説明

加飾フィルム及び加飾成形品

【課題】階調表現を有する加飾成形品を従来の方法よりも短納期にて提供することを目的とする。
【解決手段】アクリルフィルム上に意匠層及び隠蔽層が順に積層し、意匠層はオフセット印刷によって積層し、隠蔽層はシルクスクリーン印刷によって積層する。また、意匠層は、少なくとも顔料、及び紫外線硬化型樹脂の混合物で生成し、隠蔽層は、少なくとも顔料、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、及びアクリル樹脂の混合物で生成されるか、又は少なくとも顔料及びポリエステル樹脂の混合物の何れかで生成し、隠蔽層の厚さは、20μm以上で50μm以下の範囲内に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話などの小型デジタル機器に複雑な意匠を設けるために用いるフィルムインサート成形用の加飾フィルムと、それを用いて製造する加飾成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック成形品に複雑な意匠(例えば、木目模様)を付与する方法として、アクリルフィルムから成る基材上に、印刷法により絵柄を形成した加飾フィルムを、射出成形用金型の中に入れ、型閉め後、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体樹脂(ABS)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂(PC)などの溶融樹脂を用いて射出成形し、アクリルフィルムが最外層となるように絵柄と成形樹脂とを一体化させた、いわゆる成形同時加飾法がある(特許文献1〜3)。
【0003】
成形同時加飾法に用いる「加飾フィルム」の基材として、アクリルフィルムが用いられる理由としては、印刷によって形成した絵柄が鮮明に見えるだけの透明性を有すること、射出成形品の3次元構造に沿うだけの変形性を持っていること、紫外線を含む太陽光に晒されても変色しにくく絵柄に影響を与えにくいこと、が挙げられる。
また、絵柄を形成するには一般的な印刷法(例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、フレキソ印刷)が使えると考えられるが、実際の製品にはグラビア印刷、又はシルクスクリーン印刷の何れか一方のみを使用していることが多い。両者の使い分けに関しては、少量多品種生産を行う場合に、製版の時間が短くて済むシルクスクリーン印刷が使用されるが、細やかな意匠が必要で且つある程度まとまった数量を生産できる場合にはグラビア印刷が用いられるようである。
【0004】
数ある印刷方法のうち、グラビア印刷とシルクスクリーン印刷の2種が使われている理由の一つは、射出成形を行う溶融樹脂が濃色であった場合、インキ膜厚を大きくして成形樹脂の色を隠蔽する必要があるためである。オフセット印刷やフレキソ印刷といった平版又は凸版を使用する印刷法では、インキ膜厚は1〜2μm程度と薄く、重ね刷りによって5〜10μmが積層できるシルクスクリーン印刷に比べて劣る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−16498号公報
【特許文献2】特開平10−71680号公報
【特許文献3】特許第4194670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
グラビア印刷は、オフセット印刷と比較すると、インキ膜厚を大きくとることができるほか、濃淡印刷に向く印刷法であるが、製版の手間がかかるために小ロット、短納期の生産には向かない。一方、シルクスクリーン印刷を用いた場合には、グラビア印刷に比べると製版に時間がかからず、その結果版の価格も安価である。しかし、スクリーン版の解像できる最小開口径の制限のため、トーンジャンプのない濃淡の階調表現が難しく、グラビア印刷やオフセット印刷に比べて印刷スピードも遅い。
つまり、プラスチック成形品に複雑な意匠を付与する方法として、グラビア印刷やスクリーン印刷を用いた場合には、階調表現が求められる意匠のある加飾フィルムを、小ロット及び短納期で生産することが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る加飾フィルムは、アクリルフィルム上に意匠層及び隠蔽層が順に積層され、前記意匠層がオフセット印刷によって積層され、前記隠蔽層がシルクスクリーン印刷によって積層されることを特徴とする。
また、前記意匠層は、少なくとも顔料、及び紫外線硬化型樹脂の混合物で生成され、前記隠蔽層は、少なくとも顔料、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、及びアクリル樹脂の混合物で生成されるか、又は少なくとも顔料及びポリエステル樹脂の混合物の何れかで生成され、前記隠蔽層の厚さは、20μm以上で50μm以下の範囲内に設定されることを特徴とする。
【0008】
また、前記隠蔽層の上に接着層が積層され、前記接着層は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、及びウレタン樹脂の少なくとも一つで生成され、前記接着層の厚さは、3μm以上で10μm以下の範囲内に設定されることを特徴とする。
本発明に係る加飾成形品は、成形樹脂の上に、前述した加飾フィルを積層された加飾成形品であって、前記成形樹脂及び前記加飾フィルムは、インサート成形、又は真空成形によって固着されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、フィルムインサート成形用の加飾フィルムの製造方法として、オフセット印刷とスクリーン印刷を組み合わせた方法を提示する。すなわち、濃淡の階調表現が優れている加飾フィルムの生産を従来行われているようなグラビア印刷を用いる方法よりも、短納期で実施する方法を提示する。
本発明で用いているオフセット印刷法は、グラビア印刷と同様に階調表現に優れる印刷法である一方で、グラビア印刷に比べて印刷インキの膜厚を大きくすることができない欠点を有している。これに対して、本発明では、オフセット印刷と、膜厚を大きくすることのできるシルクスクリーン印刷とを組み合わせて解決する。オフセット印刷、シルクスクリーン印刷の何れもグラビア印刷に比べると製版に時間のかからない方法であるため、階調表現に優れ、且つ短納期及び小ロット生産に対応する加飾フィルムの生産が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】加飾フィルムの断面図である。
【図2】フィルムインサート成形品の断面図である。
【図3】成形用金型の構成図である。
【図4】フィルムインサート成形品の一例を示す図である。
【図5】フィルムインサート成形品の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《第1実施形態》
図1は、加飾フィルムの断面図である。
フィルムインサート成形用の加飾フィルム1は、図1に示すように、アクリルフィルム3上に、意匠層5、隠蔽層7、接着層9を順に形成することにより構成される。意匠層5は、オフセット印刷法により形成され、隠蔽層7及び接着層9は、シルクスクリーン印刷により形成される。
上記アクリルフィルム3には、複雑な形状の成形品の製造にあってもその成形品の形状に追従するよう、引張破壊呼びひずみが充分に大きいものを使用する。具体的には、JIS K 7127に規定される方法で測定される引張破壊呼びひずみが50%以上、好ましくは70%以上あるフィルムを使用する。フィルムの厚さは特に規定しないが、50μmから200μmの範囲が扱いやすい。使用するアクリルフィルム3は、後工程である意匠層形成までには、枚葉にしておく。
【0012】
また、上記アクリルフィルム3としては紫外線吸収剤を練りこんだものを使用するのが望ましい。これは、フィルムインサート成形品11の最表面層になるアクリルフィルム3に紫外線吸収機能を付与することにより、意匠層5や隠蔽層7の紫外線暴露による変色を軽減できるためである。適用できる代表的な紫外線吸収剤には、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンや、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−ブチルフェノールなどがある。
【0013】
上記アクリルフィルム3に意匠層5を形成する。
意匠層5は、オフセット印刷方式により設ける。この際、意匠層の厚さは2μm以下である。本発明の実施における効果のひとつである、階調表現に優れた意匠を形成するためには、スクリーン線数が1インチあたり175線以上となるような製版を行って印刷するのが望ましい。また、本発明の特徴のひとつである小ロット多品種生産対応を行うにあたっては、少量印刷しやすい枚葉印刷のほうが適している。
【0014】
上記意匠層5を形成する印刷インキには、UV硬化型のオフセット印刷用インキを使用する。UV硬化型のオフセットインキを使用する理由としては、基材となっているアクリルフィルム3が非吸収性の基材であるために、基材に対するインキ成分の浸透が前提となっている溶剤使用型のインキではアクリルフィルム3への密着性が得られにくいことが挙げられる。また、UV硬化型のインキであれば溶剤使用型に比べ乾燥時間も短くてすむため、時間当たりの生産効率もよい。
【0015】
上記意匠層5を形成する印刷インキの色には、CMYKから成るプロセスカラー、調色による特色インキ、金属粒子を分散したインキや透明インキなど多数の色が存在し、多数の色表現が可能である。特に耐光性が求められる成形製品の製造を行う場合においては、耐光性の高い色材成分(例えば、藍色のフタロシアニンブルー、紅色のキナクリドンレッド、黄色のモノアゾイエロー)を含む印刷インキを用いることができる。
【0016】
また、印刷インキはアクリルフィルム3に対して密着性が高いものを用いるのが望ましい。成形品にする際には、加飾フィルムが瞬間的に引き伸ばされるが、アクリルフィルム3に対する密着性が低いと、このときに層間剥離が発生する可能性がある。必要な密着性の目安としては、JIS K 5600−5−6に規定されている方法で試験を行ったのちに、剥がれている部位が認められない程度となる。また、アクリルフィルム3と印刷インキとの密着性を向上させるには、前記の方法のほか、アクリルフィルムにコロナ放電などの易接着処理を施してもよい。
【0017】
上記意匠層5を形成したのち、隠蔽層7を形成する。
隠蔽層7は、成形品になったときに意匠層5の下地となる部分であり、さらに下に形成される接着層9や成形樹脂13の色味を隠蔽するために設けられるものである。上記隠蔽層7は、シルクスクリーン印刷法によって積層し、厚さは20μm以上あることが好ましく、インキの色は白色、灰色、黒色、金属色、パール調、その他、意匠層5に合わせた色などが使用できる。厚さが20μm以上必要である理由であるが、下地の色を必要十分に隠蔽するためには、隠蔽層7の透過率が20%以下であることが好ましいが、透過率を20%程度にするためには厚さが20μm以上必要だからである。
【0018】
上記隠蔽層7を形成するシルクスクリーン印刷用インキは、少なくとも形成した加飾フィルム1を用いたインサート成形を行う場合において、隠蔽層7が射出される溶融樹脂の流れに対して、インキ流れを起こしにくいものでなければならない。また、隠蔽層7の印刷インキそのものもアクリルフィルム3に対して、前記の意匠層5のオフセット印刷インキ同様の接着力を有している必要がある。これら2つの性質を有しているシルクスクリーン印刷インキとして、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂の混合物または、ポリエステル樹脂が主成分となっており、さらにポリイソシアネート樹脂等の触媒を添加して80℃〜100℃程度の温度で乾燥させることにより、触媒を加えない場合に比べて樹脂架橋密度が上昇する性質を持っているインキを使用する。
【0019】
上記隠蔽層7は、総厚が50μmを超えない範囲であれば、厚さが増すほど隠蔽性(層が光を遮断する割合)が増し、インサート成形時のインキ流れも低減されるので、使用できる材料の量を考慮して、20μm〜50μmの範囲内において厚みを決定するとよい。
50μmを超える厚さでは、隠蔽性が頭打ちになるため、材料使用量を考慮すると好ましくない。
【0020】
上記隠蔽層7は1度の印刷によって目標とする厚みまで積層してもよいが、数回に分けて積層してもよい。この際、必要があれば重ね刷りを行うインキの色が異なっていてもよい。例えば、意匠層5のあとに白色のシルクスクリーンインキによって印刷を行ったのち、灰色や黒色のインキを用いて同様に印刷を行い、2層の隠蔽層を形成することによって、隠蔽層全体の光透過率を低下させ、隠蔽性能を高めることができる。
【0021】
隠蔽層7の積層後に、接着層9をシルクスクリーン印刷法によって積層する。
接着層9は、前記の隠蔽層7と成形樹脂11との間にあり、この両層を密着させて成形品としての一体性を得るために設置されるものである。接着層9の色は、隠蔽層7や意匠層5の色調に影響を与えないよう、無色透明であることが望ましい。
接着層9は前記隠蔽層7同様に、少なくとも形成した加飾フィルム1を用いたインサート成形を行う場合において、射出される溶融樹脂の流れに対して、インキ流れを起こしにくいものでなければならない。接着層9の厚みは、3〜10μmが適当である。
【0022】
接着層9は、前記の色調と、射出樹脂に対する耐性を有しているシルクスクリーン印刷用接着剤として、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、及びウレタン樹脂の少なくとも1つで生成されているものを用いる。希釈溶剤成分としてシクロヘキサノンや、キシレンを含むものを用いることができる。
以上のような工程によって、本発明の加飾フィルム1が作成された。
【0023】
次に、加飾フィルム1を用いたフィルムインサート成形品13の作成方法について述べる。
図2は、フィルムインサート成形品の断面図である。
本実施形態では、射出成形用の金型内に、枚葉となっている加飾フィルム1を配置して型閉めを行い、その後に溶融樹脂を金型内に射出して、射出樹脂が固化したところで取り出すことによって、加飾フィルム1が表面に接着したフィルムインサート成形品13を製造する工程について説明する。
フィルムインサート成形工程によって、加飾フィルム1は3次元的な形状に成形される。そのため、加飾フィルム1上に形成されている2次元的パターンは、射出成形時の加飾フィルム1の伸縮に合わせて大きさを調整する必要がある。
【0024】
図3は、成形用金型の構成図である。
成形金型23は、雌型25と、雄型27と、で構成され、雌型25の内周面となる成形面に加飾フィルム1が配置してから型閉めを行う。成形金型23内に加飾フィルム1を配置する前に、加飾フィルム1を他の金型にてプレフォームして3次元形状を予め付与しておき、成形金型23に供給することも可能である。
また、成形金型23に加飾フィルム1を配置する際に、加飾フィルム1と成形金型23との位置合わせが必要になる。
成形金型23へ加飾フィルム1を挿入した時の位置合わせを行う方法としては、加飾フィルム1に形成されているパターンのうち最終製品に付与されないエリアに予め形成した位置合わせ穴29に固定ピン31を挿入して保持する方法がある。
【0025】
他には、加飾フィルム1に形成されているパターンのうち最終製品に付与されないエリアに予め形成した位置合わせマークを射出成形装置側に設けた画像認識装置により視認し、加飾フィルム1の搬送装置側の駆動により微調整して合わせ込むことも可能である。位置合わせマークは、射出成形品の製品部分から見て、対角2点以上で認識するのが望ましい。
また、各位置合わせマーク位置で画像パターンの伸縮に合わせ上下左右の位置を均等割りする制御方法や、加飾フィルム1の搬送時の張力の制御により微調整をかけて上下左右の位置を均等割りする制御方法が望ましい。
【0026】
続いて加飾フィルム1を挿入した成形金型23に成形樹脂を射出する。このとき、加飾フィルム1の接着層9側に成形樹脂が射出されるようにしなければならない。本実施形態において使用する成形機は溶融した成形樹脂を金型内に射出する方式のものである。成形する際に射出される溶融樹脂の温度は使用する樹脂によって設定する。例えばアクリル樹脂なら240℃〜260℃であり、ABS樹脂なら230℃である。そのほか、溶融樹脂を金型内に注入する際の熱やガスにより、加飾フィルム1が異常に変形しないように、金型の注入口33(射出口)の位置を、金型の形状や成形樹脂の種類に合わせて設定すればよい。
【0027】
図4は、フィルムインサート成形品の一例を示す図である。
図5は、フィルムインサート成形品の一例を示す断面図である。
射出成形後にできる中間加飾成形品15を成形金型から取り出し、成形品の周囲に残っている加飾フィルム1の残り及び、成形品のダミー部分19を断裁して取り除く。この加飾成形品の周囲に残ったバリを別途取り除くことにより、本発明のフィルムインサート成形品13を得ることができる。
【0028】
以下、上記の製造方法に関する図について説明する。
図1は、射出成形を行う前の、加飾フィルム1の断面構成を表すものである。
アクリルフィルム3に対して、オフセット印刷で意匠層5、シルクスクリーン印刷で隠蔽層7、接着層9を順次積層して製造する。
図2は、射出成形により、加飾フィルム1から製造したフィルムインサート成形品13の断面図を表したものである。前述のとおり、溶融樹脂の射出は必ず接着層9がある側に行う。
【0029】
図3は、成形用金型23の一例の構造を示した図である。図3の(a)は、位置合わせ用の固定ピンと穴を有する成形用金型23を示し、図3の(b)は、加飾フィルム1を成形用金型23内に固定した状態を示している。
図4は、フィルムインサート成形品の一例を示す図である。図4の(a)は、中間加飾成形品15を示し、最終製品になる加飾部17のほか、ダミー部分19から成っており、ダミー部分19には成形位置合わせのための穴21がある。図4(b)は、最終製品(の一部)になるフィルムインサート成形品13を示し、中間加飾成形品15からダミー部分19を取り去ることで形成される。
【0030】
図5は、フィルムインサート成形品の一例を示す断面図である。図5の(a)は、中間加飾成形品15を示し、最終製品になる加飾部17のほか、ダミー部分19から成っており、ダミー部分19には形成位置合わせのための穴21がある。図4(b)は、最終製品(の一部)になるフィルムインサート成形品13を示し、中間加飾成形品15からダミー部分19を取り去ることで形成される。
【実施例】
【0031】
基材として、厚さ125μmのアクリルフィルム(カネカ社製 「サンデュレン SD010」)を用いた。ロールで供給されたアクリルフィルムを断裁工程により枚葉状にした。また、次工程で印刷を行う一方の面には、コロナ放電による易接着処理を施した。
得られた枚葉フィルムに対して、枚葉オフセット印刷機(UV乾燥ユニットつき)を用いて藍色、紅色、黄色、墨色による4色印刷を行い、意匠層を形成した。アクリルフィルムへの密着性を得るため、ポリエステル樹脂を主成分とするUV乾燥型インキ(東洋インキ社製「FD Oニュー HW−PT」)を用いた。枚葉オフセット印刷の、版交換に時間がかからないという利点を生かし、数種類の印刷版を用意して印刷を行った。
【0032】
UVオフセット印刷を行ったのち、シルクスクリーン印刷によって隠蔽層を設けた。印刷には、ポリエステル樹脂を主成分とする2液熱硬化型の白色インキ(帝国インキ社製 「IPX−675白」)を用い、乳剤厚が10μmのスクリーン版を用いて3層の重ね印刷を行うことで、隠蔽層全体の厚さを20μmとした。この工程以降は、意匠層の柄に関係なく、一度に印刷または成形を行った。
【0033】
続いて、シルクスクリーン印刷によって接着層を設けた。接着剤には、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体及びアクリル樹脂を主成分とする接着剤(帝国インキ社製「IMB−003」)を用い、接着層の厚さを4μmとした。
以上の工程によって形成された加飾フィルムを成形金型内に固定した。固定する前に、位置合わせ用の穴を加飾フィルムの端部(成形後ダミー部分となる位置)に設けた。この穴と成形金型の位置合わせ用突起とを合わせて位置合わせを行った。
【0034】
加飾フィルムのプレフォームを成形金型内にて行った。
プレフォームを行った加飾フィルムを固定した状態で型閉めを行い、加飾フィルムの接着層側に240℃、射出速度100mm/秒の条件にて溶融したアクリル樹脂(三菱レイヨン社製 アクリペット)を射出した。
得られたプラスチック成形品の、周囲に残った加飾フィルムをトリミングして、更にダミー部分を断裁して除去し、バリ取りの仕上げを行ってフィルムインサート成形品を得た。
本発明の加飾成形品の製造法により、オフセット印刷による細やかな階調性を有しつつ、数種類の柄の加飾成形品を従来のグラビア印刷を用いる方法に比べ、短時間で得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の成形品の構造及びその製造方法を用いることにより、高精細な階調意匠を有するプラスチック成形品を、少数多柄短納期という条件で製造できるようになる。携帯電話、パソコンなど電子機器のプラスチック筐体のほか、化粧品容器、おもちゃなどのプラスチック成形品への表面加飾への応用ができる。
【符号の説明】
【0036】
1 加飾フィルム
3 アクリルフィルム
5 意匠層
7 隠蔽層
9 接着層
11 成形樹脂
13 フィルムインサート成形品
15 中間加飾成形品
17 加飾部
19 ダミー部分
21 位置合わせ用穴
23 成形金型
25 雌型
27 雄型
29 位置合わせ用の穴
31 位置合わせ用のピン
33 注入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルフィルム上に意匠層及び隠蔽層が順に積層され、
前記意匠層がオフセット印刷によって積層され、
前記隠蔽層がシルクスクリーン印刷によって積層されることを特徴とする加飾フィルム。
【請求項2】
前記意匠層は、少なくとも顔料、及び紫外線硬化型樹脂の混合物で生成され、
前記隠蔽層は、少なくとも顔料、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、及びアクリル樹脂の混合物で生成されるか、又は少なくとも顔料及びポリエステル樹脂の混合物の何れかで生成され、
前記隠蔽層の厚さは、20μm以上で50μm以下の範囲内に設定されることを特徴とする請求項1に記載の加飾フィルム。
【請求項3】
前記隠蔽層の上に接着層が積層され、
前記接着層は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、及びウレタン樹脂の少なくとも一つで生成され、
前記接着層の厚さは、3μm以上で10μm以下の範囲内に設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の加飾フィルム。
【請求項4】
成形樹脂の上に、請求項1〜3の何れか一項に記載の加飾フィルムを積層された加飾成形品であって、
前記成形樹脂及び前記加飾フィルムは、インサート成形、又は真空成形によって固着されることを特徴とする加飾成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−71554(P2012−71554A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220007(P2010−220007)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】