説明

加齢関連黄斑変性と関係するポリヌクレオチド及び患者のリスクを評価する方法

本発明は、AMDと相関する特定のポリヌクレオチド配列を提供する。これらのポリヌクレオチドは、診断薬として有用であり、好ましくは、患者の試料のスクリーニングに有用なアレイの製造に利用される。このアレイは、研究室の情報管理システムの一部として利用されて、患者のゲノムプロファイルに加えて、患者の更なる情報を保存して処理する。本発明のシステムは、患者の、AMDを発症するリスク、病気の進行のリスク、及び患者の制御可能な因子に基づく病気の予防可能性の評価を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、国立衛生研究所により与えられたEY011309の下で、政府の支援によりなされた。更なる財政的援助を国立眼科研究所(N01−EY−0−2127)及び国立研究財源センター(National Center for Research Resources)からの助成金U54 RR020278により与えられた。
【背景技術】
【0002】
加齢と関係する黄斑変性(AMD)は、失明へと導く最も一般的な老人病的な眼の病気である。黄斑変性は、世界中で、控えめに約1600万人と見積もられている、視覚的ハンディキャップの原因である。年配者のうちで、全体的罹患率は、初期AMDの定義、及び、殆ど理解されていない特性である正常な加齢からの区別によって変動するが、5.7〜30%と見積もられている。
【0003】
組織病理学的に、初期の新血管新生AMDの顕著な特徴は、細胞外のドルーゼン及び基底板沈着物(網膜色素上皮の原形質膜と基底板の間に局在化された異常な物質)及び基線沈着物(網膜色素上皮の基底板とブルック膜の内部コラーゲン様域との間に局在化した物質)の蓄積である。AMDの最終段階は、黄斑領域における知覚神経網膜及び下にある網膜色素上皮の完全な退行により特徴付けられる。AMDの進行した段階は、地図状萎縮と滲出性AMDに細分化することができる。地図状萎縮は、網膜色素上皮の進行性の萎縮によって特徴付けられる。滲出性AMDにおいては、鍵となる現象は、脈絡膜の新血管新生(CNV)の出現である。CNVを有する眼は、新血管新生病変の位置、大きさ、種類及び年齢によって様々な程度の視力の低下を有する。脈絡膜の新血管新生膜の発生は、おそらく組織の破壊(ブルック膜)と、潜在的な長年のAMDの過程の代償不全による病気の自然な過程における後期の合併症と考えることができる。
【0004】
多くの病態生理学的な面並びに血管及び環境リスク因子は、病気の進行と関係するが、AMD自体並びにCNVの出現のような合併症の潜在的過程の病因論は、殆ど知られていない。家族、双生児、隔離及びケースコントロールスタディは、AMDの病因論における遺伝因子の関与を示唆している。しかしながら、遺伝率の程度、関与する遺伝子の数、及び潜在的な表現型の異質性は、未知である。AMDに関係する遺伝子及びマーカーの探索は、開始が生涯の終り近くであり、通常、研究に利用できるのは一世代のみであるという難題に直面する。患者の両親は、しばしば、死亡しており、子供は、この病気を明示するには若すぎる。一般に、この遺伝の遅い発病は、前の世代における診断の不確実さ及び冒された個人の子供のAMDを診断できないことの原因を評価することを困難なものとしてきた。前の世代におけるAMDの診断における曖昧さのないことさえ、この病気自体の遅い開始、自然死亡率、及び小さい家族規模は、遺伝形態のAMDの過小評価及び散発性疾患の率の過大評価を生じる。その上、表現型の変動は、相当であり、現在用いられているAMDの診断実体は、実際、潜在的条件の、関与する様々な遺伝的及び環境的因子との変動範囲を表している。
【0005】
患者におけるAMD又はAMDに対する罹病性を診断し又は予後を予想する改良された方法並びに新しい治療方法を評価して開発することに対する強い要求が残っている。AMDを発症する増大したリスクを示唆し又は一層侵略的な形態の病気の開始を予想する遺伝性リスク因子を同定することは、この発明の一つの目的である。
【0006】
要約
本発明は、AMD及びAMDに対する罹病率の改良された診断を可能にする方法及び組成物に向けられている。これらの組成物及び方法は、遺伝マーカーの予想外の発見に向けられており、補体経路と関連する遺伝子の多型を引き起こす。これらのマーカー及び多型は、AMD又はAMDに対する罹病率の診断、薬物標的としての利用、治療剤の同定、及び効力及び患者の治療に対する応答の測定に有用である。
【0007】
一具体例において、本発明は、AMD又はAMDに対する罹病率、AMDに対する防護的表現型、又はAMDに対する中立的遺伝子型を診断する方法に向けられており、該方法は、補体経路の遺伝子と関連する多型部位における特定の対立遺伝子の存否の検出を含み、この対立遺伝子は、AMD又はAMDに対する罹病率を示す。特定の具体例において、多型部位は、補体因子3例えばrs2230199(SEQ ID NO:1)と関連した単一ヌクレオチド多型であり、グアニン対立遺伝子はAMD又はAMDに対する罹病率を示し、シトシン対立遺伝子は102位のアミノ酸にグリシンを含むC3ポリペプチドを検出することにより検出することができる。特定の具体例において、多型部位は、シチジン対立遺伝子がAMD又はAMDに対する罹病率を示すrs1061170(SEQ ID NO:2);チミン対立遺伝子がAMD又はAMDに対する罹病率を示すrs10490924(SEQ ID NO:3);シチジン対立遺伝子がAMDに対する防護的効果を与えるrs9332739(SEQ ID NO:4);チミン対立遺伝子がAMDに対する防護的効果を与えるrs641153(SEQ ID NO:5);シチジン対立遺伝子がAMD又はAMDに対する罹病率を示すrs1410996(SEQ ID NO:6);そしてシチジン対立遺伝子がAMD又はAMDに対する罹病率を示すrs2230203(SEQ ID NO:7)よりなる群から選択される。特定の具体例において、特定の対立遺伝子の存否は、ハイブリダイゼーションアッセイにより検出される。特定の具体例において、特定の対立遺伝子の存否は、マイクロアレイを利用して測定される。特定の具体例において、特定の対立遺伝子の存否は、抗体を利用して測定される。
【0008】
一具体例において、本発明は、AMD発症のリスクがあり又は該発症から防護されている患者を同定する方法に向けられており、該方法は、
a)少なくとも一つのrs2230199のリスク対立遺伝子の存否を検出し;b)補体因子Hと関連する少なくとも一つのリスク対立遺伝子又は防護的対立遺伝子の存否を検出し;c)HTRA1におけるLOC387715において関連する少なくとも一つのリスク対立遺伝子又は防護的対立遺伝子の存否を検出し;そしてd)補体因子Bと関連する少なくとも一つのリスク対立遺伝子又は防護的対立遺伝子の存否を検出することを含み、患者が、集団のうちの、AMDを発症する約1%未満のリスクを有する約20%の1人であるならば、その患者はリスクがなく、AMDを発症する約50%より大きいリスクを有する集団の約1%の一人であるならば、リスクがある。特定の具体例において、特定の対立遺伝子の存否は、ハイブリダイゼーションアッセイによって検出される。特定の具体例において、特定の対立遺伝子の存否は、マイクロアレイを利用して測定される。
【0009】
一具体例において、本発明は、多型部位及びSEQ ID NO:1〜7として表される一つ以上の配列の約6以上の隣接ヌクレオチドを含む精製されたポリヌクレオチドであって、変異対立遺伝子が多型部位に存在する当該ポリヌクレオチドに向けられる。
【0010】
一具体例において、本発明は、少なくとも一つのこの発明のプローブ例えばこの発明のポリヌクレオチドに相補的であるプローブを含む診断用アレイに向けられる。一具体例において、この発明は、この発明の診断用アレイ、アレイリーダー、イメージプロセッサー、データレコード及び情報レコードを有するデータベース、プロセッサー、及び情報出力装置を含む診断用システムであって、患者のデータを編集して処理して、患者の進行するAMDの統計的可能性に関する情報を出力する当該診断用システムに向けられている。
【0011】
一具体例において、本発明は、この発明の診断システムを利用する方法であって、患者の試料を診断用アレイに高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で接触させ;患者の情報をシステムに入力し;そして該システムから患者の進行するAMDの統計的可能性に関する情報を得ることを含む当該方法に向けられている。
【0012】
一具体例において、本発明は、この発明の診断用アレイを作成する方法であって、SEQ ID NO:1〜7を含む個々の精製されたポリヌクレオチド組成物の試料を、基材に、その基材上の複数の特定のアドレスに配置することを含む当該方法に向けられている。
【0013】
一具体例において、本発明は、患者におけるAMD又はAMDに対する罹病率を診断する方法であって、該方法は、遺伝的リスクを行動的リスクと合わせることを含み、補体経路の遺伝子と関連する多型部位における特定の対立遺伝子の存否を検出することにより遺伝的リスクを測定し、該対立遺伝子がAMD又はAMDに対する罹病性を示すことを特徴とする当該方法に向けられている。
特定の具体例において、多型部位は、グアニン対立遺伝子がAMD又はAMDに対する罹病性をを示すrs2230199(SEQ ID NO:1)である。
特定の具体例において、シトシン対立遺伝子は、アミノ酸の102位にグリシンを含むC3ポリペプチドを検出することにより検出される。
特定の具体例において、多型部位は、シチジン対立遺伝子がAMD又はAMDに対する罹病性を示すrs1061170(SEQ ID NO:2);チミン対立遺伝子がAMD又はAMDに対する罹病性を示すrs10490924(SEQ ID NO:3);シチジン対立遺伝子がAMDに対する防護効果を与えるrs9332739(SEQ ID NO:4);チミン対立遺伝子がAMDに対する防護効果を与えるrs641153(SEQ ID NO:5);シチジン対立遺伝子がAMD又はAMDに対する罹病性を示すrs1410996(SEQ ID NO:6);及びシチジン対立遺伝子がAMD又はAMDに対する罹病性を示すrs2230203(SEQ ID NO:7)よりなる群から選択される。特定の具体例において、特定の対立遺伝子の存否は、ハイブリダイゼーションアッセイにより検出される。特定の具体例において、特定の対立遺伝子の存否は、マイクロアレイを利用して決定される。特定の具体例において、特定の対立遺伝子の存否は、抗体を利用して決定される。特定の具体例において、行動的リスクは、患者が、肥満、喫煙、ビタミン及び食事サプリメントの摂取、アルコール又は薬物の使用、乏しい食事及び体を動かさない生活様式よりなる群から選択される行動又は習性を示すかどうかを測定することにより評価される。特定の具体例において、上昇したBMIは、肥満の決定に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】様々なリスクスコアカットポイントについての敏感度及び特異度を示すプロット及び進行した加齢関連黄斑変性予想のためのROC曲線を、より若い群と年上の群との間で示した図である。
【図2】進行した加齢関連黄斑変性リスクスコアについて、患者と対照について、元の試料(上)と複製試料(下)の間で、すべての遺伝的変異体並びに人口統計的及び環境的変数に基いてプロットされたヒストグラムを示した図である。
【図3】多型部位:rs2230199(SEQ ID NO:1)、rs1061170(SEQ ID NO:2)、rs10490924(SEQ ID NO:3)、rs9332739(SEQ ID NO:4)、rs641153(SEQ ID NO:5)、rs1410996(SEQ ID NO:6)及びrs2230203(SEQ ID NO:7)で対立遺伝子を示す配列である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、補体経路に関与するタンパク質をコードする遺伝子と関連する多型部位の特定の対立遺伝子がAMD及びAMDに対する罹病性のマーカーとして有用であるという予想外の発見に関する。ここに記載の組成物及び方法は、特に、補体因子3(C3)又は補体因子5(C5)に言及する。
【0016】
ここで用いる場合、「遺伝子」は、発現産物(例えば、プレmRNA、mRNA及びポリペプチド)を生じさせる遺伝的要素を記載するために用いられる用語である。遺伝子は、調節用エレメント及び構造的事項のみを有すると考えられる配列(例えば、イントロン及び非翻訳領域)を含む。
【0017】
遺伝的マーカーは、特定の補体因子例えばC3及びC5と関連した「多型部位」の特定の「対立遺伝子」である。集団(天然の集団又は合成の集団例えば合成分子のライブラリー)中において、2以上のヌクレオチドが存在しうるヌクレオチド位置は、ここでは、「多型部位」と呼ばれる。多型部位が単一ヌクレオチド長である場合には、その部位は、単一ヌクレオチド多型(「SNP」)として言及される。もし特定の染色体配置において、例えば、ある集団の一のメンバーがアデニンを有し、その集団の他のメンバーが同じゲノム位置でチミンを有するならば、この位置は、多型部位であり、一層詳細には、この多型部位は、SNPである。多型部位は、置換、挿入又は欠失に基いて、配列における差異を与えることができる。多型部位に関する配列の各バージョンを、ここでは、多型部位の「対立遺伝子」と呼ぶ。従って、前の例において、SNPは、アデニン対立遺伝子及びチミン対立遺伝子の両方を与える。
【0018】
遺伝的マーカーは、例えば、もしマーカーが遺伝子エレメント又は表現型の特徴と、対立遺伝子のランダムな組合せにより予想されるよりも一層高い頻度(特定の集団の対立遺伝子頻度に基く)で共存すれば、遺伝子エレメント又は表現型の特徴と「関連して」いる。関連は又、物理的関連、例えばゲノム中の近位又はマーカー及び遺伝子エレメントのハプロタイプブロック中の存在をも示す。
【0019】
基準配列は、典型的には、特定の遺伝的エレメント例えば遺伝子について言及される。その基準と異なる対立遺伝子は、「変異体」対立遺伝子と呼ばれる。基準配列は、しばしば、最も頻繁に現れる対立遺伝子として又は典型的な表現型を与える対立遺伝子として選ばれ、「野生型」対立遺伝子と呼ばれる。
【0020】
幾つかの変異型対立遺伝子は、ポリペプチド例えば補体経路の遺伝子によりコードされるポリペプチドに影響を与える変化を含みうる。これらの配列の差異は、基準ヌクレオチド配列と比較した場合、単一ヌクレオチドの又は2以上のヌクレオチドの挿入又は欠失を含みえて、これは、フレームシフト;即ち、コードされるアミノ酸の変化を生じる少なくとも一ヌクレオチドの変化;未成熟停止コドンの生成を生じる少なくとも一ヌクレオチドの変化;これらのヌクレオチドによりコードされる一以上のアミノ酸の欠失を生じる数個のヌクレオチドの欠失;リーディングフレームのコード配列の中断を生じる同等でない組換え又は遺伝子変換などによる一以上のヌクレオチドの挿入;配列の全部又は一部の複製;転移;又はヌクレオチド配列の再配置を生じる。或は、AMD又はAMDに対する罹病率と関係する多型は、一以上のヌクレオチドにおける類義語的変化でありうる(即ち、補体経路の遺伝子のコドンの変化を生じない変化)。かかる多型は、例えば、スプライス部位を変え、mRNAの能力又は輸送に影響を与え、或は、ポリペプチドの転写又は翻訳に影響を及ぼす。基準ヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドは、特定の基準アミノ酸配列を有する「基準」ポリペプチドであり、変異型対立遺伝子によりコードされるポリペプチドは、変異型アミノ酸配列を有する「変異型」ポリペプチドと呼ばれる。
【0021】
ハプロタイプは、遺伝マーカー例えば多型部位における特定の対立遺伝子の組合せである。本明細書のハプロタイプは、AMD及び/又はAMDに対する罹病性と関係している。本明細書におけるハプロタイプの存否の検出は、それ故、AMD、AMDに対する罹病性を示し又はその欠如を示す。ここに記載のハプロタイプは、SNP及びマイクロサテライト等の遺伝マーカーの組合せである。それ故、ハプロタイプの検出は、多型部位の配列を検出するための当分野で公知の方法により達成される。
【0022】
ここに開示したハプロタイプ及びマーカーは、好適な補体経路遺伝子例えばC3又はC5、同様に、AMD及び補体関連表現型とは、「連鎖不平衡」(linkage disequilibrium、LD)にある。「連鎖」は、遺伝子型及び/又は表現型の互いの予想される統計的関係より高いことをいう。LDは、2つの遺伝的エレメントのランダムでない組合せをいう。もし、例えば、特定の遺伝的エレメント(例えば、多型部位における対立遺伝子)が、集団中に0.25の頻度で生じ且つ他方も0.25の頻度で生じれば、両エレメントを有する個人の予想される出現は、これらのエレメントのランダムな分布を仮定して、0.125である。しかしながら、もし、これらの2つのエレメントが一緒に0.125より高頻度で出現することが発見されたならば、それらのエレメントは、それらは、独立した対立遺伝子頻度が予想するものより高頻度で一緒に遺伝される傾向があるので、LDにあるといわれる。概して、LDは、一般に、これらの2つのエレメント間の組換え事象の頻度と相関している。対立遺伝子頻度は、集団中で、例えば、集団中の個人のゲノタイピングにより及び集団における各対立遺伝子の出現を測定することによって決定することができる。例えば、二倍体個体の集団例えばヒトの集団について、個人は、典型的には、各遺伝的エレメント(例えば、マーカー又は遺伝子)に対して2つの対立遺伝子を有する。
【0023】
この発明は又、「ハプロタイプブロック」又は「LDブロック」において同定されるマーカーにも向けられている。これらのブロックは、例えば補体経路遺伝子等のそれらの遺伝的エレメントへの物理的近さにより、又は該エレメントからの「遺伝的距離」によって規定される。当業者には、他のブロックは、好適な補体経路遺伝子例えばC3又はC5を有するLDにおける遺伝学領域として明らかであろう。これらのブロックにおいてそれらのAMD及び補体経路との関係の故に同定されたマーカー及びハプロタイプは、この発明に包含される。当業者は、まれに組換えを起こす染色体の領域及び「ホットスポット」であって例えば頻繁な組換え事象を示す染色体の領域がLDブロックを示すことを認めるであろう。ホットスポットに関係するまれ組換え事象の領域は、細胞分裂中に維持されるブロックを形成するであろう。従って、表現型と関係したマーカー(該マーカーは、LDブロックに含まれる)の同定は、表現型と関連したブロックを同定する。それ故、このブロック内で同定された何れのマーカーも、表現型を同定するために利用することができる。
【0024】
この発明のマーカー又はハプロタイプと共にLD中にある更なるマーカーは、ここでは、「サロゲート」マーカーと呼ばれる。かかるサロゲートは、他のマーカー又は他のサロゲートマーカーに対するマーカーである。サロゲートマーカーは、それら自体マーカーであって、他のマーカーの存在を示すものであり、それは、更に、他のマーカー又は関連表現型の何れかを示す。
【0025】
幾つかの候補遺伝子が、AMDとの関連につき消極的にスクリーニングされてきた。これらの結果のすべては、Haddad等に総説されており、それは、関連参考文献を列記している。これは、TIMP3(メタロプロテイナーゼ−3の組織インヒビター)、網膜内光レセプターマトリクス(IPM)プロテオグリカンのIMP200をコードする遺伝子のIMPG2、VMD2(ベストフィン遺伝子)、ELOVL4(非常に長鎖の脂肪酸の伸張)、RDS(ペリフェリン)、EFEMP1(EGF含有フィブリン様細胞外マトリクス)、BMD(ベストロフィン)を含む。ある遺伝子、GPR75(Gタンパク質共役レセプター遺伝子)は、AMDの患者において、コード領域における多様性を有することが示されてきた。他の遺伝子は、少なくとも一つの病気との可能な関連を示されてきた−PON1(パラオキソナーゼ遺伝子);SOD2(マンガンスーパーオキシドジスムターゼ;APOE(アポリポタンパク質E)、(ε4対立遺伝子が、幾つかの研究で、この病気と関連し、他の病気とは関係しないことが示されている));及びCST3(シスタチンC)(これは、ある研究が、CST3 B/Bホモ接合体におけるARMDに対する増大した罹病性を示唆している)。ABCR遺伝子(ABCA4)の、AMDに関する役割については、矛盾した報告がある。
【0026】
補体経路マーカーの同定
他の補体経路のメンバーのうちで、C3及びC5は、評価のための候補遺伝子として選択された。タグSNPを、C3及びC5を横切って選択したが、C3には、SNPrs2230199が含まれ、これは、400症例のAMD及び200の対照のゲノムワイドな関係に関してNIHdbGAPデータベースにおいて利用可能な単一マーカー試験でp=2.8×10-5を有することが報告されたものである。ゲノタイピングを、以前に記載されたように、Illumina GoldenGateアッセイ及びSequnom iPLEXシステムを利用する実験の一部として行なった。60代以上の無関係の白人2,172人よりなる研究用集団を、眼の実験及び基底部写真に基づいて診断した(乾燥及び新血管新生(湿潤) の進行したAMDの両方で1,238症例及び934の対照例)。これは、以前にMaller等によって、同じフェノタイピング基準を利用して、詳細に記載され、集団の下部構造による症例対称関係の統計の膨張を示さないように、以前に確立された同じ試料セットである。
【0027】
C3中の単一SNP(rs2230199;SEQ ID NO:1)は、p<10-12での有意のAMDとの関係を示し、少ない対立遺伝子頻度(MAF)として対照で0.21及び症例で0.31を示した(表2)。このSNPは、非類義語のコーディング変化(Arg102Gly)をC3の第二エキソン中に造る。C3に分類された他のSNPは、個々に統計的に有意の関係を示さなかった(表3)。すべての個々のゲノタイピングしたSNPを試験することに加えて、マルチマーカーハプロタイプ試験を利用して、HapMap上に存在する未タイピングSNPにおける関係を評価したが、更なる関係は、見出されなかった。これらのSNP及びハプロタイプにおける関係を、更に、rs2230199にて遺伝子型を調節して試験して、有意の関係は認められなかった(表3)。試験は又、新血管新生AMDと地図状萎縮型AMDとの間の何らかの差異を検出するためにも行なわれた。統計的に有意の差異は、認められなかった。C5中のSNPは、AMDへの有意の関係を示さなかった(表4)。
【0028】
rs2230199と5つの変異体との間のエピスタシスの役割も評価した。CFHにおける2つの変異体(1061170 − SEQ ID NO:2及び10490924 − SEQ ID NO:3)、CFB/C2遺伝子座における2つの変異体(9332739 − SEQ ID NO:4及び641153 − SEQ ID NO:5)、及びLOC387715/HTRA1遺伝子座のもの(1410996 − SEQ ID NO:6)が、この一団におけるAMDのリスクと明確に関係されるとして確立された。ロジスティック回帰分析を利用しては、統計的に有意な相互作用期間は、これらのSNP、一つのカテゴリーとして稀な陽性SNPの2つの因子B、又は2つの異なるCFHSNPにより形成された3つのハプロタイプの何れの対の間でも認められなかった。弱い相互作用は排除できなかったが、この結果は、同じ経路を標的としているにもかかわらず、これらの変異体が、独立した、ロジスティック相加的(log-additive)様式で非常にリスクを与えることを示唆している。
【0029】
この新規な変異体rs2230199の独立的な作用を仮定すると、それは、Maller等のマルチ遺伝子座リスクモデルに加えられた。AMDに関連した変異体の個別の及び組み合わされた効果は相加的であるので、この遺伝子座によって説明されるリスクにある集団変異体(この年齢群における後期AMDの罹患率を5%と仮定)の全体的割合は、凡そ2%である(この集団を横切るリスクの下にある正規分布N(0,1)と仮定)。比較のために、CFH、LOC387715/HTRA1及びCFBの変異の効果の比較評価は、それぞれ、16%、10%及び2.5%であり、これは、これらの4つの同定された遺伝的因子の個々の効果が単独で、公知の環境的共変量(covariate)による遅発性の異常のリスクにおける顕著な30%の集団変異を説明することを示している。これらの対立遺伝子の頻度及び浸透度を仮定すれば、これらの独立的効果は、組み合わせた場合、これらの症例及び対照を引き出した集団中の後期AMDについての真の予想値を与える。この年齢群においては後期AMDの浸透度は凡そ5%であるが、これらの4つの遺伝子の変異は、1%未満の病気のリスクを有する集団の20%を同定することができ、逆に、50%を超えるリスクを有する集団の1%を同定することができる。実際、この後者の範疇では、154人の患者(1238人中)が、たった9人の対照(934人中)に比べて、同定された。
【0030】
HapMapフェーズIIは、たった2個のSNPがr2>0.4で相関するだけで、rs2230199の代理(proxies)をほとんど示さなかった。第一に、rs2230203(SEQ ID NO:7)は、7.6kb下流の類義語的エキソン多型であって、r2=0.75で相関する。他のものは、rs2230199の5.9kb上流のこの遺伝子の外にあるものであり、やはり、r2=0.75で相関する。これらの少数の代理は、この領域における低レベルの連鎖不平衡と共に、原因対立遺伝子が14kb未満の領域にあることことを示唆している。
【0031】
この関連するArg102Gly変異体(SEQ ID NO:1)は、これらの2つの共通アロタイプC3:C3F(fast)及びC3S(slow)(このように命名されたのは、電気泳動時の移動度の差異による)の分子的基礎として確立されている。このC3F変異体は、以前に、他の免疫に媒介される病気例えばIgA腎障害及び腎糸球体腎炎に関連して報告されている。この変異体は又、腎臓移植物の長期的成功に影響を与えることも報告されており、即ち、C3Sホモ接合体のレシピエントは、C3Fアロタイプのドナーの腎臓を受けた場合に、一致したホモ接合体のC3Sドナーよりずっと良好な移植片生存及び機能を有した。更に一般的には、C3及びCFH両方の欠如は、膜増殖性糸球体腎炎(MPGN)における、免疫媒介による腎臓傷害と関連付けられてきており、AMD関連Y402H変異体も又、これらの2つの病気の病因論において深い関係を強調するMPGNと有意に関連していることが示されている。補体系とAMDにおける変異の間の更なる関係の発見は、機能的実験及び治療剤の開発を、補体カスケードの別の経路の特異的活性に一層正確に集中させるのに役立つであろう。
【0032】
診断用遺伝子アレイ
一面において、この発明は、遺伝子断片、特に、SEQ ID NO:1〜7として与えたSNPを含む遺伝子断片のアレイ及び、SEQ ID NO:1〜7のSNPにおいて対立遺伝子を検出するためのプローブを含む。ポリヌクレオチドのアレイは、単一試料中の多数のポリヌクレオチド配列をアッセイすることのできる高スループット技術を提供する。この技術は、例えば、AMDを発症するリスクポテンシャルを、この発明のSNPとプローブを用いて、評価するための診断用ツールとして利用することができる。ポリヌクレオチドアレイ(例えば、DNA又はRNAアレイ)は、基材上に、規定されたx及びy座標に、予め決めた配置で配置した通常異なる配列のポリヌクレオチドの領域を含む。これらの領域(ときに、「フィーチャー」と呼ばれる)は、基材上の各位置(「アドレス」)に置かれる。これらのアレイは、試料にさらされた場合に、観察される結合パターンを示す。この結合パターンは、該アレイに応答指令信号を送ることにより検出することができる。例えば、試料中のすべてのポリヌクレオチド標的(例えば、DNA)を、適当な標識(例えば、蛍光化合物)で標識して、アレイ上の蛍光パターンを、試料への曝露後に、正確に観察することができる。異なる配列のポリヌクレオチドは、正確に、予め決めた配置に従って付着すると仮定すれば、観察された結合パターンは、試料中の一種以上のポリヌクレオチド成分の存在及び/又は濃度を示すであろう。
【0033】
アレイは、以前に得られた生体高分子を基材上に付着させるか又はイン・サイチュー合成法によって作成することができる。この基材は、ポリヌクレオチドプローブが結合することのできる任意の支持材料であってよく、これは、ガラス、ニトロセルロース、ケイ素及びナイロンを包含するが、これらに限られない。ポリヌクレオチドは、この基材に、共有結合により又は非特異的相互作用(例えば、疎水性相互作用)によって結合させることができる。イン・サイチュー作成法は、ペプチドアレイの合成についての米国特許第5,449,754号、及びポリヌクレオチドアレイの合成についての米国特許第6,180,351号及びWO98/41531(並びにこれらにおいて引用された参考文献)に記載されたものを含む。生体高分子アレイの作成の更なる詳細は、米国特許第6,242,266号;米国特許第6,232,072号;米国特許第6,180,351号;米国特許第6,171,797号;欧州特許第0799897号;PCT No.WO97/29212;PCT No.WO97/27317;欧州特許第0785280号;PCT No.WO97/02357;米国特許第5,593,839号;5,578,832号;欧州特許第0728520号;米国特許第5,599,695号;欧州特許第0721016号;米国特許第5,556,752号;PCT No.WO95/22058;及び米国特許第5,631,734号に記載されている。生体高分子アレイを作成する他の技術は、合成技術に向けられた公知の考え方を包含する。市販のポリヌクレオチドアレイ、例えばAffymetrix GeneChip(商標)を利用することもできる。GeneChip(商標)の遺伝子発現を示すための利用は、例えば、Lockhart等、Nat.Biotechnol., 14:1675, 1996;Chee等、Science, 274:610, 1996;Hacia等、Nat.Gen., 14:441, 1996;及びKozal等、Nat.Med., 2:753, 1996に記載されている。他のタイプのアレイは、当分野で公知であり、本発明のAMD診断用アレイを開発するのに十分である。
【0034】
これらのアレイを造るために、一本鎖ポリヌクレオチドプローブを、基材上に、2次元的マトリクス又はアレイに配置することができる。各一本鎖ポリヌクレオチドプローブは、SEQ ID NO:1〜7に示したヌクレオチド配列又はそれらの相補配列から選択される少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25又は30の或は一層多くの隣接するヌクレオチドを含むことができる。好適なアレイは、SEQ ID NO:1〜7に示したヌクレオチド配列又はそれらの相補配列から選択される少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25又は30の或は一層多くの隣接するヌクレオチドを含む少なくとも一つの一本鎖ポリヌクレオチドプローブを含む。
【0035】
患者からの組織試料を、例えば、当分野で公知のように、熱することにより又は化学的変性により処理して、一本鎖ポリヌクレオチドを形成することができる。組織試料中の一本鎖ポリヌクレオチドを、次いで、標識して、アレイ上のポリヌクレオチドプローブにハイブリダイズさせることができる。用いることのできる検出可能な標識は、放射性標識、ビオチン化標識、蛍光物質、及び化学発光標識を包含するが、これらに限られない。ポリヌクレオチドプローブに結合した標識された試料のポリヌクレオチドを含む二本鎖ポリヌクレオチドは、一度試料の未結合部分を洗い去ると検出することができる。検出は、可視化することができ又はコンピューターの助けにより行なうことができる。好ましくは、アレイを試料にさらした後で、そのアレイを、アレイフィーチャーからのシグナル(例えば、蛍光パターン)を検出するリーディング装置(例えば、アレイ「スキャナー」)を用いて読む。かかるリーダーは、好ましくは、接近したフィーチャーを有するアレイについての非常に細かい解像度(例えば、5〜20ミクロンの範囲)を有する。
【0036】
アレイの読みから生じたシグナルイメージを、次いで、デジタル処理して、読まれたデータの何れの領域(ピクセル)が所定のフィーチャーに属するかを評価することができ並びに各フィーチャーに結合した全シグナル強度を計算することができる。前述の工程は、個別的又は集合的に、「フィーチャー(特徴)抽出」と呼ばれる(米国特許第7,206,438号)。これらのフィーチャー抽出技術を利用して、患者由来のポリヌクレオチド試料の、SEQ ID NO:1〜7として与えたアレイ上でのAMDマーカーの一つとのハイブリダイゼーションの検出は、上記のように、AMDの遺伝的リスク因子を有する患者又は有しない患者を同定する。
【0037】
患者のデータを分析するためのシステム
他の面において、この発明は、患者のデータを編集して処理し、AMD発症についてのリスクプロファイルを与えるシステムを提供する。コンピューター補助された医療データ交換システムが好ましい。このシステムは、医療提供者が利用できるデータの管理を容易にすることによって、高品質の医療を患者に与えるようにデザインされている。医療提供者には、典型的には、内科医、外科医、看護士、臨床医、様々な専門家、その他が含まれる。しかしながら、本件明細書では、一般的には臨床医が参照されるが、医療提供者には、事務職員、保険会社、教師と生徒なども含まれうるということに注意すべきである。このシステムは、臨床医がデータをデータ処理システムと交換することを可能にするインターフェースを提供する。このデータ処理システムは、統合された知識ベース及びデータベースにリンクされている。
【0038】
このデータベースは、ソフトウェアベースであってよく、下記のように様々なリソースから情報を引き出すための、又はかかる情報のアクセスを調整し若しくは解釈するためのデータアクセスツールを含んでいる。一般に、このデータベースは、生のデータを利用可能な形式に統一する。任意の適当な形式を採用することができ、多数の形式を採用することができ、それには、ハイパーテキストマークアップランケージ(HTML)エキステンデドマークアップランゲージ(XML)、デジタルイメージング・アンド・コミュニケーションズ・イン・メジスン(DICOM)、Health Level Seven(商標)(HL7)などが含まれる。本明細書において、統合された知識ベースは、任意の及びすべての種類の利用可能な医学データを含むと考えられ、該データは、データ処理システムによって処理され得て、所望の医療を提供するために臨床医に利用可能なものとされる。一般に、これらのリソース及び知識ベース中のデータは、データベース及びデータ処理システムによる抽出及び分析に利用可能なデータとするためにデジタル化されて保存される。一層伝統的なデータ収集用リソースを用いた場合でも、そのデータは、データ処理システムにより実行される様々な種類の分析において同定し操作することのできる形式で配置される。
【0039】
この統合された知識ベースは、広義の医学関連データの一つ以上の収納場所、並びにそれらの収納場所間のインターフェース及びトランスレーター、及びデータに対する所望の処理(分析、診断、報告、表示及び他の機能を含む)を実行するための処理能力を含むことを意図している。データ自体は、患者に特異的な特徴並びに患者に特異的でない情報に関連しうる(人、機械、システムなどの種類に関して)。その上、これらの収納場所は、専らデータを保存するためのシステム、又は種々の要素からなるシステム例えばイメージングシステムの部分であるメモリー装置を含むことができる。上記のように、統合された知識ベースを作り上げている収納場所及び処理用リソースは、拡張可能であり、物理的に、任意の数の位置にあってよい(典型的には、専用の又は開放されたネットワークリンクにより繋がれている)。その上、統合された知識ベース内に含まれたデータは、臨床データ(例えば、患者の状態に特異的に関係するデータ)及び非臨床データの両方を含むことができる。好適な臨床データの例は、患者の病歴、患者の血清及び細胞の抗酸化物質レベル、及び患者にAMDを発症しやすくする過去又は現在の環境、生活様式及び他の因子を含む。これらは、肥満、喫煙、ビタミン及び食事サプリメント摂取、アルコール又は薬物の使用、乏しい食事及びすわりがちの生活様式などの様々なリスク因子を含むが、これらに限られない。非臨床的データは、患者に関する一層一般的な情報例えば住所、保険業者に関するデータ、及び患者を診てきた重要な又は現在の開業医(主たる内科医、専門医などを含む)の名前及び住所若しくは電話番号を含むことができる。
【0040】
情報の流れは、広範な種類及び情報交換のためのビヒクルを含むことができる。一般に、患者は、臨床医と伝統的な往診を通して交流することができ並びに遠方では、電話、電子メール、フォームなどによって交流することができる。患者は又、これらのリソースの要素と、伝統的な患者の病歴フォームを含みうる一定範囲の患者情報獲得用インターフェース、イメージング用インターフェース、組織試料、体液などを集めて分析するためのシステムを介して相互作用することもできる。臨床医とインターフェースとの間の相互作用は、インターフェースの性質によって、任意の適当な形態をとることができる。従って、臨床医は、このデータ処理システムと、伝統的な入力装置例えばキーボード、コンピューター用マウス、タッチスクリーン、ポータブル式又は遠隔式入出力装置によって相互作用することができる。インターフェース、データ処理システム、知識ベース、データベース及びこれらのリソースの間のリンクは、典型的には、コンピューターのデータ交換用相互接続、ネットワーク接続、ローカルエリアネットワーク、広域ネットワーク、専用ネットワーク、バーチャルプライベートネットワークなどを含む。
【0041】
一般に、これらのリソースは、患者特異的であるか又は患者に関連しており、即ち、物理的に直接接近して又は遠方から(例えば、コンピューターリンクにより)集めることができる。このリソースデータは又、特定の患者のリスク及び状態の分析を、既知の集団の特徴との比較に基づいて可能にするように集団特異的であってもよい。これらのリソースは、一般に、データを一般化するプロセスと考えられうるということに注意すべきである。これらのシステム及びリソースの多くは、それら自身データを含むであろうが、これらのリソースは、制御可能であって、患者の適切な治療に必要なデータを生成するためにそれらを利用することのできる範囲を示すことができる。典型的な制御可能で指示可能なリソースは、例えば、患者の生理的パラメーターを感知したシグナルに基づいて検出するようにデザインされた様々なデータ収集システムを含む。かかる電子的リソースは、例えば、脳波検査(EEG)用リソース、心電図検査(ECG)用リソース、筋電図検査(EMG)用リソース、電子的障害断層撮影(EIT)用リソース、神経伝導試験用リソース、電気眼振検査(ENG)用リソース、及びかかるリソースの組合せを含むことができる。様々なイメージング用リソースを、数的に指示されたように制御して規定することができる。かかるリソースの幾つかのモダリティー例えばX線イメージングシステム、磁気共鳴(MR)イメージングシステム、コンピューター断層撮影(CT)イメージングシステム、陽電子放出断層撮影(PET)システム、蛍光間接撮影システム、超音波検査システム、近赤外線イメージングシステム、核イメージングシステム、熱音響学的システムなどが、現在、利用可能である。イメージングシステムは、他のイメージングシステムから情報を引き出すことができ、電気的リソースは、情報の直接的交換のために、イメージングシステムと連結する(例えば、イメージデータ生成のタイミング又は調整などのために)ことができる。
【0042】
かかる電気的で高度に自動化されたシステムに加えて、臨床的及び研究的性質の様々なリソースがアクセス可能である。かかるリソースは、血液、尿、唾液及び他の液体分析用リソース(胃腸、生殖器、及び脳脊髄液の分析システムを含む)を含むことができる。かかるリソースは、更に、ポリメラーゼ(PCR)連鎖反応分析システム、遺伝子マーカー分析システム、放射免疫アッセイシステム、クロマトグラフィー及び類似の化学分析システム、レセプターアッセイシステム及びかかるシステムの組合せを含むことができる。例えば組織分析システム、細胞学及び組織分類システムなどの組織学的リソースも、ある程度は同様に含まれてもよい。他の組織学的リソースは、免疫細胞化学及び組織病理学的分析システムを含むことができる。同様に、電子及び他の顕微鏡システム、イン・サイチューハイブリダイゼーションシステムなどは、典型的な組織学的リソースを構成することができる。薬物速度論的リソースは、治療用薬物モニターシステム、レセプター特性決定及び測定システムなどのシステムを含むことができる。再び、かかるデータ交換は、データ処理システムを通過すると考えうるが、様々なリソース間での直接的交換も又、実行することができる。
【0043】
本システムの利用は、患者試料を得る臨床医、及びAMDの疾病素質を示す(又は、示さない)その患者における遺伝子マーカー例えばSEQ ID NO:1〜7の存在の、単独での又は他の公知のリスク因子と組み合わせての評価を含む。臨床医又はその助手は又、適当な臨床上の又は臨床上でない患者の情報をも獲得して、このシステムに入力する。このシステムは、次いで、そのデータを編集・処理して、その患者についてのAMDを発症するリスクプロファイルを含む出力情報を与える。
【0044】
本発明は、こうして、AMDと相関されてきたある種のポリヌクレオチド配列を提供する。これらのポリヌクレオチドは、診断として有用であり、好ましくは、患者の試料をスクリーニングするのに有用なアレイを作成するために利用される。このアレイは、現在最も好適な具体例において、実験室情報管理システムの一部として利用されて、患者の遺伝的プロファイルに加えて、更なる患者情報を保存して処理する。ここに記載のように、このシステムは、患者の制御可能な因子に基いて、患者のAMD発症のリスク、病気の進行のリスク、及び病城の予防の見込みの評価を与える。
【実施例】
【0045】
実施例1.
AMDと関連する遺伝的変異体の発見:幾つかの実験室は、今や、AMDと関連する遺伝的変異体を同定している。これらの幾つかは、補体経路にある(CFH、BF/C2)。それらの遺伝子及び変異体の機能は完全には理解されていないが、染色体10上の幾つかの密接にリンクした遺伝子を含む領域(LOC387715、HTRA1)への結合もある。我々のデータベースを利用して、CFHにおいて以前に認められていない一般的な非コード変異体が同定され、それは、この遺伝子座のAMDに対する影響を実質的に増大させ、3つの遺伝子において4つの他の公知の一般的対立遺伝子の関係を強力に複製し、BF/C2遺伝子座の第一の確認も複製した(p値は、約10−12〜10−70)。
【0046】
補体経路は、AMDに関与する:遺伝的変異体及び環境は、AMDの発症及び病因論において一つの役割を演じる。それ故に、個人のリスクを決定する際に両者を考慮に入れることは望ましい。現在まで、AMDと関連する幾つかの変異体のうちで補体因子H(CFH)のY402H変異体は、もっとも複製されて研究されたものであり、ホモ接合体条件を有する患者において7倍増大したと見積もられているリスクを与える。Y402H SNPは、ヘパリン及びC反応タンパク質のためのCFH結合部位内にある。これらの部位への結合は、機能喪失;例えば減少した標的に結合する能力及び/又はCRPと相互作用する能力へと導くように変わりえて、それにより、おそらく、過剰の補体活性化を生じさせる。補体断片についてのアッセイは、益々、免疫反応における初期事象についての有用なマーカーとなりつつある。補体の活性化の開始は、細胞表面並びに液相で起こりうるので、補体の活性化は、文献化されうる最初の事象の一つでありうる。局所的過程は、血液中に常には反映されえない。
【0047】
C1の抗体への結合及び活性化による典型的経路の活性化がおきる場合には、C4が開裂して、C4a及びC4bを生じる。C4aは、局所的に放出されて、循環に到達することができる。それは、市販のELISAキット(例えば、Pharmingen, OPT-EIA)によってng/mlの量で検出することができる。レクチン経路が、マンノース結合性レクチン(MBL)の炭水化物に覆われた細菌表面への結合により活性化されたとき及びマンノース結合性レクチン関連セリンプロテアーゼ(MASP)酵素がC4を開裂したときには、類似の事象が起きる。微生物又は多くの種類の免疫グロブリンの凝集物を含む他の粒子の帯電した多くの表面は、他の補体経路を活性化することが示されている。この経路において最初に放出された第一の開裂生成物は、因子Bの開裂から生じたBbである。Bbは、血漿中で、市販のELISAキット(例えば、Quidel)によって、μg/mlの量で測定することができる。補体経路は、互いに相互作用することができ、それ故、各々の成分を測定することは重要でありうる。
【0048】
何れかの経路による活性化が持続するならば、C3は、測定可能な断片を生成するための次の主要タンパク質である。C3は、初期に、2つの断片に分裂し、C3aは、アナフィラトキシン活性を有する小さい断片であって、多くの細胞種で見いだされる特異的C3aレセプターを介して相互作用し、C3bは、一層大きい断片であって、表面近く又は分子に活性なチオエステル結合を介して共有結合する特性を有する。後者は、C3コンバーターゼがそれを開裂したときに、分子中のコンホメーション変化により生成される。この共有結合は、表面の補体活性化の近くへC3b(又は、その後の開裂断片)を永久的に配置させる。これらの配置及びその後の開裂断片は、多くの細胞種において見出されるC3レセプター(CR1、CR2、CR3、CR4)と相互作用する。これは、免疫付着へと導き、免疫複合体、細菌、ウイルス又は何であれC3bが結合したもののクリアランスのための輸送機構を与える。C5a及びC5b−9(膜攻撃複合体(MAC))は、末端活性化経路のマーカーでもある。
【0049】
CFHは、別経路を、次の3つの作用によって抑制する:1)因子BのC3bへの結合を阻止し、2)C3bBb(別経路C3コンバーターゼ)に結合して、Bb酵素サブユニットをはずし、そして3)因子Iに対して補因子活性を与え、これはC3bを開裂させることができて、不活性形態iC3bを生成する。幾つかのiC3bは、液相中にあり、通常、血漿中で30μg/mLより少なく、低い変動性を有する。上昇すると、CFHがC3bを不活性化させるように機能することの間接的指示を与えることができる。抗体によるCFHの阻害は、ウエスタンブロットにより測定でき、C3bのiC3bへの開裂を減少させる。C3bの不活性化におけるCFHの機能を測定するために、C3bとiC3bを測定することは望ましいであろう。しかしながら、C3bアッセイは、実質的変動性を示す。それ故、我々は、ある種の病状を反映するC3を測定するが、iC3b/C3の比も又、AMDのリスクの別の可能な指標として分析する。
【0050】
因子Bは、C3コンバーターゼの酵素サブユニットBbを与え、別経路の増幅ループ、及びC5コンバーターゼの形成に寄与する。CFHは別経路を抑制するが、プロパージンは、別経路のC3及びC5コンバーターゼを安定化させ、そうして、C3bの不活性化ではなく、膜攻撃複合体(MAC)の形成を促進するのに役立つ。CFHの変異体はAMDのリスクを増大させるが、因子Bをコードする遺伝子の変異は、AMDのリスクを減少させることが見出された。因子B及びC3の両者は、マウスモデルにおいて、レーザー誘発性脈絡膜新血管新生の発症において重要であることが見出された。
【0051】
遺伝学的考察に加えて、環境因子が、AMDリスクにおいて役割を演じており、補体レベルに影響を与えうる。喫煙は、独立したAMDのリスク因子であり、補体を活性化すること及び因子Bのレベルを高めることが報告されている。喫煙者は、低下したCFHレベルを有することが報告されている。CFHの血漿レベルは、全集団中で広範囲(110〜615μg/mL)に変化することが報告されており、CFHの測定は、変異型CFHから正常型を識別することができないが、AMDについては、更なるデータが必要とされている。それ故、リスクがある患者を決定するためには、我々は又、AMDと関連する最近の遺伝子変異体と関連する他の可能なバイオマーカーであって、AMDの増大したリスクと強く関連する環境因子によっても影響されうるバイオマーカーをも測定するであろう。我々は、iC3b(又は、iC3b/C3)がCFH Y402H TT遺伝子型を有して、低いBMI(ステージ1を有すると予想される)を有する非喫煙者において最も上昇すること、及び高いBMI及び進行したAMDを有するCC喫煙者では検出しえないことを予想する。ステージ1のCC喫煙者については、我々は、因子Bレベルが、進行したAMDを有する者より一層低いことを予想する(因子Bの防護的変異体を有する患者の可能な警告を伴う)。別経路の活性化により生成される因子Bの断片であるBbは、別経路の活性化の信頼できるマーカーである。BbのBに対する比は、別経路の活性化の比率及び程度に関する情報を再度与え、これらの因子の分析及びC3測定は、炎症病巣において進行中の過程への洞察を与える。
【0052】
アルツハイマー病のプラークにおけるベータアミロイドによる典型的経路の活性化が、Tenner及び共同研究者により示されている。ベータアミロイドがドルーゼン中で同定されたならば、この機構は、この病気における補体活性化の開始因子を与えうる。C1は、C4をこの経路で開裂させて、C4a及びC4bを生成する。C4a及びC4d(C4bの更なる分解産物)の測定は、この病理に関与する過程に関する更なる情報を与えることが予想される。C3が、典型的経路C3コンバーターゼ(C4bC2a)により一旦開裂されてC3bを生成したならば、この別経路は、C3断片、C5a及びC5bの一層効率的な産生にとって代わりうる。C5aは、補体カスケードの主要な炎症成分であるが、極めて短い半減期を有するので、AMDで見られるようなゆっくりした活性化過程に対する信頼しうるマーカーたりえない。膜結合性でないMACとSタンパク質との組合せにより形成される末端補体複合体であるSC5b−9は、補体活性化の液相マーカーであり、C5開裂及びMACの細胞又はアクチベーター表面への配置の間接的指標である。それは、C5aより長い半減期を有し、AMD患者で起きる補体活性化の程度に関して更なる情報を与えるであろう。
【0053】
ここに記載の敏感度試験は、活性化が起きたときにのみ生成される低レベルの補体分割産物を検出することができ、該産物は、典型的/レクチン、別経路又は末端経路の活性化と関連している。CH50アッセイは、9つのすべての典型的経路タンパク質の順次的活性化に依存する機能的アッセイである。有意な程度でCH50を減少させるには、何れか一つのタンパク質の本当に大きな減少を要する。加えて、CH50は、典型的経路を反映している。一層研究された変異体例えばCFH及び因子Bの殆どは補体機能の別経路に含まれるので、CH50は、これらの変異体によって影響されるとは予想されない。
【0054】
AMDへの遺伝学的アプローチ:AMDは、II型糖尿病、アルツハイマー病、心臓血管病、高血圧症などに類似した複雑な後発性疾患の範疇に入り、これらにおける遺伝的寄与は、必ずしも簡単なメンデル式遺伝によって明らかとされるものではない。むしろ、これらの及び他の複雑な疾患は、環境因子と多数の遺伝子の罹病性対立遺伝子との間の複雑な相互作用の結果であると考えられ、これらの因子は、組み合わされて、罹病性の閾値に達したときにのみ病気を引き起こすと考えられる。これらの遺伝的リスク因子を探すために、2つの主要な仮説「一般的疾患/一般的変異仮説」(例えば、APOE4対立遺伝子のアルツハイマー病との関連により示唆されるものなど)及び多数の遺伝子における、一層稀な、複数の遺伝子でのより遺伝的に浸透性な変異が、多因性疾患の遺伝的要素を説明するという仮説が一般に、探査されている。個々の病気において何れの仮説が一層効果を生じるかを示唆する一般的合意はなく、限られた経験的データしかないが、多くの遺伝子が関与する複雑な病気は、普通の変異と稀な変異の両方からの寄与を極めて自然に有しうるということが最もありそうである。
【0055】
一般的な、低浸透性遺伝的変異を検出するためには、関連研究は、選択の設計(design of choice)である。前記のように、一般的変異は、AMDの遺伝率においてかなりの役割を演じることが決定的に測定されてきた。しかしながら、以前の研究は、遺伝子のコード領域及び調節領域に変化を生じることが既に知られた多型に専ら集中されていた。このゲノムに対する限られた知識、配列コンテキストのみから潜在的に機能的な変異の多くの形態を認識する限られた能力、及び原因経路の真の理解の欠如は、これらの技術を適用する能力を制限し、それら技術は同時に、極めて高価で且つ未確認であった。これらのハードルの多くは、克服された。AMDにおいて記載した成功に加えて、ゲノムワイドの関連アプローチは、肥満症、心臓再分極及びI型糖尿病における有効な遺伝子発見を生じており、遺伝的に複雑な病気における同様の可能性がある。
【0056】
補体系における血漿バイオマーカーは、AMD及びAMDの進行と関係しており、これらの関係は、遺伝子型、環境因子の制御により異なっている。
【0057】
補体因子の基準線の血漿レベルは、AMDについてゲノタイピングされて表現型も決定された患者において、これらのマーカーが所定の環境リスク因子下でAMDのリスクを予測できるかどうかを決定するために測定された。この研究用集団は、(1)不一致の複数の同胞対(家族又は二卵性双生児由来)で、グレード3b、4及び5の同胞及びグレード1の同胞(N=100対、200名)、及び(2)経時的にグレード1−4からグレード3b、4及び5への移行又はグレード4から5への移行を有する同胞中の病状進行者 (全サンプル620人中214人が進行した)を含んでいる。すべての被験者は、血漿試料を保存し、これらは一度も解凍されておらず、これらの研究室での分析に用いることのできる方法で集められた。喫煙、体重インデックス(BMI)を含むリスク因子データ及び提供された血漿の補体アッセイ(不一致対についての)と同日に採取した別の血液のアリコートからの血清高感度C反応性タンパク質(CRP)は、該試料につき上記のようにして、入手可能であった。血清CRP及び血漿補体因子(基準である同日に採取されたアリコート由来)を、予測分析のための研究の進行局面にある被験者について測定する。この同胞デザインは、喫煙がAMDのリスクを増大させること、及びオメガ−3脂肪酸食事の摂取が該リスクを低下させることを示すために利用された。補体のアッセイ:CFH、因子B、因子I、C3及びC5レベルは、主として放射状免疫拡散法により、これらの成分に対するポリクローナル抗血清を用いて、NJCの補体研究所による手順に従って測定する。分離生成物C3a、iC3b、C5a及びC4a及び最終補体複合体(SC5b−9)を、ELISAにより、Pharmingen BD 又は Quidel により作成されたキットを用いて測定する。比iC3b:C3及びC3a:C3をも計算する。これらの成分について我々の研究室で確立された正常範囲を、表1に与える。
【0058】
【表1】

【0059】
臨床検査においては、3個の標準偏差の外側はいずれも異常と考えられる。これらの患者の何人かが低い自然補体(C3、FB及びC4)を有するならば、それらの分離生成物に対するレベルの比は、絶対量より一層有用であると予想される。対照を有する病気の集団からの結果の比較は、AMDの患者に対する適当なバイオマーカーを同定することによって更なる研究のために極めて有用である。すべての補体分離生成物は、EDTA管中に採取され、処理されてEDTA−血漿を採血後迅速に得て、液体窒素フリーザー中に凍結保存された試料で評価される。各試料は、凍結−解凍サイクルの繰り返しは偽陽性の結果を生じうるので、最初の解凍時に、すべてのタンパク質について試験される。
【0060】
方法 - CFH、因子I、因子B、C5:放射状免疫拡散法を、測定すべき化合物に対する適当量の特異的抗体を含む1%アガロースゲルを調製することにより行なう。ウェルをゲル内に切り、測定した量の各試験用の血清又は血漿、対照用の血清又は血漿、及び既知濃度の測定される化合物を含む少なくとも3つの標準のシリーズで満たす。それらの満たされたゲルを4℃で72時間インキュベーションした後に、抗体の抗原(その成分を試験する)との結合により形成された沈降素リングの直径を測定し、沈降素リングの面積を計算する。これらの標準により形成されたリングの面積を利用して、試験試料中に存在する成分の濃度を線形回帰により計算する。
【0061】
C3、C4:C3及びC4のレベルは、Beckman-Coulter イメージ装置を用いて、比濁分析により測定される。C3a、C4a:Pharmingen-BD 社(San Diego)製OptEIAキット(商品名)を利用するELISA。
【0062】
iC3b、Bb、SC5b−9:これらのマーカーは、Quidel社(San Diego, CA)製キットを利用して測定される。3つのインハウス対照を、試験試料と共に試験にかけて、これらの試料をすべて二重に試験する。
【0063】
C反応性タンパク質(CRP)は、Y402H CFH多型が存在する場合、CFHに、CCP7で結合する。血清CRPが、AMDの患者において、対照と比較して上昇することが観察された。CRPは又、CFH変異体の少なくとも一つの対立遺伝子を有する患者におけるAMDのリスクをも増大させる。CRPは、その基質との結合に際して典型的経路を活性化するが、CRPは、C5b−C9活性化の強さを下げるということも示された。
【0064】
SNPピッキング:8SNPのすべてを、C3を横切ってゲノタイピングし、7SNPを、C5を横切ってゲノタイピングした。SNPをTagger(www.broad.mit.edu/mpg/tagger/で見出される)及びCEPH集団からのHapMapデータ(フェーズII、www.hapmap.org)を利用して選択した。SNPを、0.8の最小r2の少ない対立遺伝子頻度(MAF)(>5%)で選択した。選択されたSNPは、関心ある各領域内の他のSNPの直接的代理であるので、それらの領域内に非常に代表的な遺伝的変異を有するであるか、又は、それらのSNPは、自身が強いLDにある他の選択したSNPから作られたマルチマーカーハプロタイプの一部であった。
【0065】
分析:患者と対照との比較のために、条件付きロジスティック回帰を利用して、遺伝子型のカテゴリー内で、様々な補体因子及びCRP値の所定のレベルの進行したAMDを有する見込みを測定し、同時に、喫煙年数、体重インデックス及び心臓血管病歴を評価して調整した。補体因子対CRPと補体因子対遺伝子型との間の効果修正も決定される。リスク因子データは、現存するデータベース中で入手可能であり、分析される。更なる分析も又、遺伝子型と補体因子との間の関連を評価するために、一般的線形モデルを利用して行われる。進行については、類似のCox回帰分析を適用して、補体レベルがAMDの進行と関連しているかどうかを、遺伝子型、喫煙、BMI、CRPなどを制御しながら評価する。相互作用及び効果修正を評価して、補体因子がある種の遺伝子型内で多少ともAMDと関係しているかどうか、又はこれらの関係が喫煙状態、BMIのレベルなどによって変化するかどうかを測定する。一致しない対の分析の力は、効果サイズ(即ち、標準偏差当たりのグループ間の平均的差異)=0.40を、100人の患者と100人の対照との比較に基づいて、80%の力で検出するのに十分である。力は、620人の患者のうち214人の進行者がいる場合、進行の研究のためより一層大きい。多数の試験に関して、種々の補体因子は、高度に相関する傾向があり、ボンフェローニ型相関は不適当であろう。
【0066】
このプロジェクトの初めの数年間に、370家族からの1790人の個人が、この研究において登録された。すべての個人から遺伝的研究のためにDNAが精製され、家族の病歴及びリスク因子の情報も又、すべての被験者について集められた。連鎖分析は、AMDにおいて成功した。個々の研究は、遺伝子局在化の明確な証拠を与えなかったが、連鎖研究のメタアナリシスは、第1及び第10染色体上に、連鎖の説得力のある証拠を示す領域を、示唆的証拠を示す少数の他の領域と共に同定した。これらの2つの最も説得力のある領域は、後に、CFH及びLOC387715/HTRA1領域で強く関連した変異体を有することが見出された。進歩がなされたとはいえ、今日までに確認された遺伝子変異体によっては全体的遺伝の一部分しか説明されていないことは明らかである。本発明の関連アプローチは病気に対する一般的な低浸透度の誘因を同定する極めて効率的な方法を提供するが、それらは、病気事象に寄与し、合理的に高い浸透度を有する一層稀な対立遺伝子を見逃す可能性があることも確かである。それ故、進行中の遺伝子発見の努力を補足するために、一層稀な、一層高い浸透度の遺伝子変異のAMDに対する寄与を評価するのに一層最適化された特別のストラテジーを記載する。
【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
【表4】

【0070】
実施例2.進行した萎縮性及び新血管新生加齢関連黄斑変性についての、遺伝学的、人口統計的及び環境的変量に基づく予測モデル
コンテキスト:5つの遺伝子中の6つの単一ヌクレオチド多型は、加齢関連黄斑変性(AMD)と関係するが、それらのAMDに対する独立した効果は、環境因子を制御しながら評価されたことはない。ここに示したのは、遺伝的及び環境的変量の結合効果の評価及び潜在的なスクリーニングのための予測モデルを設計して評価することである。
【0071】
設計、セッティング及び参加者:複数の医療研究機関で、進行したAMD及び視覚喪失を伴う(n=509人の患者)か又は伴わない(n=222人の対照)加齢関連眼病の研究において、白色人種の参加者を評価した。進行したAMDを、地図状萎縮、新血管新生疾患として規定した。喫煙とBMIを含むリスク因子を評価して、DNA試料を5つの遺伝子CFH、LOC387715/HTRA1、CFB、C2及びC3中の6つの変異体についてゲノタイピングした。無条件のロジスティック回帰分析を行なった。受信者動作特性(ROC)曲線を計算した。
【0072】
結果測定:進行した乾燥及び新血管新生AMDの罹病率及びリスクスコアの、患者と対照とを識別するための、敏感度及び特異度に基づく予測能力
【0073】
結果:CFH Y402H、CFHrs1410996、LOC387115 A69S、C2 E318D、CFBR32Q、及びC3R102H多型を、各々、独立に、人口統計的因子、喫煙、BMI、及びビタミン/ミネラル処理割当てを制御しながら進行したAMDと関連付けた。多変量のオッズ比(OR)は、CFH Y402Hについて3.5(95%信頼区間(CI)1.7−7.1);CFHrs1410996についての3.7(95%CI1.6−8.4);LOC387715 A69Sについて25.4(95%CI8.6−75.1);C2 E318Dについて0.3(95%CI0.1−0.7);CFBについて0.3(95%CI0.1−0.5);及びC3 R102Hについて3.6(95%CI1.4−9.4)であった(ホモ接合リスク/防護的遺伝子型を参照用遺伝子型と比較)。遺伝的及び環境的リスクスコアは、0.803〜0.859にわたるC統計値を与えた(これは、452人の患者と317人の対照の独立した試料において複製された)。
【0074】
結論:6つの遺伝子変異体、並びに喫煙及びBMIは、独立に、視覚の喪失を引き起こす進行したAMDと関連しており、この関係は高い予測性を示す。
【0075】
これらの遺伝的及び環境的因子のすべてが独立に又は共同して作用するのか及びそれらが群として如何なる程度までAMDの出現を予言できるのかは未知のままであるので、かかる情報を得ることは、陽性の家族の病歴又は初期若しくは中程度の病気の兆候を有する者(その中の何人かは進行した段階のAMDへと進行する)のために、高リスクの者のスクリーニングに有用である。初期の検出は、潜在的に、人生のより早い時期に修正可能な習慣を標的として強調して、この病気にかかり易い者に対する一層高頻度の監視を勧めることによって、AMDのために増大する社会の負担を減じることができよう。治療の試みは、患者を登録するならば、かかる情報からも利益を得られよう。
【0076】
方法:
表現型データ
加齢関連眼病の研究(AREDS)は、抗酸化剤及びミネラルサプリメントの、AMD及び白内障のリスクに対する効果を評価するための無作為の臨床試験、及びAMDの長期的研究を含んだ。眼の検査及び中心基底写真の写真等級付けを読むAREDSに基づいて、この研究における白色人種の参加者を、最も一致しない表現型を表す次の2つの主なグループに分けた:ドルーゼンを有さず又は非拡張性の小さいドルーゼンを有するAMDなし(n=222人)又は視覚の喪失を伴う進行したAMD(n=509)。非白色人種は、その集団における進行したAMDの分布が白色人種と比べて相当に異なっているので、除かれた。非中心及び中心萎縮、新血管新生疾患並びに視覚の喪失を含む最初のAREDS分類中の、進行した形態のAMDの、グループ3及び4を、次いで、非中心若しくは中心地図状萎縮(n=136)又は新血管新生疾患(n=373)の2つのサブタイプに再分類した(これらの2つの(進行した乾燥及び湿潤性)表現型の間で結果が異なるかどうかを決定するために、視覚的明瞭度とは無関係に、臨床的加齢関連黄斑症等級付けシステムを用いて再分類した)。他の比較を、片側の進行したAMDと両側の進行したAMDの間で、AREDSシステムに従って行なった。教育、喫煙歴、及び体重インデックスを含む人口統計及びリスク因子データを質問事項並びに身長及び体重測定値からのベースライン参照で得た。抗酸化剤状態を、臨床試験で抗酸化剤(抗酸化剤単独又は抗酸化剤と亜鉛)を摂るか又は摂らない(プラシーボ又は亜鉛単独)かで規定した。この調査プロトコールは、施設内倫理委員会により認可され、すべての参加者は、インフォームドコンセント声明書に署名した。
【0077】
ゲノタイピング
1998年から集め始めたDNA試料が、AREDS Genetic Repositoryから得られた。次ぎの6つの、AMDと関連する共通のSNPは、1)第1染色体lq31上のCFH遺伝子のエキソン9中の補体因子H(CFH)Y402H(rs1061170)、変化1277T>Cは、CFHタンパク質のコドン402のチロシンのヒスチジンでの置換を生じ、2)CFHrs1410996は、独立に、CFHのイントロン14中のSNP変異体と関係し、3)LOC387715 A69S(第10染色体のLOC387715/HTRA1領域中のrs10490924)、LOC387715のエキソン1中の非類義語コーディングSNP変異体は、コドン69のアラニンのアミノ酸セリンによる置換を生じ、4)補体因子2又はC2 E318D(rs9332739)、C2のエキソン7中の非類義語コーディングSNP変異体は、コドン318のグルタミン酸のアスパラギン酸への変化を生じ、5)補体因子B又はCFB R32Q(rs641153)、CFBのエキソン2中の非類義語コーディングSNP変異体は、コドン32のアミノ酸グルタミンのアルギニンへの変化を生じ、そして6)補体因子3又はC3 R102H(rs2230199)、C3のエキソン3中の非類義語コーディングSNP変異体は、コドン102のアミノ酸グリシンのアルギニンへの変化を生じることが評価された。第10染色体上の遺伝子変異体LOC387715A69Sについて、それは、それに隣接する遺伝子HTRA1が実際に10q26におけるAMD罹病性遺伝子でありうるのかどうか論争の的であったが、これらの2つの遺伝子中の関連SNPは、密接に完全に相関していると報告された。従って、他のSNPは将来有望な候補の変異体であるが、この研究で用いられたrs10490924は、この領域に存在する原因変異体のサロゲートであると考えることができる。ゲノタイピングは、プライマーマス伸長及びSequenom社 (San Diego, CA) のMassEXTEND(商品名)法によって、MALDI−TOF MS分析を利用して行われた。
【0078】
統計的分析
進行したAMD並びに乾燥、湿潤性の別個のサブタイプ及び両側の進行したAMDを有する個人を、AMDを有しない白色人種の対照群と、遺伝子型及びリスク因子データに関して比較した。多変量の無条件ロジスティック回帰分析を行なって、AMDとすべての遺伝子型及び様々なリスクファクターとの間の関係を、年齢(70歳以上、70歳未満)、性別及び教育(高校以下、高校より高学歴)、紙巻き煙草の喫煙(非喫煙、過去に喫煙、現在喫煙中)、及び体重(kg)を身長(m)の二乗で割ることにより計算されるBMI(<25、25−29.9、及び≧30)を制御しながら評価した。このAREDSの無作為臨床試験における割当ても又、多変量モデルに加えられた(抗酸化剤を含むサプリメントを摂るか又は抗酸化剤を含まない研究用サプリメントを摂る)。遺伝子型の各々と喫煙及びBMIのそれぞれとの間の乗法的相互作用についての試験を、遺伝子型及び個々のリスク因子による乗積項(cross product terms)を利用して計算した。類似の分析を行なって、遺伝子−遺伝子相互作用を、各遺伝子の組合せについて評価した。オッズ比及び95%信頼区間を、各リスク因子について、3つの遺伝子型グループ内で計算した。各遺伝子変異体(0、1、2)についてのリスク対立遺伝子の数についてのトレンドの試験を計算した。様々なリスクスコアカットポイントについての敏感度及び特異度を評価して、個々のリスク例えば敏感度及び特異度の少なくとも80%の予測のためのこのモデルの最適利用を評価した。AMDのリスクスコアの、すべての遺伝学的、人口統計的及び行動的因子に基づく計算方法を表5に説明した。受信者動作特性(ROC)曲線の下方の面積が、年齢グループ50−69歳と70歳以上のグループについて別々に得られた。ROC曲線に基づく年齢調節された一致した又は「C」統計を、遺伝子と環境因子の種々の組合せについて計算して、無作為抽出した患者のそのモデルにおけるリスク因子の群に基づくリスクスコアが、同じ10年齢グループ内の無作為抽出した対照からの対応するリスクスコアよりも一層高い可能性を評価した。このリスク予測モデルの再現性を試験するために、452人の患者と317人の対照よりなる別個の複製試料を、AMD研究データベースから、視覚的写真に基づく同じ等級付けシステムを利用して得て、C統計値を、元の試料から得られたリスクスコアを利用して計算した。ROC曲線を、この複製試料について得た。
【0079】
結果
患者及び対照の平均年齢(±SD)は、それぞれ、69.1(±5.2)及び66.8(±4.2)であった。女性は、58%の患者と54%の対照を含んだ。表6は、対照間の遺伝子型と共変量との間の関係を示している。何れの遺伝的変量と人口統計的、行動的又は処置的変量との間にも統計的に有意の関係はなかった。年齢とC3変異体との間の関係に対しては、1つ、2つのリスク対立遺伝子又はGC若しくはGG遺伝子型を有する一層若い個人は、幾らか高目の割合であったが、有意の傾向はなかった。
【0080】
遺伝子の対の間の関係も又、評価された。CFH Y402H(rs1061170)及びCFH(rs1410996)は、これらの部位の間の連鎖不平衡の結果として、有意に関係し(p<0.001)、CFB R32Q(rs641153)は、C3 R102H(rs2230199)と弱く関係した(p=0.03)(表7)。他の遺伝子の対の間での関係は、統計的に有意ではなかった。遺伝子型による粗AMD罹患率(未調節のオッズ比(OR))は、CFH変異体の各々とAMDとの間の強い正の関係を示し、Y402Hについての罹患率ORは6.9であり、rs1410996については11.1であり、並びにLOC387715遺伝子は、OR18.0(pトレンド<0.001)であった(表8)。C3変異体とAMD罹患率との間にも、比較的小さいが非常に有意な正の関係がある(OR=3.1、pトレンド<0.001)。C2及びCFB変異体とAMD罹患率との間には、逆の関係(防護的効果)があった(ORは、それぞれ、0.4及び0.3であり、p<0.001)。
【0081】
表9は、進行したAMDと人口統計的及び行動的因子との間の、多変量の調節した関係を、すべての遺伝子変異体を制御しながら示しており、並びに、AMDと環境因子を調節する遺伝的因子との間の関係を示している。2つの独立のCFH変異体及び組み合わせられた進行したAMDグループの間には、正の関係があった(Y402H、OR=3.5、95%CI 1.7−7.1、pトレンド=0.0003);CFHrs1410996(OR=3.7、pトレンド=0.0003)。AMDとLOC388715 A69S変異体(OR=25.4、pトレンド<0.0001)及びC3(OR=3.6、pトレンド=0.001)との間には、正の関係があった。C2(OR=0.3、p=0.003)とCFB変異体(OR=0.3、p<0.0001)との間には、防護的関係があった。年齢(OR=2.8、p<0.0001)、現在の喫煙(OR=3.9、p=.001)、及び過去の喫煙(OR=1.9、p=0.004)には、正の独立した関係があった。高い教育には、防護的効果があった(OR=0.6、p=.01)。境界線上のBMIとの正の関係が存在するが(OR=1.5、p=0.11)、性別又は抗酸化剤処置では、有意の関係が見られなかった。一般に、遺伝子とAMDとの間で類似の関係が、片側及び両側の進行したAMD及び乾燥及び湿潤型の進行したAMDを含むすべてのAMDサブタイプについて見られたが、これらの関係は、進行したAMDの特定の種類では僅かに変化した。
【0082】
各遺伝子型と喫煙(常時/非喫煙)及びBMI(25+/<25)との間の相互作用を評価した(表10)。如何なる遺伝子型と喫煙又はBMIとの間でも、有意の相互作用は見出されなかったが、BMIの、遺伝子型CFH Y402H TTを有する者に対する一層少ない効果及び、リスク対立遺伝子(CC及びCT遺伝子型)を有する者に対するBMIの逆の効果に関して、弱く有意でない傾向があった。所定の遺伝子型内で、喫煙及び一層高いBMIは、進行したAMDのリスクを増大させた。ホモ接合型のGGのリスク遺伝子型例えばC3に関して、進行したAMDについてのORは、非喫煙者について3.3(1.0−10.9)であり、喫煙体験者については9.8(2.0−47.5)に増大し、これは、喫煙とC3遺伝子型の両者に主たる効果があるが、相互作用効果はないことを示している。
【0083】
遺伝子の対の間の相互作用を評価した(表11)。CFHY402H遺伝子型とCFHrs1410996遺伝子型との間で見出された境界線上の有意の相互作用が一つだけあり、それは、CFHY402H遺伝子型がTTよりむしろCTであるときにCFHrs1410996CC遺伝子型の僅かに強い効果である(p=0.05)。
【0084】
表12には、遺伝的、人口統計的、及び環境的変量の種々の組合せを用いたモデルについてのC統計値が与えられている。2つの以前に報告された遺伝子、CFH Y402H及びLOC387715 A69S、(ref)及び年齢、性別、教育、並びに抗酸化剤処理に基づくモデル1についてのC統計値は、0.803±0.018であった。このC統計値には、モデル2において更なるリスク因子としての喫煙とBMIを追加すると、有意の改善があり、0.822±0.017のC統計値であった(モデル1対2で、p=0.027)。モデル3は、すべての6つの変量を、年齢、性別、教育及び抗酸化剤処理と共に含み、0.846±0.016のC統計値を示し、これは、対応する2つの遺伝子モデルを超える有意な改善であった(モデル1対3、p<0.001)。喫煙とBMIを基本的な6つの遺伝的変異体モデル3に加えた場合、C統計値は、0.859±0.015に増大し、これは、対応する2つの遺伝子のモデルと比べて有意の改善であった(モデル2対4、p=0.001)。これらの6つの変異体を用いるモデルに対する環境的変量の追加により、少ないが改善があった(モデル3対4、p=0.037)。C統計値は、冠動脈心疾患に(CHD)ついてのFramingham リスクスコア予測モデルの結果より高いということは、注意すべきである。
【0085】
AMDリスクスコアを、アルゴリズムの構築に用いられなかった452人の患者及び317人の対照の別個の複製試料において試験した。平均年齢(±SD)は、患者が76±6.6歳で、対照者が72±4.4歳であり、これらのうち、男性は、それぞれ、49%及び53%であった。この研究用集団は、ここに記載の他の進行中の遺伝学的及び疫学的因子の研究から得られた。このC統計値は、表4に示したように、複製試料に基づくもので、0.810±0.016であり、患者と対照との間の優れた識別力を示す。このC統計値は、年齢、性別、教育、喫煙及びBMIに関する調整を用いて計算された。この分析に関して、参加者は、研究への登録時にAREDSサプリメントを摂っておらず且つ以前の分析においても被験者は、食事でこれらの抗酸化剤を多量に消費していなかったので、抗酸化剤状態は、「no」とされた。これらの元の試料と複製試料の両方についてのC統計値は、CHDの予測のためのFraminghamリスクスコアについてのC統計値に匹敵するか超えている。
【0086】
表8に示したモデル4は、個人のリスクの予測目的で考えられた。モデル4の敏感度及び特異度は、潜在的なスクリーン陽性基準を各年齢群について別々に示すために、表5(図1)に記載したような種々のカットポイントを利用して計算された。その目的は、敏感度と特異度の両方が少なくとも80%となるカットポイントを特定することである。これは、一層高齢者の群について達成され(リスクスコア3以上はスクリーン陽性、3未満はスクリーン陰性)、83%の敏感度及び82%の特異度を生じた。一層若い年齢の群についてのリスク予測は、幾分低いがやはり良好であり、スクリーン陽性度2.5のカットポイントについて、敏感度は76%で特異度は78%であった。一般に、リスク予測は、より高齢の群について、幾分良好であった。
【0087】
患者及び対照についてのスコアのヒストグラムを、2つの年齢群についてプロットした(図2)。所定の年齢群内のリスクスコア分布は、実質的に異なっていることが明らかで、患者のスコアは、幾らかの重なりはあったものの、対照より高い傾向があった。年齢及び患者−対照状態に関する複製試料についてのこれらのリスクスコアは、図2の下部に見られ、患者と対照の良好な分離を特に高齢の個人について示している。
【0088】
検討
ここに記載されたのは、独立した6つの遺伝的変異体のAMDとの関係であり、これらのすべての変異体について、人口統計的及び行動的因子に加えて調整している。患者と対照との識別は、元の試料と複製試料の両方で、全リスクスコアについて顕著である。本発明の進行したAMDについてのリスク因子の複合体の予測力は、0.86のC統計値スコア及び0.81の複製C統計値を示し、C統計値は、白人男性では0.79、白人女性では0.83であって、幾つかの複製試料では更に幾分か低いCHDに関するFraminghamリスク機能に匹敵するか又は一層優れている。明らかに、遺伝的因子は、遺伝子変異体の、片側及び両側の病気を含む進行したAMDの様々な群、並びに地図状萎縮(乾燥型)及び新血管新生(湿潤型)進行性AMDに対する大きくて首尾一貫した効果の評価により示したように、この病気において主要な役割を演じている。他方で、修正可能な因子も又、影響力を有している。紙巻きタバコの喫煙は、すべての遺伝子型についてリスクを増大させた。例えば、進行したAMDのリスクは、同じホモ接合型のC3リスク遺伝子型を有する個人において非リスク遺伝子型の非喫煙者と比べて、非喫煙者では3倍以上であったが喫煙者では殆ど10倍であった。一層高いBMIも又、すべての遺伝子型について、リスクプロファイルに寄与した。
【0089】
これらの分析は、測定値(実施例1)を、重要で意義のある方法で、新たな遺伝子変異体を加え、人口統計的及び行動的因子を組み込み、進行したAMDについてのC統計値を、遺伝的及び環境的変量の種々の組合せを用いるモデルに基づいて計算し、そしてその結果得られたリスクスコアの、進行したAMDを有する個人と有しない個人を識別する能力を評価することにより、拡張して精密化する。
【0090】
この研究のユニークな特徴は、米国周辺の様々な地理的領域からの、進行したAMDを有する又は有しない白人患者の大きい、十分に特性決定された集団に基づく予測力の評価を含む。更なる長所は、リスク因子情報の標準化された収集、身長及び体重の直接的測定値、及び黄斑症の、標準化された眼科学的試験及び基底部写真の等級付けによる分類を含む。等級はリスク因子又は遺伝子型の知識なしで割り当てられたので、誤った分類は起こりえない。対照は、年齢、教育、BMI、喫煙及び治療割当てを含む既知のAMDリスク因子について、遺伝子変異体と進行したAMDの関係を評価しながら行われた。環境的及び遺伝的リスク因子の両者は、同時に考える場合、独立に、AMDと関係した。これは、選択された集団であっても、被験者が、進行したAMDを有する典型的な患者を代表することはありそうなことであり、集団全体は、この年齢範囲においては、喫煙及び糖尿病の罹患率並びに遺伝子型の分布に関して他者に類似している。この大きくて十分に特性決定された集団は、遺伝子と環境の関係及び相互作用を評価するユニークな機会を提供した。その上、遺伝子変異体の生物学的効果は、AMDを有する様々な白人集団において主要な点で異なっているようには見えない。
【0091】
これらの関係を起こりやすいAMDについて評価するのが望ましいが、この年配者のグループ内のAMDを有しない多くの個人が残り人生の間に進行した病気に進行することはありそうにない。従って、最終的に患者になりうる対照者の誤った分類の可能性は小さいだろう。
【0092】
初期及び中程度の病気を有する者に特徴的なドルーゼンの知識も又、進行したAMDへの進行に関係しているが、この研究は、進行したAMDを有する患者又はAMDの兆候を有しない対照としての状態の予測における遺伝的因子と非遺伝的因子の識別力という、異なる問題に関する。その上、高いリスクのドルーゼン又は色素異常を有する個人のうちで、6つの遺伝子変異体のうちの2つが、進行した病気への進行を、それらの基底部の外観とは無関係に予言する。
【0093】
これらの分析及び結果は、AMDについての、個人のリスクの予測の可能性を示している。リスクスコアの計算において、例えば、喫煙(1.3)、一層高いBMI(0.4)及び様々な遺伝子変異体(−1.3から+3.2まで及ぶ)についての回帰係数(表5)から「ポイント」を評価して、個人について、進行したAMDを発症する全体的リスクを得ることができよう。これは、新たな遺伝的及び他のリスクの予測法が確立されるので、精密化することができよう。かかるリスクスコアを知ることの利点は、一層狙いを定めた教育及び既知の修正可能な因子についての助言の可能性を含む。スクリーニングは、高リスクの人々を同定し、喫煙をせず、野菜及び魚を食べ、正常な体重及び運動することを持続し、そしてAMDの可能性を有する者に対するAREDS型抗酸化剤及びミネラルサプリメントを摂ることによって健康な生活様式を進むことを奨励されるであろう。これらの因子のすべては、AMDの病因論に含まれる炎症及び免疫経路に影響を与えることが知られている。高リスクの個人の発見を目的とすることは、自己認識の向上及び一層高頻度のサーベイランス及び臨床的検査を可能とすると共に、新治療の臨床試験に組み込むための高リスクの個人の同定も可能とする。
【0094】
表5.AMDリスクスコアの計算
リスクスコアは、下記式から計算された:
【数1】

ここに、βi及びXiは、下記により与えられる:
【0095】
【表5】

【0096】
【表6A】

【0097】
【表6B】

【0098】
【表7A】

【0099】
【表7B】

【0100】
【表8】

【0101】
【表9】

【0102】
【表10−1】

【0103】
【表10−2】

【0104】
【表11A】

【0105】
【表11B】

【0106】
【表11C】

【0107】
【表11D】

【0108】
【表11E】

【0109】
【表12】

【0110】
【表13】

【0111】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
AMD又はAMDに対する罹病率、AMDに対する防護的表現型、又はAMDに対する中立的遺伝子型を診断する方法であって、該方法は、補体経路の遺伝子と関連する多型部位における特定の対立遺伝子の存否の検出を含み、この対立遺伝子は、AMD又はAMDに対する罹病率を示す当該方法。
【請求項2】
多型部位が、補体因子3と関連する単一ヌクレオチド多型である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
多型部位が、rs2230199(SEQ ID NO:1)であり、グアニン対立遺伝子がAMD又はAMDに対する罹病率を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
シトシン対立遺伝子が、102位のアミノ酸にグリシンを含むC3ポリペプチドを検出することにより検出される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
多型部位が、シチジン対立遺伝子がAMD又はAMDに対する罹病率を示すrs1061170(SEQ ID NO:2);チミン対立遺伝子がAMD又はAMDに対する罹病率を示すrs10490924(SEQ ID NO:3);シチジン対立遺伝子がAMDに対する防護的効果を与えるrs9332739(SEQ ID NO:4);チミン対立遺伝子がAMDに対する防護的効果を与えるrs641153(SEQ ID NO:5);シチジン対立遺伝子がAMD又はAMDに対する罹病率を示すrs1410996(SEQ ID NO:6);そしてシチジン対立遺伝子がAMD又はAMDに対する罹病率を示すrs2230203(SEQ ID NO:7)よりなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
特定の対立遺伝子の存否が、ハイブリダイゼーションアッセイにより検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
特定の対立遺伝子の存否が、マイクロアレイを利用して測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
特定の対立遺伝子の存否が、抗体を利用して測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
AMD発症のリスクがあり又は該発症から防護されている患者を同定する方法であって、該方法は、
a)少なくとも一つのrs2230199のリスク対立遺伝子の存否を検出し;
b)補体因子Hと関連する少なくとも一つのリスク対立遺伝子又は防護的対立遺伝子の存否を検出し;
c)HTRA1におけるLOC387715において関連する少なくとも一つのリスク対立遺伝子又は防護的対立遺伝子の存否を検出し;そして
d)補体因子Bと関連する少なくとも一つのリスク対立遺伝子又は防護的対立遺伝子の存否を検出する
ことを含み、患者が、集団のうちの、AMDを発症する約1%未満のリスクを有する約20%の1人であるならば、その患者はリスクがなく、AMDを発症する約50%より大きいリスクを有する集団の約1%の一人であるならば、リスクがある、当該方法。
【請求項10】
特定の対立遺伝子の存否が、ハイブリダイゼーションアッセイによって検出される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
特定の対立遺伝子の存否が、マイクロアレイを利用して測定される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
多型部位及びSEQ ID NO:1〜7として表される一つ以上の配列の6以上の隣接ヌクレオチドを含む精製されたポリヌクレオチドであって、変異対立遺伝子が多型部位に存在する当該ポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項12に記載のポリヌクレオチドに相補的である少なくとも一つのポリヌクレオチドプローブを含む診断用アレイ。
【請求項14】
診断用システムであって:請求項13に記載の診断用アレイ、アレイリーダー、イメージプロセッサー、データレコード及び情報レコードを有するデータベース、プロセッサー、及び情報出力装置を含み、患者のデータを編集して処理して、患者の進行するAMDの統計的可能性に関する情報を出力する当該診断用システム。
【請求項15】
患者の試料を診断用アレイに高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で接触させ;患者の情報をシステムに入力し;そして該システムから患者の進行するAMDの統計的可能性に関する情報を得ることを含む、請求項14に記載の診断用システムの利用方法。
【請求項16】
SEQ ID NO:1〜7を含む個々の精製されたポリヌクレオチド組成物の試料を、基材に、その基材上の複数の特定のアドレスに配置することを含む、請求項13に記載の診断用アレイの作成方法。
【請求項17】
患者におけるAMD又はAMDに対する罹病率を診断する方法であって、該方法は、遺伝的リスクを行動的リスクと合わせることを含み、補体経路の遺伝子と関連する多型部位における特定の対立遺伝子の存否を検出することにより遺伝的リスクを測定し、該対立遺伝子がAMD又はAMDに対する罹病性を示すことを特徴とする当該方法。
【請求項18】
多型部位がrs2230199(SEQ ID NO:1)であり、グアニン対立遺伝子がAMD又はAMDに対する罹病性を示す請求項17に記載の方法。
【請求項19】
シトシン対立遺伝子が、アミノ酸の102位にグリシンを含むC3ポリペプチドを検出することにより検出される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
多型部位が、シチジン対立遺伝子がAMD又はAMDに対する罹病性を示すrs1061170(SEQ ID NO:2);チミン対立遺伝子がAMD又はAMDに対する罹病性を示すrs10490924(SEQ ID NO:3);シチジン対立遺伝子がAMDに対する防護効果を与えるrs9332739(SEQ ID NO:4);チミン対立遺伝子がAMDに対する防護効果を与えるrs641153(SEQ ID NO:5);シチジン対立遺伝子がAMD又はAMDに対する罹病性を示すrs1410996(SEQ ID NO:6);及びシチジン対立遺伝子がAMD又はAMDに対する罹病性を示すrs2230203(SEQ ID NO:7)よりなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
特定の対立遺伝子の存否が、ハイブリダイゼーションアッセイにより検出される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
特定の対立遺伝子の存否が、マイクロアレイを利用して測定される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
特定の対立遺伝子の存否が、抗体を利用して測定される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
患者が、肥満、喫煙、ビタミン及び食事サプリメントの摂取、アルコール又は薬物の使用、乏しい食事及び体を動かさない生活様式よりなる群から選択される行動又は習性を示すかどうかを測定することにより行動的リスクが評価される、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
肥満の測定に上昇したBMIを利用する、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−526555(P2010−526555A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508382(P2010−508382)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/006016
【国際公開番号】WO2008/140793
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(509311953)タフツ・メディカル・センター (1)
【氏名又は名称原語表記】TUFTS MEDICAL CENTER
【住所又は居所原語表記】750 Washington Center,Boston,MA 02111 U.S.A.
【Fターム(参考)】