説明

動く対象の機能特性を決定するシステム、方法及びコンピュータプログラム

本発明は、動く対象2の機能特性を決定するシステム1に関し、システム1は、対象2の動きに追随するように対象2に接触可能なタグ3と、タグ3の動きを決定する動き決定装置4とを有する。システム1は、タグ3の決定された動きから対象2の機能特性を決定する機能特性決定装置5を更に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動く対象(moving object)の機能特性を決定するシステム、方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
WO2007/017879A2において、ペーサ電極(pacer electrodes)が心室及び血管に埋め込まれる心臓再同期療法(CRT)が開示されている。CRTのアイデアは、前記ペーサ電極により最適に右心室及び左心室をペーシングすることにより心拍出量を改良することである。前記ペーサ電極の最適な位置及び適合、例えば右心室及び左心室の同期された動きをもたらす位置及び適合を見つけるために、前記電気ペーサ電極の複数の適合及び位置が試行されなければならず、前記ペーサ電極の適合及び位置の各組み合わせに対して、心同期、特に左心室及び右心室の同期の度合が決定されなければならない。心臓組織及び心臓血管は、前記ペーサ電極の位置を追跡するためにCRT中に一般に存在するX線撮像装置において可視的ではないので、追加の撮像装置が、心臓の上述の機能特性、すなわち心同期の度合を決定するのに必要とされる。WO2007/017879A2は、この追加の撮像装置として超音波撮像装置を開示している。心臓の壁は、超音波撮像装置において可視的であり、壁運動力学が、心同期の度合を決定する前記超音波撮像装置の画像から決定されることができる。CRT中に心臓を撮像する追加の撮像装置の必要性は、システムを複雑かつより高価にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、対象自体の直接的な撮像を必要とせずに、動く対象の機能特性を決定するシステム、方法及びコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様において、動く対象の機能特性を決定するシステムが提示され、前記システムは、
前記対象の動きに追随する前記対象に接触可能なタグと、
前記タグの動きを決定する動き決定装置と、
前記タグの前記決定された動きから前記対象の機能特性を決定する機能特性決定装置と、
を有する。
【0005】
本発明は、前記システムが、前記タグの動きを決定する能力のみを必要とするので、前記対象自体の動きが、前記動き決定装置により直接的に調べられる必要がないというアイデアに基づく。前記タグは、前記タグの動きが、前記動き決定装置により容易に決定されることができるように選択されることができる。前記タグは、前記タグが前記対象の動きに追随するように前記対象に接触可能であるので、前記タグの前記決定された動きは、前記対象の動きと相関性があり、したがって、前記機能特性決定装置は、前記タグの前記決定された、特に定量化された動きから前記対象の機能特性を決定することができる。したがって、本発明によるシステムは、前記対象の動きを直接的に決定することを必要とせずに、特に関心の対象の直接的な撮像を必要とせずに、前記対象の機能特性の決定を可能にする。したがって、前記対象の機能特性は、前記対象自体の動きが直接的に決定されることができない場合でさえ、特に前記対象自体が撮像装置により視覚化されることができない場合でさえ、決定されることができる。
【0006】
前記タグの動きは、好ましくは、動きベクトル又は動きベクトル場により表わされ、前記機能特性は、好ましくは、前記動きベクトル又は前記動きベクトル場からそれぞれ決定される。
【0007】
前記対象は、好ましくは、人間の心臓のような動いている器官であり、前記タグは、動きが前記対象の動きに追随するように前記動いている器官に接触可能である。特に、前記対象は、好ましくは、心筋及び/又は心室であり、更に好ましくは心筋又は心室の動いている壁である。
【0008】
一般に、前記タグの決定された動きは、前記対象全体又は前記対象の少なくとも一部の現実の絶対的又は相対的動きである前記対象の動きにより引き起こされるが、前記決定された動きは、ゼロ動きであることもでき、すなわち前記決定装置は、前記タグが全く動いていないと決定することもできる。
【0009】
前記タグは、前記タグの動きが前記動き決定装置により決定されることができるように選択される。前記動き決定装置は、好ましくは、X線撮像システム、例えば、X線蛍光透視システム、単純なX線投影撮像システム、コンピュータ断層撮影システム又はX線Cアームシステムを含む。特に、前記動き決定装置が、X線撮像システムを含む場合、前記タグは、X線により検出されることができるように選択され、すなわち、この場合、前記タグは、好ましくは、高X線減衰素子、特にカテーテル、ワイヤ、電極又は金属成分を有するリードである。前記動き決定装置は、好ましくは、前記タグの動きを決定するために前記タグを時間的に及び空間的に追跡する。
【0010】
好適な実施例において、前記システムは、複数のタグを有し、前記動き決定装置は、複数のタグの動きを決定するように構成され、前記機能特性決定装置は、前記タグの前記決定された動きから1つ又は複数の機能特性を決定するように構成される。前記システムが複数のタグを有する場合、前記タグは、前記対象の動きをより正確に表すことができ、したがって、前記対象の1つ又は複数の機能特性は、特に前記対象の異なる部分が異なって動く場合に、より正確に決定されることができる。
【0011】
前記タグは、前記対象に付着されることができ、及び/又は少なくとも所定の時間間隔中に前記対象と前記タグとの間に連続的な接触が存在するように前記対象に隣接することができる。好ましくは、前記タグは、前記対象に埋め込まれる。
【0012】
前記機能特性決定装置は、前記タグの前記決定された動きから又は前記複数のタグの前記決定された動きから1つの機能特性のみを決定する又は複数の機能特性を決定するように構成されることができる。
【0013】
更に好ましいのは、前記動き決定装置が、前記タグの時間的な、すなわち時間依存の画像を決定し、前記時間的画像から前記タグの動きを決定するように構成されることである。前記タグの動きのこの画像ベースの決定、すなわち前記タグの追跡は、適切な方法、例えば、スネークベース、血管フィルタベース、相関ベース、又はテンプレートベース等により実行されることができる。
【0014】
好適な実施例において、前記機能特性決定装置は、前記タグの前記決定された動きから前記対象の動きを決定し、前記対象の前記決定された動きから前記対象の機能特性を決定するように構成される。前記機能特性決定装置により決定された前記対象の前記機能特性は、前記対象の動きに依存するので、前記対象の前記決定された動きからの前記機能特性の直接的な決定は、前記決定された機能特性の精度を更に改良する。
【0015】
更に好ましいのは、前記動く対象が、第2の対象内の第1の対象であり、前記タグが、前記第1の対象の動きに追随するように前記タグを前記第1の対象に接触するために前記第2の対象内に挿入可能であることである。これは、動く対象が第2の対象内に配置される場合でさえ、前記動く対象の機能特性の決定を可能にする。前記第1の対象は、特に前記第1の対象である患者内に配置された人間の心臓である。特に、これは、人間の心臓のような人間の器官の機能特性を決定することを可能にする。
【0016】
更に好ましいのは、前記動く対象が動いている心臓であり、少なくとも1つの第1のタグが前記心臓の右心室に接触可能であり、少なくとも1つの第2のタグが前記心臓の左心室に接触可能であり、前記動き決定装置が、前記少なくとも1つの第1のタグ及び前記少なくとも1つの第2のタグの動きを決定するように構成されることである。これは、前記心臓の右心室及び左心室の動きと相関がある前記心臓の機能特性、特に心同期及び/又は心拍出量を決定することを可能にする。前記システムが、人間の心臓の心房、特に人間の心臓の右心房に接触可能である少なくとも1つの第3のタグを有し、前記動き決定装置が、前記少なくとも1つの第3のタグの動きを決定するように構成されることは、更に好適である。これは、特に前記少なくとも1つの第1のタグ及び前記少なくとも1つの第2のタグの動きに加えて、前記少なくとも1つの第3のタグの動きから、前記信号の機能特性、特に心同期及び/又は心拍出量を決定することを可能にする。
【0017】
更に好ましいのは、前記機能特性決定装置が、前記少なくとも1つの第1のタグから前記心臓の右心室の動きを決定し、前記少なくとも1つの第2のタグから前記心臓の左心室の動きを決定するように構成されることである。前記機能特性決定装置により決定される前記機能特性は、前記心臓の動きと相関があるので、前記心臓の右心室及び左心室の前記決定された動きは、前記心臓の機能特性をより正確に決定するのに使用されることができる。
【0018】
好ましいのは、前記機能特性決定装置が、前記少なくとも1つの第1のタグ及び前記少なくとも1つの第2のタグの前記決定された動きから、及び特に前記心臓の心房に接触された少なくとも1つの第3のタグの決定された動きから、前記心臓の右心室の動きと左心室の動きとの間の同期の度合を決定するように構成されることである。前記同期の度合は、CRTにおいて使用されることができる。したがって、前記同期の度合の決定は、前記同期の度合が最大化されるようにCRT中にペーサ電極の適合及び/又は位置を制御することを可能にする。これは、好ましくは、第一に前記タグの前記決定された動きから前記心室の動きを決定することにより、第二に前記心室の前記決定された動きから前記同期の度合を決定することにより実行される。しかしながら、前記同期の度合が前記タグの前記決定された動きから直接的に決定されることも好ましい。
【0019】
更に好ましいのは、前記機能特性決定装置が、前記少なくとも1つの第1のタグ、前記少なくとも1つの第2のタグ及び前記心臓の心房に、特に前記心臓の右心房に接触された少なくとも1つの第3のタグの前記決定された動きから前記心臓の右心室の動きと左心室の動きとの間の同期を含む心同期の度合を決定するように構成されることである。この心同期の度合もCRTにおいて使用されることができる。
【0020】
更に好ましいのは、前記機能特性決定装置が、前記少なくとも1つの第1のタグ及び前記少なくとも1つの第2のタグの前記決定された動きから、及び特に前記心臓の心房に接触された少なくとも1つの第3のタグの決定された動きから心拍出量を決定するように構成されることである。前記決定された心拍出量も、前記ペーサ電極の特性及び位置が最適化される、すなわちこの場合、前記心拍出量が最適化されるようにCRTにおいてペーサ電極を適合及び位置調整するのに使用されることができる。
【0021】
前記心拍出量も、第一に前記タグの動きから前記心室の動きを決定することにより、第二に前記心室の前記決定された動きから前記心拍出量を決定することにより決定されることができる。他の実施例において、前記心拍出量は、左心室及び右心室の同期の度合から決定されることができる。
【0022】
更に好ましいのは、前記システムが、前記対象の動きに作用する動き作用素子を有することである。動き作用素子は別個の素子であり、及び/又は少なくとも1つのタグが動き作用素子である。好ましくは、前記動き作用素子は、心臓をペーシングするペーシング素子、特に上述のペーサ電極である。
【0023】
好ましくは、前記システムは、前記対象の前記決定された機能特性が最大化されるように前記動き作用素子を適合する適合装置を更に有する。例えば、前記動き作用素子が心臓をペーシングするペーシング素子である場合、前記適合装置は、好ましくは、心同期、特に左心室及び右心室の同期の度合及び/又は心拍出量である前記決定された機能特性が最大化されるように人間の心臓をペーシングする電流のアンペア数及び/又は周波数を修正する。
【0024】
更に好ましいのは、前記システムが、前記対象の前記決定された機能特性が最大化されるように前記動き作用素子を位置調整する位置調整装置を更に有することである。前記動き作用素子が人間の心臓をペーシングするペーシング素子である場合、前記ペーシング素子は、好ましくは、好ましくは心同期、特に左心室及び右心室の心同期、特に左心室収縮及び右心室収縮の同期の度合、及び/又は心拍出量である前記決定された機能特性が最大化されるように位置調整される。
【0025】
好適な実施例において、前記動き作用素子は、少なくとも第1の作用状態と第2の作用状態との間で変化可能であり、前記動き決定装置及び前記動き作用素子は、前記動き作用素子が前記第1の作用状態にある場合に前記タグの第1の動きが決定され、前記動き作用素子が前記第2の作用状態にある場合に前記タグの第2の動きが決定されるように制御可能であり、前記機能特性決定装置は、前記対象の前記機能特性に対する前記動き作用素子の作用を決定するために、前記機能特性が、少なくとも2回、すなわち前記タグの前記第1の動きから1回及び前記タグの前記第2の動きから1回決定されるように制御可能である。好ましくは、前記第1の作用状態は、前記動き作用素子が作動している状態であり、前記第2の作用状態は、好ましくは、前記動き作用素子が停止された状態である。これは、前記対象の前記機能特性に対する前記動き作用素子の異なる状態の作用を決定することを可能にする。
【0026】
更に好ましいのは、前記システムが、前記タグの視覚化と同時に前記対象の前記決定された機能特性を視覚化する視覚化ユニットを有することである。これは、前記タグの位置と前記決定された機能特性との間の相関の視覚化をユーザに与える。好ましいのは、例えば異なる方向又は異なる速度範囲の前記タグの異なる動きが異なる色により示されることである。
【0027】
本発明の他の態様において、動く対象の機能特性を決定する方法が提示され、前記方法は、
前記対象の動きに追随するように前記対象に接触されたタグを提供するステップと、
前記タグの動きを決定するステップと、
前記タグの前記決定された動きから機能特性を決定するステップと、
を有する。
【0028】
本発明の他の態様において、動く対象の機能特性を決定するコンピュータプログラムが決定され、前記コンピュータプログラムは、前記コンピュータプログラムが前記システムを制御するコンピュータ上で実行される場合に、請求項1に記載のシステムに請求項12に記載の方法のステップを実行させるプログラムコード手段を有する。
【0029】
請求項1に記載のシステム、請求項12に記載の方法及び請求項13に記載のコンピュータプログラムが、従属請求項において規定される同様の及び/又は同一の好適な実施例を持つと理解されるべきである。本発明の好適な実施例が、前記従属請求項のいかなる組み合わせであることもできると理解されるべきである。
【0030】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施例を参照して説明され、明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】対象の機能特性を決定するシステムの一実施例を概略的に示す。
【図2】対象と、前記対象の機能特性を決定するために前記対象に接触された前記システムのタグとを概略的に示す。
【図3】対象の機能特性を決定する方法の一実施例を示すフローチャートを示す。
【図4】対象の機能特性を決定する方法の他の実施例を示すフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、この実施例において、患者17の人間の心臓である動く対象2の機能特性を決定するシステム1を概略的に示す。患者17は、患者台18上に配置される。この実施例においてペーサ電極3である動き作用素子3を有するカテーテル9は、患者17に挿入され、ペーサ電極3は、図2に概略的に示されるように、右心室15、左心室16及び右心房19の壁、特に心内膜(内壁)に付着される。ペーサ電極3は、右心室15、左心室16及び右心房19の動きに追随するように右心室15、左心室16及び右心房19の壁に付着され、したがって接触されたタグである。
【0033】
図2において、人間の心臓が概略的に示される。図2において、参照符号20は左心耳を示し、参照符号21は肺動脈幹を示し、参照符号22は下大静脈を示し、参照符号23は大動脈を示す。
【0034】
システム1は、この実施例において、空間的及び時間的にタグ3を撮像するX線投影装置6、8、7を含む動き決定装置4を更に有する。前記動き決定装置は、タグ3を示す蛍光透視X線投影像からタグ3の動きを決定するように構成される。前記X線投影装置は、X線生成源6と、X線検出ユニット7と、前記X線投影装置を制御し、前記X線投影像からタグ3の動きを決定する制御ユニット8とを有する。制御ユニット8の2つの機能、すなわち前記X線投影装置の制御及び前記X線投影像からの前記タグの動きの決定は、他の実施例において、2つの別個のユニット、すなわち前記X線投影装置を制御する第1のユニット及び前記X線投影像から前記タグの動きを決定する第2のユニットにより実行されることができる。
【0035】
前記X線投影装置は、既に上で述べられたように、ペーサ電極3を撮像し、X線投影装置4を制御する制御ユニット8は、これらの電極3の画像からペーサ電極3の動きを決定する。特に、制御ユニット8は、ペーサ電極3の動きを表す動きベクトル場を決定する。
【0036】
システム1は、電気リード24を介してカテーテル9及び前記ペーサ電極を制御するカテーテル制御ユニット10を更に有し、この実施例において、前記ペーサ電極はタグ3である。特に、カテーテル制御ユニット10は、ペーサ電極、特に電流のアンペア数及び周波数を適合する適合装置11と、ペーサ電極3を位置調整する位置調整装置12とを有する。
【0037】
システム1は、ペーサ電極3の前記決定された動きから、すなわちペーサ電極3の動きを表す前記決定された動きベクトル場から心臓2の機能特性を決定する機能特性決定装置5を更に有する。機能特性決定装置5は、好ましくは、心同期の度合、特に心臓の右心室の動きと左心室の動きとの間の同期の度合が、前記ペーサ電極の前記動きベクトル場から決定されるように構成される。更に、好ましくは、心拍出量も、ペーサ電極3の前記動きベクトル場から決定される。
【0038】
前記決定された機能特性は、ペーサ電極3の視覚化と同時に前記決定された機能特性を示すモニタのような視覚化ユニット13上に視覚化される。特に、この実施例において、視覚化ユニット13は、人間の心臓2の前記決定された機能特性により重ねられた、特に前記決定された同期の度合及び心拍出量により重ねられたペーサ電極3のX線投影像を示す。これは、ペーサ電極3の位置と前記心臓の前記決定された機能特性との間の直接的な相関をユーザに与える。加えて、好ましくは、ペーサ電極3の動きを表す前記決定された動きベクトル場も、ペーサ電極3の前記X線投影像上に重ねられる。
【0039】
前記動きベクトル場は、X線投影における前記タグの絶対的又は相対的な2次元時空間的変位として決定されることができる。相対的変位は、多数のタグ間で、複数の心周期にわたり追跡されたタグ間で、ペーシングアルゴリズムの処置中及び/又は修正(例えばペーシングオン/オフ)中に再配置されるタグ間で測定されることができる。前記時空間的変位、したがって前記動きベクトル場は、グラフに又は前記X線画像上の色分けされたオーバレイとして表示されることができる。例えば、右心室及び左心室内に配置された2つのタグは、例えば収縮、拡張、回転又は心室/心尖揺動により、互いに向かって/互いから離れるように同期して動く場合に、緑の線で囲まれることができる。例えば、右心室タグが初めに動き始め、次いで左心室タグが後に続く場合に、異なる色が使用されることができ、これは、作動の遅延、したがって非同時発生を示す。
【0040】
前記システムは、カテーテル制御ユニット10と、前記X線投影装置を制御し、前記タグの動きを決定する制御ユニット8と、機能特性決定装置5とを制御するシステム制御ユニット14により制御される。
【0041】
以下、本発明による動く対象の機能特性を決定する方法が、図3に示されるフローチャートを参照して記載される。
【0042】
ペーサ電極3が心臓の左心室16及び右心室15に既に付着されていると仮定する。ステップ101において、この実施例においては前記X線投影装置を有する動き決定装置4は、ペーサ電極3の蛍光透視投影像を生成し、これらの生成された投影像から、左心室16及び右心室15に接続されたペーサ電極3の動きを決定し、すなわちペーサ電極3は、前記X線投影装置を使用することにより時間的及び空間的に追跡される。ペーサ電極3の前記決定された動きは、機能特性決定装置5に転送される動きベクトル場により表わされる。
【0043】
ペーサ電極3は、好ましくは、最小短縮(minimal foreshortening)で視覚化される。したがって、ペーサ電極3が、他方の側より長い側を持つ場合、前記放射線源は、好ましくはこの長い側が前記放射線源の光線と平行になるようにペーサ電極3に対して配置される。
【0044】
ステップ102において、機能特性決定装置5は、ペーサ電極3の動きを表す動きベクトル場から、人間の心臓2の機能特性を決定する。この実施例において、前記機能特性決定装置は、心臓の度合、特に左心室16及び右心室15の同期の度合及び加えて心拍出量を決定する。
【0045】
例えば、前記左心室に接触された、特に前記左心室の側壁に接触されたタグ、及び前記右心室に接触された、特に前記右心室の隔壁に接触されたタグが、同時に動きを開始及び終了し、特に同じ距離にわたり互いに向かって同じ速度で動く場合、機能特性決定装置5は、同期の高い度合、及びこの実施例において高い心拍出量を決定する。機能特性決定装置5は、全心周期にわたる前記タグの動きを考慮することができる。この場合、前記機能特性決定装置は、右心房19に接触されたタグが心基部に向かって動く場合、次いで右心室15に接触されたタグ及び左心室15に接触されたタグが前記心基部に向かって動く場合(心収縮)、次いで右心房に接触されたタグが前記心基部に向かって動く場合、次いで右心室15に接触されたタグ及び左心室16に接触されたタグが前記心基部から離れるように動く場合(心臓拡張)に、同期の高い度合、及びこの実施例において高い心拍出量を決定する。
【0046】
対照的に、例えば、右心房19に接触されたタグが動き始める場合、この動きが、右心室15に接触された、特に右心室15の隔壁に接触されたタグの動きにより追随される場合、及びこの動きが、左心室16に接触された、特に左心室16の側壁に接触されたタグの動きにより最終的に追随される場合、機能特性決定装置5は、同期の低い度合、及びこの実施例において低い心拍出量を決定する。
【0047】
他の例において、右心室15に接触された、特に右心室の隔壁に接触されたタグが、心収縮、すなわち心臓収縮の開始時に動き始める場合、及び左心室16に接触された、特に右心室16の側壁に接触されたタグも、心収縮の開始時に動き始めるが、右心室15に接触されたタグと同じ方向である場合、心臓は、全く又は弱くしか収縮しておらず、血液は、全く又は弱くしか心臓から押し出されず、したがって心拍出量は低い。これは、同期の低い度合とも見なされる。
【0048】
他の例において、機能特性決定装置5は、第一に右心室に接触された、特に右心室の隔壁に接触されたタグが動く場合、時間遅延とともに左心室に接触された、特に左心室の側壁に接触されたタグも同じ方向に動き始め、すなわち心臓の効果的な収縮がまだ無い場合、次いで前記左心室に接触されたタグが前記右心室に接触されたタグに向かって動き、すなわち実際の収縮の場合、次いで前記右心室に接触されたタグが前記左心室に接触されたタグと再び同じ方向に動き、すなわち効果的な収縮が無い場合、これが、前記左心室及び右心室に接触されたタグがもはや動かない静止段階により追随される場合に、同期の低い度合を決定する。
【0049】
前記ペーサ電極の動きは、好ましくは、少なくとも1心周期にわたる前記機能特性を決定するために、少なくとも1心周期にわたり追跡される。心電図は、例えば、特定の心位相において動きを決定し、前記特定の心位相における動きを健康な人の心臓の動き、例えば、期待される収縮(心収縮)又は期待される拡張(心臓拡張)と比較するために、決定された動きを特定の心位相に割り当てるのに使用されることができる。
【0050】
ステップ103において、人間の心臓2の前記決定された機能特性、前記X線投影装置により生成された前記投影像及び前記動きベクトル場は、視覚化ユニット13に転送され、視覚化ユニット13は、前記決定された機能特性により重ね合わせられ、及び好ましくは前記決定された動きベクトル場により重ね合わせられた蛍光透視投影像である前記生成された投影像を視覚化する。異なる心位相における決定された動きは、好ましくはカラーキネシスにより色付けされる。
【0051】
以下、本発明による動く対象の機能特性を決定する方法の他の実施例が、図4に示されるフローチャートを参照して記載され、これは、対象の機能特性を決定することを可能にするのみならず、前記対象の機能特性に作用することをも可能にする。
【0052】
動き作用素子であるペーサ電極3が、左心室16、右心室15及び右心房19の動きにそれぞれ追随するように左心室16、右心室15及び右心房19における初期位置に配置されると仮定する。ステップ201ないし203において、機能特性、この実施例においては心同期の度合、特に左心室16及び右心室15の同期の度合及び心拍出量は、ペーサ電極3の動きベクトル場から決定され、視覚化ユニット13において視覚化される。ステップ201ないし203は、ステップ101ないし103と同様であるので、ステップ201ないし203における人間の心臓2の機能特性の決定及び視覚化の記載に対して、ステップ101ないし103の上記記載が参照される。
【0053】
ステップ204において、1つ又は複数の前記決定された機能特性が十分であるかどうか、すなわち例えば前記1つ又は複数の機能特性が所定の閾値より上であるのか又は下であるのか、又は所定の範囲内であるのか、ステップ202において決定された前記機能特性に依存して最大化されるのか又は最小化されるのかが決定される。この実施例において、左心室16及び右心室15の同期の度合、及び前記心拍出量は、ステップ202において決定される。更に、この実施例において、心同期の度合、特に心同期の度合及び好ましくは心拍出量は、最大化されなくてはならない。心同期の最大化された度合及び好ましくは最大化された心拍出量が、達成された場合、又は前記心同期の度合及び好ましくは前記心拍出量が、所定の閾値より上である場合、前記方法はステップ205において終了する。心同期の最大の度合及び好ましくは最大の心拍出量がまだ達成されていない場合、又は前記心同期の度合及び好ましくは前記心拍出量が所定の閾値より上ではない場合、前記方法はステップ206に続行する。
【0054】
ステップ206において、ペーサ電極3の少なくとも1つ、特に左心室16に付着されたペーサ電極の1つの位置が、位置調整装置12により修正される。他の実施例において、代わりに又は加えて、前記ペーサ電極のアンペア数及び/又は周波数又は他の特性が、適合装置11により修正されることができる。
【0055】
ペーサ電極3の少なくとも1つの位置が修正された後に、この実施例においては、ペーサ電極3の前記修正された位置に対する心同期の度合、及び特に心拍出量を決定するために、及びこれらの機能特性がここでステップ204の条件を満たすかどうかを決定するために、ステップ201ないし204が繰り返される。この場合、前記方法は、ステップ205において終了する。そうでなければ、前記方法は、再びステップ206に続行する。
【0056】
好適な実施例において、前記X線投影装置は、前記動き作用素子が第1の作用状態にある間に第一に時間的な投影像、すなわち第1の蛍光透視投影像を生成し、前記動き作用素子が第2の作用状態にある間に第2の時間的な画像、すなわち第2の蛍光透視画像を生成する。特に、前記動き作用素子が、前記ペーサ電極のようなペーシング素子である場合、前記第1の作用状態の間に、前記ペーシング素子は作動され、すなわち前記ペーシング素子が前記対象をペーシングし、前記第2の作用状態の間に、前記ペーシング素子は停止され、すなわち前記対象をペーシングしない。前記動き決定装置は、前記第1の作用状態に対応する前記タグの第1の動き及び前記第2の作用状態に対応する前記タグの第2の動きを決定する。前記第1の及び第2の動きは、好ましくは、第1の及び第2の動きベクトル場により表わされる。前記第1の動きベクトル場及び前記第2の動きベクトル場は、前記対象の前記機能特性に対する前記動き作用素子の作用を決定するために、前記第1の作用状態における前記対象の第1の機能特性及び前記第2の作用状態における第2の機能特性を決定するのに使用される。
【0057】
本発明は、器官の機能情報を決定するインターベンション処置において使用されることができる。この機能情報又は機能特性は、本発明によると、前記器官に接触されたタグが前記器官の動きに追随するように前記器官に接触されたタグを視覚化することのみが必要とされるので、それぞれの器官自体を視覚化することができないX線撮像装置のみが存在する場合でさえも決定されることができる。しかしながら、本発明は、X線を使用する前記タグの動きの決定に限定されない。使用される撮像装置において可視であるタグが使用される限り、他の撮像モダリティ、例えば超音波又は磁気共鳴撮像装置も、前記タグの動きを決定するのに使用されることができる。
【0058】
CRTにおいて、一般に、ペーサ電極のようなペーシング素子及びX線撮像装置は、好ましくは心臓の左心室及び右心室において前記ペーシング素子を位置調整するのに使用される。本発明は、好ましくは、他の撮像装置を必要とせずに心臓の機能特性、特に心同期の度合及び好ましくは心拍出量を決定するのにこれらの素子、すなわち前記ペーシング素子及び前記X線撮像装置を使用する。
【0059】
上記のX線投影装置の代わりに又は加えて、回転式X線システムが、前記タグの動き、特に第1の作用状態と第2の作用状態との間の前記タグの変位のより詳細な3次元情報を得るのに使用されることができる。代わりに又は加えて、制御された様式で小刻みに動かされることができるX線システムが、深度分解されたタグを追跡するために使用されることができる。前記タグの動きが3次元的に決定される場合、前記機能特性決定ユニットは、前記3次元の決定された動きから3次元機能特性を決定するように構成されることができる。前記タグの動きは、超音波撮像装置、磁気共鳴撮像装置又はコンピュータ断層撮影装置のような他の機能的撮像モダリティから得られることができるモデル情報が使用される場合に、より正確に決定されることができる。
【0060】
前記投影像は、好ましくは、息止め状態において取得される。他の実施例において、呼吸動き補償は、前記X線画像が息止め状態の下で取得されない場合でさえも、前記患者の呼吸動きにより妨害されない機能特性を得るために、例えば、制御ユニット8により実行されることができる。
【0061】
上述の実施例において、前記動き決定装置は、前記タグを撮像し、X線画像から前記タグの動きを決定するX線撮像装置を含むが、他の撮像モダリティも、前記タグが使用される撮像モダリティにおいて可視である限り、前記タグの動きを決定するのに使用されることができ、例えば、前記動き決定装置は、前記タグの動きを決定するのに磁気共鳴撮像装置を使用することができる。
【0062】
上記の実施例において、前記タグの動きは、前記タグを示す画像を解析することにより決定されるが、前記タグを追跡する他の方法も、前記タグの動きを決定するのに使用されることができる。例えば、電場又は磁場に基づく追跡システムを用いて前記タグを追跡することも可能である。
【0063】
上記の実施例において、主に心臓の機能特性が決定されているが、本発明は、他の器官又は技術的対象から機能特性を得るのに使用されることができる。本発明は、タグが対象の動きに追随するように前記タグにより接触可能である前記対象に対して使用されることができ、前記タグの動きは、前記動き決定ユニットにより決定されることができ、前記対象の機能特性は、前記タグの前記決定された動きから前記機能特性決定装置により決定されることができる。
【0064】
上記の実施例において、タグは左心室及び右心室及び右心房に接触されるが、タグは、心臓の他の部分に又は例えば左心室及び右心室のみに接触されることもできる。
【0065】
上記の実施例において、前記機能特性決定装置は、前記タグの動きを表す動きベクトル場から機能特性を決定したが、本発明は、動きベクトル場からの機能特性の決定に限定されない。前記機能特性決定装置は、この動きの特定の表現にかかわらず、前記タグの空間的及び時間的に追跡された動きのみを必要とする。
【0066】
上記のユニット又は装置の一部又は全ては、1つ又は複数のユニット又は装置により実施されることができる。例えば、制御ユニット8及び機能特性装置5は、1つのユニットのみにより実施されることができる。更に、例えば、前記タグの動きを決定する制御ユニット8及び前記機能特性決定装置の一部のような計算及び/又は決定を実行するユニット又は装置は、それぞれの機能を実行し、それぞれの機能を実行するコンピュータシステム又は専用ハードウェア上で実行されることができるプログラムコード手段であることができる。
【0067】
開示された実施例に対する他の変形例は、図面、開示及び添付の請求項の検討から、請求された発明を実施する当業者により理解及び達成されることができる。
【0068】
本発明は、図面及び先の記載において詳細に図示及び記載されているが、このような図示及び記載は、実例的又は典型的であり、非限定的であると見なされるべきである。本発明は、開示された実施例に限定されない。
【0069】
請求項において、単語"有する"は他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞"1つの"は複数を除外しない。例えば、請求項1において、前記システムは、対象の動きに追随するように前記対象に接触可能である2以上のタグをも有することができる。更に、請求項1の機能特性決定装置は、前記1つ又は複数のタグの前記決定された動きから前記対象の2以上の機能特性を決定するように構成されることができる。
【0070】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又は一部として供給される光記憶媒体又は半導体媒体のような適切な媒体において記憶/分配されることができるが、インターネット又は他の有線若しくは無線電機通信システムを介するような他の形式で分配されることもできる。
【0071】
請求項内の参照符号は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動く対象の機能特性を決定するシステムにおいて、
前記対象の動きに追随するように前記対象に接触可能なタグと、
前記タグの動きを決定する動き決定装置と、
前記タグの前記決定された動きから前記対象の機能特性を決定する機能特性決定装置と、
を有するシステム。
【請求項2】
前記機能特性決定装置が、前記タグの前記決定された動きから前記対象の動きを決定し、前記対象の前記決定された動きから前記対象の前記機能特性を決定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記動く対象が、第2の対象内の第1の対象であり、前記タグが、前記第1の対象の動きに追随するように前記タグを前記第1の対象に接触させるように前記第2の対象に挿入可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記動く対象が、動いている心臓であり、少なくとも1つの第1のタグが、前記心臓の右心室に接触可能であり、少なくとも1つの第2のタグが、前記心臓の左心室に接触可能であり、前記動き決定装置が、前記少なくとも1つの第1のタグ及び前記少なくとも1つの第2のタグの動きを決定する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記機能特性決定装置が、前記少なくとも1つの第1のタグ及び前記少なくとも1つの第2のタグの前記決定された動きから前記心臓の前記右心室の動きと前記左心室の動きとの間の同期の度合を決定する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記機能特性決定装置が、前記少なくとも1つの第1のタグ及び前記少なくとも1つの第2のタグの前記決定された動きから心拍出量を決定する、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記システムが、前記対象の動きに作用する動き作用素子を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記システムが、前記対象の前記決定された機能特性が最大化されるように前記動き作用素子を適合する適合装置を有する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記システムが、前記対象の前記決定された機能特性が最大化されるように前記動き作用素子を位置調整する位置調整装置を有する、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記動き作用素子が、少なくとも第1の作用状態と第2の作用状態との間で変化可能であり、前記動き決定装置及び前記動き作用素子は、前記動き作用素子が前記第1の作用状態にある場合に前記タグの第1の動きが決定され、前記動き作用素子が前記第2の作用状態にある場合に前記タグの第2の動きが決定されるように制御可能であり、前記機能特性決定装置は、前記対象の前記機能特性に対する前記動き作用素子の作用を決定するために、前記機能特性が、少なくとも2回、すなわち前記タグの前記第1の動きから1回及び前記タグの前記第2の動きから1回決定されるように制御可能である、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムが、前記タグの視覚化と同時に前記対象の前記決定された機能特性を視覚化する視覚化ユニットを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
動く対象の機能特性を決定する方法において、
前記対象の動きに追随するように前記対象に接触可能なタグを提供するステップと、
前記タグの動きを決定するステップと、
前記タグの前記決定された動きから機能特性を決定するステップと、
を有する方法。
【請求項13】
動く対象の機能特性を決定するコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータプログラムが請求項1に記載のシステムを制御するコンピュータ上で実行される場合に、前記システムに請求項12に記載の方法のステップを実行させるプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−532670(P2010−532670A)
【公表日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549874(P2009−549874)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際出願番号】PCT/IB2008/050437
【国際公開番号】WO2008/099304
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】