説明

加熱調理器

【課題】グリル扉の透明窓からの熱放散を抑制し、グリル加熱室の熱効率を向上させた加熱調理器を得る。
【解決手段】加熱調理器100は、グリル加熱室20の前面開口を開閉自在に閉じるグリル扉40のガラス窓120の表面に、酸化チタン等の金属性熱線反射皮膜が形成されており、またグリル加熱室20の内側壁面には、電気ヒータ等による加熱に伴う温度上昇によって調理に有効な波長域の赤外線の放射を促進する赤外線放射皮膜を施している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱調理器、特に、引き出し動作又は回動動作により前方開口が開放されるグリル扉を有するグリル室を備えた加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
システムキッチン家具や流し台に組み込まれたり、キッチンキャビネット等の上にセットされたりする加熱調理器は、上面に載置された被加熱物を加熱するための加熱手段(誘導加熱コイル、輻射加熱式電気ヒータ、ガスバーナ等)と、側面から内部に挿入された被加熱物を加熱するためのグリル加熱室(電気ヒータ、ガスバーナ等が設置されている)と、を有している。そして、グリル加熱室には被加熱物を出し入れするためのトレー(その他例としては、更に魚等を載置するための載置網も設置されている)が配置され、トレーとグリル扉は一体化しているから、トレーをグリル加熱室に押し込んだ際、グリル扉によ
ってグリル加熱室はシールされる。また、グリル扉には取っ手が設けられ、トレーの出し入れを容易にしている。
【0003】
したがって、調理者は取っ手に手を掛けて、トレーを出し入れしたり、グリル加熱室を閉じたりすることができる。また、グリル加熱室には外気が吸引されると共に、加熱に伴って発生した煙等は所定の排気口から排出されている。通常、調理者が立つ側(前方に同じ)から吸気し、調理者から離れた側(後方に同じ)から排気されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−349878号公報(第1−2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された発明は、グリル加熱室からグリル扉自体を透過して外部へ放出される輻射熱を積極的に抑制しようとする工夫はない。特に、グリル扉には通常グリル加熱室の内部を覗けるような透明窓(覗き窓)があり、この覗き窓を構成するガラス板からの輻射による熱漏洩が大きい。またグリル加熱室の内部において被加熱物に対する赤外線の量を増大させる特別な工夫もされていないため、結局、グリル加熱室における熱効率が悪く、また被加熱物の焼きむらを発生させる大きな原因ともなっていた。
【0006】
本発明は、前記に鑑み、グリル扉から外部に対する輻射による不要な熱漏洩を抑制することを第1の目的とし、グリル加熱室における赤外線放射量を増大させるようにすることを第2の目的とした加熱調理器を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の目的に係る加熱調理器は、被加熱物を収納自在なグリル加熱室と、該グリル加熱室の前方に設置された開閉自在なグリル扉と、前記グリル加熱室を加熱する発熱体とを具備し、前記グリル扉にはグリル加熱室の内部を透視可能なガラス板で覆われた覗き窓を設け、当該覗き窓のガラス板には、グリル加熱室内からの赤外線を反射し、覗き窓からの放射伝熱を抑制する熱線反射皮膜が形成されていることを特徴とする。
また本発明の第2の目的に係る加熱調理器は、被加熱物を収納自在なグリル加熱室と、該グリル加熱室の前方に設置された開閉自在なグリル扉と、前記グリル加熱室を加熱する発熱体とを具備し、前記グリル扉にはグリル加熱室の内部を透視可能なガラス板で覆われた覗き窓を設け、当該覗き窓のガラス板には、グリル加熱室内からの赤外線を反射し、覗き窓からの放射伝熱を抑制する熱線反射皮膜が形成され、前記グリル室の壁面内側には、遠赤外線放射被覆が施されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、グリル扉から外部に対する不要な熱放射を抑制することができ、またグリル加熱室における赤外線放射量を増大させることが可能となるため、熱エネルギーの利用効率の良い加熱調理器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(加熱調理器)
図1および図2は本発明の実施形態に係る加熱調理器を模式的に示すものであって、図1は一部を削除した斜視図、図2は側面視の断面図である。
なお、以下のそれぞれの図において、同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。また、複数の部材であって、符号に「a、b、あるいはc等」を付記するものについて、共通する内容を説明する際には、符号に付した「a、b、あるいはc等」を削除して、その一方の部材について説明する。
図1および図2において、加熱調理器100は、略直方体の函体である本体10と、本体10の内部に設けられたグリル加熱室20と、グリル加熱室20に挿入自在な載置皿30と、載置皿30の前方(図2において左側)に設置されたグリル扉40と、グリル加熱室20の後方開口部に連通する排気手段60と、本体10の上面に形成された天板70と、天板70に連続して外周に向かって突出する枠体80と、を有している。
【0010】
(グリル加熱室)
グリル加熱室20は、薄板鋼板などを折り曲げや接合して略直方体状に形成された筐体の内部に形成された空間であって、前方(図2において左側)に前方開口部21と、後方(図2において右側)に後方開口部22が形成され、天井近くに輻射式電気ヒータである上ヒータ23と、底面近くに同じく輻射式電気ヒータである下ヒータ24と、がそれぞれ配置されている。
そして、本体10の上面の後方(天板70の後方に同じ)に排気口64が形成され、排気口64とグリル加熱室20の後方開口部22とを連通する排気風路63が設けられている。なお、排気風路63には触媒還元作用で排気を浄化する浄化フィルター61と送風機62とが配置されているから、被加熱物(たとえば、魚)の加熱によって発生した煙や臭いが分解され、発生した熱気や蒸気等は排気口64から排出されることになる。
【0011】
またグリル加熱室20の内部や外部には、その加熱室の雰囲気温度を検出する温度センサーと、この温度センサーからの温度検出情報に基づき、上ヒータ23と下ヒータ24の通電状態(通電火力や通電形態、例えば断続的反復的通電や連続通電など)を制御する制御装置が設置されている。また後述する加熱体72a、72b、72cとは別個に通電状態が制御されるようになっている。なお、上ヒータ23と下ヒータ24との通電状態は本体10の天板操作部81に設置されている各種スイッチで操作できるようになっている。天板操作部81には、上ヒータ23と下ヒータ24並びに加熱体72a、72b、72cとの通電時間を、それぞれ独立して所定時間だけに制限するタイマースイッチ(図示せず)がある。
【0012】
グリル加熱室20の内側壁面の内、天井面を除く4面、すなわち、右側面、左側面、背面(後面)及び底面の全体に亘り、赤外線放射塗料が25μ程度の厚さに塗布されている(この実施の形態では25±10μに設定)。
【0013】
(グリル扉)
グリル扉40はグリル加熱室20の前方開口部21を覆うものであって、前面(図2において左側の面)には、縦断面形状が庇状になっている取っ手50が設けられている。したがって、調理者は取っ手50に手を掛けて載置皿30をグリル加熱室20に出し入れすることができる。また、載置皿30を最も奥に押し込んだとき、グリル扉40はグリル加熱室20の前方開口部21の周囲に気密的に密着するものである(正確には、後記する吸気孔45a、45bに限って通気性がある)。
なお、グリル扉40にはガード体110(図7以降に図示する)が取り付けられるものであるが、これらについては別途詳細に説明する。
【0014】
(載置皿)
さらに、グリル扉40の裏板42には、金属製の載置皿30を支持する金属製の皿支持フレーム31が固定または傾動自在に設置されている。皿支持フレーム31はグリル加熱室の側壁に形成された固定側部材であるフレームガイド(図示しない)に案内されて、これの上を自在に摺動するものである。
【0015】
なお、載置皿30の上方には、被加熱物を直接載置するための載置網32が配置されるが、載置網32を載置皿30の上縁で支持するようにしても、皿支持フレーム31で支持するようにしてもよい。さらに、載置皿30自体に皿支持フレーム31に相当する部位を形成してもよい。
【0016】
また載置皿30は、その表面全体がホーロー皮膜などの電気絶縁性被覆が施されており、ホーロー皮膜に代えてグリル加熱室20の内側壁面に用いたような赤外線放射塗料を塗布しても良い。
【0017】
(天板)
天板70の上面には、鍋載置サークル71a、71b、71c(以下まとめて「鍋載置サークル71」と称する場合がある)が描かれ、天板70の下面でそれぞれの直下に加熱体72a、72b、72c(以下まとめて「加熱体72」と称する場合がある)が設置されている。加熱体72a、72b、72cは、本体10の前面に設けられた前面操作部11に設置されている電源スイッチ73a、73b、73cによって、あるいは枠体80の前方に設けられた天板操作部81に設置されている電源スイッチ74a、74b、74c(図1では代表符号74)によって、操作されるものである。なお、操作や調理の状態は、天板70に設けられた表示部75、例えば天板70の下方に設置された液晶画面により天板70の上へ文字、数字、記号、図形、イラスト等で表示されるから使用者は天板70の上方から視認できる。
【0018】
前記加熱体72a、72bは、何れも誘導加熱式加熱体であり、後部中央位置にある加熱体72cは誘導加熱式加熱体又はラジアントヒータ等で知られる輻射式電熱体である。
【0019】
(グリル扉)
図3〜図6は、本発明の実施形態に係る加熱調理器におけるグリル扉を模式的に示すものであり、図3の(a)は取っ手50部分を分離して示す斜め前方から後方に向かって見た斜視図、図3の(b)は平面視の断面図、図4は斜め後方から前方に向かって見た斜視図、図5は風路を示す斜視図、図6の(a)は側方から見た中央部の断面図、図6の(b)は側方から見た側部の断面図である。
【0020】
(グリル扉)
図6において、グリル扉40は、前面上側の金属製又はプラスチック製表板41および前面下側にある金属製又はプラスチック製前板45と、後面にある金属製又はプラスチック製の裏板42と、表板41および前板45の外周と裏板42の外周とを連結する金属製又はプラスチック製の外周板43と、を有する函体である。
【0021】
表板41には、その中央に横長形状(長方形)の形をした覗き窓である透明窓41w(図6において複斜線が付されている)が形成されている。この透明窓は、外形形状が矩形である耐熱性板ガラス(フロートガラスともいう)から形成されており、すなわち、透明窓41wを除く裏面全体には不透過性の耐熱塗装が施されており、透明窓41wの部分だけは当該耐熱性塗装を施していないので、透明性が確保されている。そして、表板41の下端部41cは、前板45の上端部に形成された垂直方向の溝に挿入されてネジ等の固定手段(図示せず)で固定されている。
【0022】
前記裏板42は外形形状が矩形であって、中央部には横長長方形の開口部42wが形成され、表板41に対してシール材121、221を介して略平行に配置されている。そして、裏板42の外周から前方へ一体に伸びている外周板43(略矩形筒状)と、開口部42w(内周に同じ)から前方へ一体に伸びている内周板44(略矩形筒状)と、を有している。
【0023】
そして、透明窓41wの後面には内周板44の前端面がシール材121、221を介して当接しているから、表板41と、裏板42と、外周板43上部のコ字状の範囲と、内周板44の上側と、シール材121、221、とによって囲まれた上部ドアー空間49Uが形成されている。
【0024】
また、前板45と、裏板42と、外周板43下部のコ字状の範囲と、内周板44の下側と、シール材121、221、とによって囲まれた下部ドアー空間49Lが形成されている。
すなわち、グリル扉40には、上部ドアー空間49Uおよび下部ドアー空間49Lの2つの空間が区画形成されている。
【0025】
前記内側透明窓120を形成する耐熱性ガラスの表面側(グリル加熱室20の雰囲気が直接接触する面と反対側)全体には、熱線反射率を向上させるための金属製薄膜、例えば酸化チタンあるいは酸化スズを材料とする反射被覆が形成されている。これら酸化皮膜はガラス表面が高温状態のままCVD(Chemical Vapor Deposition)製法によってガラス板表面に完全に一体化されるようにコーティングされる。
【0026】
(通気孔)
図3の(a)において、グリル扉40の前板45の前面には前方に突出する取っ手50が設けられており、前板45の側方寄りに貫通する吸気孔45a、45bが形成されている。なお、図3において、吸気孔45a、45bは6個の丸孔を示しているが、その数量や形状はこれに限定されるものではない。また本発明を実施する上ではこの吸気孔45a、45bは必須の構成でもない。
【0027】
図4において、グリル扉40の裏板42には側方吹出孔46および中央吹出孔47が形成されているが、本発明を実施する上ではこれら吹出孔46や中央吹出孔47は必須の構成でもない(これについては別途詳細に説明する)。
【0028】
なお、「前板45の側方寄り」とは、使用者が取っ手50に手を掛けた際、手の位置に一致しない範囲を指し、たとえば、前板45の幅方向の中央範囲である約100〜150mmを除く部分で、表板41の側縁41a、41b寄りの範囲を指している。 したがって、図3に示すような表板41の全幅に渡る取っ手50においては、取っ手50の中央範囲である約100〜150mmを除く、側縁41a、41b寄りの範囲を指している。あるいは、取っ手50が表板41の幅方向の中央範囲である約100〜150mmの範囲に設置された場合には、取っ手50を除く側縁41a、41b寄りの範囲を指している。
【0029】
(取っ手)
取っ手50は、前板45の略全幅に渡って設置されるものであって、取っ手50の端部50a、50b(手掛け部52の端部52a、52bに同じ)が、それぞれ前板45の左右両側縁に設置(ネジなどで固定接続)されている。
取っ手50は、前板45の前方に向かって略水平に伸びたフランジ部51と、前板45に略平行(正確にはアーチ状)で上下方向に伸びた手掛け部52と、前板45の前面に当接する後面壁55と、が一体に形成された側面視で断面略h字状である。そして、手掛け部52と後面壁55とを連結する一対の仕切壁53a、53bが、所定間隔を空けて設置されている。
さらに、側方寄りで、取っ手50のフランジ部51と後面壁55とが交わる角部に、フランジ部51を上下に貫通するように、細長形状のスリット90が形成されている。
【0030】
(取っ手空間)
したがって、手掛け部52および後面壁55の中央部と一対の仕切壁53a、53bとによって囲まれ、上方をフランジ部51の中央部によって覆われた中央取っ手空間59c(略四角柱状)が形成されている。
また、手掛け部52および後面壁55の側方寄り部と一方の仕切壁53aとによって囲まれ、上方をフランジ部51の側方寄り部によって覆われた側方取っ手空間59a(略直角三角柱状)が形成され、同様に、手掛け部52および後面壁55の側方寄り部と他方の仕切壁53bとによって囲まれ、上方をフランジ部51の側方寄り部によって覆われた側方取っ手空間59b(略直角三角柱状)が形成されている。
【0031】
(透孔)
そして、略直角三角柱状の側方取っ手空間59a、59bにおける後面壁55に、透孔56a、56bが形成されている。取っ手50が設置された状態で、透孔56a、56bはそれぞれ吸気孔45a、45bに一致し、透孔56aと吸気孔45aとによって、透孔56bと吸気孔45bとによって、それぞれ通気路が形成されるようになっている。すなわち、グリル扉40の下部ドアー空間49Lに通ずる吸気通路になる。したがって、台所等の室内の空気は、側方取っ手空間59a、59bから、前記吸気通路を経由してグリル扉40の下部ドアー空間49Lに吸引される。
【0032】
また、取っ手50は、正面視において、吸気孔45a、45bが手掛け部52に覆われているから、直接視認することができない。
そして、平面視において前方中央に行くに従って徐々に突出した「アーチ形状」であるため、手掛け部52の端部50a、50bに近い範囲は、手掛け部52と後面壁55との間隔が狭くなり、使用者が手指を掛けることが困難になっている。すなわち、使用者の手指が側方取っ手空間59a、59bに侵入しないため、調理の際、吸気孔45a、45bが塞がれるおそれがない。また、万一、グリル加熱室20の圧力が上昇して熱気が逆流し、連通している吸気孔45aおよび透孔56a、あるいは連通している吸気孔45bおよび透孔56bから側方取っ手空間59a、59bに熱気が流出した場合であっても、下方
のみが開口しているから、かかる熱気は下方に向かって流れ出し、使用者の手指に熱気が触れることがない(図6の(b)参照)。
【0033】
また、仕切壁53a、53bによって中央取っ手空間59cが形成されているから、使用者が仕切壁53a、53bよりも側方に手指を掛けること、あるいは、手指を側方に移動させることがさらに困難になっている。
なお、取っ手50は断面略h字状であって、下方が開口した函体であるから、大きな断面二次モーメントを具備するものであるが、仕切壁53a、53bを設けたことによって、剛性がさらに大きくなっている。また、取っ手50(含む、仕切壁53)は前板45と一体的に成形してもよい。
【0034】
(吹出孔)
図4において、グリル扉40の裏板42の側縁42a、42b寄りの範囲に、貫通する側方吹出孔46a、46b(以下まとめて「側方吹出孔46」と称する場合がある)と、裏板42の中央範囲に、貫通する中央吹出孔47と、が形成されている。
【0035】
図4および図5において、側方吹出孔46は、前板45に形成された吸気孔45a、45bと同様に「側方寄り」に配置されているものの、吸気孔45a、45bとは上下方向で位相が一致していない(ズレている)。このため、透孔56aおよび吸気孔45aと透孔56bおよび吸気孔45bとを通過した吸気(空気)は、側方吹出孔46に直接侵入することはなく、裏板42に衝突して下部ドアー空間49Lに充満した後、側方吹出孔46および中央吹出孔47からグリル加熱室20に吹き出すことになる。
【0036】
このとき、中央吹出孔47の開口面積が側方吹出孔46の開口面積より大きくなっているから、吸気の吹き出しが吸気孔45a、45bに近い側方吹出孔46に集中することがない。したがって、吸気孔45a、45bから遠い中央吹出孔47からの吹き出し量が確保されるから、グリル加熱室20の全幅に渡って、比較的均一な風流れが形成される。なお、ここでいう「風流れ」とは、グリル加熱室20の内部に蓄えた熱気を積極的に排出するようなものではなく、グリル加熱室20の内部気圧が、その温度上昇によって徐々に上昇することに伴い、排気風路63に熱気の一部が徐々に排気されるから、この排気を補う程度の空気の流れをいう。
【0037】
また、後面壁55の左右両端部に形成された透孔56aおよび吸気孔45aの通路と、透孔56bおよび吸気孔45bの通路とが、グリル扉40の外部からドアー空間49に通ずる吸気通路になるから、室内の新鮮な空気が吸気となって下部ドアー空間49Lに充満するから、かかる吸気によって透明窓41wや取っ手50が冷却されることになる。
【0038】
なお、図4において、側方吹出孔46および中央吹出孔47はそれぞれ長穴であるが、その形状、数量さらに、配置の範囲をこれに限定するものではない。たとえば、それぞれを複数の丸孔によって構成してもよい。このとき、当該丸孔の単位面積当たりの形成数あるいは開口面積(丸孔の直径)を、中央吹出孔47の方が側方吹出孔46よりも、密にあるいは大きくしておけば、グリル加熱室20において全幅に渡る均一な風流れが形成される。
【0039】
また、裏板42の全幅に渡って側方吹出孔46および中央吹出孔47を形成してもよい(このとき、側方吹出孔46および中央吹出孔47の境界が明確でなくなる)。このとき、かかる吹出孔の開口面積(丸孔のとき、その直径)を、裏板42の中央に近づく程大きく、あるいは、かかる吹出孔同士の間隔を中央に近づく程狭くしておけば、グリル加熱室20において全幅に渡る均一な風流れが形成される。 さらに、下部ドアー空間49Lに、風流れを誘導する誘導板(いわゆる「邪魔板」)やオリフィスを形成して、吹き出す空気の流れを均一にしてもよい。但し、グリル加熱室20の内部に蓄えた熱気を積極的に排出するようなものではないため、そのような風流れを過剰に大きくするとグリル加熱室20の熱効率を低下させることになるから注意が必要であり、この発明を実施する上で、これら側方吹出孔46および中央吹出孔47の何れも必須のものではない。
【0040】
(シール用パッキン)
図4において、裏板42の外周にそって、矩形環状にシール用パッキン48が設置されている。シール用パッキン48はグリル扉40を後方に押し込んだ際、グリル加熱室の前方開口部21の周囲に気密的に当接するものであって、吸気孔45a、45b以外の個所から空気がグリル加熱室に侵入しないようにシールしており、断面が真円形や楕円形又は2重の円形などの形状になっている。
【0041】
(ガード体)
図7〜図9は、グリル扉に任意に取り付けられるガード体を模式的に説明するものであり、図7は正面図、図8は側面視の断面図、図9は取り付け要領を示す斜視図である。
図7〜図9において、ガード体110は全体が金属線から形成されている。ガード体110は、前方にあって互いに所定(たとえば、5〜6mm)の対向間隔で平行で、かつ水平に伸びる複数(たとえば、10本)の横棒110aと、横棒110aの左右両端部を一体化する垂直に伸びる複数の縦棒110bと、各横棒110aの左右両端部にそれと直角に接読され後方に向かって水平に伸びた複数の側棒110cと、から構成されている。
すなわち、正面視および側面視において、それぞれ梯子状を呈している。
【0042】
(ガード体の前脚および後脚)
そして、側棒110cのうち最上段に位置する一対の側棒110cは、連結棒110dによって連結され、横棒110aのうち最下段に位置する横棒110aには前脚110eが連結され、前脚110eには連結片113によって後脚110fが連結されている。
すなわち、前脚110eは一対の縦片111eと1本の横片112eとから構成され、正面視でコ(U)字状を呈する。後脚110fは一対の縦片111fと1本の横片112fとから構成され、正面視でコ(U)字状を呈する。そして、左右一対の縦片111eと縦片111fとは、それぞれ上下2箇所で連結片113によって連結されている(連結片113は左右の上下に配置され、合計4本ある)。
【0043】
(ガード体の取り付け)
ガード体110の後脚110fは、取っ手50に形成された細長形状の前記スリット90に上方から挿入され、このとき、前脚110eは取っ手50のフランジ部51の前面に当接する。したがって、ガード体110は、取っ手50のフランジ部51を前脚110eと後脚110fとでもって前後から弾力的に挟み込む形に設置されている。
これによりガード体110は、ネジなどを用いることなく、後脚110fをスリット90に押し込むことによりグリル扉40の前方位置に固定することができる。 なお、このとき、連結片113は取っ手50のフランジ部51の上面に当たっており、ガード体110の後脚110fをスリット90に上方に挿入した際の「位置決めストッパー」になっている。よって、ガード体110をスリット90に行き止まりまで挿入すれば丁度所定位置になり、後述する通り、グリル扉40の透明窓41wの前面全体を所定間隔を置いて覆うことになる。
【0044】
また、横棒110a、縦棒110b及び側棒110cはそれぞれ1本の線材で別々に、所定の長さに切断して接続するのではなく、例えば、横棒110aの左右両端部を直角に折り曲げ、横棒110aと側棒110cとを、1本の線材をコ字状に折り曲げられた一体物にするようにしても良い。
また前脚110eを最下段の横棒110aだけでなく、複数あるいは全ての横棒110aに連結し、かつ、後脚110fを上方に延長して連結棒110dに連結することにより、ガード体110の全体強度(特に、前脚110eおよび後脚110fの剛性)を更に増すようにしても良い。
なお、図中、110gは1つの側棒110cの後端をU字型に折り曲げて隣合う側棒110cに連続した折り曲げ部である。
【0045】
前記ガード体110は、複数(たとえば、10本)の横棒110aの相互間隔が上記したように所定(たとえば、5〜6mm程度)に設定されており、前方から使用者の指がその間に挿入できないようになっている。
また、ガード体110は、グリル扉40の前方位置に取り付けた状態で、ガード体110がグリル扉40の透明窓41wの前面全体を所定間隔を置いて覆う大きさに形成されている。したがって、透明窓41wがグリル加熱室20内部の高熱(最高時には250℃〜350℃にもなる)を受けて高温になったとしても、このような高温部に対する使用者の不用意な接触を防止することができる。
また、ガード体110は、グリル扉40の前板45や表板41との接触面積が小さいため、前板45や表板41がグリル加熱室20からの熱で熱せられて高温なっても、ガード体110自体の温度を比較的低く抑えることができる(例えば、グリル加熱室20が300℃の状態でも、横棒110aの温度は50℃以下)。
【0046】
なお、ガード体110自体を熱伝導性の低い材料(例えばプラスチック)で形成することや、ガード体が金属製であってもそのガード体110の主要部表面を全て熱伝導性の低い材料で覆う(例えば、塗装で皮膜付けることを含む)こと、又は表面に細かい繊維の起毛処理を施すなどの工夫により、使用者が触れた場合の温度感覚を緩和させ、調理器の使用の快適性や安心感を増大させることも考えられる。
【0047】
(グリル扉のバリエーション)
以上、理解を容易にするため、グリル扉40は表板41、裏板42、前板45等で形成され、取っ手50は前板45に設置(接続)されるものとして説明しているが、かかる構成部材(構成する部分に同じ)は、それぞれ別体のものを相互に接続したものであっても、一枚の板材を成形したものであってもよい。たとえば、裏板42と外周板43と内周板44とは、一体的に成形(たとえば、プレス成形や鋳造)しても良い。
【0048】
(加熱体のバリエーション)
また、複数の加熱体72(図2参照)の一部として、高周波数電流が流れるコイルであって、被加熱物を電磁誘導によって加熱するものを示しているが、本発明はこれに限定するものではなく、また、これを必須とするものではない。たとえば、1つの加熱体72が、電熱ヒータやガスバーナ等であってもよい。このとき、加熱体の形式に応じて、天板70が撤去され、電源スイッチ73、74の形式が変動することになる。また、グリル加熱室20のみにおいて調理し、天面に加熱手段を具備しないものであってもよい。
さらに、グリル加熱室20には、上ヒータ23および下ヒータ24が配置されたものを示しているが、本発明はこれに限定するものではない。たとえば、上ヒータ23および下ヒータ24の一方のみが配置されたものであってもよい。なお、上ヒータ23および下ヒータ24はシーズヒータに限定されず、例えばニクロム線やハロゲンヒータ等の他の電気発熱体であっても、またガスバーナ等の別方式の熱源であってもよい。
【0049】
図10は、本発明の実施形態に係る加熱調理器100を、システムキッチン家具や流し台の厨房家具KCに組み込んで使用している状態を示す側面視の一部断面図である。K1は厨房家具の上面壁K2の中央に予め形成された方形の設置穴で、加熱調理器100の設置状態ではその背面と底面下方には所定の空間SSが確保されるような寸法関係になっている。加熱調理器100の枠体80部分が厨房家具KCの上面壁K2に載置される。なおFは台所の壁面、FLは同じく床面を示す。
【0050】
以上のような構成において、グリル加熱室20を使った調理を行う場合について説明する。グリル加熱室20の天井近くにある上ヒータ23と、底面近くにある下ヒータ24の両方又は何れか一方に通電を開始する。
するとグリル加熱室20はそれらヒータ23、24により加熱される。このときグリル加熱室20の壁面に施した遠赤外線塗料は、温度上昇に伴って赤外線を放射する。ステファンボルツマンの法則の通り、物質から伝えられる放射エネルギーの量は、その物質の温度が高くなるに従って大きくなる。
【0051】
発明者らは、グリル加熱室20からグリル扉40を介して外部へ漏れる赤外線の波長領域を研究した際、例えばグリル加熱室20を250℃に熱した際に放射される赤外線のピーク波長は5〜7μmであることを知った。物体から照射される電磁波のスペクトルはブランク分布と呼ばれる関数で示され、物体の温度に異存する。
【0052】
そこで150度〜300℃におけるプランク分布の放射強度とピーク波長を計算で求めた。この結果、ウィーンの変位則によりこの温度範囲におけるピーク波長は5〜7μmであることを算出したものである。
同様にして食品は4μmから25μm付近に吸収帯を持ち、澱粉、油脂、糖類は3μm〜10μmの領域で高い吸収率を示した。 また水は3μmと6μmで強い吸収がある。これらの知見から有効波長領域を3μm〜25μmであると想定し、実際に赤外線塗料を塗布したグリル加熱室20で、上記波長域(3μm〜25μm)における放射率を測定、計算して赤外線放射効果の有無・良否を判定した。この結果、本発明の実施態様においては、遠赤外線効果が大きく、これによってグリル加熱室20の加熱時間(調理時間)の短縮、グリル加熱室20の温度上昇率の改善を図れることが確認できた。
【0053】
このため二つのヒータ23、24を同時又は個別に通電してロースト調理(例えば焼き魚)、グリル調理(例えばピザやグラタン)やグリル加熱室20内の雰囲気温度を設定して調理するオーブン調理(例えば、ケーキや焼き野菜)が行える。なお、実施の態様では上ヒータ23は最大消費電力(最大火力)1200W、下ヒータ24は最大消費電力800Wのものが使用されている。
【0054】
次に熱線反射皮膜の作用、効果等について説明する。
発明者らは、グリル加熱室20からグリル扉40のガラス製透明窓41wを介して外部へ漏れる赤外線の量を減らせば、グリル加熱室20の加熱効率を向上させられると考えた。しかし、既に知られている熱線反射ガラスでは住宅用窓等の用途を想定しているため、太陽からの熱線(日射)を前提とした透過率データしかなかった。具体的には0.3μm〜2.1μmの波長域についてはフロート板ガラスと熱線吸収ガラスの反射率、透過率、輻射率のデータは公表されていた。
【0055】
そのデータによれば、通常のフロート板ガラスの特性は、反射率7.7%、透過率85.8%、輻射率6.5%であるのに対し、この実施態様で用いた熱線反射ガラスは、それぞれ12.0%、71.0%、17.0%であった。
この性能を基礎として、グリル加熱室20から透明窓41wを形成する耐熱性ガラスを通して周囲まで伝わる熱モデルを作成し、熱解析を実施した結果、単位面積あたりの熱量の比較でいうと、熱線反射ガラスの透過率が71%であると仮定するとフロート板ガラスに比較して熱量は22%低減でき、また熱線反射ガラスの透過率が20%であると仮定するとフロート板ガラスに比較して熱量は35%も低減できることを知った。
【0056】
前記覗き用窓のガラス板は、1枚のガラス板であったが、2枚のガラス板をその間に断熱用の空気層が形成された二重構造にしたものであっても良い。また透明窓41wの「透明」という意味は完全に透明を意味するものではなく、薄い色ガラスで構成された窓であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上より、本発明の加熱調理器は、加熱効率が高いから、調理時間の短縮や温度上昇の迅速化を図れるグリル加熱室を具備する各種加熱調理器に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係る加熱調理器を模式的に示す一部を削除した斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係る加熱調理器を模式的に示す側面視の断面図。
【図3】図1に示す加熱調理器におけるグリル扉の部分を示す斜視図と断面図。
【図4】図1に示す加熱調理器におけるグリル扉を斜め後方から見た斜視図。
【図5】図1に示す加熱調理器におけるグリル扉の風路を示す斜視図
【図6】図1に示す加熱調理器におけるグリル扉を側方から見た断面図。
【図7】図1に示す加熱調理器に使用したガード体を模式的に説明する正面図。
【図8】図1に示す加熱調理器におけるガード体を模式的に説明する断面図。
【図9】図1に示す加熱調理器におけるガード体の取り付け要領を示す斜視図。
【図10】図1に示す加熱調理器の設置状態の一例を示す側面視の一部断面図。
【符号の説明】
【0059】
10:本体、11:前面操作部、20:グリル加熱室、21:前方開口部、22:後方開口部、23:上ヒータ、24:下ヒータ、30:載置皿、31:皿支持フレーム、32:載置網、40:グリル扉、41:表板、41a:側縁、41c:下端部、41w:透明窓、42:裏板、42a:側縁、42w:開口部、43:外周板、44:内周板、45:前板、45a:吸気孔、45b:吸気孔、46a:側方吹出孔、46b:側方吹出孔、47:中央吹出孔、48:シール用パッキン、49L:下部ドアー空間、49U:上部ドアー空間、50:取っ手、50a:端部、51:フランジ部、52:手掛け部、52a:端部、52b:端部、53a:仕切壁、53b:仕切壁、55:後面壁、56a:透孔、56b:透孔、59a:側方取っ手空間、59b:側方取っ手空間、59c:中央取っ手空間、60:排気手段、61:浄化フィルター、62:送風機、63:排気風路、64:排気口、70:天板、71:鍋載置サークル、71a:鍋載置サークル、72:加熱体、72a:加熱体、72c:加熱体、73:電源スイッチ、73a:電源スイッチ、74a:電源スイッチ、75:表示部、80:枠体、81:天板操作部、90:スリット、100:加熱調理器、110:ガード体、110a:横棒、110b:縦棒、110c:側棒、110d:連結棒、110e:前脚、110f:後脚、111e:縦片、111f:縦片、112e:横片、112f:横片、113:連結片、121:シール材、221:シール材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収納自在なグリル加熱室と、該グリル加熱室の前方に設置された開閉自在なグリル扉と、前記グリル加熱室を加熱する発熱体と、を具備する加熱調理器であって、
前記グリル扉にはグリル加熱室の内部を透視可能なガラス板で覆われた覗き窓を設け、当該覗き窓のガラス板には、グリル加熱室内からの赤外線を反射し、覗き窓からの放射伝熱を抑制する熱線反射皮膜が形成されていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記グリル室の壁面内側には、遠赤外線放射被覆が施されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記熱線反射皮膜は、酸化チタン又は酸化スズで形成されていることを特徴とする請求項1乃至2の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記覗き用窓のガラス板は、2枚のガラス板をその間に断熱用の空気層が形成された二重構造にしていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記グリル扉には、覗き窓の前方を所定の空間を置いて覆うガード体が取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の加熱調理器。
加熱調理器。
【請求項6】
前記グリル扉の前面には、その前方へ所定寸法突出した取っ手が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記発熱体は輻射式電気ヒータであるとともに、調理器外殻を構成する天井面に対応して誘導式電気ヒータを備え、これら両ヒータは独立して通電時間及び火力の設定が可能となっていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−35835(P2010−35835A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202690(P2008−202690)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】