説明

加飾シート、加飾シートの製造方法および加飾成形品の製造方法

【課題】 立ち上がり形状の大きい箇所でもクラックが発生することなく優れた金属光沢を呈し、同時に、バックライトで照光しても光漏れのない優れた金属光沢を呈するための加飾シートを提供する。
【解決手段】 基体シート上に少なくとも第一金属膜層と第二金属膜層とが形成された加飾シートであって、第一金属膜層上に第二金属膜層と重なる積層形成部と第二金属膜層と重ならない非積層形成部とを備えることを特徴とする加飾シートとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の金属膜層が積層形成された加飾シート、加飾シートの製造方法および加飾成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から物品表面を装飾するのに加飾シートが用いられている。加飾シートにより被転写物面を装飾する方法として、転写法がある。転写法とは、基体シート上に、剥離層、絵柄層、接着層などからなる転写層を形成した転写シートを用い、加熱加圧して転写層を被転写物に密着させた後、基体シートを剥離して、被転写物面に転写層のみを転移して装飾を行う方法である。また、被転写物が樹脂成形品である場合に、転写法をより合理的に行う方法として、成形同時転写法がある。成形同時転写法とは、転写シートを成形金型内に挟み込み、金型内に樹脂を射出充満させ、冷却して樹脂成形品を得るのと同時に成形品表面に転写シートを接着させた後、基体シートを剥離して、被転写物面に転写層を転移して装飾を行う方法である。
【0003】
そして、基体シート上に複数の金属膜が積層形成された加飾シートの技術として、従来、特許文献1がある。この技術は、10〜35%となる膜厚で形成された島状構造をなすSn膜と、全光線透過率が30〜40%となる膜厚で形成されたAl膜とを隣接積層することによって、水洗除去する際にSn膜のキズが発生するのを防止したところに特徴がある。
【0004】
【特許文献1】特開2006−281591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、比較的軟質なSn膜単体ではクラックが生じにくいものの、上記加飾シートではSn膜に比較的硬質でクラックの生じやすいAl膜を積層させたため層全体として硬くなり、膜が引き伸ばされたときにクラックが生じやすくなるという問題があった。したがって、立ち上がり形状の大きい立体形状部分に加飾するとクラックが生じてしまうという問題があった。
【0006】
また、光線透過率が両金属膜とも高いため、透けやすく、ピンホールが発生しやすいという短所があった。そのため、背後から照明で照らせばその欠陥不良が余計に目立って、例えば携帯電話の液晶用表示パネルのバックライトによって照らされるような照光用窓部のある製品に適用することができない問題があった。なお、光線透過率を上記範囲より低くすればこの問題は解決していくが、それに応じて電波透過性などが低下していく問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解消し、立ち上がり形状の大きい箇所でもクラックが発生することなく優れた金属光沢を呈し、同時に、バックライトで照光しても光漏れのない優れた金属光沢を呈するための加飾シートとその製造方法、および加飾成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するため、以下のような特徴を備える。
【0009】
本発明の加飾シートは、基体シート上に少なくとも第一金属膜層と第二金属膜層とが形成された加飾シートであって、第一金属膜層上に第二金属膜層と重なる積層形成部と第二金属膜層と重ならない非積層形成部とを備えることを特徴とする。本発明の加飾シートは、第一金属膜層が電波透過性の金属膜層からなり、第二金属膜層が電波遮蔽性の金属膜層からなっていてもよく、第一金属膜層が、スズ、インジウム、亜鉛、クロムの群から選ばれる一種以上の金属からなり、第二金属膜層がアルミニウムからなっていてもよい。
【0010】
本発明の加飾シートの製造方法は、基体シート上に、第一金属膜層を形成し、第一金属膜層上の一部に水溶性パターン層を形成し、第二金属膜層を形成し、水洗処理により水溶性パターン層および第二金属膜層の一部を剥離することによって、第一金属膜層上に第二金属膜層と重なる積層形成部と第二金属膜層と重ならない非積層形成部とを形成することを特徴とする。
【0011】
本発明の加飾成形品の製造方法は、前記いずれかに記載の加飾シートを金型内に載置し、次いで成形樹脂を充填する成形同時加飾法を利用することを特徴とする。その際、アンテナ内蔵部に非積層形成部を形成し、アンテナ内蔵部以外の部分に積層形成部を形成してもよい。また、立ち上がり端部に非積層形成部を形成し、立ち上がり端部以外の部分に積層形成部によって囲まれた照光透過部を形成してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の加飾シートは、以上のとおりの構成を有するので、次のような優れた効果を有する。
【0013】
本発明の加飾シートは、第一金属膜層と第二金属膜層とが形成された加飾シートであって、第一金属膜層上に第二金属膜層と重なる積層形成部と第二金属膜層と重ならない非積層形成部とを備え、第一金属膜層の一部に第二金属膜層の全部または一部が積層形成されたものである。したがって、該加飾シートを用いれば、成形品表面の所望の箇所に第一金属膜層のみの部分と、第一金属膜層と第二金属膜層が積層形成された部分とを部分的かつ並列に同時に加飾をすることができる効果がある。第一金属膜層のみの部分と、第一金属膜層と第二金属膜層が積層形成された部分とが部分的かつ並列であるというのは、各々の部分が基体シートの一部の面に形成されて互いに重ならずに並んだ状態で配置されていることを指す。
【0014】
本発明の加飾成形品の製造方法は、以上のとおりの構成を有するので、次のような優れた効果を有する。
【0015】
本発明の加飾成形品の製造方法は、成形品のアンテナ内蔵部に電波透過性の金属膜層のみからなる非積層形成部を形成し、アンテナ内蔵部以外の部分に電波遮蔽性の金属膜層が積層された積層形成部を形成するので、電波遮蔽性を有しつつ、アンテナ送受信性能が良い金属膜層が形成された加飾成形品を得ることができる効果がある。
【0016】
また本発明の加飾成形品の製造方法は、成形品の立ち上がり端部にスズ、インジウム、亜鉛、クロムの群から選ばれる一種以上の金属膜層のみからなる非積層形成部を形成し、立ち上がり端部以外の部分であるバックライト設置箇所付近をこの金属膜層とアルミニウム金属膜層とが積層された積層形成部で囲むので、立ち上がり形状の大きい箇所でもクラックが発生することなく優れた金属光沢を呈し、同時に、バックライトで照光しても光漏れのない優れた金属光沢を呈する加飾成形品を得ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0018】
図1は、本発明の加飾シートを示す断面図である。図2は本発明の加飾シートの製造方法を示す工程図である。図3は本発明の加飾シートによって製造された加飾成形品に内蔵アンテナが設置された状態を示す断面図である。図4は本発明の加飾シートによって製造された加飾成形品にバックライトが設置された状態を示す断面図である。図中、1は基体シート、2は離型層、3は剥離層、4は絵柄層、6は第一金属膜層、7は水溶性パターン層、8は第二金属膜層、9は接着層、10は成形樹脂、11は内蔵アンテナ、12はバックライト、21はアンテナ内蔵部、22は非積層形成部、23は積層形成部、31は立ち上がり端部、32は非積層形成部、33は積層形成部、34は照光透過部、41は加飾成形品である。
【0019】
本発明の加飾シートは、基体シート上に少なくとも第一金属膜層と第二金属膜層とが形成された加飾シートであって、第一金属膜層上に第二金属膜層と重なる積層形成部と第二金属膜層と重ならない非積層形成部とを備える。言い換えれば、本発明の加飾シートは第一金属膜層の一部に第二金属膜層の全部または一部が積層形成されたものである。第一金属膜層の一部に第二金属膜層の全部が積層形成されているとは、第一金属膜層の一部分の箇所だけに第二金属膜層が形成された状態を指す(図2(c)参照)。また、第一金属膜層の一部に第二金属膜層の一部が積層形成されているとは、第一金属膜層が基体シート上に部分的に形成されている状態において、第一金属膜層の一部分に加えて第一金属膜層が形成されていない箇所にも第二金属膜層が形成された状態を指す。また、第一金属膜層の一部に第二金属膜層の全部が積層形成された状態および第一金属膜層の一部に第二金属膜層の一部が積層形成された状態は、ともに第一金属膜層のみの層である非積層形成部と第一金属膜層と第二金属膜層とが積層された積層形成部とが部分的かつ並列に形成されているといえる。
【0020】
本発明の加飾シートの製造方法は、基体シート上に、第一金属膜層を形成し、第一金属膜層上の一部に水溶性パターン層を形成し、第二金属膜層を形成し、水洗処理により水溶性パターン層および第二金属膜層の一部を剥離することによって、第一金属膜層上に第二金属膜層と重なる積層形成部と第二金属膜層と重ならない非積層形成部とを形成する工程からなる(図2(a)〜(c)参照)。
【0021】
基体シートの材質としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、あるいは以上の各シートの複合体など、通常の加飾シートの基体シートとして用いるものを使用することができる。
【0022】
金属膜層とは、その材質が金属またはその化合物のみで構成されている膜をさす。
【0023】
金属膜層は金属光沢を付与するために設けられることが多い。第一金属膜層は基体シート側すなわち外観側に形成されるため、美麗で測定角60度光沢度計(例えば堀場製作所株式会社製グロスチェッカIG331)による光沢度が少なくとも70以上ある金属膜であることが好ましい。これに対して第二金属膜層は基本的に第一金属膜層で覆い隠されるため、必ずしも金属光沢は必要ではない。表現したい金属光沢色に応じて、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、スズ、インジウム、銀、チタニウム、鉛、亜鉛などの金属、これらの合金または化合物を使用する。
【0024】
また金属膜層は、加飾シートの使用目的に応じて電波透過性や電波遮蔽性を備えるようにするのが好ましい。電波透過性とは、周波数が1MHz〜100GHzの電波を少なくとも10%以上透過できることを指し、一方、電波遮蔽性とは、周波数が1MHz〜100GHzの電波を95%以上遮蔽できることを指すが、本願発明においては、100MHzの電波を少なくとも10%以上透過できれば電波透過性あり、100MHzの電波を95%以上遮蔽できれば電波遮蔽性なしとする。金属膜層の電波透過性および電波遮蔽性の評価は、電波発生装置付近に金属膜層が形成された樹脂成形品を設置する時と設置しない時との両方の電界強度を測定して行うとよい。電界強度の測定は、電波法施行規則第六条第一項第一号に規定する発射する電波が著しく微弱な無線局の電界強度の測定方法で定められたとおりに試験場、電波発生装置の設置、測定器、測定用空中線を設定して行うのがよい。具体的には、試験場は周囲に電波を発射する物体がなく測定の障害となる金属物体がない場所で、電波発生装置は木その他の絶縁材料で作られた高さ1.5mの回転台の上に設置し、測定器は尖頭値表示が可能なスペクトルアナライザを用い、測定用空中線は測定する周波数に応じて枠型空中線・半周波数共振型のダイポール空中線・ホーン空中線を使い分け、測定は回転台を回転させ測定用空中線の配置を変化させて測定される電界強度の最大値をもって電波の電界強度とする。
【0025】
通常は、スズ、インジウム、亜鉛などの島状構造を形成しやすい金属膜は電波透過性があり、アルミニウムなどの島状構造を形成しない金属膜は電波遮蔽性がある。しかし、アルミニウムの金属膜であっても、その膜にミクロな孔を設け、その孔から電波が上記所定量以上透過できるようになった場合は、本発明の電波透過性の金属膜層に含まれる。具体的には、アルミニウム蒸着膜の場合、光線透過率が30%未満であれば、本発明の電波遮蔽性の金属膜層に含まれる。しかし、光線透過率が30%未満であっても、たとえばナノインプリント技術などによってナノオーダーの微細な孔を膜面全体の10%程度以上設けた場合には、本発明の電波透過性の金属膜層に含まれるようになる。その一方で、スズやインジウムの蒸着膜の金属膜であっても、その膜厚が厚くなり島状構造が破壊されて電波を上記所定量以上遮蔽してしまうようになった場合は、本発明の電波遮蔽性の金属膜層に含まれる。具体的には、スズやインジウムの蒸着膜の場合、光線透過率が3〜20%程度になる厚みであれば、本発明の電波透過性の金属膜層に含まれ、光線透過率を1%未満になるまで厚みを厚く設けた場合には、本発明の電波遮蔽性の金属膜層に含まれるようになる。すなわち、電波透過性および電波遮蔽性といった物理的特性は金属の材質よりも金属膜の構造に依存するところが大きい。
【0026】
また金属膜層は、加飾シートの使用目的に応じて伸張性や均一性を備えるようにするのが好ましい。具体的には、後述する成形同時加飾法において加飾シートが大きく伸ばされるような、起伏変化の大きい形状をした立体形状部や成形品端部の立ち上がり形状の大きい立ち上がり端部には伸張性に優れた性質をもつ金属膜層を配置するのが好ましい。反対に例えば携帯電話の液晶表示部を視認するための照光透過部付近では加飾シートが伸ばされることは少ないが、照光透過部の外周部には液晶表示部のバックライト照射時の光漏れが無いよう隠蔽性が要求されるので、照光透過部の外周部には強靭で均一性に優れた性質をもつ金属膜層を配置するのが好ましい。この場合、金属膜層の光線透過率は金属材料自体の性質が顕著に現れるよう5%未満程度に低く設定するのが好ましい。なお、照光透過部に金属膜層はあってもなくてもよい。
【0027】
伸張性に優れた性質をもつ金属材料としてはスズ、インジウム、亜鉛、クロムがあり、強靭で均一性に優れた性質をもつ金属材料としてはアルミニウムがある。すなわち、伸張性や均一性といった物理的特性は金属膜の構造よりも金属材料自体の性質に依存するところが大きい。
【0028】
金属膜層の形成方法としては、真空蒸着法・スパッタリング法のほかメッキなどの方法がある。膜厚としては材質によって大きく異なるが、0.01〜0.1μm位が適切である。
【0029】
水溶性パターン層とは、水洗処理により剥離できるパターン層であって、目安として、その層を形成した加飾シートを水に浸して荷重約9.8N(1kg重)の圧力で指の腹で擦った場合に、擦った回数が100回以内で剥がれるようなパターン層をいう。水溶性パターン層は、金属膜層を必要としない部分に設けられ、金属膜層の一部とともに剥離されるものである。
【0030】
材質としては、ポリビニルアルコール系、水溶性アクリル系、水溶性ポリウレタン系、ヒドロキシセルロース系などの樹脂があり、グラビア印刷、スクリーン印刷などの汎用の印刷方法で形成するとよい。なお印刷適正の向上や剥離性の向上のために体質顔料などの添加材を含有させたほうが好ましい。
【0031】
膜厚は、0.2μ〜10μmの範囲で形成するとよい。
【0032】
水溶性パターン層の形成方法としては、グラビア印刷、スクリーン印刷などの汎用の印刷方法のほか、インクジェット方式やトナー方式などのオンデマンド印刷による方法で形成してもよい。とくに、金属膜層を設ける前に加飾層が形成され、その加飾層のパターンと位置合わせが必要な場合には、デジタル印刷による方法で形成したほうが好ましい。
【0033】
汎用の印刷方法では、水溶性パターンを設ける前の工程において基体シートの材質によっては基体シートが伸縮してしまう。そのため、加飾層同士の間隔と、印刷版上の水溶性パターン層形成パターン同士の間隔が合致しなくなり、加飾層と水溶性パターン層との位置が合わなくなってしまう。これに対し、デジタル印刷による方法では、グラビア印刷やスクリーン印刷などの印刷方法に用いられるような版が存在しない。そして、基体シートが伸縮して加飾層が多少変形してもそれに対応して水溶性パターン層を形成する位置・水溶性パターン層の形状・水溶性パターン層同士の間隔を変化させることにより、加飾層と水溶性パターン層との位置を合わせることができる。具体的には、隣り合う加飾層の位置検出パターン間の距離を計測することによってどれだけ基体シートが伸縮したかを求め、その伸び率に適合するように水溶性パターン層を形成する位置・水溶性パターン層の形状・水溶性パターン層同士の間隔を変化させることができる。
【0034】
水洗除去の方法としては、加飾シートを水に浸した後、スポンジブラシで擦って落とす方法、超音波の振動により落とす方法、流水の圧力で落とす方法などがある。
【0035】
なお、第二金属膜層に限らず第一金属膜層も部分的に形成してもよい。その形成方法としては、第一金属膜層を形成する前に基体シート上に別の水溶性パターン層を形成し、その上に第一金属膜層を形成した後、水洗処理によりこの水溶性パターン層と第一金属膜層の一部を剥離する方法がある。その場合、第一金属膜層を形成する前の水溶性パターン層と第一金属膜層を部分的に形成した後の水溶性パターン層とは、材質・形成方法・膜厚・剥離方法が全く同じであっても良いし、異なっていてもよい。また、第一金属膜層が形成されない箇所に第二金属膜層が形成されてもよい。
【0036】
各金属膜層の形成後に水洗処理で水溶性パターンを除去する前には、その表面に保護層を設けてもよい。保護層とは、水洗処理の工程によって金属膜層が傷つくのを防止する層である。
【0037】
保護層の材質としては、ポリエステル系、ビニル系、非水溶性アクリル系、非水溶性ポリウレタン系、アルキッド系、ニトロセルロース系などの樹脂がある。なお、保護層には体質顔料や着色顔料、染料などの添加材を含有させてもよい。
【0038】
保護層の形成方法としては、グラビア印刷、スクリーン印刷などの汎用の印刷方法でも構わないが、先述の水溶性パターン層と同様の理由で、インクジェット方式やトナー方式などのデジタル印刷による方法で形成する方が好ましい。
【0039】
保護層の膜厚は、1.0μm〜10μmの厚みに設定するのが好ましい。膜厚が1.0μm未満であると保護層にピンホールが発生しやすくなり、そのピンホールから水洗時に水分が保護層を通して金属薄膜層に浸透し、それが残留水分となって金属薄膜層を腐食することがあるからである。膜厚を10μm以上にすると保護層が形成されていない部分との段差が大きすぎて、その後に接着層等を全面に均一に塗布しにくくなる問題がある。
【0040】
最後に、必要に応じて接着層などを設けることにより、加飾シートが完成する(図1参照)。
【0041】
接着層は、被転写物面に上記の各層を接着するものである。接着層は、接着させたい部分に形成する。すなわち、接着させたい部分が全面的なら、絵柄層上に接着層を全面的に形成する。また、接着させたい部分が部分的なら、絵柄層上に接着層を部分的に形成する。接着層としては、被転写物の素材に適した感熱性あるいは感圧性の樹脂を適宜使用する。たとえば、被転写物の材質がアクリル系樹脂の場合はアクリル系樹脂を用いるとよい。また、被転写物の材質がポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを使用すればよい。さらに、被転写物の材質がポリプロピレン樹脂の場合は、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂が使用可能である。接着層の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0042】
本発明の加飾シートは、水溶性パターン層、第一金属膜層、第二金属膜層、保護層、接着層以外に、適宜、基体シートと水溶性パターン層との間に、離型層、剥離層、加飾層、アンカー層を設けてもよく、また、水溶性パターン層、第一金属膜層、第二金属膜層、保護層の間にアンカー層を設けてもよく、第一金属膜層、第二金属膜層、保護層上にアンカー層・接着層を設けてもよい。
【0043】
本願発明の加飾シートには、被転写物から基体シートが剥離される転写シートと、被転写物と基体シートが一体化する絵付シートとがある。転写シートにおいては、必要に応じて離型層、剥離層が形成され、絵付シートにおいては、離型層、剥離層は形成されない。
【0044】
転写シートの形成において、基体シートからの転写層の剥離性がよい場合には、基体シート上に転写層を直接設ければよい。基体シートからの転写層の剥離性を改善するためには、基体シート上に転写層を設ける前に、離型層を全面的に形成してもよい。離型層は、転写後または成形同時転写後に基体シートを剥離した際に、基体シートとともに転写層から離型する。場合によっては層内離型を起こし、一部が転写層の最外面に残存することもある。離型層の材質としては、メラミン樹脂系離型剤、シリコーン樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤、セルロース誘導体系離型剤、尿素樹脂系離型剤、ポリオレフィン樹脂系離型剤、パラフィン系離型剤およびこれらの複合型離型剤などを用いることができる。離型層の形成方法としては、ロールコート法、スプレーコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0045】
剥離層は、基体シートまたは離型層上に全面的または部分的に形成する。剥離層は、転写後または成形同時転写後に基体シートを剥離した際に、基体シートまたは離型層から剥離して被転写物の最外面となる層である。剥離層の材質としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ゴム系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂などのほか、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂などのコポリマーを用いるとよい。剥離層3に硬度が必要な場合には、紫外線硬化性樹脂などの光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などの放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などを選定して用いるとよい。剥離層は、着色したものでも、未着色のものでもよい。剥離層の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0046】
絵柄層は、剥離層の上に、通常は印刷層として形成する。印刷層の材質としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。印刷層の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの通常の印刷法などを用いるとよい。特に、多色刷りや階調表現を行うには、オフセット印刷法やグラビア印刷法が適している。また、単色の場合には、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法を採用することもできる。印刷層は、表現したい図柄に応じて、全面的に設ける場合や部分的に設ける場合もある。
【0047】
なお、第一金属膜層や第二金属膜層を設ける際に、他の転写層と第一金属膜層や第二金属膜層との密着性を向上させるために、前アンカー層や後アンカー層を設けてもよい。前アンカー層および後アンカー層の材質としては、2液性硬化ウレタン樹脂、熱硬化ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、塩素含有ゴム系樹脂、塩素含有ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系共重合体樹脂などを使用するとよい。前アンカー層および後アンカー層の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0048】
本発明の加飾シートを利用して被加飾物に加飾をする方法の一つに射出成形による成形同時加飾法がある。成形同時加飾法とは、加飾シートを金型内に載置し、成形樹脂を充填して成形樹脂の熱と圧力を利用して成形と同時に被加飾物である成形品表面に加飾する方法である。
【0049】
本発明により製造された加飾シートの利用方法を、転写シートを例に、成形同時加飾法を利用して被転写物である樹脂成形品の面に装飾を行う方法について説明する。
【0050】
まず、可動型と固定型とからなる成形金型内に転写シートを送り込む。その際、枚葉の転写シートを1枚ずつ送り込んでもよいし、長尺の転写シートの必要部分を間欠的に送り込んでもよい。長尺の転写シートを使用する場合、位置決め機構を有する送り装置を使用して、転写シートの絵柄層と成形金型との見当が一致するようにするとよい。また、転写シートを間欠的に送り込む際に、転写シートの位置をセンサーで検出した後に転写シートを可動型と固定型とで固定するようにすれば、常に同じ位置で転写シートを固定することができ、絵柄層の位置ずれが生じないので便利である。成形金型を閉じた後、ゲートから溶融した成形樹脂を金型内に射出充填させ、被転写物を形成するのと同時にその面に転写シートを接着させる。被転写物である樹脂成形品を冷却した後、成形金型を開いて樹脂成形品を取り出す。最後に、基体シートを剥がすことにより、転写が完了する。
【0051】
成形樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AN樹脂などの汎用樹脂を挙げることができる。また、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂などの汎用エンジニアリング樹脂やポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアリル系耐熱樹脂などのスーパーエンジニアリング樹脂を使用することもできる。
【実施例1】
【0052】
基体シート上に離型層、剥離層、絵柄層を順次積層形成し、次いで部分的に第一水溶性パターン層を形成した後に第一金属膜層を形成し、水洗処理により第一水溶性パターン層および第一金属膜層の一部を剥離することによって第一金属膜層を部分的に形成し、次いで第一金属膜層上の一部および第一金属膜層の形成されていない部分に第二水溶性パターン層を形成した後、第二金属膜層を積層形成し、水洗処理により第二水溶性パターン層および第二金属膜層の一部を剥離し、最後に接着層を形成することによって転写シートである加飾シートを作成した。この加飾シートは第一金属膜層上に第二金属膜層と重なる積層形成部と第二金属膜層と重ならない非積層形成部とを備え、第一金属膜層の一部に第二金属膜層の全部が積層形成されたものである。
【0053】
膜厚38μmのポリエステルフィルム(東レ株式会社製F−55)を基体シートとし、その上に、ウレタンインキ(サカタインクス株式会社製ラミオールマークIII)で膜厚0.5μmの離型層、アクリルインキ(三菱レイヨン株式会社製LR101)で膜厚0.5μmの剥離層、ウレタンインキ(サカタインクス株式会社製ラミオールマークIII)で膜厚1μmの絵柄層を順次グラビア印刷によって形成した。次いで、体質顔料(富士シリシア化学株式会社製 粉末シリカ サイリシア)2%含有するポリビニルアルコールインキ(十条ケミカル株式会社製エマソフト)で膜厚1.5μmの第一水溶性パターン層をスクリーン印刷により形成した後に、膜厚約400Åのスズ金属膜からなる第一金属膜層を真空蒸着法で形成し、次いで水洗処理により第一水溶性パターン層をおよび第一金属膜層の一部を剥離することにより光線透過率が7%光沢度90の第一金属膜層を形成した。引き続き、体質顔料(富士シリシア化学株式会社製 粉末シリカ サイリシア)2%含有するポリビニルアルコールインキ(十条ケミカル株式会社製エマソフト)で膜厚1.5μmの第二水溶性パターン層をスクリーン印刷で形成した後に、厚み約600Åのアルミニウム金属膜からなる第二金属膜層を真空蒸着法で形成し、次いで水洗処理により第二水溶性パターン層および第二金属膜層の一部を剥離することにより光線透過率が0.3%の第二金属膜層を形成した。最後に、ウレタンインキ(サカタインクス株式会社製ラミオールマークIII)で膜厚1μmの接着層をグラビア印刷で形成した。
【0054】
上記加飾シートを長尺のままで金型内に載置し、成形樹脂を充填し、成形と同時に成形品表面に加飾をした後、基体シートおよび離型層を剥離してカード状の形状の加飾成形品を製造した(図3参照、但し、第一金属膜層、第二金属膜層、成形樹脂以外は省略)。その際、成形品のアンテナ内蔵部には電波透過性の第一金属膜層のみから形成された非積層形成部が形成されるよう設定した。試しに小型内蔵アンテナを加飾成形品下の様々な箇所に設置し、周波数が100MHzの電波透過性を加飾成形品の各箇所において測定したところ、第一金属膜層のみから形成された非積層形成部が成形品のアンテナ内蔵部を被覆する電波透過部では90%透過しており、第一金属膜層と第二金属膜層との積層形成部では透過が確認できず電波が遮蔽されていた。成形品のアンテナ内蔵部に小型内蔵アンテナを設置すると、全体としては一定の電波遮蔽性を有しつつ、かつアンテナ送受信性能が良い加飾成形品を得ることができた。
【0055】
また、上記加飾シートを真空圧空成形で予め立体加工し、所定の寸法にカットしてから金型内に載置した後、成形樹脂を充填し、成形と同時に成形品表面に加飾をし、基体シートおよび離型層を剥離して立体形状の加飾成形品を製造した(図4参照、但し、第一金属膜層、第二金属膜層、成形樹脂以外は省略)。その際、成形品の立ち上がり端部には第一金属膜層のみから形成された非積層形成部が形成され、バックライト設置箇所付近に第一金属膜層と第二金属膜層との積層形成部に囲まれた照光透過部が形成されるよう設定した。その結果、立ち上がり形状の大きい箇所でもクラックが発生することなく優れた金属光沢を呈し、同時に、バックライトで照光しても光漏れのない優れた金属光沢を呈する加飾成形品を得ることができた。
【実施例2】
【0056】
基体シート上に絵柄層を積層形成し、次いで部分的に第一水溶性パターン層を形成し、その上に第一金属膜層を形成し、水洗処理により第一水溶性パターン層および第一金属膜層の一部を剥離した後、パターン化された第一金属膜層の一部を除いた全面に第二水溶性パターン層を形成し、その上に第二金属膜層を積層形成し、水洗処理により第二水溶性パターン層および第二金属膜層の一部を剥離した後、最後に接着層を形成したインサート用絵付シートである加飾シートを作成した。この加飾シートは第一金属膜層上に第二金属膜層と重なる積層形成部と第二金属膜層と重ならない非積層形成部とを備え、第一金属膜層の一部に第二金属膜層の全部が積層形成されたものである。
【0057】
膜厚200μmのアクリルフィルム(三菱レイヨン株式会社製HBS−001)を基体シートとし、その上に、ウレタンインキ(サカタインクス株式会社製ラミオールマークIII)で膜厚1μmの絵柄層をグラビア印刷で形成した。次いで、体質顔料(富士シリシア化学株式会社製 粉末シリカ サイリシア)2%含有するポリビニルアルコールインキ(十条ケミカル株式会社製エマソフト)で膜厚1.5μmの第一水溶性パターン層をスクリーン印刷により形成した後に、膜厚約400Åのスズ金属膜からなる第一金属膜層を真空蒸着法で形成し、次いで水洗処理により第一水溶性パターン層をおよび第一金属膜層の一部を剥離することにより光線透過率が10%光沢度80の第一金属膜層を形成した。引き続き、体質顔料(富士シリシア化学株式会社製 粉末シリカ サイリシア)1%含有する水性アクリル樹脂(東洋インキ株式会社製T−COAT)で膜厚0.5μmの第二水溶性パターン層をグラビア印刷で形成した後に、膜厚約1000Åの銅金属膜からなる第二金属膜層を無電解メッキ法で形成し、次いで水洗処理により第二水溶性パターン層および第二金属膜層の一部を剥離することにより光線透過率が0.1%の第二金属膜層を形成した。最後に、ウレタンインキ(サカタインクス株式会社製ラミオールマークIII)で膜厚1μmの接着層をグラビア印刷で形成した。
【0058】
上記加飾シートを長尺のままで金型内に載置し、成形樹脂を充填し、成形と同時に成形品表面に加飾をした後、加飾シートの不要箇所をカット除去してカード状の形状の加飾成形品を製造した(図3参照、但し、第一金属膜層、第二金属膜層、成形樹脂以外は省略)。その際、成形品のアンテナ内蔵部には電波透過性の第一金属膜層のみから形成された非積層形成部が形成されるよう設定した。試しに小型内蔵アンテナを加飾成形品下の様々な箇所に設置し、周波数が100MHzの電波透過性を加飾成形品の各箇所において測定したところ、第一金属膜層のみから形成された非積層形成部が成形品のアンテナ内蔵部を被覆する電波透過部では95%透過しており、第一金属膜層と第二金属膜層との積層形成部では透過が確認できず電波が遮蔽されていた。成形品のアンテナ内蔵部に小型内蔵アンテナを設置すると、全体としては一定の電波遮蔽性を有しつつ、かつアンテナ送受信性能が良い加飾成形品を得ることができた。
【0059】
また、上記加飾シートを真空圧空成形で予め立体加工し、所定の寸法にカットしてから金型内に載置した後、成形樹脂を充填し、成形と同時に成形品表面に加飾をすることにより基体シートと一体となった立体形状の加飾成形品を製造した(図4参照、但し、第一金属膜層、第二金属膜層、成形樹脂以外は省略)。その際、成形品の立ち上がり端部には第一金属膜層のみから形成された非積層形成部が形成され、バックライト設置箇所付近に第一金属膜層と第二金属膜層との積層形成部に囲まれた照光透過部が形成されるよう設定した。その結果、立ち上がり形状の大きい箇所でもクラックが発生することなく優れた金属光沢を呈し、同時に、バックライトで照光しても光漏れのない優れた金属光沢を呈する加飾成形品を得ることができた。
【実施例3】
【0060】
基体シート上に離型層、剥離層、絵柄層を順次積層形成し、次いで部分的に第一水溶性パターン層を形成した後に第一金属膜層を形成し、水洗処理により第一水溶性パターン層および第一金属膜層の一部を剥離することによって第一金属膜層を部分的に形成し、次いで第一金属膜層上の一部および第一金属膜層の形成されていない部分に第二水溶性パターン層を形成した後、第二金属膜層を積層形成し、水洗処理により第二水溶性パターン層および第二金属膜層の一部を剥離し、最後に接着層を形成することによって転写シートである加飾シートを作成した。この加飾シートは第一金属膜層上に第二金属膜層と重なる積層形成部と第二金属膜層と重ならない非積層形成部とを備え、第一金属膜層の一部に第二金属膜層の全部が積層形成されたものである。
【0061】
膜厚38μmのポリエステルフィルム(東レ株式会社製F−55)を基体シートとし、その上に、ウレタンインキ(サカタインクス株式会社製ラミオールマークIII)で膜厚0.5μmの離型層、アクリルインキ(三菱レイヨン株式会社製LR101)で膜厚0.5μmの剥離層、ウレタンインキ(サカタインクス株式会社製ラミオールマークIII)で膜厚1μmの絵柄層を順次グラビア印刷によって形成した。次いで、体質顔料(富士シリシア化学株式会社製 粉末シリカ サイリシア)2%含有するポリビニルアルコールインキ(十条ケミカル株式会社製エマソフト)で膜厚1.5μmの第一水溶性パターン層をスクリーン印刷により形成した後に、膜厚約400Åのスズ金属膜からなる第一金属膜層を真空蒸着法で形成し、次いで水洗処理により第一水溶性パターン層をおよび第一金属膜層の一部を剥離することにより光線透過率が7%光沢度90の第一金属膜層を形成した。引き続き、体質顔料(富士シリシア化学株式会社製 粉末シリカ サイリシア)2%含有するポリビニルアルコールインキ(十条ケミカル株式会社製エマソフト)で膜厚1.5μmの第二水溶性パターン層をスクリーン印刷で形成した後に、厚み約2000Åのスズ金属膜からなる第二金属膜層を真空蒸着法で形成し、次いで水洗処理により第二水溶性パターン層および第二金属膜層の一部を剥離することにより光線透過率が1%の第二金属膜層を形成した。最後に、ウレタンインキ(サカタインクス株式会社製ラミオールマークIII)で膜厚1μmの接着層をグラビア印刷で形成した。
【0062】
上記加飾シートを長尺のままで金型内に載置し、成形樹脂を充填し、成形と同時に成形品表面に加飾をした後、基体シートおよび離型層を剥離してカード状の形状の加飾成形品を製造した(図3参照、但し、第一金属膜層、第二金属膜層、成形樹脂以外は省略)。その際、成形品のアンテナ内蔵部には電波透過性の第一金属膜層のみから形成された非積層形成部が形成されるよう設定した。試しに小型内蔵アンテナを加飾成形品下の様々な箇所に設置し、周波数が100MHzの電波透過性を加飾成形品の各箇所において測定したところ、第一金属膜層のみから形成された非積層形成部が成形品のアンテナ内蔵部を被覆する電波透過部では90%透過しており、第一金属膜層と第二金属膜層との積層形成部では透過が2%程度で電波がほぼ遮蔽されていた。成形品のアンテナ内蔵部に小型内蔵アンテナを設置すると、全体としては一定の電波遮蔽性を有しつつ、かつアンテナ送受信性能が良い加飾成形品を得ることができた。
【0063】
また、上記加飾シートを真空圧空成形で予め立体加工し、所定の寸法にカットしてから金型内に載置した後、成形樹脂を充填し、成形と同時に成形品表面に加飾をし、基体シートおよび離型層を剥離して立体形状の加飾成形品を製造した(図4参照、但し、第一金属膜層、第二金属膜層、成形樹脂以外は省略)。その際、成形品の立ち上がり端部には第一金属膜層のみから形成された非積層形成部が形成され、バックライト設置箇所付近に第一金属膜層と第二金属膜層との積層形成部に囲まれた照光透過部が形成されるよう設定した。その結果、立ち上がり形状の大きい箇所でもクラックが発生することなく優れた金属光沢を呈し、同時に、バックライトで照光しても光漏れのない優れた金属光沢を呈する加飾成形品を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の加飾シートを示す断面図である。
【図2】本発明の加飾シートの製造方法を示す工程図である。
【図3】本発明の加飾シートによって製造された加飾成形品に内蔵アンテナが設置された状態を示す断面図である。
【図4】本発明の加飾シートによって製造された加飾成形品にバックライトが設置された状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 基体シート
2 離型層
3 剥離層
4 絵柄層
6 第一金属膜層
7 水溶性パターン層
8 第二金属膜層
9 接着層
10 成形樹脂
11 内蔵アンテナ
12 バックライト
21 アンテナ内蔵部
22 非積層形成部
23 積層形成部
31 立ち上がり端部
32 非積層形成部
33 積層形成部
34 照光透過部
41 加飾成形品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体シート上に少なくとも第一金属膜層と第二金属膜層とが形成された加飾シートであって、第一金属膜層上に第二金属膜層と重なる積層形成部と第二金属膜層と重ならない非積層形成部とを備えることを特徴とする加飾シート。
【請求項2】
第一金属膜層が電波透過性の金属膜層からなり、第二金属膜層が電波遮蔽性の金属膜層からなる請求項1記載の加飾シート。
【請求項3】
第一金属膜層が、スズ、インジウム、亜鉛、クロムの群から選ばれる一種以上の金属からなり、第二金属膜層がアルミニウムからなる請求項1記載の加飾シート。
【請求項4】
基体シート上に、第一金属膜層を形成し、第一金属膜層上の一部に水溶性パターン層を形成し、第二金属膜層を形成し、水洗処理により水溶性パターン層および第二金属膜層の一部を剥離することによって、第一金属膜層上に第二金属膜層と重なる積層形成部と第二金属膜層と重ならない非積層形成部とを形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の加飾シートの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の加飾シートを金型内に載置し、次いで成形樹脂を充填する成形同時加飾法を利用することを特徴とする加飾成形品の製造方法。
【請求項6】
請求項2に記載の加飾シートを金型内に載置し、次いで成形樹脂を充填する成形同時加飾法を利用し、アンテナ内蔵部に非積層形成部を形成し、アンテナ内蔵部以外の部分に積層形成部を形成することを特徴とする加飾成形品の製造方法。
【請求項7】
請求項3に記載の加飾シートを金型内に載置し、次いで成形樹脂を充填する成形同時加飾法を利用し、立ち上がり端部に非積層形成部を形成し、立ち上がり端部以外の部分に積層形成部によって囲まれた照光透過部を形成することを特徴とする加飾成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−6612(P2009−6612A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171235(P2007−171235)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】