動力伝達装置。
【課題】
回転駆動力の伝達がオン、オフいずれの状態のときも、電力消費を伴う電磁クラッチを不要とする動力伝達装置を提供する。
【解決手段】
回転軸1の周りに回転する第1回転体10の磁石s10、n11と第2回転体20の磁性材からなるヨーク21との間の磁気作用により一方の回転体の動力が他方の回転体に伝達可能な動力伝達装置である。第1回転体10の磁石s10、n11と第2回転体20のヨーク21との間に形成される磁路を、ヨーク21の手前で短絡する可動ヨークy10、y11が第1回転体20に取付けられた。
回転駆動力の伝達がオン、オフいずれの状態のときも、電力消費を伴う電磁クラッチを不要とする動力伝達装置を提供する。
【解決手段】
回転軸1の周りに回転する第1回転体10の磁石s10、n11と第2回転体20の磁性材からなるヨーク21との間の磁気作用により一方の回転体の動力が他方の回転体に伝達可能な動力伝達装置である。第1回転体10の磁石s10、n11と第2回転体20のヨーク21との間に形成される磁路を、ヨーク21の手前で短絡する可動ヨークy10、y11が第1回転体20に取付けられた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気作用を利用して回転駆動力を伝達する動力伝達装置に関し、特に回転駆動力の伝達がオンーオフ可能な磁気クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気作用を利用して回転駆動力を伝達するとともに回転駆動力の伝達がオンーオフ可能な動力伝達装置としては、電磁石を利用した電磁クラッチが知られている。このような電磁クラッチにおいては、電磁石のコイルに電流を流したときに発生する磁界により駆動側と従動側とが結合され、回転駆動力が駆動側から従動側に伝達される。また、電磁石のコイルに流す電流を遮断したときは磁界が消滅して駆動側と従動側との結合が解除され、回転駆動力が従動側に伝達されないようになっている。
従って、回転駆動力の伝達がオン状態のとき、常に電流を流し続ける必要があり、電力の消費量が大きかった。そのため、電池の消耗が激しい、あるいは環境負荷が大きいという問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開2003−117754号公報
【特許文献2】特開平9−74777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、永久磁石を用いて駆動側と従動側が結合されるとともに駆動側と従動側との結合が解除可能となし、回転駆動力の伝達がオン、オフいずれの状態のときも電力消費を不要とする動力伝達装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る動力伝達装置によれば、回転軸の周りに回転する磁石を有する第1回転体と、該第1回転体に対して相対的に回転可能で、かつ前記第1回転体の磁石と対向するヨークを有する第2回転体とが設けられ、前記第1回転体の磁石と前記第2回転体のヨークとの間の磁気作用により一方の回転体の動力が他方の回転体に伝達可能な動力伝達装置であって、前記第1回転体の磁石と前記第2回転体のヨークとの間に形成される磁路を、該ヨーク手前で適宜短絡する可動ヨークが前記第1回転体に取付けられたことを特徴とする動力伝達装置が得られる。
【0006】
また請求項2に係る本発明は、前記第1回転体の磁石が、該第1回転体の回転軸と平行な周面に設けられていることを特徴とする動力伝達装置を提供する。
【0007】
さらに請求項3に係る本発明は、前記第1回転体の磁石が、前記第1回転体の回転軸と直交する平面に設けられていることを特徴とする動力伝達装置を提供する。
【0008】
また請求項4に係る本発明は、前記第2回転体のヨーク面に導電性金属板が設けられたことを特徴とする動力伝達装置を提供する。
【0009】
さらに請求項5に係る本発明は、回転軸の回転方向に沿って交互に異極配列された第1磁石群を有する第1回転体と、該第1回転体に対して相対的に回転可能で、かつ前記第1回転体の前記第1磁石群の各磁極と各々対向するように交互に異極配列された第2磁石群を有する第2回転体とが設けられ、前記第1回転体の第1磁石群と前記第2回転体の第2磁石群との間の磁気作用により一方の回転体の動力が他方の回転体に伝達される動力伝達装置であって、前記第1回転体が回転軸と交差する面もしくは回転軸と平行な面により分割可能であって、かつ分割された回転体の各々に交互に異極配列された前記第1磁石群が設けられ、前記分割された回転体同士が回転方向に対して相対位置を調整可能に構成されていることを特徴とする動力伝達装置が得られる
【0010】
また請求項6に係る本発明は、前記第1磁石群が、前記第1回転体の回転軸と平行な周面に設けられていることを特徴とする動力伝達装置を提供する。
【0011】
さらに請求項7に係る本発明は、前記第1磁石群が、前記第1回転体の回転軸と直交する平面に設けられていることを特徴とする動力伝達装置を提供する。
【0012】
また請求項8に係る本発明は、前記第1磁石群又は前記第2磁石群の少なくとも一方の面に導電性金属板が設けられたことを特徴とする動力伝達装置を提供する。
【0013】
さらに請求項9に係る本発明は、回転軸の周りに回転する第1磁石を有する第1回転体と、該第1回転体に対して相対的に回転可能で、かつ前記第1回転体の第1磁石の各磁極と各々対向するように交互に異極配列された第2磁石あるいは前記第1回転体の第1磁石と対向する磁性材からなるヨーク部(以下ヨーク部と略記する)を有する第2回転体とが設けられ、前記第1回転体の第1磁石と前記第2回転体の第2磁石あるいはヨーク部間の磁気作用により一方の回転体の動力が他方の回転体に伝達可能な動力伝達装置であって、前記第1回転体の第1磁石と前記第2回転体の第2磁石あるいはヨーク部間の磁気作用を打消す方向に、前記第1回転体の第1磁石と前記第2回転体の第2磁石あるいはヨーク部との相対位置が切替え可能に構成されていることを特徴とする動力伝達装置を提供する。
【0014】
また請求項10に係る本発明は、前記第1回転体の第1磁石が、前記第1回転体の周面に設けられていることを特徴とする動力伝達装置を提供する。
【0015】
さらに請求項11に係る本発明は、前記第1回転体の第1磁石と前記第2回転体の第2磁石あるいはヨーク部との相対位置の切替え量が、前記回転軸の軸長方向に対向単位の1/2相当であることを特徴とする動力伝達装置を提供する。
【0016】
さらに請求項12に係る本発明は、前記第1回転体と前記第2回転体との相対運動によって渦電流を発生する渦電流発生機構が設けられたことを特徴とする動力伝達装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、回転軸の周りに回転する磁石を有する第1回転体と第1回転体に対して相対的に回転可能で、かつ第1回転体の磁石と対向するヨークを有する第2回転体との間の磁気作用により、一方の回転体の動力が他方の回転体に伝達されるようにしたので、第1回転体の磁石と第2回転体のヨークとの間に形成される磁路がオン状態となる位置に可動ヨークを設定すれば、第1回転体と第2回転体とが結合され、一方の回転体の回転動力は他方の回転体に伝達される。
一方、第1回転体の磁石と第2回転体のヨークとの間に形成される磁路がオフ状態、つまり磁路がヨーク手前で短絡される位置に可動ヨークを設定すれば、第1回転体と第2回転体との結合が解除され、一方の回転体の回転動力は他方の回転体に伝達されない。
従って、回転駆動力が伝達されるときも、回転駆動力の伝達が解除されるときも電流は不要であり、電力消費は全く生じない。
また、可動ヨークの位置を変えて磁気的な結合をON/OFFする際に、その途中では結合が徐々に開始/終了するため、回転駆動力伝達のオン−オフ時の衝撃を抑制することができる。
【0018】
また第1回転体の磁石が、第1回転体の回転軸と平行な周面に設けられていれば、円筒の周面を用いて第1回転体と第2回転体とを対向させて、回転駆動力の伝達をオンーオフできる。
【0019】
さらに第1回転体の磁石が、第1回転体の回転軸と直交する平面に設けられていれば、円盤の端面を用いて第1回転体と第2回転体とを対向させて、回転駆動力の伝達をオンーオフできる。
【0020】
また、第2回転体のヨーク面に導電性金属板が設けられていれば、導電性金属板を通る磁束変化に応じて渦電流が流れ、その渦電流により回転駆動力伝達のオンーオフ時の衝撃を抑制することができる。
【0021】
さらに本発明によれば、回転軸の回転方向に沿って交互に異極配列した第1磁石群を有する第1回転体と、第1回転体の第1磁石群の各磁極と各々対向するように交互に異極配列された第2磁石群を有する第2回転体が設けられているので、第1回転体の第1磁石群と第2回転体の第2磁石群との間の磁気作用により第1回転体と第2回転体とは結合される。この場合、一方の回転体の回転動力が他方の回転体に伝達される。
【0022】
一方、回転軸と交差する面もしくは回転軸と平行な面により分割可能な第1回転体の回転体同士の各々に交互に異極配列した第1磁石群が設けられ、分割された回転体同士が回転方向に対して相対位置を調整可能に構成されているので、第1回転体の分割された回転体同士間で磁極位置を変えることにより、第1回転体の第1磁石群と第2回転体の第2磁石群との間に発生する磁気作用による回転動力を打ち消し合う状態となすことが可能である。この場合、第1回転体と第2回転体との結合は解除され、一方の回転体の回転動力が他方の回転体に伝達されない。
従って、回転駆動力の伝達がオン状態のときも、回転駆動力の伝達がオフ状態のときも電流は不要であり、電力消費は全く生じない。
【0023】
また第1磁石群が、第1回転体の回転軸と平行な周面に設けられていれば、円筒の周面を用いて第1回転体と第2回転体とを対向させて、回転駆動力の伝達のオンーオフが可能となる。
【0024】
さらに第1磁石群が、第1回転体の回転軸と直交する平面に設けられていれば、円盤の端面を用いて第1回転体と第2回転体とを対向させて、回転駆動力の伝達のオンーオフが可能となる。
【0025】
また、前記第1磁石群又は前記第2磁石群の少なくとも一方の面に導電性金属板が設けられていれば、導電性金属板を通る磁束変化に応じて渦電流が流れ、その渦電流により回転駆動力伝達のオンーオフ時の衝撃を抑制することができる。
【0026】
本発明の動力伝達装置によれば、回転軸の周りに回転する第1磁石を有する第1回転体と第1回転体に対して相対的に回転可能で、かつ第1回転体の第1磁石の各磁極と各々対向するように交互に異極配列された第2磁石あるいは前記第1回転体の第1磁石と対向する磁性材からなるヨーク部を有する第2回転体との間の磁気作用により、一方の回転体の動力が他方の回転体に伝達される。
一方、第1回転体の第1磁石と第2回転体の第2磁石あるいはヨーク部間の磁気作用を打消す位置に、第1回転体の第1磁石と第2回転体の第2磁石あるいはヨーク部との相対位置を切替えると、一方の回転体の回転動力は他方の回転体に伝達されない。
従って、回転駆動力が伝達されるときも、回転駆動力の伝達が解除されるときもオン状態あるいはオフ状態を保持するための電流は不要であり、電力消費は全く生じない。
【0027】
また、第1回転体の第1磁石が、第1回転体の周面に設けられていれば、円筒の周面を用いて第1回転体と第2回転体とを対向させて、回転駆動力伝達のオンーオフが可能となる。
【0028】
さらに、第1回転体の第1磁石と第2回転体の第2磁石あるいはヨーク部との相対位置の切替え量が、回転軸の軸長方向に対向単位の1/2相当であれば、第1回転体の第1磁石と第2回転体の第2磁石あるいはヨーク部間の磁気作用を働かせることも打消すことも容易である。
【0029】
さらに、第1回転体と第2回転体との相対運動によって渦電流を発生する渦電流発生機構が設けられていれば、回転駆動力伝達のオフーオン切替え時の相対回転数に対応させて渦電流を発生させ、その渦電流によりオフからオンへの切替え時に過剰なトルク変動によって生じる回転駆動力伝達のスリップ状態を連れ回り状態即ち同期状態に復帰可能とし、安定したクラッチ切り替え機能を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に図面を参照して本発明に係わる動力伝達装置の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態1の動力伝達装置の全体図、図2は、図1の要部部分斜視図である。又、図3は図2の要部の部分断面図であり図面を判りやすくするため、便宜上一部の箇所を省いている。図1乃至図3において、1は回転軸、10は回転軸1を中心に回転する回転体、11は回転体10に設けられた円筒状のヨークであり、ヨーク11の表面には永久磁石からなる磁極S極s10、N極n11、N極n12、S極s11、S極s12、N極n13、N極n14、・・・、N極n1nが軸方向に沿って直線的に設けられているとともに、隣接してN極n20、S極s21、S極s22、N極n21、N極n22、S極s23、S極s24、・・・、S極s2nが並列に設けられ、全体としてN極nm0、S極sm1、S極sm2、N極nm1、N極nm2、S極sm3、S極sm4、・・・、S極smnまでのm列の磁極列が等間隔で設けられている。
【0031】
S極s10、N極n11、N極n12、S極s11、S極s12、N極n13、N極n14、・・・、N極n1nからN極nm0、S極sm1、S極sm2、N極nm1、N極nm2、S極sm3、S極sm4、・・・、S極smnまでの各磁極の大きさは、厚さがt1、回転軸1方向に沿う長さがl1、幅がw1で、各磁極列における磁極間の間隔はd1である。
【0032】
20は回転軸1を中心に回転体10の外周に沿って回転する回転体で、回転体10とは相対的に回転可能であり、各々図示を省略した軸受け等で支持されている。21は回転体20に設けられた円筒状のヨークである。ヨーク21の内周面には、図2及び図3に示すように、回転軸と平行な直線状の突状部f1、突状部f2、・・・、突状部fmが、互いに等間隔でm列並んで形成されている。
【0033】
突状部f1、突状部f2、・・・、突状部fmは、高さがh1、幅がw1、軸方向の長さが各磁極列の長さと同等である。m列の突状部f1、突状部f2、・・・、突状部fnは、S極s10、N極n11、N極n12、S極s11、S極s12、N極n13、N極n14、・・・、N極n1nからN極nm0、S極sm1、S極nm2、N極nm1、N極nm2、S極sm3、S極sm4、・・・、S極smnまでのm列の磁極列に対向しており、各磁極に対して間隔gを保っている。
【0034】
回転体10には、m列の磁極列に対応する可動ヨーク列、即ちヨークy10、ヨークy11、・・・ヨークy1n、次いでヨークy20、ヨークy21、・・・ヨークy2nからヨークym0、ヨークym1、・・・ヨークymnまでのヨーク列が順次設けられている。ヨークy10からヨークymnの各ヨークの大きさは、厚さがt2、回転軸1方向に沿う長さがl2、幅がw1で、各可動ヨーク列におけるヨーク間の間隔はd1である。これらの大きさは、次の関係式で示される。即ち、l2=2*l1+d1、と示される。
【0035】
ヨークy10、ヨークy11、・・・ヨークy1n、ヨークy20、ヨークy21、・・・ヨークy2nからヨークym0、ヨークym1、・・・ヨークymnまでの各ヨークは、図示を省略した非磁性材からなる支持板に前後左右を等間隔に埋設して互いに連結されており、図示を省略したカム機構などにより回転軸1の方向に所定の距離だけ移動可能な構造となっている。その移動量はd3であり、移動量d3は、次の関係式で示される。即ち、d3=l1+d1、と示される。
ヨークy10、ヨークy11、・・・ヨークy1n、ヨークy20、ヨークy21、・・・ヨークy2nからヨークym0、ヨークym1、・・・ヨークymnまでの各ヨークは、m列の磁極列の各磁極と各々間隔g1を保って対向し、突状部f1、突状部f2、・・・、突状部fmとは各々間隔g2を保って対向するものである。
要するに、第1回転体は、磁性体からなるヨークと、前記ヨーク表面に回転軸を中心として配置された複数の磁極列と、回転軸を中心にして配置されかつ回転軸方向に移動可能な複数の可動ヨーク列とから構成されている。前記磁極列は、磁極が・・・NNSSNNSS・・・のように、2つの磁極が隣り合いこれらが磁極を反転させながら回転軸方向に配置されており、前記可動ヨーク列は、前記磁極列内の隣り合った2つの磁極を同時に覆う形状の磁性体が磁極を2つづつ覆うようにして回転軸方向に複数配置されている。第2回転体は、第1回転体の磁極列周期に合わせた複数の突状部を有するヨークにより構成されている。そして、これらの第1回転体と第2回転体とが所定の間隔を保ち、第1回転体の可動ヨーク面と第2回転体の突状部面とが対向するように配置されることによって、動力伝達装置が構成されている。
【0036】
次にこのような動力伝達装置の動作について説明する。図4は図1に関連する動力伝達装置の回転軸1の中心を通る要部断面図であって、図において、S極s10、N極n11、N極n12、S極s11、S極s12、N極n13、N極n14、・・・、N極n1nの磁極列が突状部f1と対向している状態を示す。このとき、S極s10がヨークy10と、N極n11、N極n12がヨークy11と、同様にN極n1nがヨークy1nと各々対向している。
【0037】
この状態において、N極n11、N極n12、N極n13、N極n14、・・・、N極n1nの各磁極から出る磁束は、各々矢印a11、矢印a12、・・・矢印a1nで示されるようにヨークy11、ヨークy13、・・・ヨークy1nを通過してヨーク21の突状部f1に達すると同時に、各々矢印b10、矢印b11、・・・矢印b1n−1で示されるようにヨークy10、ヨークy12、・・・ヨークy1n−1を通過してS極s10、S極s11、S極s12、S極s13、S極s14・・・に帰還する。他の各磁極列、各可動ヨーク列、各突状部においても同様な磁路にそって磁束が流れる。
この磁気作用によりヨーク11とヨーク21とが結合され、回転体10あるいは回転体20のどちらか一方をモータ等により回転駆動すると、その回転駆動力は他方に伝達される。
【0038】
続いて図4の状態より、ヨークy10、ヨークy11、・・・ヨークy1n、ヨークy20、ヨークy21、・・・ヨークy2nからヨークym0、ヨークym1、・・・ヨークymnまでの各ヨークをカム機構などにより回転軸1に沿って矢印r1の方向に距離d1だけ移動し図5に示す状態に切り換える。
この場合、N極n11、N極n12、N極n13、N極n14、・・・、N極n1nの各磁極から出る磁束は、各々矢印c11、矢印c12、・・・矢印c1n−1で示されるようにヨークy10、ヨークy11、ヨークy13、・・・ヨークy1n−1を通過してS極s10、S極s11、S極s12、S極s13、・・・S極s1n−1に帰還する。他の各磁極列、各ヨーク列においても同様な磁路にそって磁束が流れる。その結果、ヨーク21の各突状部を経由する各磁路は各可動ヨーク列によって短絡され、磁束がヨーク21の突状部f1、突状部f2、・・・突状部fmに達することがない。
その結果、ヨーク11とヨーク21の磁気的結合は解除され、回転体10あるいは回転体20のどちらか一方をモータ等により回転駆動したとしても、その回転駆動力は他方に伝達されることがない。
【0039】
ここまで説明した実施の形態においては、ヨークy10、ヨークy11、・・・ヨークy1n、ヨークy20、ヨークy21、・・・ヨークy2nからヨークym0、ヨークym1、・・・ヨークymnまでの各ヨークは、m列の磁極列の各磁極と各々間隔g1を保って対向するものであったが、間隔g1の値を0とし、各ヨークが各磁極に接する構造とすることもできる。
また、ヨーク21の突状部を含む内周面に銅等の導電性金属板を設け、回転駆動力伝達のオンーオフ時に導電性金属板に渦電流を発生させて、オンーオフ時の衝撃を抑制することができる。
また、各磁極列は、・・・NNSSNNSSNNSS・・・のように、2つの同一磁極が隣り合い、これらが磁極を反転させながら配置されているため、可動ヨークを回転軸方向に移動させることによって、簡単に第一回転体と第二回転体とを磁気的に結合したり解除したりすることができる。
さらに、各磁極は隣り合う2つの同一磁極の間隔d1を同一磁極で埋めて一体のものとしてもよい。例えば、回転軸1方向に沿う長さが2*l1+d1の磁極が間隔d1で極性を交互にして配置されていても良い。また、一体の磁石を着磁することによって、表面に磁極が前記のように交互に現れる一体のものとすることもできる。
【0040】
図6は、本発明の実施の形態2の動力伝達装置の要部斜視図である。また、図7は、形状の理解を容易にするために、図6の動力伝達装置を2つの回転体の対向面を中心にして開いた図面である。また、図8は、形状の理解を容易にするために、図6の動力伝達装置のうちの回転体10の可動ヨークを除いた図面である。尚、上述した前記実施の形態1の動力伝達装置と同一概念を有するものは同一符号を付して説明する。これらの図において1は回転軸、10は回転軸1を中心に回転する回転体、11は回転体10に設けられた円板状のヨークであり、ヨーク11の表面には永久磁石からなる磁極N極n1、N極n2、S極s1、S極s2、N極n3、N極n4、・・・が円周方向に沿って設けられている。
【0041】
N極n1、N極n2、S極s1、S極s2、N極n3、N極n4、・・・の各磁極の大きさは、厚さがt1、回転軸中心の角度幅がw1で、磁極間の角度間隔はd1である。
【0042】
20は回転軸1を中心に回転体10の上面に配置され回転する回転体で、回転体10とは相対的に回転可能であり、各々図示を省略した軸受け等で支持されている。21は回転体20に設けられた円筒状のヨークである。ヨーク21の回転体の対向面には、突状部f1、突状部f2、・・・が、互いに等間隔で並んで、回転体の磁極と同数形成されている。突状部f1、突状部f2、・・・は、高さがh1、回転軸中心の角度幅が2*w1+d1であり、2つの磁極を覆うような寸法である。
【0043】
可動ヨークy1、可動ヨークy2、・・・の各可動ヨークは、図示を省略した非磁性材からなる支持板に前後左右を等間隔に埋設して互いに連結されており、図示を省略したカム機構などにより回転軸1を中心として回転可能な構造となっている。その回転角度はd3であり、次の関係式で示される。即ち、d3=w1+d1、と示される。各可動ヨークは、回転体10の各磁極と各々間隔g1を保って対向し、突状部f1、突状部f2、・・・とは間隔g2を保って対向配置される。
要するに、第1回転体は、磁性体からなるヨークと、前記ヨーク表面に回転軸を中心として配置された複数の磁極と、回転軸を中心にして配置されかつ回転軸を中心として回転可能な複数の可動ヨークとから構成されている。前記磁極列は、磁極が・・・NNSSNNSS・・・のように、2つの磁極が隣り合いこれらが磁極を反転させながら回転軸を中心として配置されており、前記可動ヨークは、前記磁極の隣り合った2つの磁極を同時に覆う形状の磁性体が磁極を2つづつ覆うようにして回転軸を中心として複数配置されている。第2回転体は、第1回転体の磁極周期に合わせた複数の突状部を有するヨークにより構成されている。そして、これらの第1回転体と第2回転体とが所定の間隔を保ち、第1回転体の可動ヨーク面と第2回転体の突状部面とが対向するように配置されることによって、動力伝達装置が構成されている。
【0044】
次にこのような動力伝達装置の動作について説明する。図9は、回転体10を示したもので、上図は回転体10と回転体20とを磁気的に結合し動力伝達を行う場合の可動ヨークの配置を示すものである。すなわち、同極上に一つの可動ヨークを配置するように可動ヨークを回転させた場合である。この場合は、磁束はa1,a2,a3,a4に示すように流れ、この図では示していないが上部に配置されている回転体20を磁束が通り、回転体10と回転体20とが磁気的に結合し動力の伝達が行われる。
【0045】
図9の下図は回転体10と回転体20との磁気的結合を解除し動力伝達を行なわない場合の可動ヨークの配置を示すものである。すなわち、異極上に一つの可動ヨークを配置するように可動ヨークを回転させた場合である。この場合は、磁束はc1,c2,c3,c4に示すように流れることになるため磁束が回転体10内で閉じ、この図では示していないが上部に配置されている回転体20を磁束が通ることなく、回転体10と回転体20とが磁気的結合が解除され、回転体10あるいは回転体20のどちらか一方をモータ等により回転駆動したとしても、その回転駆動力は他方に伝達されることがない。
【0046】
上記の説明のように、回転体10に、磁極が・・・NNSSNNSSNNSS・・・のように、2つの同一磁極が隣り合い、これらが磁極を反転させながら配置されているため、可動ヨークを回転軸中心に回転させることによって、簡単に第一回転体と第二回転体とを磁気的に結合したり解除したりすることができる。
また、各磁極は隣り合う2つの同一磁極の間隔d1を同一磁極で埋めて一体のものとしてもよい。例えば、回転軸中心の角度幅が2*w1+d1の磁極が間隔d1で極性を交互にして配置されていても良い。また、一体の磁石を着磁することによって、表面に磁極が前記のように交互に現れる一体のものとすることもできる。
【0047】
図10は、本発明の実施の形態3の動力伝達装置の要部斜視図である。同図において30は回転軸32とともに回転する回転体、31は回転体30に設けられた円盤状のヨークであり、ヨーク31の端面31aには後述するようにS極、N極の各磁極が放射状に周期的に設けられている。40は回転軸32と回転中心を共有する回転軸42とともに回転する回転体、41は回転体40に設けられた円盤状のヨークであり、ヨーク41の端面41aには後述するようにS極、N極の各磁極が放射状に周期的に設けられている。ヨーク31の端面31aとヨーク41の端面41aは、各々回転軸32、回転軸42に対して直行する平面であり、間隔g5を介して対向している。
【0048】
図11(A)はヨーク31の端面31a側の平面図であり、同図に示すように、ヨーク31の端面31aにはS極sa1、N極na1、S極sa2、N極na2、・・・S極san、N極nanからなる外側の磁極列とS極sb1、N極nb1、S極sb2、N極nb2、・・・S極sbn、N極nbnとからなる内側の磁極列が同心円状に設けられている。
【0049】
S極sa1、N極na1、S極sa2、N極na2、・・・S極san、N極nanの形状は互いに同一であり、回転方向に沿って互いに等間隔に設けられている。また、S極sb1、N極nb1、S極sb2、N極nb2、・・・S極sbn、N極nbnの形状も互いに同一であり、回転方向に沿って互いに等間隔に設けられている。S極sa1、N極na1、S極sa2、N極na2、・・・S極san、N極nanの半径方向の長さwaとS極sb1、N極nb1、S極sb2、N極nb2、・・・S極sbn、N極nbnの半径方向の長さwbは、磁気作用力を考慮して、wa<wb、と設定している。
【0050】
ヨーク31は、S極sa1、N極na1、S極sa2、N極na2、・・・S極san、N極nanからなる外側の磁極列とS極sb1、N極nb1、S極sb2、N極nb2、・・・S極sbn、N極nbnとからなる内側の磁極列とを有する回転ヨークとに分割可能であり、かつカム機構等を備えた切り換え機構33により外側の回転ヨークが回転方向に沿って磁極1個分だけずらすことが可能となっている。
【0051】
図11(B)はヨーク41の端面41a側の平面図であり、同図に示すように、ヨーク41の端面41aにはS極sc1、N極nc1、S極sc2、N極nc2、・・・S極scn、N極ncnからなる磁極列が放射状に設けられている。S極sc1、N極nc1、S極sc2、N極nc2、・・・S極scn、N極ncnの形状は互いに同一であり、回転方向に沿って互いに等間隔に設けられている。
S極sc1、N極nc1、S極sc2、N極nc2、・・・S極scn、N極ncnの半径方向の長さwcは、(wa+wb)と等しい。
要するに、本実施の形態に係る動力伝達装置は第1回転体と第2回転体とから構成されており、第1回転体は、回転軸に平行な面で分割された2つのヨークと、前記ヨークのそれぞれに所定の角度間隔(θ)で、回転軸方向を向く磁極が・・・NSNS・・・のように交互に回転軸周りに配置されており、前記2つのヨークは回転軸周りに相対位置を調整可能に構成されている。
第2回転体は、ヨークと前記ヨークに所定の角度間隔(第1回転体と同じ角度間隔)で、回転軸方向を向く磁極が・・・NSNS・・・のように交互に回転軸周りに配置されている。 そして、第1回転体の磁極と第2回転体の磁極とが所定の間隔を保ち対向するように配置されている。そのため、第1回転体の2つのヨークを回転軸周りにθ回転させ相対位置をずらすことにより、第1回転体と第2回転体の動力伝達を行わせたり切ったりすることができる。
【0052】
次いでこのような動力伝達装置の動作について図面を用いて説明する。図13は、図11(A)に示す端面31aと図11(B)に示す端面41aが対向する場合の動作説明図である。同図に示すように、S極sa1、S極sb1はN極nc1と、N極nam、N極nbmはS極scmと対向している。同様に図示を省略した他の磁極、すなわちN極na1とN極nb1、S極sa2とS極sb2、・・・N極nanとN極nbnは各々端面41aのS極sc1、N極n2、・・・S極scnと対向し、異極同士が互いに対向している。
【0053】
この場合、N極nc1、N極namとN極nbmの各磁極から出る磁束は、各々矢印1caと矢印1cb、矢印macと矢印mbcで示されるように各々対向するS極sa1とS極sb1、S極scmに到達する。他の磁極においても同様な磁束が対向する異極に到達する。
従って、ヨーク31とヨーク41はこれら磁気作用により互いに結合されるので、回転体30あるいは回転体40のどちらか一方をモータ等により回転駆動すると、その回転駆動力は他方に伝達される。
【0054】
続いて、切り換え機構33により、ヨーク31において外側の回転ヨークを回転方向に沿って磁極1個分だけずらす。つまり図12(A)に示すように、ヨーク31の端面31aにはN極nan、S極sa1、N極na1、S極sa2、N極na2、・・・S極sanからなる外側の磁極列とS極sb1、N極nb1、S極sb2、N極nb2、・・・N極nbnとからなる内側の磁極列とを同心円状に配列する。
ヨーク41の磁極配列は、図12(B)に示す通り、図11(B)の場合と同じとする。
このようにすると、N極nan、S極sb1がN極nc1と、S極sam−1、N極nbmがS極scmと対向する。同様に他の磁極、すなわちS極sa1とN極nb1、N極na1とS極sb1、・・・S極sanとN極nbnが端面41aのS極sc1、N極n2、・・・S極scnと対向する。
【0055】
図14は、図12(A)に示す端面31aと図12(B)に示す端面41aが対向する場合の動作説明図である。この場合、N極nc1から出る磁束は、一部が矢印1cbに示されるようにS極sb1到達し、互いに引き合う磁気作用を生じる。一方、N極nc1とN極nanは同極同士が対向することになり、互いに反発する磁気作用を生じる。
同様に、N極nbmから出る磁束は、一部が矢印mbcに示されるようにS極scm到達し、互いに引き合う磁気作用を生じる。一方、S極sam−1とS極scmは同極同士が対向することになり、互いに反発する磁気作用を生じる。
【0056】
ところで、この場合、これら引き合う磁気作用と反発する磁気作用が相互に打ち消し合うように、各磁極の大きさが設定されているので、ヨーク31とヨーク41との磁気的結合は解除され、回転体30あるいは回転体40のどちらか一方をモータ等により回転駆動しても、その回転駆動力は他方に伝達されない。
【0057】
図10乃至図14にて説明した本発明の動力伝達装置の実施の形態3においては、円盤状のヨーク31の端面31aとヨーク41の端面41aが間隔g5を介して対向している。ヨーク31の端面31aにS極、N極の各磁極が放射状に周期的に設けられ、ヨーク31は、S極sa1、N極na1、S極sa2、N極na2、・・・S極san、N極nanからなる外側の磁極列とS極sb1、N極nb1、S極sb2、N極nb2、・・・S極sbn、N極nbnとからなる内側の磁極列とを有する回転ヨークとに分割可能であり、かつ外側の回転ヨークが回転方向に沿って磁極1個分だけずらすことが可能となっている。
一方、ヨーク41の端面41aにはS極sc1、N極nc1、S極sc2、N極nc2、・・・S極scn、N極ncnからなる磁極列が放射状に周期的に設けられている。
【0058】
これと同じ原理を利用し、円筒の周面に磁極を設けるとともに、円筒の外周面と内周面とを対向させることも可能である。このような本発明の動力伝達装置の実施の形態を図面を用いて説明する。図15は本発明に係わる実施の形態4の動力伝達装置の要部展開斜視図であり、同図において51は回転中心52の周りに回転する回転体に設けられた円筒状のヨークであり、ヨーク51の外周面51aにはS極sp1、N極np1、S極sp2、N極np2、・・・S極spn、N極npnからなる図示左方の磁極列とS極sq1、N極nq1、S極sq2、N極nq2、・・・S極sqn、N極nbnとからなる図示左方の磁極列が回転方向に並べて設けられている。
S極sp1、N極np1、S極sp2、N極np2、・・・S極spn、N極npn及びS極sq1、N極nq1、S極sq2、N極nq2、・・・S極sqn、N極nbnの形状は互いに同一であり、軸方向の長さはともにlpである。これら各磁極は、回転方向に沿って互いに等間隔に並設されている。
【0059】
61は回転体に設けられた円筒状のヨークであり、ヨーク61の内周面61aにはN極nr1、S極sr1、N極nr2、S極sr2、・・・N極nrn、S極srnからなる磁極列が回転方向に設けられている。N極nr1、S極sr1、N極nr2、S極sr2、・・・N極nrn、S極srnの形状は互いに同一であり、軸方向の長さはともに2*lpである。これら各磁極は、回転方向に沿って互いに等間隔に並設されている。
N極nr1、S極sr1、N極nr2、S極sr2、・・・N極nrn、S極srnの回転方向の幅は、S極sp1、N極np1、S極sp2、N極np2、・・・S極spn、N極npn及びS極sq1、N極nq1、S極sq2、N極nq2、・・・S極sqn、N極nbnの回転方向の幅と等しい。
【0060】
ヨーク51及びヨーク61の回転中心は、図16(A)の側面図及び、図16(B)の正面図に示すように同一であり、ヨーク51の外周面51aとヨーク61の内周面61aが所定の間隔を介して対向するとともに、S極sp1、N極np1、S極sp2、N極np2、・・・S極spn、N極npn及びS極sq1、N極nq1、S極sq2、N極nq2、・・・S極sqn、N極nbnとN極nr1、S極sr1、N極nr2、S極sr2、・・・N極nrn、S極srnとが対向するよう、ヨーク51とヨーク61が軸方向の位置を調節されている。
【0061】
ヨーク51は、S極sp1、N極np1、S極sp2、N極np2、・・・S極spn、N極npnからなる磁極列とS極sq1、N極nq1、S極sq2、N極nq2、・・・S極sqn、N極nqnとからなる磁極列とを有する回転ヨークとに分割可能であり、かつ図示しないカム機構等を備えた切り換え機構により一方の回転ヨークが回転方向に沿って磁極1個分だけずらすことが可能となっている。
要するに、本実施の形態に係る動力伝達装置は第1回転体と第2回転体とから構成されており、第1回転体は、回転軸に垂直な面で分割された2つのヨークと、前記ヨークのそれぞれに所定の角度間隔(θ)で、半径方向を向く磁極が・・・NSNS・・・のように交互に回転軸周りに配置されており、前記2つのヨークは回転軸周りに相対位置を調整可能に構成されている。
第2回転体は、ヨークと前記ヨークに所定の角度間隔(第1回転体と同じ角度間隔)で、半径方向を向く磁極が・・・NSNS・・・のように交互に回転軸周りに配置されている。
そして、第1回転体の磁極と第2回転体の磁極とが所定の間隔を保ち対向するように配置されている。そのため、第1回転体の2つのヨークを回転軸周りにθ回転させ相対位置をずらすことにより、第1回転体と第2回転体の動力伝達を行わせたり切ったりすることができる。
【0062】
このような動力伝達装置の動作は、図10乃至図14にて説明した本発明の動力伝達装置の実施の形態3の場合と同様である。即ち、外周面51aの磁極と内周面61aとは異極同士が互いに対向し、ヨーク51とヨーク61はこれら磁気作用により互いに結合されるので、回転体のどちらか一方をモータ等により回転駆動すると、その回転駆動力は他方に伝達される。
【0063】
続いて、切り換え機構等により、ヨーク51において右方の回転ヨークを回転方向に沿って磁極1個分だけずらす。つまり図17に示すように、ヨーク51の端面51aにはS極sp1、N極np1、S極sp2、N極np2、・・・N極npnとからなる左方の磁極列と、N極nqn、S極sq1、N極nq1、S極sq2、N極nq2、・・・S極sqnからなる右方の磁極列とを配列する。
一方、ヨーク61の磁極配列は、図15に示す場合と同じとする。
このようにすると、S極sp1、N極nqnがN極nr1と、N極np1、S極sq1がS極sr2と対向する。すなわちヨーク51の端面51aには軸方向に互いに異極同士が並びこれらが内周面61aの各磁極と対向する。
【0064】
従って、図14の場合と同様に、引き合う磁気作用と反発する磁気作用が相互に打ち消し合うように作用し、ヨーク51とヨーク61との磁気的結合は解除され、回転体のどちらか一方をモータ等により回転駆動しても、その回転駆動力は他方に伝達されない。
【0065】
次に、図18乃至図28を用いて本発明の実施の形態5の動力伝達装置を説明する。図18は本発明の実施の形態5の動力伝達装置の要部斜視図であり、同図において70は円筒状の回転体、80は回転体70と共通の回転軸心を中心に回転可能な回転体、82は回転体80の回転軸である。回転体80は回転体70の内側に位置していて、回転体70の最内周面と回転体80の最外周面とは僅かの隙間を保持しつつ回転する。
回転体80は、回転体70に対して軸方向の相対位置を切替え可能であり、その切替え機構については後述する。回転体70の円筒状ケース73の一端にはフランジ74が形成され、フランジ74に円盤状のケース75が連結部材76a、76b、76c、76dを用いて取付けられている。
【0066】
図19は、回転中心を通る平面で切断した回転体70の要部断面斜視図であり、同図に示すように回転体70は円筒状ケース73の内面に磁性材からなるリング状のバックヨークMr1、Mr2、Mr3、Mr4が中心軸と平行に互いに等間隔に取付けられた構成となっている。バックヨークMr1の内周には磁極M11n、M11s、・・・・・M1mn、M1msが等間隔で配置されており、同様にバックヨークMr2、Mr3、Mr4の各々の内側には磁極M21n、M21s、・・・・・M2mn、M2ms、M31n、M31s、・・・・・M3mn、M3ms、M41n、M41s、・・・・・M4mn、M4msが各々回転方向に等間隔で配置されている。
【0067】
バックヨークMr1、Mr2、Mr3、Mr4は、連結部材77a、77b、77c、77dにより連結固定されるが、その場合、各間に軸方向の厚さtgのスペーサ78a、78b、78cを介挿し連結固定される。
ケース75の外側の面には回転軸82の軸受け構造を有する軸受け72が形成されており、ケース75の内側の面には円盤状の磁石79が取付けられている。磁石79は
共に放射形状の磁極が回転方向に交互に極性を配置されたものである。
【0068】
図20は、回転体80の要部斜視図であり、便宜上斜視の方向は図18の場合とは異ならせている。同図に示すように回転体80は、回転軸82と一体に取付けられた円筒状の支持部83と、支持部83の外周に互いに等間隔に取り付けられた磁性材からなるリング状のヨークYr1、Yr2、Yr3、Yr4、Yr5で構成されている。ヨークYr1、Yr2、Yr3、Yr4、Yr5は、連結部材87a、87b、87c、87dによって互いに連結固定されている。支持部83の一方の端面には円盤状金属板89が取付けられ、この端面が円盤状の磁石79と対向するように回転体70に挿入され、組立てられる。金属板89はアルミニウム、あるいは銅などの導電性材料からなり、回転体70と回転体80の相対回転数に対応して、磁石79がもたらす磁束の変化によって渦電流を発生させる構成となっている。
【0069】
図21は、バックヨークMr1の構造図である。バックヨークMr1の内周側には角度θごとに磁極M11n、M11s、・・・・・M1mn、M1msが配置されている。磁極M11n、M12n、・・・・・M1mnはN極、磁極M11s、M12s、・・・・・M1msはS極であり、N極とS極は交互に配置されている。バックヨークMr1の軸方向の厚さはtmであり、バックヨークMr1の肉厚部には連結部材77a、77b、77c、77dを通すための貫通孔hm11、hm12、hm13、hm14が中心軸と平行に同心円状に設けられている。
バックヨークMr2、Mr3、Mr4は、連結部材77a、77b、77c、77dを通す貫通孔の位置をバックヨークMr1に対して順次角度θ/2、角度θ、角度(1+1/2)θだけ変位させもので、他の部分はバックヨークMr1の構成とまったく同じである。
【0070】
図22は、ヨークYr1の構造図である。ヨークYr1の外周側には角度θごとに凸部Y111、Y112、Y121、・・・・・Y1m2が形成されている。ヨークYr1の軸方向の厚さはty、凸部Y111、Y112、・・・・・Y1m2の軸方向の厚さはtzであり、tzはtyより若干小さい値である。凸部Y111、Y112、・・・・・Y1m2は、ヨークYr1の軸方向と直交する中心面Cに対して対象に形成されている。ヨークYr1の肉厚部には連結部材87a、87b、87c、87dを通すための貫通孔hy11、hy12、hy13、hy14が中心軸と平行に同心円状に設けられている。
ヨークYr2、Yr3、Yr4、Yr5は、連結部材87a、87b、87c、87dを通す貫通孔の位置をバックヨークMr1に対して交互に角度1/2θだけ変位させもので、他の部分はヨークYr1の構成とまったく同じである。
なお、厚さtm、厚さtg、厚さtyには関係は次の関係がある。即ち、tm+tg=tyであり、tyを軸長方向の対向単位という。
【0071】
図23は、回転体70と回転体80の軸方向の相対位置を切替える機構の説明図である。図23(A)は、回転体80が回転体70側に押付けられた状態、即ち後述する動力伝達可能な状態の説明図である。同図において、91は支点92を中心に回動するレバーで、レバー91の一方の端部91aは回転軸82に取付けられた鍔部93a、93bの間に係合された構成となっている。94は回転軸82に取付けられた位置決め板、95は位置規制ガイドであり、位置規制ガイド94は図示を省略した回転体70側に取付けられている。
このように構成された切替え機構において、レバー91を矢印イ方向に操作すると、レバー91の端部91aが鍔部93a、93bを介して回転軸82および回転体80を矢印ロ方向に、距離ty/2だけ移動させる。図23(B)は、回転体80が回転体70から距離ty/2だけ引き離された状態、即ち後述する動力伝達が遮断された状態の説明図である。
要するに、本実施の形態に係る動力伝達装置は第1回転体と第2回転体とから構成されており、第1回転体は、ヨークと、前記ヨーク表面に回転軸を中心として円周方向に角度間隔(θ)で等間隔に交互に磁極を反転させながら配置された複数の磁極列が、角度θ/2づつ変位させつつ回転軸方向に積層して構成されている。
第2回転体は、ヨーク表面に回転軸を中心として円周方向に角度間隔(θ)で等間隔に凸部分が設けられており、これら凸部分が角度θ/2づつ変位させつつ回転軸方向に積層して構成されている。
そして、第1回転体の磁極と第2回転体の凸部分とが所定の間隔を保ち対向するように配置されており、第1回転体と第2回転体とは、回転軸方向に相対位置を切り替え可能となっている。
【0072】
続いてこのような動力伝達装置の動作について図を用いて説明する。まず、回転体70と回転体80との間に互いに動力伝達が行われるときの動作について説明する。図24は、動力伝達装置が切替え機構により動力伝達側にセットされたとき、即ちオン状態の動力伝達装置の要部断面図であり、切替え機構等が省略されている。この場合、バックヨークMr1、Mr2、Mr3、Mr4の軸長方向の各中心位置は、ヨークYr1、Yr2、Yr3、Yr4の軸長方向の中心位置と各々一致している。即ち、バックヨークMr1、Mr2、Mr3、Mr4と、ヨークYr1、Yr2、Yr3、Yr4は、互いの対向する面が同期して吸引状態となっており、回転体70の回転に伴い回転体80が連れ回りして回転力が伝達される。
【0073】
図25(A)は、このようなオン状態のバックヨークMr1、Mr2、ヨークYr1、Yr2の要部を平面に展開した図である。即ちオンの時は、磁極M11n、M11s、M12n、・・・、M1msの長さtmの全ての部分にわたり、凸部Y111、Y112、・・・・・Y1m2が対向し、磁極M21n、M21s、M22n、・・・、M2msの長さtmの全ての部分にわたり、凸部Y211、Y212、・・・・・Y2m2が対向して回転する。
【0074】
このときの伝達トルクについて、図26、図27を用いて説明する。
図26は、回転体70と回転体80を回転軸心に垂直な面で切断した要図断面図であり、便宜上、回転体80を固定し回転体70を時計方向にそれぞれの角度を回した場合のヨークと磁極の関係を示した。
図26(A)において、バックヨークMr1とヨークYr1の回転方向の位置は、磁極M11n、M11s、M12n、・・・、M1msと凸部Y111、Y112、・・・・・Y1m2が各々最接近するような関係で対向して安定しており、この状態の回転トルクはゼロである。
【0075】
次に、図26(A)より回転体70を駆動源より矢印ハ方向に回転させ、回転体80と回転体70の回転角度が角度θ1の状態を表した図が図26(B)である。この状態では回転体70は磁極M11n、M11s、M12n、・・・、M1msに対して凸部Y111、Y112、・・・・・Y1m2間の吸引力により矢印ハと反対方向に引き戻される回転力が働く。
【0076】
図26(C)は更に回転体70を角度θ2の状態まで回し、回転体80の磁極M11n、M11s、M12n、・・・、M1msに対して凸部Y111、Y112、・・・・・Y1m2がその中間位置となった状態を示している。この状態では、回転体80の凸部Y111、Y112、・・・・・Y1m2がそれぞれの最も近い磁極の中間位置にあり、それぞれの磁極にほぼ同じ力で引っ張られる。この場合の回転トルクはゼロであるが、不安定な状態にある。
【0077】
図27は、以上説明した伝達トルクを示すグラフである。図27(A)において、横軸は回転体80に対する回転体70の相対回転角度、縦軸は伝達トルクを示し、曲線ニはバックヨークMr1とヨークYr1の伝達トルクの変化を示すものである。回転角度0度は図26(A)に示した状態に対応し、角度θ1は図26(B)に示した状態に対応し、角度θ2は図26(C)に示した状態に対応する。
なお、回転体70から回転体80に伝達されるトルクは、バックヨークMr1、Mr2、Mr3、Mr4とヨークYr1、Yr2、Yr3、Yr4間の全体によって伝達されるトルクの総和であり、伝達されるトルクの最大値は4*Tmaxである。
【0078】
次いで、回転体70と回転体80との間に動力伝達が行われないときの動作について説明する。図28は、動力伝達装置が切替え機構により動力伝達遮断側にセットされたとき、即ちオフ状態の動力伝達装置の要部断面図である。
この状態は、前述の図24に示したオン状態の場合に比較して、回転体80を回転体70に対して矢印チ方向にty/2だけ移動させたものであり、バックヨークMr1、Mr2、Mr3、Mr4の軸長方向の各中心位置は、ヨークYr1、Yr2、Yr3、Yr4、Yr5の軸長方向の各境界面と一致している。
【0079】
これをさらに詳しく説明する。図25(B)は、図28に示したバックヨークMr1、Mr2、ヨークYr1、Yr2の要部を平面に展開した図であり、図25(A)に示したオンの時に比べると、オフの時は、磁極M11n、M11s、M12n、・・・、M1msの図中左側の長さ(tm/2−tg)部分だけに、凸部Y111、Y112、・・・・・Y1m2が対向し、右側の残りの部分が空白部に位置する。同様に、磁極M21n、M21s、M22n、・・・M2mn、M2msの図中左側の長さ(tm/2−tg)部分だけに、凸部Y211、Y212、・・・・・Y2m2が対向し、凸部Y211、Y212、・・・・・Y2m2の左側の残り部分が磁極M11n、M11s、M12n、・・・M1mn、M1msの中間に位置する。
【0080】
この伝達トルク特性を表したグラフが図27(B)である。図において、横軸は回転体80に対する回転体70の相対回転角度、縦軸は伝達トルクであり、ここに示す曲線ホはバックヨークMr1の磁極M11n、M11s、M12n、・・・、M1msの図中左側の長さ(tm/2−tg)部分とヨークYr1の凸部Y111、Y112、・・・・・Y1m2の一部分だけが対向したときの伝達トルクの変化を示すものである。又、曲線ヘは、凸部Y211、Y212、・・・・・Y2m2の左側の残り部分が磁極M11n、M11s、M12n、・・・M1mn、M1msの中間に位置するときの伝達トルクの変化を示すものである。この曲線ホと曲線ヘはほぼ対照的な値を示し、曲線ホと曲線ヘを重ね合せたものは、図中直線トで示すように伝達トルクがほぼゼロとなる。従って、
この状態の伝達トルクの総和もゼロである。
【0081】
ここで、過大なトルク変動があった場合、例えば、動力伝達装置を起動させたときなどに作用する、磁石79と円盤状金属板89による渦電流発生機構について説明をする。動力伝達装置をオン状態にセットしたとき、磁石79と円盤状金属板89は接近し、回転体70に回転体80が安定的に追随するまでの間、磁石79と円盤状金属板89との回転速度が相対的に変化するので、円盤状金属板89には渦電流が発生する。この渦電流によりオフからオンへの切替え時に過剰なトルク変動によって生じる回転駆動力伝達のスリップ状態が連れ回り状態即ち同期状態に復帰する。即ち、慣性等による大きな負荷変動があったとしても、滑らかで安定したクラッチ切り替えが行われる。
【0082】
本発明の実施の形態5の動力伝達装置は、回転体70のバックヨークMr1、Mr2、Mr3、Mr4に取付けられた各磁極と、回転体80のヨークY1、Y2、Y3、Y4、Y5に形成された各凸部を対抗させて、磁気作用を働かせるとともに、磁気作用を打ち消すようにしたものである。
このように磁極とヨーク凸部を対向させるものに対して、ヨーク凸部を磁極に代えて磁極と磁極を対向させ、磁気作用を働かせるとともに、打ち消すようにすることも可能である。
【0083】
続いて、このような本発明の実施の形態6の動力伝達装置について、図29および図30を用いて説明する。図29は本発明の実施の形態6の動力伝達装置の要部構造図であり、同図において100は円筒状の回転体、110は回転体100と共通の回転軸心を中心に回転可能な回転体、112は回転体110の回転軸である。回転体110は回転体100の内側に位置しており、回転体100の最内周面と回転体110の最外周面とは僅かの隙間を保持している。回転体100と回転体110の軸方向の相対位置を切替える切替え機構については、図23に示したものと同一であるので、その部分を省略する。
【0084】
回転体100の円筒状ケース103の一端には円盤状のケース105が連結部材を用いて取付けられている。円筒状ケース103は、磁性材からなりバックヨークを兼ねている。円筒状ケース103の内周面には、N極とS極を交互に配置した磁極M111n、M111s、・・・・・M11mn、M11ms、M121s、M121n、・・・・・M12ms、M12mn、M131n、M131s、・・・・・M13mn、M13ms、M141s、M141n、・・・・・M14ms、M14mn、M151n、M151s、・・・・・M15mn、M15msが等間隔に、図19の場合の磁極に比べて1層多い、5層のリング状に配置されている。ケース105の外側の面には回転軸112の軸受け構造を有する軸受け102が形成されており、ケース105の内側の面には円盤状の磁石109が取付けられている。
要するに、本実施の形態に係る動力伝達装置は第1回転体と第2回転体とから構成されており、第1回転体および第2回転体は、ヨークと、前記ヨーク表面に回転軸を中心として円周方向に角度間隔(θ)で等間隔に交互に磁極を反転させながら配置された複数の磁極列が、回転軸方向に積層して構成されている。
そして、第1回転体の磁極と第2回転体の磁極とが所定の間隔を保ち対向するように配置されており、第1回転体と第2回転体とは、回転軸方向に相対位置を切り替え可能となっている。
【0085】
回転体110の回転軸112と一体に取付けられた円筒状の支持部113は、磁性材からなり、ヨークを兼ねている。支持部113の外周面には、図20の場合の凸部に代えて、N極とS極を交互に配置した磁極M211s、M211n、・・・・・M21ms、M21mn、M221n、M221s、・・・・・M22mn、M22ms、M231s、M231n、・・・・・M23ms、M23mn、M241n、M241s、・・・・・M24mn、M24ms、M251s、M251n、・・・・・M25ms、M25mnが等間隔に、5層のリング状に配置されている。
支持部113の磁石109と対向する面には円盤状金属板119が取付けられている。金属板119はアルミニウム、あるいは銅などの導電性材料からなり、回転体100と回転体110の相対回転数に対応して渦電流を発生させる構成となっている。
【0086】
次にこのような動力伝達装置の動作について、まず、回転体100と回転体110との間に互いに動力伝達が行われるときの動作について説明する。図29(B)は、動力伝達装置が図示を省略した切替え機構により動力伝達側にセットされたとき、即ちオン状態の動力伝達装置の要部断面図に相当する。この場合、磁極M111s、M121n、M131s、M141n、M151sの軸方向長さの各中心位置は、磁極M211n、M221s、M231n、M241s、M251nの軸方向長さの各中心位置と一致している。
【0087】
この状態では、回転体100の磁極M111n、M111s、・・・・・M11mn、M11ms、M121s、M121n、・・・・・M12ms、M12mn、M131n、M131s、・・・・・M13mn、M13ms、M141s、M141n、・・・・・M14ms、M14mn、M151n、M151s、・・・・・M15mn、M15msに、回転体110の磁極M211s、M211n、・・・・・M21ms、M21mn、M221n、M221s、・・・・・M22mn、M22ms、M231s、M231n、・・・・・M23ms、M23mn、M241n、M241s、・・・・・M24mn、M24ms、M251s、M251n・・・・・M25ms、M25mnが、各々最接近するような関係で対向して安定する。即ち、異極同士が互いに引き合い安定する。
従って、回転体100を駆動源より矢印リ方向に回転させると、回転体110はこの状態を維持しながら回転体100に追随して回転する。その伝達トルクの特性は、本発明の実施の形態5の伝達トルクの特性と同様である。
【0088】
動力伝達装置をオン状態にセットしたとき、磁石109と円盤状金属板119による渦電流発生機構についても、本発明の実施の形態5の動作と同様である。即ち、磁石109と円盤状金属板119が接近し、回転体100に回転体110が安定的に追随するまでの間、磁石109と円盤状金属板119との回転数が相対的に変化するので、円盤状金属板119には渦電流が発生する。この渦電流により動力伝達装置をオン状態に切替えたときの過剰なトルク変動によって生じる回転駆動力伝達のスリップ状態が連れ回り状態即ち同期状態に復帰する。
【0089】
次いで、回転体100と回転体110との間に互いに動力伝達が行われないときの動作について説明する。図30は、動力伝達装置が切替え機構により動力伝達遮断側にセットされたとき、即ちオフ状態の動力伝達装置の要部断面図である。この状態は、図29(B)に比べて、回転体110を回転体100に対して矢印ヌ方向に1/2対向単位だけ移動させたものである。
この状態の磁極M111s、M121n、M131s、M141n、M151sの図中左側の長さ(tm/2−tg)部分が磁極M211n、M221s、M231n、M241s、M251nの右側の部分と対向し、磁極M111s、M121n、M131s、M141n図中右側の長さ(tm/2−tg)部分が磁極M211n、M221s、M231n、M241sの左側の部分と対向する。
【0090】
この状態において回転体100を駆動源より矢印リ方向に回転させると、回転体110は、一方の部分で回転方向の力を受けるとともに、他方の部分で逆方向の引力あるいは斥力を受け、回転に反発する。従って、回転方向の力と反発力をバランスさせることにより磁気作用が打ち消され、図27(B)の直線トで示されるものと同様に伝達トルクはゼロとなり、回転体100を矢印リ方向に回転させても、回転体110は回転することがない。
【0091】
また、本発明の実施の形態5の動力伝達装置においては、回転体70に磁石79を、回転体80に金属板89を各々取付けたが、回転体70に金属板89を、回転体80に磁石79を各々取付けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上のように、本発明に係わる動力伝達装置は、携帯用電動工具をはじめ、クラッチを備えた各種機械装置に有効に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明に係わる実施の形態1の動力伝達装置の全体を示す斜視図である。
【図2】図1の動力伝達装置の実施の形態の部分斜視図である。
【図3】図1に関連する動力伝達装置の部分断面図である。
【図4】図1に関連する動力伝達装置の動作説明図である。
【図5】図1に関連する動力伝達装置の他の動作説明図である。
【図6】本発明の実施の形態2の動力伝達装置の要部斜視図である。
【図7】図6に示した動力伝達装置の2つの回転体の対向面を中心にした展開図である。
【図8】図6の動力伝達装置の回転体10の可動ヨークを除いた要部斜視図である。
【図9】図6に示した動力伝達装置の回転体10の動作説明図である。
【図10】本発明に係わる実施の形態3の動力伝達装置の要部斜視図である。
【図11】図10に関連する動力伝達装置の要部平面図であり、図11(A)はヨーク31の平面図、図11(B)はヨーク41の平面図である。
【図12】図10に関連する動力伝達装置の切り換え後の要部平面図であり、図12(A)はヨーク31の平面図、図12(B)はヨーク41の平面図である。
【図13】図10に関連する動力伝達装置の動作説明図である。
【図14】図10に関連する動力伝達装置の他の動作説明図である。
【図15】本発明に係わる実施の形態4の動力伝達装置の要部展開斜視図である。
【図16】図15に関連する動力伝達装置の説明図であり、図16(A)は側面図、図16(B)は正面図である。
【図17】図15に関連する動力伝達装置の切り換え後の要部展開斜視図である。
【図18】本発明に係わる実施の形態5の動力伝達装置の要部斜視図である。
【図19】図18に関連する動力伝達装置の要部断面斜視図である。
【図20】図18に関連する回転体80の要部斜視図である。
【図21】図18に関連するバックヨークMr1の構造図であり、図21(A)は斜視図、図21(B)は側面図、図21(C)は中心軸を通る面での断正面図である。
【図22】図18に関連するヨークYr1の構造図であり、図22(A)は斜視図、図22(B)は側面図、図22(C)は正面図である。
【図23】図18に関連する切替え機構の説明図であり、図23(A)は、動力伝達可能な状態の説明図、図23(B)は、動力伝達が行われない状態の説明図である。
【図24】図18に関連するオン状態のときの動力伝達装置の要部断面図である。
【図25】図18に関連する動力伝達装置の説明図であり、図25(A)はオン状態のときのバックヨークMr1、Mr2、ヨークYr1、Yr2の要部展開平面図、図25(B)はオフ状態のときのバックヨークMr1、Mr2、ヨークYr2、Yr3の要部展開平面図である。
【図26】図18に関連する動力伝達装置の要図断面図であり、図26(A)、図26(B)、図26(C)は、回転体70と回転体80の回転位置を各々変えたときの要図断面図である。
【図27】図18に関連する動力伝達装置の伝達トルク特性を示すグラフである。
【図28】図18に関連するオフ状態のときの動力伝達装置の要部断面図である。
【図29】本発明に係わる実施の形態6の動力伝達装置の要部構造図であり、図29(A)は側面図、図29(B)はオン状態のときの動力伝達装置の要部断面図である。
【図30】図29に関連するオフ状態のときの動力伝達装置の要部断面図である。
【符号の説明】
【0094】
1、32、42、82、112 回転軸
72、102 軸受け
10、20、30、40、70、80、100、110 回転体
11,21、31、41、51,61 ヨーク
y1、y2、・・・・、ym ヨーク
y10、y11、・・・・、ymn ヨーク
n1、n2、s1、s2、・・・sm−1、sm 磁極
s10、n11、n12、・・・、s1n 磁極
sa1、sb1、na1、sc1、nc1 磁極
Mr1、Mr2、Mr3、Mr4 バックヨーク
Yr1、Yr2、Yr3、Yr4、Yr5 ヨーク
M11n、M11s、M12n、・・・、M1ms、・・・、M4ms 磁極
Y111、Y112、・・・、Y1m2、・・・、Y5m1、Y5m2 凸部
79、109 磁石
89、119 金属板
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気作用を利用して回転駆動力を伝達する動力伝達装置に関し、特に回転駆動力の伝達がオンーオフ可能な磁気クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気作用を利用して回転駆動力を伝達するとともに回転駆動力の伝達がオンーオフ可能な動力伝達装置としては、電磁石を利用した電磁クラッチが知られている。このような電磁クラッチにおいては、電磁石のコイルに電流を流したときに発生する磁界により駆動側と従動側とが結合され、回転駆動力が駆動側から従動側に伝達される。また、電磁石のコイルに流す電流を遮断したときは磁界が消滅して駆動側と従動側との結合が解除され、回転駆動力が従動側に伝達されないようになっている。
従って、回転駆動力の伝達がオン状態のとき、常に電流を流し続ける必要があり、電力の消費量が大きかった。そのため、電池の消耗が激しい、あるいは環境負荷が大きいという問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開2003−117754号公報
【特許文献2】特開平9−74777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、永久磁石を用いて駆動側と従動側が結合されるとともに駆動側と従動側との結合が解除可能となし、回転駆動力の伝達がオン、オフいずれの状態のときも電力消費を不要とする動力伝達装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る動力伝達装置によれば、回転軸の周りに回転する磁石を有する第1回転体と、該第1回転体に対して相対的に回転可能で、かつ前記第1回転体の磁石と対向するヨークを有する第2回転体とが設けられ、前記第1回転体の磁石と前記第2回転体のヨークとの間の磁気作用により一方の回転体の動力が他方の回転体に伝達可能な動力伝達装置であって、前記第1回転体の磁石と前記第2回転体のヨークとの間に形成される磁路を、該ヨーク手前で適宜短絡する可動ヨークが前記第1回転体に取付けられたことを特徴とする動力伝達装置が得られる。
【0006】
また請求項2に係る本発明は、前記第1回転体の磁石が、該第1回転体の回転軸と平行な周面に設けられていることを特徴とする動力伝達装置を提供する。
【0007】
さらに請求項3に係る本発明は、前記第1回転体の磁石が、前記第1回転体の回転軸と直交する平面に設けられていることを特徴とする動力伝達装置を提供する。
【0008】
また請求項4に係る本発明は、前記第2回転体のヨーク面に導電性金属板が設けられたことを特徴とする動力伝達装置を提供する。
【0009】
さらに請求項5に係る本発明は、回転軸の回転方向に沿って交互に異極配列された第1磁石群を有する第1回転体と、該第1回転体に対して相対的に回転可能で、かつ前記第1回転体の前記第1磁石群の各磁極と各々対向するように交互に異極配列された第2磁石群を有する第2回転体とが設けられ、前記第1回転体の第1磁石群と前記第2回転体の第2磁石群との間の磁気作用により一方の回転体の動力が他方の回転体に伝達される動力伝達装置であって、前記第1回転体が回転軸と交差する面もしくは回転軸と平行な面により分割可能であって、かつ分割された回転体の各々に交互に異極配列された前記第1磁石群が設けられ、前記分割された回転体同士が回転方向に対して相対位置を調整可能に構成されていることを特徴とする動力伝達装置が得られる
【0010】
また請求項6に係る本発明は、前記第1磁石群が、前記第1回転体の回転軸と平行な周面に設けられていることを特徴とする動力伝達装置を提供する。
【0011】
さらに請求項7に係る本発明は、前記第1磁石群が、前記第1回転体の回転軸と直交する平面に設けられていることを特徴とする動力伝達装置を提供する。
【0012】
また請求項8に係る本発明は、前記第1磁石群又は前記第2磁石群の少なくとも一方の面に導電性金属板が設けられたことを特徴とする動力伝達装置を提供する。
【0013】
さらに請求項9に係る本発明は、回転軸の周りに回転する第1磁石を有する第1回転体と、該第1回転体に対して相対的に回転可能で、かつ前記第1回転体の第1磁石の各磁極と各々対向するように交互に異極配列された第2磁石あるいは前記第1回転体の第1磁石と対向する磁性材からなるヨーク部(以下ヨーク部と略記する)を有する第2回転体とが設けられ、前記第1回転体の第1磁石と前記第2回転体の第2磁石あるいはヨーク部間の磁気作用により一方の回転体の動力が他方の回転体に伝達可能な動力伝達装置であって、前記第1回転体の第1磁石と前記第2回転体の第2磁石あるいはヨーク部間の磁気作用を打消す方向に、前記第1回転体の第1磁石と前記第2回転体の第2磁石あるいはヨーク部との相対位置が切替え可能に構成されていることを特徴とする動力伝達装置を提供する。
【0014】
また請求項10に係る本発明は、前記第1回転体の第1磁石が、前記第1回転体の周面に設けられていることを特徴とする動力伝達装置を提供する。
【0015】
さらに請求項11に係る本発明は、前記第1回転体の第1磁石と前記第2回転体の第2磁石あるいはヨーク部との相対位置の切替え量が、前記回転軸の軸長方向に対向単位の1/2相当であることを特徴とする動力伝達装置を提供する。
【0016】
さらに請求項12に係る本発明は、前記第1回転体と前記第2回転体との相対運動によって渦電流を発生する渦電流発生機構が設けられたことを特徴とする動力伝達装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、回転軸の周りに回転する磁石を有する第1回転体と第1回転体に対して相対的に回転可能で、かつ第1回転体の磁石と対向するヨークを有する第2回転体との間の磁気作用により、一方の回転体の動力が他方の回転体に伝達されるようにしたので、第1回転体の磁石と第2回転体のヨークとの間に形成される磁路がオン状態となる位置に可動ヨークを設定すれば、第1回転体と第2回転体とが結合され、一方の回転体の回転動力は他方の回転体に伝達される。
一方、第1回転体の磁石と第2回転体のヨークとの間に形成される磁路がオフ状態、つまり磁路がヨーク手前で短絡される位置に可動ヨークを設定すれば、第1回転体と第2回転体との結合が解除され、一方の回転体の回転動力は他方の回転体に伝達されない。
従って、回転駆動力が伝達されるときも、回転駆動力の伝達が解除されるときも電流は不要であり、電力消費は全く生じない。
また、可動ヨークの位置を変えて磁気的な結合をON/OFFする際に、その途中では結合が徐々に開始/終了するため、回転駆動力伝達のオン−オフ時の衝撃を抑制することができる。
【0018】
また第1回転体の磁石が、第1回転体の回転軸と平行な周面に設けられていれば、円筒の周面を用いて第1回転体と第2回転体とを対向させて、回転駆動力の伝達をオンーオフできる。
【0019】
さらに第1回転体の磁石が、第1回転体の回転軸と直交する平面に設けられていれば、円盤の端面を用いて第1回転体と第2回転体とを対向させて、回転駆動力の伝達をオンーオフできる。
【0020】
また、第2回転体のヨーク面に導電性金属板が設けられていれば、導電性金属板を通る磁束変化に応じて渦電流が流れ、その渦電流により回転駆動力伝達のオンーオフ時の衝撃を抑制することができる。
【0021】
さらに本発明によれば、回転軸の回転方向に沿って交互に異極配列した第1磁石群を有する第1回転体と、第1回転体の第1磁石群の各磁極と各々対向するように交互に異極配列された第2磁石群を有する第2回転体が設けられているので、第1回転体の第1磁石群と第2回転体の第2磁石群との間の磁気作用により第1回転体と第2回転体とは結合される。この場合、一方の回転体の回転動力が他方の回転体に伝達される。
【0022】
一方、回転軸と交差する面もしくは回転軸と平行な面により分割可能な第1回転体の回転体同士の各々に交互に異極配列した第1磁石群が設けられ、分割された回転体同士が回転方向に対して相対位置を調整可能に構成されているので、第1回転体の分割された回転体同士間で磁極位置を変えることにより、第1回転体の第1磁石群と第2回転体の第2磁石群との間に発生する磁気作用による回転動力を打ち消し合う状態となすことが可能である。この場合、第1回転体と第2回転体との結合は解除され、一方の回転体の回転動力が他方の回転体に伝達されない。
従って、回転駆動力の伝達がオン状態のときも、回転駆動力の伝達がオフ状態のときも電流は不要であり、電力消費は全く生じない。
【0023】
また第1磁石群が、第1回転体の回転軸と平行な周面に設けられていれば、円筒の周面を用いて第1回転体と第2回転体とを対向させて、回転駆動力の伝達のオンーオフが可能となる。
【0024】
さらに第1磁石群が、第1回転体の回転軸と直交する平面に設けられていれば、円盤の端面を用いて第1回転体と第2回転体とを対向させて、回転駆動力の伝達のオンーオフが可能となる。
【0025】
また、前記第1磁石群又は前記第2磁石群の少なくとも一方の面に導電性金属板が設けられていれば、導電性金属板を通る磁束変化に応じて渦電流が流れ、その渦電流により回転駆動力伝達のオンーオフ時の衝撃を抑制することができる。
【0026】
本発明の動力伝達装置によれば、回転軸の周りに回転する第1磁石を有する第1回転体と第1回転体に対して相対的に回転可能で、かつ第1回転体の第1磁石の各磁極と各々対向するように交互に異極配列された第2磁石あるいは前記第1回転体の第1磁石と対向する磁性材からなるヨーク部を有する第2回転体との間の磁気作用により、一方の回転体の動力が他方の回転体に伝達される。
一方、第1回転体の第1磁石と第2回転体の第2磁石あるいはヨーク部間の磁気作用を打消す位置に、第1回転体の第1磁石と第2回転体の第2磁石あるいはヨーク部との相対位置を切替えると、一方の回転体の回転動力は他方の回転体に伝達されない。
従って、回転駆動力が伝達されるときも、回転駆動力の伝達が解除されるときもオン状態あるいはオフ状態を保持するための電流は不要であり、電力消費は全く生じない。
【0027】
また、第1回転体の第1磁石が、第1回転体の周面に設けられていれば、円筒の周面を用いて第1回転体と第2回転体とを対向させて、回転駆動力伝達のオンーオフが可能となる。
【0028】
さらに、第1回転体の第1磁石と第2回転体の第2磁石あるいはヨーク部との相対位置の切替え量が、回転軸の軸長方向に対向単位の1/2相当であれば、第1回転体の第1磁石と第2回転体の第2磁石あるいはヨーク部間の磁気作用を働かせることも打消すことも容易である。
【0029】
さらに、第1回転体と第2回転体との相対運動によって渦電流を発生する渦電流発生機構が設けられていれば、回転駆動力伝達のオフーオン切替え時の相対回転数に対応させて渦電流を発生させ、その渦電流によりオフからオンへの切替え時に過剰なトルク変動によって生じる回転駆動力伝達のスリップ状態を連れ回り状態即ち同期状態に復帰可能とし、安定したクラッチ切り替え機能を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に図面を参照して本発明に係わる動力伝達装置の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態1の動力伝達装置の全体図、図2は、図1の要部部分斜視図である。又、図3は図2の要部の部分断面図であり図面を判りやすくするため、便宜上一部の箇所を省いている。図1乃至図3において、1は回転軸、10は回転軸1を中心に回転する回転体、11は回転体10に設けられた円筒状のヨークであり、ヨーク11の表面には永久磁石からなる磁極S極s10、N極n11、N極n12、S極s11、S極s12、N極n13、N極n14、・・・、N極n1nが軸方向に沿って直線的に設けられているとともに、隣接してN極n20、S極s21、S極s22、N極n21、N極n22、S極s23、S極s24、・・・、S極s2nが並列に設けられ、全体としてN極nm0、S極sm1、S極sm2、N極nm1、N極nm2、S極sm3、S極sm4、・・・、S極smnまでのm列の磁極列が等間隔で設けられている。
【0031】
S極s10、N極n11、N極n12、S極s11、S極s12、N極n13、N極n14、・・・、N極n1nからN極nm0、S極sm1、S極sm2、N極nm1、N極nm2、S極sm3、S極sm4、・・・、S極smnまでの各磁極の大きさは、厚さがt1、回転軸1方向に沿う長さがl1、幅がw1で、各磁極列における磁極間の間隔はd1である。
【0032】
20は回転軸1を中心に回転体10の外周に沿って回転する回転体で、回転体10とは相対的に回転可能であり、各々図示を省略した軸受け等で支持されている。21は回転体20に設けられた円筒状のヨークである。ヨーク21の内周面には、図2及び図3に示すように、回転軸と平行な直線状の突状部f1、突状部f2、・・・、突状部fmが、互いに等間隔でm列並んで形成されている。
【0033】
突状部f1、突状部f2、・・・、突状部fmは、高さがh1、幅がw1、軸方向の長さが各磁極列の長さと同等である。m列の突状部f1、突状部f2、・・・、突状部fnは、S極s10、N極n11、N極n12、S極s11、S極s12、N極n13、N極n14、・・・、N極n1nからN極nm0、S極sm1、S極nm2、N極nm1、N極nm2、S極sm3、S極sm4、・・・、S極smnまでのm列の磁極列に対向しており、各磁極に対して間隔gを保っている。
【0034】
回転体10には、m列の磁極列に対応する可動ヨーク列、即ちヨークy10、ヨークy11、・・・ヨークy1n、次いでヨークy20、ヨークy21、・・・ヨークy2nからヨークym0、ヨークym1、・・・ヨークymnまでのヨーク列が順次設けられている。ヨークy10からヨークymnの各ヨークの大きさは、厚さがt2、回転軸1方向に沿う長さがl2、幅がw1で、各可動ヨーク列におけるヨーク間の間隔はd1である。これらの大きさは、次の関係式で示される。即ち、l2=2*l1+d1、と示される。
【0035】
ヨークy10、ヨークy11、・・・ヨークy1n、ヨークy20、ヨークy21、・・・ヨークy2nからヨークym0、ヨークym1、・・・ヨークymnまでの各ヨークは、図示を省略した非磁性材からなる支持板に前後左右を等間隔に埋設して互いに連結されており、図示を省略したカム機構などにより回転軸1の方向に所定の距離だけ移動可能な構造となっている。その移動量はd3であり、移動量d3は、次の関係式で示される。即ち、d3=l1+d1、と示される。
ヨークy10、ヨークy11、・・・ヨークy1n、ヨークy20、ヨークy21、・・・ヨークy2nからヨークym0、ヨークym1、・・・ヨークymnまでの各ヨークは、m列の磁極列の各磁極と各々間隔g1を保って対向し、突状部f1、突状部f2、・・・、突状部fmとは各々間隔g2を保って対向するものである。
要するに、第1回転体は、磁性体からなるヨークと、前記ヨーク表面に回転軸を中心として配置された複数の磁極列と、回転軸を中心にして配置されかつ回転軸方向に移動可能な複数の可動ヨーク列とから構成されている。前記磁極列は、磁極が・・・NNSSNNSS・・・のように、2つの磁極が隣り合いこれらが磁極を反転させながら回転軸方向に配置されており、前記可動ヨーク列は、前記磁極列内の隣り合った2つの磁極を同時に覆う形状の磁性体が磁極を2つづつ覆うようにして回転軸方向に複数配置されている。第2回転体は、第1回転体の磁極列周期に合わせた複数の突状部を有するヨークにより構成されている。そして、これらの第1回転体と第2回転体とが所定の間隔を保ち、第1回転体の可動ヨーク面と第2回転体の突状部面とが対向するように配置されることによって、動力伝達装置が構成されている。
【0036】
次にこのような動力伝達装置の動作について説明する。図4は図1に関連する動力伝達装置の回転軸1の中心を通る要部断面図であって、図において、S極s10、N極n11、N極n12、S極s11、S極s12、N極n13、N極n14、・・・、N極n1nの磁極列が突状部f1と対向している状態を示す。このとき、S極s10がヨークy10と、N極n11、N極n12がヨークy11と、同様にN極n1nがヨークy1nと各々対向している。
【0037】
この状態において、N極n11、N極n12、N極n13、N極n14、・・・、N極n1nの各磁極から出る磁束は、各々矢印a11、矢印a12、・・・矢印a1nで示されるようにヨークy11、ヨークy13、・・・ヨークy1nを通過してヨーク21の突状部f1に達すると同時に、各々矢印b10、矢印b11、・・・矢印b1n−1で示されるようにヨークy10、ヨークy12、・・・ヨークy1n−1を通過してS極s10、S極s11、S極s12、S極s13、S極s14・・・に帰還する。他の各磁極列、各可動ヨーク列、各突状部においても同様な磁路にそって磁束が流れる。
この磁気作用によりヨーク11とヨーク21とが結合され、回転体10あるいは回転体20のどちらか一方をモータ等により回転駆動すると、その回転駆動力は他方に伝達される。
【0038】
続いて図4の状態より、ヨークy10、ヨークy11、・・・ヨークy1n、ヨークy20、ヨークy21、・・・ヨークy2nからヨークym0、ヨークym1、・・・ヨークymnまでの各ヨークをカム機構などにより回転軸1に沿って矢印r1の方向に距離d1だけ移動し図5に示す状態に切り換える。
この場合、N極n11、N極n12、N極n13、N極n14、・・・、N極n1nの各磁極から出る磁束は、各々矢印c11、矢印c12、・・・矢印c1n−1で示されるようにヨークy10、ヨークy11、ヨークy13、・・・ヨークy1n−1を通過してS極s10、S極s11、S極s12、S極s13、・・・S極s1n−1に帰還する。他の各磁極列、各ヨーク列においても同様な磁路にそって磁束が流れる。その結果、ヨーク21の各突状部を経由する各磁路は各可動ヨーク列によって短絡され、磁束がヨーク21の突状部f1、突状部f2、・・・突状部fmに達することがない。
その結果、ヨーク11とヨーク21の磁気的結合は解除され、回転体10あるいは回転体20のどちらか一方をモータ等により回転駆動したとしても、その回転駆動力は他方に伝達されることがない。
【0039】
ここまで説明した実施の形態においては、ヨークy10、ヨークy11、・・・ヨークy1n、ヨークy20、ヨークy21、・・・ヨークy2nからヨークym0、ヨークym1、・・・ヨークymnまでの各ヨークは、m列の磁極列の各磁極と各々間隔g1を保って対向するものであったが、間隔g1の値を0とし、各ヨークが各磁極に接する構造とすることもできる。
また、ヨーク21の突状部を含む内周面に銅等の導電性金属板を設け、回転駆動力伝達のオンーオフ時に導電性金属板に渦電流を発生させて、オンーオフ時の衝撃を抑制することができる。
また、各磁極列は、・・・NNSSNNSSNNSS・・・のように、2つの同一磁極が隣り合い、これらが磁極を反転させながら配置されているため、可動ヨークを回転軸方向に移動させることによって、簡単に第一回転体と第二回転体とを磁気的に結合したり解除したりすることができる。
さらに、各磁極は隣り合う2つの同一磁極の間隔d1を同一磁極で埋めて一体のものとしてもよい。例えば、回転軸1方向に沿う長さが2*l1+d1の磁極が間隔d1で極性を交互にして配置されていても良い。また、一体の磁石を着磁することによって、表面に磁極が前記のように交互に現れる一体のものとすることもできる。
【0040】
図6は、本発明の実施の形態2の動力伝達装置の要部斜視図である。また、図7は、形状の理解を容易にするために、図6の動力伝達装置を2つの回転体の対向面を中心にして開いた図面である。また、図8は、形状の理解を容易にするために、図6の動力伝達装置のうちの回転体10の可動ヨークを除いた図面である。尚、上述した前記実施の形態1の動力伝達装置と同一概念を有するものは同一符号を付して説明する。これらの図において1は回転軸、10は回転軸1を中心に回転する回転体、11は回転体10に設けられた円板状のヨークであり、ヨーク11の表面には永久磁石からなる磁極N極n1、N極n2、S極s1、S極s2、N極n3、N極n4、・・・が円周方向に沿って設けられている。
【0041】
N極n1、N極n2、S極s1、S極s2、N極n3、N極n4、・・・の各磁極の大きさは、厚さがt1、回転軸中心の角度幅がw1で、磁極間の角度間隔はd1である。
【0042】
20は回転軸1を中心に回転体10の上面に配置され回転する回転体で、回転体10とは相対的に回転可能であり、各々図示を省略した軸受け等で支持されている。21は回転体20に設けられた円筒状のヨークである。ヨーク21の回転体の対向面には、突状部f1、突状部f2、・・・が、互いに等間隔で並んで、回転体の磁極と同数形成されている。突状部f1、突状部f2、・・・は、高さがh1、回転軸中心の角度幅が2*w1+d1であり、2つの磁極を覆うような寸法である。
【0043】
可動ヨークy1、可動ヨークy2、・・・の各可動ヨークは、図示を省略した非磁性材からなる支持板に前後左右を等間隔に埋設して互いに連結されており、図示を省略したカム機構などにより回転軸1を中心として回転可能な構造となっている。その回転角度はd3であり、次の関係式で示される。即ち、d3=w1+d1、と示される。各可動ヨークは、回転体10の各磁極と各々間隔g1を保って対向し、突状部f1、突状部f2、・・・とは間隔g2を保って対向配置される。
要するに、第1回転体は、磁性体からなるヨークと、前記ヨーク表面に回転軸を中心として配置された複数の磁極と、回転軸を中心にして配置されかつ回転軸を中心として回転可能な複数の可動ヨークとから構成されている。前記磁極列は、磁極が・・・NNSSNNSS・・・のように、2つの磁極が隣り合いこれらが磁極を反転させながら回転軸を中心として配置されており、前記可動ヨークは、前記磁極の隣り合った2つの磁極を同時に覆う形状の磁性体が磁極を2つづつ覆うようにして回転軸を中心として複数配置されている。第2回転体は、第1回転体の磁極周期に合わせた複数の突状部を有するヨークにより構成されている。そして、これらの第1回転体と第2回転体とが所定の間隔を保ち、第1回転体の可動ヨーク面と第2回転体の突状部面とが対向するように配置されることによって、動力伝達装置が構成されている。
【0044】
次にこのような動力伝達装置の動作について説明する。図9は、回転体10を示したもので、上図は回転体10と回転体20とを磁気的に結合し動力伝達を行う場合の可動ヨークの配置を示すものである。すなわち、同極上に一つの可動ヨークを配置するように可動ヨークを回転させた場合である。この場合は、磁束はa1,a2,a3,a4に示すように流れ、この図では示していないが上部に配置されている回転体20を磁束が通り、回転体10と回転体20とが磁気的に結合し動力の伝達が行われる。
【0045】
図9の下図は回転体10と回転体20との磁気的結合を解除し動力伝達を行なわない場合の可動ヨークの配置を示すものである。すなわち、異極上に一つの可動ヨークを配置するように可動ヨークを回転させた場合である。この場合は、磁束はc1,c2,c3,c4に示すように流れることになるため磁束が回転体10内で閉じ、この図では示していないが上部に配置されている回転体20を磁束が通ることなく、回転体10と回転体20とが磁気的結合が解除され、回転体10あるいは回転体20のどちらか一方をモータ等により回転駆動したとしても、その回転駆動力は他方に伝達されることがない。
【0046】
上記の説明のように、回転体10に、磁極が・・・NNSSNNSSNNSS・・・のように、2つの同一磁極が隣り合い、これらが磁極を反転させながら配置されているため、可動ヨークを回転軸中心に回転させることによって、簡単に第一回転体と第二回転体とを磁気的に結合したり解除したりすることができる。
また、各磁極は隣り合う2つの同一磁極の間隔d1を同一磁極で埋めて一体のものとしてもよい。例えば、回転軸中心の角度幅が2*w1+d1の磁極が間隔d1で極性を交互にして配置されていても良い。また、一体の磁石を着磁することによって、表面に磁極が前記のように交互に現れる一体のものとすることもできる。
【0047】
図10は、本発明の実施の形態3の動力伝達装置の要部斜視図である。同図において30は回転軸32とともに回転する回転体、31は回転体30に設けられた円盤状のヨークであり、ヨーク31の端面31aには後述するようにS極、N極の各磁極が放射状に周期的に設けられている。40は回転軸32と回転中心を共有する回転軸42とともに回転する回転体、41は回転体40に設けられた円盤状のヨークであり、ヨーク41の端面41aには後述するようにS極、N極の各磁極が放射状に周期的に設けられている。ヨーク31の端面31aとヨーク41の端面41aは、各々回転軸32、回転軸42に対して直行する平面であり、間隔g5を介して対向している。
【0048】
図11(A)はヨーク31の端面31a側の平面図であり、同図に示すように、ヨーク31の端面31aにはS極sa1、N極na1、S極sa2、N極na2、・・・S極san、N極nanからなる外側の磁極列とS極sb1、N極nb1、S極sb2、N極nb2、・・・S極sbn、N極nbnとからなる内側の磁極列が同心円状に設けられている。
【0049】
S極sa1、N極na1、S極sa2、N極na2、・・・S極san、N極nanの形状は互いに同一であり、回転方向に沿って互いに等間隔に設けられている。また、S極sb1、N極nb1、S極sb2、N極nb2、・・・S極sbn、N極nbnの形状も互いに同一であり、回転方向に沿って互いに等間隔に設けられている。S極sa1、N極na1、S極sa2、N極na2、・・・S極san、N極nanの半径方向の長さwaとS極sb1、N極nb1、S極sb2、N極nb2、・・・S極sbn、N極nbnの半径方向の長さwbは、磁気作用力を考慮して、wa<wb、と設定している。
【0050】
ヨーク31は、S極sa1、N極na1、S極sa2、N極na2、・・・S極san、N極nanからなる外側の磁極列とS極sb1、N極nb1、S極sb2、N極nb2、・・・S極sbn、N極nbnとからなる内側の磁極列とを有する回転ヨークとに分割可能であり、かつカム機構等を備えた切り換え機構33により外側の回転ヨークが回転方向に沿って磁極1個分だけずらすことが可能となっている。
【0051】
図11(B)はヨーク41の端面41a側の平面図であり、同図に示すように、ヨーク41の端面41aにはS極sc1、N極nc1、S極sc2、N極nc2、・・・S極scn、N極ncnからなる磁極列が放射状に設けられている。S極sc1、N極nc1、S極sc2、N極nc2、・・・S極scn、N極ncnの形状は互いに同一であり、回転方向に沿って互いに等間隔に設けられている。
S極sc1、N極nc1、S極sc2、N極nc2、・・・S極scn、N極ncnの半径方向の長さwcは、(wa+wb)と等しい。
要するに、本実施の形態に係る動力伝達装置は第1回転体と第2回転体とから構成されており、第1回転体は、回転軸に平行な面で分割された2つのヨークと、前記ヨークのそれぞれに所定の角度間隔(θ)で、回転軸方向を向く磁極が・・・NSNS・・・のように交互に回転軸周りに配置されており、前記2つのヨークは回転軸周りに相対位置を調整可能に構成されている。
第2回転体は、ヨークと前記ヨークに所定の角度間隔(第1回転体と同じ角度間隔)で、回転軸方向を向く磁極が・・・NSNS・・・のように交互に回転軸周りに配置されている。 そして、第1回転体の磁極と第2回転体の磁極とが所定の間隔を保ち対向するように配置されている。そのため、第1回転体の2つのヨークを回転軸周りにθ回転させ相対位置をずらすことにより、第1回転体と第2回転体の動力伝達を行わせたり切ったりすることができる。
【0052】
次いでこのような動力伝達装置の動作について図面を用いて説明する。図13は、図11(A)に示す端面31aと図11(B)に示す端面41aが対向する場合の動作説明図である。同図に示すように、S極sa1、S極sb1はN極nc1と、N極nam、N極nbmはS極scmと対向している。同様に図示を省略した他の磁極、すなわちN極na1とN極nb1、S極sa2とS極sb2、・・・N極nanとN極nbnは各々端面41aのS極sc1、N極n2、・・・S極scnと対向し、異極同士が互いに対向している。
【0053】
この場合、N極nc1、N極namとN極nbmの各磁極から出る磁束は、各々矢印1caと矢印1cb、矢印macと矢印mbcで示されるように各々対向するS極sa1とS極sb1、S極scmに到達する。他の磁極においても同様な磁束が対向する異極に到達する。
従って、ヨーク31とヨーク41はこれら磁気作用により互いに結合されるので、回転体30あるいは回転体40のどちらか一方をモータ等により回転駆動すると、その回転駆動力は他方に伝達される。
【0054】
続いて、切り換え機構33により、ヨーク31において外側の回転ヨークを回転方向に沿って磁極1個分だけずらす。つまり図12(A)に示すように、ヨーク31の端面31aにはN極nan、S極sa1、N極na1、S極sa2、N極na2、・・・S極sanからなる外側の磁極列とS極sb1、N極nb1、S極sb2、N極nb2、・・・N極nbnとからなる内側の磁極列とを同心円状に配列する。
ヨーク41の磁極配列は、図12(B)に示す通り、図11(B)の場合と同じとする。
このようにすると、N極nan、S極sb1がN極nc1と、S極sam−1、N極nbmがS極scmと対向する。同様に他の磁極、すなわちS極sa1とN極nb1、N極na1とS極sb1、・・・S極sanとN極nbnが端面41aのS極sc1、N極n2、・・・S極scnと対向する。
【0055】
図14は、図12(A)に示す端面31aと図12(B)に示す端面41aが対向する場合の動作説明図である。この場合、N極nc1から出る磁束は、一部が矢印1cbに示されるようにS極sb1到達し、互いに引き合う磁気作用を生じる。一方、N極nc1とN極nanは同極同士が対向することになり、互いに反発する磁気作用を生じる。
同様に、N極nbmから出る磁束は、一部が矢印mbcに示されるようにS極scm到達し、互いに引き合う磁気作用を生じる。一方、S極sam−1とS極scmは同極同士が対向することになり、互いに反発する磁気作用を生じる。
【0056】
ところで、この場合、これら引き合う磁気作用と反発する磁気作用が相互に打ち消し合うように、各磁極の大きさが設定されているので、ヨーク31とヨーク41との磁気的結合は解除され、回転体30あるいは回転体40のどちらか一方をモータ等により回転駆動しても、その回転駆動力は他方に伝達されない。
【0057】
図10乃至図14にて説明した本発明の動力伝達装置の実施の形態3においては、円盤状のヨーク31の端面31aとヨーク41の端面41aが間隔g5を介して対向している。ヨーク31の端面31aにS極、N極の各磁極が放射状に周期的に設けられ、ヨーク31は、S極sa1、N極na1、S極sa2、N極na2、・・・S極san、N極nanからなる外側の磁極列とS極sb1、N極nb1、S極sb2、N極nb2、・・・S極sbn、N極nbnとからなる内側の磁極列とを有する回転ヨークとに分割可能であり、かつ外側の回転ヨークが回転方向に沿って磁極1個分だけずらすことが可能となっている。
一方、ヨーク41の端面41aにはS極sc1、N極nc1、S極sc2、N極nc2、・・・S極scn、N極ncnからなる磁極列が放射状に周期的に設けられている。
【0058】
これと同じ原理を利用し、円筒の周面に磁極を設けるとともに、円筒の外周面と内周面とを対向させることも可能である。このような本発明の動力伝達装置の実施の形態を図面を用いて説明する。図15は本発明に係わる実施の形態4の動力伝達装置の要部展開斜視図であり、同図において51は回転中心52の周りに回転する回転体に設けられた円筒状のヨークであり、ヨーク51の外周面51aにはS極sp1、N極np1、S極sp2、N極np2、・・・S極spn、N極npnからなる図示左方の磁極列とS極sq1、N極nq1、S極sq2、N極nq2、・・・S極sqn、N極nbnとからなる図示左方の磁極列が回転方向に並べて設けられている。
S極sp1、N極np1、S極sp2、N極np2、・・・S極spn、N極npn及びS極sq1、N極nq1、S極sq2、N極nq2、・・・S極sqn、N極nbnの形状は互いに同一であり、軸方向の長さはともにlpである。これら各磁極は、回転方向に沿って互いに等間隔に並設されている。
【0059】
61は回転体に設けられた円筒状のヨークであり、ヨーク61の内周面61aにはN極nr1、S極sr1、N極nr2、S極sr2、・・・N極nrn、S極srnからなる磁極列が回転方向に設けられている。N極nr1、S極sr1、N極nr2、S極sr2、・・・N極nrn、S極srnの形状は互いに同一であり、軸方向の長さはともに2*lpである。これら各磁極は、回転方向に沿って互いに等間隔に並設されている。
N極nr1、S極sr1、N極nr2、S極sr2、・・・N極nrn、S極srnの回転方向の幅は、S極sp1、N極np1、S極sp2、N極np2、・・・S極spn、N極npn及びS極sq1、N極nq1、S極sq2、N極nq2、・・・S極sqn、N極nbnの回転方向の幅と等しい。
【0060】
ヨーク51及びヨーク61の回転中心は、図16(A)の側面図及び、図16(B)の正面図に示すように同一であり、ヨーク51の外周面51aとヨーク61の内周面61aが所定の間隔を介して対向するとともに、S極sp1、N極np1、S極sp2、N極np2、・・・S極spn、N極npn及びS極sq1、N極nq1、S極sq2、N極nq2、・・・S極sqn、N極nbnとN極nr1、S極sr1、N極nr2、S極sr2、・・・N極nrn、S極srnとが対向するよう、ヨーク51とヨーク61が軸方向の位置を調節されている。
【0061】
ヨーク51は、S極sp1、N極np1、S極sp2、N極np2、・・・S極spn、N極npnからなる磁極列とS極sq1、N極nq1、S極sq2、N極nq2、・・・S極sqn、N極nqnとからなる磁極列とを有する回転ヨークとに分割可能であり、かつ図示しないカム機構等を備えた切り換え機構により一方の回転ヨークが回転方向に沿って磁極1個分だけずらすことが可能となっている。
要するに、本実施の形態に係る動力伝達装置は第1回転体と第2回転体とから構成されており、第1回転体は、回転軸に垂直な面で分割された2つのヨークと、前記ヨークのそれぞれに所定の角度間隔(θ)で、半径方向を向く磁極が・・・NSNS・・・のように交互に回転軸周りに配置されており、前記2つのヨークは回転軸周りに相対位置を調整可能に構成されている。
第2回転体は、ヨークと前記ヨークに所定の角度間隔(第1回転体と同じ角度間隔)で、半径方向を向く磁極が・・・NSNS・・・のように交互に回転軸周りに配置されている。
そして、第1回転体の磁極と第2回転体の磁極とが所定の間隔を保ち対向するように配置されている。そのため、第1回転体の2つのヨークを回転軸周りにθ回転させ相対位置をずらすことにより、第1回転体と第2回転体の動力伝達を行わせたり切ったりすることができる。
【0062】
このような動力伝達装置の動作は、図10乃至図14にて説明した本発明の動力伝達装置の実施の形態3の場合と同様である。即ち、外周面51aの磁極と内周面61aとは異極同士が互いに対向し、ヨーク51とヨーク61はこれら磁気作用により互いに結合されるので、回転体のどちらか一方をモータ等により回転駆動すると、その回転駆動力は他方に伝達される。
【0063】
続いて、切り換え機構等により、ヨーク51において右方の回転ヨークを回転方向に沿って磁極1個分だけずらす。つまり図17に示すように、ヨーク51の端面51aにはS極sp1、N極np1、S極sp2、N極np2、・・・N極npnとからなる左方の磁極列と、N極nqn、S極sq1、N極nq1、S極sq2、N極nq2、・・・S極sqnからなる右方の磁極列とを配列する。
一方、ヨーク61の磁極配列は、図15に示す場合と同じとする。
このようにすると、S極sp1、N極nqnがN極nr1と、N極np1、S極sq1がS極sr2と対向する。すなわちヨーク51の端面51aには軸方向に互いに異極同士が並びこれらが内周面61aの各磁極と対向する。
【0064】
従って、図14の場合と同様に、引き合う磁気作用と反発する磁気作用が相互に打ち消し合うように作用し、ヨーク51とヨーク61との磁気的結合は解除され、回転体のどちらか一方をモータ等により回転駆動しても、その回転駆動力は他方に伝達されない。
【0065】
次に、図18乃至図28を用いて本発明の実施の形態5の動力伝達装置を説明する。図18は本発明の実施の形態5の動力伝達装置の要部斜視図であり、同図において70は円筒状の回転体、80は回転体70と共通の回転軸心を中心に回転可能な回転体、82は回転体80の回転軸である。回転体80は回転体70の内側に位置していて、回転体70の最内周面と回転体80の最外周面とは僅かの隙間を保持しつつ回転する。
回転体80は、回転体70に対して軸方向の相対位置を切替え可能であり、その切替え機構については後述する。回転体70の円筒状ケース73の一端にはフランジ74が形成され、フランジ74に円盤状のケース75が連結部材76a、76b、76c、76dを用いて取付けられている。
【0066】
図19は、回転中心を通る平面で切断した回転体70の要部断面斜視図であり、同図に示すように回転体70は円筒状ケース73の内面に磁性材からなるリング状のバックヨークMr1、Mr2、Mr3、Mr4が中心軸と平行に互いに等間隔に取付けられた構成となっている。バックヨークMr1の内周には磁極M11n、M11s、・・・・・M1mn、M1msが等間隔で配置されており、同様にバックヨークMr2、Mr3、Mr4の各々の内側には磁極M21n、M21s、・・・・・M2mn、M2ms、M31n、M31s、・・・・・M3mn、M3ms、M41n、M41s、・・・・・M4mn、M4msが各々回転方向に等間隔で配置されている。
【0067】
バックヨークMr1、Mr2、Mr3、Mr4は、連結部材77a、77b、77c、77dにより連結固定されるが、その場合、各間に軸方向の厚さtgのスペーサ78a、78b、78cを介挿し連結固定される。
ケース75の外側の面には回転軸82の軸受け構造を有する軸受け72が形成されており、ケース75の内側の面には円盤状の磁石79が取付けられている。磁石79は
共に放射形状の磁極が回転方向に交互に極性を配置されたものである。
【0068】
図20は、回転体80の要部斜視図であり、便宜上斜視の方向は図18の場合とは異ならせている。同図に示すように回転体80は、回転軸82と一体に取付けられた円筒状の支持部83と、支持部83の外周に互いに等間隔に取り付けられた磁性材からなるリング状のヨークYr1、Yr2、Yr3、Yr4、Yr5で構成されている。ヨークYr1、Yr2、Yr3、Yr4、Yr5は、連結部材87a、87b、87c、87dによって互いに連結固定されている。支持部83の一方の端面には円盤状金属板89が取付けられ、この端面が円盤状の磁石79と対向するように回転体70に挿入され、組立てられる。金属板89はアルミニウム、あるいは銅などの導電性材料からなり、回転体70と回転体80の相対回転数に対応して、磁石79がもたらす磁束の変化によって渦電流を発生させる構成となっている。
【0069】
図21は、バックヨークMr1の構造図である。バックヨークMr1の内周側には角度θごとに磁極M11n、M11s、・・・・・M1mn、M1msが配置されている。磁極M11n、M12n、・・・・・M1mnはN極、磁極M11s、M12s、・・・・・M1msはS極であり、N極とS極は交互に配置されている。バックヨークMr1の軸方向の厚さはtmであり、バックヨークMr1の肉厚部には連結部材77a、77b、77c、77dを通すための貫通孔hm11、hm12、hm13、hm14が中心軸と平行に同心円状に設けられている。
バックヨークMr2、Mr3、Mr4は、連結部材77a、77b、77c、77dを通す貫通孔の位置をバックヨークMr1に対して順次角度θ/2、角度θ、角度(1+1/2)θだけ変位させもので、他の部分はバックヨークMr1の構成とまったく同じである。
【0070】
図22は、ヨークYr1の構造図である。ヨークYr1の外周側には角度θごとに凸部Y111、Y112、Y121、・・・・・Y1m2が形成されている。ヨークYr1の軸方向の厚さはty、凸部Y111、Y112、・・・・・Y1m2の軸方向の厚さはtzであり、tzはtyより若干小さい値である。凸部Y111、Y112、・・・・・Y1m2は、ヨークYr1の軸方向と直交する中心面Cに対して対象に形成されている。ヨークYr1の肉厚部には連結部材87a、87b、87c、87dを通すための貫通孔hy11、hy12、hy13、hy14が中心軸と平行に同心円状に設けられている。
ヨークYr2、Yr3、Yr4、Yr5は、連結部材87a、87b、87c、87dを通す貫通孔の位置をバックヨークMr1に対して交互に角度1/2θだけ変位させもので、他の部分はヨークYr1の構成とまったく同じである。
なお、厚さtm、厚さtg、厚さtyには関係は次の関係がある。即ち、tm+tg=tyであり、tyを軸長方向の対向単位という。
【0071】
図23は、回転体70と回転体80の軸方向の相対位置を切替える機構の説明図である。図23(A)は、回転体80が回転体70側に押付けられた状態、即ち後述する動力伝達可能な状態の説明図である。同図において、91は支点92を中心に回動するレバーで、レバー91の一方の端部91aは回転軸82に取付けられた鍔部93a、93bの間に係合された構成となっている。94は回転軸82に取付けられた位置決め板、95は位置規制ガイドであり、位置規制ガイド94は図示を省略した回転体70側に取付けられている。
このように構成された切替え機構において、レバー91を矢印イ方向に操作すると、レバー91の端部91aが鍔部93a、93bを介して回転軸82および回転体80を矢印ロ方向に、距離ty/2だけ移動させる。図23(B)は、回転体80が回転体70から距離ty/2だけ引き離された状態、即ち後述する動力伝達が遮断された状態の説明図である。
要するに、本実施の形態に係る動力伝達装置は第1回転体と第2回転体とから構成されており、第1回転体は、ヨークと、前記ヨーク表面に回転軸を中心として円周方向に角度間隔(θ)で等間隔に交互に磁極を反転させながら配置された複数の磁極列が、角度θ/2づつ変位させつつ回転軸方向に積層して構成されている。
第2回転体は、ヨーク表面に回転軸を中心として円周方向に角度間隔(θ)で等間隔に凸部分が設けられており、これら凸部分が角度θ/2づつ変位させつつ回転軸方向に積層して構成されている。
そして、第1回転体の磁極と第2回転体の凸部分とが所定の間隔を保ち対向するように配置されており、第1回転体と第2回転体とは、回転軸方向に相対位置を切り替え可能となっている。
【0072】
続いてこのような動力伝達装置の動作について図を用いて説明する。まず、回転体70と回転体80との間に互いに動力伝達が行われるときの動作について説明する。図24は、動力伝達装置が切替え機構により動力伝達側にセットされたとき、即ちオン状態の動力伝達装置の要部断面図であり、切替え機構等が省略されている。この場合、バックヨークMr1、Mr2、Mr3、Mr4の軸長方向の各中心位置は、ヨークYr1、Yr2、Yr3、Yr4の軸長方向の中心位置と各々一致している。即ち、バックヨークMr1、Mr2、Mr3、Mr4と、ヨークYr1、Yr2、Yr3、Yr4は、互いの対向する面が同期して吸引状態となっており、回転体70の回転に伴い回転体80が連れ回りして回転力が伝達される。
【0073】
図25(A)は、このようなオン状態のバックヨークMr1、Mr2、ヨークYr1、Yr2の要部を平面に展開した図である。即ちオンの時は、磁極M11n、M11s、M12n、・・・、M1msの長さtmの全ての部分にわたり、凸部Y111、Y112、・・・・・Y1m2が対向し、磁極M21n、M21s、M22n、・・・、M2msの長さtmの全ての部分にわたり、凸部Y211、Y212、・・・・・Y2m2が対向して回転する。
【0074】
このときの伝達トルクについて、図26、図27を用いて説明する。
図26は、回転体70と回転体80を回転軸心に垂直な面で切断した要図断面図であり、便宜上、回転体80を固定し回転体70を時計方向にそれぞれの角度を回した場合のヨークと磁極の関係を示した。
図26(A)において、バックヨークMr1とヨークYr1の回転方向の位置は、磁極M11n、M11s、M12n、・・・、M1msと凸部Y111、Y112、・・・・・Y1m2が各々最接近するような関係で対向して安定しており、この状態の回転トルクはゼロである。
【0075】
次に、図26(A)より回転体70を駆動源より矢印ハ方向に回転させ、回転体80と回転体70の回転角度が角度θ1の状態を表した図が図26(B)である。この状態では回転体70は磁極M11n、M11s、M12n、・・・、M1msに対して凸部Y111、Y112、・・・・・Y1m2間の吸引力により矢印ハと反対方向に引き戻される回転力が働く。
【0076】
図26(C)は更に回転体70を角度θ2の状態まで回し、回転体80の磁極M11n、M11s、M12n、・・・、M1msに対して凸部Y111、Y112、・・・・・Y1m2がその中間位置となった状態を示している。この状態では、回転体80の凸部Y111、Y112、・・・・・Y1m2がそれぞれの最も近い磁極の中間位置にあり、それぞれの磁極にほぼ同じ力で引っ張られる。この場合の回転トルクはゼロであるが、不安定な状態にある。
【0077】
図27は、以上説明した伝達トルクを示すグラフである。図27(A)において、横軸は回転体80に対する回転体70の相対回転角度、縦軸は伝達トルクを示し、曲線ニはバックヨークMr1とヨークYr1の伝達トルクの変化を示すものである。回転角度0度は図26(A)に示した状態に対応し、角度θ1は図26(B)に示した状態に対応し、角度θ2は図26(C)に示した状態に対応する。
なお、回転体70から回転体80に伝達されるトルクは、バックヨークMr1、Mr2、Mr3、Mr4とヨークYr1、Yr2、Yr3、Yr4間の全体によって伝達されるトルクの総和であり、伝達されるトルクの最大値は4*Tmaxである。
【0078】
次いで、回転体70と回転体80との間に動力伝達が行われないときの動作について説明する。図28は、動力伝達装置が切替え機構により動力伝達遮断側にセットされたとき、即ちオフ状態の動力伝達装置の要部断面図である。
この状態は、前述の図24に示したオン状態の場合に比較して、回転体80を回転体70に対して矢印チ方向にty/2だけ移動させたものであり、バックヨークMr1、Mr2、Mr3、Mr4の軸長方向の各中心位置は、ヨークYr1、Yr2、Yr3、Yr4、Yr5の軸長方向の各境界面と一致している。
【0079】
これをさらに詳しく説明する。図25(B)は、図28に示したバックヨークMr1、Mr2、ヨークYr1、Yr2の要部を平面に展開した図であり、図25(A)に示したオンの時に比べると、オフの時は、磁極M11n、M11s、M12n、・・・、M1msの図中左側の長さ(tm/2−tg)部分だけに、凸部Y111、Y112、・・・・・Y1m2が対向し、右側の残りの部分が空白部に位置する。同様に、磁極M21n、M21s、M22n、・・・M2mn、M2msの図中左側の長さ(tm/2−tg)部分だけに、凸部Y211、Y212、・・・・・Y2m2が対向し、凸部Y211、Y212、・・・・・Y2m2の左側の残り部分が磁極M11n、M11s、M12n、・・・M1mn、M1msの中間に位置する。
【0080】
この伝達トルク特性を表したグラフが図27(B)である。図において、横軸は回転体80に対する回転体70の相対回転角度、縦軸は伝達トルクであり、ここに示す曲線ホはバックヨークMr1の磁極M11n、M11s、M12n、・・・、M1msの図中左側の長さ(tm/2−tg)部分とヨークYr1の凸部Y111、Y112、・・・・・Y1m2の一部分だけが対向したときの伝達トルクの変化を示すものである。又、曲線ヘは、凸部Y211、Y212、・・・・・Y2m2の左側の残り部分が磁極M11n、M11s、M12n、・・・M1mn、M1msの中間に位置するときの伝達トルクの変化を示すものである。この曲線ホと曲線ヘはほぼ対照的な値を示し、曲線ホと曲線ヘを重ね合せたものは、図中直線トで示すように伝達トルクがほぼゼロとなる。従って、
この状態の伝達トルクの総和もゼロである。
【0081】
ここで、過大なトルク変動があった場合、例えば、動力伝達装置を起動させたときなどに作用する、磁石79と円盤状金属板89による渦電流発生機構について説明をする。動力伝達装置をオン状態にセットしたとき、磁石79と円盤状金属板89は接近し、回転体70に回転体80が安定的に追随するまでの間、磁石79と円盤状金属板89との回転速度が相対的に変化するので、円盤状金属板89には渦電流が発生する。この渦電流によりオフからオンへの切替え時に過剰なトルク変動によって生じる回転駆動力伝達のスリップ状態が連れ回り状態即ち同期状態に復帰する。即ち、慣性等による大きな負荷変動があったとしても、滑らかで安定したクラッチ切り替えが行われる。
【0082】
本発明の実施の形態5の動力伝達装置は、回転体70のバックヨークMr1、Mr2、Mr3、Mr4に取付けられた各磁極と、回転体80のヨークY1、Y2、Y3、Y4、Y5に形成された各凸部を対抗させて、磁気作用を働かせるとともに、磁気作用を打ち消すようにしたものである。
このように磁極とヨーク凸部を対向させるものに対して、ヨーク凸部を磁極に代えて磁極と磁極を対向させ、磁気作用を働かせるとともに、打ち消すようにすることも可能である。
【0083】
続いて、このような本発明の実施の形態6の動力伝達装置について、図29および図30を用いて説明する。図29は本発明の実施の形態6の動力伝達装置の要部構造図であり、同図において100は円筒状の回転体、110は回転体100と共通の回転軸心を中心に回転可能な回転体、112は回転体110の回転軸である。回転体110は回転体100の内側に位置しており、回転体100の最内周面と回転体110の最外周面とは僅かの隙間を保持している。回転体100と回転体110の軸方向の相対位置を切替える切替え機構については、図23に示したものと同一であるので、その部分を省略する。
【0084】
回転体100の円筒状ケース103の一端には円盤状のケース105が連結部材を用いて取付けられている。円筒状ケース103は、磁性材からなりバックヨークを兼ねている。円筒状ケース103の内周面には、N極とS極を交互に配置した磁極M111n、M111s、・・・・・M11mn、M11ms、M121s、M121n、・・・・・M12ms、M12mn、M131n、M131s、・・・・・M13mn、M13ms、M141s、M141n、・・・・・M14ms、M14mn、M151n、M151s、・・・・・M15mn、M15msが等間隔に、図19の場合の磁極に比べて1層多い、5層のリング状に配置されている。ケース105の外側の面には回転軸112の軸受け構造を有する軸受け102が形成されており、ケース105の内側の面には円盤状の磁石109が取付けられている。
要するに、本実施の形態に係る動力伝達装置は第1回転体と第2回転体とから構成されており、第1回転体および第2回転体は、ヨークと、前記ヨーク表面に回転軸を中心として円周方向に角度間隔(θ)で等間隔に交互に磁極を反転させながら配置された複数の磁極列が、回転軸方向に積層して構成されている。
そして、第1回転体の磁極と第2回転体の磁極とが所定の間隔を保ち対向するように配置されており、第1回転体と第2回転体とは、回転軸方向に相対位置を切り替え可能となっている。
【0085】
回転体110の回転軸112と一体に取付けられた円筒状の支持部113は、磁性材からなり、ヨークを兼ねている。支持部113の外周面には、図20の場合の凸部に代えて、N極とS極を交互に配置した磁極M211s、M211n、・・・・・M21ms、M21mn、M221n、M221s、・・・・・M22mn、M22ms、M231s、M231n、・・・・・M23ms、M23mn、M241n、M241s、・・・・・M24mn、M24ms、M251s、M251n、・・・・・M25ms、M25mnが等間隔に、5層のリング状に配置されている。
支持部113の磁石109と対向する面には円盤状金属板119が取付けられている。金属板119はアルミニウム、あるいは銅などの導電性材料からなり、回転体100と回転体110の相対回転数に対応して渦電流を発生させる構成となっている。
【0086】
次にこのような動力伝達装置の動作について、まず、回転体100と回転体110との間に互いに動力伝達が行われるときの動作について説明する。図29(B)は、動力伝達装置が図示を省略した切替え機構により動力伝達側にセットされたとき、即ちオン状態の動力伝達装置の要部断面図に相当する。この場合、磁極M111s、M121n、M131s、M141n、M151sの軸方向長さの各中心位置は、磁極M211n、M221s、M231n、M241s、M251nの軸方向長さの各中心位置と一致している。
【0087】
この状態では、回転体100の磁極M111n、M111s、・・・・・M11mn、M11ms、M121s、M121n、・・・・・M12ms、M12mn、M131n、M131s、・・・・・M13mn、M13ms、M141s、M141n、・・・・・M14ms、M14mn、M151n、M151s、・・・・・M15mn、M15msに、回転体110の磁極M211s、M211n、・・・・・M21ms、M21mn、M221n、M221s、・・・・・M22mn、M22ms、M231s、M231n、・・・・・M23ms、M23mn、M241n、M241s、・・・・・M24mn、M24ms、M251s、M251n・・・・・M25ms、M25mnが、各々最接近するような関係で対向して安定する。即ち、異極同士が互いに引き合い安定する。
従って、回転体100を駆動源より矢印リ方向に回転させると、回転体110はこの状態を維持しながら回転体100に追随して回転する。その伝達トルクの特性は、本発明の実施の形態5の伝達トルクの特性と同様である。
【0088】
動力伝達装置をオン状態にセットしたとき、磁石109と円盤状金属板119による渦電流発生機構についても、本発明の実施の形態5の動作と同様である。即ち、磁石109と円盤状金属板119が接近し、回転体100に回転体110が安定的に追随するまでの間、磁石109と円盤状金属板119との回転数が相対的に変化するので、円盤状金属板119には渦電流が発生する。この渦電流により動力伝達装置をオン状態に切替えたときの過剰なトルク変動によって生じる回転駆動力伝達のスリップ状態が連れ回り状態即ち同期状態に復帰する。
【0089】
次いで、回転体100と回転体110との間に互いに動力伝達が行われないときの動作について説明する。図30は、動力伝達装置が切替え機構により動力伝達遮断側にセットされたとき、即ちオフ状態の動力伝達装置の要部断面図である。この状態は、図29(B)に比べて、回転体110を回転体100に対して矢印ヌ方向に1/2対向単位だけ移動させたものである。
この状態の磁極M111s、M121n、M131s、M141n、M151sの図中左側の長さ(tm/2−tg)部分が磁極M211n、M221s、M231n、M241s、M251nの右側の部分と対向し、磁極M111s、M121n、M131s、M141n図中右側の長さ(tm/2−tg)部分が磁極M211n、M221s、M231n、M241sの左側の部分と対向する。
【0090】
この状態において回転体100を駆動源より矢印リ方向に回転させると、回転体110は、一方の部分で回転方向の力を受けるとともに、他方の部分で逆方向の引力あるいは斥力を受け、回転に反発する。従って、回転方向の力と反発力をバランスさせることにより磁気作用が打ち消され、図27(B)の直線トで示されるものと同様に伝達トルクはゼロとなり、回転体100を矢印リ方向に回転させても、回転体110は回転することがない。
【0091】
また、本発明の実施の形態5の動力伝達装置においては、回転体70に磁石79を、回転体80に金属板89を各々取付けたが、回転体70に金属板89を、回転体80に磁石79を各々取付けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上のように、本発明に係わる動力伝達装置は、携帯用電動工具をはじめ、クラッチを備えた各種機械装置に有効に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明に係わる実施の形態1の動力伝達装置の全体を示す斜視図である。
【図2】図1の動力伝達装置の実施の形態の部分斜視図である。
【図3】図1に関連する動力伝達装置の部分断面図である。
【図4】図1に関連する動力伝達装置の動作説明図である。
【図5】図1に関連する動力伝達装置の他の動作説明図である。
【図6】本発明の実施の形態2の動力伝達装置の要部斜視図である。
【図7】図6に示した動力伝達装置の2つの回転体の対向面を中心にした展開図である。
【図8】図6の動力伝達装置の回転体10の可動ヨークを除いた要部斜視図である。
【図9】図6に示した動力伝達装置の回転体10の動作説明図である。
【図10】本発明に係わる実施の形態3の動力伝達装置の要部斜視図である。
【図11】図10に関連する動力伝達装置の要部平面図であり、図11(A)はヨーク31の平面図、図11(B)はヨーク41の平面図である。
【図12】図10に関連する動力伝達装置の切り換え後の要部平面図であり、図12(A)はヨーク31の平面図、図12(B)はヨーク41の平面図である。
【図13】図10に関連する動力伝達装置の動作説明図である。
【図14】図10に関連する動力伝達装置の他の動作説明図である。
【図15】本発明に係わる実施の形態4の動力伝達装置の要部展開斜視図である。
【図16】図15に関連する動力伝達装置の説明図であり、図16(A)は側面図、図16(B)は正面図である。
【図17】図15に関連する動力伝達装置の切り換え後の要部展開斜視図である。
【図18】本発明に係わる実施の形態5の動力伝達装置の要部斜視図である。
【図19】図18に関連する動力伝達装置の要部断面斜視図である。
【図20】図18に関連する回転体80の要部斜視図である。
【図21】図18に関連するバックヨークMr1の構造図であり、図21(A)は斜視図、図21(B)は側面図、図21(C)は中心軸を通る面での断正面図である。
【図22】図18に関連するヨークYr1の構造図であり、図22(A)は斜視図、図22(B)は側面図、図22(C)は正面図である。
【図23】図18に関連する切替え機構の説明図であり、図23(A)は、動力伝達可能な状態の説明図、図23(B)は、動力伝達が行われない状態の説明図である。
【図24】図18に関連するオン状態のときの動力伝達装置の要部断面図である。
【図25】図18に関連する動力伝達装置の説明図であり、図25(A)はオン状態のときのバックヨークMr1、Mr2、ヨークYr1、Yr2の要部展開平面図、図25(B)はオフ状態のときのバックヨークMr1、Mr2、ヨークYr2、Yr3の要部展開平面図である。
【図26】図18に関連する動力伝達装置の要図断面図であり、図26(A)、図26(B)、図26(C)は、回転体70と回転体80の回転位置を各々変えたときの要図断面図である。
【図27】図18に関連する動力伝達装置の伝達トルク特性を示すグラフである。
【図28】図18に関連するオフ状態のときの動力伝達装置の要部断面図である。
【図29】本発明に係わる実施の形態6の動力伝達装置の要部構造図であり、図29(A)は側面図、図29(B)はオン状態のときの動力伝達装置の要部断面図である。
【図30】図29に関連するオフ状態のときの動力伝達装置の要部断面図である。
【符号の説明】
【0094】
1、32、42、82、112 回転軸
72、102 軸受け
10、20、30、40、70、80、100、110 回転体
11,21、31、41、51,61 ヨーク
y1、y2、・・・・、ym ヨーク
y10、y11、・・・・、ymn ヨーク
n1、n2、s1、s2、・・・sm−1、sm 磁極
s10、n11、n12、・・・、s1n 磁極
sa1、sb1、na1、sc1、nc1 磁極
Mr1、Mr2、Mr3、Mr4 バックヨーク
Yr1、Yr2、Yr3、Yr4、Yr5 ヨーク
M11n、M11s、M12n、・・・、M1ms、・・・、M4ms 磁極
Y111、Y112、・・・、Y1m2、・・・、Y5m1、Y5m2 凸部
79、109 磁石
89、119 金属板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の周りに回転する磁石を有する第1回転体と、該第1回転体に対して相対的に回転可能で、かつ前記第1回転体の磁石と対向して、磁性材からなるヨーク(以下ヨークと略記する)を有する第2回転体とが設けられ、
前記第1回転体の磁石と前記第2回転体のヨークとの間の磁気作用により一方の回転体の動力が他方の回転体に伝達可能な動力伝達装置であって、
前記第1回転体の磁石と前記第2回転体のヨークとの間に形成される磁路を、該ヨーク手前で適宜短絡する可動ヨークが前記第1回転体に取付けられたことを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
前記第1回転体の磁石が、該第1回転体の回転軸と平行な周面に設けられていることを特徴とする請求項1記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記第1回転体の磁石が、前記第1回転体の回転軸と直交する平面に設けられていることを特徴とする請求項1記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記第2回転体のヨーク面に導電性金属板が設けられたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項5】
回転軸の回転方向に沿って交互に異極配列された第1磁石群を有する第1回転体と、該第1回転体に対して相対的に回転可能で、かつ前記第1回転体の前記第1磁石群の各磁極と各々対向するように交互に異極配列された第2磁石群を有する第2回転体とが設けられ、
前記第1回転体の第1磁石群と前記第2回転体の第2磁石群との間の磁気作用により一方の回転体の動力が他方の回転体に伝達される動力伝達装置であって、
前記第1回転体が回転軸と交差する面もしくは回転軸と平行な面により分割可能であって、かつ分割された回転体の各々に交互に異極配列された前記第1磁石群が設けられ、
前記分割された回転体同士が回転方向に対して相対位置を調整可能に構成されていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項6】
前記第1磁石群が、前記第1回転体の回転軸と平行な周面に設けられていることを特徴とする請求項5記載の動力伝達装置。
【請求項7】
前記第1磁石群が、前記第1回転体の回転軸と直交する平面に設けられていることを特徴とする請求項5記載の動力伝達装置。
【請求項8】
前記第1磁石群又は前記第2磁石群の少なくとも一方の面に導電性金属板が設けられたことを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項9】
回転軸の周りに回転する第1磁石を有する第1回転体と、該第1回転体に対して相対的に回転可能で、かつ前記第1回転体の第1磁石の各磁極と各々対向するように交互に異極配列された第2磁石あるいは前記第1回転体の第1磁石と対向する磁性材からなるヨーク部(以下ヨーク部と略記する)を有する第2回転体とが設けられ、前記第1回転体の第1磁石と前記第2回転体の第2磁石あるいはヨーク部間の磁気作用により一方の回転体の動力が他方の回転体に伝達可能な動力伝達装置であって、
前記第1回転体の第1磁石と前記第2回転体の第2磁石あるいはヨーク部間の磁気作用を打消す方向に、前記第1回転体の第1磁石と前記第2回転体の第2磁石あるいはヨーク部との相対位置を切替え可能に構成されていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項10】
前記第1回転体の第1磁石が、前記第1回転体の周面に設けられていることを特徴とする請求項9記載の動力伝達装置。
【請求項11】
前記第1回転体の第1磁石と前記第2回転体の第2磁石あるいはヨーク部との相対位置の切替え量が、前記回転軸の軸長方向に対向単位の1/2相当であることを特徴とする請求項10記載の動力伝達装置。
【請求項12】
前記第1回転体と前記第2回転体との相対運動によって渦電流を発生する渦電流発生機構が設けられたことを特徴とする請求項9ないし請求項11のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項1】
回転軸の周りに回転する磁石を有する第1回転体と、該第1回転体に対して相対的に回転可能で、かつ前記第1回転体の磁石と対向して、磁性材からなるヨーク(以下ヨークと略記する)を有する第2回転体とが設けられ、
前記第1回転体の磁石と前記第2回転体のヨークとの間の磁気作用により一方の回転体の動力が他方の回転体に伝達可能な動力伝達装置であって、
前記第1回転体の磁石と前記第2回転体のヨークとの間に形成される磁路を、該ヨーク手前で適宜短絡する可動ヨークが前記第1回転体に取付けられたことを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
前記第1回転体の磁石が、該第1回転体の回転軸と平行な周面に設けられていることを特徴とする請求項1記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記第1回転体の磁石が、前記第1回転体の回転軸と直交する平面に設けられていることを特徴とする請求項1記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記第2回転体のヨーク面に導電性金属板が設けられたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項5】
回転軸の回転方向に沿って交互に異極配列された第1磁石群を有する第1回転体と、該第1回転体に対して相対的に回転可能で、かつ前記第1回転体の前記第1磁石群の各磁極と各々対向するように交互に異極配列された第2磁石群を有する第2回転体とが設けられ、
前記第1回転体の第1磁石群と前記第2回転体の第2磁石群との間の磁気作用により一方の回転体の動力が他方の回転体に伝達される動力伝達装置であって、
前記第1回転体が回転軸と交差する面もしくは回転軸と平行な面により分割可能であって、かつ分割された回転体の各々に交互に異極配列された前記第1磁石群が設けられ、
前記分割された回転体同士が回転方向に対して相対位置を調整可能に構成されていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項6】
前記第1磁石群が、前記第1回転体の回転軸と平行な周面に設けられていることを特徴とする請求項5記載の動力伝達装置。
【請求項7】
前記第1磁石群が、前記第1回転体の回転軸と直交する平面に設けられていることを特徴とする請求項5記載の動力伝達装置。
【請求項8】
前記第1磁石群又は前記第2磁石群の少なくとも一方の面に導電性金属板が設けられたことを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項9】
回転軸の周りに回転する第1磁石を有する第1回転体と、該第1回転体に対して相対的に回転可能で、かつ前記第1回転体の第1磁石の各磁極と各々対向するように交互に異極配列された第2磁石あるいは前記第1回転体の第1磁石と対向する磁性材からなるヨーク部(以下ヨーク部と略記する)を有する第2回転体とが設けられ、前記第1回転体の第1磁石と前記第2回転体の第2磁石あるいはヨーク部間の磁気作用により一方の回転体の動力が他方の回転体に伝達可能な動力伝達装置であって、
前記第1回転体の第1磁石と前記第2回転体の第2磁石あるいはヨーク部間の磁気作用を打消す方向に、前記第1回転体の第1磁石と前記第2回転体の第2磁石あるいはヨーク部との相対位置を切替え可能に構成されていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項10】
前記第1回転体の第1磁石が、前記第1回転体の周面に設けられていることを特徴とする請求項9記載の動力伝達装置。
【請求項11】
前記第1回転体の第1磁石と前記第2回転体の第2磁石あるいはヨーク部との相対位置の切替え量が、前記回転軸の軸長方向に対向単位の1/2相当であることを特徴とする請求項10記載の動力伝達装置。
【請求項12】
前記第1回転体と前記第2回転体との相対運動によって渦電流を発生する渦電流発生機構が設けられたことを特徴とする請求項9ないし請求項11のいずれかに記載の動力伝達装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2010−2048(P2010−2048A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289704(P2008−289704)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(303049418)株式会社松栄工機 (21)
【出願人】(390021669)椿本興業株式会社 (20)
【出願人】(591074736)宮城県 (60)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(303049418)株式会社松栄工機 (21)
【出願人】(390021669)椿本興業株式会社 (20)
【出願人】(591074736)宮城県 (60)
【Fターム(参考)】
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