説明

動作玩具

【課題】車輪の回転動力を利用した動作玩具であって、車輪の回転・停止の際に被駆動体を動作させる動作玩具を提供すること。
【解決手段】車輪と、前記車輪の回転動力を動力源として動作する被駆動体と、前記車輪の回転動力を前記被駆動体に伝達する動力伝達機構と、前記動力伝達機構の構成部品の1つであって前記車輪が回転する際に前記動力伝達機構の他の構成部品同士を連結させて前記車輪の回転動力を前記被駆動体に伝達させるクラッチと、前記車輪の回転が停止する際に前記クラッチによって前記動力伝達機構の他の構成部品同士の連結が解除された場合に前記被駆動体を初期位置に復帰させる付勢手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作玩具に関するもので、詳しくは、被駆動体を備えた動作玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、電車玩具として、被駆動体として両開き扉を持つものが知られている。この電車玩具は、両開きの扉を構成する左右の扉片を有し、各扉片がそれぞれ別の扉開閉部材に付設され、2つの扉開閉部材を扉開閉ノブを手動で回動させることによって扉を開閉させるように構成されている。(例えば特許文献1)
【特許文献1】実開平2−106295号公報(図1,図2および図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の電車玩具は、扉開閉ノブを操作しないと扉を開閉させることができないため面倒である。特に、低年齢の幼児には、操作できないという問題がある。
【0004】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、車輪の回転動力を利用した動作玩具であって、車輪の回転・停止の際に被駆動体を動作させる動作玩具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の動作玩具は、車輪と、前記車輪の回転動力を動力源として動作する被駆動体と、前記車輪の回転動力を前記被駆動体に伝達する動力伝達機構と、前記動力伝達機構の構成部品の1つであって前記車輪が回転する際に前記動力伝達機構の他の構成部品同士を連結させて前記車輪の回転動力を前記被駆動体に伝達させる遠心クラッチと、前記車輪の回転が停止する際に前記クラッチによって前記動力伝達機構の他の構成部品同士の連結が解除された場合に前記被駆動体を初期位置に復帰させる付勢手段とを備えることを特徴とする。遠心クラッチを設けるにあたっては、動力伝達機構に加速歯車列を含めることが好ましい。加速歯車列によって遠心クラッチを効果的に動作させることができるからである。
【0006】
請求項2に記載の動作玩具は、請求項1に記載の動作玩具において、前記車輪が回転している時の前記被駆動体の動作範囲を規制する動作範囲規制手段が設けられ、前記動作範囲規制手段が働いている間、前記車輪の回転動力の前記被駆動体への伝達を遮断する他のクラッチが前記動力伝達機構の構成部品として設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の動作玩具は、請求項1又は2に記載の動作玩具において、前記被駆動体は扉であり、前記車輪の回転が停止している時に前記扉が開き、前記車輪が回転している時に前記扉が閉まるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の動作玩具は、請求項3に記載の動作玩具において、前記扉は両開き自在な対をなす扉片から構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、車輪の回転動力によって、被駆動体を動作させているので、特別な動力源を設ける必要がなくなる。
また、クラッチによって、車輪が回転する際に動力伝達機構の構成部品同士が連結されて車輪の回転動力が被駆動体に伝達され、被駆動体が所定の動作を行う。一方、車輪が停止する際には構成部品同士の連結が解除されて車輪の回転動力の被駆動体への伝達が遮断され、付勢手段によって被駆動体が初期位置に復帰する。その結果、簡単な機構でもって、動作玩具に2つの動作をさせることができる。この場合、クラッチは遠心クラッチであるため、車輪の回転・停止に完全には追従せずに、その回転・停止のタイミングとは少しずれたタイミングで被駆動体を動作させることができる。
【0010】
請求項2に記載の動作玩具によれば、動作範囲規制手段によって、車輪が回転し続ける時の被駆動体の動作範囲が規制される一方で、付勢手段によって、車輪の回転が停止する際に被駆動体が初期位置に戻されるので、車輪の回転・停止を1つのサイクルとする動作を被駆動体に行わせることができる。
【0011】
請求項3及び4に記載の動作玩具によれば、車輪の回転が停止する際に前記扉が開き、車輪が回転している時に扉が閉まるので、電車玩具やバス玩具に適用して好適なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明に係る動作玩具を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る動作玩具として、電車玩具を示した斜視図、図2は、その電車玩具の分解斜視図、図3は、その電車玩具の動力伝達機構を示した断面図、図4(a),(b)は、その動力伝達機構の構成部品である遠心クラッチの動作を示した断面図、図5は、扉片を備えた扉開閉部材を組み付けた状態の斜視図である。
【0013】
この電車玩具1は、図2に示したように、車両の下部を構成する本体下2と、車両の上部を構成する本体上3を有している。本体上3は、下方に開口する箱状を成し、両側面の各3箇所に矩形の開口4を有している。また、本体下2は、上方に開口する箱状を成しており、下部側面に車輪5を備えている。
【0014】
本体下2には、図2および図3に示したように、上下方向に延びる4本の軸6a〜6dが立設され、それらの軸6a〜6dの下部には、歯車7,8,9,10がそれぞれ回転自在に嵌合され、軸6d〜6aの上部には、歯車11,12,13,14が回転自在に嵌合されている。これらの歯車7〜10および11〜14のうち、歯車7〜9、12〜14は、いずれも大小の歯車を一体に備えている。そして、下段の歯車7〜10は、加速歯車列、即ち、歯車7の大径歯車が歯車8の小径歯車に噛合し、歯車8の大径歯車が歯車9の小径歯車に噛合し、歯車9の大径歯車が歯車10に噛合して、駆動側動力伝達機構を構成し、上段の歯車11〜14は、減速歯車列、即ち、歯車11が歯車12の大径歯車に噛合し、歯車12の小径歯車が歯車13の大径歯車に噛合し、歯車13の小径歯車が歯車14の大径歯車に噛合して、従動側動力伝達機構を構成している。このうち駆動側動力伝達機構は、車輪5の軸に固設された冠歯車5aと、該歯車に噛合する加速歯車列の最初の歯車7を介して車輪5に接続されている。
【0015】
そして、加速歯車列の最終の歯車10と、減速歯車列の最初の歯車11との間には、遠心クラッチ15が介在されている。この遠心クラッチ15は、動力伝達機構の一部を構成し、駆動側動力伝達機構と従動側動力伝達機構とを連結させる働きを持つ。
遠心クラッチ15は回転による遠心力でおもりがひろがることにより、クラッチ作用を行うものである。この遠心クラッチ15は次のように構成されている。すなわち、加速歯車列の最終の歯車10の端面には上面が斜に形成された軸筒16が付設されている。軸筒16の中心の穴には軸17が付設されている。軸17には、下面が斜に形成された軸筒18が付設されている。そして、この軸筒18にはおもりとなるアーム19が付設されている。
この遠心クラッチ15では、歯車10の回転速度が遅いとき(回転速度が0のときを含む)には、アーム19の重さによって軸筒16及び18の斜面同士が完全に重なり合う。このときにはアーム19は図4(a)に示すように最下位置にあり、歯車10の端面とアーム19との距離は最小となる。このとき、アーム19の基端上の突起19aが、歯車11下の2つのピン11aのいずれにも突き当たらないので、歯車10と11が連結されず、歯車10の回転動力は歯車11には伝達されない。一方、この遠心クラッチ15では、歯車10の回転速度が速くなると、アーム19は遠心力でひろがって軸筒16及び18の斜面の突出端(頂部)同士が重なり合う。このときにはアーム19は図4(b)に示すように最上位置にあり、歯車10の端面とアーム19との距離は最大となる。このとき、アーム19の基端上の突起19aが、歯車11下の2つのピン11aのいずれかに突き当たり、歯車10と11が連結されて共に回転することになる。
【0016】
さらに、本体下2には、図3に示したように、軸20が立設されている。この軸20には歯車21が回転自在かつ軸線方向に移動自在に付設されている。また、軸20には摩擦円板22が固定した状態に付設されている。そして、軸20に装着したスプリング23によって、歯車21が上方に向けて付勢され、歯車21の上面が摩擦円板22の下面に圧接され、それらによって滑りクラッチ24が構成されている。また、摩擦円板22の上面にはピン25が立設されている。
【0017】
以上の歯車機構は機構ボックス50(図2参照)に収納されている。この機構ボックス50の上面には、前記軸20と中心が合致する円弧状の孔51(図3及び図6参照)が設けられている。この孔51には前記ピン25が挿入されおり、摩擦円板22の回転に伴ってピン25は円弧状の孔51に沿って動作する。
【0018】
機構ボックス50の上にはスライド板34が設置されている(図3及び図6参照)。スライド板34は機構ボックス50の上面に対して電車玩具1の前後方向に摺動自在に設けられている。このスライド板34は機構ボックス50との間に掛けられたスプリング35によって電車玩具1の後方へ引かれている。また、スライド板34には電車玩具1の幅方向に延びる長孔34bが形成されている(図3及び図6参照)。この長孔34bには、円弧状の孔51に挿入されたピン25の上端部が挿入されている。そして、摩擦円板22が停止状態から回転状態に移行するとスライド板34はスプリング35の引っ張り力に打ち勝って前方へ移動するようにされている。このスライド板34の上には扉開閉部材26,27が重畳状態で設置されている。
【0019】
扉開閉部材26,27はそれぞれ略矩形状の基板によって形成されている。この扉開閉部材26,27には、基板の両側から下方に向けて伸びる各3つの扉片26a,27aが付設されている。
これらの扉開閉部材26,27には一側部にピン28,29が上方に向けてそれぞれ突設されている。一方、本体上3には、両端に切欠き30a,30bを有する連結部材30がその中間部にて軸31によって支持されて揺動自在に設けられている。この連結部材30の切欠き30a,30bには前記ピン28,29が入り込んでいる。そして、連結部材30と本体上3との間には、スプリング33が掛けられ、そのスプリング33によって、上部扉開閉部材26は、図5において左方(矢印と反対の方向)に付勢され、下部扉開閉部材27は、連結部材30を介して、右方(矢印と反対の方向)に付勢されている。この状態における扉片26a,27aは、互いに離反する方向に付勢されている。さらに、扉開閉部材26の後端には図6に示すように前記スライド板34の起立部34aが当接可能となっている。
なお、扉開閉部材26,27は、前記機構ボックス50に設けられた大小のローラ31,32によって下方から支持されている。
【0020】
このように構成された電車玩具1では、車輪5が停止している状態で、遠心クラッチ15によって歯車10と11とが断状態にあり、スライド板34がスプリング35の付勢力によって、図5において左方に移動した状態にあり、扉開閉部材26がスプリング33の付勢力によって、左方に移動された状態にある。したがって、車輪5が停止している間は図7(a)に示すように扉片26a,27aが開いた状態、つまり扉が開いた状態にある。
【0021】
一方、電車玩具1を走行させると、車輪5が回転し、その車輪5の回転動力は、歯車5a,加速歯車列の各歯車7〜9を介して歯車10に伝達される。歯車10が回転すると、遠心クラッチ15によって歯車10と11とが連結され、加速歯車列が減速歯車列に接続され、減速歯車列の最終の歯車14が回転する。
歯車14が回転すると、その回転動力は、滑りクラッチ24を介してピン25を回動させる。このピン25の運動は、長孔34bを介してスライド板34に伝達され、該スライド片をスプリング35の付勢力に抗して、図3において右方に移動させる。このスライド板34が移動すると、舌片34aを介して上部扉開閉部材26が図5において右方(矢印方向)に移動し、さらに、連結部材30を介して下部扉開閉部材27が図5において左方(矢印方向)に移動する。
その結果、図7(b)に示すように扉片26a,27aが閉じた状態、つまり扉が閉じた状態となる。
なお、電車玩具1が走行している間は、車輪5の回転動力が、扉開閉部材26,27に連続的に伝達されることになるが、扉片26a,27aが閉じた状態となった後は、滑りクラッチ24が滑って、そこで吸収される。この場合、ちょうど円弧状の孔51で扉の動作範囲が規制される。つまり、円弧状の孔51はピン25と共働して動作範囲規制手段として働く。なお、扉片26a,27a同士が当接することで動作範囲が規制されるようにしてもよい。この場合には、扉片26a,27a自体が動作範囲規制手段となる。
【0022】
また、電車玩具1が走行状態から停止状態に移行すると、加速歯車列が停止状態に移行するので、遠心クラッチ15によって歯車10と11とが断状態となるので、図7(a)に示すように扉片26a,27aが開いた状態、つまり扉が開いた状態となる。
【0023】
なお、上記実施の形態では、本発明を電車玩具に適用し、扉を被駆動体とした例を示したが、その他の動作玩具に適用してもよい。例えば、ダンプカーに適用し、荷台を被駆動体としてもよく、車輪で歩行するロボットに適用し、足,手等を被駆動体としてもよい。この場合、遠心クラッチを設けているため、車輪の回転・停止に完全には追従せずに、その回転・停止のタイミングとは少しずれたタイミングで被駆動体を動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る動作玩具として電車玩具を示した斜視図である。
【図2】図1に示した電車玩具の分解斜視図である。
【図3】図2に示した電車玩具における動力伝達機構を拡大して示した断面図である。
【図4】図2に示した電車玩具における動力伝達機構の一要素である遠心クラッチの動作を示した断面図である。
【図5】図2に示した電車玩具における扉を備えた扉開閉部材の組み付け状態の斜視図である。
【図6】図2に示した電車玩具における機構ボックス、スライド部材及び扉開閉部材の関係を示す平面図である。
【図7】図2に示した電車玩具における扉開閉部材の動作を示す平面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 電車玩具
2 本体下
3 本体上
5 車輪
7〜14 歯車
15 遠心クラッチ
22 摩擦円板
24 滑りクラッチ
26,27 扉開閉部材
26a,27a 扉片
33 スプリング
35 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と、前記車輪の回転動力を動力源として動作する被駆動体と、前記車輪の回転動力を前記被駆動体に伝達する動力伝達機構と、前記動力伝達機構の構成部品の1つであって前記車輪が回転する際に前記動力伝達機構の他の構成部品同士を連結させて前記車輪の回転動力を前記被駆動体に伝達させる遠心クラッチと、前記車輪の回転が停止する際に前記クラッチによって前記動力伝達機構の前記他の構成部品同士の連結が解除された場合に前記被駆動体を初期位置に復帰させる付勢手段とを備えることを特徴とする動作玩具。
【請求項2】
前記車輪が回転している時の前記被駆動体の動作範囲を規制する動作範囲規制手段が設けられ、前記動作範囲規制手段が働いている間、前記車輪の回転動力の前記被駆動体への伝達を遮断する他のクラッチが前記動力伝達機構の構成部品として設けられていることを特徴とする請求項1に記載の動作玩具。
【請求項3】
前記被駆動体は扉であり、前記車輪の回転が停止している時に前記扉が開き、前記車輪が回転している時に前記扉が閉まるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の動作玩具。
【請求項4】
前記扉は両開き自在な対をなす扉片から構成されていることを特徴とする請求項3に記載の動作玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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