説明

加熱調理装置

【課題】通常のメニューの加熱調理において健康面での効能を高める加熱調理装置を提供する。
【解決手段】加熱調理装置1は、被加熱物100を収納する加熱室15と、被加熱物を載置する載置手段と、加熱室内に供給する蒸気を発生する蒸気発生手段30と、加熱室内の空気や蒸気あるいは収納された被加熱物を加熱する加熱手段40と、蒸気発生手段と加熱手段を制御する制御手段20を備える。焼き加熱調理工程は、加熱初期段階に蒸気発生手段30を制御して被加熱物を蒸し状態にさらす工程と、加熱後期に加熱手段40を制御して被加熱物を焼成・乾燥する工程とを含む。蒸し状態にさらす工程は、加熱室内に供給された蒸気が被加熱物の表面で凝縮し、その凝縮水に被加熱物に含まれていた塩分や脂肪を溶出させるために、所定の加熱時間が経過するか、あるいは被加熱物が所定温度に到達したことで終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には加熱調理装置に関し、被加熱物としての食品に少なくとも過熱水蒸気を当てることによって加熱調理する加熱調理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の加熱調理装置では、過熱蒸気を利用した食品調理において、食品を好ましい焼き色や食感に仕上げること、また、野菜などの加熱時の変色を防止することを目的とした加熱調理装置が、たとえば、特開平11−141881号公報(特許文献1)で提案されている。この加熱調理装置は、加熱室に過熱蒸気を送り込む第1の蒸気誘導手段と第2の蒸気誘導手段を設け、制御手段により食品近傍部と加熱室全体のどちらか一方あるいは両方に選択的に過熱蒸気供給を行なうことにより、食品の種類に応じた加熱温度に制御することができるように構成されている。
【0003】
一方、ヒータのみを用いて被加熱物としての食品を加熱調理する従来の加熱調理装置において、健康を気遣うユーザーにとって健康を維持するために役立つメニューを容易に選択でき、失敗なく調理できる加熱装置が、たとえば、特開2000−2426号公報(特許文献2)で提案されている。この加熱装置は、操作部に人間が健康を維持するために必要な栄養素あるいは種々の食品や調理法が持つ健康面での効用を名称として冠した健康メニューキーを設け、その中に設けられた複数の健康に関するメニューキーのうち、一つのキーを選択すると、表示部に複数の健康レシピが表示され、その健康レシピの中から所望のキーを押すと自動的に所望の調理が得られるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−141881号公報
【特許文献2】特開2000−2426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、健康的な食生活を実現するために健康を意識して食品を調理する加熱調理装置が求められている。
【0006】
しかしながら、上述のように、特開平11−141881号公報では、食品を好ましい焼き色や食感に仕上げ、または野菜などの加熱時の変色を防止するために過熱蒸気を用いて食品を加熱調理する加熱調理装置が提案されているだけである。
【0007】
また、特開2000−2426号公報で提案された加熱調理装置では、健康メニューの中から健康レシピを選択し、そのレシピにしたがって材料等が調製された食品を被加熱物として自動的に所望の調理が得られるようになっている。
【0008】
しかしながら、この加熱調理装置を用いると、健康を意識した特別なメニューにしたがって食材を調製して自動的に健康メニューを調理することができるが、通常のメニューの加熱調理において健康面での効能を高めることができないという問題があった。
【0009】
そこで、この発明の目的は、通常のメニューの加熱調理において健康面での効能を高めることが可能な加熱調理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に従った加熱調理装置は、被加熱物を収納する加熱室と、被加熱物を載置する載置手段と、加熱室内に供給する蒸気を発生する蒸気発生手段と、加熱室内の空気や蒸気あるいは収納された被加熱物を加熱する加熱手段と、使用者による操作部からの操作入力信号または加熱室の空間あるいは被加熱物の温度を検知する検知手段の検知信号に基づいて蒸気発生手段と加熱手段を制御する制御手段を備える。制御手段は被加熱物を焼き加熱調理する工程を有する。焼き加熱調理工程は、加熱初期段階に蒸気発生手段を制御して被加熱物を蒸し状態にさらす工程と、加熱後期に加熱手段を制御して被加熱物を焼成・乾燥する工程とを含む。蒸し状態にさらす工程は、加熱室内に供給された蒸気が被加熱物の表面で凝縮し、その凝縮水に被加熱物に含まれていた塩分や脂肪を溶出させるために、操作部からの入力信号に基づく所定の加熱時間が経過するか、あるいは検知信号に基づき被加熱物が所定温度に到達したことを検知することで蒸し状態にさらす工程を終了させる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、この発明によれば、高周波加熱、輻射加熱または熱風加熱を用いた従来の加熱調理装置よりも、通常のメニューの加熱調理において健康面での効能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の一つの実施の形態として加熱調理器の概略的な外観を示す斜視図である。
【図2】この発明の一つの実施の形態として加熱調理器の操作部を拡大して示すとともに、表示部に示される情報の変化を示す図である。
【図3】この発明の一つの実施の形態として加熱調理器における制御関係の構成を概略的に示すブロック図である。
【図4】この発明の一つの実施の形態として加熱調理器の内部構造を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の一つの実施の形態を図に基づいて説明する。
【0014】
図1は、この発明の一つの実施の形態として加熱調理器の概略的な外観を示す斜視図である。
【0015】
図1に示すように、加熱調理器1は直方体形状のキャビネット10を備える。キャビネット10の正面には扉12が設けられている。扉12の右側部には操作パネル11が設けられている。扉12は下端を中心にして回動可能であり、上部に設けられたハンドル13を手前に引っ張ることによって閉じた垂直の状態から開いた水平の状態へ移動させることができる。扉12の左側部の大部分には耐熱性ガラスが嵌め込まれており、窓14が設けられている。キャビネット10の内部には、被加熱物としての食品が配置される加熱室が設けられている。加熱調理器1は、加熱室内に配置された食品に少なくとも過熱水蒸気を当てることによって加熱調理することができるように構成されている。
【0016】
図2は、この発明の一つの実施の形態として加熱調理器の操作部を拡大して示すとともに、表示部に示される情報の変化を示す図である。
【0017】
図1と図2に示すように、操作部としての操作パネル11の中央部には、成分選択手段またはメニュー選択手段としての自動メニューボタン11aが設けられている。自動メニューボタン11aは回動可能であり、かつ押圧可能である。自動メニューボタン11aを回動し、押圧することにより、加熱室内に配置された食品に含まれる成分のうち、人間の健康に影響を与える所定の成分の割合が維持される、または変化するように食品を調理するメニューを選択することができる。操作パネル11の上部には、自動メニューボタン11aの動作に応じて所定のメニュー情報が表示される表示部(画面)11bが設けられている。
【0018】
図2に示すように、自動メニューボタン11aを回動し押圧することによって、脱油、減塩、ビタミンまたは酸化防止の意味に関する名称を有する第1のメニューを選択するための第1のメニュー選択手段が構成されている。具体的には、自動メニューボタン11aを回動することによって、図2において下方に順に示されているように、第1のメニューとして表示部11bに表示されるメニュー情報が[オイルカット]、[減塩]、[ビタミン野菜]と切り替わるようになっている。[オイルカット]というメニュー情報は、加熱室内に配置された食品に含まれる成分のうち、人間の健康に影響を与える所定の成分として油の割合を減少させるように加熱調理することを意味する。[減塩]というメニュー情報は、加熱室内に配置された食品に含まれる成分のうち、人間の健康に影響を与える所定の成分として塩の割合を減少させるように加熱調理することを意味する。[ビタミン野菜]というメニュー情報は、加熱室内に配置された食品に含まれる成分のうち、人間の健康に影響を与える所定の成分としてビタミンの割合を維持するように、すなわち、加熱調理の前後においてビタミンの含有量が変化するのを防止するように加熱調理することを意味する。この実施の形態では、自動メニューボタン11aを回動することによって、通常加熱調理メニューとして表示部11bに表示されるメニュー情報が[スチーム料理]、[お菓子パン]、[あたため]にも切り替わるようになっている。
【0019】
[オイルカット]、[減塩]、[ビタミン野菜]、[スチーム料理]、[お菓子パン]、[あたため]のいずれかを選択するためには、選択したいメニュー情報が表示部11bに表示されている状態で、すなわち、所定の文字情報が反転されて表示されている状態で、自動メニューボタン11aを押圧する。その後、自動メニューボタン11aを回動し押圧することによって、第1のメニュー選択手段によって選択された第1のメニューの各々に属する第2のメニューを選択するための第2のメニュー選択手段が構成されている。具体的には、[オイルカット]が選択されている状態では、自動メニューボタン11aを回動することによって、第2のメニューとして表示部11bに表示されるメニュー情報が[肉のロースト]、[ローカロリーフライ]、[フライあたため]、[肉の脂抜き]と切り替わるようになっている。[減塩]が選択されている状態では、自動メニューボタン11aを回動することによって、第2のメニューとして表示部11bに表示されるメニュー情報が[塩鮭]、[魚の開き]、[魚のみそ漬け]、[ソーセージ]と切り替わるようになっている。[ビタミン野菜]が選択されている状態では、自動メニューボタン11aを回動することによって、第2のメニューとして表示部11bに表示されるメニュー情報が[葉菜]、[果花菜]、[根菜]、[焼きいも]と切り替わるようになっている。図2では、[オイルカット]が選択された場合の表示部11bの状態が右方に順に示されている。この場合、[フライあたため]を選択するためには、[フライあたため]が表示部11bに表示されている状態で、すなわち、所定の文字情報が反転されて表示されている状態で、自動メニューボタン11aを押圧する。
【0020】
図3は、この発明の一つの実施の形態として加熱調理器における制御関係の構成を概略的に示すブロック図である。図4は、この発明の一つの実施の形態として加熱調理器の内部構造を概念的に示す図である。
【0021】
図2に示すように操作パネル11において成分選択手段またはメニュー選択手段としての自動メニューボタン11aが回動されて押圧されることによって最終的にメニューが選択されると、図3に示すようにメニュー情報(データ)が水蒸気制御部20に送られる。水蒸気発生部30は水蒸気を発生させる。水蒸気加熱部40は水蒸気発生部30で発生した水蒸気を加熱して過熱水蒸気にする。過熱水蒸気供給部50は、水蒸気加熱部40で得られた過熱水蒸気を加熱室内に配置された食品の近傍に供給する。水蒸気制御部20は、受け取ったメニュー情報に応じて、加熱室内に配置された食品に含まれる成分のうち、人間の健康に影響を与える所定の成分の割合の変化を制御するように水蒸気発生部30と水蒸気加熱部40と過熱水蒸気供給部50とを制御する。
【0022】
図4に示すように、水タンク60に入れられた水Lはポンプ61によって水蒸気発生部30に供給される。このとき、水蒸気発生部30に供給された水Lの水位は水位センサ62によって検知される。水蒸気発生部30の底部には排水パイプが接続されており、排水弁63を通じて加熱室15の側壁に設けられた開口に水が矢印Sで示すように流れることができるように排水パイプは加熱室15の側壁に接続されている。水蒸気発生部30に供給された水Lは水蒸気発生用ヒータ31によって加熱される。
【0023】
水蒸気発生用ヒータ31への通電と同時に、ファン71と水蒸気加熱用ヒータ41にも通電される。ファン71は加熱室15内の気体を吸い込み、矢印Pで示すように水蒸気循環部70に気体を送り出す。一方、水蒸気発生部30内の水が沸騰すると、温度100℃で1気圧の飽和水蒸気が矢印で示すように発生する。この水蒸気は、矢印Pで示すように水蒸気循環部70を通る循環気流に吸引される。このようにして飽和水蒸気を含む気体は高速で矢印で示すように水蒸気加熱部40に突入する。水蒸気加熱部40に供給された飽和水蒸気を含む気体は水蒸気加熱用ヒータ41によって100℃を超える温度に加熱され、過熱水蒸気となる。過熱水蒸気の温度は、温度センサ42によって検知される。過熱水蒸気は温度上昇により膨張し、その一部は、過熱水蒸気供給部50を構成する上部吹き出し口51から矢印Qで示すように加熱室15内に供給され、他の一部は、過熱水蒸気供給部50を構成する過熱水蒸気通路52を通じて、側部吹き出し口53から矢印で示すように加熱室15内で被加熱物(食品)100が配置される箇所に供給される。このようにして、過熱水蒸気の供給制御は、水蒸気制御部20によって過熱水蒸気供給部50と水蒸気循環部70とが制御されることによって行われる。
【0024】
過熱水蒸気を含む気体が上部吹き出し口51と過熱水蒸気通路52とを通じて加熱室15内に供給されると、加熱室15内の温度は上昇する。加熱室15内の温度が所望のメニューの加熱調理可能領域に達したことを温度センサ42の検知によって水蒸気制御部20が判定すると、すなわち、予熱が完了すると、その旨の表示が操作パネル11の表示部11bになされる。その表示により、使用者が調理可能になったことを知ると、扉12を開けて、加熱室15内に被加熱物(食品)100を配置する。扉12が開いている場合は、水蒸気制御部20によって、水蒸気発生部30と過熱水蒸気供給部50と水蒸気循環部70とが制御されて過熱水蒸気の供給が停止されている。扉12を閉じると、過熱水蒸気の供給が再開され、被加熱物(食品)100の加熱調理が開始する。100℃を超える温度に加熱された過熱水蒸気が被加熱物(食品)100の表面に接触すると、その表面に接触した過熱水蒸気は、被加熱物(食品)100の表面で結露する際に潜熱を放出し、被加熱物(食品)100の内部温度を急速に上昇させると同時に被加熱物(食品)100の表面に凝縮水が付着する。この作用を利用して加熱室15内に配置された被加熱物(食品)100に含まれる成分のうち、人間の健康に影響を与える所定の成分の割合を減少させるように加熱調理することができる。所望のメニューに応じて水蒸気制御部20によって水蒸気発生部30と水蒸気加熱部40とを制御することにより、過熱水蒸気を被加熱物(食品)100の表面に当て続けた後、水蒸気発生部30を停止し、水蒸気加熱部40のみを稼動させて通常の熱風による加熱を行なってもよく、最後まで水蒸気発生部30と水蒸気加熱部40とを稼動させて過熱水蒸気を被加熱物(食品)100の表面に当て続けてもよい。
【0025】
たとえば、図2に示す自動メニューボタン11aを用いて第1のメニューとして[オイルカット]、第2のメニューとして[フライあたため]が選択された場合について説明する。その選択されたメニューにしたがって、図3に示すように操作パネル11から選択されたメニュー情報(データ)が水蒸気制御部20に送られる。水蒸気制御部20は、そのメニュー情報(データ)に応じて水蒸気に関する条件を含む加熱調理条件等(データ)にしたがって水蒸気発生部30と水蒸気加熱部40と過熱水蒸気供給部50と水蒸気循環部70とを制御する。
【0026】
自動メニューボタン11aを用いて第1のメニューとして[オイルカット]、第2のメニューとして[フライあたため]が選択されると、水蒸気を発生させるために必要な水量が表示部11bに表示され、スタートキーを押圧することが使用者に促される。スタートキーが押圧されると、上述したように加熱室15内の予熱工程が開始する。予熱が完了すると、その旨が表示部11bに表示され、その表示により、使用者が調理可能になったことを知る。扉12を開けて、加熱室15内に被加熱物(食品)100としてフライ物を配置する。扉12を閉じ、スタートキーを押圧すると、過熱水蒸気の供給が再開され、フライ物の加熱調理が開始する。たとえば、180℃以上の温度に加熱された過熱水蒸気がフライ物の表面に接触すると、その表面に接触した過熱水蒸気は、フライ物の表面で結露する際に潜熱を放出し、フライ物の内部温度を100℃近傍まで急速に上昇させると同時にフライ物の表面に凝縮水が付着する。この作用を利用してフライ物に含まれる成分のうち、人間の健康に影響を与える油成分が液化し、フライ物の表面に流出する。そして、フライ物の表面に付着した凝縮水によって油成分が滴下する。これにより、油成分の割合を減少させるようにフライ物を加熱調理することができる。水蒸気制御部20によって水蒸気発生部30と水蒸気加熱部40とが制御され、所定の条件で所定時間、たとえば、フライ物の内部温度が100℃近傍になるまで、過熱水蒸気をフライ物の表面に当て続けて、脱油調理工程が行なわれる。その後、水蒸気発生部30を停止し、水蒸気加熱部40のみを稼動させて通常の熱風による加熱を行なうことにより、フライ物の表面をカリッとさせる。
【0027】
次に、たとえば、図2に示す自動メニューボタン11aを用いて第1のメニューとして[減塩]、第2のメニューとして[塩鮭]が選択された場合について説明する。その選択されたメニューにしたがって、図3に示すように操作パネル11から選択されたメニュー情報(データ)が水蒸気制御部20に送られる。水蒸気制御部20は、そのメニュー情報(データ)に応じて水蒸気に関する条件を含む加熱調理条件等(データ)にしたがって水蒸気発生部30と水蒸気加熱部40と過熱水蒸気供給部50と水蒸気循環部70とを制御する。
【0028】
自動メニューボタン11aを用いて第1のメニューとして[減塩]、第2のメニューとして[塩鮭]が選択されると、水蒸気を発生させるために必要な水量が表示部11bに表示され、スタートキーを押圧することが使用者に促される。スタートキーが押圧されると、上述したように加熱室15内の予熱工程が開始する。予熱が完了すると、その旨が表示部11bに表示され、その表示により、使用者が調理可能になったことを知る。扉12を開けて、加熱室15内に被加熱物(食品)100として塩鮭を配置する。扉12を閉じ、スタートキーを押圧すると、過熱水蒸気の供給が再開され、塩鮭の加熱調理が開始する。たとえば、120℃の温度に加熱された過熱水蒸気が塩鮭の表面に接触すると、その表面に接触した過熱水蒸気は、塩鮭の表面で結露する際に潜熱を放出し、塩鮭の内部温度を急速に上昇させると同時に塩鮭の表面に大量の凝縮水が付着する。この作用を利用して塩鮭に含まれる成分のうち、人間の健康に影響を与える塩成分が塩鮭の表面に付着した凝縮水に浸透する。そして、塩鮭の表面に付着した凝縮水が滴下することによって塩鮭中に含まれる塩成分が除去される。これにより、塩成分の割合を減少させるように塩鮭を加熱調理することができる。水蒸気制御部20によって水蒸気発生部30と水蒸気加熱部40とが制御され、所定の条件で所定時間、たとえば、塩鮭の内部温度が100℃近傍になるまで、過熱水蒸気を塩鮭の表面に当て続けて、減塩調理工程が行なわれる。その後、水蒸気発生部30を停止し、水蒸気加熱部40のみを稼動させて通常の熱風による加熱を行なうことにより、塩鮭の表面をカリッとさせる。
【0029】
次に、たとえば、図2に示す自動メニューボタン11aを用いて第1のメニューとして[ビタミン野菜]、第2のメニューとして[葉菜]が選択された場合について説明する。その選択されたメニューにしたがって、図3に示すように操作パネル11から選択されたメニュー情報(データ)が水蒸気制御部20に送られる。水蒸気制御部20は、そのメニュー情報(データ)に応じて水蒸気に関する条件を含む加熱調理条件等(データ)にしたがって水蒸気発生部30と水蒸気加熱部40と過熱水蒸気供給部50と水蒸気循環部70とを制御する。
【0030】
自動メニューボタン11aを用いて第1のメニューとして[ビタミン野菜]、第2のメニューとして[葉菜]が選択されると、水蒸気を発生させるために必要な水量が表示部11bに表示され、スタートキーを押圧することが使用者に促される。スタートキーが押圧されると、上述したように加熱室15内の予熱工程が開始する。予熱が完了すると、その旨が表示部11bに表示され、その表示により、使用者が調理可能になったことを知る。扉12を開けて、加熱室15内に被加熱物(食品)100として葉菜を配置する。扉12を閉じ、スタートキーを押圧すると、過熱水蒸気の供給が再開され、葉菜の加熱調理が開始する。たとえば、120℃の温度に加熱された過熱水蒸気で加熱室15の内部が充満すると無酸素状態になる。この状態を利用して葉菜に含まれる成分のうち、人間の健康に影響を与えるビタミン成分が加熱調理によって失われるのを効果的に防止することができ、いいかえれば、ビタミン成分を保持するように葉菜を加熱調理することができる。また、葉菜の周りの雰囲気が無酸素状態であるので、加熱調理において葉菜の表面が酸化するのを効果的に防止することができる。これにより、ビタミン成分の割合を保持するとともに表面の酸化を防止するように葉菜を加熱調理することができる。水蒸気制御部20によって水蒸気発生部30と水蒸気加熱部40とが制御され、所定の条件で所定時間、過熱水蒸気を葉菜の表面に当て続けて、ビタミン保持調理工程が行なわれる。その後、最後まで水蒸気発生部30と水蒸気加熱部40とを稼動させて過熱水蒸気を葉菜の表面に当て続ける。
【0031】
上述したように本発明の一つの実施の形態にしたがった加熱調理器1においては、水蒸気制御手段としての水蒸気制御部20によって、加熱室15内に配置された被加熱物(食品)100に含まれる成分のうち、人間の健康に影響を与える所定の成分の割合の変化を制御するように水蒸気発生手段としての水蒸気発生部30と、水蒸気加熱手段としての水蒸気加熱部40と、過熱水蒸気供給手段としての過熱水蒸気供給部50と水蒸気循環部70とを制御することができる。これにより、健康を意識した特別なメニューにしたがって食材を調製する必要がなく、通常のメニューに従った食材を用いて、食材に供給される過熱水蒸気を制御することによって、その食材に含まれる成分のうち、人間の健康に影響を与える所定の成分の割合の変化を制御して、健康面での効能を高めた調理を行なうことができる。
【0032】
また、上述したように本発明の一つの実施の形態にしたがった加熱調理器1は、加熱室15内に配置された被加熱物(食品)100に含まれる成分のうち、水蒸気制御部20によって割合の変化が制御される対象の成分として人間の健康に影響を与える成分を選択するための成分選択手段としての自動メニューボタン11aを操作部としての操作パネル11に備える。この自動メニューボタン11aを用いることにより、健康面での効能を高めた調理を行なう際に人間の健康に影響を与える成分の中で所望の成分に特化して加熱調理を行なうことができる。上記の実施の形態では、人間の健康に影響を与える成分として、油成分、塩成分、ビタミン成分を例に挙げて説明したが、これらの成分に限定されるものでなく、食品に含まれる成分の中で人間の健康に悪影響を与える成分、あるいは人間の健康増進に適した成分であればよい。
【0033】
さらに、上述したように本発明の一つの実施の形態にしたがった加熱調理器1は、少なくとも過熱水蒸気を被加熱物(食品)100に当てることによって加熱調理する際に、食品に含まれる成分のうち、人間の健康に影響を与える所定の成分の割合が維持される、または変化するように食品を調理するメニューを選択するためのメニュー選択手段としての自動メニューボタン11aを操作部としての操作パネル11に備えている。これにより、通常のメニューを加熱調理する際に健康を気遣い健康的な食生活に留意している使用者が健康に影響を与える成分の中で所望の成分に特化した加熱調理を簡単に選択して行なうことができる。
【0034】
上記の実施の形態では、第1のメニュー選択手段として、自動メニューボタン11aを回動、押圧することによって、脱油、減塩、または、ビタミンの意味に関する名称を有する第1のメニューとして表示部11bに表示される[オイルカット]、[減塩]、[ビタミン野菜]を選択することができる。
【0035】
また、上記の実施の形態では、第1のメニューを選んだ後、自動メニューボタン11aをさらに回動、押圧することによって、図2に示すように第1のメニューの各々[オイルカット]、[減塩]、[ビタミン野菜]に属する第2のメニューを選択することができる。これにより、使用者が健康に影響を与える成分の中で所望の成分に特化した加熱調理の中で、さらに食材に応じて特化した加熱調理を簡単に選択して行なうことができる。
【0036】
メニュー選択手段、第1と第2のメニュー選択手段は、上記の実施の形態で示したように回動と押圧が可能な自動メニューボタン11aの形態に限定されるものではなく、第1のメニューと第2のメニューに対応した複数のキーボタンが配置されていずれかのキーボタンを押圧することによって選択する手段でもよく、あるいは、表示部11bの画面に映し出される第1のメニューと第2のメニューの表示部分に接触することによって選択する手段でもよい。
【0037】
さらに、上記の実施の形態では、食品に含まれる成分のうち、人間の健康に影響を与える所定の成分の割合が維持される、または変化するように食品を加熱調理するための第1の加熱手段として水蒸気発生部30と水蒸気加熱部40における水蒸気発生・加熱用ヒータ31と41の両方を用いることができ、メニューに応じて食品を通常加熱調理するための第2の加熱手段として水蒸気加熱部40における水蒸気加熱用ヒータ41のみを用いることができる。この場合、水蒸気発生部30と水蒸気加熱部40における水蒸気発生・加熱用ヒータ31と41の両方を用いて人間の健康に影響を与える成分の中で所望の成分に特化してその成分の割合が維持される、または変化するように食品を加熱調理することができるとともに、水蒸気加熱部40における水蒸気加熱用ヒータ41のみを用いて従来の通常の熱風加熱または輻射加熱による加熱調理を行なうことができる。第1の加熱手段として水蒸気発生部30と水蒸気加熱部40とが一体化されて構成され、第2の加熱手段として通常の加熱用ヒータが別に設けられていてもよい。
【0038】
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものである。
【符号の説明】
【0039】
1:加熱調理器、11:操作パネル、11a:自動メニューボタン、11b:表示部、15:加熱室、20:水蒸気制御部、30:水蒸気発生部、40:水蒸気加熱部、50:過熱水蒸気供給部、70:水蒸気循環部、100:被加熱物(食品)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収納する加熱室と、
前記被加熱物を載置する載置手段と、
前記加熱室内に供給する蒸気を発生する蒸気発生手段と、
前記加熱室内の空気や蒸気あるいは収納された被加熱物を加熱する加熱手段と、
使用者による操作部からの操作入力信号または前記加熱室の空間あるいは被加熱物の温度を検知する検知手段の検知信号に基づいて前記蒸気発生手段と前記加熱手段を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は被加熱物を焼き加熱調理する工程を有し、
前記焼き加熱調理工程は、加熱初期段階に前記蒸気発生手段を制御して前記被加熱物を蒸し状態にさらす工程と、加熱後期に前記加熱手段を制御して前記被加熱物を焼成・乾燥する工程とを含み、
前記蒸し状態にさらす工程は、前記加熱室内に供給された蒸気が前記被加熱物の表面で凝縮し、その凝縮水に前記被加熱物に含まれていた塩分や脂肪を溶出させるために、前記操作部からの入力信号に基づく所定の加熱時間が経過するか、あるいは前記検知信号に基づき前記被加熱物が所定温度に到達したことを検知することで蒸し状態にさらす工程を終了させる
加熱調理装置


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−185595(P2011−185595A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83830(P2011−83830)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【分割の表示】特願2008−327220(P2008−327220)の分割
【原出願日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】