説明

動作範囲において磁性材料を測定する配置及び方法

本発明は、第1の媒体(202)と、既知の濃度の磁性材料を有する第2の媒体(204)とを有する第3の媒体(206)における第1の媒体(202)の及び/又は第1の媒体(202)における物質の少量を測定する配置に関する。配置は、第3の媒体(206)のプローブ(18;208)が測定のために設置される動作範囲(22)において可変な磁界(20)を提供する磁化手段(12)と、可変な磁界(20)の適用後に動作範囲(22)においてプローブ(12)の磁化の検出信号を得る受信手段(14)と、検出信号を評価し、検出信号を、第3の媒体(204)における第1の媒体(202)の及び/又は第1の媒体(202)における物質の量に関する情報を導出するよう少なくとも1つの較正サンプルの磁化の較正測定と比較する評価手段(214)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第3の媒体における第1の媒体の及び/又は該第1の媒体における物質の少量を測定する配置に関する。更に、本発明は、第3の媒体における第1の媒体の及び/又は該第1の媒体における物質の少量を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような配置は、Biederer,S.及びGleich,B.(2008年)、「A Spectrometer for Magnetic Particle Imaging」、IFMBE議事録、第22巻、2313〜2316頁(非特許文献1)から知られている。非特許文献1に記載されている配置においては、空間エンコーディングを用いない磁性粒子画像化スキャナが使用される。スペクトロメータは、時間的に変化する磁界を、測定されるべきプローブのナノ粒子へ印加する送信コイルと、プローブチェンバにおける粒子の磁化を検出する受信コイルとを有する。スペクトロメータは、磁化レベルが濃度とともに線形に増減するので、プローブチェンバにおける磁性粒子の濃度を検出する。しかし、この方法は、単に、磁性粒子の濃度を測定するだけである。
【0003】
更に、放射能ラベルを付された分子は、医学的、生体学的分析試料、薬物装置開発において必要とされるように、流体及び固体材料におけるわずかの量及び濃度を測定するために日常的に使用されている。放射能ラベルを付された分子の利点は高い感度であり、且つ、特定のアイソトープに依存して、質的測定を可能にする低いバックグラウンド信号レベルである。欠点は、この場合もやはりアイソトープ依存性であり、物質の毒性に関与している。実際上、特別の実験的予防措置が取られるべきであり、しばしば、行政上の認可が、実験行為をモニタするために求められるべきである。これは、そのような技術の適用を特別の場所及び訓練を受けた人に制限する。従って、それらの方法は、安全のために適切なインフラを必要とし、且つ、有害廃棄物を生じる。
【0004】
磁性粒子イメージング(MPI)は、例えば、独国特許出願公開第10151778(A1)号明細書(特許文献1)から、一般的に知られている。MPIは、磁性ナノ粒子の分布を画像化する方法であり、高速ダイナミックイメージングの能力と高い感度を組み合わせて、医学画像用途のための有望な候補となっている。MPIシステムは、画像ピクセル又はボクセルの数に対応する多数の空間的な位置にある点状サンプルの磁化応答を測定する。しかし、このシステム及びモデルは、多大の時間を必要とし、複雑且つ高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第10151778(A1)号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Biederer,S.及びGleich,B.(2008年)、「A Spectrometer for Magnetic Particle Imaging」、IFMBE議事録、第22巻、2313〜2316頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、放射能ラベルを付された分子を用いることなしに、他の媒体における1つの媒体の及び/又は媒体における物質の少量の高速で、正確で且つ安全な測定のための改善された配置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に従って、第1の媒体と、既知の濃度の磁性材料を有する第2の媒体とを有する第3の媒体における前記第1の媒体の及び/又は該第1の媒体における物質の少量を測定する配置であって:
−前記第3の媒体のプローブが測定のために設置される動作範囲において可変な磁界を提供する磁化手段,
−前記可変な磁界の適用後に前記動作範囲において前記プローブの磁化の検出信号を得る受信手段,及び
−前記検出信号を評価し、該検出信号を、前記第3の媒体における前記第1の媒体の及び/又は該第1の媒体における前記物質の量に関する情報を導出するよう少なくとも1つの較正サンプルの磁化の較正測定と比較する評価手段
を有する配置が与えられる。
【0009】
本発明の第2態様に従って、第1の媒体と、既知の濃度の磁性材料を有する第2の媒体とを有する第3の媒体における前記第1の媒体の及び/又は該第1の媒体における物質の少量を測定する方法であって:
−前記第3の媒体のプローブが測定のために設置される動作範囲において可変な磁界を発生させるステップ,
−前記可変な磁界の適用後に前記動作範囲において前記プローブの磁化の検出信号を得るステップ,及び
−前記第3の媒体における前記第1の媒体の及び/又は該第1の媒体における前記物質の量に関する情報を導出するよう前記検出信号を少なくとも1つの較正サンプルの磁化の較正測定と比較するステップ
を有する方法が与えられる。
【0010】
検出信号を少なくとも1つの較正サンプルの較正測定と比較することによって、媒体又は媒体中の物質の少量を測定することが可能であり、前記第1の媒体又は前記物質は、夫々、ラベルを付された分子又はトレーサ物質を有さない。他の媒体中の1つの媒体の量及び/又は1つの媒体中の物質の量は、それによって、体外で又は患者の体内で非常に正確に測定され得る。全体に、この配置及び方法は、高速で、正確で且つ安全な動作と、本質的に放射能がなく且つ毒性のない媒体又は物質の濃度の信頼できる定量化とを可能にする。更に、本発明によって、低レベルの磁性トレーサが、環境及び生体サンプルに存在し、低いサンプル内ノイズを生じさせる。また更に、有害廃棄物は低減され、当該方法は発光シンチレーション・カクテルを加える必要がないので使用するのが容易であり、流体及び固体相における直接の測定に適している。
【0011】
本発明は、MPS(Magnetic Particle Spectroscopy)及びMIPにおいて使用され得るトレーサ物質の使用に関連した新しい態様に言及する。この技術では、非線形な磁気分光法が、多次元交流磁界の適用下で生体内トレーサの局所的な磁気応答に対して行われる。交流磁界に反応する磁性粒子に関し、様々なメカニズムが関与してよい:(1)単一ドメイン粒子の場合におけるニール回転、(2)幾何学的なブラウン回転、及び(3)マルチドメイン粒子のための磁壁運動。MPIに関し、磁性粒子はニール回転のために最適化され、非線形な磁化応答が相当数の調波において解析され得るように外部場に対する高速な応答を可能にする。それらのメカニズムは、測定されるボクセルにおけるトレーサ粒子の平均数、又は粒子濃度の信頼できる定量化をもたらす。
【0012】
多数のトレーサ物質が適用可能であり、MPS/MPIにおいて良好な信号を与え、例えば、リゾビスト(登録商標)等のSPIO(Super Paramagnetic Iron Oxide)物質と呼ばれる。かかる物質は、MRIイメージング造影剤等、体内における非経口投与のために認可されて市販されている。そのような物質は、コロイド的に安定したモノドメイン磁性ナノ粒子を有する。
【0013】
本発明の実施形態に従って、望ましくは、前記磁化手段は、低い磁界強さを有する第1のサブゾーン及びより高い磁界強さを有する第2のサブゾーンが前記動作領域において形成されるように磁界強さの空間におけるパターンを有する磁気選択場を発生させるよう構成され、駆動手段は、前記磁性材料の磁化が局所的に変化するように磁気駆動場により前記動作範囲内の前記第1及び第2のサブゾーンの空間における位置を変更するよう構成される。磁気選択場を発生させることによって、システムは、磁性粒子又は磁性トレーサ材料の空間分布を測定し、且つ、マッピングを提供することが可能である。この実施形態は、磁性粒子スペクトロメータ(MPS)及び磁性粒子イメージング(MPI)スキャナを組み合わせる。
【0014】
本発明の実施形態に従って、望ましくは、前記較正サンプルは、前記第2の媒体の既知の体積を有する。既知の体積を有する較正サンプルの利点は、測定されるプローブの磁化の取得される検出信号が、前記第2の媒体における磁性材料の量と相関することができる点である。これは、高い精度の測定を提供する。
【0015】
更に、本発明に従って、望ましくは、前記少なくとも1つの較正サンプルは、前記磁性材料の異なった濃度を有する複数の較正サンプルを有する。複数の較正サンプルの利点は、複数の較正サンプルから得られる較正係数がより正確である点である。これは、較正係数が磁性材料の有効濃度に対応することによる。
【0016】
本発明の実施形態に従って、望ましくは、前記少なくとも1つの較正サンプルは、前記第2の媒体の異なった体積を有する複数の較正サンプルを有する。異なった体積を有する異なった較正サンプルの利点は、それらの物質から得られる較正係数がより正確である点である。更に、異なったプローブが、前記第2の媒体の異なった体積を提供するために所定の体積を1つの較正サンプルに加えることによって用意されるので、較正係数の測定はより容易である。更に、較正サンプルは、異なった較正サンプルを提供するために所定の体積を生体組織に注入することによって(例えば、患者の体内に媒体を経皮投与することによって)、与えられてよい。
【0017】
更に、本発明に従って、望ましくは、前記磁界は、一様な交流磁界である。そのような磁界の利点は、当該磁界が前記動作範囲において1つの空間成分を有し、従って、磁性材料の磁化の信号を評価する手間が軽減される点である。このように、検出信号から濃度を計算する計算式は簡単化され得、これにより、時間消費及びコンピュータメモリの必要量は低減され得る。
【0018】
本発明の更なる望ましい実施形態において、前記受信手段は、磁気ダイポールモーメントの1調波の振幅から前記検出信号を導出するよう構成される。これは、前記受信手段と、前記検出信号を評価する前記評価手段とが簡単化され、信号の評価に要する時間が短縮されるので、有利である。
【0019】
更に、本発明に従って、望ましくは、前記磁界は、1つの磁界強さを有する。1つの磁界強さの利点は、前記磁化手段が簡単化され得、前記検出信号の評価に要する時間が短縮され、前記検出信号を得る前記受信手段が簡単化され得る点である。
【0020】
本発明の他の実施形態において、前記磁界は、異なった磁界強さを有する。異なった磁界強さを用いる利点は、前記プローブの測定がより正確である点である。
【0021】
本発明に従って、望ましくは、前記磁性材料は、磁性ナノ粒子、特に、コロイド的に安定したモノドメイン磁性ナノ粒子を有する。更に、磁気的ラベルを付された分子が特別の用途のために選択されてよく、生体組織における又は患者の身体における化学反応の測定のために及び/又は該化学反応と組み合わせて使用されてよい。
【0022】
更なる実施形態に従って、前記第1の媒体は、医学的又は生理学的分析試料であり、前記第1の媒体における前記物質は、活性製剤原料である。
【0023】
本発明に従って、望ましくは、前記少なくとも1つの較正サンプルは、前記第3の媒体への前記第2の媒体の注入によって提供される。前記第2の媒体を前記第3の媒体に注入する利点は、1つのサンプルにおいて前記第2の媒体の所定分を順次に注入することによって、前記較正サンプルを用意する手間が軽減され、前記較正サンプルが患者の身体における経皮サンプルとして用意される点である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に従う磁性粒子スペクトロメータ配置の概略図を示す。
【図2】動作範囲に存在する磁性粒子の拡大図を示す。
【図3】a、b及びcは、動作範囲に存在する磁性粒子の磁化特性を示す。
【図4】本発明に従う方法を表す概略図である。
【図5】異なった体積を有する較正サンプルの磁気ダイポール測定を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の上記の及び他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかであり、それらを参照して説明される。
【0026】
図1は、本発明に従う磁性粒子スペクトロメータ(MPS)配置10を用いて試験される対象を示す。MPS配置10は、互いに同軸に配置されている送信コイル12及び受信コイル14を有する。受信コイル14は、送信コイル12内に同軸に配置されている。送信コイル12及び受信コイル14は、共通の軸16に対して軸方向に対称である。プローブ18は、受信コイル14内で軸16上に配置されている。送信コイル12は磁界20を発生させる。磁界20は、送信コイル12内で一様であり、且つ、軸16に対して軸方向に対称である。プローブ18は、受信コイル14の中央に位置付けられているプローブチェンバ22に配置されている。
【0027】
送信コイル12は、プローブチェンバ22内で一様な可変磁界を提供するよう構成される。受信コイル14は、プローブチェンバ22及びプローブ18の夫々に配置されている粒子100(図1中には図示せず。)から磁化応答を受け取るよう構成される。図1で、プローブ18は任意の対称であるが、このプローブ18は体外サンプルであっても、あるいは、プローブチェンバ22内に配置されている患者又は患畜であってもよい。プローブ18は磁性粒子100を有し、磁性粒子100は、例えば、サンプル又は患者の身体に注入されている磁性粒子100又はトレーサ物質を含む液体(図示せず。)を用いて、プローブチェンバ22において配置される。
【0028】
他の実施形態では、配置10は、磁気選択場を提供して、局所的に粒子100の磁化を変更するよう、少なくとも1つの追加の送信コイル及び/又は少なくとも1つの追加の永久磁石を設けられる。
【0029】
図2は、本発明の配置10とともに使用される種類の磁性粒子100の一例を示す。磁性粒子100は、例えば、ガラスの球状の基材101を有し、基材101は軟磁性層102を設けられている。軟磁性層102は、例えば、厚さが5nmであり、鉄ニッケル合金(例えば、パーマロイ)から成る。この層は、例えば、酸等の化学的及び/又は物理的に浸食する環境に対して粒子100を保護するコーティング層103によって、覆われてよい。そのような粒子100の磁化の飽和のために必要とされる磁界20の磁界強さは様々なパラメータ、例えば、粒子100の直径、磁性層102に使用される磁性材料及び他のパラメータに依存する。
【0030】
例えば10μmの直径の場合において、約800A/mの磁界(1mTの流束密度におおよそ対応)が必要とされ、一方、100μmの直径の場合においては、約80A/mの磁界が必要とされる。より低い飽和磁化を有する物質のコーティング102が選択される場合又は層102の厚さが低減される場合は、より一層小さな値が得られる。
【0031】
好ましい磁性粒子100の更なる詳細に関し、特許文献1の対応する部分が参照により援用される(特に、特許文献1の優先権を主張する欧州特許出願公開第1304542(A2)号明細書の段落16〜20及び段落57〜61)。
【0032】
他の適切な材料は、例えば、欧州特許出願公開第1738773号明細書及び欧州特許出願公開第1738774号明細書に記載されており、これらの特許文献には、MPIのために最適化された磁性ナノ粒子(すなわち、磁性ナノ粒子、特に、コロイド的に安定したモノドメイン磁性ナノ粒子を有する酸化鉄に基づくSPIO(すなわち、超常磁性微粒子))が記載されている。
【0033】
図3aは、磁化特性、すなわち、粒子100(図3a中には図示せず。)の磁化Mの変化を、粒子100による分散において、粒子100の位置における磁界強さHの関数として示す。磁化Mは、磁界強さ+Hcより上回る磁界強さ及び磁化強さ−Hcを下回る強さにおいてはもはや変化しないことが分かる。これは、飽和磁化に達したことを意味する。磁化Mは値+Hcと−Hcとの間では飽和しない。
【0034】
図3aは、結果として得られる(すなわち、粒子100によって見られる)正弦磁界H(t)の絶対値が、粒子100を磁気的に飽和させるのに必要とされる磁界強さより低い粒子100の位置での、すなわち、これ以上磁界がアクティブでない場合における正弦磁界H(t)の効果表す。この条件に対する1又は複数の粒子100の磁化は、磁界H(t)の周波数のリズムでその飽和値間を行ったり来たりする。磁化の際に得られる変化は、図3aの右側に参照符号M(t)によって表されている。磁化は、また、周期的に変化し、そのような粒子の磁化は周期的に反対にされることが分かる。
【0035】
曲線の中央にある破線部分は、正弦磁界H(t)の磁界強さの関数として磁化M(t)の近似平均変化値を表す。この中央の線からの偏差として、磁化は、磁界H(t)が−Hcから+Hcへ増大すると少しばかり右に広がり、磁界H(t)が+Hcから−Hcへ減少するとわずかに左に広がる。この既知の効果はヒステリシス効果と呼ばれ、熱の発生に関するメカニズムの根拠をなす。曲線の経路間で形成され、物質に依存した形状及びサイズを有するヒステリシス表面積は、磁化の変化時の熱の発生に係る指標である。
【0036】
次に、信号生成について記載する。MPS(及びMPI)における信号生成の基本原理は、適用される磁界Hに対する強磁性粒子の非線形な磁化応答M(H)に依存する。十分な振幅の発振駆動場H(t)は、駆動場よりも高い調波の異なったスペクトルを有する粒子の磁化応答M(t)をもたらす。例えば、波動場が使用される場合、駆動場スペクトルは基本周波数しか含まず、一方、粒子応答は基本周波数の倍数も含む。これらのより高い調波に含まれる情報はMPSのために使用される。実験的に、時間に依存する粒子磁化の変化は、受信コイル14における誘導電圧を介して測定される。感度Sr(r)を有する受信コイル14を考えると、変化する磁化は、ファラデーの法則に従って、次の式(1)によって表される電圧を導入する:
【0037】
【数1】

μは真空の透磁率である。受信コイル14の感度Sr(r)=Hr(r)/Iは、コイルが単位電流Iにより駆動される場合に生成する磁界Hr(r)から得られる。以下では、受信コイル14の感度は、関心領域にわたって一様であるよう近似される。すなわち、Sr(r)は一定である。Mx(r,t)が、x方向において受信コイル14によって受け取られる磁化成分である場合、検出される信号は、次の式(2)のように記述され得る:
【0038】
【数2】

この場合に、粒子の点状分布によって生成される信号s(r,t)を考える。体積積分は除かれてよく、粒子磁化Mx(r,t)は局所磁界H(r,t)によって決定される。差し当たり、磁界は、受信コイル方向を向いているただ1つの空間成分Hx(r,t)(図1参照)しか有さないとする。その場合に、信号(図3b参照)は、次の式(3)のように記述され得る:
【0039】
【数3】

この式は、磁界が取得される磁化成分の方向と整列している全ての向きに有効であるから、添字xは省略されている。式(3)は、高い信号は、急速な磁界変化と急な磁化曲線との組み合わせに起因する。一様な駆動場H(r,t)=H(t)を適用することによって生成される周期信号s(t)のフーリエ展開は、図3cに示されるような信号スペクトルSnをもたらす。スペクトルにおけるより高い調波の強さ及び重みは、磁化曲線M(H)の形状と、駆動場H(t)の波形及び振幅とに関連する。スペクトルに対するそれらの作用を表すよう、多数の代表的な場合が図3cに示されている。
【0040】
ステップ関数は当座の粒子応答と関連し、高調波を多く含むスペクトルを生成する。スペクトル成分は、駆動周波数の奇数倍で一定の大きさを有する。偶数調波は、時間信号s(t)の正弦タイプのパターンにより欠けている。ステップ関数は、理想的な粒子応答に対応し、より高い調波の達成可能な重みに関する極端な場合を表す。この磁化曲線に関し、三角及び正弦駆動場は同じ結果をもたらす。
【0041】
図3aは、ランジュバン関数によって与えられる粒子磁化を示す:
【0042】
【数4】

【0043】
【数5】

ξは、外部場Hにおいて磁気モーメントmを有する粒子の磁気エネルギと熱エネルギとの間の比である。
【0044】
磁気モーメントが高ければ、所与の駆動場振幅に関し、磁化曲線はより急となり、更に多くのより高い調波が生成される。代替的に、高調波は、より速い場の変化(例えば、より高い駆動場振幅によって導入される。)により、緩やかな曲線から生成され得る。MPIは十分に急な磁化曲線を得るために強磁性粒子を用いることに留意すべきである。しかし、低い濃度に関し、それらの相互作用は無視可能であり、それらは非常に大きな磁気モーメントを有する常磁性粒子の気体(超常磁性としても知られる事象)のように扱われ得る。
【0045】
図4は、概して200として表されている本発明の方法を表す概略図を示す。特性を示されるべき第1の媒体202が与えられる。第2の媒体204が与えられ、第1の媒体202に加えられる。第2の媒体204は、磁性トレーサ物質を有し又は磁性粒子100を有し、第1の媒体202と混合される。第1の媒体202は、特定の濃度Cdの活性(製剤)化合物を有する。第2の媒体204は、特定の濃度Cmの粒子100又は磁性トレーサ物質を有する。第1の媒体202は体積V1を有し、第2の媒体204は体積V2を有する。第1の媒体202及び第2の媒体204の混合は、体積V3=V1+V2を有する第3の媒体206を生じる。
【0046】
第3の媒体206から、小さな体積が、磁気スペクトルメータ210によって測定されるべきサンプルアリコート208として取り出される。第2の媒体204は、体積Cmの磁性粒子100を含む。サンプルアリコート208が取り出される第3の媒体206における磁性材料の体積Cm’及び活性加工物の体積Cd’は、夫々、Cm’=Cm・(V2/V3)及びCd’=Cd・(V1/V3)である。
【0047】
磁気スペクトロメータ210の測定の評価のために、較正係数Cfが、第2の媒体204の既知の較正体積CALV2を有する少なくとも1つの較正サンプル測定から得られる。較正係数Cfは、測定される磁化UC2及び較正体積から計算され、Cf=UC2/CALV2である。更に、他の較正係数Cf’は、第3の媒体206の既知の較正体積CALV3を用いることによって定義され得る。この較正係数Cf’は、Cf’=UC3/CALV3である。2つの較正係数Cf及びCf’は、磁性粒子100の有効濃度Cm及びCm’に対応する。従って、較正係数Cf及びCf’の比は、Cf/Cf’=Cm/Cm’によって与えられる。サンプルアリコート208は、上述されたように、第3の媒体206の狭量のサンプルである。サンプルアリコート208の体積は、V3’=k・V3(k<<1)によって与えられる。ここで、第3の媒体206の体積V3は既知である。
【0048】
磁気スペクトロメータ210は、サンプルアリコート208の磁化Mを測定し、出力Uを供給する。結果として、U/V3’=Cf’=Cf・Cm/Cm’である。従って、体積V3’は、V3’=(U/Cf)(Cm’/Cm)である。サンプルアリコート208における第1の媒体202の体積V1’は、式

V1’=F1・V3’=F1・(U/Cf)(Cm’/Cm) (6)

によって計算され得る。ここで、F1は、第3の媒体206における第1の媒体202の割合であり、F1=V1/(V1+V2)によって与えられる。結果として、サンプルアリコート208における第1の媒体202の体積は、サンプルアリコート208の磁化Mの測定と、少なくとも1つの較正サンプルから得られる較正係数Cf、Cf’とから得られる。この計算は、図1及び図4に示される評価手段214(例えば、コンピュータ)によって行われる。
【0049】
第3の媒体206のサンプルアリコート208における製剤原料の量Adは、Ad=Cd・V1’又はAd=Cd’・V3’によって与えられる。
【0050】
図5には、測定される較正サンプルの体積に対する磁気ダイポールモーメントの図が示されている。図5に示される図から、較正曲線は、単一の較正測定よりも正確である直線回帰によって導き出される。ダイポールモーメントは、異なった体積を有する異なった較正サンプルから導きされても、あるいは、1つの較正サンプルから導きされてもよく、後者の場合においては、ダイポールモーメントの各測定の後に順次に、磁性材料(例えば、第2の媒体204)の少なくとも1つの追加の体積が較正サンプルに注入される。図5に示される較正曲線からは、較正定数が、平均体積にわたって平均磁気モーメントとして計算され得る。
【0051】
望ましい実施形態では、異なった体積の較正サンプルが、所定体積の第2の媒体204を生体組織に注入することによって(例えば、患者の身体に経皮的に注入することによって)、与えられてよい。
【0052】
本発明によって、流体又は固体材料におけるわずかの量及び濃度の正確な測定が達成可能である。これは、医学的、生態学的分析試料及び経皮的ドラッグデリバリーを含むドラッグデリバリー装置において使用されてよい。本発明は、磁性粒子イメージング及び磁性粒子分光法のためのトレーサ物質として使用可能であり、且つ、小さな体積又は体積の小さな変化が検出される必要がある第1の媒体に一様に、望ましくはコロイド的に分散した磁性粒子の分析の使用に依存する。方法は、数十年にわたって広がっているトレーサ濃度の信頼できる定量化に依存する。方法は、本質的に放射線を用いず、造影剤の非毒性(例えば、低用量の酸化鉄造影剤)により臨床応用に転用可能である。システムは、シンチレーション・カウンタと本質的に等価であると考えられ、片面MPIスキャナの使用によって経皮的なドラッグデリバリーのための臨床評価に転用可能である。
【0053】
本発明は、図面及び上記記載において詳細に例示及び記載をされてきたが、そのような例示及び記載は、実例又は見本と考えられるべきであり、本発明は、開示されている実施形態に限定されない。開示されている実施形態に対する他の変形は、図面、本明細書及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求される発明を実施する際に当業者によって理解及び実行可能である。
【0054】
特許請求の範囲において、語「有する(comprising)」は他の要素又はステップを除かず、不定冠詞「1つの(a又はan)」は複数個を除かない。単一の要素又は他のユニットは、特許請求の範囲に挙げられている幾つかの事項の機能を満足してよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項において挙げられているという単なる事実は、それらの手段の組合せが有利に使用され得ないことを示すわけではない。
【0055】
特許請求の範囲における参照符号はいずれも、適用範囲を限定するよう解されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の媒体と、既知の濃度の磁性材料を有する第2の媒体とを有する第3の媒体における前記第1の媒体の及び/又は該第1の媒体における物質の少量を測定する配置であって:
−前記第3の媒体のプローブが測定のために設置される動作範囲において可変な磁界を提供する磁化手段,
−前記可変な磁界の適用後に前記動作範囲において前記プローブの磁化の検出信号を得る受信手段,及び
−前記検出信号を評価し、該検出信号を、前記第3の媒体における前記第1の媒体の及び/又は該第1の媒体における前記物質の量に関する情報を導出するよう少なくとも1つの較正サンプルの磁化の較正測定と比較する評価手段
を有する配置。
【請求項2】
前記磁化手段は、低い磁界強さを有する第1のサブゾーン及びより高い磁界強さを有する第2のサブゾーンが前記動作領域において形成されるように磁界強さの空間におけるパターンを有する磁気選択場を発生させるよう構成され、
駆動手段は、前記磁性材料の磁化が局所的に変化するように磁気駆動場により前記動作範囲内の前記第1及び第2のサブゾーンの空間における位置を変更するよう構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の配置。
【請求項3】
前記較正サンプルは、前記第2の媒体の既知の体積を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の配置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの較正サンプルは、前記磁性材料の異なった濃度を有する複数の較正サンプルを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の配置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの較正サンプルは、前記第2の媒体の異なった体積を有する複数の較正サンプルを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の配置。
【請求項6】
前記磁界は、一様な交流磁界である、
ことを特徴とする請求項1に記載の配置。
【請求項7】
前記受信手段は、磁気ダイポールモーメントの1調波の振幅から前記検出信号を導出するよう構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の配置。
【請求項8】
前記磁界は、1つの磁界強さを有する、
ことを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載の配置。
【請求項9】
前記磁界は、異なった磁界強さを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の配置。
【請求項10】
前記磁性材料は、磁性ナノ粒子、特に、コロイド的に安定したモノドメイン磁性ナノ粒子を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の配置。
【請求項11】
前記第1の媒体は、医学的又は生理学的分析試料であり、前記第1の媒体における前記物質は、活性製剤原料である、
ことを特徴とする請求項1に記載の配置。
【請求項12】
第1の媒体と、既知の濃度の磁性材料を有する第2の媒体とを有する第3の媒体における前記第1の媒体の及び/又は該第1の媒体における物質の少量を測定する方法であって:
−前記第3の媒体のプローブが測定のために設置される動作範囲において可変な磁界を発生させるステップ,
−前記可変な磁界の適用後に前記動作範囲において前記プローブの磁化の検出信号を得るステップ,及び
−前記第3の媒体における前記第1の媒体の及び/又は該第1の媒体における前記物質の量に関する情報を導出するよう前記検出信号を少なくとも1つの較正サンプルの磁化の較正測定と比較するステップ
を有する方法。
【請求項13】
前記構成測定は、前記磁性材料の異なった濃度を有する複数の較正サンプルから導出される、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの較正サンプルは、異なった体積を有する複数の較正サンプルを有する、
請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの較正サンプルは、前記第3の媒体への前記第2の媒体の注入によって提供される、
請求項12乃至14のうちいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−519865(P2012−519865A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553560(P2011−553560)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【国際出願番号】PCT/IB2010/050876
【国際公開番号】WO2010/103419
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】