説明

加熱調理器

【課題】触媒体の専用加熱源を使用せずに、加熱室からの排気の浄化、分解性能を確保し、省エネ性に富んだ加熱調理器を提供する。
【解決手段】単一構成の触媒体21でも、隔壁22により排気18と触媒体21の接触領域を複数に分割し、結果として触媒体21に多段接触させて、排気18を二酸化炭素と水蒸気に完全分解させることが可能なため、触媒体21を加熱するための専用熱源を必要とせず、また触媒体21を複数個設置する必要もなく、排気室20の構成を簡略化できると同時に、触媒体21のコスト低減が可能な加熱調理器を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品などの被加熱物を加熱調理する加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような加熱調理器の分野では、加熱源として電気エネルギーや燃焼エネルギーにより、赤外線、熱風などを発生させて、食品などの被加熱物を加熱調理できるグリル、ロースター、オーブン電子レンジといった機器が普及している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の加熱調理器においては、図7に示すように、空気加熱室1の内部に空気通路2につながり、蛇行した蛇行通路3の各蛇行部4にはヒータ5を配置し、空気加熱室1と空気通路2の少なくともいずれか一方には、ヒータ5に加熱された触媒6を設けて、調理室7からの油煙などを含む吸引空気8を触媒6に接触させるというものであった。
【0004】
その目的は、触媒6を効率よく加熱するようにして、吸引空気8の浄化、分解性能を向上させることにあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−168186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図7に示す従来の加熱調理器の構成では、触媒6を活性化温度に上昇、かつ維持させるために専用のヒータ5を必要としていたので、ヒータ5の所定の電力確保のため、本来、調理室7内で加熱調理に必要な熱源の電力確保が不十分となり、調理室7内での食品の調理時間が長くなったり、良好な調理結果が得られなかったりする場合があった。
【0007】
また、調理性能を一定以上に確保するために、多量の電力消費が必要になり、結果として省エネ性などにも影響がでることがあった。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、触媒体の専用加熱源を使用せずに、加熱室からの排気の浄化、分解性能を確保し、省エネ性に富んだ加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来の課題を解決するために、本発明の加熱調理器は、食品を焼成加熱する加熱源を備えた加熱室と、加熱室と外気に連通し加熱室内の空気を排気として排出する排気室と、排気室に設けた隔壁と、排気室に設けた触媒体とを備え、隔壁により加熱室内の空気の排気順路を構成すると共に、排気と触媒体との接触領域を複数に分割し、排気を触媒体の分割した接触領域に上流側から下流側へ順次接触させたものである。
【0010】
この加熱調理器においては、加熱室内に設けた加熱源は、食品を焼成加熱する際に、同時に加熱室内の空気の温度を上昇させる。次いで、加熱室内の空気が食品を焼成加熱した後の排気として排気室内に至る。
【0011】
この時、排気室には、隔壁と触媒体とが設けられており、隔壁が、排気が最終的に外気中に放出されるまでの排気順路となっており、排気の流れからの熱が触媒体に伝達されて、触媒体の温度が活性化温度またはそれに近い状態まで昇温される。
【0012】
隔壁の作用は、排気を単一構成の触媒体の全領域に一度に接触させるのではなく、排気と触媒体との接触領域を複数に分割すると共に、上流側から下流側へと排気を触媒体の分割した接触領域に順次部分接触させる順路を構成するものである。
【0013】
このように、結果として排気を触媒体に複数回接触させると、最初に排気が触媒体の部分領域に接触することによって、アルデヒドや一酸化炭素などの不完全酸化生成物が発生するが、順次、下流側に相当する触媒体の部分領域にこれらが接触することによって、最終的には二酸化炭素と水蒸気となって外気中に放出される。
【0014】
特に、これらアルデヒドや一酸化炭素などの不完全酸化生成物は、炭化水素化合物の中では不安定で分解されやすい性質があるため、下流側に相当する触媒体の部分領域は、上流側の部分領域に比べて低温となる傾向があるが、結果として容易に完全分解させることができる。
【0015】
このように、単一構成の触媒体でも排気を触媒体に多段接触させて、排気を二酸化炭素と水蒸気に完全分解させることが可能であるため、触媒体の専用加熱源を使用せず、また触媒体を複数個設置する必要もなく、排気室の構成を簡略化できると同時に、触媒体のコストを低減することが可能な加熱調理器を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の加熱調理器によれば、単一構成の触媒体でも排気を触媒体に多段接触させて、排気を二酸化炭素と水蒸気に完全分解させることが可能であるため、触媒体を加熱するための専用熱源を必要とせず、また触媒体を複数個設置する必要もなく、排気室の構成を簡略化できると同時に、触媒体のコスト低減が可能な加熱調理器を提供することができる。
【0017】
したがって、省エネ性に富むと同時に、焼成調理による排気を酸化分解して、キッチンなどの調理空間の雰囲気を快適に保つことが可能な加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理器の側面断面図
【図2】同実施の形態における加熱調理器の排気室の構成を示す背面図
【図3】同実施の形態における加熱調理器の触媒体の通路方向の上面図
【図4】同実施の形態における加熱調理器の触媒体の触媒物質の担持状況を示す概念図
【図5】同実施の形態における加熱調理器の別の触媒体例の触媒物質の担持状況を示す概念図
【図6】本発明の実施の形態2における加熱調理器の排気室の構成を示す背面図
【図7】従来の加熱調理器の側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の発明は、食品を焼成加熱する加熱源を備えた加熱室と、加熱室と外気に連通し加熱室内の空気を排気として排出する排気室と、排気室に設けた隔壁と、排気室に設けた触媒体とを備え、隔壁により加熱室内の空気の排気順路を構成すると共に、排気と触媒体との接触領域を複数に分割し、排気を触媒体の分割した接触領域に上流側から下流側へ順次接触させたものである。
【0020】
これにより、加熱室内に設けた加熱源は、食品を焼成加熱する際に、同時に加熱室内の空気の温度を上昇させる。排気室には、隔壁と触媒体とが設けられており、隔壁が、排気が最終的に外気中に放出されるまでの排気順路を構成するので、排気の流れからの熱が触媒体に伝達されて、触媒体の温度が活性化温度またはそれに近い状態まで昇温される。
【0021】
隔壁の作用は、排気を単一構成の触媒体の全領域に一度に接触させるのではなく、排気と触媒体との接触領域を複数に分割すると共に、上流側から下流側へと排気を触媒体の分割した接触領域に順次部分接触させる順路を構成するものである。
【0022】
このように、結果として排気を触媒体に複数回接触させると、最初に排気が触媒体の部分領域に接触することによって、アルデヒドや一酸化炭素などの不完全酸化生成物が発生するが、順次、下流側に相当する触媒体の部分領域にこれらが接触することによって、最終的には二酸化炭素と水蒸気となって外気中に放出される。
【0023】
特に、これらアルデヒドや一酸化炭素などの不完全酸化生成物は、炭化水素化合物の中では不安定で分解されやすい性質があるため、下流側に相当する触媒体の部分領域は、上流側の部分領域に比べて低温となる傾向があるが、結果として容易に完全分解させることができる。
【0024】
このように、単一構成の触媒体でも排気を触媒体に多段接触させて、排気を二酸化炭素と水蒸気に完全分解させることが可能であるため、触媒体の専用加熱源を使用せず、また触媒体を複数個設置する必要もなく、排気室の構成を簡略化できると同時に、触媒体のコストを低減することが可能な加熱調理器を提供することができる。
【0025】
したがって、省エネ性に富むと同時に、焼成調理による排気を酸化分解して、キッチンなどの調理空間の雰囲気を快適に保つことが可能な加熱調理器を提供することができる。
【0026】
第2の発明は、特に第一の発明において、排気室に複数の隔壁を設け、各々の隔壁の一端部を触媒体に接触させることによって触媒体を支持させたものである。
【0027】
これにより、隔壁は、焼成調理によって発生する排気の成分、濃度に応じて、適度に排気と触媒体との接触領域を複数に分割することができる。特に、触媒体に排気を多段接触させる構成は、排気中に油煙や粉塵が比較的多い場合に有効である。
【0028】
また、このような複数の隔壁構成は排気室内における触媒体の位置決め、さらには固定作用も同時に果たすことができる。
【0029】
第3の発明は、特に第1または2のいずれかの発明において、触媒体が、一定方向に複数の通路を形成した単一のハニカム構造体で構成されたものである。
【0030】
これにより、触媒体は、隣接して、一定方向に開口した通路の集合体で構成されることになり、排気室の隔壁の端部を触媒体の通路の開口部に接触させることにより、排気と触媒体の接触領域を容易に複数に分割することが可能となる。
【0031】
第4の発明は、特に第1から3のうちのいずれか1つの発明において、触媒体が、多孔質セラミックス繊維をシート体に成型したものを、コルゲート状に積層して多孔質セラミックス成型体を構成したものを担体とし、担体のセラミックス繊維間の空隙及び表面部に炭化水素成分の酸化分解作用を有する触媒物質を担持したものである。
【0032】
これにより、担体が極めて軽質で低熱容量なものとなり、対流や熱伝導によって急速に
昇温させることが容易な構造体として構成できる。
【0033】
したがって、この担体のセラミックス繊維間の空隙及び表面部に炭化水素成分の酸化分解作用を有する触媒物質を担持した場合、同様に急速に活性化温度に到達させることが可能で、このような成分を有する排気などが触媒体に接触しながら通過すると、早い段階で炭酸ガスや水蒸気に分解される。
【0034】
第5の発明は、特に第4の発明において、触媒物質が、Mn、Cu、Co、Ni、またはCeのうちの1種類以上の酸化物で構成されたものである。
【0035】
これにより、これらの酸化物成分による触媒物質は、排気中の炭化水素成分が数十ppm程度であれば、室温近くでも一定の酸化分解作用を有しているため、500ppm程度の高濃度であっても150〜250℃で容易に酸化分解作用を発揮させることができる。
【0036】
さらに、これらの触媒物質は、スラリー状にして直接担体に担持させることが可能であるため、担持操作、および触媒体としての加工が簡便にできる。
【0037】
第6の発明は、特に第1から3のうちのいずれか1つの発明において、触媒体が、多孔質セラミックス繊維をシート体に成型したものをコルゲート状に積層して多孔質セラミックス成型体を構成したものを担体とし、担体の表面部にセラミックスの多孔質コーティング層を形成し、多孔質コーティング層の多孔部を含む表面に触媒物質を担持したものである。
【0038】
これにより、セラミックスの多孔質コーティングがセラミックス繊維からなる担体の機械的強度を上昇させると共に、多孔部を含む表面部に炭化水素成分の酸化分解作用を有する触媒物質を均一に分散させて担持することができる。
【0039】
第7の発明は、特に第6の発明において、触媒物質が、Pt、Pd、Rh、またはRuの貴金属のうちの1種類以上を用いたものである。
【0040】
これにより、これら貴金属成分を触媒物質として用いたことにより、担体上に構成した多孔質コーティング層の多孔部を含む表面部に、均一かつ強固に固定化させることができ、排気中に比較的硫黄成分が多く含まれていても、安定した酸化分解作用を維持して、長寿命な触媒体を構成することができる。
【0041】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施形態によって本発明が限定されるものではない。
【0042】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における加熱調理器の側面断面図、図2は、同実施の形態における加熱調理器の排気室の構成を示す背面図、図3は同実施の形態における加熱調理器の触媒体の通路方向の上面図、図4は同実施の形態における加熱調理器の触媒体の触媒物質の担持状況を示す概念図、図5は同実施の形態における加熱調理器の別の触媒体例の触媒物質の担持状況を示す概念図である。
【0043】
以上の図面を用いて、本発明の実施の形態1における加熱調理器の構成、および動作、作用について説明する。
【0044】
図1において、筐体10内には、前方が開口した加熱室11が構成され、加熱室11の前方の開口側には、開閉扉12が下方を支点として、筐体10の前面を含む形で前開き方
向で装着されている。
【0045】
加熱室11の略中央側には、食品(図示せず)を載置するスノコ網13が設けられている。スノコ網13を介して、加熱室11の上方には食品を焼成加熱する上部加熱源14として、石英管またはセラミック管内にコイル状の電熱線を埋設した赤熱型の上部赤外線ヒータ15が、加熱室11の下方には下部加熱源16として、同様に石英管またはセラミック管内にコイル状の電熱線を埋設した赤熱型の下部赤外線ヒータ17が設けられている。
【0046】
したがって、スノコ網13上に載置された食品は、上下から上部加熱源14(上部赤外線ヒータ15)、下部加熱源16(下部赤外線ヒータ17)によって、同時に焼成加熱により調理される。
【0047】
なお、図示していないが、マイクロ波加熱を併用すべく、マグネトロンを加熱室11の近傍に設けることもできる。上部赤外線ヒータ15は、その表面温度を約500〜800℃の範囲で変化させ、W数の可変範囲として500〜1000Wの間で設定されている。
【0048】
一方、下部赤外線ヒータ17は、載置部13との距離が接近しているため、その表面温度は上部赤外線ヒータ15の場合よりも低温に設定され、400〜700℃の範囲で変化させ、W数の可変範囲として400〜700Wの間で設定されている。
【0049】
また、加熱室11の上部後方側には、加熱室11内の空気を排気18として排出するための排気口19が開口し、加熱室11の背面側に構成した排気室20を介して外気と連通している。
【0050】
排気室20の中央部近傍には、排気18中の油煙を含む炭化水素成分を酸化、分解させるための触媒体21が設けられ、触媒体21の上面部から排気室20の上壁部にわたって隔壁22が構成され、排気18と触媒体21の接触領域を第1の接触領域23と第2の接触領域24に分割している。
【0051】
さらに、第2の接触領域24の下流側には、排気18を触媒体21に適正な排気量で吸引するための吸引ファン25が設けられている。したがって、排気18の流れは、排気口19から触媒体21の第1の接触領域23内を下降気流26として流通し、第2の接触領域24内には上昇気流27として流通する。
【0052】
一方、触媒体21は、図3、図4に示したように一定方向に通路28を構成するように、多孔質セラミックス繊維29をシート体に成型したものを、コルゲート状に積層して、極めて軽質で、昇温速度の速い多孔質セラミックス成型体30としたものを担体31とし、この担体31に、油煙を含む炭化水素成分を酸化分解する作用を有する触媒物質32を担持している。
【0053】
触媒物質32は、Mn、Cu、Co、Ni、またはCeなどのうちの1種類以上の酸化物で構成したもので、本例では具体的にはMnを主成分とし、微量のCu、Ceを含む複合酸化物の微細な粒子で、これら触媒物質32は、担体31の表面だけでなく、多孔質セラミックス繊維29の間の空隙にも均一に含浸されている。
【0054】
そして、このような複合酸化物状態の触媒物質32は、スラリー状にして直接担体31に担持させることが可能であるため、担持操作、および加工が簡便にできる利点がある。また、酸化分解性は、排気18中の炭化水素成分が数十ppm程度であれば、室温近くでも一定の酸化分解作用を有しているため、500ppm程度の高濃度であっても実力として150〜250℃で容易に分解作用を発揮させることができる。
【0055】
したがって、触媒体21は、軽質、昇温性が良好で、比較的低温でも十分な酸化分解性能を維持することができる。
【0056】
さらに、別の触媒体33の例としては、図5に示すように、図4で用いた担体31の表面部にセラミックスの多孔質コーティング層34を形成し、多孔質コーティング層34の多孔部を含む表面部に炭化水素成分の酸化分解作用を有する触媒物質35を担持したものである。
【0057】
触媒物質35は、Pt、Pd、Rh、またはRuなどの貴金属のうちの1種類以上を用いたもので、本例では、PtとPdを約2対1の割合で担持したものである。この場合は、セラミックスの多孔質コーティング層34が多孔質セラミックス繊維29からなる担体31の機械的強度を上昇させることができ、同時に、排気中18に比較的硫黄成分が多く含まれていても、安定した酸化分解作用を維持して、長寿命な触媒体33とすることができる。
【0058】
このように、調理物の含有成分が予め判明している場合、硫黄成分の多寡によって触媒体21と触媒体33を使い分けすることができる。
【0059】
このように構成された加熱調理器における作用について説明する。
【0060】
加熱室11内に設けた上部加熱源14(上部赤外線ヒータ15)、下部加熱源16(下部赤外線ヒータ17)は、食品を焼成加熱する際に、同時に加熱室11内の空気の温度を200〜250℃程度に上昇させる。
【0061】
このように、加熱室11内が一定の温度以上に到達すると、吸引ファン25が作動して、加熱室11内の空気が食品を焼成加熱した後の排気18として排気口19から排気室20内に至る。
【0062】
そして、前述のように、排気18は一旦下降気流26となって、触媒体21の第1の接触領域23内を通過し、次いで上昇気流27となって第2の接触領域24内を通過して、最終的に外気中に放出される。
【0063】
このように、触媒体21の第1の接触領域23から第2の接触領域24へと、排気18が順次触媒体21と接触する状態では、必然的に第2の接触領域24の温度は、第1の接触領域23に比べて低温状態となる。
【0064】
本例では、第1の接触領域の平均温度は200〜230℃であったが、第2の接触領域24の平均温度は180〜210℃程度であった。また、排気18を触媒体21の全領域に一度に接触させるのではないため、第1の接触領域23を通過した排気18中には、一部アルデヒドや一酸化炭素などの不完全酸化生成物が発生していた。
【0065】
しかし、これらアルデヒドや一酸化炭素などの不完全酸化生成物は、炭化水素化合物の中では不安定で分解されやすい性質があるため、下流側の第2の接触領域24の温度が第1の接触領域23より20K程度低温であっても、第2の接触領域で容易に酸化分解され、最終的に二酸化炭素と水蒸気となって外気中に放出される。
【0066】
さらに、加熱室11から排気18と一緒に流出する粉塵は、触媒体21に蓄積することなく落下させることができ、万一、排気18の温度が低下して排気18中に含まれる油煙が触媒体21の表面で結露、液化した場合でも、重力により触媒体21の下流側端部に移
動させることができ、排気18の温度が油煙の気化しうる温度以上に上昇した時点で、容易に気化させて触媒体21から除去することが可能である。
【0067】
このように、単一構成の触媒体21であっても、排気18を触媒体21に多段接触させて、排気18を二酸化炭素と水蒸気に完全分解させることが可能であるため、触媒体18の専用加熱源を使用せず、また触媒体18を複数個設置する必要もなく、排気室20の構成を簡略化できると同時に、触媒体21のコストを低減することが可能な加熱調理器を提供することができる。
【0068】
したがって、省エネ性に富むと同時に、焼成調理による排気18を酸化分解して、キッチンなどの調理空間の雰囲気を快適に保持できる加熱調理器を提供することができる。
【0069】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2における加熱調理器の排気室の構成を示す背面図である。
【0070】
以上の図面を用いて、本発明の実施の形態2における加熱調理器の構成、および動作、作用について説明する。
【0071】
図6において、実施の形態1と異なる点は、排気室40に複数の隔壁を設け、各々の隔壁の一端部を触媒体21に接触させることによって触媒体21を支持させたところで、具体的には、排気41の流れの上流側から、第1の隔壁42、第2の隔壁43、第3の隔壁44を設けたところである。
【0072】
なお、第1の実施の形態と同一符号のものは同一構造を有し、説明は省略する。
【0073】
図6において、第1の隔壁42は、排気室40の上壁部と触媒体21の上面開口部まで、第2の隔壁は第1の隔壁42から距離を隔てて触媒体21の下面開口部と排気室40の底面部まで、さらに、第3の隔壁44は、第1の隔壁42および第2の隔壁43から距離を隔てて触媒体21の上面開口部から排気室40の上壁部まで構成されている。
【0074】
そして、触媒体21と排気41の接触領域は、これら3つの隔壁42、43、44によって、排気41の流れの上流側から、第1の接触領域45、第2の接触領域46、第3の接触領域47、第4の接触領域48に分割されている。
【0075】
なお、本例では、隔壁を3つ構成したが、この数に限定されるものではなく、焼成調理のメニュー、排出される排気41の量などによって適宜最適化が可能である。
【0076】
このように構成された加熱調理器における作用について説明する。
【0077】
吸引ファン25によって、排気口49から排気室40内に排気41が流入すると、一旦下降気流50となって第1の接触領域45内を通過し、次いで上昇気流51となって第2の接触領域46内を、下降気流52となって第3の接触領域47内を、最後に上昇気流53となって第4の接触領域内を通過し、最終的に炭酸ガスと水蒸気となって、外気中に放出される。
【0078】
このように、触媒体21に排気41を多段接触させる構成は、排気41中に油煙や粉塵が比較的多い場合に有効である。
【0079】
また、このように複数の隔壁42、43、44を触媒体21に接触させることにより、
触媒体21の位置決め、さらには固定作用も同時に果たすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のように、本発明の加熱調理器は、ヒータやマイクロ波とのコンビネーション的な焼成加熱調理の際、触媒体を加熱するための専用熱源を必要とせずに、比較的簡単な構成で触媒体の酸化、分解性能を維持することができ、省エネ性に富むと同時に、キッチンなどの調理空間の雰囲気を快適に保つことが可能なため、電子レンジ、オーブンなどの調理器に限らず、多様な加熱用途に応用が可能である。
【符号の説明】
【0081】
11 加熱室
14 上部加熱源
15 上部赤外線ヒータ
16 下部加熱源
17 下部赤外線ヒータ
18、41 排気
20、40 排気室
21、33 触媒体
22 隔壁
23、45 第1の接触領域
24、46 第2の接触領域
28 通路
29 多孔質セラミックス繊維
30 多孔質セラミックス成型体
31 担体
32、35 触媒物質
34 多孔質セラミックスコーティング層
42 第1の隔壁
43 第2の隔壁
44 第3の隔壁
47 第3の接触領域
48 第4の接触領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を焼成加熱する加熱源を備えた加熱室と、加熱室と外気に連通し加熱室内の空気を排気として排出する排気室と、排気室に設けた隔壁と、排気室に設けた触媒体とを備え、隔壁により加熱室内の空気の排気順路を構成すると共に、排気と触媒体との接触領域を複数に分割し、排気を触媒体の分割した接触領域に上流側から下流側へ順次接触させた加熱調理器。
【請求項2】
排気室に複数の隔壁を設け、各々の隔壁の一端部を触媒体に接触させることによって触媒体を支持させた請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
触媒体が、一定方向に複数の通路を形成した単一のハニカム構造体で構成された請求項1または2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
触媒体が、多孔質セラミックス繊維をシート体に成型したものを、コルゲート状に積層して多孔質セラミックス成型体を構成したものを担体とし、担体のセラミックス繊維間の空隙及び表面部に炭化水素成分の酸化分解作用を有する触媒物質を担持した請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
触媒物質が、Mn、Cu、Co、Ni、またはCeのうちの1種類以上の酸化物で構成されたものである請求項4に記載の加熱調理器。
【請求項6】
触媒体が、多孔質セラミックス繊維をシート体に成型したものをコルゲート状に積層して多孔質セラミックス成型体を構成したものを担体とし、担体の表面部にセラミックスの多孔質コーティング層を形成し、多孔質コーティング層の多孔部を含む表面に触媒物質を担持した請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
触媒物質が、Pt、Pd、Rh、またはRuの貴金属のうちの1種類以上を用いたものである請求項6に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−69534(P2011−69534A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219999(P2009−219999)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】