説明

加熱調理型自動販売機の加熱調理装置

【課題】カップから飛び出した異物を、カップに付着させることなく、また、商品に焦げた臭いを移すことなく、清掃除去する。
【解決手段】調理素材の加熱調理時に、異物(ポップコーンの破片)がカップから頂壁76a上に飛び出しても、昇降手段により加熱炉(下加熱炉77)を上昇させて頂壁76aと下加熱炉77との間に間隙82を形成する一方、スクレーパー 117を前記頂壁76aの上面に摺接させながら水平移動させるようにしたので、頂壁76a上の異物を確実に掻き出し排除することができる。このとき、カップは加熱炉と共に上昇しているので、異物がカップに付着することはなく、しかも、スクレーパー 117に異物が付着しても、該スクレーパー 117は加熱調理時に加熱炉内に存在しないため、該異物が再加熱されることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カップに収納された調理素材を加熱調理し、例えばポップコーンとして販売する加熱調理型自動販売機の加熱調理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱調理型自動販売機の加熱調理装置としては、例えば以下の特許文献1に記載されているようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−162628号公報
【0004】
このものは、調理素材、例えば未調理状態の味付けコーンが底部に収納されているカップを上下に多数積み重ねたカップストックから最下段のカップを1個ずつ分離した後、該カップを加熱炉に収納するとともに、マグネトロンからマイクロ波を照射することで前記調理素材を加熱調理し、例えばカップ入りポップコーンとして顧客に提供するようにしたものである。
【0005】
ここで、前述の加熱調理型自動販売機においては、カップ内の調理素材を加熱調理する加熱調理装置として、第1および第2開口部が形成された水平で平坦なスライド支持基板と、スライド支持基板の第1開口部直下に設置され、上端がスライド支持基板に固定されたマグネトロンと、前記第1開口部を閉止するようスライド支持基板に固定され、マグネトロンの頂壁として機能するプラスチック基板と、スライド支持基板の上面に摺接しながら基端を中心として揺動することができ、先端部に分離されたカップの下端部が挿入可能な開口部を有する搬送レバー部材と、前記搬送レバー部材の先端部上面に固定され、前記カップを収納可能で、上端開口が天井基板により閉止されるとともに、前記搬送レバー部材の揺動により第1開口部の直上と第2開口部の直上との間を移動可能な加熱炉とを備えている。
【0006】
そして、このような加熱調理装置によりカップ内の調理素材を加熱調理する場合には、内部にカップが収納された加熱炉が第1開口部(プラスチック基板)の直上に位置しているとき、マグネトロンからマイクロ波を加熱炉内に照射してカップ内の調理素材を加熱調理し、商品、例えばポップコーンとする。その後、搬送レバー部材をスライド支持基板の上面に摺接させながら揺動させ、加熱炉、カップを第2開口部の直上まで搬送する。このとき、前記カップは容器載置プレートにより下方から支持されるが、該容器載置プレートは第2開口部より小径であるため、加熱調理時にカップから飛び出したポップコーンの破片(異物)は搬送レバー部材により第2開口部まで掻き寄せられて第2開口部内周と容器載置プレートとの間から排出され、加熱調理の度に清掃作業が行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の加熱調理型自動販売機の加熱調理装置にあっては、カップからポップコーンの破片がプラスチック基板上に落下したとき、該破片は温度が高いため、プラスチック基板の上面に付着することがあるが、このようにポップコーンの破片が付着すると、加熱炉が第2開口部に向かって搬送される際、カップはプラスチック基板、スライド支持基板上を摺接するため、該摺接するカップの下端により掻き取られ、そのままカップ下端に付着してしまうことがある。そして、このようにポップコーンの破片が付着したままの状態でポップコーン入りカップが商品として顧客に提供されると、顧客は不衛生であるとの感じを抱き、売れ行きが悪化するという課題がある。
【0008】
また、カップに付着しなかったポップコーンの破片は搬送レバー部材の揺動時に該搬送レバー部材の開口部により掻き取られた後、前述のように第2開口部から排出されるが、前述のようにポップコーンの破片は温度が高いため、開口部内周に付着したまま残留するものがあり、このように開口部内周に付着したままのポップコーン破片は、次のカップを加熱調理する際、マイクロ波により繰り返し加熱されて焦げてしまう。この際発生する焦げの臭いが次のカップのポップコーーに移ると、ポップコーンに焦げの臭いが付いて商品の品質が低下してしまうという課題もある。
【0009】
この発明は、カップから飛び出した異物を、カップに付着させることなく、また、商品に焦げた臭いを移すことなく、清掃除去することができる加熱調理型自動販売機の加熱調理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、調理素材が収納されているカップを上下に多数積み重ねたカップストックから最下段のカップを1個ずつ分離した後、加熱調理装置を用いて前記カップ内の調理素材を加熱調理し顧客に提供するようにした加熱調理型自動販売機において、前記加熱調理装置は、水平で平坦な頂壁を有し、該頂壁を通じてマイクロ波を上方に照射することができるマグネトロン手段と、下方が開口している調理空間が内部に形成された加熱炉と、前記加熱炉に設けられ、調理空間に収納されているカップを把持可能な把持手段と、前記加熱炉に昇降力を付与し、該加熱炉をマグネトロン手段の頂壁に当接するまで下降させることで、カップを調理空間内に密閉したとき、マグネトロン手段から照射されたマイクロ波によりカップ内の調理素材を加熱調理する昇降手段と、前記加熱調理後に加熱炉および把持手段により把持されたカップがマグネトロン手段から上昇して、前記頂壁と加熱炉との間に間隙が形成されたとき、マグネトロン手段の頂壁の上面に摺接しながら前記間隙を水平移動することで、前記頂壁上から異物を掻き出すスクレーパーとを備えた加熱調理型自動販売機の加熱調理装置により、達成することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明においては、マグネトロン手段から照射されたマイクロ波によりカップ内の調理素材を加熱調理するとき、異物となる調理済み商品、例えばポップコーンの破片がカップからマグネトロン手段の頂壁上に飛び出しても、前記加熱調理後に昇降手段により加熱炉を上昇させて頂壁と加熱炉との間に間隙が形成する一方、スクレーパーを前記頂壁の上面に摺接させながら前記間隙を水平移動させるようにしたので、前記頂壁上の異物を確実に掻き出し排除することができる。このとき、カップは加熱炉と共に上昇しているので、異物がカップに付着することはなく、しかも、前記掻き出しによりスクレーパーに異物が付着しても、該スクレーパーは加熱調理時に加熱炉内に存在しないため、該異物が再加熱されることもなく、この結果、調理済み商品に焦げた臭いが移ることはない。このようなことから商品品質が向上し、販売の促進に貢献することができる。
【0012】
また、請求項2に記載のように構成すれば、加熱調理時におけるマイクロ波の外部漏洩を確実に防止することができ、安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施形態1を示す概略正面図である。
【図2】その正面断面図である。
【図3】その右側面断面図である。
【図4】その平面断面図である。
【図5】カップ分離機構の一部破断平面図である。
【図6】カップ分離機構によるカップ分離作業を説明する正面断面図である。
【図7】カムプレート近傍の平面図である。
【図8】時計回りに回動したカムプレート近傍の平面図である。
【図9】下加熱炉、スクレーパー近傍の正面断面図である。
【図10】加熱調理時の状態を示す右側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態1を図面に基づいて説明する。
図1、2、3、4において、11は逆円錐台形をしたカップ12の底部に収納された調理素材13、例えば未調理状態のコーン(図6参照)を加熱調理し、例えばポップコーン14(図3参照)となった商品を販売する加熱調理型自動販売機であり、この自動販売機11は前方が開放した縦長ボックス状のフレーム本体15を有し、このフレーム本体15の前端には前端開口を開閉することができる前扉16が水平に揺動できるよう連結されている。
【0015】
前記前扉16の下部内面には加熱調理の終了したポップコーン14入りカップ12を受取るボックス状の払い出し部17が固定され、この払い出し部17の頂壁には前記カップ12が通過する通過孔18が形成されている。そして、この払い出し部17内にカップ12が受け渡されると、顧客は払い出し部17内からポップコーン14入りカップ12を取り出してポップコーン14を賞味する。なお、この発明においては、調理素材13としてスパゲッティ、ドライカレー等を用いてもよい。
【0016】
前記フレーム本体15の右側壁15aおよび後側壁15bの高さ方向中央部内面には水平な第1支持プレート21が固定され、この第1支持プレート21には出力軸22が下方に向かって延びる駆動モータ23が取り付けられている。この出力軸22の先端(下端)には半径方向に延びる旋回アーム24の内端が固定され、この旋回アーム24の外端には上方から落下してきたカップ12を外側から一時的に把持するとともに、該把持しているカップ12を適宜把持から解放してさらに下方に落下させることができる把持機構25が設けられている。そして、この把持機構25の中心は、前記駆動モータ23が作動して出力軸22が回転することで、駆動モータ23の中心軸を中心とする単一円上を移動する。
【0017】
前記単一円上の第1支持プレート21には周方向に等距離離れた複数(ここでは3個)の貫通孔28(図6参照)が形成され、これら貫通孔28の周囲の第1支持プレート21上にはカップ分離機構29がそれぞれ設置されている。これらカップ分離機構29の上面には上下方向に延びるカップガイド30の下端が取り付けられ、これらカップガイド30内には、前記カップ12を上下に多数積み重ねたカップストック31が外側からガイドされながら収納されている。
【0018】
ここで、前記カップストック31は、あるカップ12の内部に上方から次のカップ12を挿入する作業を繰り返すことで構成されているが、前述のように各カップ12の内部でその底部には調理素材13が収納されているので、カップ12の上端外周に形成された環状のつば部12aは上下に隣接するカップ12間で調理素材13の厚さとほぼ等距離だけ離れている。また、各カップガイド30に収納されているカップストック31(カップ12)内の調理素材13は、カップストック31毎に異なる味付けパウダー、調理油が付与されており、この結果、自動販売機11内には複数種類、ここでは3種類の味のカップ12(調理素材13)が収納されていることになる。さらに、各カップ12内の調理素材13は、例えば図示していない薄肉のポリエチレンフィルム等により密封されている。
【0019】
図4、5、6、7、8において、前述の各カップ分離機構29は、下端が第1支持プレート21に固定された上下方向に延びる複数本、ここでは3本の支持ピン34を有し、これらの支持ピン34は周方向に等距離離れて配置されている。35は中央部に前記支持ピン34が挿入されることで、該支持ピン34に変位可能(ここでは、揺動可能)に支持された複数(支持ピン34と同数)の水平な下爪であり、これらの下爪35は中央部(支持ピン34)を中心として水平面内で変位(揺動)することができる。各下爪35はほぼ円周方向に沿って延びるとともに、その先端部には内周の曲率半径がカップ12のつば部12aの最小径とほぼ同径で周方向に延びる弧状の把持部35aが形成され、これらの把持部35aは下爪35の同期変位(揺動)により半径方向内側に移動したとき、カップ12の上端部を把持(通常はつば部12aを下方から支持)することができる。
【0020】
また、各下爪35の基端部には上方に向かって延びる突起としてのカムピン37が固定されている。前述の周方向に離れて配置された複数の下爪35は、全体として下爪群38を構成する。39は前記下爪35の直上の支持ピン34にそれぞれ外嵌された同一長さの円筒状をした複数のスペーサである。41は前記スペーサ39の直上に配置された水平なカムプレートであり、このカムプレート41は内径が貫通孔28と同一径であるリング状のリング部41aと、該リング部41aに一体形成され半径方向外側に向かって延びるアーム部41bとから構成されている。前記リング部41aには複数、ここでは前記支持ピン34と同数(3個)の弧状を呈する円弧溝42が形成され、これら円弧溝42は周方向に等距離離れて配置されるとともに、リング部41aの中心を中心とする同一円に沿って延びている。
【0021】
そして、これら円弧溝42には前記支持ピン34がそれぞれ挿入されており、この結果、前記カムプレート41は支持ピン34、円弧溝42にガイドされながらリング部41aの中心回りに回動することができる。前記円弧溝42より周方向一側のリング部41aには周方向一側から周方向他側に向かうに従い半径方向外側に傾斜した複数(円弧溝42と同数)のカム溝45が形成され、これらのカム溝45には各下爪35のカムピン37が下方から挿入されている。この結果、前記リング部41aが回動すると、下爪35はカムピン37、カム溝45により支持ピン34を中心として揺動することができる。
【0022】
47はリング部41a上に載置されるとともに、支持ピン34にそれぞれ外嵌された同一長さの円筒状をした複数のスペーサであり、これらのスペーサ47上には複数(支持ピン34と同数)の水平な上爪48がそれぞれ載置されている。ここで、これら上爪48の中央部には前記支持ピン34がそれぞれ挿入されており、この結果、これら上爪48は下爪群38の上方において、該上爪48の中央部(支持ピン34)を中心として水平面内で変位(ここでは揺動)することができるよう支持ピン34に支持されることになる。各上爪48はほぼ円周方向に沿って延びるとともに、その先端部には内周の曲率半径がカップ12のつば部12aの最小径とほぼ同径で周方向に延びる弧状の把持部48aが形成され、これらの把持部48aは上爪48の同期変位(揺動)により半径方向内側に移動したとき、カップ12の上端部を把持(通常はつば部12aを下方から支持)することができる。
【0023】
また、各上爪48の基端部には下方に向かって延びる突起としてのカムピン50が固定されている。前述の周方向に離れて配置された複数の上爪48は、全体として上爪群51を構成する。前記円弧溝42より周方向他側のリング部41aには周方向他側から周方向一側に向かうに従い半径方向外側の傾斜した複数(円弧溝42と同数)のカム溝52が形成され、これらのカム溝52には各上爪48のカムピン50が上方から挿入されている。この結果、前記リング部41aが回動すると、上爪48はカムピン50、カム溝52により支持ピン34を中心として変位(揺動)することができる。
【0024】
55は前記カムプレート41のリング部41aと同一形状のリング状をした上プレートであり、この上プレート55は前記リング部41aと上下に重なり合った状態で支持ピン34の上端に密着固定されている。そして、この上プレート55の上面には前記カップガイド30の下端が固定されている。56は前記第1支持プレート21に取り付けられた複数、ここではカムプレート41と同数の駆動モータであり、これらの駆動モータ56の出力軸57の先端(上端)には旋回アーム58の基端部が固定されている。前記旋回アーム58の先端部には前記アーム部41bに形成された長孔59に挿入されたピン60が固定されており、この結果、前記駆動モータ56が作動して旋回アーム58が出力軸57を中心に旋回すると、カムプレート41は支持ピン34、円弧溝42にガイドされながらリング部41aの中心を中心として水平面内において移動、ここでは図7に示す位置と図8に示す位置との間を回動する。
【0025】
これにより、下爪群38を構成する下爪35(図7、8では実線、破線で示している)および上爪群51を構成する上爪48(図7、8では仮想線で示している)は、カムピン37およびカムピン50がそれぞれカム溝45およびカム溝52により半径方向に移動することで、支持ピン34を中心として変位(ここでは揺動)する。例えば、下爪35の把持部35aが半径方向内側に移動するときには、上爪48の把持部48aは逆に半径方向外側に移動し、一方、下爪35の把持部35aが半径方向外側に移動するときには、上爪48の把持部48aは逆に半径方向内側に移動する。前述した支持ピン34、スペーサ39、47、上プレート55は全体として、カップストック31の下端部を囲むよう設置された複数(カップストック31と同数)の支持フレーム63を構成し、これら支持フレーム63には前述のように周方向に離れて配置された複数の下爪35からなる下爪群38と、下爪群38より上方に配置され、周方向に離れた複数の上爪48からなる上爪群51とが水平面内で変位(揺動)できるよう支持されている。
【0026】
前述した駆動モータ56、旋回アーム58、ピン60は全体として、下爪群38と上爪群51との間に設置された水平なカムプレート41を水平面内で移動(ここでは回動)させる共用の駆動源65を構成し、また、この駆動源65および前記カムプレート41は全体として、下、上爪群38、51を構成する下、上爪35、48に対し変位力(ここでは揺動力)を付与することで、これらの下爪35の把持部35aと、上爪48の把持部把持部48aとを半径方向に移動させる変位手段66を構成する。さらに、前述した下、上爪群38、51、支持フレーム63、変位手段66は全体として、カップストック31から最下段のカップ12を1個ずつ分離するカップ分離機構29を構成する。ここで、前述した下爪35の把持部35aと上爪48の把持部48aとの間の上下方向距離Lは、図6に示すように、上下に隣接するカップ12のつば部12a間の上下方向距離Mより若干短く、この結果、下爪群38の下爪35によってカップストック31のうちの最下段のカップ12(つば部12a)が把持されているとき、上爪群51の上爪48は最下段から2段目に位置するカップ12のつば部12aより若干下方に位置している(図6右半分参照)。
【0027】
その後、駆動モータ56が作動してカムプレート41が図7に示す位置から図8に示す位置まで時計回りに回動すると、下爪35はカムピン37、カム溝45により支持ピン34を中心として、図5において反時計回りに揺動し、把持部35aが半径方向外側に移動してリング部41aの内周より半径方向外側に退避し隠れる一方、上爪48はカムピン50、カム溝52により支持ピン34を中心として反時計回りに揺動し、把持部48aがリング部41aと上プレート55との間から半径方向内側に移動してリング部41aの内周から半径方向内側に突出する。これにより、図6の左半分に示すように、カップストック31のうちの最下段のカップ12は下爪35(下爪群38)から離脱して落下する一方、残りのカップストック31全体が若干落下し、先程まで最下段から2段目に位置していたカップ12が上爪48(上爪群51)により把持されて最下段となる。このようにしてカップストック31のうちの最下段のカップ12がカップストック31から1個だけ分離されて落下すると、該カップストック31の直下に位置している把持機構25が分離落下したカップ12を把持する。
【0028】
その後、駆動モータ56が作動してカムプレート41が図8に示す位置から図7に示す位置まで反時計回りに回動すると、下爪35は図5において時計回りに揺動し、把持部35aが半径方向内側に移動してリング部41aの内周から半径方向内側に突出する一方、上爪48は時計回りに揺動し、把持部48aはリング部41aの内周より外側に退避して隠れる。これにより、最下段となったカップ12が上爪48(上爪群51)から離脱してカップストック31全体が落下するが、該カップストック31が距離Lだけ落下すると、最下段のカップ12(つば部12a)がリング部41aの内周から突出した下爪35の把持部35aにより把持され、該カップストック31の落下が停止する。このときの状態が図6の右半分に示されている。
【0029】
このように変位手段66により下爪35の把持部35aを半径方向内側に、上爪48の把持部48aを半径方向外側に移動させることで、上爪48の把持部48aにより支持されていたカップストック31を下爪35まで落下させて該下爪35の把持部35aにより支持させ、その後、変位手段66により下爪35の把持部35aを半径方向外側に、上爪48の把持部48aを半径方向内側に移動させることで、最下段から2番目のカップ12を上爪48の把持部48aにより支持するとともに、最下段の1個のカップ12を下爪35の把持部35aから離脱させてカップストック31から分離するようにしているので、上爪48からのカップストック31の離脱および下爪35からの最下段のカップ12の離脱の際に余計な作業は必要なく、この結果、顧客に加熱調理済みの商品(ポップコーン14)を迅速かつ確実に提供することができる。67は各上プレート55にブラケット68を介して固定された検出センサであり、これらの検出センサ67は各カップストック31におけるカップ12の個数を検出し、該個数が少数個、例えば3個以下となると、自動販売機11の作動を停止させるとともに、カップ12切れを表示させる。これは、カップ12の残数が少なくなると、最下段のカップ12の分離時にぶれが発生し、トラブルの原因となることがあるからである。
【0030】
なお、前述の実施形態においては、駆動源65として駆動モータ56、旋回アーム58、ピン60を用いたが、この発明においては、駆動源としてリンク機構、ラック・ピニオン機構、ねじ機構、ベルト機構、チェーン機構、油圧アクチュエータ、電動アクチュエータ等を用いてもよい。また、前述の実施形態においては駆動源65によりカムプレート41を所定角度だけ往復回動させるようにしたが、この発明においては、カムプレートを直線に沿って往復動させることで下、上爪を変位させるようにしてもよい。さらに、前述の実施形態においては、カムプレート41にカム溝45、52を形成する一方、下、上爪35、48に突起としてのカムピン37、50を設けるようにしたが、この発明においては、下、上爪にカム溝を形成する一方、カムプレートに前記カム溝に挿入される突起を形成するようにしてもよい。
【0031】
また、前述の実施形態においては、下、上爪35、48を支持ピン34を中心として揺動(変位)させることで、先端部に位置する把持部35a、48aを半径方向に移動させるようにしたが、この発明においては、下、上爪を、先端部に設けられた周方向に延びる弧状の把持部と、基端側に設けられ、前記把持部の周方向中央部から半径方向外側に向かって延びるガイド部とから構成し、これら下、上爪のガイド部を支持フレームに設けたガイドブロックにより半径方向に移動可能に支持するとともに、上、下爪全体を変位手段により半径方向に直線的に変位(平行移動)させるようにしてもよい。
【0032】
このように下、上爪35、48の先端部に内周の曲率半径がカップ12のつば部12aの最小径とほぼ同径である弧状の把持部35a、48aを設けるようにすれば、最下段のカップ12を周方向の広い範囲で把持(支持)することができ、この結果、カップストック31の高さが高い(重量が大の)ときであっても、落下してきたカップストック31の最下段のカップ12を傷付けたり、変形させることなく容易に把持することができる。
【0033】
また、前述のように変位手段66を水平なカムプレート41と、該カムプレート41を移動させる共用の駆動源65から構成し、前記カムプレート41または下、上爪35、48のいずれか一方にカム溝を形成するとともに、カムプレート41または下、上爪35、48の残り他方に前記カム溝に挿入された突起を設け、カムプレート41を移動させて突起をカム溝により半径方向に移動させることで、下、上爪35、48を変位させるようにしたので、共用の駆動源65およびカムプレート41によって下、上爪の先端部双方をほぼ同時に半径方向に移動させることでき、構造が簡単となり、安価に製作することもできる。なお、この発明においては、下爪35と上爪48とを共用ではない別個の変位手段によりそれぞれ変位させるようにしてもよい。
【0034】
再び、図1において、70は前扉16の高さ方向中央部外面に設けられたコイン投入口であり、このコイン投入口70に所定金額の硬貨等からなるコインが投入されると、自動販売機11の作動が開始する。71は前記コイン投入口70の左側方で前扉16の外面に設けられた3個の選択ボタンであり、これらの選択ボタン71は前記3種類の調理素材13に対応しており、前述のようにコイン投入口70にコイン投入後、いずれかの選択ボタン71を選択して押すと、対応する調理素材13が収納されたカップストック31から最下段のカップ12がカップ分離機構29により1個だけ分離され、該カップストック31の直下で待機している把持機構25に受け渡される。
【0035】
図2、3、4、9、10において、74はフレーム本体15の後側壁15bおよび左側壁15cの高さ方向中央部内面に固定された水平な第2支持プレートであり、この第2支持プレート74より下方のフレーム本体15には収納ボックス75が取り付けられている。この収納ボックス75内には上端にプラスチック製の水平で平坦な頂壁76aを有するマグネトロン手段76が収納され、このマグネトロン手段76は作動時、前記頂壁76aを通じてマイクロ波を上方に照射することができる。ここで、前述のマグネトロン手段76は、電源周波数の異なる東日本と西日本のいずれにおいても同一構成で使用することができるよう、その通電時間および通電タイミングをソフトウェアにより制御している。
【0036】
前記頂壁76aの直上には下加熱炉77が配置され、この下加熱炉77は上下方が共に開口した上下方向に延びる円筒状の本体部77aと、該本体部77aの上端外周に形成された略鍔状のフランジ部77bと、本体部77aの下端に一体的に連続し前記マグネトロン手段76の上端部に外側から嵌合することができる延長部77cとから構成されている。そして、前記本体部77aの内部には下調理空間77dが形成され、また、前記フランジ部77bは収納ボックス75の頂壁に形成された貫通孔78に挿入可能である。ここで、前記下加熱炉77、貫通孔78は前記把持機構25の中心が通過する軌跡、即ち、前記単一円上で、周方向に最も離隔した2個のカップ分離機構29の周方向中間部に位置している。
【0037】
80は前記貫通孔78の周囲で収納ボックス75の頂壁下面に上端が固定された上下方向に延びる複数のガイドロッドであり、これらのガイドロッド80は前記下加熱炉77のフランジ部77bに摺動可能に挿入され、下加熱炉77の昇降をガイドする。また、前記ガイドロッド80の下端に形成された受け80aと前記フランジ部77bとの間には前記下加熱炉77を上方に向かって付勢するスプリング81が介装されている。ここで、前述したスプリング81の付勢力によりフランジ部77bが収納ボックス75の頂壁に当接するまで下加熱炉77が上昇すると、該下加熱炉77(延長部77c)の下端とマグネトロン手段76の頂壁76aとの間には所定距離の間隙82が形成される。
【0038】
そして、前述のように下加熱炉77が上昇してフランジ部77bが収納ボックス75の頂壁に当接しているとき、いずれかのカップストック31から把持機構25に受け渡された1個のカップ12が駆動モータ23の作動により前記受け渡し位置から該下加熱炉77の直上まで搬送されてくると、把持機構25はカップ12を把持から解放する。これにより、カップ12は下加熱炉77の下調理空間77d内を通過しながら落下するが、該カップ12の下端がマグネトロン手段76の頂壁76aに当接したとき、前記落下が停止する。このとき、カップ12の上側部は、図2に仮想線で示すように、下加熱炉77の上端から上方に突出している。
【0039】
85は前記第2支持プレート74に形成され前後方向に延びるスリットであり、このスリット85には上下方向に延びるスライドブロック86が摺動可能に挿入されている。前記スライドブロック86の上端部には左右方向に延びる回転シャフト88が回転可能に支持され、この回転シャフト88の両端には第2支持プレート74上を転動するローラ87が固定されている。89は前記回転シャフト88に固定されたプーリであり、このプーリ89と前記スライドブロック86の上端に固定された駆動モータ90の出力軸に固定されているプーリ91との間にはベルト92が掛け渡されている。この結果、前記駆動モータ90が作動してローラ87が回転すると、スライドブロック86はスリット85にガイドされながら前後方向に移動することができる。前述したローラ87、回転シャフト88、プーリ89、駆動モータ90、プーリ91、ベルト92は全体として、後述する上加熱炉 100を前後方向に横行(移動)させる横行機構93を構成する。
【0040】
前記スライドブロック86の下端には逆L字形をした可動台94の上端が固定され、この可動台94の右側面には断面T字形をした上下方向に延びるガイドレール95が敷設されている。96は前記ガイドレール95に摺動可能に係合する昇降台であり、この昇降台96に内蔵された図示していない駆動モータの出力軸にはピニオン99が固定されている。一方、前記ガイドレール95には前記ピニオン99に噛み合う上下方向に延びたラック97が設置され、この結果、前記駆動モータが作動してピニオン99が回転すると、昇降台96はガイドレール95にガイドされながら昇降する。前述したガイドレール95、駆動モータ、ピニオン99、ラック97は全体として、後述の上加熱炉 100を昇降させる昇降機構98を構成する。
【0041】
100は前記昇降台96の下面に固定され前記下加熱炉77とほぼ同径の上加熱炉であり、この上加熱炉 100の内部には下方が開口した上調理空間 100aが形成されている。前記上加熱炉 100の頂壁 100bの下面には略上下方向に延びる複数の把持片 101の上端部が固定され、これらの把持片 101は周方向に離れて配置されるとともに、頂壁 100bに固定された上端部を中心として容易に弾性変形することができる。また、前記把持片 101は上下方向中央部にくの字形に折れ曲がった把持部 101aを有し、この把持部 101aの下端には下方に向かうに従い半径方向外側に向かうよう傾斜したガイド部 101bが連続している。
【0042】
この結果、上加熱炉 100とカップ12とが相対的に接近してカップ12の上部が上調理空間 100a内に挿入されると、カップ12のつば部12aがガイド部 101bに接触しながら把持片 101を押し開いた後、把持片 101が弾性復元力により閉じるよう揺動し、これにより、カップ12は把持部 101aによって外側から把持される。前述した複数の把持片 101は全体として、下、上加熱炉77、 100からなる加熱炉 106に設けられ、下、上調理空間77a、 100aからなる調理空間 107に収納されているカップ12を把持可能な把持手段 102を構成する。 103は前記昇降台96の上面に取り付けられたソレノイドであり、このソレノイド 103のプランジャに連結されたシャフト 104は昇降台96を貫通しながら下方に向かって延びるとともに、その下端には球殻の一部からなるプラスチック製のキャップ 105が固定されている。
【0043】
ここで、前記キャップ 105は把持手段 102に把持されているカップ12の上端開口を閉止することができるとともに、前述のような上端開口閉止時にソレノイド 103が作動してシャフト 104が下方に突出すると、該キャップ 105は把持手段 102に把持されているカップ12を押し下げて把持片 101を開くよう揺動させ、カップ12を把持手段 102から解放する。前記下、上加熱炉77、 100は全体として前記加熱炉 106を構成し、また、前記下、上調理空間77d、 100aは全体として、加熱炉 106の内部に形成され下方が開口している前記調理空間 107を構成し、さらに、前述したソレノイド 103、シャフト 104は全体として、カップ12を把持手段 102による把持から解放する解放機構 108を構成する。
【0044】
そして、前述のようにカップ12がマグネトロン手段76の頂壁76a上に載置されるとともに、その下側部が下加熱炉77内に遊嵌されると、収納ボックス75の前方で待機していた上加熱炉 100は前記横行機構93により下加熱炉77の直上に到達するまで後方に移動し、その後、昇降機構98により下降される。この下降の途中で上加熱炉 100の下端が下加熱炉77のフランジ部77b上面に当接するが、この当接後も上加熱炉 100は継続して下降するため、上加熱炉 100と下加熱炉77とは一体となってスプリング81を圧縮しながら、下加熱炉77の本体部77aと延長部77cとの間の段差77eがマグネトロン手段76の頂壁76aに当接するまで下降し、これにより、カップ12は一体化した下、上加熱炉77、 100、即ち加熱炉 106の調理空間 107内に密閉される。
【0045】
このとき、カップ12は把持片 101を押し開くため、その上端部が把持手段 102により把持されるとともに、上端開口がキャップ 105により閉止される。その後、マグネトロン手段76が作動すると、マグネトロン手段76からのマイクロ波が頂壁76aを通過してカップ12に照射され、カップ12に収納されている調理素材13を加熱調理してポップコーン14とする。このとき、加熱炉 106の下端部、詳しくは下加熱炉77の下端部に形成された延長部77cがマグネトロン手段76の上端部に外側から嵌合しているため、該マグネトロン手段76から照射されたマイクロ波の漏洩を前記延長部77cで防止することができ、これにより、加熱調理時におけるマイクロ波の外部漏洩を確実に防止することができ、安全性が向上する。また、前述のような加熱調理時、調理素材13が弾けてポップコーン14の破片がカップ12の上端開口から飛び出そうとするが、この飛び出しはキャップ 105により抑制される。但し、このキャップ 105による飛び出しの完全な防止は難しく、一部の破片が異物として頂壁76a上に飛散してしまうことがある。
【0046】
そして、前述のような調理素材13に対する加熱調理が終了すると、昇降機構98を作動して上加熱炉 100を上昇させるが、このとき、カップ12は把持手段 102によって把持されているため、上加熱炉 100と一体的に上昇する。また、このとき、下加熱炉77はスプリング81の弾性復元力により上加熱炉 100と同一速度でフランジ部77bが収納ボックス75に当接するまで押し上げられる。このようにフランジ部77bが収納ボックス75に当接すると、下加熱炉77の上昇が停止するが、その後も上加熱炉 100は把持したカップ12の下端が収納ボックス75、下加熱炉77から完全に抜け出るまで継続して上昇する。
【0047】
次に、横行機構93が作動してスライドブロック86、可動台94、上加熱炉 100が一体となって該上加熱炉 100が払い出し部17の通過孔18直上に到達するまで移動(横行)し、その後、昇降機構98により上加熱炉 100をその下端が払い出し部17から若干上方に離れた位置に到達するまで下降させる。次に、解放機構 108のソレノイド 103を作動してシャフト 104、キャップ 105を下降させると、カップ12は該キャップ 105に押し下げられて把持手段 102による把持から解放され、通過孔18を通じて払い出し部17内に落下する。その後、前記上加熱炉 100は昇降機構98の作動により前述の待機位置まで上昇する。前述のように把持手段 102を弾性変形容易な複数の把持片 101から構成するとともに、該把持手段 102によって把持されているカップ12を解放機構 108により押し下げることで該把持手段 102から解放するようにすれば、カップ12の把持および把持解放を迅速かつ確実に行うことができる。
【0048】
前述した昇降機構98、スプリング81は全体として、下加熱炉77および上加熱炉 100からなる加熱炉 106に昇降力を付与し、該加熱炉 106をマグネトロン手段76の頂壁76aに当接するまで下降させることで、カップ12を調理空間 107内に密閉することができるとともに、加熱調理後に加熱炉 106(下加熱炉77、上加熱炉 100)および把持手段 102に把持されたカップ12をマグネトロン手段76から上昇させて、頂壁76aと加熱炉 106、詳しくは下加熱炉77の下端との間に前記間隙82を形成する昇降手段 110を構成する。 111は自動販売機11、例えば後側壁15bに取り付けられた通気ファンであり、この通気ファン 111には自動販売機11の内部温度を検出する図示していない温度センサが接続されている。そして、自動販売機11の内部が所定温度より高温となると、温度センサからの作動信号により前記通気ファン 111が作動して自動販売機11内の空気を通気孔 112を通じて外部に排気し、自動販売機11の内部を一定の所定温度に保持する。 113は前記自動販売機11の左側壁15c内面に設置された冷却ファンであり、この冷却ファン 113は、加熱調理が終了した温度の高いカップ12がマグネトロン手段76から払い出し部17に搬送されるまでの間に、該カップ12に対し風を送ることで一定時間空冷し、カップ12をほどよい温度まで低下させる。なお、この冷却ファン 113は払い出し部17の内部に設置するようにしてもよい。
【0049】
なお、この発明においては、加熱炉を1個の有底円筒体から構成することもできるが、このように構成した場合に比較し、前記実施形態のように加熱炉 106を、マグネトロン手段76の直上において昇降可能な下加熱炉77と、下加熱炉77から分離され、昇降および横行可能な上加熱炉 100とから構成し、調理加熱時には上加熱炉 100を下加熱炉77の上面に当接させて一体化した後、両者を下降させてカップ12を調理空間 107に密閉収納する一方、非調理加熱時には、上加熱炉 100を上昇、横行させて下加熱炉77の側方で待機させるようにすれば、自動販売機11の高さを容易に低くすることができるとともに、移動エネルギーを節約することもできる。
【0050】
なお、前述の実施形態においては、把持手段 102を複数の弾性変形可能な把持片 101から構成したが、この発明においては、前述したカップ分離機構29と同様のものを用いてもよい。なお、この場合にはカップ12の把持および把持解放を行うだけであるため、1つの爪群および該爪群の爪を変位させる変位手段だけでよい。また、この発明においては、横行機構、昇降機構を、リンク機構、ねじ機構、ベルト機構、チェーン機構、油圧アクチュエータ、電動アクチュエータ等から構成してもよい。さらに、この発明においては、キャップ 105を押し下げることなく把持片 101を拡開させる拡開機構を設けることで、カップ12を把持片 101による把持から解放するようにしてもよい。
【0051】
115は下加熱炉77より左側の収納ボックス75に敷設された前後方向に延びる水平なガイドレールであり、このガイドレール 115にはスライダ 116が摺動可能に支持されている。 117は基端(左端)が前記スライダ 116に固定され、頂壁76a上を通過し、先端(右端)が頂壁76aを超えるまで右方向に向かって延びる水平なスクレーパーであり、このスクレーパー 117は本体が剛性の高いスチール等の金属から構成されているが、マグネトロン手段76の頂壁76aの上面に摺接可能な摺接部は、金属あるいは硬質ゴム等から構成されている。
【0052】
120はガイドレール 115の前端直上の収納ボックス75に回転可能に支持されたスプロケットであり、このスプロケット 120と該スプロケット 120より後方の収納ボックス75に回転可能に支持された図示していないスプロケットとの間にはガイドレール 115に平行に延び、1箇所がスライダ 116に連結されている無端のチェーン 121が掛け渡されている。前記図示していないスプロケットは収納ボックス75に取り付けられた駆動モータ 122の出力軸に固定されており、この結果、加熱調理後に下、上加熱炉77、 100(加熱炉 106)および把持手段 102により把持されたカップ12がマグネトロン手段76から上昇して、頂壁76aと加熱炉 106(下加熱炉77)との間に間隙82が形成されたとき、前記駆動モータ 122が作動してチェーン 121が走行すると、スクレーパー 117は頂壁76aの上面に摺接しながら前記間隙82を前後方向に水平移動するが、この際、該スクレーパー 117は前記頂壁76a上からポップコーン14の破片等の異物を掻き出して落下させる。
【0053】
このように頂壁76a上に異物が存在しても、該頂壁76aの上面に摺接しながら水平移動するスクレーパー 117を設ければ、該異物を確実に掻き出し排除することができる。このとき、カップ12は加熱炉 106(上加熱炉 100)と共に上昇しているので、異物がカップ12に付着することはなく、しかも、前記掻き出しによりスクレーパー 117に異物が付着しても、該スクレーパー 117は加熱調理時に加熱炉 106(調理空間 107)内に存在しないため、該異物が再加熱されることはなく、この結果、調理済み商品(ポップコーン14)に焦げた臭いが移ることはない。このようなことから商品品質が向上し、販売の促進に貢献することができる。前述したスプロケット 120、チェーン 121、駆動モータ 122は全体として、スクレーパー 117を頂壁76aの上面に摺接させた状態で水平移動させる水平移動機構 125を構成し、また、前述したマグネトロン手段76、把持手段 102、加熱炉 106、昇降手段 110、スクレーパー 117は全体として、カップ12内の調理素材13を加熱調理し顧客に提供する加熱調理装置 128を構成する。
【0054】
なお、前述の実施形態においては、スクレーパー 117をスライダ 116によって片持ちで支持するようにしたが、この発明においては、該スクレーパー 117の両持ちで支持するようにしてもよい。また、前述の実施形態においては、チェーン機構によってスクレーパー 117を水平移動させるようにしたが、この発明においては、リンク機構、ラック・ピニオン機構、ねじ機構、ベルト機構、油圧アクチュエータ、電動アクチュエータ等を用いてスクレーパー 117を水平移動させるようにしてもよい。また、前述の実施形態においては、スクレーパー 117を一定姿勢のまま平行移動させるようにしたが、この発明においては、基端部を中心に旋回させることで水平移動させるようにしてもよい。
【0055】
次に、前記実施形態1の作用について説明する。
顧客がコイン投入口70にコインを投入した後、いずれかの選択ボタン71を押すと、該選択ボタン71に対応する種類の調理素材13が収納されたカップストック31から、最下段のカップ12が以下のようにして1個だけ分離される。即ち、分離開始直前においては、図6の右半分および図7に示すように、カムプレート41が駆動源65により反時計回りに所定角度だけ回動しているため、いずれの下爪35もカムピン37、カム溝45により支持ピン34を中心として把持部35aがリング部41aの内周から突出するまで揺動して停止しており、一方、いずれの上爪48もカムピン50、カム溝52により支持ピン34を中心として把持部48aがリング部41aに隠れるまで揺動して停止している。このとき、前記カップストック31のうちの最下段のカップ12(つば部12a)が全ての下爪35の把持部35aによって把持(つば部12aが下方から支持)されている。
【0056】
この状態で駆動モータ56が作動を開始して、旋回アーム58が、例えば時計回りに 180度旋回すると、カムプレート41は時計回りに図8に示す位置まで回動する。この結果、下爪35はカムピン37、カム溝45により反時計回りに揺動し、把持部35aが半径方向外側に移動してリング部41aに隠れる一方、上爪48はカムピン50、カム溝52により反時計回りに揺動し、把持部48aが半径方向内側に移動してリング部41aの内周から突出する。これにより、図6の左半分に示すように、前記カップストック31のうちの最下段のカップ12は下爪35(下爪群38)から離脱して落下する一方、残りのカップストック31全体が若干落下し、先程まで最下段から2段目に位置していたカップ12が上爪48(上爪群51)により把持されて最下段となる。このようにしてカップストック31のうちの最下段のカップ12がカップストック31から1個だけ分離されて落下するのである。
【0057】
前述のようなカップ12の分離作業時、駆動モータ23が作動して旋回アーム24が旋回し、把持機構25が待機位置から、分離されるカップ12の直下まで移動する。この結果、前述のようにしてカップストック31から分離された1個のカップ12は、図2に示すように該カップストック31の直下に位置している把持機構25に受け渡され、該把持機構25により一時的に外側から把持される。次に、駆動モータ23が作動して旋回アーム24が旋回し、把持機構25に把持されているカップ12が前記受け渡し位置から下加熱炉77の直上まで搬送される。
【0058】
このとき、駆動源65によりカムプレート41が図8に示す位置から図7に示す位置まで反時計回りに回動するため、下爪35は時計回りに揺動して把持部35aがリング部41aの内周から突出する一方、上爪48も時計回りに揺動して把持部48aがリング部41aに隠れる。これにより、最下段となったカップ12が上爪48から離脱してカップストック31全体が落下するが、前記カップストック31が距離距離Lだけ落下すると、最下段のカップ12(つば部12a)がリング部41aから突出した下爪35の把持部35aにより把持されて該カップストック31の落下が停止し、図6の右半分に示す状態に復帰する。
【0059】
次に、前記把持機構25はカップ12を把持から解放するが、これにより、該カップ12は下加熱炉77の下調理空間77d内を通過しながら落下し、該カップ12の下端がマグネトロン手段76の頂壁76aに当接したとき、前記落下が停止する。このとき、カップ12の上側部は、図2に仮想線で示すように、下加熱炉77の上端から上方に突出している。次に、駆動モータ23が再び作動して旋回アーム24が旋回し、把持機構25が待機位置に復帰する。前述のようにカップ12がマグネトロン手段76の頂壁76a上に載置されるとともに、その下側部が下加熱炉77内に遊嵌されると、駆動モータ90が作動してローラ87が第2支持プレート74上を転動し、スライドブロック86、可動台94、昇降台96、上加熱炉 100は該上加熱炉 100が下加熱炉77の直上に到達するまで後方に移動する。
【0060】
次に、昇降機構98が作動して上加熱炉 100が下降するが、この下降の途中で上加熱炉 100の下端が下加熱炉77の上端に当接する。そして、この当接後も上加熱炉 100は継続して下降するため、一体となった上加熱炉 100および下加熱炉77(加熱炉 106)はスプリング81を圧縮しながら、下加熱炉77の段差77eがマグネトロン手段76の頂壁76aに当接するまで下降し、これにより、カップ12は調理空間 107内に密閉される。このとき、カップ12のつば部12aがガイド部 101bに接触しながら把持片 101を押し開き、その後、把持片 101が弾性復元力により閉じるよう揺動するため、カップ12の上端部は把持部 101aによって外側から把持され、また、カップ12の上端開口はキャップ 105により閉止される。
【0061】
次に、マグネトロン手段76が作動すると、マグネトロン手段76からのマイクロ波が頂壁76aを通過してカップ12に所定時間照射され、カップ12に収納されている調理素材13を加熱調理してポップコーン14とする。このとき、加熱炉 106(下加熱炉77)の下端部に形成された延長部77cがマグネトロン手段76の上端部を外側から嵌合しているため、該マグネトロン手段76から照射されたマイクロ波の漏洩は前記延長部77cにより確実に防止される。なお、このとき、調理素材13が弾けてポップコーン14の破片がカップ12から飛び出そうとするが、この飛び出しはキャップ 105により抑制されものの、一部の破片が異物として頂壁76a上に飛散してしまうことがある。
【0062】
前述のようにして調理素材13に対する加熱調理が終了すると、昇降機構98を作動して上加熱炉 100を上昇させるが、このとき、カップ12は加熱炉 106(上加熱炉 100)に設けられた把持手段 102によって把持されているため、上加熱炉 100と一体的に上昇する。また、このとき、下加熱炉77はスプリング81の弾性復元力により上加熱炉 100に当接した状態のままフランジ部77bが収納ボックス75に当接するまで押し上げられる。そして、フランジ部77bが収納ボックス75に当接すると、下加熱炉77は上昇が停止するが、その後も上加熱炉 100は、把持したカップ12の下端が下加熱炉77から完全に抜け出るまで継続して上昇する。この結果、前記加熱炉 106、詳しくは下加熱炉77の下端とマグネトロン手段76の頂壁76aとの間に所定の間隙82が形成される。
【0063】
次に、横行機構93が作動してスライドブロック86、可動台94、上加熱炉 100が一体となって、該上加熱炉 100が払い出し部17の通過孔18直上に到達するまで移動(横行)し、その後、昇降機構98により上加熱炉 100をその下端が払い出し部17から若干上方に離れた位置に到達するまで下降させる。次に、解放機構 108のソレノイド 103を作動してシャフト 104、キャップ 105を下降させると、カップ12は該キャップ 105に押し下げられて把持手段 102による把持から解放され、通過孔18を通じて払い出し部17内に落下する。このようにして払い出し部17内に供給されたカップ12は顧客により自動販売機11から取り出され、調理直後の美味であるポップコーン14が食用に供される。一方、前記上加熱炉 100は昇降機構98の作動により前述の待機位置まで上昇する。
【0064】
次に、前記駆動モータ 122が作動してチェーン 121が走行すると、スクレーパー 117は頂壁76aの上面に摺接しながら前後方向に水平移動するが、この際、該スクレーパー 117は前記頂壁76a上からポップコーン14の破片等の異物を掻き出して落下させる。この結果、頂壁76a上に異物が存在していても、該異物はスクレーパー 117により確実に排除される。
【産業上の利用可能性】
【0065】
この発明は、カップに収納された調理素材を加熱調理して販売する加熱調理型自動販売機の産業分野に適用できる。
【符号の説明】
【0066】
11…自動販売機 12…カップ
13…調理素材 31…カップストック
76…マグネトロン手段 76a…頂壁
77c…延長部 82…間隙
102…把持手段 106…加熱炉
107…調理空間 110…昇降手段
117…スクレーパー 128…加熱調理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理素材が収納されているカップを上下に多数積み重ねたカップストックから最下段のカップを1個ずつ分離した後、加熱調理装置を用いて前記カップ内の調理素材を加熱調理し顧客に提供するようにした加熱調理型自動販売機において、前記加熱調理装置は、水平で平坦な頂壁を有し、該頂壁を通じてマイクロ波を上方に照射することができるマグネトロン手段と、下方が開口している調理空間が内部に形成された加熱炉と、前記加熱炉に設けられ、調理空間に収納されているカップを把持可能な把持手段と、前記加熱炉に昇降力を付与し、該加熱炉をマグネトロン手段の頂壁に当接するまで下降させることで、カップを調理空間内に密閉したとき、マグネトロン手段から照射されたマイクロ波によりカップ内の調理素材を加熱調理する昇降手段と、前記加熱調理後に加熱炉および把持手段により把持されたカップがマグネトロン手段から上昇して、前記頂壁と加熱炉との間に間隙が形成されたとき、マグネトロン手段の頂壁の上面に摺接しながら前記間隙を水平移動することで、前記頂壁上から異物を掻き出すスクレーパーとを備えたことを特徴とする加熱調理型自動販売機の加熱調理装置。
【請求項2】
前記加熱炉の下端部にマグネトロン手段の上端部を外側から嵌合することができる延長部を形成し、加熱炉がマグネトロン手段の頂壁に当接したとき、該マグネトロン手段から照射されたマイクロ波の漏洩を前記延長部で防止するようにした請求項1記載の加熱調理型自動販売機の加熱調理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−230557(P2012−230557A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98554(P2011−98554)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(506220601)株式会社タクト (5)
【Fターム(参考)】