劣化検知体
【課題】劣化時期を手軽な操作で予測し得る劣化検知材を提供しようとする。
【解決手段】被検知物の光による劣化度合いを検知するために該被検知物の近傍に設置して用いるものであって、光透過性フィルムを基材とし、該光透過性フィルムの一の面がわに光により変色する変色層が積層され、該光透過性フィルムの他の面が露光面とされた劣化検知体である。前記光透過性フィルムは着色されてなり得る。前記劣化検知検知体は前記被検知物に接着するための接着剤層を備え得る。前記接着剤層は粘着剤層であり得る。前記変色層は前記接着剤層を兼ね得、該接着剤層を構成する接着剤に光により変色する変色剤が混入されてなり得る。
【解決手段】被検知物の光による劣化度合いを検知するために該被検知物の近傍に設置して用いるものであって、光透過性フィルムを基材とし、該光透過性フィルムの一の面がわに光により変色する変色層が積層され、該光透過性フィルムの他の面が露光面とされた劣化検知体である。前記光透過性フィルムは着色されてなり得る。前記劣化検知検知体は前記被検知物に接着するための接着剤層を備え得る。前記接着剤層は粘着剤層であり得る。前記変色層は前記接着剤層を兼ね得、該接着剤層を構成する接着剤に光により変色する変色剤が混入されてなり得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂等の被検知物の光による劣化度合いを検知する劣化検知材に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製品は、あらゆる分野において、種々の形状に成形され、有用に用いられている。しかし、高分子材料は、空気、水、環境汚染、微生物などの環境因子、また、熱、光、電気、放射線等のエネルギー因子により、劣化が避けられない。このような劣化は、具体的には、分子構造、化学構造、高次構造の変化をきたし、物理特性、化学特性、外観、力学特性、電気的特性等の特性変化をおこす。なかでも一般に、樹脂は、紫外線等の光線への暴露による劣化が避けられない。この劣化は、樹脂の機械的強度の低下を引き起こし、樹脂を用いたガス管や、水道管、さらには光ファイバーの被覆管等の樹脂製品の表面、内部の亀裂の原因となり、影響は多大である。
【0003】
従って、高分子材料の大幅な需要増大に対応し、高分子材料の種々の使用環境における寿命を予測することは重要である。
【0004】
しかし、現在において、このような高分子材料の正確な寿命予測は困難であり、信頼性をできる限り高めた複雑な劣化促進試験により,寿命予測を行っているのが、実情である。また、需要が高まっているポリエチレンの光や熱の暴露による劣化については多くの研究がなされているが、いずれも反応機構を中心としたものにすぎず、積極的にかつ手軽に寿命予測できる研究はなされていない。従って、樹脂の劣化を未然に手軽に検知し、劣化部分を交換することを可能とするために、劣化時期を正確に知る手段の開発が必要とされている。
【0005】
かかる目的に使用されるものとして環境条件の変化により変色するインク等の物質が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)がこれら文献にはこれら物質を被検知物に装着するための支持体を含むピースの製造の容易さや、装着する操作については詳述されておらず、この製造やこの操作の容易さが考慮されていない。また、環境条件の変化により変色するインク等の物質を備える環境判定インジケータが開示されている(例えば、特許文献3参照)が、この文献に開示されているインジケータは、環境条件の変化により変色するインク層が担持面に付着しているものであり、被検知物に装着する操作の容易さが考慮されていない。またこのインク層が露出した構成となっており引っ掻き傷の発生等の使用時の物理的損傷に対する対策が容易ではない。
【特許文献1】特開昭60−89352号公報
【特許文献2】特開平9−111161号公報
【特許文献3】特開2001−281002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、劣化時期を手軽な操作で予測し得る劣化検知材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨とするところは、被検知物の光による劣化度合いを検知するために該被検知物の近傍に設置して用いるものであって、光透過性フィルムを基材とし、該光透過性フィルムの一の面がわに光により変色する変色層が積層され、該光透過性フィルムの他の面が露光面とされた劣化検知体であることにある。
【0008】
前記光透過性フィルムは着色されてなり得る。
【0009】
前記劣化検知検知体は前記被検知物に接着するための接着剤層を備え得る。
【0010】
前記接着剤層は粘着剤層であり得る。
【0011】
前記変色層は前記接着剤層を兼ね得、該接着剤層を構成する接着剤に光により変色する変色剤が混入されてなり得る。
【0012】
前記劣化検知体は、自身が積層される基台を備え得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、劣化時期を手軽な操作で予測し得る劣化検知材が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の劣化検知材の実施の形態について、詳しく説明する。本発明の劣化検知材は、光による材料の劣化を検知し、適切な交換時期を知らせしめる目的で、被検知物の近傍に設置して用いる劣化検知体である。劣化検知体が設置される位置は被検知物の使用時に被検知物が暴露される光線と同程度の強さの光線に暴露される位置であることが好ましい。本発明の劣化検知体を適用しうる材料としては、樹脂成形体、薬液などが挙げられるが、光により劣化するものであれば特に限定されない。
【0015】
樹脂成形体の材料である被検知樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリブタジエン系樹脂等が挙げられる。また、これらのうちの異種の樹脂同士が混合あるいは複合された混合物や複合物、さらには、本発明の劣化検知体を適用しうるものとしては、これらの樹脂、混合物、複合物と金属やセラミックのような他素材との複合体が挙げられる。
【0016】
本発明の好ましい態様の一例を図1に示す。図1において、本発明の劣化検知体2は光透過性フィルム4を基材9として、光透過性フィルム4と、光透過性フィルム4の一の面5のがわに積層された、光により変色する変色層6とを備える。光透過性フィルム6の他の面7のがわが劣化検知体2の露光面とされる。即ち、劣化検知体2は他の面7に光が照射される状態で使用される。
【0017】
本発明の劣化検知体は一般的には片状に成形されて被検知物に貼着されて用いられるが、被検知物を長尺のシート状に成形し、使用時に目的に応じて小片に切り分けてもよい。
【0018】
劣化検知体2は被検知物に貼着されて用いられる。あるいは、その他の手段により被検知物の近傍に設置して用いられる。
【0019】
劣化検知体2は接着剤を用いて被検知物に接着してもよい。あるいは、台紙や台板のような基台に貼着してその台紙や台板を介して被検知物に取り付けて使用してもよい。さらには、被検知物にねじ止めや挟み込みなどの機械的手段により取り付けられてもよい。被検知物が液体等であり、直接劣化検知体2を貼着あるいは取り付け出来ないものである場合などは、被検知物の近傍に設けた設置場所に設置してもよい。例えば、被検知物が液体である場合は、その液体を収めた容器の外壁に劣化検知体2が貼着されてもよい。
【0020】
図2に示すように、劣化検知体2は、台紙や台板のような基台17に積層されていてもよい。この場合は、劣化検知体2を基台17を介して被検知物に接着あるいはねじ止めや鋲止めなどにより固定することができる。基台17はフィルムあるいは布からなるものであってもよい。
【0021】
本発明の最も好ましい態様においては、図3に示すように、劣化検知体2aが、劣化検知体2aを被検知物に貼着するための接着層8を備える。接着層8は、変色層6を間にして光透過性フィルム4に積層されている。この場合、劣化検知体は接着層8を介して被検知物に貼着される。図4に示すように、変色層6と接着層8との間に膜状あるいはフィルム状の保護層33が介在してもよい。さらには、図5に示すように、変色層6と接着層8との間に基台シート17が設けられて、劣化検知体2aが基台シート17を介して被被検知物に貼着される構成であってもよい。劣化検知体2aは例えば接着層8が粘着層である場合、いわゆる粘着シール状に加工することにより、被被検知物に手軽に貼着して用いることができる。
【0022】
図3〜図5に示す態様においては、接着層8は、加熱により被検知物に接着するホットメルト樹脂からなる層であってもよい。被検知物に粘着する粘着層であってもよい。切手糊のように湿順により接着力が発現する糊の層であってもよい。
【0023】
図6に示すように、接着層8が粘着層8aである場合は、劣化検知体2aは、使用前の取り扱いを容易にするため、粘着層8aの表面に離型シート12が貼着されていることが好ましい。離型シート12は離型層と台紙とが積層されてなる。あるいは粘着層8aから離型可能なフィルムからなる。
【0024】
変色層6は所定の時間光線に曝されると色彩が変化する化合物を含み、紫外線等の光線が到達すると色彩が変化する。変色層6には酸化剤あるいは酸化防止剤が添付されていてもよい。この変色層6の紫外線等の光線による色彩の経時変化の速度は、化合物の種類や、添加された酸化剤あるいは酸化防止剤の種類及び添加割合等の組成の諸条件により影響される。逆に、これら諸条件のそれぞれを調整することにより、所定の期間の経過後に所定の色彩変化をなす変色層6を得ることができる。
【0025】
さらに、この変色層6の色彩の経時変化の速度は、光透過性フィルム4の厚さや透明度によっても影響される。逆に、変色層6の組成の諸条件が一定であっても、光透過性フィルム4の厚さや透明度を変えることにより、異なる色彩の経時変化の速度を有する劣化検知体2が得られる。劣化検知体2の工業生産においては、変色層6の組成の諸条件の変更は手間がかかり容易でない。また、組成によっては生産ロットごとの色彩変化の再現性を得ることが難しい場合もあるが、変色層6の組成を一定にして光透過性フィルム4の厚さや透明度を替えることにより、異なる色彩の経時変化の速度を有する劣化検知体2を得ることにより、異なるロットの安定した生産が可能となる。
【0026】
被検知物に貼着された劣化検知体の変色の程度を観察することにより、被検知物の劣化の程度を推定することができる。
【0027】
変色層6に含有される化合物としては、紫外線と酸素の導入により、分子構造が変化するもの、または、立体配置の異性化により色彩が明確に変化、または退色する範囲内で種々のものが用いられるが、所定の時間光線に曝されると色彩が変化する化合物であれば特に限定されない。このような化合物としては無機顔料あるいは有機系顔料が好ましい。有機系顔料としては、紫外線により顔料の構造に含まれる2重結合が壊れてラジカルが生じ、このラジカルと酸素が結合し結合が開裂し、分子構造が変化する顔料、例えば、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料等が例示される。例えば、大日精化工業株式会社製のプラスチック用有機顔料である、シアニンブルー4920(青)、シアニングリーン2G0(緑)、A110レッド(赤)、セイカファーストエロー2200(黄)が例示される。また、化合物としては立体配置の異性化により色彩が変化する化合物として、トリアリールメタンヒドロキサイド系化合物、トリアリールメタンシアニド系化合物、スピロピラン系化合物、インジゴ系化合物、スチルベン系化合物、アゾベンゼン系化合物(染料)が例示される。
【0028】
変色層6に含有される酸化防止剤としては、特に限定されないが、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が例示される。
【0029】
変色層6に含有される酸化剤としては、特に限定されないが、PbO2等の金属酸化物、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t −ブチルハイドロパーオキサイド、t −ブチルパーベンゾエート、過酢酸ソーダ、過酸化尿素等の有機過酸化物、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、パラキノンジオキシム等の有機酸化剤等が挙げられる。
【0030】
これら化合物や顔料は、ビヒクルに分散させてインクあるいは塗料となし、光透過性フィルム4の一の面5に塗布あるいは印刷することにより、変色層6を形成することができる。
【0031】
光透過性フィルム4としては光が透過するフィルムであれば特に限定されないが、強度や耐候性の点でポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0032】
本発明の最も好ましい態様の他の一例においては、図7に示すように劣化検知体2cが、基材である光透過性フィルム4と、光透過性フィルム4に積層された、劣化検知体2cを被検知物に貼着するための接着層8cとを備える。接着層8cには光により変色する変色剤が混入されていおり、接着層8cが変色層6cとなっている。接着層8cに混入される変色剤は図1に示す劣化検知体2において用いられる変色剤と同様のものである。なお、本明細書においては、各図にわたって記される同じ符号は同一又は同様の部材やものを示す。
【0033】
図7に示す態様は、接着層8cが変色層6cを兼ねているので、図6に示す態様の劣化検知体2aに比べて構造が単純で製造が容易である。
【0034】
図1〜図7に示す態様において接着層が粘着層である場合、粘着層に用いられる粘着剤(感圧接着剤)としては、従来の、離型紙を裏貼りした粘着ラベルで使用されてきた粘着剤等を使用できる。例えば、天然ゴム系や合成ゴム系、アクリル樹脂系、ポリビニルエーテル樹脂系、ウレタン樹脂系、シリコン樹脂系等の粘着剤を使用できる。本発明に用いられる粘着剤は、ここに例示された種類に限定されるものではない。耐候性のうえでアクリル樹脂系粘着剤が特に好ましい。アクリル樹脂系粘着剤としては、東洋インキ製造株式会社製のオリバインBPS5296が例示される。
【0035】
上記の粘着剤にはさらに必要に応じて、テルペン樹脂、スチレン樹脂などの粘着付与剤、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの充填剤、可塑剤などの軟化剤、架橋剤などを配合し得る。
【0036】
本発明の劣化検知体における変色層の光による変色のしやすさは劣化検知体が貼着される被検知物の光による劣化のしやすさに応じて設定される。即ち、被検知物が所定の環境のもとで使用開始時から所定の劣化状態に達するまでの期間を、同一の環境に変色層が曝されたときに、判別可能な変色が開始されるように、あるいは顕著な変色が開始されるように、変色層の光による変色のしやすさ(感度)が設定される。この変色のしやすさ(感度)の設定は変色層に含有させる上述の化合物、酸化剤あるいは酸化防止剤の配合量や配合比率を選定することにより行われる。加えて、基材である光透過性フィルムの光の透過度合を調整して選定することにより行われる。
【0037】
光透過性フィルムの光の透過度合を調整する方法としては、当該フィルムの厚さを変えて光の透過度合を調整してもよい。当該フィルムを染料や顔料により着色してもよい。着色する方法は、特定波長の光の透過度合を調整することができ、劣化検知体における変色層の光による変色のしやすさをより多様に調整できる。あるいは、当該フィルムの面を粗面にしたり、面に半透明の薄膜層を設けて光の透過性を調整してもよい。さらには、当該フィルムを構成する素材にフィラーを混ぜて光透過性を調整してもよい。当該フィルムを多孔質性のものにして光透過性を調整してもよい。そのほか公知の方法により当該フィルムの透明度を変えてもよい。
【0038】
被検知物の劣化とは、光の照射により、被検知物の性質や状態が照射前に比べて変化して、その変化が被検知物の使用目的に対して悪い影響を与えるような変化であることをいう。この被検知物の性質や状態としては、例えば強度(引っ張り、曲げ、圧縮、引き裂き挫屈など)、伸度、弾性率、脆さ、サイズ、伸長回復性、弾性回復性、接着力、応力−歪み曲線の形状の少なくとも一部分の形状などが挙げられる。
【0039】
被検知物の劣化の度合いは、これらの性質や状態を表す値や形状パラメータの値が照射前に比べてどれだけ変化したかにより表すことができる。変化の度合いは、被検知物の使用目的により、照射前後のその値の差や比率や比率の2乗や変化率などさまざまな計算値で表すことができる。
【0040】
このような感度設定の操作の一例を以下の実施例1に示す。
【実施例1】
【0041】
被検知物としてポリエチレン製のアルミ蒸着シート(恵和株式会社製:商品名サニーカーテン)を用いた。サニーカーテンは主として鶏舎や豚舎において日光遮蔽用に用いられるカーテンである。
【0042】
劣化検知体として図1に示す構成のものを製作した。基材である光透過性フィルム4として厚さ38μm、75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を用いた。変色層6はこのPETフィルムに塗料(大日本塗料株式会社製:万能ステインDXレッド)を塗布して形成した。この塗料の成分は、クロム錯塩とアミン塩の混合物を有機溶剤に溶かしたものである。塗布量は2g/m2であった。この塗料には酸化防止剤を添加した。酸化防止剤としては、光安定剤(旭電化工業株式会社製:LA−63)、紫外線吸収剤(シプロ化成株式会社製:SEESORB712及びSEESORB103)を用いた。
【0043】
LA−63の化学式は
【化1】
【0044】
SEESORB712の化学式は
【化2】
【0045】
SEESORB103の化学式は
【化3】
である。
【0046】
接着層8を形成する粘着剤としては、東洋インキ製造株式会社製のオリバインBPS5296を使用した。接着層8の目付けは25g/m2であった。
【0047】
離型シート12としてはシリコン系の離型剤からなる離型層13と紙製の台紙15とからなる通常の離型紙を用いた。
【0048】
表1に基材の厚さ、酸化防止剤の種類と添加量(塗料に対する重量%)を変えて試作した試料の内容を示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示す試料のそれぞれに対して、照射エネルギーを変えてキセノンウエザーメータSX−75により耐候促進試験を行なった。一方、被検知物(サニーシート)に対して照射エネルギーを変えてキセノンウエザーメータSX−75により耐候促進試験を行なった。照射条件(照射エネルギー)及び各照射条件に対応する暴露相当年数を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
耐候促進試験における、照射照度は550W/m2、ブラックパネル温度:63℃、相対湿度:50%RHであった。
【0053】
各試料に関する照射後の試料の色調の変化を図8、図9に示す。図8は基材の厚さ38μmの試料に関するもの、図9は基材の厚さ75μmの試料に関するものである。
【0054】
図10、図11に各試料に関する照射後の試料の色調の値と暴露相当年数との関係を示す。色調の値は色差計(ミノルタ株式会社製分光測色計:CM−35000)で測定し、ΔEab(ΔE)で表したものである。ΔEabはCIE1976(JISZ8729)で設定された値である。図10は図8に対応し、基材の厚さ38μmの試料に関するもの、図11は図9に対応し、基材の厚さ75μmの試料に関するものである。
【0055】
図12に照射後の被検知物のs−sカーブの中間勾配と、暴露相当年数との関係を示す。s−sカーブの中間勾配は、図13の被検知物のs−sカーブの代表例(サニーカーテンの非暴露品)で示すように、歪み率εがε1=0.075とε2=0.175との間のs−sカーブの勾配であり、歪み率ε2における応力(MPa)σ2と、歪み率ε1における応力σ1との差[σ2−σ1]を歪み率εの差[ε2−ε1]で除した値である。この値が低下するほど被検知物の劣化が進行していることを意味する。この被検知物の劣化はベースフィルムの劣化やサニーカーテンの積層構造の表面保護フィルムの剥離や蒸着アルミの亀裂剥離等によってもたらされる。
【0056】
図10、図11における劣化検知体の色差の値(ΔEab)の照射による変化と、図12における被検知物のs−sカーブの中間勾配の照射による変化を照合すると、試料75−2と試料38−2が被検知物の劣化に最も対応して色調が変化することがわかる。従って、本実験に用いたサニーシート用の長期に渉る使用の場合の劣化検知体としては、試料75−2あるいは試料35−2が最も適していることが判明した。この場合、実際の操作としては各経時期間ごとの劣化検知体の色見本と、使用されている劣化検知体の色調を目視で比較対比することにより、被検知物の劣化の進行程度を知ることができる。
【0057】
また、被検知物の用途によっては、劣化の初期段階で使用不可としなければならない場合もある。この場合は、劣化が所定の程度に達した時点で急激に劣化検知体の色が変化し、それ以上の使用に警告を表すような色変化が好ましい。このような目的に対しては、
試料38−0、38−3、38−5、38−6、75−0、75−3、75−4、75−4、75−5が適している。なかでも、75−0、75−3、38−3が色調の変化の時間勾配が急激で好ましい。
【0058】
さらに、基材の厚さにより図10、図11における色調変化カーブの形状、例えば色調変化カーブの勾配が立ち上がる時期および平行に達する時期が変わる。即ち、色調変化カーブにおいて、基材の厚さが厚くなるほどその勾配が立ち上がる時期および平行に達する時期が長くなる方向にシフトする。従って、基材の厚さを選択することにより、所望の劣化程度で色調が一目瞭然で変わり被検知物の所定の劣化が検知できる劣化検知体を提供することができる。
【実施例2】
【0059】
劣化検知体として図3に示す構成のものを製作した。基材である光透過性フィルム4と変色層6は実施例1と同様のものであり、実施例1と同様に光透過性フィルム4と変色層6とを積層した。接着層8はポリエステル系のホットメルト接着剤(溶融開始温度70℃)を用い、ホットメルトアプリケータにより変色層6の裏面に塗布し劣化検知体を得た。この劣化検知体を2cm角に切り分けて劣化検知体の葉片とした。この葉片は接着層8の層に熱風ドライヤで熱風を当てて昇温させタックを発現させてフィルム状の被検知物に容易に貼着できた。
【0060】
本発明の劣化検知体を製造する態様の一例を図14に示す。図14において、長尺長尺劣化検知体20が塗工機22により製造される。長尺長尺劣化検知体20は所定のサイズに切り分けて劣化検知体として使用される。塗工機22はロール状に巻かれた基材40を巻き出す基材巻き出し部24と、ロール状に巻かれた離型シート120を巻き出す離型シート巻き出し部26と、巻き出された離型シート120に粘着剤28を塗布して粘着層80を形成する塗布部32と、塗布された粘着剤28を加熱キュアする加熱部39と、粘着層80が形成された離型シート120と基材40とを合流させて重畳積層する合流部34と、合流させて得られた長尺劣化検知体20を巻き取る巻き取り部36とを備えて構成される。
【0061】
基材40の粘着層80と面するがわの面38には予め変色層が形成されている。この変色層は、光透過性フィルムの、片面に光により変色する化合物を含有するインクを印刷するかあるいは光により変色する光により変色する化合物を含有する塗料を塗することにより得られたものである。
【0062】
本発明の劣化検知体を製造する態様の他の一例においては、図14に示す塗工機22において、光透過性フィルムからなる基材40aを巻き出し部24から巻き出し、塗布部32において、光により変色する化合物を含有する粘着剤28aを離型シート120に塗布し、変色層を兼ねた粘着層80aを形成し、次いで粘着層80aが形成された離型シート120と基材40aとを合流部34で合流させて重畳積層し長尺劣化検知体20aを得る。
【0063】
本発明の劣化検知体は、劣化検知対象を限定しないため、例えばポリオレフィン材料を使用する保冷運搬容器、屋外設置機材、波板類のような屋外建築材料、農業用遮蔽シート、ゲレンデ融雪防止シート等に適用可能である。
【0064】
その他、本発明は、主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の劣化検知体の構成の態様を示す断面模式図である。
【図2】本発明の劣化検知体の構成の他の態様を示す断面模式図である。
【図3】本発明の劣化検知体の構成のさらに他の態様を示す断面模式図である。
【図4】本発明の劣化検知体の構成のまたさらに他の態様を示す断面模式図である。
【図5】本発明の劣化検知体の構成の別の態様を示す断面模式図である。
【図6】本発明の劣化検知体の構成のさらに別の態様を示す断面模式図である。
【図7】本発明の劣化検知体の構成の図6に示すとは異なる態様を示す断面模式図である。
【図8】本発明の劣化検知体の露光による色調の変化の状態を経時的に示す写真図である。
【図9】図8における試料とは異なる試料に関する、本発明の劣化検知体の露光による色調の変化の状態を経時的に示す写真図である。
【図10】図8に対応し、本発明の劣化検知体の露光による色調の変化の状態を示すグラフである。
【図11】図9に対応し、本発明の劣化検知体の露光による色調の変化の状態を示すグラフである。
【図12】被検知物の劣化を経時的に示すグラフである。
【図13】被検知物のs−sカーブの中間勾配を説明する図である。
【図14】本発明の劣化検知体を製造する塗工機の態様の一例を示す構造模式図である。
【符号の説明】
【0066】
2、20、20a:劣化検知体
4:光透過性フィルム
6:変色層
8、80、80a:粘着層
12:離型シート
22:塗工機
24:基材巻き出し部
26:離型シート巻き出し部
28、28a:粘着剤
32:塗布部
34:合流部
36:巻き取り部
39:加熱部
9、40、40a:基材
120:離型シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂等の被検知物の光による劣化度合いを検知する劣化検知材に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製品は、あらゆる分野において、種々の形状に成形され、有用に用いられている。しかし、高分子材料は、空気、水、環境汚染、微生物などの環境因子、また、熱、光、電気、放射線等のエネルギー因子により、劣化が避けられない。このような劣化は、具体的には、分子構造、化学構造、高次構造の変化をきたし、物理特性、化学特性、外観、力学特性、電気的特性等の特性変化をおこす。なかでも一般に、樹脂は、紫外線等の光線への暴露による劣化が避けられない。この劣化は、樹脂の機械的強度の低下を引き起こし、樹脂を用いたガス管や、水道管、さらには光ファイバーの被覆管等の樹脂製品の表面、内部の亀裂の原因となり、影響は多大である。
【0003】
従って、高分子材料の大幅な需要増大に対応し、高分子材料の種々の使用環境における寿命を予測することは重要である。
【0004】
しかし、現在において、このような高分子材料の正確な寿命予測は困難であり、信頼性をできる限り高めた複雑な劣化促進試験により,寿命予測を行っているのが、実情である。また、需要が高まっているポリエチレンの光や熱の暴露による劣化については多くの研究がなされているが、いずれも反応機構を中心としたものにすぎず、積極的にかつ手軽に寿命予測できる研究はなされていない。従って、樹脂の劣化を未然に手軽に検知し、劣化部分を交換することを可能とするために、劣化時期を正確に知る手段の開発が必要とされている。
【0005】
かかる目的に使用されるものとして環境条件の変化により変色するインク等の物質が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)がこれら文献にはこれら物質を被検知物に装着するための支持体を含むピースの製造の容易さや、装着する操作については詳述されておらず、この製造やこの操作の容易さが考慮されていない。また、環境条件の変化により変色するインク等の物質を備える環境判定インジケータが開示されている(例えば、特許文献3参照)が、この文献に開示されているインジケータは、環境条件の変化により変色するインク層が担持面に付着しているものであり、被検知物に装着する操作の容易さが考慮されていない。またこのインク層が露出した構成となっており引っ掻き傷の発生等の使用時の物理的損傷に対する対策が容易ではない。
【特許文献1】特開昭60−89352号公報
【特許文献2】特開平9−111161号公報
【特許文献3】特開2001−281002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、劣化時期を手軽な操作で予測し得る劣化検知材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨とするところは、被検知物の光による劣化度合いを検知するために該被検知物の近傍に設置して用いるものであって、光透過性フィルムを基材とし、該光透過性フィルムの一の面がわに光により変色する変色層が積層され、該光透過性フィルムの他の面が露光面とされた劣化検知体であることにある。
【0008】
前記光透過性フィルムは着色されてなり得る。
【0009】
前記劣化検知検知体は前記被検知物に接着するための接着剤層を備え得る。
【0010】
前記接着剤層は粘着剤層であり得る。
【0011】
前記変色層は前記接着剤層を兼ね得、該接着剤層を構成する接着剤に光により変色する変色剤が混入されてなり得る。
【0012】
前記劣化検知体は、自身が積層される基台を備え得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、劣化時期を手軽な操作で予測し得る劣化検知材が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の劣化検知材の実施の形態について、詳しく説明する。本発明の劣化検知材は、光による材料の劣化を検知し、適切な交換時期を知らせしめる目的で、被検知物の近傍に設置して用いる劣化検知体である。劣化検知体が設置される位置は被検知物の使用時に被検知物が暴露される光線と同程度の強さの光線に暴露される位置であることが好ましい。本発明の劣化検知体を適用しうる材料としては、樹脂成形体、薬液などが挙げられるが、光により劣化するものであれば特に限定されない。
【0015】
樹脂成形体の材料である被検知樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリブタジエン系樹脂等が挙げられる。また、これらのうちの異種の樹脂同士が混合あるいは複合された混合物や複合物、さらには、本発明の劣化検知体を適用しうるものとしては、これらの樹脂、混合物、複合物と金属やセラミックのような他素材との複合体が挙げられる。
【0016】
本発明の好ましい態様の一例を図1に示す。図1において、本発明の劣化検知体2は光透過性フィルム4を基材9として、光透過性フィルム4と、光透過性フィルム4の一の面5のがわに積層された、光により変色する変色層6とを備える。光透過性フィルム6の他の面7のがわが劣化検知体2の露光面とされる。即ち、劣化検知体2は他の面7に光が照射される状態で使用される。
【0017】
本発明の劣化検知体は一般的には片状に成形されて被検知物に貼着されて用いられるが、被検知物を長尺のシート状に成形し、使用時に目的に応じて小片に切り分けてもよい。
【0018】
劣化検知体2は被検知物に貼着されて用いられる。あるいは、その他の手段により被検知物の近傍に設置して用いられる。
【0019】
劣化検知体2は接着剤を用いて被検知物に接着してもよい。あるいは、台紙や台板のような基台に貼着してその台紙や台板を介して被検知物に取り付けて使用してもよい。さらには、被検知物にねじ止めや挟み込みなどの機械的手段により取り付けられてもよい。被検知物が液体等であり、直接劣化検知体2を貼着あるいは取り付け出来ないものである場合などは、被検知物の近傍に設けた設置場所に設置してもよい。例えば、被検知物が液体である場合は、その液体を収めた容器の外壁に劣化検知体2が貼着されてもよい。
【0020】
図2に示すように、劣化検知体2は、台紙や台板のような基台17に積層されていてもよい。この場合は、劣化検知体2を基台17を介して被検知物に接着あるいはねじ止めや鋲止めなどにより固定することができる。基台17はフィルムあるいは布からなるものであってもよい。
【0021】
本発明の最も好ましい態様においては、図3に示すように、劣化検知体2aが、劣化検知体2aを被検知物に貼着するための接着層8を備える。接着層8は、変色層6を間にして光透過性フィルム4に積層されている。この場合、劣化検知体は接着層8を介して被検知物に貼着される。図4に示すように、変色層6と接着層8との間に膜状あるいはフィルム状の保護層33が介在してもよい。さらには、図5に示すように、変色層6と接着層8との間に基台シート17が設けられて、劣化検知体2aが基台シート17を介して被被検知物に貼着される構成であってもよい。劣化検知体2aは例えば接着層8が粘着層である場合、いわゆる粘着シール状に加工することにより、被被検知物に手軽に貼着して用いることができる。
【0022】
図3〜図5に示す態様においては、接着層8は、加熱により被検知物に接着するホットメルト樹脂からなる層であってもよい。被検知物に粘着する粘着層であってもよい。切手糊のように湿順により接着力が発現する糊の層であってもよい。
【0023】
図6に示すように、接着層8が粘着層8aである場合は、劣化検知体2aは、使用前の取り扱いを容易にするため、粘着層8aの表面に離型シート12が貼着されていることが好ましい。離型シート12は離型層と台紙とが積層されてなる。あるいは粘着層8aから離型可能なフィルムからなる。
【0024】
変色層6は所定の時間光線に曝されると色彩が変化する化合物を含み、紫外線等の光線が到達すると色彩が変化する。変色層6には酸化剤あるいは酸化防止剤が添付されていてもよい。この変色層6の紫外線等の光線による色彩の経時変化の速度は、化合物の種類や、添加された酸化剤あるいは酸化防止剤の種類及び添加割合等の組成の諸条件により影響される。逆に、これら諸条件のそれぞれを調整することにより、所定の期間の経過後に所定の色彩変化をなす変色層6を得ることができる。
【0025】
さらに、この変色層6の色彩の経時変化の速度は、光透過性フィルム4の厚さや透明度によっても影響される。逆に、変色層6の組成の諸条件が一定であっても、光透過性フィルム4の厚さや透明度を変えることにより、異なる色彩の経時変化の速度を有する劣化検知体2が得られる。劣化検知体2の工業生産においては、変色層6の組成の諸条件の変更は手間がかかり容易でない。また、組成によっては生産ロットごとの色彩変化の再現性を得ることが難しい場合もあるが、変色層6の組成を一定にして光透過性フィルム4の厚さや透明度を替えることにより、異なる色彩の経時変化の速度を有する劣化検知体2を得ることにより、異なるロットの安定した生産が可能となる。
【0026】
被検知物に貼着された劣化検知体の変色の程度を観察することにより、被検知物の劣化の程度を推定することができる。
【0027】
変色層6に含有される化合物としては、紫外線と酸素の導入により、分子構造が変化するもの、または、立体配置の異性化により色彩が明確に変化、または退色する範囲内で種々のものが用いられるが、所定の時間光線に曝されると色彩が変化する化合物であれば特に限定されない。このような化合物としては無機顔料あるいは有機系顔料が好ましい。有機系顔料としては、紫外線により顔料の構造に含まれる2重結合が壊れてラジカルが生じ、このラジカルと酸素が結合し結合が開裂し、分子構造が変化する顔料、例えば、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料等が例示される。例えば、大日精化工業株式会社製のプラスチック用有機顔料である、シアニンブルー4920(青)、シアニングリーン2G0(緑)、A110レッド(赤)、セイカファーストエロー2200(黄)が例示される。また、化合物としては立体配置の異性化により色彩が変化する化合物として、トリアリールメタンヒドロキサイド系化合物、トリアリールメタンシアニド系化合物、スピロピラン系化合物、インジゴ系化合物、スチルベン系化合物、アゾベンゼン系化合物(染料)が例示される。
【0028】
変色層6に含有される酸化防止剤としては、特に限定されないが、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が例示される。
【0029】
変色層6に含有される酸化剤としては、特に限定されないが、PbO2等の金属酸化物、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t −ブチルハイドロパーオキサイド、t −ブチルパーベンゾエート、過酢酸ソーダ、過酸化尿素等の有機過酸化物、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、パラキノンジオキシム等の有機酸化剤等が挙げられる。
【0030】
これら化合物や顔料は、ビヒクルに分散させてインクあるいは塗料となし、光透過性フィルム4の一の面5に塗布あるいは印刷することにより、変色層6を形成することができる。
【0031】
光透過性フィルム4としては光が透過するフィルムであれば特に限定されないが、強度や耐候性の点でポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0032】
本発明の最も好ましい態様の他の一例においては、図7に示すように劣化検知体2cが、基材である光透過性フィルム4と、光透過性フィルム4に積層された、劣化検知体2cを被検知物に貼着するための接着層8cとを備える。接着層8cには光により変色する変色剤が混入されていおり、接着層8cが変色層6cとなっている。接着層8cに混入される変色剤は図1に示す劣化検知体2において用いられる変色剤と同様のものである。なお、本明細書においては、各図にわたって記される同じ符号は同一又は同様の部材やものを示す。
【0033】
図7に示す態様は、接着層8cが変色層6cを兼ねているので、図6に示す態様の劣化検知体2aに比べて構造が単純で製造が容易である。
【0034】
図1〜図7に示す態様において接着層が粘着層である場合、粘着層に用いられる粘着剤(感圧接着剤)としては、従来の、離型紙を裏貼りした粘着ラベルで使用されてきた粘着剤等を使用できる。例えば、天然ゴム系や合成ゴム系、アクリル樹脂系、ポリビニルエーテル樹脂系、ウレタン樹脂系、シリコン樹脂系等の粘着剤を使用できる。本発明に用いられる粘着剤は、ここに例示された種類に限定されるものではない。耐候性のうえでアクリル樹脂系粘着剤が特に好ましい。アクリル樹脂系粘着剤としては、東洋インキ製造株式会社製のオリバインBPS5296が例示される。
【0035】
上記の粘着剤にはさらに必要に応じて、テルペン樹脂、スチレン樹脂などの粘着付与剤、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの充填剤、可塑剤などの軟化剤、架橋剤などを配合し得る。
【0036】
本発明の劣化検知体における変色層の光による変色のしやすさは劣化検知体が貼着される被検知物の光による劣化のしやすさに応じて設定される。即ち、被検知物が所定の環境のもとで使用開始時から所定の劣化状態に達するまでの期間を、同一の環境に変色層が曝されたときに、判別可能な変色が開始されるように、あるいは顕著な変色が開始されるように、変色層の光による変色のしやすさ(感度)が設定される。この変色のしやすさ(感度)の設定は変色層に含有させる上述の化合物、酸化剤あるいは酸化防止剤の配合量や配合比率を選定することにより行われる。加えて、基材である光透過性フィルムの光の透過度合を調整して選定することにより行われる。
【0037】
光透過性フィルムの光の透過度合を調整する方法としては、当該フィルムの厚さを変えて光の透過度合を調整してもよい。当該フィルムを染料や顔料により着色してもよい。着色する方法は、特定波長の光の透過度合を調整することができ、劣化検知体における変色層の光による変色のしやすさをより多様に調整できる。あるいは、当該フィルムの面を粗面にしたり、面に半透明の薄膜層を設けて光の透過性を調整してもよい。さらには、当該フィルムを構成する素材にフィラーを混ぜて光透過性を調整してもよい。当該フィルムを多孔質性のものにして光透過性を調整してもよい。そのほか公知の方法により当該フィルムの透明度を変えてもよい。
【0038】
被検知物の劣化とは、光の照射により、被検知物の性質や状態が照射前に比べて変化して、その変化が被検知物の使用目的に対して悪い影響を与えるような変化であることをいう。この被検知物の性質や状態としては、例えば強度(引っ張り、曲げ、圧縮、引き裂き挫屈など)、伸度、弾性率、脆さ、サイズ、伸長回復性、弾性回復性、接着力、応力−歪み曲線の形状の少なくとも一部分の形状などが挙げられる。
【0039】
被検知物の劣化の度合いは、これらの性質や状態を表す値や形状パラメータの値が照射前に比べてどれだけ変化したかにより表すことができる。変化の度合いは、被検知物の使用目的により、照射前後のその値の差や比率や比率の2乗や変化率などさまざまな計算値で表すことができる。
【0040】
このような感度設定の操作の一例を以下の実施例1に示す。
【実施例1】
【0041】
被検知物としてポリエチレン製のアルミ蒸着シート(恵和株式会社製:商品名サニーカーテン)を用いた。サニーカーテンは主として鶏舎や豚舎において日光遮蔽用に用いられるカーテンである。
【0042】
劣化検知体として図1に示す構成のものを製作した。基材である光透過性フィルム4として厚さ38μm、75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を用いた。変色層6はこのPETフィルムに塗料(大日本塗料株式会社製:万能ステインDXレッド)を塗布して形成した。この塗料の成分は、クロム錯塩とアミン塩の混合物を有機溶剤に溶かしたものである。塗布量は2g/m2であった。この塗料には酸化防止剤を添加した。酸化防止剤としては、光安定剤(旭電化工業株式会社製:LA−63)、紫外線吸収剤(シプロ化成株式会社製:SEESORB712及びSEESORB103)を用いた。
【0043】
LA−63の化学式は
【化1】
【0044】
SEESORB712の化学式は
【化2】
【0045】
SEESORB103の化学式は
【化3】
である。
【0046】
接着層8を形成する粘着剤としては、東洋インキ製造株式会社製のオリバインBPS5296を使用した。接着層8の目付けは25g/m2であった。
【0047】
離型シート12としてはシリコン系の離型剤からなる離型層13と紙製の台紙15とからなる通常の離型紙を用いた。
【0048】
表1に基材の厚さ、酸化防止剤の種類と添加量(塗料に対する重量%)を変えて試作した試料の内容を示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示す試料のそれぞれに対して、照射エネルギーを変えてキセノンウエザーメータSX−75により耐候促進試験を行なった。一方、被検知物(サニーシート)に対して照射エネルギーを変えてキセノンウエザーメータSX−75により耐候促進試験を行なった。照射条件(照射エネルギー)及び各照射条件に対応する暴露相当年数を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
耐候促進試験における、照射照度は550W/m2、ブラックパネル温度:63℃、相対湿度:50%RHであった。
【0053】
各試料に関する照射後の試料の色調の変化を図8、図9に示す。図8は基材の厚さ38μmの試料に関するもの、図9は基材の厚さ75μmの試料に関するものである。
【0054】
図10、図11に各試料に関する照射後の試料の色調の値と暴露相当年数との関係を示す。色調の値は色差計(ミノルタ株式会社製分光測色計:CM−35000)で測定し、ΔEab(ΔE)で表したものである。ΔEabはCIE1976(JISZ8729)で設定された値である。図10は図8に対応し、基材の厚さ38μmの試料に関するもの、図11は図9に対応し、基材の厚さ75μmの試料に関するものである。
【0055】
図12に照射後の被検知物のs−sカーブの中間勾配と、暴露相当年数との関係を示す。s−sカーブの中間勾配は、図13の被検知物のs−sカーブの代表例(サニーカーテンの非暴露品)で示すように、歪み率εがε1=0.075とε2=0.175との間のs−sカーブの勾配であり、歪み率ε2における応力(MPa)σ2と、歪み率ε1における応力σ1との差[σ2−σ1]を歪み率εの差[ε2−ε1]で除した値である。この値が低下するほど被検知物の劣化が進行していることを意味する。この被検知物の劣化はベースフィルムの劣化やサニーカーテンの積層構造の表面保護フィルムの剥離や蒸着アルミの亀裂剥離等によってもたらされる。
【0056】
図10、図11における劣化検知体の色差の値(ΔEab)の照射による変化と、図12における被検知物のs−sカーブの中間勾配の照射による変化を照合すると、試料75−2と試料38−2が被検知物の劣化に最も対応して色調が変化することがわかる。従って、本実験に用いたサニーシート用の長期に渉る使用の場合の劣化検知体としては、試料75−2あるいは試料35−2が最も適していることが判明した。この場合、実際の操作としては各経時期間ごとの劣化検知体の色見本と、使用されている劣化検知体の色調を目視で比較対比することにより、被検知物の劣化の進行程度を知ることができる。
【0057】
また、被検知物の用途によっては、劣化の初期段階で使用不可としなければならない場合もある。この場合は、劣化が所定の程度に達した時点で急激に劣化検知体の色が変化し、それ以上の使用に警告を表すような色変化が好ましい。このような目的に対しては、
試料38−0、38−3、38−5、38−6、75−0、75−3、75−4、75−4、75−5が適している。なかでも、75−0、75−3、38−3が色調の変化の時間勾配が急激で好ましい。
【0058】
さらに、基材の厚さにより図10、図11における色調変化カーブの形状、例えば色調変化カーブの勾配が立ち上がる時期および平行に達する時期が変わる。即ち、色調変化カーブにおいて、基材の厚さが厚くなるほどその勾配が立ち上がる時期および平行に達する時期が長くなる方向にシフトする。従って、基材の厚さを選択することにより、所望の劣化程度で色調が一目瞭然で変わり被検知物の所定の劣化が検知できる劣化検知体を提供することができる。
【実施例2】
【0059】
劣化検知体として図3に示す構成のものを製作した。基材である光透過性フィルム4と変色層6は実施例1と同様のものであり、実施例1と同様に光透過性フィルム4と変色層6とを積層した。接着層8はポリエステル系のホットメルト接着剤(溶融開始温度70℃)を用い、ホットメルトアプリケータにより変色層6の裏面に塗布し劣化検知体を得た。この劣化検知体を2cm角に切り分けて劣化検知体の葉片とした。この葉片は接着層8の層に熱風ドライヤで熱風を当てて昇温させタックを発現させてフィルム状の被検知物に容易に貼着できた。
【0060】
本発明の劣化検知体を製造する態様の一例を図14に示す。図14において、長尺長尺劣化検知体20が塗工機22により製造される。長尺長尺劣化検知体20は所定のサイズに切り分けて劣化検知体として使用される。塗工機22はロール状に巻かれた基材40を巻き出す基材巻き出し部24と、ロール状に巻かれた離型シート120を巻き出す離型シート巻き出し部26と、巻き出された離型シート120に粘着剤28を塗布して粘着層80を形成する塗布部32と、塗布された粘着剤28を加熱キュアする加熱部39と、粘着層80が形成された離型シート120と基材40とを合流させて重畳積層する合流部34と、合流させて得られた長尺劣化検知体20を巻き取る巻き取り部36とを備えて構成される。
【0061】
基材40の粘着層80と面するがわの面38には予め変色層が形成されている。この変色層は、光透過性フィルムの、片面に光により変色する化合物を含有するインクを印刷するかあるいは光により変色する光により変色する化合物を含有する塗料を塗することにより得られたものである。
【0062】
本発明の劣化検知体を製造する態様の他の一例においては、図14に示す塗工機22において、光透過性フィルムからなる基材40aを巻き出し部24から巻き出し、塗布部32において、光により変色する化合物を含有する粘着剤28aを離型シート120に塗布し、変色層を兼ねた粘着層80aを形成し、次いで粘着層80aが形成された離型シート120と基材40aとを合流部34で合流させて重畳積層し長尺劣化検知体20aを得る。
【0063】
本発明の劣化検知体は、劣化検知対象を限定しないため、例えばポリオレフィン材料を使用する保冷運搬容器、屋外設置機材、波板類のような屋外建築材料、農業用遮蔽シート、ゲレンデ融雪防止シート等に適用可能である。
【0064】
その他、本発明は、主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の劣化検知体の構成の態様を示す断面模式図である。
【図2】本発明の劣化検知体の構成の他の態様を示す断面模式図である。
【図3】本発明の劣化検知体の構成のさらに他の態様を示す断面模式図である。
【図4】本発明の劣化検知体の構成のまたさらに他の態様を示す断面模式図である。
【図5】本発明の劣化検知体の構成の別の態様を示す断面模式図である。
【図6】本発明の劣化検知体の構成のさらに別の態様を示す断面模式図である。
【図7】本発明の劣化検知体の構成の図6に示すとは異なる態様を示す断面模式図である。
【図8】本発明の劣化検知体の露光による色調の変化の状態を経時的に示す写真図である。
【図9】図8における試料とは異なる試料に関する、本発明の劣化検知体の露光による色調の変化の状態を経時的に示す写真図である。
【図10】図8に対応し、本発明の劣化検知体の露光による色調の変化の状態を示すグラフである。
【図11】図9に対応し、本発明の劣化検知体の露光による色調の変化の状態を示すグラフである。
【図12】被検知物の劣化を経時的に示すグラフである。
【図13】被検知物のs−sカーブの中間勾配を説明する図である。
【図14】本発明の劣化検知体を製造する塗工機の態様の一例を示す構造模式図である。
【符号の説明】
【0066】
2、20、20a:劣化検知体
4:光透過性フィルム
6:変色層
8、80、80a:粘着層
12:離型シート
22:塗工機
24:基材巻き出し部
26:離型シート巻き出し部
28、28a:粘着剤
32:塗布部
34:合流部
36:巻き取り部
39:加熱部
9、40、40a:基材
120:離型シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検知物の光による劣化度合いを検知するために該被検知物の近傍に設置して用いるものであって、光透過性フィルムを基材とし、該光透過性フィルムの一の面がわに光により変色する変色層が積層され、該光透過性フィルムの他の面が露光面とされた劣化検知体。
【請求項2】
前記光透過性フィルムが着色された請求項1に記載の劣化検知体。
【請求項3】
前記被検知物に接着するための接着剤層を備える請求項1又は2に記載の劣化検知体。
【請求項4】
前記接着剤層が粘着剤層である請求項3に記載の劣化検知体。
【請求項5】
前記変色層が前記接着剤層を兼ね、該接着剤層を構成する接着剤に光により変色する変色剤が混入されてなる請求項3又は4に記載の劣化検知体。
【請求項6】
自身が積層される基台を備える請求項1乃至5のいずれかに記載の劣化検知体。
【請求項1】
被検知物の光による劣化度合いを検知するために該被検知物の近傍に設置して用いるものであって、光透過性フィルムを基材とし、該光透過性フィルムの一の面がわに光により変色する変色層が積層され、該光透過性フィルムの他の面が露光面とされた劣化検知体。
【請求項2】
前記光透過性フィルムが着色された請求項1に記載の劣化検知体。
【請求項3】
前記被検知物に接着するための接着剤層を備える請求項1又は2に記載の劣化検知体。
【請求項4】
前記接着剤層が粘着剤層である請求項3に記載の劣化検知体。
【請求項5】
前記変色層が前記接着剤層を兼ね、該接着剤層を構成する接着剤に光により変色する変色剤が混入されてなる請求項3又は4に記載の劣化検知体。
【請求項6】
自身が積層される基台を備える請求項1乃至5のいずれかに記載の劣化検知体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−225584(P2007−225584A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102792(P2006−102792)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000165088)恵和株式会社 (63)
【出願人】(391048049)滋賀県 (81)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000165088)恵和株式会社 (63)
【出願人】(391048049)滋賀県 (81)
【Fターム(参考)】
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