説明

加熱調理器

【課題】加熱調理器に備わっている部材を用いて位置決め部材を兼用させることができ、部材点数が減り、構成が簡略化し、コストが安くなり、更に、外観も良くなる。
【解決手段】調理器本体1に、前面が開口したグリル庫2と、グリル庫2の前面開口部3を開閉するためのグリル扉4を有するグリル5を備える。調理器本体1の上記グリル庫2の前面開口部3の側方位置に、操作部6を設けた回動体7をその下部を支点として回動可能に取付ける。グリル扉4に位置決め用係合部8を設ける。グリル扉4でグリル庫2の前面開口部3を閉じた状態で、グリル扉4に設けた位置決め用係合部8が該回動体7の回動支点となる軸9に係合してグリル扉4の位置決めがなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器、特に、加熱調理器におけるグリル扉装置の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のグリルを備えた加熱調理器は、加熱調理器の主体を構成する調理器本体に、前面が開口したグリル庫を設け、グリルパンに該グリルパンの前方に延びる部材を介してグリル扉を一体に備え、このグリルパンをグリル扉を手で持って上記グリル庫の前面開口部から内部に引き出し自在に収納し、収納状態で、グリル扉によりグリル庫の前面の開口を閉じるようなっている。
【0003】
上記のような構成のグリルを備えた加熱調理器において、グリル扉を閉じた際に、グリル扉を正確な閉じ位置に位置決めするための技術が従来から特許文献1により知られている。
【0004】
この特許文献1に示された従来例は、グリル扉側又は調理器本体側の一方に雄型の位置決め部材を設けると共に、他方に雌型の位置決め部材を設け、グリル庫の前面の開口をグリル扉で閉じた際に、雄型の位置決め部材と雌型の位置決め部材が係合して、グリル扉の閉じる位置を自動的に補正し、適正な閉じ位置に位置決め保持するようになっている。
【0005】
ところが、上記従来例にあっては、グリル扉側と、調理器本体側にそれぞれ、位置決め部材をわざわざ形成する必要があり、特に、調理器本体側には、構造上必要でない部材である位置決め専用の位置決め部材を別途特別に作成しなければならず、部材点数が増えて構成が複雑となって、コストが高くなり、更に、フォルムがすっきりしないという問題がある。
【特許文献1】実公平4−25087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、加熱調理器に備わっている部材を用いて位置決め部材を兼用させることができ、部材点数が減り、構成が簡略化し、コストが安くなり、更に、外観も良くなる加熱調理器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る加熱調理器は、調理器本体1に、前面が開口したグリル庫2と、該グリル庫2の前面開口部3を開閉するためのグリル扉4を有するグリル5を備え、調理器本体1の上記グリル庫2の前面開口部3の側方位置に、操作部6を設けた回動体7をその下部を支点として回動可能に取付け、上記グリル扉4に位置決め用係合部8を設け、グリル扉4でグリル庫2の前面開口部3を閉じた状態で、上記グリル扉4に設けた位置決め用係合部8が該回動体7の回動支点となる軸9に係合してグリル扉4の位置決めがなされるように構成してあることを特徴とするものである。
【0008】
このような構成とすることで、グリル扉4でグリル庫2の前面開口部3を閉じると、グリル扉4に設けた位置決め用係合部8が、操作部6を設けた回動体7の回動支点となる軸9に係合して、グリル扉4の閉じる位置を自動的に補正し、適正な閉じ位置に位置決め保持することができる。このように、本発明は操作部6を設けた回動体7の軸9を位置決め部材として兼用してグリル扉4の閉じ位置の位置決めができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記のように、グリル扉に設けた位置決め用係合部を、操作部を設けた回動体の軸に係合してグリル扉の位置決めがなされるように構成してあるので、回動体の軸を位置決め部材として兼用してグリル庫の閉じ位置の位置決めができる。このように加熱調理器に備わっている軸をグリル扉を閉じた際の位置決め部材として兼用できるので、部材点数が少なく、構成が簡略化し、コストが安くなる。しかも、操作部を設けた回動体の回動支点と、グリル扉を閉じた際の位置決め部材とが共通の軸により兼用しているので、調理器本体の前面において、上記のように閉じた状態で軸により位置決め保持されているグリル扉と、軸を回動支点とした回動体との相互の位置関係が正確な位置関係となり、相互の位置ずれをなくして、すっきりした一体感を維持できて、外観がよくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0011】
本発明の加熱調理器10は、調理器本体1にグリル5を備えたものである。以下の説明では、加熱調理器10として、ガスこんろ部11を有する調理器本体1にガスを熱源としたグリル5を備えたガス加熱調理器の例で説明するが、本発明における加熱調理器10は、必ずしもガス加熱調理器にのみ限定されず、電気を熱源とする加熱調理器であってもよいのはもちろんである。
【0012】
加熱調理器10(ガス加熱調理器)は、主体を構成する調理器本体1に加熱部であるガスこんろ部11とグリル5を備えたもので、添付図面にはシステムキッチンに装備されるドロップインタイプの加熱調理器10が示してある。
【0013】
調理器本体1の左右方向の中央部にはグリル5が配設してあり、該グリル5は調理器本体1の左右方向の中央部内に配設した前面が開口したグリル庫2と、グリル庫2内を加熱するグリル用ガスバーナ(図示せず)と、該グリル庫2内に配置され且つグリル庫2の前面開口部3から前方に引き出し自在となったグリルパン12と、該グリルパン12の前方に設けられたグリル扉4とでグリル5が構成してある。
【0014】
グリルパン12の前方にグリル扉4を設けるに当たっては、例えば、グリル扉4の下部から背方に向けて支持枠(図示せず)を突設し、該支持枠に上方からグリルパン12を着脱自在に嵌め込んで取付けることで、グリルパン12の前方に連結手段である支持枠を介してグリル扉4が一体に設けられることになる。
【0015】
このグリルパン12の前方に支持枠を介して一体となったグリル扉4を手で持って、グリル庫2の前面開口部3から内部にグリルパン12を入れ、グリル扉4で前面開口部3を閉じるようになっていて、このようにグリル扉4を閉じることで、該グリル扉4が調理器本体1の前面の中央部を構成することになる。
【0016】
図7にはグリル扉4の一例が示してあり、本例では扉本体4aに扉ガラス13と扉裏板14を設けてあって、前方より扉ガラス13を介してグリル庫2内が目視できるようになっている。
【0017】
グリル扉4には位置決め用係合部8が設けてある。図7の実施形態では、合成樹脂の一体成形で形成した扉本体4aに位置決め用係合部8を設けた例を示してある。位置決め用係合部8は例えば、後方が開口した後ろ向きU字状をした溝8aにより位置決め用係合部8を構成してあり、該溝8aの後開口は開口巾が後端に行く程巾広となるように傾斜ガイド8bが形成してある。この溝8aよりなる位置決め用係合部8は合成樹脂により扉本体4aを一体に形成する際に同時に位置決め用係合部8を一体に形成してあり、したがって、位置決め用係合部8を別途形成して取付ける必要がないので、構成が簡略化できる。
【0018】
調理器本体1の中央部のグリル庫2の前面開口部3の両側方位置の下部にはそれぞれ、回動体7が回動自在に配設してあり、回動体7は下部を支点として回動可能となっている。
【0019】
実施例では、調理器本体1の前開口のグリル庫2を配設した部分の側方に配設して取付ける枠体18の下部に回動体7の下部を回動の支点となる軸9により回動自在に取付けてある。枠体18は、図2に示すように、日の字状をしており、下部の開口20に上記のように回動体7が軸9により回動自在に取付けられ、上部の開口21には後述の点火・消火手動操作部15を取付けるようになっている。なお、図2においては、回動体7の前面を構成する前面板を取付ける前の状態を示している。
【0020】
回動体7は側面視で略扇形状又は略三角形状をしており、上面に操作部6が設けてあって、いわゆるカンガルーポケット式操作具を構成している。
【0021】
回動体7は下部を軸支した軸9を支点として図5、図6に示すように前方に突出するように回動させて上面の操作部6を露出させた状態が、操作部6を使用可能とする状態であり、また、軸9を支点として回動体7を上記と逆方向に回動させて、図3、図4に示すように、上面の操作部6を調理器本体1内に収納して外部に露出しないようにした状態が、操作部6の非使用状態であり、この非使用状態においては、回動体7の前面が調理器本体1の前面の他の部分と面一又はほぼ面一となって、該前面が、調理器本体1の前面の左右両側部の下部を構成することになる。
【0022】
調理器本体1の前面の左右両側下部にそれぞれ回動自在に設けられる左右の回動体7の上面に設けられる操作部6は、タッチスイッチ式の入力部16を設けた操作パネル17を回動体7の上面に設けることで構成してある。
【0023】
左右の回動体7にそれぞれ設けた操作パネル17のうち、一方の操作パネル17に設けた入力部16としては、例えば、グリル5に関する操作を行うためのグリル用調理設定入力部16bであり、他方の操作パネル17に設けた入力部16としては、上記複数のガスこんろ部11のうち温度センサ付きガスこんろ部における調理設定の入力を行うためのガスこんろ部用調理設定入力部16aとなっている。
【0024】
上記グリル用調理設定入力部16bとしては、例えば、グリル5の点火・消火操作をするための点火・消火スイッチ、グリル5による調理時間(焼成時間)を設定するためのタイマスイッチ、上火、下火の火力を切換るための火力切替スイッチ、焼成するメニューを選んで該当する焼成物に対応した焼成制御を選択するためのメニュースイッチ、焼き加減を調整するための焼き加減スイッチ、各入力を取り消すための取消しスイッチ等を挙げることができる。
【0025】
また、温度センサ付きガスこんろ部11による調理設定の入力を行うためのガスこんろ部用調理設定入力部16aは例えば、温度センサ付きガスこんろ部11による調理時間を設定するためのタイマスイッチ、揚げ物、炊飯、湯沸し等の調理メニューを設定するためのメニュースイッチ、取消しスイッチ等を挙げることができる。
【0026】
上記の左右の回動体7の下部の回動のための支点である軸9の、グリル庫2の前面開口部3側に位置する外端部が、それぞれ、グリル庫2の前面開口部3の開口縁部の両側下部のやや前方に位置しており、本発明においては、この軸9の外端部が被係合部9aとなっている。
【0027】
また、調理器本体1の前面の側部の上部には複数のガスこんろ部11をそれぞれ個別に点火、消火操作をするための複数の点火・消火手動操作部15が設けてある。
【0028】
点火・消火手動操作部15は、前後方向に移動自在な押釦により構成してあり、各点火・消火手動操作部15は添付図面においては前後方向に移動自在な押釦により構成してあり、点火・消火手動操作部15を構成する押釦は前後方向に移動自在で且つ前方に突出した状態で回動自在となっている。消火状態では点火・消火手動操作部15が後方に押されて押釦よりなる点火・消火手動操作部15の前面が調理器本体1の前面と略面一状態となるように後退状態が保持されている。
【0029】
ガスこんろ部11の使用に当たっては、押釦よりなる点火・消火手動操作部15を押し操作して点火操作をすることで、後退していた点火・消火手動操作部15が前方に突出すると共にガスこんろ部11に点火される。この押釦よりなる点火・消火手動操作部15が前方に突出した状態で点火・消火手動操作部15を指で摘んで回動操作することでガスこんろ部11の火力調整ができるようになっている。一方、消火にあたっては、前方に突出している点火・消火手動操作部15を後方に押し操作することで、ガスこんろ部11の消火を行うと共に、点火・消火手動操作部15の前面が調理器本体1の前面と略面一状態となるように後退状態で保持される。
【0030】
上記のような構成の加熱調理器10において、グリル5の使用に当たっては、グリル扉4を手前に引き出すことで、支持枠を介して一体となったグリルパン12をグリル庫2の前面開口部3から引き出し、グリルパン12あるいは、支持枠に支持した焼き網や加熱容器等に被調理物を載せ(あるいは入れ)、その後、グリル扉4を手に持ってグリル庫2の前面開口部3から内部にグリルパン12を入れ、グリル扉4で前面開口部3を閉じるものであり、この際、図1に示される位置決め用係合部8を構成する後ろ向きU字状をした溝8aが、軸9の外端部の被係合部9aに係止してグリル扉4の上下方向の位置決めが行われ、グリル扉4が適正な閉じ位置となるように自動的に補正して位置決めして保持される。このグリル扉4の位置決め保持操作に当って、溝8aの後開口に傾斜ガイド8bを設けておくことで、溝8aを軸9の外端部の被係合部9aにスムーズに嵌め込んで係合して位置決めすることができる。
【0031】
このように、本発明においては、回動体7の回動の支点となる軸9の外端部を被係合部9aとして位置決め用係合部8と係合自在としているので、グリル扉4を閉じた場合における位置決めを行うための部材として、加熱調理器10に備わっている回動体7の軸9を兼用することができ、この結果、調理器本体1側に特別に別途位置決め部材を取付ける必要がなく、部材点数が少なくなり、構成が簡略化するものであって、コストが安くなる。
【0032】
また、回動体7は、軸9により調理器本体1側に対して位置決めされて回動自在に取付けられているので、この回動自在な回動体7を調理器本体1側に対して位置決めして取付けるための手段である軸9が、そのままグリル扉4を後方に移動して閉じた際における位置決め手段を兼用しているので、回動体7を軸9を支点として回動することで、回動体7を閉じた状態における回動体7の前面と、軸9を位置決め手段としてグリル扉4を閉じた状態におけるグリル扉4の前面との相互の位置関係が、共通の位置決め手段である軸9により相互に適性な位置関係となり、すっきりした一体感を維持できて、調理器本体1の前面の外観がよくなる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の加熱調理器を示し、グリル扉を閉位置から手前に少し引き出した状態を示す斜視図である。
【図2】(a)は同上に用いる回動体を軸により回動自在に枠体に取付けている状態を示す一部省略正面図であり、(b)は同上の断面図である。
【図3】同上の加熱調理器のグリル扉を閉じ且つ回動体の操作部を非露出状態とした状態の斜視図である。
【図4】(a)は同上の平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は側面図である。
【図5】同上の加熱調理器のグリル扉を閉じ且つ回動体の操作部を露出状態とした状態の斜視図である。
【図6】(a)は同上の平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は側面図である。
【図7】グリル扉を示し、(a)は側面図であり、(b)は背面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 調理器本体
2 グリル庫
3 前面開口部
4 グリル扉
5 グリル
6 操作部
7 回動体
8 位置決め用係合部
9 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器本体に、前面が開口したグリル庫と、該グリル庫の前面開口部を開閉するためのグリル扉を有するグリルを備え、調理器本体の上記グリル庫の前面開口部の側方位置に、操作部を設けた回動体をその下部を支点として回動可能に取付け、上記グリル扉に位置決め用係合部を設け、グリル扉でグリル庫の前面開口部を閉じた状態で、上記グリル扉に設けた位置決め用係合部が回動体の回動支点となる軸に係合してグリル扉の位置決めがなされるように構成してあることを特徴とする加熱調理器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−17393(P2010−17393A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181534(P2008−181534)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(301066992)株式会社ハーマンプロ (145)
【Fターム(参考)】