説明

加飾ハードコートフィルム

【課題】熱転写印刷法によりハードコートフィルムのハードコート層に直接印刷をした加飾ハードコートフィルムを提供するものである。
【解決手段】ハードコートフィルムのハードコート層面に熱転写印刷法により加飾を行なった加飾ハードコートフィルムにおいて、ハードコートフィルムとして少なくとも一方の面のハードコート層面の表面張力が35mN/m以上であるハードコートフィルムを用い、前記ハードコート層面に熱転写印刷法により加飾するものであり、熱転写リボンとして基材上に少なくとも着色層及び又は金属蒸着層を設け、さらに接着層を積層されたものであり、接着層にポリエステル樹脂及び又はエポキシ樹脂を含有する熱転写リボンを用いる加飾ハードコートフィルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコートの表面に直接、熱転写印刷をした加飾ハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やスマートフォンなどのモバイル機器の最表面に、傷付防止を目的としてハードコートフィルムを粘着層を介して貼着されるケースが多く見受けられる。またそれと併せてモバイル機器の意匠性を高めるため、ハードコートフィルムのハードコート層と反対側の面に印刷を行い、モバイル機器のディスプレイに加飾されるケースが増加している(特許文献1)。
【0003】
タッチパネル機能を具備したモバイル機器に該ハードコートフィルムを貼着する場合、タッチパネルの製造工程中に加わる加熱処理工程によってハードコートフィルムに反りが生じてしまう。これは加熱により基材であるPETフィルムが収縮するのと同時にハードコート層も収縮するからである。つまり片面のみにハードコートをコートしたハードコートフィルムを用いると、加熱工程で発生したハードコートフィルムの反りが、タッチパネルの機能に悪影響を及ぼす可能性が高い。そのため、タッチパネル機能を具備したモバイル機器のディスプレイ部の最表面に貼着するハードコートフィルムは、通常基材の両面をハードコート処理したフィルムであることが一般的である。よって加飾する場合には、スクリーン印刷法などによって裏側のハードコート面に直接印刷する方法が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4021025号公報
【特許文献2】特開平10−129164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近では顧客要望の多様化と短納期化により、モバイル機器一機種当りの生産台数が減少傾向にあり、前述のスクリーン印刷法を用いて加飾を施すことがコストアップの原因になることが指摘されている。そのため、スクリーン印刷法に替わる方法でハードコート層に加飾を行うことが種々検討されている。
【0006】
特に有望な方法として挙げられるのは、熱転写プリンタを使用した熱転写印刷法である。本手法はオンデマンド印刷性に優れ、低コストで多様なデザインに対応できることを特徴とする印刷方法である。ところがハードコート層上に熱転写印刷することは以前から検討されているものの、ハードコート層と熱転写リボンとの密着性が得られず、満足できる品質が得られなかった。このため特許文献2のような特殊な方法を用いて熱転写印刷性を確保しなければならなかった。
【0007】
本発明は上記の問題を解決するために、熱転写プリンタを使用した熱転写印刷法によりハードコート層に直接印刷した加飾ハードコートフィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明は、ハードコートフィルムのハードコート層面に熱転写印刷法により加飾を行なった加飾ハードコートフィルムにおいて、ハードコートフィルムとして少なくとも一方の面のハードコート層面の表面張力が35mN/m以上であるハードコートフィルムを用い、前記ハードコート層面に熱転写印刷法により加飾するものであり、熱転写リボンとして、基材上に少なくとも着色層及び又は金属蒸着層を設け、さらに接着層を積層されたものであり、接着層にポリエステル樹脂及び又はエポキシ樹脂を含有する熱転写リボンを用いるものである。
【0009】
第2発明は、第1発明記載の加飾ハードコートフィルムにおいて、ハードコートフィルムが少なくとも一方の面のハードコート層面の表面張力が35mN/m以上であり、他方の面のハードコート層の表面張力が35N/m未満とするハードコートフィルムを用いるものである。
【0010】
第3発明は、ハードコートフィルムのハードコート層面に熱転写印刷法により加飾を行なった加飾ハードコートフィルムにおいて、ハードコートフィルムとして少なくとも一方の面のハードコート層面のオレイン酸接触角が15度未満であり、かつ水接触角が80度未満であるハードコートフィルムを用い、前記ハードコート層面に熱転写印刷法により加飾するものであり、熱転写リボンとして、基材上に少なくとも着色層及び又は金属蒸着層を設け、さらに接着層を積層されたものであり、接着層にポリエステル樹脂及び又はエポキシ樹脂を含有する熱転写リボンを用いるものである。
【0011】
第4発明は、第3発明記載の加飾ハードコートフィルムにおいて、ハードコートフィルムが一方の面のハードコート層のオレイン酸接触角が15度未満であり、かつ水接触角が80度未満であり、他方の面のハードコート層のオレイン酸接触角が15度以上であり、かつ水接触角が80度以上であるハードコートフィルムを用いるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のハードコートフィルムと熱転写リボンを用いることで、ハードコート層に直接熱転写印刷することが可能となり、加飾ハードコートフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で使用する基材は、各種のプラスティックからなるフィルムであれば、特に限定されない。例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、セルロース系樹脂等よりなるフィルムが例示されるが、これらに限定されるものではない。取り扱性、貼着層との接着力の向上、コストの面より好ましくはポリエステルフィルムを用いるとよい。基材の厚みは、用途に応じて適宜選択すればよいが、通常4〜400μmの範囲のものを用いる。
【0014】
本発明のハードコート層に用いられる化合物は電離放射線により重合する化合物から主に形成されていることが好ましく、ラジカル重合反応を形成する(メタ)アクリロイル基を有する化合物や、カチオン重合反応を形成する化合物であることが好ましい。(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては分子内に(メタ)アクリロイル基を1以上有する化合物を意味し、モノマーであっても、オリゴマーであってもよい。
【0015】
本発明では、アクリロイル基とメタアクリロイル基を総称して、(メタ)アクリロイル基という。すなわち、(メタ)アクリロイル基を有する化合物とは、アクリロイル基のみを有する化合物であってもよく、メタアクリロイル基のみを有する化合物であってもよく、アクリロイル基とメタアクリロイル基との両方を有するものであってもよい。また、以下に記載する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸エステルについても同様である。
【0016】
本発明に係る(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、以下に記載する多官能(メタ)アクリレートや単官能(メタ)アクリレートのモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
【0017】
多官能(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングルコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングルコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、及びこれらの出発アルコール類へのエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物のポリ(メタ)アクリレート類、分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴエステル(メタ)アクリレート類、オリゴエーテル(メタ)アクリレート類、オリゴウレタン(メタ)アクリレート類、及びオリゴエポキシ(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(n=2)(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(n=2.5)(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート等のフタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートモノエステル、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、4−グリシジルオキシブチルアクリレート、ダイアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0018】
これらの(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0019】
一方、カチオン重合を形成する化合物としては、エポキシ系樹脂が通常使用される。このエポキシ系樹脂としては、例えばビスフェノール樹脂やノボラック樹脂などの多価フェノール類にエピクロルヒドリンなどでエポキシ化した化合物、直鎖状オレフィン化合物や環状オレフィン化合物を過酸化物などで酸化して得られた化合物などが挙げられる。
【0020】
電離放射線重合反応に用いられる光重合開始剤としては、ラジカル重合型の化合物に対しては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロプル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステルなどが挙げられる。また、カチオン重合型の化合物に対する光重合開始剤としては、例えば芳香族スルホニウムイオン、芳香族オキソスルホニウムイオン、芳香族ヨードニウムイオンなどのオニウムと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネートなどの陰イオンとからなる化合物が挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その配合量は、重合性化合物100質量部に対して、通常0.2〜10質量部の範囲で選ばれる。
【0021】
前記電離放射線硬化性化合物以外にもハードコート性を大きく損なわない範囲で熱可塑性ポリマーを添加することができる。該熱可塑性ポリマーとしては、例えばアクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ブチラール系樹脂、ゼラチン、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0022】
さらに、必要に応じて、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、界面活性剤、有機系潤滑剤、有機系微粒子、無機系微粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料、帯電防止剤などを含有していてもよい。
【0023】
本発明のハードコートフィルムの表面張力は35mN/m以上であることが好ましい。また、両面にハードコートが塗工されたハードコートフィルムの一方の面の表面張力が35mN/mでもう一方の面の表面張力が35mN/mであることが好ましい。さらに、ハードコートフィルムの接触角はオレイン酸接触角が15度未満であり、かつ水接触角が80度未満であることが好ましい。また、両面にハードコートが塗工されたハードコートフィルムの一方の面の接触角において、オレイン酸接触角が15度未満であり、かつ水接触角が80度未満であり、他方の面のオレイン酸接触角が15度以上であり、かつ水接触角が80度以上であることが好ましい。
【0024】
ハードコート塗膜の厚みは1μm以上20μm以下、好ましくは3μm以上15μm以下であることが好ましい。該範囲未満ではハードコート性が十分得られず、塗膜に傷がつきやすい。一方、該範囲を超えるとコストアップにつながる。また、両側にハードコートを塗工する場合、その両層の膜厚差は30%以内に抑えることが好ましい。該範囲を超えると、ハードコートフィルムのカールが大きくなり、次工程移行の取り扱い性に悪影響がでたり、タッチパネルを組んだ際に、タッチパネル機能に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0025】
ハードコートフィルムに加飾行うためには、少なくとも一方の面にスクリーン印刷法、グラビア印刷法、パッド印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、熱転写印刷法等を用いて加飾印刷を行うが、なかでも熱転写印刷法は、少ロット生産性、オンデマンド性、印刷の多様性等が優れているため、特に好ましい。熱転写印刷法によりハードコート面に印刷する場合、表面張力が35mN/m以上であるハードコート層に印刷すると印刷適性が優れる。表面張力が35mN/m未満のハードコート層に熱転写印刷すると、印字の欠けなどの印刷不良が生じやすく、好ましくない。同様に熱転写印刷法によりハードコート層に印刷する場合、オレイン酸接触角が15度未満であり、かつ水接触角が80度未満であるハードコート面に印刷すると印刷適性が優れる。オレイン酸接触角が15度以上であり、かつ水接触角が80度以上であるハードコート層に印刷するすると、印字の欠けなどの印刷不良が生じやすく、好ましくない。
【0026】
本発明の熱転写印刷法による加飾に用いる熱転写リボンは、公知の技術で作製された熱転写リボンを使用すれば良い。熱転写リボンは、基材上に着色層を設けたものである。着色層は、バインダーと色材等からなるものである。特にバインダーとしてアクリル系樹脂を含有するとハードコート層への熱転写が良好となる。アクリル系樹脂としては、メチルメタアクリレート樹脂、アクリル酸メチルエステル樹脂、アクリル酸エチルエステル樹脂、アクリル酸ブチルエステル樹脂及びアクリル酸メチルエチルエステル樹脂などから選ばれた1種以上が構造中に含まれるポリマーおよびコポリマーでなることが好ましい。バインダーの中で、アクリル系樹脂を少なくとも10重量%以上含有すると熱転写性が優れたものとなる。含有量が前記範囲未満であるとインクと基材との離型性が低下し、印字時に剥離音が生じたり、重ね印字時にコレクトと呼ばれる、2次色印字時に1次色を引き剥がしてしまう転写不良が生じやすい。より好ましい含有量は20〜80重量%であり、特に好ましい含有量は40〜60重量%である。
【0027】
その他のバインダーとしては、ワックス、熱可塑性樹脂が挙げられる。ワックスとしては、たとえば木ろう、蜜ろう、カルナバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、セレシンワックスなどの天然ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油系ワックス;酸化ワックス、エステルワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、α−オレフィン−無水マレイン酸共重合ワックスなどの合成ワックス;ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などの高級脂肪酸;ステアリルアルコール、ドコサノールなどの高級脂肪族アルコール;高級脂肪酸モノグリセリド、ショ糖の脂肪酸エステル、ソルビタンの脂肪酸エステルなどのエステル類;ステアリン酸アミド、オレイルアミドなどのアミド類およびビスアミド類などの1種または2種以上が使用できる。
【0028】
熱可塑性樹脂としては、たとえばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体などのオレフィン系共重合樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴムなどのエラストマー類、ポリイソブチレン、ポリブテンなどの1種または2種以上があげられる。
【0029】
色材としてはカーボンブラックの他、有機、無機の顔料及び/または染料を用いることができる。
【0030】
熱転写リボンの基材としては、厚み2〜9μmの範囲のポリエチレンテレフタレートフィルムを好適に用いる。着色層の反対面には、シリコーン系樹脂による耐熱層を設ける。
【0031】
着色層の厚みとしては、0.1〜5.0μmの範囲が好ましく、0.3〜2.0μmであればさらに好ましい。前記範囲未満であると印字濃度不足が生じ、前記範囲を超えると印字のキレ性劣化、感度低下が生じやすい。
【0032】
熱転写リボンは、基材上に着色層インクを塗工乾燥することによって構成することができる。
【0033】
金属蒸着層の金属としては、アミルニウム、亜鉛、錫、ニッケル、クロム、チタン、銅、銀、金、白金などの単体、混合物、合金などが使用できるが、通常アルミニウムが好ましく用いられる。金属蒸着層は真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理蒸着法や化学蒸着法などにより形成できる。 金属蒸着層の厚さは、高光沢の金属光沢をうる点から、10〜100nm、中でも20〜80nmの範囲が好ましい。
【実施例】
【0034】
本発明を以下の実施例に従って、さらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0035】
[熱転写リボン1の形成]
裏面に耐熱滑性層を設けた厚さ4.5μmのPETフィルムの表側の面に下記離型層インクを乾燥膜厚で0.5μmになるようにコーティングした。
【0036】
ダイヤナールBR80(アクリル樹脂、三菱レイヨン製) 10重量部
MEK 90重量部
【0037】
次に上記離型層上に下記着色層インクを乾燥膜厚で3μmになるようにコーティングした。
【0038】
デンカブチラール2000−1(ブチラール樹脂、電気化学工業製)6重量部
R−980(酸化チタン、石原産業製) 14重量部
分散剤 2重量部
IPA 78重量部
【0039】
次に上記着色層上に下記接着層インクを乾燥膜厚で0.5μmになるようにコーティングし熱転写リボンを作製した。
【0040】
バイロン200(ポリエステル樹脂、東洋紡製) 10重量部
MEK 90重量部
【0041】
[熱転写リボン2の形成]
上記熱転写リボン1のうち、接着層インクを下記に変えた以外は同様にして熱転写リボンを形成した。
【0042】
エピコート1003(エポキシ樹脂、JER製) 10重量部
MEK 90重量部
【0043】
[熱転写リボン3の形成]
上記熱転写リボン1のうち、接着層インクを下記に変えた以外は同様にして熱転写リボンを形成した。
【0044】
サンプレンIB104(ウレタン樹脂、三洋化成製) 33重量部
トルエン 44重量部
IPA 23重量部
【0045】
[熱転写リボン4の形成]
裏面に耐熱滑性層を設けた厚さ4.5μmのPETフィルムの表側の面に下記離型層インクを乾燥膜厚で0.5μmになるようにコーティングした。
【0046】
ダイヤナールBR80(アクリル樹脂、三菱レイヨン製) 10重量部
MEK 90重量部
【0047】
次に上記離型層上に真空蒸着機にてアルミ蒸着層を厚み20nmで形成し、さらにアルミ蒸着層上に下記接着層インクを乾燥膜厚で0.5μmになるようにコーティングし、熱転写リボンを形成した。
【0048】
UE3400(ポリエステル樹脂、ユニチカ製) 10重量部
MEK 90重量部
【0049】
[ハードコートフィルム1の形成]
厚さ100μmの光学PETの片面にハードコート剤HC−1を5μmコーティングし、積算光量500mj/cmの紫外線を照射し、塗膜を硬化させた。次にHC−1をコーティングした反対側の面に下記ハードコート剤HC−2を5μmコーティングし、積算光量500mj/cmの紫外線を照射し、塗膜を硬化させた。
【0050】
[HC−1]
ライトエステルTMP(アクリレートモノマー、共栄社製) 20重量部
NKオリゴU−4HA(ウレタンアクリレート、新中村化学製) 18.5重量部
イルガキュア184(光開始剤、チバスペシャリティケミカル製) 1.5重量部
MEK 60重量部
【0051】
[HC−2]
ライトアクリレートPE−3A(アクリレートモノマー、共栄社製) 20重量部
NKオリゴU−4HA(ウレタンアクリレート、新中村化学製) 20重量部
メガファックF171(フッ素系界面活性剤、DIC製) 0.2重量部
イルガキュア184(光開始剤、チバスペシャリティケミカル製) 1.5重量部
MEK 58.3重量部
【0052】
[ハードコートフィルム2の形成]
厚さ100μmの光学PETの片面にハードコート剤HC−2を5μmコーティングし、積算光量500mj/cm2の紫外線を照射し、塗膜を硬化させた。次にHC−2をコーティングした反対側の面に下記ハードコート剤HC−3を5μmコーティングし、積算光量500mj/cm2の紫外線を照射し、塗膜を硬化させた。
【0053】
[HC−3]
ライトアクリレートPE−3A(アクリレートモノマー、共栄社製) 15重量部
NKオリゴU−4HA(ウレタンアクリレート、新中村化学製) 10重量部
X−62−7509(シリコーンアクリレート、信越化学製) 14重量部
イルガキュア184(光開始剤、チバスペシャリティケミカル製) 1重量部
MEK 60重量部
【0054】
以上の様にして作製したハードコートフィルムを熱転写プリンタを用いて、前記熱転写リボンで印字を行った。評価項目および評価基準は以下の通りである。
1.表面張力
ヌレ試薬を用いて、ハードコート印刷面側のヌレ指数を測定し、表面張力とした。
2.接触角
ハードコート印刷面側のオレイン酸および水接触角を測定した。測定器は、協和界面科学(株)製のCA−D型を使用した。
3.ハードコートの干渉ムラ
非印刷面側のハードコート層の干渉ムラレベルを以下の基準で評価した。
○:干渉ムラ無し
△:大きなマトリックスの干渉ムラが見える
×:細かいマトリックスの干渉ムラが見える
4.熱転写印刷適性
熱転写プリンタ(自社製)を使用し、スピード25mm/sec、印字エネルギー40mj/mmで印字した際の、インクの転写性を以下の基準で評価した。
[インクのハードコート面への転写性]
5:特に良好
4:良好
3:印字の欠けがみられる
2:印字の欠けが大きい
1:転写不可
[印字のキレ]
4:特に良好
3:良好
2:一部面状に転写する部分がある
1:大部分が面状転写
上記方法に従って測定結果および評価結果を表1にまとめる。
【0055】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードコートフィルムのハードコート層面に熱転写印刷法により加飾を行なった加飾ハードコートフィルムにおいて、ハードコートフィルムとして少なくとも一方の面のハードコート層面の表面張力が35mN/m以上であるハードコートフィルムを用い、前記ハードコート層面に熱転写印刷法により加飾するものであり、熱転写リボンとして、基材上に少なくとも着色層及び又は金属蒸着層を設け、さらに接着層を積層されたものであり、接着層にポリエステル樹脂及び又はエポキシ樹脂を含有する熱転写リボンを用いることを特徴とする加飾ハードコートフィルム。
【請求項2】
請求項1記載の加飾ハードコートフィルムにおいて、ハードコートフィルムが少なくとも一方の面のハードコート層面の表面張力が35mN/m以上であり、他方の面のハードコート層の表面張力が35N/m未満であることを特徴とする加飾ハードコートフィルム。
【請求項3】
ハードコートフィルムのハードコート層面に熱転写印刷法により加飾を行なった加飾ハードコートフィルムにおいて、ハードコートフィルムとして少なくとも一方の面のハードコート層面のオレイン酸接触角が15度未満であり、かつ水接触角が80度未満であるハードコートフィルムを用い、前記ハードコート層面に熱転写印刷法により加飾するものであり、熱転写リボンとして、基材上に少なくと着色層及び又は金属蒸着層を設け、さらに接着層を積層されたものであり、接着層にポリエステル樹脂及び又はエポキシ樹脂を含有する熱転写リボンを用いることを特徴とする加飾ハードコートフィルム。
【請求項4】
請求項3記載の加飾ハードコートフィルムにおいて、ハードコートフィルムが一方の面のハードコート層のオレイン酸接触角が15度未満であり、かつ水接触角が80度未満であり、他方の面のハードコート層のオレイン酸接触角が15度以上であり、かつ水接触角が80度以上であることを特徴とする加飾ハードコートフィルム。

【公開番号】特開2011−110903(P2011−110903A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271702(P2009−271702)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000237237)フジコピアン株式会社 (130)
【Fターム(参考)】