説明

加熱装置

【課題】三相誘導電器を用いて加熱装置を構成する場合において、装置構成及び組み立てを簡単にする。
【解決手段】3本の脚鉄心部21を三角配置し、それら脚鉄心部21の上端部同士及び下端部同士を連結するヨーク鉄心部22を有する三相誘導電器2と、被加熱物を内部に収容し、三相誘導電器2により直接通電される加熱容器3とを備え、三相誘導電器2の出力端子23が三角配置され、加熱容器3の入力端子31が三角配置され、加熱容器3を三相誘導電器2の上部又は下部に配置した状態において、三相誘導電器2の出力端子23及び加熱容器3の入力端子31が対向するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱装置としては、特許文献1や特許文献2に示すように、鉛、アルミニウム又はステンレス鋼等の被加熱物を収容する加熱容器と、この加熱容器に配設された複数の電極とを備え、複数の電極に電圧を印加することによって、被加熱物に直接通電し、その被加熱物を加熱処理するものがある。
【0003】
一方で本出願人は、特許文献3に示すように、それぞれのコイルを巻装した脚鉄心部を三角形の各頂点に配置(三角配置)し、各脚鉄心の上下両側の端面を継鉄(ヨーク鉄心)で連結することにより構成される三相誘導電器を発明している。そして、上記の三相誘導電器を用いて加熱装置を構成する場合には、三相誘導電器の出力端子と容器に配設された電極の入力端子とを配線ケーブルを用いて接続することが通常である。
【0004】
しかしながら、配線ケーブルを用いて接続する場合には、直接通電加熱装置の構成が複雑になってしまい、また、接続作業が煩雑になってしまうという問題がある。さらに、容器と三相誘導電器とを別々に配置するものであれば、設置面積が大きくなってしまうという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−35316号公報
【特許文献2】特開2009−57253号公報
【特許文献3】特開2009−88422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、三相誘導電器を用いて加熱装置を構成する場合において、装置構成及び組み立てを簡単化することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る加熱装置は、鉄心及び当該鉄心に巻装されたコイルからなる3本の脚鉄心部を三角配置し、それら脚鉄心部の上端部同士及び下端部同士をヨーク鉄心部により連結して構成された三相誘導電器と、被加熱物を内部に収容し、前記三相誘導電器により直接通電される加熱容器と、を備え、前記三相誘導電器の出力端子が三角形の頂点となる位置に配置され、前記加熱容器の入力端子が三角形の頂点となる位置に配置され、前記加熱容器を前記三相誘導電器の上部又は下部に配置した状態において、前記三相誘導電器の出力端子及び前記加熱容器の入力端子が対向するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、加熱容器を三相誘導電器の上部又は下部に配置した状態で三相誘導電器の出力端子及び加熱容器の入力端子を対向するように構成しているので、三相誘導電器の出力端子及び加熱容器の入力端子を簡単に接続することができ、加熱装置の組み立てを簡単化することができる。また、別途配線ケーブルを必要としないので、加熱装置の構成を簡単にすることができる。さらに、加熱容器を三相誘導電器の上部又は下部に配置しているので、加熱装置の設置面積を小さくすることができる。
【0009】
加熱装置の組み立てを一層簡単化するためには、前記三相誘導電器の出力端子が正三角形の頂点となる位置に配置され、前記加熱容器の入力端子が正三角形の頂点となる位置に配置されていることが望ましい。
【0010】
また、加熱容器を均一に加熱するためには、加熱容器の入力端子が、前記加熱容器の側周面に沿って周方向に等間隔に設けられていることが望ましい。
【0011】
三相誘導電器の出力端子及び加熱容器の入力端子を確実に電気的に接触させて加熱容器を直接通電できるようにするためには、前記三相誘導電器の出力端子が上下方向に延びる平板部を有し、前記加熱容器の入力端子が上下方向に延びる平板部を有し、前記加熱容器を前記三相誘導電器の上部又は下部に配置した状態において、前記三相誘導電器の出力端子の平板部及び前記加熱容器の入力端子の平板部が対向するように構成されていることが望ましい。このとき、出力端子及び入力端子の間に平板状の中間部材を介在させて接続しても良いし、出力端子及び入力端子を直接接続するようにしても良い。
【0012】
加熱容器の側壁又は底壁の温度分布を均一化させることによって被加熱物を均一な温度で加熱するためには、前記加熱容器が有底筒形状をなすものであり、前記加熱容器の側壁又は底壁に気液二相の熱媒体が封入されたジャケット室が形成されていることが望ましい。
【0013】
加熱容器内に収容された被加熱物を冷却する又は温度調節を行うためには、前記加熱容器の側壁又は底壁に冷却用流体を流通させるための冷却用流体通路が形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
このように構成した本発明によれば、三相誘導電器を用いて加熱装置を構成する場合において、加熱装置の構成及び組み立てを簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る加熱装置の側面図である。
【図2】同実施形態に係る加熱装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明に係る加熱装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
<装置構成>
本実施形態に係る加熱装置100は、鉛、アルミニウム又はステンレス鋼等の被加熱物を直接通電することによって溶解するものであり、図1に示すように、三相誘導電器2及び加熱容器3を備えている。
【0018】
以下各部について説明する。
三相誘導電器2は、図1及び図2に示すように、鉄心21a及び当該鉄心21aに巻装されたコイル21bからなる3本の脚鉄心部21を正三角形の各頂点に配置(三角配置)し、それら脚鉄心部21の上端部同士及び下端部同士をヨーク鉄心部22により連結して構成されている。つまり、3本の脚鉄心部21は、120度等配されている。より詳細には、3本の脚鉄心部21の中心軸が正三角形の頂点に位置するように配置されている。
【0019】
また、三相誘導電器2の3つの出力端子23は、図2に示すように、三相誘導電器2の中心軸に対して回転対称となるように正三角形の各頂点に配置(三角配置)されており、詳細には、各出力端子23の中心が正三角形の頂点に位置するように配置されている。つまり、各出力端子23の中心は、120度等配され、隣接する脚鉄心部21から等距離の位置に配置されている。
【0020】
各出力端子23は、隣接する2つの脚鉄心部21のコイル21b(U相及びV相、V相及びW相、W相及びU相)の端部が接続された金属製の平板部231を備えている。また、出力端子23の平板部231は、脚鉄心部21の中心軸方向、つまり上下方向に沿って設けられている。
【0021】
加熱容器3は、被加熱物を内部に収容し、三相誘導電器2により直接通電される金属製のものである。また、加熱容器3は、有底筒形状をなすものであり、その側壁の外面に入力端子31が周方向に沿って等間隔となるように設けられている。入力端子31は、図2に示すように、前記三相誘導電器2の出力端子23に対向するように、加熱容器3の中心軸に対して回転対称となるように正三角形の各頂点に配置(三角配置)されている。つまり、各入力端子31の中心は、120度等配されている。また、入力端子31は、断面概略T字形状をなすものであり、その平板部311が出力端子23の平板部231と略平行となるように上下方向に沿って設けられている。
【0022】
そして、加熱容器3を三相誘導電器2上に直接又はスペーサ(不図示)を介して配置、或いは三相誘導電器2の上部に保持部材(不図示)を介して配置した状態において、三相誘導電器2の出力端子23の平板部231と加熱容器3の入力端子31の平板部311とが対向するように構成されている。なお、このとき、加熱容器3の中心軸と三相誘導電器2の中心軸とは略一致している。本実施形態では、三相誘導電器2の出力端子23及び加熱容器3の入力端子31の間に平板状の中間部材4を介して接続している。このように構成することによって、三相誘導電器2と加熱容器3とはデルタ−デルタ結線される。そして三相誘導電器2によって加熱容器3の入力端子31に電圧を印加すると、加熱容器3において各出力端子31間の側壁に電流が流れて、ジュール熱によって加熱容器3が加熱される。これによって内部に収容されている被加熱物を加熱、溶解することができる。
【0023】
なお、加熱容器3の底壁中央部には、溶解した被加熱物を外部に取り出すための取出管(不図示)が接続されている。この取出管は、三相誘導電器2の脚鉄心部21間に形成された空隙内を通るように設けられている。
【0024】
また、本実施形態の加熱容器3は、その側壁に中心軸に沿って上下方向に気液二相の熱媒体が封入されたジャケット室(不図示)が形成されている。これにより、加熱容器3の側壁において上下方向の温度を均一にすることができる。
【0025】
さらに、加熱容器3の側壁に中心軸に沿って上下方向に冷却用流体を流通させるための冷却用流体通路(不図示)が形成されている。これにより、加熱容器3を冷却する場合に自然放冷の場合に比べて冷却時間を短縮することができる。
【0026】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る加熱装置100によれば、加熱容器3を三相誘導電器2の上部に配置した状態で三相誘導電器2の出力端子23及び加熱容器3の入力端子31が対向するように構成しているので、三相誘導電器2の出力端子23及び加熱容器3の入力端子31を簡単に接続することができ、加熱装置100の組み立てを簡単化することができる。また、別途配線ケーブルを必要としないので、加熱装置100の構成を簡単にすることができる。さらに、加熱容器3を三相誘導電器2の上部に配置しているので、加熱装置100の設置面積を小さくすることができる。
【0027】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、前記実施形態では、加熱容器が三相誘導電器上に配置される構成としているが、加熱容器を三相誘導電器の下部に配置する構成としても良い。
【0028】
また、前記実施形態では、三相誘導電器の出力端子及び加熱容器の入力端子を中間板を介して接続しているが、より一層加熱装置の組み立て及び構成を簡単にするためには、三相誘導電器の出力端子及び加熱容器の入力端子が直接面接触するように構成しても良い。
【0029】
さらに、前記実施形態では、加熱容器が金属製からなり、容器全体がジュール熱によって発熱するように構成しているが、加熱容器に複数の電極を設け、この電極によって加熱容器内に収容された被加熱物に直接通電するようにしても良い。
【0030】
加えて、出力端子及び入力端子の形状としては、平板状に限られず、その他、種々の形状にすることができる。
【0031】
その上、前記実施形態では、ジャケット室及び冷却用流体通路は、加熱容器の側壁に形成されたものを例示しているが、ジャケット室及び冷却用流体通路を加熱容器の底壁に形成しても良い。
【0032】
さらに加えて、前記実施形態の加熱容器の底壁は平板状をなすものであったが、湾曲した形状であっても良い。
【0033】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0034】
100・・・加熱装置
2 ・・・三相誘導電器
21a・・・鉄心
21b・・・誘導コイル
21 ・・・脚鉄心部
22 ・・・ヨーク鉄心部
23 ・・・三相誘導電器の出力端子
3 ・・・加熱容器
31 ・・・加熱容器の入力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心及び当該鉄心に巻装されたコイルからなる3本の脚鉄心部を三角配置し、それら脚鉄心部の上端部同士及び下端部同士をヨーク鉄心部により連結して構成された三相誘導電器と、
被加熱物を内部に収容し、前記三相誘導電器により直接通電される加熱容器と、を備え、
前記三相誘導電器の出力端子が三角形の頂点となる位置に配置され、前記加熱容器の入力端子が三角形の頂点となる位置に配置され、
前記加熱容器を前記三相誘導電器の上部又は下部に配置した状態において、前記三相誘導電器の出力端子及び前記加熱容器の入力端子が対向するように構成されている加熱装置。
【請求項2】
前記三相誘導電器の出力端子が正三角形の頂点となる位置に配置され、前記加熱容器の入力端子が正三角形の頂点となる位置に配置されている請求項1記載の加熱装置。
【請求項3】
前記三相誘導電器の出力端子が上下方向に延びる平板部を有し、前記加熱容器の入力端子が上下方向に延びる平板部を有し、
前記加熱容器を前記三相誘導電器の上部又は下部に配置した状態において、前記三相誘導電器の出力端子の平板部及び前記加熱容器の入力端子の平板部が対向するように構成されている請求項1又は2記載の加熱装置。
【請求項4】
前記加熱容器が有底筒形状をなすものであり、
前記加熱容器の側壁又は底壁に気液二相の熱媒体が封入されたジャケット室が形成されている請求項1、2又は3記載の加熱装置。
【請求項5】
前記加熱容器の側壁又は底壁に冷却用流体を流通させるための冷却用流体通路が形成されている請求項1、2、3又は4記載の加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−277963(P2010−277963A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132100(P2009−132100)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】