射率の影響を受けて精度が劣り、ワーク2の表面放射率に対する補正を行おうとしても、一律的な補正は困難である。この放射型温度計に対して、本実施の形態が採用する接触型の温度センサ30は、安価である上、補正手段を用いることなく、ワーク2の温度を精度高く検出でき、便利である。
【0021】
上記実施の形態では、温度センサ30、位置決め機構37(可動軸16及び回転部材22を含む。)、連動接触機構(回転部材22)が1組、設けられた場合を例にしたが、これに代えて、図6に示すように、空間部7にコンベア4の幅方向に並ぶように、これら〔温度センサ30、位置決め機構37(可動軸16及び回転部材22を含む。)、連動接触機構(回転部材22)〕を2組、設けるようにしてもよい。このように配置することにより、例えば直方体をなすワーク2が図6に示すように第1、第2ベルト5,6の長手方向に対して傾いて移送されても、2組の位置決め機構37による位置決め時にワーク2は、2つの回転部材22に当接して傾きが修正され、良好に位置決めすることができる。また、温度センサ30が2個設けられることにより、その分、温度検知を精度高く行えることになる。
なお、温度センサ30、位置決め機構37(可動軸16及び回転部材22を含む。)、連動接触機構(回転部材22)について3組以上設けるようにしてもよい。
【0022】
上記実施の形態では、予備加熱用ヒータ11を設けた場合を例にしたが、ワーク温度が加熱炉3の内部温度よりも十分低い場合などにおいては、予備加熱用ヒータ11を設けずに、ワークが位置決めされたことの確認を、温度センサ30がワーク温度を検出して果たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態に係る加熱装置を模式的に示す図である。
【図2】図1のコンベア、可動軸、回転部材の配置関係を模式的に示す平面図である。
【図3】図1の加熱装置の作動手順を示し、(A)は可動軸が退避した状態、(B)はワークが回転部材に接触する前の状態、(C)はワークが回転部材に接触した状態を示す図である。
【図4】図1の加熱装置の作用を説明するためのフローチャートである。
【図5】図1の温度センサが検出する温度と閾値との対応関係を示す温度特性図である。
【図6】図1の可動軸及び回転部材等を2組、設ける場合を示す平面図である。
【符号の説明】
【0024】
1…加熱装置、2…ワーク、3…加熱炉、10…加熱用ヒータ(加熱手段)、14…アクチュエータ、16…可動軸(可動部)、22…回転部材(可動部、連動接触機構)、37…位置決め機構、30…温度センサ(温度検知手段)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉内に送られてくるワークに対して加熱手段を用いて加熱処理を施す加熱装置において、
前記ワークを位置決めする位置決め機構と、
前記ワークに接触して前記ワークの温度を検出し、検出結果が前記加熱手段の制御に用いられる接触型の温度検知手段と、
前記位置決め機構に設けられて前記ワークの位置決めに伴って変位する可動部に連動して前記温度検知手段を前記ワークに接触させる連動接触機構と、
を有することを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記加熱炉内に送られてくるワークの温度が前記加熱炉内温度よりも高くなるように前記加熱炉外に予備加熱手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の加熱装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−292387(P2007−292387A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120675(P2006−120675)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】