説明

動作制御装置及び動作制御方法

【課題】コストや消費電力の増大を生じさせず、ユーザの意図による音声とユーザの意図によらない雑音とを区別する。
【解決手段】VOX回路1は、マイクロホンの出力信号を所定の時間単位(4[ms])で区切り、区切られた出力信号に基づいて音の大きさに対応した出力信号の値を所定の時間単位別に算出し、出力信号の値を予め定められた閾値と比較し、出力信号の値が閾値を上回る場合に出力信号の値とその直前の所定の時間単位の出力信号の値とを比較し、3回数以上連続して前記出力信号の値がその直前の所定の時間単位の出力信号の値を下回らず、かつ、5回以上連続して前記出力信号の値が閾値を上回った場合にVOX送信を行うCPU5を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作制御装置及び動作制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、音声の入力を伴う機器(例えば無線通信装置やボイスレコーダ等)における省電力技術の一つとして、音声の検出に基づく動作制御の技術がある。音声の検出に基づく動作制御の技術は、マイクロホン等の音声入力部を介して行われる出力信号の入力を検出したときに機器又は機器の一部の電源を自動的にONとし、出力信号の検出がないとき又は音声の検出が終了してから所定の時間後に機器又は機器の一部の電源を自動的にOFFとする技術である。
音声の検出に基づく動作制御のうち、特に、無線通信機器において用いられる動作制御をVOX(Voice Operated Transmitter)と呼ぶ。以下、音声の検出に基づく動作制御の一例としてVOXについて記載する。
【0003】
図8は、従来のVOX回路100の主要構成を示すブロック図である。
図8に示すVOX回路100は、無線通信機器において音声の検出に基づく動作制御を行うための回路である。VOX回路100は、図8に示すように、マイクロホン2(図8のMIC2)、増幅器3(図8のAMP3)、検波平滑回路4(図8のDET4)、及びCPU5(Central Processing Unit)を備える。
【0004】
マイクロホン2は、音を電気信号(以下「出力信号」と記載)に変換して出力する。マイクロホン2からの出力信号は、増幅器3へ入力される。
増幅器3は、マイクロホン2からの出力信号を増幅して出力する。増幅された出力信号は、検波平滑回路4へ入力される。
検波平滑回路4は、増幅回路から入力される増幅された出力信号の検出及び検出された出力信号の平滑を行い、平滑後の出力信号を出力する。平滑後の出力信号は、CPU5へ入力される。
【0005】
CPU5は、平滑後の出力信号をアナログ/デジタル変換(以下「A/D変換」と記載)し、デジタル化された出力信号を得る。そして、デジタル化された出力信号の値が予め定められた閾値を上回るか否か判定する。ここで、デジタル化された出力信号の値は、音の大きさを示す。即ち、CPU5は、予め定められた閾値に基づくレベルを上回る大きさの音を検出したか否かを判定する。
【0006】
デジタル化された出力信号の値が予め定められた閾値を上回る場合、CPU5は、VOX送信を行う。VOX送信は、無線通信機器の送信機(図示略)の電源をONにするための信号を出力する処理である。送信機の電源をONにするための信号は、図8に示す端子TXを介して送信機の電源ON/OFFを切り替える構成へ入力される。電源ONとなった送信機は起動する。起動した送信機によって無線通信装置による音声の送信が可能となる。
デジタル化された出力信号の値が予め定められた閾値を超えない場合、送信機の電源はONされない。即ち、送信機はOFFのままであり、無線通信装置による音声の送信は行われない。
【0007】
無線通信装置のユーザは、音声、特に肉声の送信を行いたい場合に肉声を発してマイクロホンにその肉声を入力する。ユーザが肉声を発すると、VOX回路100はVOX送信を行い、送信機の電源をONにする。これによって、ユーザは肉声を発することでその肉声を送信機により送信することができる。
【0008】
ところが、ユーザの意図によらない音がマイクロホン2に入力されてしまう場合がある。ユーザの意図によらない音とは、例えばVOX回路100を有する無線通信機器が外部の何かと衝突した場合や、無線通信機器が備える機械スイッチを操作した場合等に生じる音(機械的衝突音)である。このようなユーザの意図によらない音がマイクロホン2に入力されると、その音によってVOX送信が生じ、送信機の電源がONとなってしまう場合がある。
単発的な衝突音に対して反応しないように、ある一定時間連続して閾値を超えるという条件を満たした場合送信するという方法としても、機械的衝突音が単発的に生じた場合、筐体の固有振動数により残響音が生じるため、閾値を上記一定時間以上連続して超えて検出してしまう場合がある。
つまり、ユーザの意図によらず送信機の電源がONとなってしまう場合がある。
【0009】
ユーザの意図によらない送信機の動作は、電力を無駄に消費させる。特に、電池により駆動する携帯型の無線通信機器において、電力の無駄な消費は利用可能時間の短縮をもたらし、無線通信機器の利便性を下げる。
【0010】
加えて、ユーザの意図によらない送信機の動作は、意図しない音声(雑音等)の送信を伴う。
雑音等の受信は受信者に不快感をもたらすことがある。
また、受信者は、受信した雑音について、単なる雑音なのか、それとも送信者が意図した音声の送信中にノイズ等の雑音を伴ってしまったものなのか、明確に判断することができない場合がある。つまり、意図しない音声(雑音等)の送信を伴うユーザの意図によらない送信機の動作は、受信者を混乱させることがある。
【0011】
そこで、ユーザの意図による音声とユーザの意図によらない雑音とを区別する方法が提案されている。ユーザの意図による音声とユーザの意図によらない雑音とを区別する方法として、例えば、音声の周波数を測定し、その測定結果に基づいて入力された音声がユーザの意図による音声であるか否かを判別する方法がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−38894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、音声の周波数の測定及び周波数の分析結果に基づく音声の判別を行うための構成を必要とする。当該構成の追加は、コストや消費電力が増大する問題点を生じさせる。
【0014】
例えば、音声の周波数の測定及び周波数の分析結果に基づく音声の判別を行うための構成を別装置で設ける場合、部品数が増えることによって無線通信装置のコストが増大する上、装置が複雑化、大型化する。加えて、音声の周波数の測定及び周波数の分析結果に基づく音声の判別を行うための構成自体が電力を消費するため、VOXにかかる電力消費が増大し、VOXの利点のひとつである省電力性能が低下する。
【0015】
他に、音声の周波数の測定及び周波数の測定結果に基づく音声の判別を行うための構成をソフトウェア処理で行う方法が考えられるが、この場合、周波数の測定処理や測定結果に基づく音声の判別処理によってCPU5の処理負荷が大きくなるため、高い処理能力を有するCPUが必要となる。
一般的に、CPUは処理能力の高さに応じてコストが上がる。このため、ソフトウェア処理で音声の判別を行う場合、VOX回路100のコストが増大する。加えて、CPUは処理能力の高さに応じて消費電力が大きくなる傾向がある。このため、ソフトウェア処理で音声の判別を行う場合、VOX回路100の消費電力が増大する。
【0016】
前述の問題点は、無線通信装置におけるVOX回路100に限らず、音声の検出に基づく動作制御を行う全ての機器について生じ得る問題点である。
【0017】
本発明の課題は、コストや消費電力の増大を生じさせず、ユーザの意図による音声とユーザの意図によらない雑音とを区別することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、マイクロホンの出力信号に基づいて機器の電源のON/OFFを切り替える動作制御装置であって、前記出力信号を所定の時間単位で区切り、区切られた出力信号に基づいて音の大きさに対応した出力信号の値を前記所定の時間単位別に算出し、前記出力信号の値を予め定められた閾値と比較し、前記出力信号の値が前記閾値を上回る場合に前記出力信号の値とその直前の所定の時間単位の出力信号の値とを比較し、前記所定の時間単位で第一の所定回数以上連続して前記出力信号の値がその直前の所定の時間単位の出力信号の値を下回らず、かつ、前記所定の時間単位で第二の所定回数以上連続して前記出力信号の値が前記閾値を上回った場合に前記機器の電源をONにする制御部と、を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の動作制御装置であって、前記所定の時間単位は、前記第一の所定回数以上連続して前記出力信号の値がその直前の所定の時間単位の出力信号の値を下回るか否かに基づいて肉声と機械的衝突音とを区別することができる時間単位であり、前記第一の所定回数は、前記第一の所定回数以上連続して前記出力信号の値がその直前の所定の時間単位の出力信号の値を下回るか否かに基づいて肉声と機械的衝突音とを区別することができる回数であることを特徴とする。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の動作制御装置であって、前記動作制御装置はVOX制御装置であることを特徴とする。
【0021】
請求項4に記載の発明は、マイクロホンの出力信号に基づいて機器の電源のON/OFFを切り替える動作制御方法であって、前記出力信号を所定の時間単位で区切り、区切られた出力信号に基づいて音の大きさに対応した出力信号の値を算出する工程、前記所定の時間単位の出力信号の値を予め定められた閾値と比較する工程、前記出力信号の値が前記閾値を上回る場合に前記出力信号の値とその直前の所定の時間単位の出力信号の値とを比較する工程、前記所定の時間単位で第一の所定回数以上連続して前記出力信号の値がその直前の所定の時間単位の出力信号の値を下回らず、かつ、前記所定の時間単位で第二の所定回数以上連続して前記出力信号の値が前記閾値を上回った場合に前記機器の電源をONにする工程、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、コストや消費電力の増大を生じさせず、ユーザの意図による音声とユーザの意図によらない雑音とを区別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態であるVOX回路の主要構成を示すブロック図である。
【図2】肉声によって生じる出力信号の一例を示す説明図である。
【図3】機械スイッチのクリック音によって生じる出力信号の一例を示す図である。
【図4】機器が外部の構造物と衝突した場合に生じる衝突音によって生じる出力信号の一例を示す図である。
【図5】図2の肉声によって生じる出力信号を4[ms]単位で区切った一例を示す説明図である。
【図6】図3に示す立ち上がりP1付近の出力信号を4[ms]単位で区切った一例を示す説明図である。
【図7】本実施形態のVOX回路によるVOXの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図8】従来のVOX回路100の主要構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態であるVOX回路1の主要構成を示すブロック図である。
本発明の一実施形態であるVOX回路1は、図8に示すVOX回路100と同様に、マイクロホン2、増幅器3、検波平滑回路4及びCPU5を備える。VOX回路1が備えるマイクロホン2、増幅器3、検波平滑回路4及びCPU5は、図8に示すマイクロホン2、増幅器3、検波平滑回路4及びCPU5と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0026】
図2は、肉声によって生じる出力信号の一例を示す説明図である。
マイクロホン2は、肉声によって生じる音声の入力を受けると、図2に示すような出力信号を出力する。
【0027】
出力信号は、肉声以外の音、例えば機械的衝突音によっても出力される。以下、図3及び図4に機械的衝突音の一例を示す。
図3は、機械スイッチのクリック音によって生じる出力信号の一例を示す図である。
図3に示す出力信号の波形において、立ち上がりP1は機械スイッチを押下したときの音であり、立ち上がりP2は機械スイッチが押下された状態から開放されて立ち戻るときの音である。
図4は、機器が外部の構造物と衝突した場合に生じる衝突音によって生じる出力信号の一例を示す図である。
これらの機械的衝突音は、筐体の固有振動数による残響が生じ、初期の振幅が徐々に減衰していく特性となる。
【0028】
図2、図3及び図4に示すように、肉声による出力信号の他に、機械スイッチの押下操作に伴うクリック音によって生じる出力信号や機器が外部の構造物と衝突した場合に生じる衝突音によって生じる出力信号等、肉声によらない出力信号であっても出力信号の値が所定の閾値Bを上回ることがある。
【0029】
ここで、出力信号の波形が立ち上がる際の出力信号の値の変化を所定の時間単位(例えば4[ms]単位)で区切り、区切られた出力信号の値をその直前の出力信号の値と比較する。
図5は、図2の肉声によって生じる出力信号を4[ms]単位で区切った一例を示す説明図である。
図6は、図3に示す立ち上がりP1付近の出力信号を4[ms]単位で区切った一例を示す説明図である。
図6に示すように、出力信号の波形の立ち上がりP1の場合、出力信号の値は立ち上がり時にピークとなり、その後減衰し続ける。立ち上がり時にピークとなり、その後減衰し続ける出力信号のパターンは、立ち上がりP1に限らず、立ち上がりP2や図4に示す機器が外部の構造物と衝突した場合に生じる単発的な衝突音によって生じる出力信号においても同様である。つまり、機械スイッチの押下操作に伴うクリック音によって生じる出力信号や機器が外部の構造物と衝突した場合に生じる衝突音によって生じる出力信号を所定の時間単位で区切った場合の出力信号の値は、出力信号の立ち上がり後、筐体の固有振動数による残響効果で直前の出力信号の値に比して小さくなり続ける。
【0030】
一方、図5に示すように、肉声による出力信号の場合、出力信号の値は直前の出力信号の値に対して小さくなるとは限らない。例えば、図5に示すように、8[ms]の出力信号や16[ms]の出力信号の値は、その直前の出力信号の値に対して大きくなっている。
【0031】
本実施形態のVOX回路1は、出力信号を所定の時間単位に区切った場合の出力信号の値の変化パターンの違いに基づいて、VOX送信を行うか否かを決定する処理を行う。
まず、CPU5は、出力信号を所定の時間(4[ms])ごとに区切る。そして、所定の時間単位で区切られた出力信号をA/D変換する。デジタル変換された出力信号は値として扱うことができ、出力信号の値はマイクロホン2に入力された音の大きさに対応する。
【0032】
次に、CPU5は、所定回数(第一の所定回数)以上連続で出力信号の値が直前の出力信号の値を下回っていないかを判定する。
「所定回数(第一の所定回数)以上連続で出力信号の値が直前の出力信号の値を下回っていない」とは、所定の時間単位で区切られた出力信号の値について、直前の出力信号の値を下回る所定の時間単位の出力信号の値が所定回数(第一の所定回数)に渡って連続していないことを示す。
【0033】
例えば、第一の所定回数として3[回]を用いた場合について記載する。図6に示す出力信号の場合、R1に対するR2、R2に対するR3、R3に対するR4の順で、出力信号の値が直前の出力信号の値を下回っているので、CPU5は、直前の出力信号の値を3回連続で下回ったと判定する。一方、図5に示す出力信号の場合、Q1に対するQ2、Q3に対するQ4のように、出力信号の値が直前の出力信号の値を上回っている出力信号の値があるので、CPU5は、直前の出力信号の値を3回連続で下回っていないと判定する。
【0034】
さらに、CPU5は、所定回数(第二の所定回数)以上連続で出力信号の値が閾値を上回っているか否かを判定する。
【0035】
「所定回数(第二の所定回数)以上連続で出力信号の値が閾値を上回っている」とは、所定の時間単位で区切られた出力信号の値について、閾値を上回る所定の時間単位の出力信号の値が所定回数(第二の所定回数)分連続することを示す。例えば、第二の所定回数として5[回]を用いた場合であって、4[ms]単位で区切られた出力信号の値を取り扱う場合、20[ms]に渡って連続する出力信号の値がそれぞれ閾値を上回っていることを示す。
【0036】
本実施形態では、所定の時間単位を4[ms]とし、第一の所定回数を3[回]とし、第二の所定回数を5[回]としているが、所定の時間単位、第一の所定回数及び第二の所定回数には、ユーザが任意の値を設定することができる。所定の時間単位、第一の所定回数及び第二の所定回数に設定される値は、機械スイッチの押下操作に伴うクリック音によって生じる出力信号や機器が外部の構造物と衝突した場合に生じる衝突音によって生じる出力信号が肉声と区別される範囲内で設定されることが望ましい。
【0037】
つまり、所定の時間単位は、第一の所定回数以上連続して出力信号の値がその直前の所定の時間単位の出力信号の値を下回るか否かに基づいて肉声と機械的衝突音とを区別することができる時間単位であり、第一の所定回数は、第一の所定回数以上連続して出力信号の値がその直前の所定の時間単位の出力信号の値を下回るか否かに基づいて肉声と機械的衝突音とを区別することができる回数であることが望ましい。
【0038】
ユーザは、閾値の設定を変えることによってVOX送信を行うトリガーとなる音の大きさ(感度)を調節することができる。例えば、高感度設定として、所定の閾値に対してより小さな閾値を設定することで、該所定の閾値に基づく動作制御の場合よりも小さな音によって電源をONにすることができる。逆に、低感度設定として、所定の閾値に対してより大きな閾値とすることで、電源をONとするために所定の閾値に基づく動作制御の場合よりも大きな音を要するようにすることができる。
【0039】
本実施形態による所定の時間単位で区切られた出力信号の値に基づくVOX送信の制御は、高感度設定において特に効果を発揮する。何故ならば、高感度設定である場合、他の感度設定の場合に比して、機械スイッチの押下操作に伴うクリック音によって生じる出力信号や機器が外部の構造物と衝突した場合に生じる衝突音によって生じる出力信号の値が閾値を超える可能性が高まるためである。従来のように、単に出力信号の値が閾値を超えた場合にVOX送信を行う方法では、高感度設定の場合に前述の問題がより生じやすかった。本実施形態では、高感度設定の場合であっても、機械スイッチの押下操作に伴うクリック音によって生じる出力信号や機器が外部の構造物と衝突した場合に生じる衝突音によってVOX送信が行われることはない。
本実施形態は、高感度設定に限らず、他の感度設定を用いる場合であってもVOX送信の制御を行うことができ、その効果を発揮する。
【0040】
以下、高感度設定である場合の処理の一例を示す。
図7は、本実施形態のVOX回路1によるVOXの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
まず、ユーザの操作によって感度の設定が高感度設定とされる(ステップS1)。その後、音がマイクロホン2から入力されると、増幅器3による増幅、検波平滑回路4による平滑を経てCPU5に出力信号が入力され、CPU5は出力信号をA/D変換する(ステップS2)。ステップS2において、CPU5は、所定の時間単位で出力信号をA/D変換し、出力信号の値を得る。
【0041】
ステップS2の処理後、CPU5はデジタル化された出力信号の値を閾値と比較する。そして、CPU5は、デジタル化された出力信号の値が閾値を上回っているか否かを判定する(ステップS3)。
【0042】
ステップS3において、出力信号の値が閾値を上回っている場合(ステップS3:YES)、CPU5は、3回連続で出力信号の値が直前の出力信号の値を下回っていないかを判定する(ステップS4)。ステップS4において、3回連続で出力信号の値が直前の出力信号の値を下回っていない場合(ステップS4:YES)、CPU5は、5回連続で出力信号の値が閾値を上回っているか否かを判定する。(ステップS5)。ステップS5において、5回連続で出力信号の値が閾値を上回っている場合(ステップS5:YES)、CPU5は、VOX送信を行う(ステップS6)。
【0043】
ステップS3において出力信号の値が閾値を上回っていない場合(ステップS3:NO)、ステップS4において3回連続で出力信号の値が閾値を下回った場合(ステップS4:NO)又はステップS5において5回連続で出力信号の値が閾値を上回っていない場合(ステップS5:NO)、CPU5は判定の終了した所定の時間単位の出力信号以降に出力信号の入力が続いているか否かを判定する(ステップS7)。ステップS7において、出力信号の入力が続いている場合(ステップS7:YES)、CPU5は、次の所定の時間単位の出力信号を処理対象とし(ステップS8)、ステップS2の処理へ戻る。ステップS7において、出力信号の入力が続いていない場合(ステップS7:NO)、CPU5は処理を終了する。
【0044】
図7に示すフローチャートでは、ステップS1において高感度設定とする手順を含んでいるが、必ずしも高感度設定である必要はなく、他の感度設定でもよい。
【0045】
以上のように、本実施形態によれば、3回連続で出力信号の値が直前の出力信号の値を下回らず、かつ、5回連続で出力信号の値が閾値を上回る場合に、CPU5はVOX送信を行う。これによって、VOX回路1は、マイクロホン2が肉声の入力を受けた場合にVOX送信を行うことができる。そして、VOX回路1は、マイクロホン2が機械スイッチのクリック音や機器が外部の構造物と衝突した場合に生じる衝突音の入力を受けた場合にVOX送信を行わない。つまり、本実施形態のVOX回路1は、肉声等のユーザの意図による音声と、機械スイッチのクリック音や機器が外部の構造物と衝突した場合に生じる衝突音等のユーザの意図によらない雑音とを区別してVOX送信の有無を制御することができる。
加えて、本実施形態は、肉声等のユーザの意図による音声と機械スイッチのクリック音や機器が外部の構造物と衝突した場合に生じる衝突音等のユーザの意図によらない雑音との区別に基づいてVOX送信の有無を制御するために、従来の構成に対してハードウェアの追加を必要としない。これによって、コストや消費電力の増大を生じさせずにユーザの意図による音声とユーザの意図によらない雑音とを区別してVOX送信の有無を制御することができる。
【0046】
さらに、所定の時間単位は、第一の所定回数以上連続して出力信号の値がその直前の所定の時間単位の出力信号の値を下回るか否かに基づいて肉声と機械的衝突音とを区別することができる時間単位であり、第一の所定回数は、第一の所定回数以上連続して出力信号の値がその直前の所定の時間単位の出力信号の値を下回るか否かに基づいて肉声と機械的衝突音とを区別することができる回数であるので、CPU5は、出力信号がユーザの意図による音声であるのかユーザの意図によらない雑音であるのかを良好に区別することができる。
【0047】
さらに、本実施形態はVOX送信を制御するVOX回路1であるので、無線通信装置における雑音の送信を良好に抑止することができる。
【0048】
前述の実施形態における記述は本発明の一例を示すものであり、本発明の実施形態を限定するものではなく、本発明の特徴を逸脱しない範囲での構成変更が可能である。
【0049】
例えば、本発明は、無線通信装置のVOX回路1に限らず、音声の検出に基づく動作制御を行う他の種類の機器に適用可能である。本発明を適用した別の機器の例として、本発明による音声と雑音との区別に基づく起動/終了の制御を行うボイスレコーダ等が挙げられる。
【符号の説明】
【0050】
2 マイクロホン
3 増幅器
4 検波平滑回路
5 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロホンの出力信号に基づいて機器の電源のON/OFFを切り替える動作制御装置であって、
前記出力信号を所定の時間単位で区切り、区切られた出力信号に基づいて音の大きさに対応した出力信号の値を前記所定の時間単位別に算出し、前記出力信号の値を予め定められた閾値と比較し、前記出力信号の値が前記閾値を上回る場合に前記出力信号の値とその直前の所定の時間単位の出力信号の値とを比較し、前記所定の時間単位で第一の所定回数以上連続して前記出力信号の値がその直前の所定の時間単位の出力信号の値を下回らず、かつ、前記所定の時間単位で第二の所定回数以上連続して前記出力信号の値が前記閾値を上回った場合に前記機器の電源をONにする制御部を備えることを特徴とする動作制御装置。
【請求項2】
前記所定の時間単位は、前記第一の所定回数以上連続して前記出力信号の値がその直前の所定の時間単位の出力信号の値を下回るか否かに基づいて肉声と機械的衝突音とを区別することができる時間単位であり、
前記第一の所定回数は、前記第一の所定回数以上連続して前記出力信号の値がその直前の所定の時間単位の出力信号の値を下回るか否かに基づいて肉声と機械的衝突音とを区別することができる回数であることを特徴とする請求項1に記載の動作制御装置。
【請求項3】
前記動作制御装置はVOX制御装置であることを特徴とする請求項1又は2に記載の動作制御装置。
【請求項4】
マイクロホンの出力信号に基づいて機器の電源のON/OFFを切り替える動作制御方法であって、
前記出力信号を所定の時間単位で区切り、区切られた出力信号に基づいて音の大きさに対応した出力信号の値を算出する工程、
前記所定の時間単位の出力信号の値を予め定められた閾値と比較する工程、
前記出力信号の値が前記閾値を上回る場合に前記出力信号の値とその直前の所定の時間単位の出力信号の値とを比較する工程、
前記所定の時間単位で第一の所定回数以上連続して前記出力信号の値がその直前の所定の時間単位の出力信号の値を下回らず、かつ、前記所定の時間単位で第二の所定回数以上連続して前記出力信号の値が前記閾値を上回った場合に前記機器の電源をONにする工程、を有することを特徴とする動作制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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