説明

加飾シート及び加飾成形品

【課題】加飾成形品にマット感(低艶感)が豊かな高級感を有する優れた意匠性を付与しうる、加飾成形品に好適な加飾シートを提供する。
【解決手段】基材上に少なくとも離型層、保護層、絵柄層及び接着層を順に積層してなる加飾シートであり、該離型層は、バインダー樹脂及びワックスを18〜60質量%含むバインダー樹脂組成物からなることを特徴とする加飾シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形による加飾成形品に用いられる加飾シート及びこれを用いてなる加飾成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、三次元曲面などの複雑な表面形状を有する樹脂成形体の加飾には、射出成形同時加飾方法が用いられる。射出成形同時加飾方法とは、射出成形の際に金型内に挿入された加飾シートをキャビティ内に射出注入された溶融した射出樹脂と一体化させて、樹脂成形体表面に加飾を施す方法であって、樹脂成形体と一体化される加飾シートの構成の違いによって、一般に射出成形同時ラミネート加飾法と射出成形同時転写加飾法に大別される。
射出成形同時転写加飾法においては、射出成形同時転写加飾用の加飾シートの転写層側を金型内に向けて転写層側から熱盤によって加熱し、該加飾シートが金型内形状に沿うように成形して金型内面に密着させて型締した後、キャビティ内に溶融した射出樹脂を射出して該加飾シートと射出樹脂とを一体化し、次いで加飾成形品を冷却して金型から取り出した後、基材フィルムを剥離することにより転写層を転写した加飾成形品を得ることができる。
【0003】
このようにして得られる加飾成形品は、従来、家庭用電化製品、自動車内装品などの様々な分野で用いられているが、近年、消費者の嗜好の多様性から、よりマット感(低艶感)が豊かな高級感のある意匠が望まれる傾向にある。このような要求を満たすため、熱可塑性樹脂に艶消し剤を添加することによりマット感を付与することが行われている(例えば、特許文献1及び2)。しかしながら、いずれも熱可塑性樹脂の基材フィルムに艶消し剤を添加するので、真空成形時に表面の艶(グロス値)が所望する水準より高くなり、マット感が損なわれたり、これらの加飾シートを用いた加飾成形品使用時に100℃以上の高温にさらされた場合、加飾成形品の表面に艶消し剤が浮き浮き出てくるブリード現象をおこし、意匠性が逆に損なわれる場合があった。
【0004】
また、加飾シートの意匠性を高めるため、離型層に艶消し剤を添加することにより、剥離後の加飾シート表面にマット感を与えることが行われている(例えば、特許文献3)。しかしながら、より強いマット感を付与するために、離型層に艶消し剤として例えば、シリカ、炭酸カルシウム等の無機フィラーを多量に添加した場合、マット感が得られるので高級感のある意匠性を得ることはできるが、離型層の印刷塗布時の印刷適性が著しく悪化してしまうことから、作業性が悪く生産性に乏しかった。
【0005】
また、一方転写シートに要求される物性の一つとして、加飾成形品から基材フィルムを剥離するときの剥離強度が適度な強さであることが挙げられる。この剥離強度が弱いと、製造工程中に剥離してしまい不具合の原因となり易く、また逆に強すぎると、転写シートが破断してしまうなどの問題も生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−264169号公報
【特許文献2】特開2002−283510号公報
【特許文献3】特開平1−301316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況下で、離型層の印刷塗布時の印刷適性に優れ、加飾成形品から基材フィルムを剥す際に適度な剥離強度を有し、加飾成形品表面にマット感が豊かな高級感を有する優れた意匠を付与しうる、加飾シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、基材上に少なくとも離型層、保護層、絵柄層及び接着層を順に積層してなる加飾シートにおいて、離型層を特定の組成を有する構成とすることにより、前記課題を解決できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、(1)〜(8)に関する。
(1)基材上に少なくとも離型層、保護層、絵柄層及び接着層を順に積層してなる加飾シートであり、該離型層が、バインダー樹脂及びワックスを含み、該ワックスの含有量が、18〜60質量%である樹脂組成物からなることを特徴とする加飾シート
(2)離型層を構成する樹脂組成物は、更に無機フィラーを2〜50質量%含むものである上記1に記載の加飾シート。
(3)ワックスの軟化点が、50〜90℃である上記1又は2に記載の加飾シート。
(4)離型層を構成する樹脂組成物の無機フィラーが、シリカを含有する上記2又は3に記載の加飾シート。
(5)離型層を構成する樹脂組成物の無機フィラーが炭酸カルシウムであって、樹脂組成物中に30質量%以下含まれるものである上記4に記載の加飾シート。
(6)バインダー樹脂が、アクリル樹脂とスチレン−アクリル共重合体とを含むものである上記1〜5に記載の加飾シート。
(7)上記1〜6のいずれかに記載の加飾シートの接着層側を金型内に向けて、熱盤によって接着層側から該加飾シートを加熱する工程、加熱された該加飾シートを金型内形状に沿わせ予備成形して型締する工程、射出樹脂を金型内に射出する工程、該射出樹脂が冷却した後に金型から基材付き加飾成形品を取り出す工程、及び該加飾成形品から基材及び離型層を剥離する工程を含む加飾成形品の製造方法。
(8)射出樹脂、接着層、絵柄層、保護層、離型層及び基材をこの順で有する加飾成形品であって、該離型層が、バインダー樹脂及びワックスを含み、該ワックスの含有量が、18〜60質量%である樹脂組成物からなることを特徴とする基材付き加飾成形品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、離型層の印刷塗布時の印刷適性に優れ、加飾成形品から基材フィルムを剥す際に適度な剥離強度を有し、加飾成形品表面にマット感を有する優れた意匠を付与し得る、加飾シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の加飾シートの一例の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の加飾シートの好ましい一例の断面を示す模式図である。
図1に示される本発明の加飾シート10は、基材11上に離型層12、保護層13、絵柄層14及び接着層15を順に積層させてなる加飾シートであり、該離型層はバインダー樹脂及びワックスを含み、該ワックスの含有量が18〜60質量%である樹脂組成物からなるものであることを特徴とする。
以下本発明を構成する各層について記載する。
【0012】
〔基材〕
本発明に係る基材11は、真空成形適性を考慮して選定され、代表的には熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムが使用される。該熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂;アクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂);塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
本発明に用いられる基材11の厚みは、通常10〜150μmであり、10〜125μmが好ましく、10〜80μmがより好ましい。
また、基材11は、これら樹脂の単層フィルム、あるいは同種又は異種樹脂による複層フィルムを使用することができる。
【0013】
本発明においては、基材11として、ポリエステルフィルムを用いることが、耐熱性、寸法安定性、成形性、及び汎用性の点で好ましい。
ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂とは、多価カルボン酸と、多価アルコールとから重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーをいう。多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、アゼライン酸、ドデカジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。また、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカンジオール、2−エチル−ブチル−1−プロパンジオール、ビスフェノールAなどが挙げられる。さらに本発明で用いるポリエステル樹脂は、3種類以上の多価カルボン酸や多価アルコールの共重合体であっても良く、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのモノマーやポリマーとの共重合体であっても良い。
【0014】
上記のようにして得られるポリエステル樹脂のなかでも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などを好ましく挙げることができ、ポリエチレンテレフタレート(PET)が、耐熱性や寸法安定性の点で特に好ましい。
なお、該ポリエステル樹脂はホモポリマーでも良く、コポリマーでも良く、また第三成分を共重合させたものであっても良い。
【0015】
基材11を形成する樹脂フィルムは、作業性を向上させる目的で、微粒子を含有させることが好ましい。微粒子としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、カオリンなどの無機粒子、アクリル樹脂などからなる有機粒子、内部析出粒子などを挙げることができる。微粒子の平均粒径は0.01〜5.0μmが好ましく、0.05〜3.0μmがより好ましい。また、樹脂フィルム中の微粒子の含有量は0.01〜5.0質量%が好ましく、0.1〜1.0質量%がより好ましい。また、必要に応じて各種安定剤、潤滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、消泡剤、蛍光増白剤などを配合することもできる。
【0016】
また、基材11を形成する樹脂フィルムは、後述する離型層との密着性を向上させる目的で、所望により、片面又は両面に易接着処理、例えば酸化法や凹凸化法などの物理的又は化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
なお、基材11を形成する樹脂フィルムとして市販品を用いる場合には、該市販品は予め上記したような表面処理が施されたものや、易接着剤層が設けられたものも用いることができる。
【0017】
〔離型層〕
本発明における離型層12は、保護層13、絵柄層14、及び接着剤層15からなる転写層の基材シート11からの剥離を容易に行うために設けられるものである。離型層12は、図1に示すように、全面を被覆(全面ベタ状)しているベタ離型層であっても良いし、パターン状に設けられるものであっても良い。通常は、剥離性を考慮して、ベタ離型層が好ましい。
本発明における離型層12は、バインダー樹脂及びワックスを含み、該ワックスの含有量が18〜60質量%である樹脂組成物からなるものである。
本発明の離型層を構成する樹脂組成物について説明する。
【0018】
<バインダー樹脂>
バインダー樹脂としては、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、硝化綿などの熱可塑性樹脂、該熱可塑性樹脂を形成するモノマーの共重合体、あるいはこれらの樹脂を(メタ)アクリルやウレタンで変性したものを、単独で又は複数を混合した樹脂混合物等が挙げられる。上記のバインダー樹脂として使用される熱可塑性樹脂、該熱可塑性樹脂を形成するモノマーの共重合体等の重量平均分子量は、好ましくは、3000〜300000より好ましくは5000〜200000のものが用いられる。
上記の熱可塑性樹脂及び樹脂混合物は、無溶剤系でかつ非エマルジョン系、エマルジョン系(水系)、溶剤系等のものを使用することができ、特にエマルジョン系のものを使用することが好ましい。
なかでも、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、これらの樹脂を形成するモノマーの共重合体、及びこれらをウレタン変性したものが好ましく、より具体的には、ポリエステル樹脂とエチレン−アクリル酸共重合体樹脂のウレタン変性体とを混合した樹脂混合物、アクリル樹脂エマルジョンとスチレン−アクリル共重合体樹脂のエマルジョンとを混合した樹脂混合物などが挙げられる。特にこれらのバインダー樹脂の中でもアクリル樹脂エマルジョンとスチレン−アクリル共重合体樹脂のエマルジョンとを混合した樹脂混合物を用いてバインダー樹脂とすることにより、成形後の剥離強度が適度に軽くなり、成形品表面にリリースラインが残存しにくくなるので好ましい。また、その際の質量比(アクリル樹脂:スチレン−アクリル共重合体樹脂)を1:3〜3:1、好ましくは1:2〜2:1とすることが望ましい。なおリリースラインとは、加飾成形品から基材及び離型層を剥離する際に、保護層表面に剥離ムラとして線状のムラが残ることを意味する。
【0019】
<ワックス>
ワックスとしては、合成ワックス、石油ワックス、動物由来のワックス、植物由来のワックスが用いられる。合成ワックスは、炭化水素系化合物を化学合成して作られるものであり、炭化水素系合成ワックスと、高級脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等の非炭化水素系合成ワックスとに大別される。炭化水素系合成ワックスとしては、エチレンの重合やポリエチレンの熱分解により製造されるポリエチレンワックスと、一酸化炭素と水素を反応させて製造されるフィッシャー・トロプシュ(Fischer-Tropsch)ワックスとがある。
【0020】
石油ワックスとしては、パラフィンワックス{原油の減圧蒸留留出油部分から、結晶性の良い炭化水素を分離抽出したもので、直鎖状炭化水素(ノルマルパラフィン)が主成分である。}やマイクロクリスタリンワックス{主として原油の減圧蒸留残渣油部分から取り出されるワックスで、構成している炭化水素は分岐炭化水素(イソパラフィン)や飽和環状炭化水素(シクロパラフィン)が多い。このためパラフィンワックスに比較して結晶が小さく、分子量は大きい。}等が挙げられる。
【0021】
動物由来のワックスとしては、蜜蝋(Bees Wax)、ウールワックス、鯨蝋(Spermaceti)、シェラック蝋(Shellac Wax)、いぼた蝋(Chinese Wax)等が挙げられる。
また、植物由来のワックスとしては、カルナバワックス、キャンデリラワックス、木蝋、ライスワックス(米ぬか蝋)とが挙げられる。
【0022】
上記ワックスの含有量は、離型層を構成する樹脂組成物(固形分)中に18〜60質量%含むことを要する。ワックスの含有量が18質量%未満であると、離型層と保護層との剥離強度が大きくなり、加飾成形品表面にリリースラインが多く残存する恐れがある。また、ワックスの含有量が60質量%より多くなると、加飾成形品表面のマット感が低下し、また絵柄層を印刷した際のインキの転移状態が損なわれる恐れがある。上記ワックスの含有量は、同様の観点から、好ましくは、25〜55質量%、更に好ましくは30〜50質量%であることが望ましい。
また上記ワックスを添加することによって後述する無機フィラーを多量に添加することなく、少ない又は添加しない状態であっても、マット感を付与することができる。特に無機フィラーの添加量を、離型層を形成する樹脂組成物中に、固形分比として30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下としたときであってもよりよいマット感を付与することができる。
上述の各種ワックスの内、パラフィンワックス及びカルナバワックスを用いることが良好なマット感が得られる観点から好ましい。また、使用されるワックスの軟化点としては、50〜90℃であることが、より好ましくは50〜70℃であることが剥離強度の観点から好ましい。なお、ワックスの軟化点は、JIS K2207−6の石油アスファルト軟化点試験方法である環球法を用いて測定されるものである。
【0023】
<無機フィラー>
本発明の加飾シートを構成する離型層を形成する樹脂組成物中には、更に無機フィラーを含むことが好ましい。無機フィラーの含有量は、2〜50質量%、好ましくは5〜45質量%、特に好ましくは5〜20質量%とすることにより、加飾成形品表面のマット感をより豊かなものとすることができる。使用される無機フィラーとしては、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、カオリンなどの無機フィラーを挙げることができる。これらの無機フィラーの中でも、シリカ及び炭酸カルシウムがマット感を豊かにすることができるので好ましく、特にシリカが好ましい。また、シリカと炭酸カルシウムを併用して用いることもできる。シリカと炭酸カルシウムを併用して用いる際の炭酸カルシウムの添加量としては、離型層を形成する樹脂組成物中に、固形分比として30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下となるように添加することが望ましい。炭酸カルシウムの添加量が30質量%以下であれば、加飾成形品表面に良好な耐水性を付与することができる。また、用いられる無機フィラーの平均粒径は、0.1〜10μm、特に好ましくは、0.2〜5μmのものを用いることがよりマット感を付与できる点から望ましい。
なお、無機フィラーの平均粒径の測定は、レーザー回折法を用いて100個測定し、画像解析から算出した数平均粒径を用いる。
本発明の加飾シートを構成する離型層12の厚みは、通常、0.01〜5μm程度であり、好ましくは、0.05〜3μmの範囲である。
【0024】
〔保護層〕
本発明における保護層13は、上記した離型層12との相乗効果により、加飾成型品にマット感を有する優れた意匠を付与することを可能とし、また好ましくは保護層13、絵柄層14、及び接着層15からなる転写層の基材シート11からの剥離を容易に行うとともに、該転写層の射出樹脂への転写後においては、絵柄層の保護層として機能させるために設けられる。この保護層を有することで、本発明の加飾シートから転写層を確実に、かつ容易に被転写体へ転写させることができる。保護層は、例えば、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、硝化綿などの熱可塑性樹脂を単独で又は複数を混合した樹脂組成物を用い、形成することができる。保護層に用いられる樹脂組成物は、離型層を構成する樹脂組成物との相乗効果により、離型層と保護層との剥離強度を好ましい範囲に調整する観点から適宜選択することが重要となる。このような観点から、保護層に用いられる樹脂組成物はアクリル樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、これらの樹脂をアクリル樹脂の含有量が80〜99.99質量%、好ましくは90〜99.99質量%、より好ましくは99〜99.99質量%の範囲で混合したものがより好ましい。
【0025】
また、保護層には、離型性を向上させるために離型性材料を用いることもできる。用いられる離型性材料としては、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、タルクやシリカの微粉末、界面活性剤や金属セッケンなどの潤滑材などが使用できる。離型性材料の樹脂100質量部に対する含有量は、1〜10質量部が好ましく、3〜5質量部がより好ましい。保護層は、上記の必要な材料を適当な溶剤により、溶解または分散させて保護層用塗布液を調製し、これを離型層上にグラビア印刷法、スクリーン印刷法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法などの手段により塗布、乾燥して形成することができる。その乾燥後の厚さは、通常0.1〜10μmであり、1〜5μmが好ましい。
【0026】
〔絵柄層〕
本発明における絵柄層14は、模様や文字などとパターン状の絵柄を表現するために必要に応じて設けられる層である。絵柄層14の絵柄は任意であるが、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字などからなる絵柄を挙げることができる。また、絵柄層14は、上記絵柄を表現する柄パターン層及び全面ベタ層を単独で又は組み合わせて設けることができる。全面ベタ層は、通常、隠蔽層、着色層、着色隠蔽層などとして用いられる。絵柄層14は、通常は、上記の保護層13に印刷インキでグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷、昇華転写印刷、インキジェット印刷などの公知の印刷法により形成することで、図1に示すように保護層13と接着層15との間に形成される。絵柄層14の厚みは、意匠性の観点から5〜40μmが好ましく、20〜30μmがより好ましい。
【0027】
絵柄層14の形成に用いられる印刷インキのバインダー樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、セルロース樹脂などを好ましく挙げることができるが、アクリル樹脂単独又はアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂との混合物を主成分とするのが好ましい。これらの中では、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂又は別のアクリル樹脂を混合すると印刷適性、成形適性がより良好となり好ましい。ここで、アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体やその共重合体、該(メタ)アクリル酸アルキルエステルと分子中に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとを共重合させて得られるアクリルポリオールを用いることもできる。また、フッ素などによる変性アクリル樹脂も用いることができる。
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂としては、通常、酢酸ビニル含有量が5〜20質量%程度、平均重合度350〜900程度のものが用いられる。必要に応じ、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂にさらにマレイン酸、フマル酸などのカルボン酸を共重合させてもよい。アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂との混合比は、アクリル樹脂/塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂=1/9〜9/1(質量比)程度である。この他、副成分の樹脂として、必要に応じて、適宜その他の樹脂、例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどの塩素化ポリオレフィン樹脂などの樹脂を混合してもよい。
【0028】
本発明にかかる絵柄層14に用いられる着色剤としては、アルミニウム、クロム、ニッケル、錫、チタン、リン化鉄、銅、金、銀、真鍮などの金属、合金、又は金属化合物の鱗片状箔粉からなるメタリック顔料、マイカ状酸化鉄、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、二酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、着色二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛などの箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料、アルミン酸ストロンチウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸バリウム、硫化亜鉛、硫化カルシウムなどの蛍光顔料、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモンなどの白色無機顔料、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラックなどの無機顔料、イソインドリノンイエロー、ハンザイエローA、キナクリドンレッド、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラックなどの有機顔料(染料も含む)を1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0029】
このような絵柄層14は、本発明の加飾シートに意匠性を付与するために設けられる層であるが、意匠性を向上させる目的で、さらに金属薄膜層などを形成してもよい。金属薄膜層の形成は、アルミニウム、クロム、金、銀、銅などの金属を用いて、真空蒸着、スパッタリングなどの方法で製膜することができる。この金属薄膜層は全面に設けても、部分的にパターン状に設けてもよい。絵柄層14の形成に用いられる印刷インキは、上記成分の他に、沈降防止剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、増粘剤、消泡剤、滑剤などを適宜添加することができる。印刷インキは、上記成分を、通常溶剤に溶解又は分散した態様で提供される。溶剤としては、バインダー樹脂を溶解または分散させるものであればよく、有機溶剤及び/又は水を使用することができる。有機溶剤としては、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなどのエステル類、アルコール類が挙げられる。
【0030】
〔接着層〕
本発明にかかる接着層15は、好ましくは保護層、絵柄層及び接着層からなる転写層を接着性よく加飾成形品に転写するために形成される。この接着層15に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などの樹脂を挙げることができる。これらの樹脂の1種または2種以上を溶液、あるいはエマルジョンなど塗布可能な形にしたものを、前記保護層で挙げた塗布方法の中から適した方法をそれぞれ選択して、塗布、乾燥することにより形成でき、その厚さは、0.1〜5μm程度が好ましい。
【0031】
接着層15には、上記のような樹脂と、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物、サリシレート系化合物などの有機系の紫外線吸収剤や、また亜鉛、チタン、セリウム、スズ、鉄などの酸化物のような無機系の紫外線吸収能を有する微粒子の添加剤を用いることができる。また、着色顔料、白色顔料、体質顔料、充填剤、帯電防止剤、酸化防止剤、蛍光増白剤なども適宜、必要に応じて使用することができる。
【0032】
〔加飾シートの製造方法〕
本発明の加飾シートは、基材11上の表面に、好ましくは離型層12、保護層13、絵柄層14及び接着層15を、グラビア印刷、ロールコートなどの公知の印刷又は塗布手段により積層して製造することができる。また、絵柄層14を例えば上記のように柄パターン層と、全面ベタ層との組み合わせとする場合は、一層を積層した後、乾燥し、その後次の層を積層すればよい。
【0033】
〔加飾成形品の製造方法〕
このようにして得られた本発明の加飾シートは、射出成形同時転写加飾に好適に用いられる。
射出成形同時転写加飾による本発明の加飾成形品の製造方法は、以下、(1)〜(5)を含むものである。
(1)まず、本発明の製造方法により得られた加飾シートの接着層側を金型内に向けて、熱盤によって接着層側から加飾シートを加熱する工程、
(2)加熱された該加飾シートを金型内形状に沿わせて予備成形して型締する工程、
(3)射出樹脂を金型内に射出する工程、
(4)該射出樹脂が冷却した後に金型から基材付き加飾成形品を取り出す工程、及び
(5)該加飾成形品から基材及び剥離層を剥離する工程。
上記工程(1)及び(2)において、加飾シートの加熱温度は、基材のガラス転移温度近傍以上で、かつ、溶融温度(または融点)未満の範囲であることが好ましい。通常はガラス転移温度近傍の温度で行うことが、より好ましい。なお、上記のガラス転移温度近傍とは、ガラス転移温度±5℃程度の範囲をさし、基材を構成する熱可塑性樹脂の種類によっても相違するが、基材がポリエステル樹脂である場合、一般に70〜130℃程度である。
【0034】
上記工程(3)において、後述する射出樹脂を溶融させて、キャビティ内に射出して該加飾シートと射出樹脂とを一体化させる。射出樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、加熱溶融によって流動状態にして、また、射出樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、未硬化の液状組成物を室温又は適宜加熱して流動状態で射出して、冷却して固化させる。これによって、加飾シートが、形成された樹脂成形体と一体化して貼り付き、加飾成形品となる。射出樹脂の加熱温度は、射出樹脂によるが、一般に180〜240℃程度である。
【0035】
このようにして得られた加飾成形品は、冷却して金型から取り出した後、基材フィルムを剥離することにより保護層、絵柄層、及び接着層からなる転写層が転写された加飾成形品を得ることができる。
【0036】
〔製造方法:射出樹脂〕
加飾成形品に用いられる射出樹脂としては、射出成形可能な熱可塑性樹脂あるいは、熱硬化性樹脂(2液硬化性樹脂を含む)であればよく、特に制限されず、様々な樹脂を用いることができる。このような熱可塑性樹脂材料としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル重合体、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂)などのスチレン樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリアクリロニトリルなどのアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、エチレングリコール−テレフタル酸−イソフタル酸共重合体樹脂、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、2液反応硬化型のポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独でもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
また、これらの樹脂には、必要に応じて各種添加剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、可塑剤、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどの無機物粉末、木粉、ガラス繊維などの充填剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤などを添加することができる。なお、射出樹脂は、用途に応じて適宜、着色剤を添加して着色した樹脂を使用しても良い。着色剤には、前述の基材フィルムに用いることのできるものと同様の公知の着色剤を使用できる。
加飾成形品を構成する射出樹脂成形体の厚さについては特に制限はなく、当該加飾成形品の用途に応じて選定されるが、通常1〜5mm、好ましくは2〜3mmである。
【0037】
なお、本発明で得られる射出樹脂、接着層、絵柄層、保護層、離型層及び基材をこの順で有する加飾成形品であって、該離型層が、バインダー樹脂及びワックスを含み、該ワックスの含有量が、18〜60質量%である樹脂組成物からなることを特徴とする基材付き加飾成形品は、離型層及び基材をマスキングフィルム(保護フィルム)として積層させたまま保管もしくは運搬し、使用直前に剥離して用いることができる。
【実施例】
【0038】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
〔評価方法〕
<成形後剥離強度>
加飾シートを用いて射出成形を行った直後の離型層と保護層間における剥離強度を以下の基準で評価した。
◎:剥離強度が非常に軽く、成形品表面にリリースラインがない。
○:剥離強度が軽く、成形品表面にリリースラインがほとんどない。
△:剥離強度がやや重く、成形品表面にリリースラインが残る。
×:剥離強度が重く、成形品表面にリリースラインが著しく残る。
<耐水性>
離型層を剥離後の加飾成形品を40℃の温水に24時間浸漬させ、加飾成形品表面の外観状況を観察した。
◎:加飾成形品表面の外観変化が見られない。
○:温水へ浸漬させた部分が若干白濁するが、意匠性は良い。
△:温水へ浸漬させた部分が白濁し意匠性が低い。
×:温水へ浸漬させた部分が著しく白濁し意匠性が失われる。
<成形品グロス値:艶変化>
離型層を剥離後の加飾成形品表面のグロス値を、グロスメーター(「GMX−202(型番)」:村上色彩技術研究所社製)を用いて、入射角60度の条件で測定した。数値が高いほど高艶であることを示し、数字が低いほど低艶であることを示す。
◎:グロス値が0〜5未満
○:グロス値が5〜10未満
△:グロス値が10〜15未満
×:グロス値が15以上
<印刷適性>
絵柄層を印刷した際に見られるインキの転移状態
◎:インキがムラなく転移され意匠性が極めて高い。
○:インキが若干見られるが意匠性は良い。
△:インキのムラが見られ意匠性が低いが、実用上問題ない。
×:インキのムラがあり意匠性が失われる。
【0039】
実施例1
(1)加飾シートの製造方法
易接着処理が施された2軸延伸PETフィルム(厚さ:50μm)上に、アクリル樹脂のエマルジョンとスチレン−アクリル共重合体樹脂のエマルジョンとを質量比1:1で混合して得られた混合樹脂溶液にシリカ粉末(平均粒子径4μm)及びパラフィンワックス(軟化点約66℃)を添加して離型層を形成するための塗布液を作成した。この塗布液中には、固形分比として、シリカが10質量%、パラフィンワックスが40質量%含まれていた。この離型層形成用の塗布液を塗布量3g/m2でグラビア印刷を施して離型層12を形成した。次いで、アクリル樹脂(平均分子量95,000)を塗布量4g/m2でグラビア印刷を施して保護層13を形成した。次いで、この保護層上に、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂とをバインダー樹脂とした印刷インキ(アクリル樹脂:50質量%、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂:50質量%)を塗布量3g/m2でグラビア印刷を施して木目模様の絵柄層14を形成し、さらにアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂とからなる樹脂(アクリル樹脂:50質量%、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂:50質量%)を塗布量4g/m2でグラビア印刷を施して接着層15を形成し、加飾シートを得た。
【0040】
(2)加飾成形品の製造
上記(1)で得られた加飾シートを、熱盤温度150℃で加熱して射出成形の金型内形状に沿うように成形して、金型内面に密着させた。金型は、80mm角の大きさで、立ち上がり10mm、コーナー部が3Rのトレー状である深絞り度の高い形状のものを用いた。一方、射出樹脂としてABS樹脂(日本エイアンドエル(株)製、商品名「クラスチックMTH−2」)を用いて、これを230℃にて溶融状態にしてから、キャビティ内に射出した。冷却して金型から取り出した後、基材シートを剥離して、表面に保護層、絵柄層、及び接着層からなる転写層を転写形成した加飾成形品を得た。該加飾成形品は、良好であり、マット感(低艶感)が豊かな高級感のある優れた意匠性を有し、また、本発明の加飾シートは、深絞り度の高い三次元曲面を有する表面形状の成形時でも破れることがなく、また、金型成形面に対して追随性が良好であることが分かった。なお、深絞りとは、加飾シートの成形前と成形後との面積比が130%以上となるような形状をいい、深絞り度が高いとは、面積比が大きいことをいう。
また、成形直後の剥離強度、耐水性、艶変化及び印刷適正について評価した結果を表1に示す。
【0041】
実施例2〜7
実施例1の加飾シートの製造方法において、離型層形成用の塗布液を固形分比が表1に示す塗布液を使用した以外は同様の方法で加飾シートを得た。得られた加飾シートについて、実施例1の加飾成形品の製造と同様の方法で加飾成形品を得て、成形直後の剥離強度、耐水性、成形品グロス値及び印刷適正について評価した結果を表1に示す。
実施例8
実施例1の加飾シートの製造方法において、アクリル樹脂とスチレン−アクリル共重合体樹脂のエマルジョンとを質量比1:1で混合して得られた混合樹脂溶液に変えて、水性ポリエステルを使用した以外は、同様の方法で加飾シートを得た。得られた加飾シートについて、実施例1の加飾成形品の製造と同様の方法で加飾成形品を得て、成形直後の剥離強度、耐水性、成形品グロス値及び印刷適正について評価した結果を表1に示す。
【0042】
比較例1〜8
実施例1の加飾シートの製造方法において、離型層形成用の塗布液を固形分比が表2に示す塗布液を使用した以外は同様の方法で加飾シートを得た。得られた加飾シートについて、実施例1の加飾成形品の製造と同様の方法で加飾成形品を得て、成形直後の剥離強度、耐水性、成形品グロス値及び印刷適正について評価した結果を表2に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
〔注〕表1において、
パラフィンワックスは、粒子径0.3μm、軟化点約66℃を有する市販品を使用した。
カルナバワックスは、粒子径0.2μm、軟化点約83℃を有する市販品を使用した。
シリカは、平均粒径4μmを有する市販品を使用した。
炭酸カルシウムは、平均粒径1μmを有する市販品を使用した。
【0046】
〔評価結果〕
表1に示す実施例1〜8の加飾成形シート及び加飾成形品は、表2に示す比較例1〜8の加飾成形シート及び加飾成形品と比較して、成形直後の剥離強度、耐水性、成形品グロス値に優れていることが分かった。なお、実施例2、実施例4及び実施例6における成形品グロス値は、△(グロス値が10〜15未満)であるが、実用上、問題ないものである。また、印刷適性においてもインキムラが若干見られるものの、意匠性の良い成形品が得られることが分かった。比較例1〜4は、ワックスを使用していない例であり、離型層を剥離できなかったり(比較例1及び2)、離型層を剥離できたとしても、成形直後の剥離強度が重く、剥離後、成形品表面にリリースラインが残ったり、成形品グロス値が大きく、マット感に欠けるものであることが分かる(比較例3及び4)。比較例5及び比較例6は、ワックスの含有量が少ない例であり、成形直後の剥離強度が良くないことを示している。また、比較例7及び比較例8は、ワックスの含有量が多すぎる例であり、成形品グロス値や印刷適性が良くないことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の加飾シートは、各種の加飾成形品に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0048】
10 加飾シート
11 基材フィルム
12 離型層
13 保護層
14 絵柄層
15 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に少なくとも離型層、保護層、絵柄層及び接着層を順に積層してなる加飾シートであり、該離型層が、バインダー樹脂及びワックスを含み、該ワックスの含有量が、18〜60質量%である樹脂組成物からなることを特徴とする加飾シート。
【請求項2】
離型層を構成する樹脂組成物は、更に無機フィラーを2〜50質量%含むものである請求項1に記載の加飾シート。
【請求項3】
ワックスの軟化点が、50〜90℃である請求項1又は2に記載の加飾シート。
【請求項4】
離型層を構成する樹脂組成物の無機フィラーが、シリカを含有する請求項2又は3に記載の加飾シート。
【請求項5】
離型層を構成する樹脂組成物の無機フィラーが炭酸カルシウムを含み、樹脂組成物中に30質量%以下含まれるものである請求項4に記載の加飾シート。
【請求項6】
バインダー樹脂が、アクリル樹脂とスチレン−アクリル共重合体とを含むものである請求項1〜5のいずれかに記載の加飾シート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の加飾シートの接着層側を金型内に向けて、熱盤によって接着層側から該加飾シートを加熱する工程、加熱された該加飾シートを金型内形状に沿わせ予備成形して型締する工程、射出樹脂を金型内に射出する工程、該射出樹脂が冷却した後に金型から基材付き加飾成形品を取り出す工程、及び該加飾成形品から基材及び離型層を剥離する工程を含む加飾成形品の製造方法。
【請求項8】
射出樹脂、接着層、絵柄層、保護層、離型層及び基材をこの順で有する加飾成形品であって、該離型層が、バインダー樹脂及びワックスを含み、該ワックスの含有量が、18〜60質量%である樹脂組成物からなることを特徴とする基材付き加飾成形品。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−75387(P2013−75387A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215681(P2011−215681)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】