説明

効果検証モードを備えた交流電源の降圧受電システム

【解決課題】降圧受電システムの実際の運用状態において、このシステムの利用によりどの程度の省電力効果が得られているのが随時確認することができれば、ユーザーにとって有益である。
【解決手段】電力需要家に引き込まれた交流電源を変圧器に入力し、当該変圧器の出力電圧が前記交流電源の定格電圧より低く設定された目標電圧に近づくように当該変圧器の変圧比を自動切り替えし、当該変圧器の出力を負荷設備に供給する降圧受電システムにおいて、効果検証モードに設定された際、前記変圧器の出力電圧が前記目標電圧に近づくように前記変圧比を自動切り替えする降圧動作と、前記交流電源を降圧することなく前記負荷設備に供給する等圧動作とを交互に繰り返し実行させ、前記降圧動作中の消費電力量および前記等圧動作中の消費電力量をモニタ可能とした効果検証モードを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力需要家に引き込まれた三相電源の電圧を定格電圧より低い目標電圧範囲に自動調整して負荷設備に供給する降圧受電システムに関し、とくに、降圧受電による消費電力削減効果を検証する動作モードを備えたことを特徴とするものである。
【背景技術】
【0002】
たとえばホテルやスーパーマーケットや工場などにおいては、照明設備や空調設備あるいは動力設備などで相当量の電力を消費している。このような一般的な電力需要家において、最近、省エネルギー対策の必要性が強く認識され、さまざまな対策が考え出されて実施されつつある。
【0003】
一般の電力需要家において採用可能な省エネルギー対策のひとつに、商用電源を屋内設備に引き込む受電系統に変圧システムを設け、商用電源の定格電圧より数パーセント低い電圧になるように自動調整して負荷設備に給電する方式が知られている。日本国特許第2750275号公報・第3372178号公報・第4312826号公報にこの種の降圧受電システムの技術が開示されている。
【0004】
発電設備および送配電設備の安定能力の劣る地域では、電力需要家の受電ポイントにおける電源電圧が安定せず、定格電圧より少し高めの電圧で変動推移している場合が多い。このような状況下においては、降圧受電システムにより定格電圧より数パーセント低い電圧に自動調整した電源を負荷設備に供給することで、負荷設備による電力消費量が顕著に減少し、とくに大きな省エネルギー効果が得られる。
【発明の開示】
【0005】
===発明の概要===
この種の降圧受電システムによる消費電力削減効果は、電力需要家に供給される商用電源の電圧の正確性や安定度により変化するとともに、電力需要家における負荷設備の電力特性および稼働状況の変化により変化する。したがって、降圧受電システムの実際の運用状態において、このシステムの利用によりどの程度の省電力効果が得られているのが随時確認することができれば、ユーザーにとって有益であるといえる。このことに鑑み、この発明は、降圧受電による消費電力削減効果を検証する動作モードを備えた降圧受電システムを提供するものである。
【0006】
===発明の核心===
この発明の核心とするところは、電力需要家に引き込まれた交流電源を変圧器に入力し、当該変圧器の出力電圧が前記交流電源の定格電圧より低く設定された目標電圧に近づくように当該変圧器の変圧比を自動切り替えし、当該変圧器の出力を負荷設備に供給する降圧受電システムにおいて、効果検証モードに設定された際、前記変圧器の出力電圧が前記目標電圧に近づくように前記変圧比を自動切り替えする降圧動作と、前記交流電源を降圧することなく前記負荷設備に供給する等圧動作とを交互に繰り返し実行させ、前記降圧動作中の消費電力量および前記等圧動作中の消費電力量をモニタ可能としたことを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例システムの電気的構成を示す。
【図2】実施例システムの動作遷移を示す。
【実施例】
【0008】
===変圧装置1===
図1の実施例システムにおいて、変圧装置1は、変圧器2と、変圧切替用スイッチ群3と、ドライブ回路4と、スイッチ制御回路5を含んでいる。変圧器2は、三相電源の3つの幹線にそれぞれ接続される3つの入力端子Rin・Sin・Tinと、負荷設備にそれぞれ接続される3つの出力端子Rout・Sout・Tout を備え、各相の巻線構成を変圧切替用スイッチ群3により変更することにより、変圧比が、出力電圧を入力電圧より約2%低くする−2%状態と、出力電圧を入力電圧より約4%低くする−4%状態と、出力電圧を入力電圧より約6%低くする−6%状態と、出力電圧を入力電圧とほぼ等しくする等圧状態とに切り替えられる。
【0009】
変圧切替用スイッチ群3は、変圧器2の各相巻線回路の要所を開閉する複数のサイリスタスイッチからなり、各相の巻線比構成が当該スイッチ群3の開閉態様により変更されるようになっている。ドライブ回路4は、スイッチ制御回路5からの指示どおりに変圧切替用スイッチ群3を開閉駆動する。スイッチ制御回路5は、変圧切替用スイッチ群3の開閉状態によりつくり出されている現在の変圧比(−2%状態、−4%状態、−6%状態、等圧状態のいずれか)をメインコンピューター6に通知する。
【0010】
===計測回路7とメインコンピューター6===
計測回路7は、変圧装置1の出力端子Rout・Sout・Tout から負荷設備の供給される交流電源の各相の電圧・電流の瞬時値を検出し、検出信号をメインコンピューター6に入力する。メインコンピューター6は、計測回路7からの検出信号に基づいて、変圧装置1の出力各相の電圧実効値を電流実効値を計算するとともに、負荷設備で消費されている有効電力を計算し、かつ、所定期間の消費電力量を積算する。
【0011】
===メインコンピューター6による変圧比の制御===
メインコンピューター6のメモリには目標電圧が設定されている。メインコンピューター6は、変圧装置1の出力各相の電圧実効値がいずれも目標電圧より高い場合、変圧比を現状より1段階下げるようにスイッチ制御回路5に指示を発する。スイッチ制御回路5は、変圧比を下げるように指示を受けた際、現状が等圧状態であれば−2%状態にし、現状が−2%状態であれば−4%状態にし、現状が−4%状態であれば−6%状態にする。
【0012】
メインコンピューター6は、変圧装置1の出力各相の電圧実効値がどれか1相でも目標電圧より低い場合、変圧比を現状より1段階上げるようにスイッチ制御回路5に指示を発する。スイッチ制御回路5は、変圧比を上げるように指示を受けた際、現状が−6%状態であれば−4%状態にし、現状が−4%状態であれば−2%状態にし、現状が−2%状態であれば等圧状態にする。
【0013】
===利用者インタフェース8===
メインコンピューター6には表示装置と操作パネルを含んだ利用者インタフェース8が付属している。利用者インタフェース8には、目標電圧と、現状の変圧比が表示されている。目標電圧は、ユーザーが利用者インタフェース8より設定し変更することができる。ユーザーは、利用者インタフェース8により当該システムの運転モードを、通常運転モードと、等圧固定モードと、効果検証モードのいずれかに設定し変更することができる。
【0014】
通常運転モードは、すでに詳しく説明したように、負荷設備に供給される交流出力電源の電圧が交流入力電源の定格電圧より低く設定された目標電圧に近づくように変圧装置1の変圧比を自動切り替えするモードである。等圧固定モードとは、交流入力電源を電圧調整を行わずに負荷設備に供給し続けるモードである。効果検証モードは、この発明の核心となるモードであり、以下のように機能する。
【0015】
===監視用コンピューター10===
メインコンピューター6は、通信インタフェース9を介してインターネットに接続可能であり、インターネットに接続した外部の監視用コンピューター10と通信可能となっている。監視用コンピューター10は、インターネットを通じてメインコンピューター6をみずからの制御下におき、メインコンピューター6を監視用コンピューター10から遠隔操作することができる。すなわち、この実施例に係る降圧受電システムは、監視用コンピューター10を含んだ遠方監視制御システムとして構成されている。
【0016】
===効果検証モード===
当該システムが通常運転モードで運転されている状態において、ユーザーが利用者インタフェース8により効果検証モードに変更すると、メインコンピューター6は、プログラムに従って効果検証モードを実行し、その後通常運転モードに復帰する。このモード遷移を図2に示している。
【0017】
図2の実施例では、効果検証モードになると、20分間の等圧動作と、20分間の降圧動作を3回ずつ繰り返す。効果検証モードの実行時間は合計2時間である。等圧動作は、等圧固定モードのように交流入力電源を電圧調整を行わずに負荷設備に供給する動作である。降圧動作とは、通常運転モードのように負荷設備に供給される交流出力電源の電圧が交流入力電源の定格電圧より低く設定された目標電圧に近づくように変圧装置1の変圧比を自動切り替えする動作である。
【0018】
効果検証モードでは、メインコンピューター6は、3回の等圧動作の合計1時間の実行期間における消費電力量を積算するとともに、3回の降圧動作の合計1時間の実行期間における消費電力量を積算する。そして、積算した等圧動作時の消費電力量および降圧動作時の消費電力量を利用者インタフェース8により表示出力する。2つの消費電力量の割合を計算して出力することもできる。
【0019】
効果検証モードにおいて積算した等圧動作時の消費電力量および降圧動作時の消費電力量を対比することで、当該降圧受電システムの利用(通常運転モード)による消費電力削減効果が一目瞭然となる。
【0020】
===効果検証モードの実行方式===
ここまでの説明ではユーザーの操作により効果検証モードの実行指令を与えるとした。他の方式としては、たとえば、1日に1回または数回とか、1週間に1回または数回のように、効果検証モードの実行スケジュールをプログラムしておき、スケジュールに従って効果検証モードを自動的に実行するようにする。メインコンピューター6は、効果検証モードで計測した上記2種類の消費電力量を実施日時に対応付けしてハードディスクやソリッドステートドライブ等に記録しておき、利用者インタフェース8または監視用コンピューター10により記録データを随時にモニタできるようにしている。
【0021】
効果検証モードは、負荷設備の稼働状態が顕著に変化した場合に実施することも望ましい。たとえば、負荷設備に含まれる消費電力の大きなモーターの運転を開始した場合、あるいは、負荷設備による消費電力が急増・急減した場合に、これらの事象をメインコンピューター6において検出して効果検証モードを自動実行する構成を採用ることができる。そして計測した上記2種の消費電力量を、効果検証モードの実行契機となった上記のような事象の識別コードや日時データと対応づけて記録してモニタする構成とすれば、ユーザーにとって有益な情報が得られる。
【0022】
もちろん、計測回路7の検出信号に基づいて効果検証モードにおける等圧動作時の消費電力量および降圧動作時の消費電力量を計算する処理は、監視用コンピューター10を含んだ当該システムのいずれの処理部で行ってもよい。
【0023】
===発明の整理===
以上の説明から明らかなように、この発明のさまざまな実施の形態を整理すると、以下のようにまとめることができる。
【0024】
(A)電力需要家に引き込まれた交流電源を変圧器に入力し、当該変圧器の出力電圧が前記交流電源の定格電圧より低く設定された目標電圧に近づくように当該変圧器の変圧比を自動切り替えし、当該変圧器の出力を負荷設備に供給する降圧受電システムにおいて、
効果検証モードに設定された際、前記変圧器の出力電圧が前記目標電圧に近づくように前記変圧比を自動切り替えする降圧動作と、前記交流電源を降圧することなく前記負荷設備に供給する等圧動作とを交互に繰り返し実行させ、前記降圧動作中の消費電力量および前記等圧動作中の消費電力量をモニタ可能とした効果検証モードを備えた交流電源の降圧受電システム。
【0025】
(B)効果検証モードでは、所定時間の前記降圧動作と、所定時間の前記等圧動作とを所定回数だけ繰り返す(A)項に記載の降圧受電システム。
(C)プログラムされたスケジュールに従って効果検証モードを間欠的に実行する(A)項または(B)項に記載の降圧受電システム。
(D)前記負荷設備の稼働状態が変更された際に効果検証モードを実行する(A)項または(B)項に記載の降圧受電システム。
【0026】
(E)前記変圧器の近くに設置されてこれを制御する制御装置と、当該制御装置とインターネットを介して通信可能な監視用コンピューターとを備えた(A)〜(D)項のいずれかに記載の降圧受電システム。
(F)前記制御装置は、効果検証モードにおいて、前記降圧動作中および前記等圧動作中に前記負荷設備に供給される電流・電圧の実効値をサンプリングして記録し、前記監視用コンピューターは、前記制御装置にて記録された電流・電圧の実効値データを取得し、前記降圧動作中の消費電力量および前記等圧動作中の消費電力量を計算してモニタ出力する(E)項に記載の降圧受電システム。
(G)前記制御装置は、効果検証モードにおいて、前記降圧動作中および前記等圧動作中に前記負荷設備に供給される電流・電圧に基づいて前記降圧動作中の消費電力量および前記等圧動作中の消費電力量を計測して記録し、前記監視用コンピューターは、前記制御装置にて記録された前記降圧動作中の消費電力量および前記等圧動作中の消費電力量を取得してモニタ出力する(E)項に記載の降圧受電システム。
【0027】
(H)前記制御装置は、前記監視用コンピューターからの指令に基づいて効果検証モードを実行する(E)〜(G)項のいずれかに記載の降圧受電システム。
(I)前記制御装置は、前記監視用コンピューターからの指令に基づいて効果検証モードの動作仕様を設定する(E)〜(H)項のいずれかに記載の降圧受電システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力需要家に引き込まれた交流電源を変圧器に入力し、当該変圧器の出力電圧が前記交流電源の定格電圧より低く設定された目標電圧に近づくように当該変圧器の変圧比を自動切り替えし、当該変圧器の出力を負荷設備に供給する降圧受電システムにおいて、
効果検証モードに設定された際、前記変圧器の出力電圧が前記目標電圧に近づくように前記変圧比を自動切り替えする降圧動作と、前記交流電源を降圧することなく前記負荷設備に供給する等圧動作とを交互に繰り返し実行させ、前記降圧動作中の消費電力量および前記等圧動作中の消費電力量をモニタ可能とした
効果検証モードを備えた交流電源の降圧受電システム。
【請求項2】
効果検証モードでは、所定時間の前記降圧動作と、所定時間の前記等圧動作とを所定回数だけ繰り返す
請求項1に記載の降圧受電システム。
【請求項3】
プログラムされたスケジュールに従って効果検証モードを間欠的に実行する
請求項1または2に記載の降圧受電システム。
【請求項4】
前記負荷設備の稼働状態が変更された際に効果検証モードを実行する
請求項1または2に記載の降圧受電システム。
【請求項5】
前記変圧器の近くに設置されてこれを制御する制御装置と、当該制御装置とインターネットを介して通信可能な監視用コンピューターとを備えた
請求項1〜4のいずれかに記載の降圧受電システム。
【請求項6】
前記制御装置は、効果検証モードにおいて、前記降圧動作中および前記等圧動作中に前記負荷設備に供給される電流・電圧の実効値をサンプリングして記録し、
前記監視用コンピューターは、前記制御装置にて記録された電流・電圧の実効値データを取得し、前記降圧動作中の消費電力量および前記等圧動作中の消費電力量を計算してモニタ出力する
請求項5に記載の降圧受電システム。
【請求項7】
前記制御装置は、効果検証モードにおいて、前記降圧動作中および前記等圧動作中に前記負荷設備に供給される電流・電圧に基づいて前記降圧動作中の消費電力量および前記等圧動作中の消費電力量を計測して記録し、
前記監視用コンピューターは、前記制御装置にて記録された前記降圧動作中の消費電力量および前記等圧動作中の消費電力量を取得してモニタ出力する
請求項5に記載の降圧受電システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記監視用コンピューターからの指令に基づいて効果検証モードを実行する
請求項5〜7のいずれかに記載の降圧受電システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記監視用コンピューターからの指令に基づいて効果検証モードの動作仕様を設定する
請求項5〜8のいずれかに記載の降圧受電システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−200041(P2012−200041A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60747(P2011−60747)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(511145915)パワーパーフェクタ・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】