動き適応型フィールド補間装置及び動き適応型フィールド補間方法
【課題】本来動画として検出すべき領域を静止画として誤検出することをメモリ容量や演算量を増加させることなく抑制する。
【解決手段】動き適応型フィールド補間装置は、画像の動き量を表す係数によりフィールド内補間画素とフィールド間補間画素を適応的に重み平均して補間する装置であって、フィールド間差分を算出するフィールド間差分算出部と、前記フィールド間差分が第1の閾値以上であるフィールド数を示す動きカウントを算出しては更新する動きカウント更新部と、前記動きカウントに基づいて静止画であるか動画であるかを判定する判定部と、前記判定結果に基づいて画像の動き量を表す係数を算出する係数算出部と、前記係数に基づいてフィールド補間する補間部とを備える。
【解決手段】動き適応型フィールド補間装置は、画像の動き量を表す係数によりフィールド内補間画素とフィールド間補間画素を適応的に重み平均して補間する装置であって、フィールド間差分を算出するフィールド間差分算出部と、前記フィールド間差分が第1の閾値以上であるフィールド数を示す動きカウントを算出しては更新する動きカウント更新部と、前記動きカウントに基づいて静止画であるか動画であるかを判定する判定部と、前記判定結果に基づいて画像の動き量を表す係数を算出する係数算出部と、前記係数に基づいてフィールド補間する補間部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターレース画像をプログレッシブ画像に変換する動き適応型フィールド補間装置及び動き適応型フィールド補間方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターレース画像の各フィールドにラインを補間することでインターレース画像をプログレッシブ画像に変換するフィールド補間が知られている。フィールド補間には、補間しようとするフィールドに隣接するフィールド内に存在する画素を用いて補間するフィールド間補間と、補間しようとするフィールドと同一フィールド内に存在する画素を用いて補間するフィールド内補間とがある。フィールド内補間は動画に適し、フィールド間補間は静止画に適している。そこで、良質なプログレッシブ画像を得るため、画像の動き量を表す係数によりフィールド内補間画素とフィールド間補間画素を適応的に重み平均して補間する動き適応型フィールド補間が知られている。例えば、特許文献1には、画像の動き量を表す動き係数k(0≦k≦1)によりフィールド間補間画素とフィールド内補間画素を重み平均して補間することが開示されている。以下、特許文献1に開示されている従来例について、図面を用いて説明する。
【0003】
図9は、前記特許文献1に開示されている動き適応型フィールド補間回路の構成図である。図9において、201,203,204はフィールドメモリ、202,205はラインメモリ、206,207,212,219は加算回路、208,209は乗算回路、210,211は係数乗算回路、213,214,215は減算回路、216,217,218は絶対値回路、220は係数算出回路を示す。
【0004】
図10は、相続く4フィールドのラインの配置を時間軸tとフィールドの垂直軸Vとにより表したものである。図10において、縦軸はラインの垂直位置を、横軸はフィールド単位の時刻を表す。i(i=1,2,…)はフィールド数を示し、白丸および黒丸はそれぞれ1本のラインを示す。更に黒丸は補間しようとするラインを示す。図9のA1,A2,B1,C1,C2,D1,Xは、図10の同じ符号で示すラインを表している。
【0005】
図11は、図9に示す構成図を基にした従来の処理手順を示すフローチャートである。図11の処理が補間画素1画素毎に繰り返される。一つの補間画素に対する処理が開始されると、まず、フレーム間差分SAD1とSAD2を算出する(図11、ステップS10)。図10において補間処理を実施する注目フィールドをi−1とすると、SAD1は、注目フィールド(i−1)と注目フィールドの2フィールド前(i−3)との差分絶対値である。SAD2は、注目フィールドの直前フィールド(i−2)と、注目フィールドの直後フィールド(i)との差分絶対値である。図10でいうと、SAD1はラインA1の画素とラインC1の画素との差分絶対値およびラインA2の画素とラインC2の画素との差分絶対値であり、SAD2はラインB1の画素とラインD1の画素との差分絶対値である。
【0006】
次いで、フレーム間差分SAD1とSAD2の和SADsumを算出する(図11、ステップS20)。さらに、0≦k≦1(但し、1以上は1)になるように、動き係数k=Gain×SADsumを算出する(図11、ステップS30)。最後に、Pout=k×Pmove+(1−k)×Pstillによりフィールド補間する(図11、ステップS40)。PmoveはラインB1の画素およびラインD1の画素から補間された画素値、PstillはラインC1の画素およびラインC2の画素から補間された画素値である。このようにして補間に使われる全てのラインのフレーム間差分に基づき適応的にフィールド補間がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平7−12214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の動き適応型フィールド補間によると、本来動画として検出すべき領域を静止画として誤検出してしまうことがあった。以下、このように静止画として誤検出するに至る経緯を図面に従って説明する。
【0009】
ここでは、図12に示す画像パターンにおいて、太枠で示した画素(注目画素)を補間する場合を例示する。図中のi(i=1,2,…)はフィールド数を示す。画素値1.0を背景にして、画素値0と0.5の縦縞パターンが画面左から右の方向に1フィールド当たり2画素移動している。図12では、i−8フィールドからi+1フィールドまでを示しているが、太枠の注目画素は、i−8フィールド以前も画素値1.0の背景とする。トップフィールド内のラインT1,T2,T3,…は画像が存在するラインを示し、その間は画像が存在せずに間引かれたラインを示す。同様に、ボトムフィールド内のラインB1,B2,B3,…は画像が存在するラインを示し、その間は画像が存在せずに間引かれたラインを示す。
【0010】
図12の画像パターンについて図11のフローチャートに従うと図13のようになる。図13において、SAD1は太枠で示した注目画素の直上に位置する画素同士(ラインA1の画素とラインC1の画素)の差分絶対値、SAD2は太枠で示した注目画素と同じ場所に位置する画素同士(ラインB1の画素とラインD1の画素)の差分絶対値とする。まず、i−6フィールド目について説明すると、SAD1は、i−6フィールドとi−8フィールドとの差分絶対値であるため、SAD1=ABS{(i−6)−(i−8)}=0となる(図11、ステップS10)。また、SAD2は、i−5フィールドとi−7フィールドとの差分絶対値であるため、SAD2=ABS{(i−5)−(i−7)}=0となる(図11、ステップS10)。これにより、フレーム間差分SAD1とSAD2の和SADsumはSAD1+SAD2=0となり(図11、ステップS20)、図9の係数算出回路220を乗算器、Gain=8と仮定すると、動き係数kはGain×SADsum=8×0=0となる(図11、ステップS30)。その結果、Pout=k×Pmove+(1−k)×Pstill=0×Pmove+(1−0)×Pstill=Pstillであるため静止画処理を行う(図11、ステップS40)。この場合、注目画素は画素値1.0の背景となるため、静止画処理は望ましい処理と言える。以降のi−5フィールド目からi−3フィールド目についても同様の手順で望ましい処理を行う。ここで、i−2フィールド目については静止画処理を行うことになるが、この場合は動画処理を行うのが望ましい。静止画処理を行うと注目画素は画素値0となるが、縦縞パターンを表すためには画素値0.5とすべきである。また、i−1フィールド目についても静止画処理を行うことになるが、この場合も動画処理を行うのが望ましい。静止画処理を行うと注目画素は画素値0.5となるが、縦縞パターンを表すためには画素値0とすべきである。最後に、iフィールド目については望ましい処理を行う。
【0011】
以上のように、従来の動き適応型フィールド補間によると、i−2フィールド目及びi−1フィールド目において本来動画として検出すべき領域を静止画として誤検出してしまう。その結果、図14に示すように、i−2フィールド目において画素値0.5とすべきところが画素値0となってしまい、また、i−1フィールド目において画素値0とすべきところが画素値0.5とってしまい、目障りな画質劣化となる問題があった。これを避けるべく、参照するフィールド数や演算量を増やし検出感度を上げる改善がなされるが、このような方法ではメモリ容量や演算量の増加を伴いコストアップになるという問題があった。つまり、図12のような画像パターンでは、i−1フィールド目の画像を正しく動画と検出するにはi−5フィールド目を参照する必要があり、5フィールド分の画像を記憶するためのメモリが必要になる。縦縞の繰り返しの数が多くなれば、より過去のフィールドを参照する必要があり、より多くのフィールド分の画像を記憶するためのメモリが必要になる。
【0012】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、本来動画として検出すべき領域を静止画として誤検出することをメモリ容量や演算量を増加させることなく抑制することのできる動き適応型フィールド補間装置及び動き適応型フィールド補間方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明の実施形態に係る動き適応型フィールド補間装置は、画像の動き量を表す係数によりフィールド内補間画素とフィールド間補間画素を適応的に重み平均して補間する動き適応型フィールド補間装置であって、フィールド間差分を算出するフィールド間差分算出部と、前記フィールド間差分が第1の閾値以上であるフィールド数を示す動きカウントを算出しては更新する動きカウント更新部と、前記動きカウントに基づいて静止画であるか動画であるかを判定する判定部と、前記判定結果に基づいて画像の動き量を表す係数を算出する係数算出部と、前記係数に基づいてフィールド補間する補間部とを備えることを特徴とする。
【0014】
前記動き適応型フィールド補間装置において、前記判定部は、前記動きカウントが第2の閾値以上である場合は静止画であると判定し、前記係数算出部は、前記静止画であると判定された場合、前記フィールド間差分を0としてもよい。
【0015】
前記動き適応型フィールド補間装置において、前記判定部は、前記動きカウントが第2の閾値以上である場合は静止画であると判定し、前記動きカウント更新部は、前記静止画であると判定された場合、新しい動きカウントを1フィールド以前の動きカウントにしてもよい。
【0016】
前記動き適応型フィールド補間装置において、前記動きカウント更新部は、前記フィールド間差分が第1の閾値より小さい場合、新しい動きカウントを0にリセットしてもよい。
【0017】
前記課題を解決するために、本発明の実施形態に係る動き適応型フィールド補間方法は、画像の動き量を表す係数によりフィールド内補間画素とフィールド間補間画素を適応的に重み平均して補間する動き適応型フィールド補間方法であって、フィールド間差分を算出するステップと、前記フィールド間差分が第1の閾値以上であるフィールド数を示す動きカウントを算出しては更新するステップと、前記動きカウントに基づいて静止画であるか動画であるかを判定するステップと、前記判定結果に基づいて画像の動き量を表す係数を算出するステップと、前記係数に基づいてフィールド補間するステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、フィールド間差分が第1の閾値以上であるフィールド数を示す動きカウントを算出しては更新するようにしているので、本来動画として検出すべき領域を静止画として誤検出することをメモリ容量や演算量を増加させることなく抑制することのできる動き適応型フィールド補間装置及び動き適応型フィールド補間方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態における動き適応型フィールド補間回路の構成図である。
【図2】本発明の実施形態におけるフィールド間差分を説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態における処理手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態におけるフィールド補間対象となる画像の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態における処理結果を示す図である。
【図6】本発明の実施形態における処理結果を示す図である。
【図7】本発明の実施形態における処理結果を示す図である。
【図8】従来技術と本発明の実施形態の検出結果を示す図である。
【図9】特許文献1に開示されている動き適応型フィールド補間回路の構成図である。
【図10】フレーム間差分SAD1とSAD2を説明するための図である。
【図11】従来の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】フィールド補間対象となる画像の一例を示す図である。
【図13】従来の処理結果を示す図である。
【図14】従来技術と本発明の実施形態のフィールド補間後の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態における動き適応型フィールド補間回路10の構成図である。この動き適応型フィールド補間回路10は、画像の動き量を表す係数によりフィールド内補間画素とフィールド間補間画素を適応的に重み平均して補間する動き適応型フィールド補間装置の一例である。図1において、201,203はフィールドメモリ、202はラインメモリ、206,207,212,219,221は加算回路、208,209は乗算回路、210,211は係数乗算回路、213,214,215は減算回路、216,217,218は絶対値回路、220は係数算出回路、222は選択回路、223はメモリ、224,225は2値化回路、226はカウンター回路を示す。
【0022】
図2は、図10と同様、相続く4フィールドのラインの配置を時間軸tとフィールドの垂直軸Vとにより表したものである。図1のB1,C1,C2,D1,Xは、図2の同じ符号で示すラインを表している。図2中の白矢印はフレーム間差分に相当し、斜線を付した矢印はフィールド間差分に相当する。フィールド間差分については後で詳しく説明する。
【0023】
図3は、本発明の実施形態における動き適応型フィールド補間回路10の処理手順を示すフローチャートである。従来(図11)に比べて、図11ステップS10が図3ステップS11に変更され、図11ステップS20が削除されている。更に図3の破線枠で示すステップS12〜S26が追加されている。ステップS30,S40は従来と同じとする。以下、図12の太枠で示した画素(注目画素)を補間する場合を例示して従来と異なる点を中心に説明する。
【0024】
まず、フレーム間差分SAD2を算出する(図3、ステップS11)。フレーム間差分SAD2とは、注目フィールドの1フィールド前の画像と注目フィールドの1フィールド後の画像の差分絶対値である。ここでは、注目画素と同じ場所に位置する画素同士(ラインB1の画素とラインD1の画素)の差分絶対値(B1−D1)とする。
【0025】
次いで、フィールド間差分SAD3を算出する(図3、ステップS12)。フィールド間差分SAD3とは、注目フィールドと注目フィールドの1フィールド前または1フィールド後の画像の差分絶対値である。ここでは、注目画素の1ライン上にあるラインC1の画素と、注目フィールドの1フィールド前にある注目画素と同じ場所に位置するラインB1の画素の差分絶対値(B1−C1)と、注目画素の1ライン下にあるラインC2の画素と、注目フィールドの1フィールド前にある注目画素と同じ場所に位置するラインB1の画素の差分絶対値(B1−C2)の和とする。このように和を算出する方法に代えて、差分絶対値(B1−C1)と差分絶対値(B1−C2)の最大値を算出するようにしてもよい。
【0026】
次いで、フィールド間差分SAD3を2値化し、そのフィールド間差分SAD3と第1の閾値SAD_THとを比較する(図3、ステップS13)。フィールド間差分SAD3が第1の閾値SAD_TH以上である場合は、その判定結果を示すフラグMVFLGを1にする。一方、フィールド間差分SAD3が第1の閾値SAD_THよりも小さい場合は、MVFLGを0にする。ここでは、第1の閾値SAD_THは仮に0.1とする。
【0027】
次いで、1フィールド前の動きカウントCOUNT(i−1)をメモリ223から読み出し(図3、ステップS21)、その動きカウントCOUNT(i−1)に基づいて静止画であるか動画であるかを仮判定する(図3、ステップS22)。すなわち、動きカウントCOUNT(i−1)は、フィールド間差分SAD3が第1の閾値SAD_TH以上であると判定したフィールド数を示している。動きカウントCOUNT(i−1)が第2の閾値MAX_TH以上である場合は静止画であると仮判定し、その判定結果を示すフラグMAXFLGを1にする。一方、動きカウントCOUNT(i−1)が第2の閾値MAX_THより小さい場合は動画であると仮判定し、MAXFLGを0にする。ここでは、第2の閾値MAX_THは仮に4とする。
【0028】
次いで、フィールド間差分SAD3’を算出する(図3、ステップS23)。MAXFLGが1である場合は静止画であると仮判定するので、フィールド間差分SAD3’を0にする。一方、MAXFLGが0である場合は動画であると仮判定するので、フィールド間差分SAD3’の値をフィールド間差分SAD3の値にする。これにより、図4に示すように、グレーの横線と黒の横線とからなる横縞の静止物体が現れた場合でも不都合が生じない。すなわち、このような横縞の静止物体について単にフィールド間差分をとるだけでは、横線の明るさの違いからフィールド間差分が0とならないため、動画処理され続け、フリッカー現象を伴う目障りな画質になる。そこで、MAXFLGが1である場合は、フィールド間差分SAD3’を0にして、目障りな画質になることを回避するようにしている(ステップS23)。
【0029】
次いで、フレーム間差分SAD2とフィールド間差分SAD3’の和を算出する(図3、ステップS24)。このように和を算出する方法に代えて、フレーム間差分SAD2とフィールド間差分SAD3’の最大値を算出するようにしてもよい。
【0030】
次いで、動き係数k=Gain×ΣSADを求め(図3、ステップS30)、Pout=k×Pmove+(1−k)×Pstillによりフィールド補間する(図3、ステップS40)。ここでは、係数算出回路220を乗算器とし、Gain=8と仮定する。ただし、0≦k≦1とし、kが1以上の場合は1とする。
【0031】
また、静止画/動画を仮判定した後(図3、ステップS22)、新しい動きカウントCOUNT(i)を算出する(図3、ステップS25)。すなわち、MVFLGが1であり且つMAXFLGが1である場合、MAXFLGが1になれば静止画であると仮判定するので、これ以上カウンターをインクリメントしなくても静止画/動画の仮判定結果は変わらない。よって、カウンターをオーバーフローさせないために、カウンター値を現在の値で保持する。すなわち、新しい動きカウントCOUNT(i)を1フィールド前の動きカウントCOUNT(i−1)にする。また、MVFLGが1であり且つMAXFLGが0である場合、MAXFLGが0なら動画であると仮判定するので、カウンター値を1インクリメントとする。すなわち、新しい動きカウントCOUNT(i)を“1フィールド前の動きカウントCOUNT(i−1)+1”にする。更に、MVFLGが0である場合、カウンター値に関係なく静止画であると仮判定し、カウンター値すなわち新しい動きカウントCOUNT(i)を0にリセットする。その後、メモリ223上の動きカウントCOUNT(i−1)を動きカウントCOUNT(i)で更新する(図3、ステップS26)。
【0032】
図12の画像パターンについて図3のフローチャートに従うと図5〜図7のようになる。
【0033】
まず、i−6フィールド目について説明すると、フレーム間差分SAD2はABS{(i−5)−(i−7)}=0となる(ステップS11)。また、フィールド間差分SAD3はABS{(i−6)−(i−7)}=0となる(ステップS12)。ここでは、第1の閾値SAD_THは0.1であり、フィールド間差分SAD3が第1の閾値SAD_THよりも小さいため、MVFLGを0にする(ステップS13)。この時点でメモリ223に記憶されている1フィールド前の動きカウントCOUNT(i−1)は0である(ステップS21)。ここでは、第2の閾値MAX_THは4であり、動きカウントCOUNT(i−1)が第2の閾値MAX_THより小さいため、MAXFLGを0にする(ステップS22)。MAXFLGが0である場合は動画であると仮判定するので、フィールド間差分SAD3’=フィールド間差分SAD3=0となる(ステップS23)。これにより、フレーム間差分SAD2とフィールド間差分SAD3’の和は0+0=0となり(ステップS24)、動き係数k=Gain×ΣSAD=8×0=0となるため(ステップS30)、静止画処理を行う(ステップS40)。一方、MVFLGが0であるため、新しい動きカウントCOUNT(i)は0となる(ステップS25)。
【0034】
以降のi−5フィールド目からi−3フィールド目についても同様の手順で望ましい処理を行う。ここで、従来の動き適応型フィールド補間によると、i−2フィールド目及びi−1フィールド目において本来動画として検出すべき領域を静止画として誤検出してしまう問題があった。以下、本発明によれば動画と正しく検出されることを説明する。
【0035】
まず、i−2フィールド目について説明すると、フレーム間差分SAD2はABS{(i−1)−(i−3)}=0となる(ステップS11)。また、フィールド間差分SAD3はABS{(i−2)−(i−3)}=0.5となる(ステップS12)。ここでは、第1の閾値SAD_THは0.1であり、フィールド間差分SAD3が第1の閾値SAD_TH以上であるため、MVFLGを1にする(ステップS13)。この時点でメモリ223に記憶されている1フィールド前の動きカウントCOUNT(i−1)は2である(ステップS21)。ここでは、第2の閾値MAX_THは4であり、動きカウントCOUNT(i−1)が第2の閾値MAX_THより小さいため、MAXFLGを0にする(ステップS22)。MAXFLGが0である場合は動画であると仮判定するので、フィールド間差分SAD3’=フィールド間差分SAD3=0.5となる(ステップS23)。これにより、フレーム間差分SAD2とフィールド間差分SAD3’の和は0+0.5=0.5となり(ステップS24)、動き係数k=Gain×ΣSAD=8×0.5=1となるため(ステップS30)、動画処理を行う(ステップS40)。一方、MVFLGが1であり且つMAXFLGが0であるため、新しい動きカウントCOUNT(i)=COUNT(i−1)+1=2+1=3となる(ステップS25)。
【0036】
次いで、i−1フィールド目について説明すると、フレーム間差分SAD2はABS{(i−0)−(i−2)}=0となる(ステップS11)。また、フィールド間差分SAD3はABS{(i−1)−(i−2)}=0.5となる(ステップS12)。ここでは、第1の閾値SAD_THは0.1であり、フィールド間差分SAD3が第1の閾値SAD_TH以上であるため、MVFLGを1にする(ステップS13)。この時点でメモリ223に記憶されている1フィールド前の動きカウントCOUNT(i−1)は3である(ステップS21)。ここでは、第2の閾値MAX_THは4であり、動きカウントCOUNT(i−1)が第2の閾値MAX_THより小さいため、MAXFLGを0にする(ステップS22)。MAXFLGが0である場合は動画であると仮判定するので、フィールド間差分SAD3’=フィールド間差分SAD3=0.5となる(ステップS23)。これにより、フレーム間差分SAD2とフィールド間差分SAD3’の和は0+0.5=0.5となり(ステップS24)、動き係数k=Gain×ΣSAD=8×0.5=1となるため(ステップS30)、動画処理を行う(ステップS40)。一方、MVFLGが1であり且つMAXFLGが0であるため、新しい動きカウントCOUNT(i)=COUNT(i−1)+1=3+1=4となる(ステップS25)。
【0037】
以降のiフィールド目〜i+2フィールド目についても同様の手順で望ましい処理を行う。ここで、iフィールド目では、フィールド間差分SAD3が第1の閾値SAD_THを超えたフィールド数が第2の閾値MAX_TH以上連続した(MAXFLG=1)ので、静止画であると仮判定し、フィールド間差分SAD3’を0にする(ステップS23)。そして、COUNT(i)がオーバーフローしないようにCOUNT(i−1)で保持するようになっている(ステップS25)。また、i+2フィールド目では、フィールド間差分SAD3が前フィールドとは異なり第1の閾値SAD_THを下回った(MVFLG=0)ので、COUNT(i)を0にリセットするようになっている(ステップS25)。
【0038】
従来技術と本発明の実施形態の検出結果をまとめたものを図8に示す。この図に示すように、従来技術によると、i−2フィールド目及びi−1フィールド目において本来動画として検出すべき領域を静止画として誤検出してしまう。一方、本発明によれば、i−2フィールド目及びi−1フィールド目についても動画と正しく検出される。なお、i−5フィールド目及びi+2フィールド目については静止画処理が望ましいが、注目画素位置において縦縞パターンが現れるフィールドであるため、動画処理を行っても目障りな画質劣化とならない。
【0039】
従来技術と本発明の実施形態のフィールド補間後の画像を図14に示す。この図に示すように、従来技術によると、i−2フィールド目において画素値0.5とすべきところが画素値0となってしまい、また、i−1フィールド目において画素値0とすべきところが画素値0.5となってしまう。一方、本発明によれば、i−2フィールド目において画素値0.5とすべきところは画素値0.5となり、また、i−1フィールド目において画素値0とすべきところは画素値0となっている。
【0040】
以上のように、本発明の実施形態における動き適応型フィールド補間回路10によれば、 フィールド間差分が第1の閾値SAD_TH以上であるフィールド数を示す動きカウントを算出しては更新するようにしているので、本来動画として検出すべき領域を静止画として誤検出することをメモリ容量や演算量を増加させることなく抑制することができる。すなわち、動きカウントは3bit程度あれば実情問題ないので、動きカウントを記憶するために大容量のメモリ容量を備える必要がない。これにより、安価で且つ高速に動作する回路により良質なプログレッシブ画像を得ることが可能となる。
【0041】
なお、ここでは、静止画であると判定された場合は、新しい動きカウントCOUNT(i)を1フィールド前の動きカウントCOUNT(i−1)にすることとしているが(図3、ステップS25)、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、1フィールド前の動きカウントに限らず、1フィールド以前の動きカウントにすることも可能である。
【0042】
なお、本発明は、動き適応型フィールド補間回路10として実現することができるだけでなく、このような動き適応型フィールド補間回路10が備える特徴的な処理部をステップとする動き適応型フィールド補間方法として実現したり、それらのステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したりすることもできる。このようなプログラムは、CD−ROM等の記録媒体やインターネット等の伝送媒体を介して配信することができるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0043】
10…動き適応型フィールド補間回路
201,203…フィールドメモリ
202…ラインメモリ
206,207,212,219,221…加算器
208,209…乗算器
210,211…係数乗算器
213,214,215…減算器
216,217,218…絶対値回路
220…係数算出回路
222…選択回路
223…メモリ
224,225…2値化回路
226…カウンター回路
SAD_TH…第1の閾値
MAX_TH…第2の閾値
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターレース画像をプログレッシブ画像に変換する動き適応型フィールド補間装置及び動き適応型フィールド補間方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターレース画像の各フィールドにラインを補間することでインターレース画像をプログレッシブ画像に変換するフィールド補間が知られている。フィールド補間には、補間しようとするフィールドに隣接するフィールド内に存在する画素を用いて補間するフィールド間補間と、補間しようとするフィールドと同一フィールド内に存在する画素を用いて補間するフィールド内補間とがある。フィールド内補間は動画に適し、フィールド間補間は静止画に適している。そこで、良質なプログレッシブ画像を得るため、画像の動き量を表す係数によりフィールド内補間画素とフィールド間補間画素を適応的に重み平均して補間する動き適応型フィールド補間が知られている。例えば、特許文献1には、画像の動き量を表す動き係数k(0≦k≦1)によりフィールド間補間画素とフィールド内補間画素を重み平均して補間することが開示されている。以下、特許文献1に開示されている従来例について、図面を用いて説明する。
【0003】
図9は、前記特許文献1に開示されている動き適応型フィールド補間回路の構成図である。図9において、201,203,204はフィールドメモリ、202,205はラインメモリ、206,207,212,219は加算回路、208,209は乗算回路、210,211は係数乗算回路、213,214,215は減算回路、216,217,218は絶対値回路、220は係数算出回路を示す。
【0004】
図10は、相続く4フィールドのラインの配置を時間軸tとフィールドの垂直軸Vとにより表したものである。図10において、縦軸はラインの垂直位置を、横軸はフィールド単位の時刻を表す。i(i=1,2,…)はフィールド数を示し、白丸および黒丸はそれぞれ1本のラインを示す。更に黒丸は補間しようとするラインを示す。図9のA1,A2,B1,C1,C2,D1,Xは、図10の同じ符号で示すラインを表している。
【0005】
図11は、図9に示す構成図を基にした従来の処理手順を示すフローチャートである。図11の処理が補間画素1画素毎に繰り返される。一つの補間画素に対する処理が開始されると、まず、フレーム間差分SAD1とSAD2を算出する(図11、ステップS10)。図10において補間処理を実施する注目フィールドをi−1とすると、SAD1は、注目フィールド(i−1)と注目フィールドの2フィールド前(i−3)との差分絶対値である。SAD2は、注目フィールドの直前フィールド(i−2)と、注目フィールドの直後フィールド(i)との差分絶対値である。図10でいうと、SAD1はラインA1の画素とラインC1の画素との差分絶対値およびラインA2の画素とラインC2の画素との差分絶対値であり、SAD2はラインB1の画素とラインD1の画素との差分絶対値である。
【0006】
次いで、フレーム間差分SAD1とSAD2の和SADsumを算出する(図11、ステップS20)。さらに、0≦k≦1(但し、1以上は1)になるように、動き係数k=Gain×SADsumを算出する(図11、ステップS30)。最後に、Pout=k×Pmove+(1−k)×Pstillによりフィールド補間する(図11、ステップS40)。PmoveはラインB1の画素およびラインD1の画素から補間された画素値、PstillはラインC1の画素およびラインC2の画素から補間された画素値である。このようにして補間に使われる全てのラインのフレーム間差分に基づき適応的にフィールド補間がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平7−12214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の動き適応型フィールド補間によると、本来動画として検出すべき領域を静止画として誤検出してしまうことがあった。以下、このように静止画として誤検出するに至る経緯を図面に従って説明する。
【0009】
ここでは、図12に示す画像パターンにおいて、太枠で示した画素(注目画素)を補間する場合を例示する。図中のi(i=1,2,…)はフィールド数を示す。画素値1.0を背景にして、画素値0と0.5の縦縞パターンが画面左から右の方向に1フィールド当たり2画素移動している。図12では、i−8フィールドからi+1フィールドまでを示しているが、太枠の注目画素は、i−8フィールド以前も画素値1.0の背景とする。トップフィールド内のラインT1,T2,T3,…は画像が存在するラインを示し、その間は画像が存在せずに間引かれたラインを示す。同様に、ボトムフィールド内のラインB1,B2,B3,…は画像が存在するラインを示し、その間は画像が存在せずに間引かれたラインを示す。
【0010】
図12の画像パターンについて図11のフローチャートに従うと図13のようになる。図13において、SAD1は太枠で示した注目画素の直上に位置する画素同士(ラインA1の画素とラインC1の画素)の差分絶対値、SAD2は太枠で示した注目画素と同じ場所に位置する画素同士(ラインB1の画素とラインD1の画素)の差分絶対値とする。まず、i−6フィールド目について説明すると、SAD1は、i−6フィールドとi−8フィールドとの差分絶対値であるため、SAD1=ABS{(i−6)−(i−8)}=0となる(図11、ステップS10)。また、SAD2は、i−5フィールドとi−7フィールドとの差分絶対値であるため、SAD2=ABS{(i−5)−(i−7)}=0となる(図11、ステップS10)。これにより、フレーム間差分SAD1とSAD2の和SADsumはSAD1+SAD2=0となり(図11、ステップS20)、図9の係数算出回路220を乗算器、Gain=8と仮定すると、動き係数kはGain×SADsum=8×0=0となる(図11、ステップS30)。その結果、Pout=k×Pmove+(1−k)×Pstill=0×Pmove+(1−0)×Pstill=Pstillであるため静止画処理を行う(図11、ステップS40)。この場合、注目画素は画素値1.0の背景となるため、静止画処理は望ましい処理と言える。以降のi−5フィールド目からi−3フィールド目についても同様の手順で望ましい処理を行う。ここで、i−2フィールド目については静止画処理を行うことになるが、この場合は動画処理を行うのが望ましい。静止画処理を行うと注目画素は画素値0となるが、縦縞パターンを表すためには画素値0.5とすべきである。また、i−1フィールド目についても静止画処理を行うことになるが、この場合も動画処理を行うのが望ましい。静止画処理を行うと注目画素は画素値0.5となるが、縦縞パターンを表すためには画素値0とすべきである。最後に、iフィールド目については望ましい処理を行う。
【0011】
以上のように、従来の動き適応型フィールド補間によると、i−2フィールド目及びi−1フィールド目において本来動画として検出すべき領域を静止画として誤検出してしまう。その結果、図14に示すように、i−2フィールド目において画素値0.5とすべきところが画素値0となってしまい、また、i−1フィールド目において画素値0とすべきところが画素値0.5とってしまい、目障りな画質劣化となる問題があった。これを避けるべく、参照するフィールド数や演算量を増やし検出感度を上げる改善がなされるが、このような方法ではメモリ容量や演算量の増加を伴いコストアップになるという問題があった。つまり、図12のような画像パターンでは、i−1フィールド目の画像を正しく動画と検出するにはi−5フィールド目を参照する必要があり、5フィールド分の画像を記憶するためのメモリが必要になる。縦縞の繰り返しの数が多くなれば、より過去のフィールドを参照する必要があり、より多くのフィールド分の画像を記憶するためのメモリが必要になる。
【0012】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、本来動画として検出すべき領域を静止画として誤検出することをメモリ容量や演算量を増加させることなく抑制することのできる動き適応型フィールド補間装置及び動き適応型フィールド補間方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明の実施形態に係る動き適応型フィールド補間装置は、画像の動き量を表す係数によりフィールド内補間画素とフィールド間補間画素を適応的に重み平均して補間する動き適応型フィールド補間装置であって、フィールド間差分を算出するフィールド間差分算出部と、前記フィールド間差分が第1の閾値以上であるフィールド数を示す動きカウントを算出しては更新する動きカウント更新部と、前記動きカウントに基づいて静止画であるか動画であるかを判定する判定部と、前記判定結果に基づいて画像の動き量を表す係数を算出する係数算出部と、前記係数に基づいてフィールド補間する補間部とを備えることを特徴とする。
【0014】
前記動き適応型フィールド補間装置において、前記判定部は、前記動きカウントが第2の閾値以上である場合は静止画であると判定し、前記係数算出部は、前記静止画であると判定された場合、前記フィールド間差分を0としてもよい。
【0015】
前記動き適応型フィールド補間装置において、前記判定部は、前記動きカウントが第2の閾値以上である場合は静止画であると判定し、前記動きカウント更新部は、前記静止画であると判定された場合、新しい動きカウントを1フィールド以前の動きカウントにしてもよい。
【0016】
前記動き適応型フィールド補間装置において、前記動きカウント更新部は、前記フィールド間差分が第1の閾値より小さい場合、新しい動きカウントを0にリセットしてもよい。
【0017】
前記課題を解決するために、本発明の実施形態に係る動き適応型フィールド補間方法は、画像の動き量を表す係数によりフィールド内補間画素とフィールド間補間画素を適応的に重み平均して補間する動き適応型フィールド補間方法であって、フィールド間差分を算出するステップと、前記フィールド間差分が第1の閾値以上であるフィールド数を示す動きカウントを算出しては更新するステップと、前記動きカウントに基づいて静止画であるか動画であるかを判定するステップと、前記判定結果に基づいて画像の動き量を表す係数を算出するステップと、前記係数に基づいてフィールド補間するステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、フィールド間差分が第1の閾値以上であるフィールド数を示す動きカウントを算出しては更新するようにしているので、本来動画として検出すべき領域を静止画として誤検出することをメモリ容量や演算量を増加させることなく抑制することのできる動き適応型フィールド補間装置及び動き適応型フィールド補間方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態における動き適応型フィールド補間回路の構成図である。
【図2】本発明の実施形態におけるフィールド間差分を説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態における処理手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態におけるフィールド補間対象となる画像の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態における処理結果を示す図である。
【図6】本発明の実施形態における処理結果を示す図である。
【図7】本発明の実施形態における処理結果を示す図である。
【図8】従来技術と本発明の実施形態の検出結果を示す図である。
【図9】特許文献1に開示されている動き適応型フィールド補間回路の構成図である。
【図10】フレーム間差分SAD1とSAD2を説明するための図である。
【図11】従来の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】フィールド補間対象となる画像の一例を示す図である。
【図13】従来の処理結果を示す図である。
【図14】従来技術と本発明の実施形態のフィールド補間後の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態における動き適応型フィールド補間回路10の構成図である。この動き適応型フィールド補間回路10は、画像の動き量を表す係数によりフィールド内補間画素とフィールド間補間画素を適応的に重み平均して補間する動き適応型フィールド補間装置の一例である。図1において、201,203はフィールドメモリ、202はラインメモリ、206,207,212,219,221は加算回路、208,209は乗算回路、210,211は係数乗算回路、213,214,215は減算回路、216,217,218は絶対値回路、220は係数算出回路、222は選択回路、223はメモリ、224,225は2値化回路、226はカウンター回路を示す。
【0022】
図2は、図10と同様、相続く4フィールドのラインの配置を時間軸tとフィールドの垂直軸Vとにより表したものである。図1のB1,C1,C2,D1,Xは、図2の同じ符号で示すラインを表している。図2中の白矢印はフレーム間差分に相当し、斜線を付した矢印はフィールド間差分に相当する。フィールド間差分については後で詳しく説明する。
【0023】
図3は、本発明の実施形態における動き適応型フィールド補間回路10の処理手順を示すフローチャートである。従来(図11)に比べて、図11ステップS10が図3ステップS11に変更され、図11ステップS20が削除されている。更に図3の破線枠で示すステップS12〜S26が追加されている。ステップS30,S40は従来と同じとする。以下、図12の太枠で示した画素(注目画素)を補間する場合を例示して従来と異なる点を中心に説明する。
【0024】
まず、フレーム間差分SAD2を算出する(図3、ステップS11)。フレーム間差分SAD2とは、注目フィールドの1フィールド前の画像と注目フィールドの1フィールド後の画像の差分絶対値である。ここでは、注目画素と同じ場所に位置する画素同士(ラインB1の画素とラインD1の画素)の差分絶対値(B1−D1)とする。
【0025】
次いで、フィールド間差分SAD3を算出する(図3、ステップS12)。フィールド間差分SAD3とは、注目フィールドと注目フィールドの1フィールド前または1フィールド後の画像の差分絶対値である。ここでは、注目画素の1ライン上にあるラインC1の画素と、注目フィールドの1フィールド前にある注目画素と同じ場所に位置するラインB1の画素の差分絶対値(B1−C1)と、注目画素の1ライン下にあるラインC2の画素と、注目フィールドの1フィールド前にある注目画素と同じ場所に位置するラインB1の画素の差分絶対値(B1−C2)の和とする。このように和を算出する方法に代えて、差分絶対値(B1−C1)と差分絶対値(B1−C2)の最大値を算出するようにしてもよい。
【0026】
次いで、フィールド間差分SAD3を2値化し、そのフィールド間差分SAD3と第1の閾値SAD_THとを比較する(図3、ステップS13)。フィールド間差分SAD3が第1の閾値SAD_TH以上である場合は、その判定結果を示すフラグMVFLGを1にする。一方、フィールド間差分SAD3が第1の閾値SAD_THよりも小さい場合は、MVFLGを0にする。ここでは、第1の閾値SAD_THは仮に0.1とする。
【0027】
次いで、1フィールド前の動きカウントCOUNT(i−1)をメモリ223から読み出し(図3、ステップS21)、その動きカウントCOUNT(i−1)に基づいて静止画であるか動画であるかを仮判定する(図3、ステップS22)。すなわち、動きカウントCOUNT(i−1)は、フィールド間差分SAD3が第1の閾値SAD_TH以上であると判定したフィールド数を示している。動きカウントCOUNT(i−1)が第2の閾値MAX_TH以上である場合は静止画であると仮判定し、その判定結果を示すフラグMAXFLGを1にする。一方、動きカウントCOUNT(i−1)が第2の閾値MAX_THより小さい場合は動画であると仮判定し、MAXFLGを0にする。ここでは、第2の閾値MAX_THは仮に4とする。
【0028】
次いで、フィールド間差分SAD3’を算出する(図3、ステップS23)。MAXFLGが1である場合は静止画であると仮判定するので、フィールド間差分SAD3’を0にする。一方、MAXFLGが0である場合は動画であると仮判定するので、フィールド間差分SAD3’の値をフィールド間差分SAD3の値にする。これにより、図4に示すように、グレーの横線と黒の横線とからなる横縞の静止物体が現れた場合でも不都合が生じない。すなわち、このような横縞の静止物体について単にフィールド間差分をとるだけでは、横線の明るさの違いからフィールド間差分が0とならないため、動画処理され続け、フリッカー現象を伴う目障りな画質になる。そこで、MAXFLGが1である場合は、フィールド間差分SAD3’を0にして、目障りな画質になることを回避するようにしている(ステップS23)。
【0029】
次いで、フレーム間差分SAD2とフィールド間差分SAD3’の和を算出する(図3、ステップS24)。このように和を算出する方法に代えて、フレーム間差分SAD2とフィールド間差分SAD3’の最大値を算出するようにしてもよい。
【0030】
次いで、動き係数k=Gain×ΣSADを求め(図3、ステップS30)、Pout=k×Pmove+(1−k)×Pstillによりフィールド補間する(図3、ステップS40)。ここでは、係数算出回路220を乗算器とし、Gain=8と仮定する。ただし、0≦k≦1とし、kが1以上の場合は1とする。
【0031】
また、静止画/動画を仮判定した後(図3、ステップS22)、新しい動きカウントCOUNT(i)を算出する(図3、ステップS25)。すなわち、MVFLGが1であり且つMAXFLGが1である場合、MAXFLGが1になれば静止画であると仮判定するので、これ以上カウンターをインクリメントしなくても静止画/動画の仮判定結果は変わらない。よって、カウンターをオーバーフローさせないために、カウンター値を現在の値で保持する。すなわち、新しい動きカウントCOUNT(i)を1フィールド前の動きカウントCOUNT(i−1)にする。また、MVFLGが1であり且つMAXFLGが0である場合、MAXFLGが0なら動画であると仮判定するので、カウンター値を1インクリメントとする。すなわち、新しい動きカウントCOUNT(i)を“1フィールド前の動きカウントCOUNT(i−1)+1”にする。更に、MVFLGが0である場合、カウンター値に関係なく静止画であると仮判定し、カウンター値すなわち新しい動きカウントCOUNT(i)を0にリセットする。その後、メモリ223上の動きカウントCOUNT(i−1)を動きカウントCOUNT(i)で更新する(図3、ステップS26)。
【0032】
図12の画像パターンについて図3のフローチャートに従うと図5〜図7のようになる。
【0033】
まず、i−6フィールド目について説明すると、フレーム間差分SAD2はABS{(i−5)−(i−7)}=0となる(ステップS11)。また、フィールド間差分SAD3はABS{(i−6)−(i−7)}=0となる(ステップS12)。ここでは、第1の閾値SAD_THは0.1であり、フィールド間差分SAD3が第1の閾値SAD_THよりも小さいため、MVFLGを0にする(ステップS13)。この時点でメモリ223に記憶されている1フィールド前の動きカウントCOUNT(i−1)は0である(ステップS21)。ここでは、第2の閾値MAX_THは4であり、動きカウントCOUNT(i−1)が第2の閾値MAX_THより小さいため、MAXFLGを0にする(ステップS22)。MAXFLGが0である場合は動画であると仮判定するので、フィールド間差分SAD3’=フィールド間差分SAD3=0となる(ステップS23)。これにより、フレーム間差分SAD2とフィールド間差分SAD3’の和は0+0=0となり(ステップS24)、動き係数k=Gain×ΣSAD=8×0=0となるため(ステップS30)、静止画処理を行う(ステップS40)。一方、MVFLGが0であるため、新しい動きカウントCOUNT(i)は0となる(ステップS25)。
【0034】
以降のi−5フィールド目からi−3フィールド目についても同様の手順で望ましい処理を行う。ここで、従来の動き適応型フィールド補間によると、i−2フィールド目及びi−1フィールド目において本来動画として検出すべき領域を静止画として誤検出してしまう問題があった。以下、本発明によれば動画と正しく検出されることを説明する。
【0035】
まず、i−2フィールド目について説明すると、フレーム間差分SAD2はABS{(i−1)−(i−3)}=0となる(ステップS11)。また、フィールド間差分SAD3はABS{(i−2)−(i−3)}=0.5となる(ステップS12)。ここでは、第1の閾値SAD_THは0.1であり、フィールド間差分SAD3が第1の閾値SAD_TH以上であるため、MVFLGを1にする(ステップS13)。この時点でメモリ223に記憶されている1フィールド前の動きカウントCOUNT(i−1)は2である(ステップS21)。ここでは、第2の閾値MAX_THは4であり、動きカウントCOUNT(i−1)が第2の閾値MAX_THより小さいため、MAXFLGを0にする(ステップS22)。MAXFLGが0である場合は動画であると仮判定するので、フィールド間差分SAD3’=フィールド間差分SAD3=0.5となる(ステップS23)。これにより、フレーム間差分SAD2とフィールド間差分SAD3’の和は0+0.5=0.5となり(ステップS24)、動き係数k=Gain×ΣSAD=8×0.5=1となるため(ステップS30)、動画処理を行う(ステップS40)。一方、MVFLGが1であり且つMAXFLGが0であるため、新しい動きカウントCOUNT(i)=COUNT(i−1)+1=2+1=3となる(ステップS25)。
【0036】
次いで、i−1フィールド目について説明すると、フレーム間差分SAD2はABS{(i−0)−(i−2)}=0となる(ステップS11)。また、フィールド間差分SAD3はABS{(i−1)−(i−2)}=0.5となる(ステップS12)。ここでは、第1の閾値SAD_THは0.1であり、フィールド間差分SAD3が第1の閾値SAD_TH以上であるため、MVFLGを1にする(ステップS13)。この時点でメモリ223に記憶されている1フィールド前の動きカウントCOUNT(i−1)は3である(ステップS21)。ここでは、第2の閾値MAX_THは4であり、動きカウントCOUNT(i−1)が第2の閾値MAX_THより小さいため、MAXFLGを0にする(ステップS22)。MAXFLGが0である場合は動画であると仮判定するので、フィールド間差分SAD3’=フィールド間差分SAD3=0.5となる(ステップS23)。これにより、フレーム間差分SAD2とフィールド間差分SAD3’の和は0+0.5=0.5となり(ステップS24)、動き係数k=Gain×ΣSAD=8×0.5=1となるため(ステップS30)、動画処理を行う(ステップS40)。一方、MVFLGが1であり且つMAXFLGが0であるため、新しい動きカウントCOUNT(i)=COUNT(i−1)+1=3+1=4となる(ステップS25)。
【0037】
以降のiフィールド目〜i+2フィールド目についても同様の手順で望ましい処理を行う。ここで、iフィールド目では、フィールド間差分SAD3が第1の閾値SAD_THを超えたフィールド数が第2の閾値MAX_TH以上連続した(MAXFLG=1)ので、静止画であると仮判定し、フィールド間差分SAD3’を0にする(ステップS23)。そして、COUNT(i)がオーバーフローしないようにCOUNT(i−1)で保持するようになっている(ステップS25)。また、i+2フィールド目では、フィールド間差分SAD3が前フィールドとは異なり第1の閾値SAD_THを下回った(MVFLG=0)ので、COUNT(i)を0にリセットするようになっている(ステップS25)。
【0038】
従来技術と本発明の実施形態の検出結果をまとめたものを図8に示す。この図に示すように、従来技術によると、i−2フィールド目及びi−1フィールド目において本来動画として検出すべき領域を静止画として誤検出してしまう。一方、本発明によれば、i−2フィールド目及びi−1フィールド目についても動画と正しく検出される。なお、i−5フィールド目及びi+2フィールド目については静止画処理が望ましいが、注目画素位置において縦縞パターンが現れるフィールドであるため、動画処理を行っても目障りな画質劣化とならない。
【0039】
従来技術と本発明の実施形態のフィールド補間後の画像を図14に示す。この図に示すように、従来技術によると、i−2フィールド目において画素値0.5とすべきところが画素値0となってしまい、また、i−1フィールド目において画素値0とすべきところが画素値0.5となってしまう。一方、本発明によれば、i−2フィールド目において画素値0.5とすべきところは画素値0.5となり、また、i−1フィールド目において画素値0とすべきところは画素値0となっている。
【0040】
以上のように、本発明の実施形態における動き適応型フィールド補間回路10によれば、 フィールド間差分が第1の閾値SAD_TH以上であるフィールド数を示す動きカウントを算出しては更新するようにしているので、本来動画として検出すべき領域を静止画として誤検出することをメモリ容量や演算量を増加させることなく抑制することができる。すなわち、動きカウントは3bit程度あれば実情問題ないので、動きカウントを記憶するために大容量のメモリ容量を備える必要がない。これにより、安価で且つ高速に動作する回路により良質なプログレッシブ画像を得ることが可能となる。
【0041】
なお、ここでは、静止画であると判定された場合は、新しい動きカウントCOUNT(i)を1フィールド前の動きカウントCOUNT(i−1)にすることとしているが(図3、ステップS25)、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、1フィールド前の動きカウントに限らず、1フィールド以前の動きカウントにすることも可能である。
【0042】
なお、本発明は、動き適応型フィールド補間回路10として実現することができるだけでなく、このような動き適応型フィールド補間回路10が備える特徴的な処理部をステップとする動き適応型フィールド補間方法として実現したり、それらのステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したりすることもできる。このようなプログラムは、CD−ROM等の記録媒体やインターネット等の伝送媒体を介して配信することができるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0043】
10…動き適応型フィールド補間回路
201,203…フィールドメモリ
202…ラインメモリ
206,207,212,219,221…加算器
208,209…乗算器
210,211…係数乗算器
213,214,215…減算器
216,217,218…絶対値回路
220…係数算出回路
222…選択回路
223…メモリ
224,225…2値化回路
226…カウンター回路
SAD_TH…第1の閾値
MAX_TH…第2の閾値
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像の動き量を表す係数によりフィールド内補間画素とフィールド間補間画素を適応的に重み平均して補間する動き適応型フィールド補間装置であって、
フィールド間差分を算出するフィールド間差分算出部と、
前記フィールド間差分が第1の閾値以上であるフィールド数を示す動きカウントを算出しては更新する動きカウント更新部と、
前記動きカウントに基づいて静止画であるか動画であるかを判定する判定部と、
前記判定結果に基づいて画像の動き量を表す係数を算出する係数算出部と、
前記係数に基づいてフィールド補間する補間部と、
を備えることを特徴とする動き適応型フィールド補間装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記動きカウントが第2の閾値以上である場合は静止画であると判定し、
前記係数算出部は、前記静止画であると判定された場合、前記フィールド間差分を0とすることを特徴とする請求項1記載の動き適応型フィールド補間装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記動きカウントが第2の閾値以上である場合は静止画であると判定し、
前記動きカウント更新部は、前記静止画であると判定された場合、新しい動きカウントを1フィールド以前の動きカウントにすることを特徴とする請求項1記載の動き適応型フィールド補間装置。
【請求項4】
前記動きカウント更新部は、前記フィールド間差分が第1の閾値より小さい場合、新しい動きカウントを0にリセットすることを特徴とする請求項1記載の動き適応型フィールド補間装置。
【請求項5】
画像の動き量を表す係数によりフィールド内補間画素とフィールド間補間画素を適応的に重み平均して補間する動き適応型フィールド補間方法であって、
フィールド間差分を算出するステップと、
前記フィールド間差分が第1の閾値以上であるフィールド数を示す動きカウントを算出しては更新するステップと、
前記動きカウントに基づいて静止画であるか動画であるかを判定するステップと、
前記判定結果に基づいて画像の動き量を表す係数を算出するステップと、
前記係数に基づいてフィールド補間するステップと、
を備えることを特徴とする動き適応型フィールド補間方法。
【請求項1】
画像の動き量を表す係数によりフィールド内補間画素とフィールド間補間画素を適応的に重み平均して補間する動き適応型フィールド補間装置であって、
フィールド間差分を算出するフィールド間差分算出部と、
前記フィールド間差分が第1の閾値以上であるフィールド数を示す動きカウントを算出しては更新する動きカウント更新部と、
前記動きカウントに基づいて静止画であるか動画であるかを判定する判定部と、
前記判定結果に基づいて画像の動き量を表す係数を算出する係数算出部と、
前記係数に基づいてフィールド補間する補間部と、
を備えることを特徴とする動き適応型フィールド補間装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記動きカウントが第2の閾値以上である場合は静止画であると判定し、
前記係数算出部は、前記静止画であると判定された場合、前記フィールド間差分を0とすることを特徴とする請求項1記載の動き適応型フィールド補間装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記動きカウントが第2の閾値以上である場合は静止画であると判定し、
前記動きカウント更新部は、前記静止画であると判定された場合、新しい動きカウントを1フィールド以前の動きカウントにすることを特徴とする請求項1記載の動き適応型フィールド補間装置。
【請求項4】
前記動きカウント更新部は、前記フィールド間差分が第1の閾値より小さい場合、新しい動きカウントを0にリセットすることを特徴とする請求項1記載の動き適応型フィールド補間装置。
【請求項5】
画像の動き量を表す係数によりフィールド内補間画素とフィールド間補間画素を適応的に重み平均して補間する動き適応型フィールド補間方法であって、
フィールド間差分を算出するステップと、
前記フィールド間差分が第1の閾値以上であるフィールド数を示す動きカウントを算出しては更新するステップと、
前記動きカウントに基づいて静止画であるか動画であるかを判定するステップと、
前記判定結果に基づいて画像の動き量を表す係数を算出するステップと、
前記係数に基づいてフィールド補間するステップと、
を備えることを特徴とする動き適応型フィールド補間方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−205174(P2012−205174A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69341(P2011−69341)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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